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2017年 05月 25日

なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?

ここ数日、日本国内で急増している中国の「越境白タク」の実態を見てきました。それにしても、この問題のみならず、なぜ彼らの周辺では次々と違法問題が起きてしまうのでしょうか。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/
日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/
中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/

これまで本ブログで何度も指摘してきたように、無資格ガイドや違法民泊、ブラック免税店問題など、すべてとはいいませんが、その大半は中国人観光客の周辺で起きています。その理由について、少し考えてみたいと思います。

その前に、不用意に話を進めると偏見を助長しかねない、この問題を考えるうえでの、今日の中国と中国人に対する正しい理解の前提となる2つのポイントを挙げておきたいと思います。

よく「中国人は遵法意識がない」と言われます。この点について、良識ある中国人はそれを否定しません。なぜなら、日本や欧米のような民主的な社会を生きていない彼らにとって、法は常に上から降りかかる災厄のようなもの。極端にいえば、彼らが法を守らないのは生きるため、といえなくもないからです。法の網をかいくぐり、利益を得た人間がむしろ評価される社会です。このような国に生きる人たちを、我々と同じ基準でジャッジしてしまうと、彼らのふるまいの背後にある真意を見間違いがちです。

もうひとつは、少しメンドウな話なのですが、中国が急速に経済力をつけ、ECやモバイル決済、そして配車アプリの普及など、明らかに日本の社会より利便性の進んでいる分野が次々と生まれてきたことから、「最先端のサービスを利用する自分たちがなぜ悪い? むしろ、遅れている日本の方が問題では」という心理が彼らの中に芽生えていることです。

この種の心理は、かつて(欧米社会に対するものとして)日本人にもあった気がしますから、やんわり受け流せばすむ話。とはいえ、国民感情として、言うは安しと感じる方も多いかもしれません。よく「中国人は傲慢だ」と言う人がいますが、あまりに単純固定化して彼らの言動を受けとめるのは思慮が欠けているといわざるを得ません。彼らがそう見えるのは、そうなる背景や理由があって、その道筋をある程度頭に入れておけば、理解できない話ではないことは知っておいたほうがいいでしょう。我々とはあらゆる面で価値観が違うのも、そのためなのです。

この2点をふまえたうえで、考えなければならないのは次のことです。

我々の側に、観光客として彼らを受け入れるうえでの原則やルールがあるかどうか。それを彼らにもわかりやすく説明し、理解させているか。それが問われているのです。

しかし、実際にはそのような原則やルールを日本の社会は用意しているとは思えません。そんなことはまるで考えてもいないかのよう。せいぜい観光客がお金を落としてくれるんだから、日本が得意の「おもてなし」をしましょう…。たいていの場合、これだけです。

つまり、結論を先に言ってしまうと、中国人観光客の周辺で起こる違法問題の根本的な原因は、彼らの側だけにあるのではなく、むしろ我々が彼らを賢く受け入れるためのルールづくりをなおざりにしてきたからだ、というべきなのです。

もう半年以上前のことですが、昨年10月、NHKのクローズアップ現代で、中国人観光客の周辺で起こる違法問題を題材にした番組を放映していました。

「「爆買い」から「爆ツアー」へ。いま中国人観光客が目指すのは、都心の百貨店や家電量販店よりも、地方の観光都市。そこは「無資格ガイド」や「白タク」などが暗躍する、無法地帯となりつつある。番組はその実態を探るために潜入取材。その結果明らかになったのは、日本の旅行業法の不備をついて不当に利益を上げる、闇業者の存在だった。急増する中国人観光客がらみのトラブルと、どう向き合えばいいのか。お隣の韓国で成果を上げる、目からウロコの処方箋も紹介!」(同番組HPより)

この番組の詳しい内容は以下のウエブサイトをみてもらえればわかりますが、NHKの取材陣が潜入したという「中国人爆ツアー」の現場のルポと識者らの解説にはいくつかの興味深い指摘がありました。と同時に、つっこみどころもけっこうあったので、解説します。

潜入!中国人 “爆ツアー”の無法現場(NHKクローズアップ現代+2016/10/23)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3879/

ルポの冒頭の舞台は沖縄です。沖縄はいま全国でいちばん白タク問題で悩んでいるからです。

NHKの中国人スタッフが観光客を装って接触を試みた白タク運転手は20代の中国人。聞けば留学生上がりで、在学中からやっていたといいます。もちろん、彼は通訳案内士の資格もなく、第2種運転免許もありません。明らかな違法営業です。

なぜこんな違法営業がまかり通るかについて、ランドオペレーターのひとりにこう言わせています。「しっかり監督をする組織が、部分がないですから、それが原因で白タクとか不法の民泊に、いま氾濫されている。一番大きいのは税金関係。税金みんな払ってない。資本金も何も必要なく、やり放題。これはおいしい、いっぱいおいしい利益をとるだけ」

そう、そのとおり。監督官庁の存在がまるで不明で、ルールづくりがおざなりにされてきたことが、無法状態の根源だというのです。

こうなってしまった理由として、立教大学の高井典子教授はこう説明します。

「まず前提として、これまでの日本の旅行業界というのは“日本人の、日本人による、日本人のため”の旅行を扱ってきた。

つまり「BtoC」、旅行会社から最終消費者である旅行者、ツーリストに向けてのビジネスに関して旅行業法という法律で管理してきたわけなんですね。

ところが、この数年、急激にアジアの市場が伸びてきていて、これが想定外の成長をしてしまい、いわば真空地帯だった所に新たに登場したのが、今、出てきました、多くの新しいランドオペレーターということになります」。

この指摘は基本的に間違いではないですが、「想定外の成長」「真空地帯」という説明を聞くと、ちょっとつっこみたくなります。というのは、訪日中国人団体客の受け入れは2000年に始まっており、「想定外」などというには時間がたちすぎています。時間は十分あったのに、やるべきことをやってこなかったというべきだからです。「真空地帯」というのも、そうなったのは、急増していくアジア系観光客の受け入れを本来担うべきだった国内業者が、彼らに対する国内の旅行手配や通訳ガイドによる接遇も含めた「おもてなし」をコストに見合わないという理由で投げ出してしまったというのが真相に近い。

