ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 09月 15日

外国客で行列のできるラーメン店「無敵家」

先日知り合いの香港人から池袋にある外国客で行列のできるラーメン店の話を聞きました。彼がいうには、その店は池袋東口にあり、深夜近くまで行列ができていて、その大半は中国語圏やタイ人などの旅行者なんだそうです。

「なんて店ですか?」
「確か、無敵家といいます」
「ムテキヤ?」

自分はラーメン通ではないけれど、どこかで名前を聞いたおぼえがあります。どんな店か知りたくて、その日の夕方、たまたま池袋に行く用もあり、訪ねてみました。場所は明治通り沿いです。
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いましたいました。ずいぶん並んでいますね。近づくと、確かに中国語が聞かれました。ここはとんコク醤油味のラーメン店だそうです。

その日は時間がなくラーメンを食べることができなかったので、数日後のお昼どき、再び訪ねると、またもや行列でした。けっこう長いです。どうやら今日も無理そうです…。
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行列のそばに「歩行者に迷惑かけないように」と書かれた日英中3か国語の看板が立てられていました。
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それにしても、池袋はラーメン激戦区のひとつ。周囲にはいろんなラーメン店が並んでいます。その中で、なぜ無敵家だけに行列ができているのか。そのひみつは、同店のHPをみるとわかりました。トリップアドバイザーの人気ランキングで上位に付けているのです。
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麺創房 無敵家
http://www.mutekiya.com/

無敵屋(トリップアドバイザー)
http://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g1066460-d1686988-Reviews-Mutekiya-Toshima_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html

なにしろ豊島区のレストランで2612軒中1 位だというんです。

すぐそばに別のラーメン店の大きな宣伝看板をもって客引きしているおばさんがいたので、声をかけてみました。おばさんにとって無敵家はいわば商売敵です。

「行列すごいですね。これいつ頃からなんですか?」
「もう3年くらい前からじゃないかねえ」
「そんなに前からですか。どうしてこの店だけ行列なんでしょうか。ほかにもいろいろラーメン店はあるのにね」
「うまく宣伝しているらしいよ。うちの店の人間も食べにいったことがあるけど、そこまでの味なのか。うちの店のほうがずっとおいしいのにねえ…」
「ボリュームのある角煮風のチャーシューなんですって?」
「ただ中国人が多いから、そのへんにゴミ捨てたり、大変よ。吸殻を下水の穴に入れたり、もう少しお行儀よくしてくれないとねえ」

それから数日後、自分の仕事場のある東新宿に同じ無敵家があることを思い出しました。場所は新宿花園神社のすぐそばです。
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池袋ではとても食べられそうにないので、入ってみました。ところが、ここはまったくの閑古鳥です。
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ひとまずこの店の定番「げんこつ麺」を注文しました。味はまあそうですね。おいしいのではないでしょうか。650円と池袋店より100円安いようです。
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店長に話を聞いてみました。

「池袋の無敵家はいつも行列ですごいですね」
「あっちはHPで宣伝しているからねえ」
「無敵家は都内に何店あるんですか」
「2店です」
「えっ、じゃあここと池袋だけ?」
「そうですよ」

なんだか聞きづらくなったので席に戻って、たったひとりの店員の中国人のおばさんに話しかけてみました。というのも、無敵家新宿店があるのは、ぼくが日々定点観測している新宿5丁目ツアーバス路駐台数調査スポットの明治通りをはさんだ向かいだからです。

定点観測ツアーバス調査
http://inbound.exblog.jp/i17/

「通りの向こうには、毎日ツアーの団体バスがたくさんやって来るので、中国のお客さんを呼び込んでみたらどうでしょうか」
「ダメよ。あれは店と旅行会社が契約しているから」

余計なお世話でした。いくら団体客がたくさんいても、ラーメン店には現われないというわけです。

それにしても、トリップアドバイザーに載ると載らないとでは、同じ看板を掲げた店でも客の入りがこんなに違うんですね。

ちなみに、げんこつ麺の味について、トリップアドバイザーの中国語繁体字版の投稿の中にぼくと同じ感想を書いた人がいました。

「“太咸了...”(とてもしょっぱい)」。

これを書いたのは台湾の若い女性で、「原宿のじゃんがららーめんに比べると、天と地の差があります。それに駅から少し遠い。並んでまで食べる価値があるでしょうか」とあります。手厳しいですね。

これから外国客に人気のラーメン店についてちょっと調べてみようかなと思います。

【追記】
それから1年半後のことですが、外国客で行列のできる店について、いくつか取材してみました。

韓国の若者は日本食が好きらしい。「牛かつ もと村 渋谷店」の行列に並んでみた
http://inbound.exblog.jp/26351443/

行列を体験として楽しむアジア客たち~池袋「無敵家」に並んでみてわかったこと
http://inbound.exblog.jp/26363800/

一蘭ラーメンに外国客の行列ができる3つの理由
http://inbound.exblog.jp/26363988/
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by sanyo-kansatu | 2015-09-15 07:57 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 08月 13日

羅先のホテルと娯楽もろもろ~旧ヤマトホテルから香港カジノまで(2014年)

中朝ロ3ヵ国が接する図們デルタ地帯に位置する羅先特別市(北朝鮮)で工場見学をした話を前回書きました。まるで2000年代前半の広東省のように、若いきまじめな女性労働者がそこそこいて頑張っていることはわかりましたが、この環境ではすぐに投資という話にはならなさそうです。

羅先の観光アトラクションといえば工場見学です
http://inbound.exblog.jp/24782964/

とはいえ、経済貿易特区だけあって、平壌を除く他の地方都市とは違い、外国人向けの宿泊施設はいくつかあります。歴史的にみて日本の大陸進出の時代と関係のあるホテルも現存しています。

現地関係者によると、現在羅先にはホテルが21軒あり、そのうち日本人を含めた外国人向けに対外開放されているホテルは以下の6軒です。

①羅津ホテル
②南山旅館
③琵琶閣(琵琶旅館)
④琵琶観光ホテル
⑤東明山ホテル
⑥エンペラーホテル&カジノ

以下、簡単に紹介しましょう。

①羅津ホテル
羅先で客室数の最も多いシティホテルです。中国やロシアのビジネスマンなどが多く利用しています。館内にはビジネスフロアもあり、対外貿易を行う事務所なども入っています。現地関係者は「中国人ツアー客が利用するようになって質が落ちた」と話しています。
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ホテルのそばに2013年にオープンしたボンソノカジノがあります。中国資本で建てられたカジノですが、2014年夏現在、営業状態は最悪のようです。
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②南山旅館
羅津市内の中心部の広場に位置する老舗ホテル。1939年に満鉄が建てた旧羅津ヤマトホテルです。外観は当時の時代らしく昭和のシンプルな建築スタイルの2階建てビルです。羅津に港や鉄道が設置されたのは1930年代半ばからですから、当時はこのまちの顔だったでしょう。
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ロビーは中国東北地方各都市にある旧ヤマトホテル系に似ています。客室は老朽化していますが、それなりの風格はあります。
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実は、以前このまちに住んでいたというおばあさんにお話を聞いたことがあります。当時羅津高女という女学校があり、そこで終戦を迎え、引き上げてこられた方なのですが、女学生のころ、羅津ヤマトホテルのレストランで食事をしたことがあるそうです。なんでもある休日、音楽の担当教師に誘われ、クラスの女子2名と一緒に行ったのだとか。当時は女学生がホテルのレストランに行くなんてことはまずなかったそうで、自分が大人になったような気分になったそうです。その思い出の舞台がここです。
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※この話を聞いていたので、ホテルに入ってこっそりレストランの写真を撮ったところ、あとで問題になりました。外国人らしき人物がホテルの中に潜入したと誰かに密告されてしまったのです。ほんの数分単独行動をしただけでこれです。参ります。