とはいえ、言葉も地理もわからない外国人の団体を街に放り出すわけにはいきません。誰かが彼らの接遇を担わなければならなかったのに、国内業者がやろうとしない以上、その役割を買って出たのが在日アジア系の人たちだったのです。彼らは自分たちがそれを担った以上、自分たちなりのやり方でやろうとするのはある意味当然です。観光客の側にとっても、そのほうがわかりやすい。こうなると、日本のビジネス慣行やルールではなく、アジア的なスタイルで運営されていくことになる。それを国内業者は「触らぬ神に祟りなし」と、見てみぬふりをするほかなかった…。これが真相というべきです。

これは日本の家電メーカーがこの20年で中国や韓国の企業に市場を奪われていったケースと基本的に同じだと思います。コストが見合わないという理由で、新しい市場への取り組みを投げ出していった結果という意味で、決して飛躍した話ではありません。中国人観光客の周辺の違法問題を考えるとき、この視点を忘れてはならないと思います。そうでないと、結局、この番組の後半の流れのような、あたりさわりなく聞き流せばすむ議論で終わってしまうからです。

実際、番組では外国人観光客のマナー問題に話を移し、「ルールやマナーを知らない外国人と気持ちのいい関係をどう築いていくのか」と問いかけます。これからの時代は日本人もそれを受け入れていく(乗り越えていく?)気持ちを持たなければという精神論に向かっていきます。

その際、例に挙げられたのが、忍野八海の湧水にコインを投げ入れる中国人観光客の話でした。こういうことがなぜ起こるかについては、以前本ブログで説明していますが、ひとことでいえば、日本に関する知識のない無資格ガイドが案内しているから起こるというべきで、これも監督官庁の野放しが生んだ問題なのです。

〔TBS・Nスタ〕中国人観光客はなぜ民家に侵入して自撮りをするのか?
http://inbound.exblog.jp/26383490/

ところで、番組にひとりの中国人コンサルタントが登場します。この人の存在がなかなか微妙です。彼は白タクや違法民泊問題についても「シェアリング・エコノミーは世界的な流れ。その点では中国の方が進んでいます。日本人の日常生活を味わうのは大きな魅力です」という主旨の話をするのですが、前述したような、最近の中国人によく見られる「むしろ、遅れている日本の方が問題では」という心理がうかがえないではありません。これを聞くと、そういう風に話を丸め込まれてはたまらないと感じる視聴者も多かったのではないでしょうか。なぜなら、違法問題を引き起こしている当の本人が言い訳しているようにも聞こえるからです。

いろいろつっこみを入れましたが、番組のウエブサイトでは、違法問題の背景について以下の解説を試みています。

なぜ、悪質なランドオペレーターを取り締まれないの?

取り締まるための法律がなかったからです。1952年に制定された旅行業法は、消費者となる旅行者を保護するために旅行会社を監督する目的で作られました。旅行会社から依頼を受け、バスやホテル・ガイドを手配するランドオペレーターは、旅行会社との取引になるため、旅行業法の規制の対象外になります。中国人観光客の数はこの3年で5倍近く増加し、ランドオペレーターの需要が急拡大する中、法の目が届きにくい現在の法制度の隙間をつく形で、次々と悪質業者が生まれきたと見られています。番組で取り上げたバス会社やレストランへの「突然キャンセル」だけではなく、旅行客を物販店に連れ回し不当に高額な商品を買わせる「ぼったくりツアー」で大きな利益を手にする業者もあります。さらに昨今、団体ツアーから個人旅行にシフトする中で、小回りのきく移動手段として「白タク」(営業届けをしないまま乗客を車に乗せ、運賃を受け取る車)や格安の宿泊場所として「無届け民泊」を手配するなど、悪質行為を行う業者も出てきています。

国はどのような対策を取ろうとしているの?

今年になって、国はようやくランドオペレーターの実態調査に乗り出し、全国で800以上の業者があることをつきとめました。現在、旅行業法を改正して、悪質なランドオペレーターを管理監督出来る仕組み作りを進めています。しかし、その一方で、他の業種では規制緩和を進めています。たとえば、これまで外国人を有償でガイドするためには「通訳案内士」という国家資格が必要でしたが、今後は「無資格」でもガイドすることを可能にする方針を打ち出しています。また、「民泊」もこれまで禁止されていた住宅街での開設を解禁する方向です。「2020年に訪日外国人観光客4,000万人」という目標を掲げる中、入国を許可するビザの発給要件の緩和も続ける日本。様々な規制緩和の中で、いかに悪質業者の横行を防いでいくようなルールやチェック体制が出来るかが、今後の課題となっています。


このように番組では、こうした違法営業が大手を振るっているにもかかわらず、政府の方針は「通訳ガイドは無資格でも可能」「民泊は住宅街でもOK」「ビザの緩和」「悪質業者を監督できる法改正を検討」と、規制を緩める方向にあることに疑問を呈しています。

そのこと自体はいいのですが、あたりさわりなく終わってしまう精神論や経済効果の話だけではなく、また安易に偏見を助長する結果を生みがちな表層的な実態のルポだけでもない、本質的な議論をしていかなければと感じます。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-25 09:58 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 23日

中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?

一般の日本人が知らないうちに、これほど広範囲に中国人観光客を乗せた「越境白タク」が広がっていた。では、この何が問題だと考えるべきでしょうか。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/

日本の近隣諸国の国際空港に比べ、成田空港から都心部へのアクセスは極端なコスト高といえます。京急やバス会社など民間による格安な交通手段も登場し、LCC客などを中心に利用者は増えていますが、タクシーで2000~3000円も出せば市内に行ける中国をはじめとしたアジアからの観光客にすれば、10倍近いことにまず驚くでしょう。

最近のアジアからの旅行者は、家族や小グループが多い。1台のタクシーでは乗り切れず、ワゴンタイプの車が最適。こうしたなか、海外からスマホアプリで簡単に予約できて、適度な価格帯で利用できるワゴン車が支持されるのは、顧客のニーズに正対するという意味でも、当然のことだったのです。

そもそも成田空港は、日本人が利用する白タクの温床としても知られていました。こんな記事がネットにあります。

[成田空港アクセス2010]白タクの温床!?
https://response.jp/article/2010/01/11/134609.html

記事によると、

成田空港の白タクドライバーの逮捕事例は、年に数回ある程度。地元警察は「空港周辺に白タクが存在することは認めているが、通報や苦情がない限りは警察も動けない」ともらす。