③琵琶閣(琵琶旅館)
日本海を見渡す高台の上にあるホテルで、かつて金日成主席らが別荘として使ったことがあります。2012年にここに泊まりました。

金日成の別荘(琵琶旅館)と旧羅津ヤマトホテル(南山旅館)
http://inbound.exblog.jp/20191274/

④琵琶観光ホテル
琵琶旅館の隣にあるホテルで、客室数が多いぶん、かなり質が落ちます。日本人が来ると、ビジネスマンなら別ですが、他の外国客と隔離したいのか、羅津ホテルではなく、こちらに泊めさせられることが多いようです。
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⑤東明山ホテル
今回泊まった羅先で最も設備の整った新しいホテルです。
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客室も快適です。中国の4・5線級都市にある、まちいちばんのホテルといった感じです。1泊50ドル以上取ります。
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フィットネスジムやプール、サウナもあります。中長期滞在向けのビジネス仕様ですが、中国人ツアー客もいました。
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ただし、サウナの利用は20ドルと高額で、覗いてみると、稼働していませんでした。まあ無理もないかもしれません。一時に比べ、中ロのビジネスマンも多いとは言えないからです。
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⑥エンペラーホテル&カジノ
1990年代後半にできた香港資本のカジノです。一時中国の役人の公金使用問題などで営業停止になったり、いろいろありましたが、いまはなんとか営業しています。一泊300ドル近く取るそうです。カジノの最低換金額は500ドル(実際にはそこまで厳密ではないという話もあります)。館内にはほとんど人気はありません。館内の様子は、下記ページを参照してください。
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2013年の春、中朝国境にある羅先(北朝鮮)にカジノが3つもできました
http://inbound.exblog.jp/20191710/

さて、このまちに来て娯楽を求めても仕方がないところはありますが、最近ではロシアレストランが2軒、中国料理店が2軒、チェコ式のビヤホールがあります。

このロシアレストラン「ノーヴィーミル」のオーナーはロシア人だそうですが、料理は限りなく朝鮮風で、がっかりでした。客はほとんどいません。
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2014年版 北朝鮮のグルメ5泊6日のすべて【前編】
http://inbound.exblog.jp/23948946/

ビヤホールは海浜公園の中にあります。羅津ホテルにも近いです。生ビール1杯15元。2013年のオープン当時はにぎわったそうですが、いまは閑散としています。
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2014年版 北朝鮮のグルメ5泊6日のすべて【後編】
http://inbound.exblog.jp/23951727/

このまちでの娯楽といえば、マッサージがあります。場所は市街地から少しはずれた場所にありますが、マッサージ師は女性で、平壌医科大学出身でした。なぜそれがわかるかというと、3年前に訪ねたことのある羅先の貿易展覧会で同大学の医薬品を販売していた女性スタッフたちだったからです。これは珍しいことではありません。外貨獲得のために、この国の女性は東奔西走しているからです。

またこれは娯楽ではありませんが、海浜公園では子供たちがローラースケートを練習している様子を見ることができます。1時間3元でレンタルできるそうです。第一主席肝いりのローラースケート場は金剛山のふもとでも建設されていましたが、羅先特別都市にもあります。
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最後に、このまちで外貨両替のできる銀行はいくつかあります。

<北朝鮮>外国投資銀行法を10年ぶりに修正補充(アジアプレス2012年2月9日)
http://www.asiapress.org/apn/archives/2012/02/09192516.php

以下の4つは中国系です。

図們江銀行
羅先開発銀行
中華商業銀行
東大銀行
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また図們デルタ地帯の開発のために設立されたゴールデントライアングルバンクがこれ。
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日本時代の建物を流用しているのが朝鮮銀行羅先支店です。
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ただし、このまちでは人民元がふつうに使われているため、両替の必要はなさそうです。市場などでも売り場のおばさんたちは人民元を手にして商売している様子だからです。

羅先には最近タクシーも増えています。中国の中古タクシーです。ただし、現地在住のビジネスマンでもない限り、外国人が勝手に乗り回ることはほぼ考えられません。
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高台から羅先(羅津)の市街地を撮りました。
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朝鮮民家がびっしり並ぶ中に、一部マンション建設が始まっています。
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確かに、羅先特別市は清津などの地方都市に比べると、中国のさまざまな影響が感じられるまちです。

ちなみに、これは1940年代初頭の羅津市街地図です。当時から羅津港には3つの埠頭があり、羅津駅と直結していたことがわかります。羅津駅からまっすぐ伸びるまちいちばんの昭和通り(当時)に沿って朝鮮銀行や大和ホテルがあります。この構造が頭に入っていると、車であちこち運ばれても、自分がどこにいるかある程度わかると思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-13 14:12 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 08月 11日

海七宝の海水浴場と遊覧ボートとにぎやかな食事風景

外七宝の展望台から見下ろしていた海岸線に下りてきました。このあたりは「海七宝」と呼ばれ、北は漁郎端から南は舞水端に至る約60kmにかけての断崖絶壁や荒波で削られた奇岩などからなる海浜景勝地です。
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※2014年7月上旬、北朝鮮咸鏡北道の七宝山を訪ねた話をしています。

七宝山(チルボサン)は金剛山とは似て非なる朝鮮の名峰
http://inbound.exblog.jp/24765755/

車は海水浴場にやってきました。きれいな海です。子供たちが海水浴を楽しんでいます。
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ボートが近づいてきました。これから遊覧ボートに乗るんだそうです。
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海が碧いです。さすがに汚染されていない海の色です。
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これから海七宝の珍しい岩場を見に行くのかと思ったら、ボートはすぐに折り返し、砂浜の見える海岸線を北に向かって走り出しました。あれあれ。

漁民を乗せたボートと海水浴客のための施設も見えます。
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海鳥たちのコロニーのそばを抜け、あっという間の遊覧でした。
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ガイドたちは地元の海水浴客たちに近づかないよう注意するので、海の上から軽い望遠で撮ってみました。漁村の写真も撮るなとうるさいのです。彼らにとって朝鮮の漁村は遅れていて、外国人に見せたくない場所のようです。
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なんとも拍子抜けの海七宝遊覧でしたが、にぎやかな昼食が待っていました。
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食事の場所は、海水浴客のための施設の中でした。テーブルに揚げ魚やスケソウダラの煮付けなど、咸鏡北道の地元海産料理が並んでいました。

追加で地元の海で採れたというウニや貝類を選んで注文できます。ただし、ウニはあまり新鮮ではなさそうです。
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彼女たちがウニを割ってくれます。彼女たちは地元の子のようです。
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具の中身はかなりさびしいものがあります。ガイドによると、このあたりの海でもウニの採り過ぎで、身のぎっしりつまった上物は海深く潜水しないとなかなか採れないそうです。実は、清津から七宝山にかけての海は昔からウニが有名でした。戦前の旅行ガイドなどに必ず書かれているのが、清津に来たら必ずこれを食すべし、として紹介されるウニのおかゆです。
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このおじさんは羅先朝鮮国際旅行社の部長さんです。とにかく酒好きで、それが理由で我々一行についてきたんじゃないかと思われるほど、昼も夜も酒をガンガン飲んでいました。もちろん、支払いはこちらもちです。たまったもんじゃないのですが、いかにも人のいい田舎のおじさんという感じで、このときも、食事を用意してくれた近くの民宿ホテルの女性スタッフの肩を抱いてじゃれまわっています。平壌にいるきまじめな日本語ガイドに比べると、よほど気が休まるともいえます。
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施設の中にはシャワー室やレンタル浮き輪のカウンター、そして外にはビーチバレーのコートがありました。
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元山の海水浴場でもそうでしたが、朝鮮の東海岸は海がきれいで、環境を保護しながらきちんと無理なく開発することができれば、周辺国から行楽客も訪れる国際観光地になれる素地はありそうです。そのためには、投資を呼び込み、アクセスのための交通を整備することが不可欠ですが、現状では、やることなすこと中途半端なので、簡単ではないだろうというのが率直な印象です。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-11 15:16 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 08月 01日