成田空港で客を待つタクシー運転手は彼らを見て「白タクは今も多い。客引き自体が違反なのに堂々とやっていて、我々の仕事にも影響受ける。万が一事故にあっても何の保障もない。最後に損害こうむるのは客」「東京方面への客がほとんどだから、1人乗せれば確実に2万円が入る。終電を逃した人たちを乗せる白タクと違い、空港が動いている時間帯すべてが“営業時間”となる」という。


ここであらためて、なぜ白タクは違法となるのか整理しておきましょう。

ある法律事務所のサイトに、こんな説明があったので紹介します。

「白タク」はなぜ法律で禁止されてきたのか? 解禁のメリットとデメリットとは(シェアしたくなる法律相談所2015年11月20日)
https://lmedia.jp/2015/11/20/68379/

ポイントは以下のとおりです。

・タクシー事業の許可を受けた場合、緑地に白のナンバーを付けて運送するが、許可がない場合、一般の白地ナンバーを付けてタクシー営業をすることになるため、「白タク」という。

・白タクが違法である法令上の根拠は「道路運送法」にある。国土交通大臣の許可なくタクシー事業を行うと、「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」。

・この規制にはメリットとデメリットがある。メリットは、許可制により運転手に高い技能が求められることや過当競争が抑制され、一定のサービスレベルが確保されること。

・一方、規制をなくすことで、タクシー事業が行き届いていない過疎地域でサービスが供給されたり、従前よりも安価にサービスが提供される可能性が高い。

こうしたことから、昨年春、安倍首相は「白タク解禁」の意向を表明。ただし「過疎地での観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大する」との趣旨だといいます。一方、これを受けて、タクシー業界は「安全性に問題がある」とすかさず反対を表明しました。

「ライドシェア」 “白タク合法化”に業界猛反発(テレ朝news2016/03/08)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000069848.html

とはいえ、過疎地の交通問題などを抱える日本では、ライドシェアの推進に対する期待もあります。その代表格のひとり、UberJapan社長はこう訴えます。

Uber、日本でも攻勢へ ライドシェア(相乗り)で地域を変える
髙橋 正巳(Uber Japan 執行役員社長)
https://www.projectdesign.jp/201602/logistics/002681.php

(以下、記事の一部抜粋)「白タクは運転手の素性が不明で、料金も不透明な営業形態で、何かあっても連絡先がわからない。きちんとした保険に入っているかも不明で、大変危険なもの。一方でUberは、ドライバーのバックグラウンド・チェックや評価システムが存在し、リアルタイムで走行データを記録しています。過去に問題があるドライバーは参加できませんし、ユーザーは事前にドライバーを知り、評価が低いときは乗車をやめることもできます。リアルタイムで運行を管理しているので、万が一の事故やクレームにも対応でき、保険も完備しています」

ポイントとなるのは、Uberのようなライドシェアは「白タク」とは別物という主張です。ただし、これは民泊のAirbnbと同様、ホストやドライバーとマッチング会社の関係性や社会的位置付けをどう了解するかによって見方が変わるでしょう。

あるシェアリングエコノミーの研究機関は、次のようなまとめ記事を配信しています。

【まとめ】ライドシェアリング事業は違法の「白タク行為」にあたるのか?
http://sharing-economy-lab.jp/share-ride-illigal-white-taxi

(以下、記事の一部抜粋)「素人ドライバーのマッチングサービスが日本で実現するようになると、地方の人口減少により公共交通機関の確保が難しくなった市町村では、住民にとって買い物や通院など日常を支える移動手段となり、新たな収入を得る場にもなり得ると言われています。また交通手段がないために、これまでたどり着くのが難しかったような場所も観光スポットになる、というような利用方法も期待されています」

こちらのポイントは、「素人ドライバーマッチングサービス」の可能性をどう評価できるかでしょうか。

政府による「白タク解禁」表明も、これをふまえたものだといえるでしょう。確かに、過疎が進む地方では地元住民の足の問題があるのに加え、たとえ魅力的な観光地があっても、交通機関が圧倒的に不足しているため、外国人観光客を送り込みたくても、できない現状があるのですから。

さて、ここらで冒頭の問いに戻りましょう。

中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?

それは、結局、こういうことではないでしょうか。

いま日本国内でライドシェアをめぐる議論や推進に向けた各方面の取り組みが進んでいます。ところが、これらの地道な努力を一切無視して、中国の「越境白タク」は増殖しています。このあまりに無頓着なフライングを見過していては、日本の社会にとって有用なライドシェアの実現をぶち壊しにしてしまうのではないか…。

たとえば、「過疎地での観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大」「人口減少により公共交通機関の確保が難しくなった市町村では、住民にとって買い物や通院など日常を支える移動手段」といった日本のライドシェア推進者たちの主張は、中国配車アプリサービスではほぼ省みられることなく、東京など大都市圏のど真ん中で運用されています。そこに中国客のニーズが集中しているからなのですが、この実態をまったく知らないことにしてまともな議論が進められるものでしょうか。「素人ドライバー」の存在をよしとしてしまえば、本来の日本のライドシェア推進の目的とは異なる中国配車アプリサービスの実態を追認してしまうことになるからです。これでは、何のための? という話になってしまいかねません。

確かに、中国配車アプリでは、大都市圏から地方の観光地への中国客を乗せたドライブサービスも展開しています。リストに載っている観光地はニーズの多い有名観光地ばかりですが、個別のニーズでは、あまり多くの外国人観光客が訪れていない場所へのドライブサービスもありうるでしょう。外国客を地方へ分散させる足となっていることは否定できない面もあります。彼らが市場のニーズに直結したサービスを提供しているのは間違いないのです。

団体から個人へと移行した外国人観光客の移動のニーズを捕捉することはそんなに簡単ではありません。それゆえ、我々は外国客のニーズに即応したサービスを提供できずにいる。しかし、すでに自国で定着したシステムを持つ中国の配車サービスは、日本でこそ優位性を発揮し、好んで利用されているのです。

日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/

すでに触れたように、中国配車アプリのドライバーたちの大半は日本在住の中国人で、営業に必要な第2種運転免許を取得しているとは思えませんが、ライドシェアが解禁されると、、「素人ドライバー」自体は違法でなくなります。タクシー業界からの反発が強いのはそのためですが、現状の「越境白タク」は追認されてしまうことになります。

シェアリングエコノミーの信奉者の中には、こうした違法をものともしない果敢な中国的なビジネス手法を評価する人もいそうですが、それは中国の特殊な国内事情をよく知らないからではないでしょうか。中国で配車サービスが普及した背景には、同国のそれまでの恵まれない交通事情、さらにアプリ会社の猛烈な競争があり、利用のためのインセンティブが強く働いていたことがあります。日本のIT企業がそこまでのサービス合戦に投資ができるとは思えません。そもそも日本と中国で制度や環境が違い、人々のニーズも異なる以上、どんなに優れたサービスでも、その国に合った運用法を見つけるしかないのです。

中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/

問題は、すでに書いたように、このサービスを仕切る事業者は日本国内には存在せず、金銭のやりとりもない(おそらくドライバーへの支払いは、中国の電子決済システムによるのでしょう。ドライバーは日本在住者でありながら、在外華人なので、必要であれば、なんらかの日本円への換金手段があると思われます)。そして、顧客へのドライブサービス活動の実態だけが、日本国内で行われる。この事態を黙認していいかどうか、という判断になるのだと思います。

(参考)
なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?
http://inbound.exblog.jp/26880001/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-23 16:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 22日

中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由

なぜこれほど多くの中国人観光客が(こともあろうか!)日本国内で白タクを利用するようになったのか?

彼らが利用しているのは、「越境EC」ならぬ、「越境白タク」とでも呼ぶべきサービスです。つまり、自国内で普及している配車アプリサービスを、海外の法を無視して勝手に運用しているわけです。それが可能となったのは、中国でいち早く配車アプリが普及し、身近なサービスとして定着したこと。そしてこれが決定的なことですが、サービスの担い手である在外華人が多くの国々で暮らし、ドライバーをしているからです。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/
日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/

日本ではUberに代表されるライドシェアサービスはそれほど普及していませんが、今日の中国では日常的に利用されています。なぜ中国で配車アプリサービスが普及したのか。その理由を理解するために、ここ数年の中国におけるライドシェアの流れについて、以下簡単に説明します。

アメリカ発ライドシェアのマッチングサイト、Uberがサービスを開始したのは2009年。早くも3年後の2012年には、かつて中国2大配車アプリサービスだった「滴滴打車」と「快的打車」が事業を始めています。

配車アプリサービスは、それまでの問題の多かった中国の交通事情にとって待望のサービスでした。

もともと中国のタクシーの評判はよくありませんでしたし、渋滞の原因になることから、大都市への人口集中がどれだけ進んでも、台数はそれほど増えていませんでした。地下鉄などの公共交通機関はこの10年で著しく整備されていきましたが、自家用車の普及が進み、都市生活の移動のスピードが速くなればなるほど、以前のように路線バスに長い時間待たされることなく、すばやく車を乗り継いでいくようなニーズが求められるようになったのです。

この切実さは都市交通に恵まれた日本人には理解しにくいかもしれません。車の台数が増加し、日に日に渋滞が激しくなるばかりの都市に暮らす中国の人たちにとって、モバイル上で自分の位置する場所に最も近いタクシーを捜してコンタクトを取り合うことができるというUberのサービスは画期的なものでした。

それまで中国では、白タクはボッタクリの代名詞で、「黒車」と呼ばれていました。それが飛躍的にイメージチェンジしたのは、配車アプリで身元が割れることから、ドライバーは乗客に対してあくどい商売ができなくなったこと。モバイル決済によって、現金のやりとりをする必要がないという利便性からでした。小遣い稼ぎに自家用車を走らせる「黒車」のドライバーにとっても、きわめて合理的な商売となったのです。こうして利用者とドライバーの両者にとってメリットが大きかったことが、配車アプリが中国で急速に普及した理由といえるでしょう。

中国は国土が広いので、その後、地域ごとに多くの配車アプリ事業を行う企業が生まれたのですが、それも徐々に淘汰されていきます。

その理由は、「滴滴打車」が中国版SNSのWeChat(微信)を運営するテンセント系であり、「快的打車」がアリババ系であることから、それぞれWeChatPay(微信支付)、アリペイ(支付宝)という中国における最強の資本力を持つモバイル決済と連動していることが圧倒的な優位性を持ったからです。

安くて快適な「白タク」配車サービス(Newsweek2015年12月07日)
http://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2015/12/post-5.php

こうして上海や北京などの経済先進都市では、いまどきタクシーの支払いを現金でするのは外国人くらいで、地元の人たちはモバイル決済が普通です。ECの普及は明らかに日本よりも進んでいて、キャッシュレス社会といってもいいほどです。

こうした中国の先進性を伝える話題は、数年前から日本でも報道されていましたが、2015年頃からさらに配車アプリ市場は変化していきます。

まず2015年2月、ライバル関係にあった「滴滴打車」と「快的打車」が経営統合することが発表され、中国の配車アプリは事実上の「滴滴打車」一強支配となります。
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滴滴打車
http://www.xiaojukeji.com

この当時、ぼくのような配車アプリを使えない外国人が上海でタクシーを拾うのは至難の業でした。合併する前の2大中国配車アプリにUberの現地法人としてスタートした「優歩」も加わり、各社は激しいサービス競争を繰り広げていたためです。

ここでいうサービスには、利用者からみた値下げ競争もありましたが、それ以上に有効だったのはドライバーに対するものでした。配車アプリ利用客の場合、運賃とは別にアプリ会社からチップがもらえたからです。こうなると、アプリ予約でない路上の客を乗せたがらなくなるのは当然です。あの頃、どれだけタクシーを乗車拒否されたことか…。

こんなにお得で便利なサービスなのに、外国人には使えないのは困ったことです。もし配車アプリを利用しようとしたら、現地に銀行口座を持ち、WeChatPayかアリペイをスマホで使えるようにしておかなければならないからです。中国出張に年中来るような人ならともかく、スマホを中国仕様に変換するか、中国用のスマホを購入しなければならないなんてメンドウな話です。以下の記事は、中国出張者が利用する方法を紹介しています。

「中国版Uber」の「快的」「滴滴」は中国出張に使えるか試してみた
https://c-study.net/2016/04/didi-dache-taxi/

その後、2016年3月には、白タクのネット配車を政府が容認する方針を示します。かつてのボッタクリの代名詞だった白タクは、配車アプリを使う場合に限り、合法的な存在となったのです。