焼肉食べ放題「味仙荘」は今日も中国ツアーバス客であふれていました

新宿5丁目の中国団体ツアーバスの路駐スポットにある焼肉屋「味仙荘」は、中国ツアーバス客ご用達の食事処です。

新宿5丁目の中国団体ツアーバス路駐スポット調査
http://inbound.exblog.jp/i17

隣にある中国料理屋「林園」が中国団体客専門で、一般客を受け入れていないのに対し、「味仙荘」は一般客も入っています。ネットでみると、焼肉食べ放題の店として知られているようです。

ランチタイムと夕方には、周辺に路駐した大型バスから降りてきた中国人団体客が入店していく様子が見られます。最近は日中とても暑いので、入店できずに歩道で待っている中国客も多く、とても気の毒に感じていました。
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ある日の夕方、仕事帰りに「味仙荘」を覗いてみると、中国客が来ていました。ふとどんな店か入ってみようかなと思い、ドアを開けると、さいわい二人掛けのテーブルがひとつ空いていて、入店することができました。
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店には吉林省から来た旅行客がいました。ここは基本食べ放題の店らしく、おのおのが各種肉を取りに行き、自分で焼いて食べます。キムチとごはんとスープ付き。料金は、食べ放題で2699円、それに飲み放題が付くと3999円。さすがに食べ放題はムリと思っていたのですが、注文を取りに来た男の子が「カルビ定食が1500円、食べ放題が2699円。生ビールを2杯以上飲むなら、食べ・飲み放題がいちばんお得ですよ」。

う~ん、そうか。個人的には食べ放題より飲み放題がありがたい。ということで、飲み・食べ放題を頼んだのですが、最初に出てきた皿のカルビとタンの量がものすごいボリュームでビックリです。
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中国客が多く、バイキング形式ということですから、店の雰囲気は限りなく中国、という感じです。中国の人たちは、結局、このスタイルがいちばんラクなのでしょう。ただし、皆さんそんなにお酒を飲んでいる風ではなく、大騒ぎしている感じではありません。こう毎日暑いと、バスの移動で疲れちゃったのかもしれません。
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実は、この店、奥にもスペースがあって、そちらにも中国団体客がいました。どこから来たの? と聞くと、「揚州」といいます。最近、ツアーバス客たちの話している言葉が上海方言に近いグループが多いなと感じていましたが、やっぱりそうですか。

おそらく上海市内の人間はもう団体ツアーで来ることはほとんどなくなったかわりに(彼らは個人ビザを取ってくるようになったため)、その周辺の浙江省や江蘇省、湖北省あたりの人たちが圧倒的に多いのだと思われます。湖北省の省都の武漢からは春秋航空が関空へ飛んでいます。内陸部の人たちがゴールデンルートを旅行する時代になっているのです。

ひとつ気になったのは、この揚州から来たお父さんは、自分の中学生くらいの娘の靴を履かせてやっていたこと。一人っ子の国の親がたいそう子供を甘やかしている話はよく聞くし、中国でもそういう光景をよく見ますが、おいおい、そこまでやるか…。娘は娘で当たり前でしょ、といった表情です。最近の中国人親の子どもに対する甘やかしの光景を見ると、いつもゾッとします。

さて、中国客以外のこの店の客層はというと、壁にいまはなき「東京ウォーカー」の焼き肉特集でこの店を紹介した記事のコピーが出ていたことからも、お肉を安く腹いっぱい食べたいという若い世代が中心のようです。揚州の人たちが帰ったあと、やって来たのは、専門学校生の団体のようでした。
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「団体の中国客」と「日本の専門学校生」が集う店というわけです。なるほど。きっと中国の皆さんはお金がないわけではないのでしょうけれど、ツアーに組み込まれてしまっていることから、ここに連れてこられるのでしょう。

というわけですから、味については聞かないでください。しかし、ボリュームだけはすごくて、どーんと出された皿の肉はとても食べきれませんでした。

さて、そろそろお勘定しようかと思っていたら、欧米人ツーリストの4人家族が入店してきました。東新宿周辺のビジネスホテルを宿にしている人たちだと思われます。英語圏の人たちではありません。
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そうか、ここは「団体中国客」と「専門学校生」プラス「東新宿に宿を取る欧米人エコノミーツーリスト」の集う店でもあるんですね。さすがは東新宿FITゾーンならではの世界です。

ところで、例の「東京ウォーカー」のコピーをよく見ると、なんとこの記事、2001年のものでした。おいおい、これどうなの?

この店の経営者はオールドカマーの在日中国人です。オールドかまーというのは、1980~90年代に日本に留学して、永住権を取った人たちという意味です。以前は韓国人経営でしたが、隣の「林園」を利用する中国客が増えたことから、少しずつ「味仙荘」にも来るようになり、経営権を買ったのだと思います。急増する訪日中国客相手にひと儲けしようと考えるのは、結局、同じ中国人というわけです。

やっぱりこういう世界ってあるんですね。LAOXにもつながる世界といえるでしょう。
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※この夏、味仙荘を訪れた中国客についてちょっとした調査を行いました。中国のどの地方から来た人たちが多いか調べたものです。その結果は以下のエントリーを参照。

中国内陸客の増加がもたらす意味を覚悟しておくべき
http://inbound.exblog.jp/24845817/
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by sanyo-kansatu | 2015-08-01 10:09 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 06月 16日

新大久保はハラルの町、エスニック度が上昇しています

この週末、久しぶりに新大久保を訪ねたら、以前と比べてちょっと様相が変わって見えました。街を歩く人たちのエスニック度がこれまでに増して上昇しているのです。

コリアン街として知られる新大久保のJR山手線の内側には、多くの韓国料理店や韓流グッズ、化粧品、食材などの店が並んでいます。ハングルのネオンがきらめく都内でもユニークな移民街ですが、人通りは少なくなったとまではいえないものの、数年前ほどのにぎわいは感じられません。通りに面した一部のレストランの中を覗くと、まったく客の姿が見当たらない店もけっこうあります。

一方、山手線の外側に位置する一角には、独特のにぎわいがあります。そこには東南アジアから西アジアにかけての濃い顔をした人たちが往来しているのです。ここ数年で彼らの数はぐっと増えたように思われます。

朝日新聞2015年5月10日~12日の東京版には、以下の新大久保訪問ルポが書かれていました。

イスラム横丁へようこそ! 新大久保に根付くムスリムのコミュニティー(朝日新聞2015年05月21日)http://astand.asahi.com/webshinsho/asahi/asahishimbun/product/2015051500003.html

「そこは「イスラム横丁」と呼ばれる。

JR山手線の新大久保駅(新宿区)の西側。目抜き通りを北に折れて40メートル進んだ丁字路に、ムスリム(イスラム教徒)向けの店が並ぶ。駅東の「コリアンタウン」とは風景も行き交う人もまるで違う。

金曜の昼過ぎ。インド人が営む食材店、バングラデシュ人の香辛料店、トルコ人のケバブ店……。店が次々に閉まる。店内や路上にいた人々が、古びた雑居ビルへと吸い込まれていく」(一部抜粋)
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「新大久保 心つながるムスリム」「モスクで礼拝200人 視線を気にせず没頭」「厳格と寛容、教えを守り日本に根」「思い込みで身構えすぎていた」「違い 知ること、知ろうとすることが大事」「『心のグローバル化を』重く響いた」……といったこの種のルポにありがちな記事のメッセージは、月並みすぎて正直あんまり感心しませんでしたが、同記事を読んで興味深かったのは、この地でハラル食材店を経営し、「ビッグブラザー」と呼ばれるインド人長老の語る夢として「学校とホテル、多国籍ハラルレストランが併設されたムスリム施設の建設」を挙げていることでした。
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この写真(上)の店がインド人長老の経営するハラル食材店です。中に入ると、ハラル処理された肉や香辛料、インスタントラーメン、ドリンク類などが売られていますが、客層は多国籍です。面白いのは、共通語として片言の日本語が使われています。声をかけてみると、必ずしも在住者ではなく、観光で来日した東南アジア系の人たちが多いことです。
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そうなんです。新大久保に訪日外国人が多く訪れるようになっているのです。必ずしもアジア系だけでなく、大久保界隈の安いホステル系の宿に泊まる欧米人の子供連れのファミリーもいたりします。

インド人長老が夢として「学校とホテル、多国籍ハラルレストランが併設されたムスリム施設の建設」を語った背景には、新大久保を訪れるアジア系旅行者が増えていることがあるのだと思います。

これには、当然ここ数年のアジア各国へのビザ緩和の影響があるはずです。ハラルフードの食材店やレストランが多いことも、外国客を引き寄せる理由になっているのでしょう。

別のハラルショップでは、食材以外にも格安航空券やスマホ、PC、SIMカードなどを販売していました。
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新大久保は今後、在住ムスリムだけでなく、訪日外客も含めた新しい多国籍エスニック街に変わっていくのかもしれません。
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【追記】
欧米系を含めた訪日外国人旅行者の姿は、新大久保の延辺料理店(中国の朝鮮族の地方料理の店)などでも見かけます。ちょっと意外な気がしたのですが、ではなぜ韓国料理店にはあまり入っていないのだろうと考えたところ、これはあくまで推論にすぎませんけれど、日本を訪れた外国客がハングル表記の店にわざわざ入ることはあまり考えないからだろうと思われます(好み以前の話です。ここは韓国ではないのですから)。

それに、今の新大久保の韓国料理店の外観は、日本の韓流ファン向けのテイストのデザインが多く、料理の値段も決して安くありません。旅行者の気持ちになって考えてみれば、日本に来てわざわざコリアンタウンで韓国料理、という流れにはなりにくいだろうと思われます。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-16 17:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 04月 29日

日本人の知らない餃子の話―大連のイカスミ餃子は見た目よりずっと美味しい

旅に出ると、なるべくその土地でしか味わえない珍しいものをちょっと無理してでも食べに行こう、ついでに写真も撮ってしまおう。そういう食へのアプローチが仕事柄、すっかり身についてしまっているのですが、皿数を並べた豪勢な食卓よりも、その土地の人たちの日常食を口にすることのほうが好みです。

日常食という意味では、中国の華北および東北地方の代表は餃子でしょう。一方、戦後に中国帰りの人たちが全国各地で普及し、味も日本化したことで、もうすっかり日本人にとって日常食になっているのも餃子です。

日本の餃子は焼き餃子が主流ですが、本場中国東北地方では水餃子が一般的であることはわりと知られていると思います。最近開店した華人経営の中華料理店は、経営者に東北出身者が多いことから、水餃子がメインですが、日本人の口に合わせて焼き餃子を出すところも多いです。

ではその違いは何か。ひとくちでいうと、皮の厚みです。日本の焼き餃子は、皮の薄さがポイント。中の具を包んで、肉汁がこぼれ出さないようにするのが皮のメインの役割で、食感はそれほど求められない。要は、ご飯と一緒に食べられるような餃子なのです。

一方、中国の餃子は少し厚みのあるもちもちした皮が特徴です。そして、餃子はご飯とは一緒に食べません。それ自体が主食という位置づけだからです。たいていの中国人は「このぷるぷるした皮がおいしいでしょう」と言います。

そもそも位置づけが違うため、両国の餃子は皮の厚みが異なり、その結果、主流は焼き餃子か水餃子かに分かれているのだと思われます(南に行くと、上海あたりだと焼き小龍包などが主流になってきますが、ここはあくまで華北と東北の話なので)。

昨年、大連に展開していた「餃子の王将」チェーンが撤退したことが報じられました。ぼくも何度か店舗を見たことがありますが(さすがにわざわざ中国に行って入る気にはなれなかった)、苦戦している様がうかがえたので、さもありなんと思ったものです。

餃子の王将、中国から撤退 「日本の味受け入れられず」(2014.11.1)
http://www.asahi.com/articles/ASGB05WQZGB0PLFA00D.html

報じられなかった「餃子の王将、中国撤退」本当の理由
http://hbol.jp/13707

「餃子の王将」、なぜ本場中国で失敗したのか
http://toyokeizai.net/articles/-/52547

はたしてこれらのネットの記事がいうように、味が受け入れられなかったといえるのでしょうか。ひとことにしてしまえばそうなるのかもしれませんが、より実情に即していうと、一部記事でも解説されているように、味やサービスがどうこうというより、件の位置づけの違いを大連市民の皆さんに伝えること(あるいは、納得させること)ができなかったためではないかと思われます。というのも、たいていの中国人にこの件について話を聞くと、「餃子と一緒にご飯を食べるというスタイルが受けつけられなかった」と答えるケースが大半です。味そのものではなく、イメージあるいは固定観念の違いからくる違和感をぬぐえなかったということでしょう。

たとえば、カリフォルニアロール自体はおいしそうだけど、日本の寿司屋で出されたら、あまり口にしたくない気になる、納得できない感じがすると我々が思うようなことに近いのではないか。実際、ぼくの地元の私鉄沿線のまちには、3軒の華人経営の中華料理店があるのですが、2軒が黒龍江省出身、1軒は大連出身の店です。前者の2軒では水餃子と焼き餃子を出すのですが、大連の店では本場中国の味にこだわり、水餃子しか出しません。当然というべきか、いつもにぎわっているのは黒龍江省の店です。住宅街に出店し、大半は日本人客が占めるのですから、当たり前のことでしょう。

(実をいうと、この撤退話、そうした文化習慣的なコンテクスト上の違和といったことだけではなくて、昨年の同チェーン社長の射殺事件とからめて事件の真相を探るレポートが出版され、いろいろ詮索されてもいるようです。ここでは触れません)。

それはさておき、大連にはさまざまなタイプの餃子屋さんがあります。まだまだ我々日本人の知らない餃子の世界があるのです。

昨年7月、大連市内の魚介専門餃子店の「船歌魚水餃」というレストランに行ったとき、そのことにあらためて気づかされました。その店の餃子のメインの具は肉ではなく、海鮮素材なのです(一応肉の餃子も出しますが)。

これがその店で注文した餃子2種です。
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黄色いのが、黄魚という黄海でとれた魚の具の入ったもの。日本でいうイシモチだそうで、外見は本当に黄色をしています。上海あたりでもよく食べられている魚です。
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そして真っ黒なのがイカスミ餃子です。接写するとなかなかグロテスクですね。
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でも、中身を開いてみると、イカと豚肉を合わせた具が入っています。皮が黒いのはイカの墨が皮に練り込まれているからです。見た目のインパクトはなかなかですが、意外にさっぱりとして美味です。中国餃子特有の厚みのある皮の歯ごたえも口の中で具となじんでいい感じです。イカスミスパゲティのように口の中が真っ黒になるというようなこともありません。
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他にも、アワビとかサザエなどの貝類を入れた餃子もあります。これら海鮮餃子は肉入り餃子に比べると、肉汁パワーがないぶん、かえって上品な味わいともいえます。でも、餃子には肉汁パワーがほしいと思う人も多そうなので、意見は分かれるかもしれません。これも食のイメージや固定観念がもたらすものでしょう。