さらに、同年8月、本家アメリカの配車アプリUberは、「滴滴打車」との激しいサービス合戦による消耗戦に耐えられず、撤退します。

なぜ米Uberは中国市場から事実上の撤退を余儀なくされたのか?(ハーバードレビュー2016年09月06日)
https://hbol.jp/108305

こうして中国で白タク黄金時代が到来したかに思えたのですが、その後、中国政府は意外にも、その流れに逆行するような規制を始めます。

10月、中国政府は配車アプリのドライバーを地元の戸籍を持つ者に限定するなどと言い出したのです。

7.5兆円市場、中国「配車アプリ」に急ブレーキ 壊滅的規制案の行方(フォーブス2016/10/14)
https://forbesjapan.com/articles/detail/13922

この記事には以下のように書かれています。

「上海では41万人の滴滴ドライバーがいるが、上海の戸籍を持つ者は3%以下だ。現在登録されている車両の8割以上は新規制に適合しない」と滴滴の女性広報担当者は語る。配車アプリ市場に詳しいリサーチ会社iiMediaは地元戸籍のドライバーは北京では3.6%、杭州市では10.8%とリポートしている」

もともと大都市圏のタクシーや白タクのドライバーは、地元出身ではなく外地から出稼ぎに来た人たちが多いのは周知のことでした。それなのに、なぜこのような理不尽な規制を始めたのでしょうか。

そして、上海ではその規制の実施を伝える以下のような報道もありました。

上海、「白タク」1100台を摘発(大紀元2016/10/21)
http://www.epochtimes.jp/2016/10/26291.html

※これは根拠のない余談ですが、こうした政府の手のひらを返したような規制は、過熱気味だった配車サービスの適正化のためとも考えられますが、アリババ系の「快的打車」が競争に敗れ、テンセント系の「滴滴打車」の一強となるに至ったいま、双方のバックにいる政治グループの関係性(テンセント系=共産党青年団、アリババ系=習政権)が影響しているのではないかと思わないではありません。

今年3月、上海を訪ねたとき、去年に比べ、タクシーが簡単に拾えるようになっていました。その理由について、上海の友人はこう説明してくれました。

「私はもう以前のように配車アプリはあまり使わなくなった。去年までのサービス合戦が終わり、必ずしも白タクが安いわけではなくなったから。やっぱりタクシーのほうが安心だもの」

要するに、タクシーのドライバーたちはげんきんなもので、アプリ会社からのチップなどのインセンティブがなくなったため、これまでどおり路上の客を乗せるようになったのです。こうして過熱していた白タク市場も以前に比べ、沈静化していったといえます。

とはいえ、結果的に、中国では配車アプリサービスというモバイル決済と連動した交通インフラが定着したことは確かです。合法かどうかなどは気にせず、猛烈な投資合戦が始まったこともそうですし、サービスの担い手と利用者がともにインセンティブを得られるしくみをプロセスの中に巧みに導入していくことで、一気に普及させていったというのは、いかにも中国的といえます。
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この種の便利なインフラを定着させるやり方としては、昨年秋頃から中国各地で始まったシェア自転車サービス「共享単車」もそうです。GPSですべての自転車の位置情報が管理され、市内どこでも乗り降り自由というのですから、これは斬新すぎます。

次回は、このように中国においては優れたサービスである配車アプリをそのまま日本に持ち込まれると、どんな問題が起こるのか考えてみたいと思います。

中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-22 18:32 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2017年 05月 19日

日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?

5月18日の日本テレビの情報番組『エブリィ』が違法営業と報じた中国配車アプリ「皇包車」とはどんなサービスなのでしょうか?

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/

それはひとことでいえば、2009年中国の大ヒット正月映画『非誠勿擾』で多くの中国人が夢見た、ドラマの主人公のように海外をドライバー付きで自由に旅することの実現といえます。

非誠勿擾
http://www.okhotsk.org/news/tyuugoku3.html

これが「皇包車」です。
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皇包車(HI GUIDES)
https://m.huangbaoche.com/app/index.html

このサービスのキャッチコピーはこうです。

「华人导游开车带你玩(中国人ガイドがあなたを乗せてドライブします)」

ここでいう中国人ガイドって誰のこと?

その下に都市名と契約したドライバー数が載っていますが、おそらくこのドライバーこそが「中国人ガイド」というわけでしょう。

東京1659名 台北1643名 大阪1172名 ニューヨーク698名 パリ786名 バリ島101名

このサービスは日本国内のみならず、海外でも展開されているのです。「越境EC」ならぬ、「越境白タク」とでも呼べばいいのでしょうか。

もう少しサービスの中身を知るために、サイトを覗いていきましょう。

これは東京のページです。
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皇包車 東京
https://www.huangbaoche.com/app/lineList.html

このページには、東京発のさまざまなドライブコースが表示されています。たとえば、いちばん頭にあるのが、以下の富士山ドライブコース。1名489人民元とあります。

富士山河口湖→五合目→忍野八海→山中湖温泉 包车一日游,东京往返 ¥489

実は、同様の中国系配車アプリがもうひとつあります。こちらも海外各地で展開していますが、日本のページを見てみましょう。
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DingTAXI日本包車旅遊
https://www.dingtaxi.com/zh_CN/c/japan

トップページには以下のようなコースと料金が記されています。

東京包车一日游(東京1日チャーター)最低 ¥23000JPY
大阪包车一日游(大阪1日チャーター) 最低 ¥25500 JPY
(东京出发) 富士山箱根包车一日游(東京発富士山・箱根1日チャーター) 最低 ¥36000JPY ほか

成田空港から都内へは16500円、羽田からは9500円。一般のタクシーに比べると半額です。

次に「東京1日チャーター」のページをみると、23人のドライバーと自家用車の写真が載っています。それぞれ1日の運行時間と料金に加え、深夜便利用客のニーズに合わせた深夜料金なども書かれています。
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中国客たちは、ドライバーの写真や車種、料金、条件などを比べて選ぶことになります。

それにしても、彼らとアプリ会社との契約はどうなっているのか。一部のドライバーは写真を載せていますが、顔が割れてしまっても大丈夫なのでしょうか…。

琉球新報は、こうした配車アプリを使った白タクサービスが3年前から始まったと報じています。いったい沖縄でどんなことが起きているのか。以下の記事を読むとよくわかります。