そもそも餃子の中に何を入れようが自由なのです。文革期など、中国が貧しかった時代に肉の代用として安い魚介が使われたという面もあるようですが、まあ地元料理とはそういうものでしょう。海に近い大連という土地だからこそで、内陸の瀋陽や長春ではほとんどこの手の店はないでしょうし、あってもたぶんあまり人気はなさそうです。

お店の中では、こうやっておばさんたちがイカの墨を皮に練り込んで、具を包んでいます。
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店内では魚を選んで、一品料理として調理してくれます。手前左の「大黄花」と書かれているのが黄魚でしょう。
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貝類もいろいろあります。
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日本の演歌みたいな店名の「船歌魚水餃」は大連市内に2軒あり、ぼくが行った店は、人民広場に近い唐山街26号にあります。
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by sanyo-kansatu | 2015-04-29 10:34 | 北東アジア未来形:満洲の今 | Comments(0)
2015年 04月 26日

日本初のハラール中華料理店「東京ムスリム飯店」に行ってみた

今年1月中旬、新年会に誘われて亀戸の中華料理店「東京大排档」に行ったとき、店員さんからあるレストランの開店チラシをもらいました。この「東京大排档」という店自体が老舗キャバレーを改装したという場末モードたっぷりの時代がかったレストランで、とても面白かったのですが、その店も同じオーナーによる経営のようでした。

店の名は「東京穆斯林(ムスリム)飯店」。「(2014年)11月20日新規開店」「日本初ハラール中華料理店を錦糸町でオープン」と書かれています。

ハラール中華料理店? そのときは、あまりぴんことず、「最近インドネシアやマレーシアの観光客が増えていることを当て込んで、在日華人がムスリム向けのレストランをオープンしたのだな。ハラール認証とはいうけれど、彼らのことだから、どこまで厳密なのだろう。あやしいものだな」などと思ったものの、しばらく忘れていました。山手線の西半分を日常の活動域にしている人間にとって、錦糸町はめったに足を運ぶことがないからです。

先日、千葉在住の年長の友人から会食に誘われました。都心に出ていただくのは申し訳ないことから、お互いの中間地点で会いましょうかという話になり、その人が「錦糸町あたりはどう?」と言ったので、ぼくははっとして「そうだ。例のハラルレストランに行ってみよう」と思い立ったというのが、今回同店を訪ねることになった経緯でした。
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店はJR錦糸町駅南口から西に向かって飲み屋街を歩いて3分ほどの場所にありました。
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東京スカイツリーが間近に見えるロケーションにあります。
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入口にはイスラミックブルーの吹き流しとモスクの尖塔を模した目を引くデザインが施されています。

少し早い時間だったので、客は我々を除くと、ブリヤート系ロシア人か、あるいは新疆ウイグル系だろうかと思われるエキゾチックな風貌のカップルのみでした。おかげで、調子に乗って店内をバシャバシャ撮ってしまいました。
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アラビア文字で書かれたらしいコーランのことばを記した布地や書が飾られています。
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ハラール認証の表示もあります。
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これがメニューです。豚肉料理はもちろんありませんが、ぱっと見た感じ、羊肉料理が多いことを除けば、牛肉や鶏肉料理は豊富で、中華料理屋さんのラインナップとさほど変わらない印象です。

そのうえ、アルコールもあります。日本の焼酎のボトルが1本1800~2200円とはお安いですね。

ひとまず羊肉串といんげんのひき肉炒めを注文しました。これはうまいです。トウガラシの辛みも利いていて、味がしっかりしていながら、意外にさっぱりしている。都内には数多くの華人経営の中国家常菜(家庭料理)をうたう店がありますが、調理人が中国東北地方出身である場合が多いせいか、味付けも調理法もかなり雑なため、期待はずれな店が多い。でも、ここはちょっと違います。
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しばらくすると、客が続々入店してきました。中国人の若い女性ふたり組は、この店の特色菜(看板料理)の「直火烤羊排(羊のスペアリブ)小1980円」と「羊蝎子锅(特製骨付き羊肉の麻辣鍋)1800円」を豪勢に注文しています。さすがは食に金を惜しまない中国人らしいです。
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そのうち店には関取さんもやって来ました。確かに、錦糸町は両国の隣駅ですものね。

そして、ついに真打登場。イスラムスカーフを身に付けたムスリム女性とその家族がやって来ました。
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赤いイスラム帽をかぶった女性はこの店の老板(店長)です。

彼女に少し話を聞くことにしました。「その帽子からすると、あなたは回民ですか? ご出身はどこ?」

「回族です。瀋陽から来ました」
「えっ、そうなんですか…。だとしたら、ご実家は回民街に近い?」
「そうですよ。よく知ってますね」

ぼくは中国遼寧省の省都である瀋陽に仕事でときどき行くのですが、決まって回民街に足を運んでいました。回民街は、中国の少数民族でイスラム教徒の人たちが暮らす地区です。瀋陽の回民街は、市内の中心部の一角にあり、500mくらいの通りに羊肉の屋台や清真レストランがぎっしり並んでいます。

都市化が進み、高層ビルばかりが林立する今の瀋陽では、昔ながらの中国ののどかな雰囲気が味わえる数少ないスポットなんです。

東京ムスリム飯店の人たちの故郷である瀋陽の回民街の様子はこちらをどうぞ。
 ↓
中国瀋陽の回民街(イスラム通り)に行くと、和んでしまう
http://inbound.exblog.jp/24406266/

「ぼくは中国の回民街の屋台に行くのが好きなんです。もしかしてお家は近いの?」
「私の家は、あの近くですよ」

自分のよく知る外国の土地から来た人たちだとわかると、親しみを覚えるものです。

「今日は初めてこちらに来ましたが、本場の味でおいしいですね。調理しているのはやはり回族の人ですか?」
「そうです。私と同じ瀋陽出身の回族です」

帰り際、ぶしつけに厨房を覗くと、白い帽子をかぶった調理人がいたので、思わず声をかけたくなりました。

「あなたも瀋陽の人?」
「そうです。瀋陽ですよ」

そして、写真を撮らせてくれました。
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日本人から見ると、彼が漢族なのか回族なのか、聞いてみないとわからないものです。

中国には、当たり前に彼らのようなムスリム系の少数民族(回族、ウイグル族など)が住んでいます。であれば、ハラールが日常生活の中に根付いていて当然でしょう。最近、日本の大学にもムスリム系留学生のために、ハラール料理を学食で出すところがあるそうですが、中国の大学ではもとより回民食のコーナーはありました。昨今のムスリム系観光客の訪日ブームの中で、彼らが都内にハラール料理の店を出そうと考えるのは、とても自然なことだったのです。

老板に「このお店には東南アジアのお客さんもよく来るんですか?」と聞くと、「よく来ますよ。桜のころは、インドネシアやマレーシアからいっぱい団体客が来ました」と話してくれました。

ぼく自身はハラールに関しては勉強中で、まだまだわからないことだらけですが、以前一般社団法人ハラル・ジャパン協会の関係者に日本企業のムスリム市場に対する取り組みについて話を聞いたことがあります。ハラール対応については、ムスリム系在日中国人に限らず、国内でもいろんな動きが起きているようです。

日本の良いものを世界のムスリムへ―ハラル食品をオンラインで販売
http://inbound.exblog.jp/22415316/

※日本観光振興会でも、ムスリム観光客向けのこんな情報提供をしています。

ムスリム観光客おもてなしガイドブック
http://www.nihon-kankou.or.jp/home/committees/report/event/20141104.html