中国客も「白タク」利用 沖縄観光、アプリで配車 運転手は県内に100人超(琉球新報2017年5月14日)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-495441.html

台湾人クルーズ客を相手にした白タク行為が沖縄県内で横行する中、中国人客を対象にした「白タク」行為も広がっている。世界各地で事業展開する中国の運転手付き自動車配車サービスアプリを使う手法で、同アプリで手配する運転手は旅客を運送する際に必要な第2種運転免許を持っていない例が多いとみられる。旅客自動車運送事業の許認可を受けないレンタカーや自家用車を使用している。

13日現在、同アプリに登録し、沖縄で操業できる中国人運転手は100人を超える。急増する外国人観光客への多言語対応など、県内の受け入れ態勢の不備が白タクの横行を招いている側面もある。

中国人客は台湾人客と異なり旅行業者を介して白タクを手配するのではなく、スマートフォンがあれば気軽に白タクを手配できるアプリを利用するのが一般的だという。利用者は、飛行機で来沖する中国人客が多くを占める。

県内旅行関係者によると、中国の配車サービスアプリの利用は3年前から始まり、来沖する中国人客の増加につれ、利用件数も急増している。

別の旅行関係者によると、同アプリで販売する4人乗りの車を使った県内1日(10時間)ツアーが平均3万5千円なのに対し、第2種免許を持つ日本人運転手付きのタクシーは平均3万円。「中国語でサービスを提供しているため、日本人運転手の料金よりも高い」という。運転手はサービスを提供する前、乗客とSNSや電話でやりとりし、宿泊先のホテルなどで客を乗せる。

県内旅行関係者は「乗客は配車アプリを通して料金を運転手に支払っているため、現金でのやりとりがなく、(警察などの)摘発は難しい」と現状を述べ「きちんと税金を支払っているわれわれに公平な競争環境を返してほしい」と訴えた。


琉球新報の同記事には、中国客が日本で配車アプリサービスを使えるしくみをわかりやすく図にしてくれています。
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要するに、中国客は日本を訪れる前に、同サービスに対して支払いをすませており、日本でドライバーへ金銭を支払うことはありません。つまり、事業者は日本国内には存在せず、金銭のやりとりもない(おそらくアプリ会社からドライバーへの支払いは、中国の電子決済システムによるのでしょう。ドライバーは日本在住者でありながら、在外華人なので、必要であれば、なんらかの日本円への換金手段があると思われます)。そして、顧客へのドライブサービス活動の実態だけが、日本国内で行われるのです。

問題は、このドライバーたちのほとんどが第2種免許を持っていないであろうこともそうですが、個人営業者として確定申告をしているのかどうか。もしそうでないのであれば、いくら中国人観光客が日本を訪れても、日本にお金が落ちないしくみになっていると言わざるを得ません。

次回以降は、なぜこれほど多くの中国人観光客が日本国内で白タクを利用するようになったのか。中国でライドシェアが一気に普及した背景について説明します。

中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/

(参考)
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-19 16:12 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 19日

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?

昨日(5月18日)、中国のSNS「微信(WeChat)」上に、ひとりの日本に住む中国人と思われる人物から、中国系白タクの利用に注意を促す以下のメッセージが発せられました。
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新闻不报道还不知道国内有个叫“皇包车”的软件(2017-05-18)
http://www.sohu.com/a/141506227_559312

メッセージの中身は、その日夕方5時50分過ぎの日本テレビの情報番組『エブリィ』で放映されたニュースに触れたもので、成田空港や羽田空港に急増している中国の配車アプリ「皇包車」を使った白タクが、今後摘発の対象になると言っています。

さらに、中国で広く普及している同アプリによる配車サービスは、日本では合法ではないこと。万一事故に遭ったとき、補償がないことを知るべきだと呼びかけています。

ぼくはこの番組を観ていないのですが、そのメッセージにはニュース映像のカットが2点載っていて、「白タクは普通の自家用車で違法営業」との文面が見られます。同番組のサイトでは、いまのところ、このニュースはアップされていないようです。

日本テレビ『エブリィ』
http://www.ntv.co.jp/every/

中国系白タクの急増が問題になっていることは、関係者の間では数年前から広く知られていました。NHKのクローズアップ現代でも昨年10月下旬、中国人観光客をめぐるさまざまな問題のひとつとして白タクに触れています(このニュースに関しては、あらためて別の機会に解説します)。

潜入!中国人 “爆ツアー”の無法現場(NHKクローズアップ現代+2016/10/23)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3879/

今年3月、羽田空港から深夜便で上海に行ったのですが、国際ターミナルの周辺にワゴンタイプの白タクと思われる自家用車が何台も中国客を降ろしているのを見ています。
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跋扈する中国系白タク問題にいちばん頭を痛めているのが沖縄県です。今月に入って、沖縄のメディアはこの問題を繰り返し報じています。

沖縄では中国系白タクをめぐるふたつのケースが存在します。ひとつは、台湾からのクルーズ客が上陸観光をする際にレンタカーと第2種運転免許をもたないドライバーをセットで利用するケース。もうひとつが、中国客が配車アプリによる営業許可のない自家用車とドライバーを使うケースで、共通するのはドライバーの多くが県内在住の中国人であることです。

台湾人向け「白タク」中国系運転手がクルーズ客送迎 総合事務局「違法行為」(琉球新法2017年5月1日)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-488190.html
中国客も「白タク」利用 沖縄観光、アプリで配車 運転手は県内に100人超(琉球新報2017年5月14日)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-495441.html

背景には、琉球新報の記事にもあるように「急増する外国人観光客への多言語対応など、県内の受け入れ態勢の不備が白タクの横行を招いている側面」があるわけですが、だからといって営業許可も取らないで、好き勝手に課税逃れの商売をやることは許されません。なんでも「同アプリに登録し、沖縄で操業できる中国人運転手は100人を超える」そうですから、さすがの沖縄メディアも黙認はできないと判断したのでしょう。そのぶん、沖縄県民のドライバーの仕事が奪われてしまっているわけですから。

はたして日本テレビの報道のように、今後成田空港や羽田空港での白タク摘発は始まるのでしょうか?