【追記】
実は、今年(16年)になって2度ほどこのレストランに行く機会があったのですが、1年前に比べると味が落ちている印象がありました。どうしたことだろうと思って、厨房を覗いてみたのですが、以前いた回族の調理師はひとりいたものの、どうも調理が雑になっている気がします。ですから、この記事を書いた当時のように、このレストランを積極的におすすめする気になれなくなっていることを、念のため、告白しておきます。一般に在日中国人の経営するレストランにはこの傾向があります。味が長続きしないのです。回族経営のハラルレストランという意味では珍しいのですが、ちょっと残念です(2016年3月27日)
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by sanyo-kansatu | 2015-04-26 15:54 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 04月 26日

中国瀋陽の回民街(イスラム通り)に行くと、和んでしまう

中国遼寧省の省都・瀋陽を訪ねると、必ず足を運ぶのが回民街(イスラム通り)です。
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場所は瀋陽北駅から南に2㎞ほどの市中心部の一角で、大通りに面した入口に白地にブルーの屋根のついた門が建っています。門には「清真美食街(イスラムグルメ通り)」と書かれています。
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その脇には、中国風モスク、いわゆる清真寺院が建っています。中華とイスラムを折衷したような様式の清真寺院は、中国各地で見られます。
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門の中を一歩入ると、500mくらいの通りに清真レストランや屋台がぎっしり並んでいます。
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回民街の通り沿いには団地が建っていて、多くのムスリム系住民が暮らしています。

これらの写真を撮ったのは、2009年夏のことです。撮影は佐藤憲一さんです。

通りには羊肉串の屋台がたくさんあります。どの店も通りにテーブルとイスをだし、客を待っています。串を焼くのは回族やウイグル族たちですが、なかには青い瞳の青年も交じっています。
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この街で食べられるのは、羊肉と小麦をベースとした素朴な味わいです。小麦の生地に羊肉を包んだ「回頭餅」や羊のモツ煮込みスープ「羊雑湯」、東北風に発酵させた白菜を牛肉で煮込んだ「酸菜牛湯」、蘭州名物「牛肉麺」などは、見た目に比べて淡白な味わいで、食べやすいです。回族料理の麺は、一般の中華料理の麺に比べ強いコシがあるのでぼくは大好きです。
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メニューは漢字とアラビア文字併記です。
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瀋陽に来ると、どうしてもこの地区に足を運びたくなるのは理由があります。ここだけは、昔ながらの中国ののどかな雰囲気が味わえるからです。和んでしまうのです。
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上半身裸に坊主頭という風体は東北の漢族の男たちのトレードマークともいえますが、屋台で串焼きに食らいつくこの男の子の幸せそうなこと。
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もっとも、この街にはエキゾチックな顔立ちの子どもたちも大勢います。
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このおじさんの顔つきも、もともとシルクロードの住人であったことがよくわかります。

そして、何より目を引くのは、首をはねられた羊を丸ごと一匹解体するシーンです。
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カメラを向けると、若い新疆ウイグル地区出身の若者がほこらしげに羊を抱えて見せてくれました。
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夕闇が近づいてくると、回民街はいっそう味わい深い雰囲気を醸し出してきます。
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先ほど解体されていた丸ごと一匹の羊も半分くらいは、串焼き用に切り取られています。
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通りにはネオンが灯り、漢族の若いカップルも散歩しています(それにしても、東北の男性は若くても上半身裸なんですね)。
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夜になると、羊肉串を焼く白い煙がもうもうと立ち昇っていく様子が見られます。
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肉の焼け具合もいい感じです。
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麺屋を覗くと、小麦粉を練って手で伸ばしている男たちもいました。
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そして、この髭じいさん。この界隈のウイグル族の年長者のようです。
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最後にみなさんで記念撮影。これが瀋陽の回民街の世界です。
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……とここまでは、よくありがちな地元とのふれあいを楽しむ旅ネタですが、ちょっとした続きがあります。

カメラマン氏が撮った写真をメールで送るから、メルアド教えてと尋ねたところ、ひとりの青年がこう言うのです。

「ぼくたちウイグル族は今、ネットを政府から監視されていて、海外からメールが届くと面倒なことになる。プリントして送ってほしい」。

実は、この写真を撮ったのは、2009年7月に起きたウイグル騒乱から1か月後のことでした。彼らが中央政府から監視の対象とされているとは聞いていたものの、新疆ウイグル地区からこんなに離れた瀋陽ですらそうなのか、とちょっと驚いたものです。

中国では、わざわざ政治向きの話を詮索する気はなくても、こういう場面によく出くわすものです。

それから約9か月後の朝日新聞(2010年5月15日)に次のような小さな記事が載りました。

「中国新疆ウイグル地区自治区政府は14日、昨年7月の約200人が死亡したウイグル騒乱以降、同自治区内で規制していたインターネット接続を全面的に回復させたと発表した」。

都内でこの回民街出身の回族と出会うことになったのは、それから5年後のことでした。
 ↓
東京ムスリム飯店は中国瀋陽出身の回族のお店でした
http://inbound.exblog.jp/24406306/
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by sanyo-kansatu | 2015-04-26 15:35 | 北東アジア未来形:満洲の今 | Comments(0)
2015年 01月 15日

丹東で唯一ショーを撮影できる北朝鮮レストラン「柳京酒店」

丹東は本ブログでもしばしば登場する中朝国境にある中国最大のまちです。

旅先では誰もがその土地の名物料理を味わってみたいと思うものですが、鴨緑江の下流域に位置するこのまちの名物は、地元産のハマグリBBQと、対岸から渡ってきた女性たちが歌舞音曲で魅了する「北朝鮮レストラン」です。

北朝鮮レストランの多くは、朝鮮戦争時に米軍によって落とされた鴨緑江断橋のたもとの河沿いに並ぶように出店しています。

もう6年以上前のことです。このまちのある北朝鮮レストランでカメラマン氏と現地の友人と3人で食事をしながら、ウエイトレスらによる歌謡ショーを観ていました。店内には韓国人客が多く、場もとても盛り上がっていました。我々日本人客がいることを意識してか、テレサ・テンの曲を歌ってくれたり、歓迎ムードに包まれていました。

カメラマン氏は彼女らの歌い、踊る姿を自由に撮影していました。彼だけでなく、韓国人客も一緒になって、その場は撮影会の会場と化していたのです。

ショーが終わると、ひとりの男性が入店してきて、プルコギを注文しました。ウエイトレスのひとりが、彼に呼ばれ、何事か話をしていたのですが、しばらくすると、ショーに出演していたウエイトレスらが我々のテーブルに集まってきて、中国語で「いま撮った写真のデータを消せ」と言い出したのです。

先ほどまでの様子とうって変った彼女たちの剣呑な態度に驚くとともに、なぜこういう事態になったのか訝しく思っていると、現地の友人が小さな声で「あの男は、北朝鮮の監視員です。気を付けてください」とささやきます。

事態の急変に珍しく強く反応したのが、カメラマン氏です。彼は中国に限らず、世界中どこに行っても同じように地元の人たちのスナップを撮るのを常としてきましたが、写真を見せると、みんな喜んで送ってくれ、となるのが普通です。それを、いきなり「データを消せ」と、先ほどまで笑顔を振りまいていた彼女たちに迫られたものですから、ショックとともに腹にすえかねたのでしょう。カメラマンにとってデータを消せと言われるほどの苦痛はないからです。