次回は、この中国系配車サービスアプリについて説明しようと思います。

日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/

(参考)
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/
中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/
なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?
http://inbound.exblog.jp/26880001/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-19 14:33 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 18日

「学生の中国離れ」の背景には何があるんだろう?

先日、あるネットメディアに以下の記事が配信されていました。

タダでも中国には行きません 深刻な学生の中国離れ
一方通行の学生交流、このままでは情報格差が広がるばかり(JBPress2017.5.2)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49861

同記事によると「日本の大学生の中国への関心がどんどん低下している」そうです。

ある大学の学生に「なぜ中国に関心を向けないのか」と問いかけてみたところ、出てくるキーワードは「領土問題」「海洋進出」「反日」など。ある女子学生は、トイレなど衛生面の不安を挙げたといいます。

日本の若者が海外に行かなくなったとよく言われますが、2016年の日本人のパスポート取得数(外務省)を調べてみると、20代は2年連続で増加しているようで、若者の場合、「海外離れ」ではなく「中国離れ」が顕著だといえそうです。記事によると、海外には行きたいが、「中国となると“話は別”」なのだそう。

その理由として「おそらく中国という国に魅力を感じたり、憧れたり尊敬したりする人がいないんじゃないでしょうか。大金を投じてまで行く価値があるとは、周りの友人たちは思っていないのだと思います」という回答があったとか。ここまでぴしゃりと言われてしまうと言葉を返しようがありません。

同記事は最後に「(日中間が)「双方向の交流になっていない」という問題が生まれつつある。このまま行くと、「実際に日本を訪れて日本の理解が進む中国人」と「中国についてウェブ上の情報しか持たない日本人」との間で、情報格差が広まるばかりだ」と危惧しています。

もっとも、日中間の旅行市場のアンバランスについては、若い世代に限った話ではありません。2016年の中国からの訪日旅行者数637万人に対して、日本からの訪中旅行者258万人(中国国家観光局)とダブルスコア以上に離れています。

では、こうなる背景には何があるのか。以下の3つの理由があるとぼくは考えます。

①いまの中国に若い日本人からみた魅力や行ってみたいと思わせるスポットが少ないこと(それにはもろもろの事情がある)
②ネットを中心に中国のネガティブな情報しか見当たらないこと
③ラインやインスタグラムなどの日本人にとっての日常的なSNSが使えないこと

まず①から説明します。

中国は歴史の国で、本来そこに魅力があるはずです。ところが、たとえばエジプトやローマなどを訪ねたときと比べるとわかるのですが、経済発展のおかげで多くの歴史建造物が現代的に修復されたぶん、歴史を強く感じさせるスポットが以前に比べ少なくなった気がします。さらに、都市の現代化の結果、全国どこも一緒で、地域性の違いが見えにくくなっています。これは日本の1970年代に似た建設ラッシュによって都市空間が均一化していく時代にある中国特有の過渡的な状況なのかもしれません。

ところが、同じ時代を通ってきたはずの日本では、外国人からみて現代都市と伝統文化が共存し、そこかしこに散見されるように感じられるといわれるのに、中国はそうではなさそうです。その理由はわりとはっきりしています。文革時に多くの封建的とされた宗教建築や民間風俗、少数民族に関わる施設などを葬り去ってしまったことの影響が大きいのです。いま中国の都市には再建された「老街」があふれていますが、テーマパークのようで、味わいがありません。

さらに、政府の規制が強すぎるせいか、好奇心旺盛で元気いっぱいの若い中国人がたくさん生まれているというのに、現代的なソフトパワーの魅力が発揮されにくい。数年前までは、唯一の自由空間としてネット上で繰り広げられていた、いかにも中国的なポップカルチャーのにぎわいも、現政権以降、文化面に対する統制が強まり、かつての活力が見られなくなっています。

そもそも中国は自らの魅力を海外にPRするのが苦手のようです。以前、北京から来た観光団のセミナーに出席したことがあるのですが、そこで説明されたのは、北京とその郊外の有名スポットの写真をただ順番に見せたありきたりの解説だけ。30年前にはなかったオリンピックスタジアムや劇場、スキー場などを見せたいのかもしれませんが、いまどき海外の誰が魅力を感じることでしょう。彼らには相手のニーズが見えていないのです。

外国人観光客数が伸び悩む中国の観光PRのお寒い中身 (2015年05月14日)
http://inbound.exblog.jp/24475269/

きっと今日の中国人ほど、かくありたい自画像と現実とのギャップに悩んでいる人たちもいないのでしょう。彼らのふるまいを見ていると、よくそう思います。

こうした客観的情勢があるうえ、日本では②「ネットを中心に中国のネガティブな情報しか見当たらない」状況が進んでいます。

確かに、そうなってしまう事情はあると思います。

一般に今日の日本人の「嫌中」「反中」は、2000年代以降に中国人があからさまに見せた「反日」暴動などのふるまいや中国政府によるあまりに非礼な言動に対するリアクションから生まれた国民感情といっていいと思います。よく「日本の書店に行くと、嫌中本ばかりが並んでいる」などとメディアは批判しますが、これも総じていえば、民意の反映といえなくもない。

特に最近の中国政府の台湾や韓国に対する嫌がらせは許しがたいことで、観光を政治利用するような国には行きたくないと思うことを誰が批判できるでしょうか。

だから嫌われる!? 今年の春節も観光を政治の取引に使う中国にうんざり
http://inbound.exblog.jp/26584101/

嫌われる要因をつくり出しているのは、残念ながら、中国側なのです。

よく「日本のメディアが中国のネガティブな報道しかしないせいだ」という人がいます。日本に住む中国人もそう感じている人が多そうです。でも、本当にそうでしょうか。中国における硬直した日本報道をみる限り、とてもじゃないけれど、中国人がそれを言っても始まらないと思いますし、メディアといっても実際はいろいろで、一般に日本の新聞やテレビの「報道」分野においては、むしろ公平中立を重んじるあまり、中国に対するつっこみが甘いと感じさせる内容が多い気がします。

今日の朝日の朝刊にこんな記事がありました。

中国政商の「腐敗暴露」衝撃 習氏右腕の親族ら名指し(朝日新聞2017年5月18日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12942655.html

中国高官の汚職を暴露した在米中国人のインタビュー番組が「中国側の圧力」で突然打ち切りになったそうです。この告発は、今秋の全人代に大きな影響が考えられる以上、政治的な判断があったと考えて不思議はありません。