こうした様子を遠目に眺めていた先ほどの男が、不意打ちのように日本語で声をかけてきました。「彼女たちは、先ほどあなたたちが撮った写真をすべて見せてくださいと言っています。そして、問題があるものは消してほしいと」。

「なぜですか。彼女たちも喜んでいましたよ。それに問題って何ですか。いきなり消せとは失礼じゃないですか」。そうぼくが応じると、彼は言うのです。

「あなたたちがこの写真を週刊誌に売ったら、彼女たちは国に帰ったあと、どうなると思いますか。彼女たちの立場になって考えてみてください」

ずいぶんな決めつけに一瞬イラっとしましたが、なるほど、そんな言い方をするものなのかと思ったと同時に、この男は日本にいたことのある人間だとわかったので、「あなたは日本のどこから来たのですか」と逆質問してみました。関西方面のようでした。

こういう場面になると、もっとその男を質問攻めにしたくなってしまうのがぼくのたちですが、カメラマン氏がこの場には耐えきれないため、帰ると言い出したので、そこで話は終わりました。店を出ると、鴨緑江断橋の薄暗いネオンがぼんやりと光って、川面に映っていました。ひどく後味の悪い夜の思い出です。

その後、何度も丹東に来ましたが、このまちの北朝鮮レストランでは撮影は行いませんでした。実際、数年前からこのまちでは、何人に限らず、ウエイトレスやショーの撮影は禁止になっていたのです。きっとこの種のトラブルが問題化されたためでしょう。

ところが、昨年7月、2年ぶりに丹東を訪れたとき、現地の友人が「この店だけ撮影OK」と連れてきてくれたのが「柳京酒店」でした。

場所は、鴨緑江断橋のすぐそばです。店内は広く、他の北朝鮮レストランとは違い、内装もそこそこ洗練されています。どうやら中国人経営のレストランのようです。
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丹東にある北朝鮮レストランのなかで、唯一歌謡ショーの撮影が許されているのは、そのためでしょう。他店と違い、ショーは1日2回。12時30分と18時30分に始まりますが、早めに予約をしておかないといい席が取れない人気店なのだそうです。

実際、店内は国内外の観光客でいっぱいでした。実は、この近くに北朝鮮の経営する5階建てのレストランがあるのですが(なんでも世界最大の北朝鮮レストランというふれこみです)、そちらは閑古鳥のようです。やはりここは中国。客のニーズに応えられなければ、商売はうまくいかないものです。ここに北朝鮮式ビジネスのジレンマがあります。

さて、演奏が始まりました。最初の「パンガプスムニダ(お会いできて嬉しいです)」こそチマチョゴリ姿でしたが、それ以後はありがちなショーではなく、バンド仕立ての軽快なスタイルがこの店の特徴のようです。これまで中国各地、そして東南アジア方面でも北レスを見つけると足を運んできましたが、ここはショー自体に新しい趣向が感じられて面白いです。
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もうそこらじゅうで彼女たちをバックにした記念撮影が始まっています。
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彼女はもしかしたら中国人かもしれません。ちょっとあか抜け方が他のNKガールたちとは違っていました。こうした共演も中国人経営だからできることなのでしょう。
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料理は中華と朝鮮の折衷です。味は……まあこんなものでしょう。
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ところが、今回もちょっとしたトラブルが発生しました。どうやら写真はOKですが、動画はNGだというのです。それを知らずにデジコンで動画を撮っていたら、いきなりウエイトレスが近づいてきて、カメラを取り上げようとするのです。あまりの強引さに怒るというより、呆れてしまいました。およそ客に接する態度ではありません。まったく、もうひどいんですから……。やれやれ。

あとで聞くと、YOU TUBEにアップされるから動画はNGだとか何とか言っていました。

彼らにとってレストランの経営には、海外から(特に同胞である韓国から)の悪意の視線をめぐる葛藤がつきまとうようです。
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柳京酒店
http://www.ddliujing.com
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by sanyo-kansatu | 2015-01-15 10:24 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2014年 12月 31日

2014年版 北朝鮮のグルメ5泊6日のすべて【後編】

2014年版 北朝鮮のグルメ5泊6日のすべて【中篇】の続きです。(→【中編】)

これまで【前編】【中編】を見てこられた方の中には、似たような料理が並んでばかりでうんざりしている人もいるかもしれません。実際、アップしているぼくもさすがにそういう気分になりつつあります。

こうして並べてみると、ある特定の地域を訪ねた以上、よく似た地方料理ばかりが出てくるのは無理もないからです。一方、外貨を落とす客人相手となれば、北朝鮮の地方都市でもこれだけの料理が供されるのか、という見方もあるかもしれません。それをどう理解すべきかについては、まだまだ宿題です。

それでも、【後編】では、これまでと多少趣向の違った料理が出てきます。実は、同行しているカメラマンは韓国料理通で、北朝鮮というより朝鮮半島の地方料理としての咸鏡北道の食の特徴に関心を持っていることから、次はこういうのが食べたいと積極的にリクエストしてくれるので、大助かりなのです。特注品の食の選択はすべて彼におまかせでした。

10)4日目夕食(清津観光ホテル)
この日の夜は、清津市内のホテルに泊まりました。清津駅の裏手にある清津観光ホテルです。

このホテルのオーナーは(後日紹介しますが)、いまからちょうど50年前にこの地に来た日本生まれの在日帰国者です。こういう方と北朝鮮で会うのは初めてでした。彼によると、2000年代前半くらいまでは、戦前期に清津に住んでいた年配の日本人たちがよくツアーで来ていたようで、彼はガイドとして七宝山なども案内していたそうです。彼の兄弟は日本にいて、ときどき訪ねてくるそうですが、それだけに日本の情報もそれなりに詳しいのです。50年も日本に戻っていないのに(彼が帰国したのは、18歳のときだったそうです)、日本語がなんら衰えていないのは驚きました。

そんなオーナー氏は、久しぶりに日本人が訪ねてくるということで、ずいぶんこちらに合わせた料理を用意してくださいました。こんな感じです。
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タコの刺身、ハタハタやカレイの唐揚げまでは、これまでどおりです。
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しかし、エビフライやトンカツが出てきたのは、かえって申し訳ない感じもしました。

面白かったのは、このタコ足ウインナー(でも、たぶん魚肉)の炒めものです。人気ドラマの『深夜食堂』で、やくざに扮する松重豐の好物がタコ足ウィンナーだったことを思い出しました。オーナー氏の趣向はどこか昭和のにおいがして、不思議な気がしました。
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これはちょっとべちょべちょですが、ポテトサラダです。卵の黄身もふってあります。朝鮮では、ポテトサラダがよく出てきます。どういう影響からなのでしょう。ロシア? それとも、戦前期の日本? あるいは、在日の人たちが伝えた? これも宿題にさせてください。
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これもよく出てくるどんぐりの寒天サラダ。中国東北地方でもよく食べられていますが、ネットで調べたら、韓国料理でもあるんですね。
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最後に、ご飯とスープが出てきたので、「こういうのがいちばん落ち着きますね」と言うと、オーナー氏はニコニコ笑っていました。
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11)5日目の朝食(清津観光ホテル)
朝食には、パンが出てきました。これは朝鮮で初めてのことです。気を遣ってくださったのだと思います。インスタントコーヒー付きです。中華料理みたいなのも付いていました。
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これが清津観光ホテルです。
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12)5日目の昼食(羅津の金栄食堂)
この日、朝8時に清津を発ち、昼前には羅先に戻りました。昼食は、2年前に来たことのある金栄食堂でした。食のリクエストはカメラマン氏に一任したと先ほど書きましたが、彼が「串焼きはありますか」と通訳に尋ねたところ、あるということで、この店に行くことになりました。
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中国の延辺朝鮮族自治州は串焼きが有名なので、もしかしたら羅先にもあるのでは、と彼は思ったそうです。実際、炭火焼のコーナーに案内され、中国でいう「羊肉串」が出てきました。これはもともとこの地にあったものなのか。それとも延辺から入ったのか。これも宿題です。

こちらがどんどん写真を撮る気でいるのをいいことに、ガイド氏は「ボタンエビの刺身も食べますか?」と聞いてきます。そういえば、2年前この店で同じものを食べた気がしますが、実はこれまで各地で出された刺身のクオリティには満足していなかったので、「どれ、持ってきてください」。もうにわかお大尽気分です。出てきたのはこれです。これも冷凍でした。
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串焼きときたら、しめは冷麺でしょう。ぼくは韓国の冷麺についてそれほど詳しくないので、朝鮮で出てくる冷麺を食べても、まあこんなものかな、という感じなのですが、カメラマン氏は韓国中の冷麺を食べ尽くしているという食通なので、実はあまり評価していません。
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それでも、グルメ雑誌のようなカットもつい撮ってしまいました。
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この店のウエイトレスは、清津方面の子たちと比べるとずいぶんあか抜けして見えました。化粧の仕方など、中国の都会の子に近いのです。カメラを向けるとピースをしたり、北朝鮮の若い世代も、対外開放されている都市などに限るのかもしれませんが、かなり中国の現代文化の影響を受け始めているに違いありません。
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どうやらこの金栄食堂は、焼肉や海鮮料理など、さまざまなタイプの料理が味わえる羅先を代表するレストランのひとつのようです。
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13)チェコ人経営のビヤホール(海浜公園)
これもある事情通の「羅先に行ったら、最近できたビヤホールに行ってみられるべし」という情報をもとに訪ねました。羅津港の北側に広がる海浜公園の中にあります。

チェコ人経営という話でしたが、すでに彼らは帰国しており、地元の女性が生ビールを入れてくれました。
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味は正直もうひとつです。メニューには1杯10元とあるのに、20元取られました。実はこれまでもこうやってボラれてきたに違いありません。なにしろすべての支払いが人民元なのですから。メニューをみると、いろいろ載っていますが、出せるつまみは限られているようです。
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店内には人っ子ひとりいません。「1年前のオープン当時は、けっこう客もいたが、だんだん来なくなった」と通訳氏。そのうち、チェコ人も帰国し、「ビールの味も落ちた」(これも通訳氏)そうです。
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14)5日目の夕食(朝鮮料理専門レストラン)
最後の夜は、羅津の朝鮮料理専門レストランに行きました。カメラマン氏のリクエストで特注したのは、海鮮鍋です。彼は韓国での豊富な食体験をもとに、朝鮮でどこまでそれに近いものが味わえるか試しているようです。毛ガニやエビ、タラなどいろいろ魚介の入った鍋が出てきました。
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当初用意されていた料理は鍋の周囲に置かれたもので、これまでどこかで出てきたラインナップと同じです。

これは中国の延辺でもよく食べるジャガイモチヂミです。もともと咸鏡北道の料理です。
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この店も閑散としています。我々は、なるべく他の外国人客とかちあわないように仕向けられているのだろうと思っていましたが、これまで見た限り、羅先の飲食店はどこも閑古鳥のようです。中朝関係の悪化による中国人ビジネスマンの朝鮮渡航の減少が影響しているのではないか、とぼくは推察します。
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というのも、国際旅行社のガイドの話では、中国人ツアー客はそこそこ羅先にも来ているのですが、彼らの参加するツアー代金はあまりに安すぎて、いくら物価の安い朝鮮でも、これまで紹介したような食堂には連れてこれないそうだからです。彼はそれを不満げにこう語っていました。「中国客はお金を出したがらないので、こういう料理を食べさせることができないんですよ」と。要するに、今回我々が訪ねたレストランは、ツアー客ではなく、ビジネス渡航で来た中国人やロシア人たちが利用していたのであり、彼らが頻繁に羅先に来なくなれば、利用者がいなくなるわけです。地元の朝鮮の人たちが利用するには、まだまったく高すぎるからです。通訳氏たちの月収が1か月300元と聞いて、無理もないと思いました。わずかな滞在日数とはいえ、こうしていろいろ見えてくること、明かされることがあります。
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この店のスタッフは品のいい女性たちでした。それにしても、朝鮮の女性はなんと健気に働くことでしょう。

今回あらためて思ったのは、中国の北朝鮮レストランで働くウエイトレス兼歌手の彼女たちと比べて、朝鮮国内の町のレストランで働く女性たちのほうが好感度が高いことです。やはり中国にいると、とかく好奇のまなざしを向けられがちな朝鮮人女性として自尊心を保つために心に鎧をまとわないわけにはいかないからでしょうか。妙にツンケンしていて、あんまり親しみを感じない場合が多いです。そういうクールビューティぶりがかえって、以前韓国で話題となった「美女応援団」的な人気にもつながっているのかもしれませんけれど。
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15)6日目の朝食(東明山ホテル)
最後の日は東明山ホテルに泊まりました。朝食は中国のホテルと同様のビュッフェでした。中国客が多く、中国料理ばかりでしたが、キムパップやキムチ、ミソチゲはありました。我々にはこれで十分です。
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実は、羅先の最後の宿泊先は、初日と同じ琵琶閣といわれていたので、それじゃつまらない、こちらはなるべくいろいろ見ておきたいのだと主張すると、50ドル追加で東明山ホテルに換えてもらうことになったのでした。羅先でいちばん新しく、館内にはスパやプール、ジムなどもあります。その実態は……これはまた後日にしましょう。
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16)6日目の昼食(琵琶閣のカラオケラウンジ)
今回の最後の食事は、通訳氏の強い希望で、琵琶閣のカラオケラウンジに行くことになりました。彼はどうしても自分の歌う長渕剛の『乾杯』を我々に聞いてほしいというのです。そのいきさつについては、別の機会に譲るとして、実はこの日の昼食はカメラマン氏の希望で、汁なし参鶏湯のタッコンを用意してもらいました。
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鶏を一羽丸ごと使うということで、200元も取られたのですが、通訳氏は「もし自分に頼めば40元で用意した」とこっそり話してくれたほど、最後の最後まで旅行社の人間にボラれまくってしまいましたが、写真を撮るためにはやむを得なかったのです。
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中華系の料理が幾皿か並び、ヨモギの焼酎なんてのも出てきました。

さて、ここで通訳氏は約束どおり『乾杯』を披露してくれました。動画も撮ってあるのですが、これまで名前を伏せてきたように、彼の姿をネットにさらしてしまっていいものか、いまのところまだ躊躇するところがあるので、公開しません(本人はそうしてほしかったみたいでしたが……)。
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その代わり、このホテルの女性服務員が、おなじみの「パンガプスムニダ(お会いできて嬉しいです)」を歌ってくれたので、そちらの動画は配信します。
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羅先(北朝鮮)琵琶閣のカラオケ
http://youtu.be/qaf0a70ZFEk

さて、このような飽食の呆れた日々をかの国で過ごしたわけですが、すでにお気づきのように、食と女性に関してのみ、断然ガードがゆるいという特性に乗じ、1日3回は必ず体験することになる<食>を通して、どこまでこの国の理解に近づけるのか。監視役にずっと見張られ、もとよりたいしたことなどできない環境のなか、冗談半分で試した戯れごとに過ぎないことをお察しいただいたうえで、それでも何らかの発見があればうれしく思う次第です。

※その他、いまどきの北朝鮮事情については「朝鮮観光のしおり」をご覧ください。
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by sanyo-kansatu | 2014-12-31 23:53 | 朝鮮観光のしおり | Comments(1)