アメリカでさえ、こういうことが起きる以上、従来どおりの「公平中立」をうたう報道では、読者の多くが疑念をおぼえるのは無理もありませんし、報道の限界は見透かされています。これは世界的に共通する現象なのでしょけれど、多くの人たちが今日の報道を信用していないのです。

問題は、そうした不満があふれ出てくる場として、テレビのバラエティ化した情報番組やネット上の中国ネガティブ情報ばかりがまかり通ってしまう、いまの状況です。「学生の中国離れ」の背景にあるのは、報道のせいというより、こちらの影響でしょう。

率直にいって、相手を貶める話題にしか関心を持てないというのは、哀れというほかありません(同じことは中国人の側にもいえます)。その一方で、多くの日本人にとって今日の中国人のふるまいは得体の知れない理解不能なものにしか見えないであろうことは、ぼくにも理解できます。こういうと、よく友人からも「(中国によく行くくせに)あなたも反中なんですね」と皮肉まじりに言われることがありますが、その種のレッテル貼りは単にその人の中国理解の欠如からくるものなので、やれやれと思うほかありません。人は自分の知らない話をされると、レッテルを貼ることで、無意識のうちに自分を肯定しようとするのでしょう。

日本のネット上の中国ネガティブ情報の増殖は、特に日本の年配世代の心情に起因していると思われます。なんだかんだいって、彼らはそれなりの情報通で、発信者の多数派を占めるからです。彼らはかつて日本の経済力が中国の10倍以上もあった頃(1990年代初め)を知っています。それがこの20数年で追い抜かれ、いまでは日本の2.5倍にまで差を広げられたという現実を、まっすぐ受けとめられない。誰しも自分に落ち度があったと認めたくないからです。そのやむにやまれぬ、自分ではいかんともしがたい不愉快な感情というものは、彼らの立場になれば、理解できなくはないと思います。

ただ彼らはその感情をきちんと言語化したいとは思っていないように見えます。この20数年間に何が起きたのかもよくわかっていたとは思えない。とにかく面白くない。でも、誰にどう文句を言っていいのかわからないので、嫌中本でも読んで、憂さを晴らすしかないわけです。少しは救われた気がするのでしょう。

1980年代にアメリカの自動車産業の労働者たちが日本車をハンマーでぶち壊すという、ある種爽快なパフォーマンスを行ったことがありますが、日本人というのは、そのようなストレートな表現を好まないぶん、ネガティブな感情を内に込めてしまいがちです。

一方、若い世代にすれば、中国政府の容赦のない日本批判を聞いて、自分たちの世代には関係ない時代の、いわれのない中傷と上から目線の言いぶりに反発をおぼえるのも無理はないと思います。

こうした老いも若きもが抱える国民感情が、ネットに蔓延しているのだと思います。

さて、「学生の中国離れ」の3つめの理由として③「ラインやインスタグラムなどの日本人にとっての日常的なSNSが使えないこと」。これは単純すぎるようですが、大きいと思います。いま世界を旅する人たちが当たり前に楽しんでいるエンタメツールであるSNSを使えないのは、世界広しといっても中国だけなのですから(あとは北朝鮮くらい?)。

外国客を呼びたいなら、中国はFacebookやLineを解禁すべきでは!
http://inbound.exblog.jp/25920704/

特に若い世代にとって、日常生活に欠かせないスマホやネットを日本と同じように使えない国があること自体、驚きでしょうし、そんな国に旅行に行こうという気は起こらない気がします。

これだけの幾層もの巨大なハードルがそびえるなか、いまの学生が中国に旅行に行くというのは並大抵のことではなさそうです。わかりやすい動機が見えてこないし、あるとしたら相当の思い入れや覚悟がなければ、わざわざ行くことにはなりそうもない……。

それでも、実際に上海に行ってみようと思う若い子たちがいることも確かです。

今年3月に上海出張に行ったとき、羽田・上海の深夜便を初めて利用したのですが、たまたまそのとき、一緒に乗り合わせたのが、昨年大学を卒業したばかりというふたりのOLさんでした。

帰国後、ふたりの上海“弾丸”旅行の話を聞きました。

彼女らは午前2時発のピーチに乗り、滞在2日間のうち、初日は市内観光と変身写真館でのチャイナドレスのコスプレ撮影、翌日は早朝から上海ディズニーで遊んで、夜便の春秋航空で深夜1時に帰国。羽田からタクシーで自宅に戻り、翌朝出社したそうです。

ふたりは初めての中国旅行で、昨年一緒に台湾に行ったら楽しかったので、今度はディズニーのある上海に行ってみようという話になったとか。それでも、ネット上には中国そのものに対してもそうですが、上海ディズニーに関するネガティブ情報が多く、本当にそうなのだろうか、といぶかしく思っていたそうです。

で、実際に行ってみたら、週末なので東京ディズニーより入場料金は高かったけれど、そんなに混んでないぶん、たくさんのアトラクションに乗れてよかったと話していました。またネットでいうほど極端な環境だとは思えなかったとも。そりゃそうでしょう。

実際、ネット上にはさまざまなネガティブ情報があふれています。たとえば、これ。「上海ディズニーランドはハード面では東京ディズニーランドと遜色ないとしながらも、キャストの態度やサービスは圧倒的な差がある」のだそう。

上海ディズニーと東京ディズニーの最大の違い、それは…=中国報道(サーチナ2017-05-17)
http://news.searchina.net/id/1635848

中国情報専門サイトのサーチナは、以前は中国のポジティブな側面も盛んに発信していたのですが、数年前にYahoo!の記事配信もストップし、最近ではどちらかといえば、世間に迎合的な中国人の日本礼賛話が多い気がします。ネット上ではそのようなどこか卑屈な姿勢にならなければやっていけないのでしょうか。

この記事について、ふたりに聞くと「まあ、そうかもしれないけど…」と苦笑していました。彼女らが上海旅行で体験した楽しいこと、辛かったこと、笑ったことに比べたら、たいしたことには思えないからでしょう。

確かに、上海では地下鉄にトイレがないことが多いし(深夜便利用だと体調管理が大変!)、空気が悪くてマスクが茶色になったとか、困った体験も数々あったそうです。こうした日本では考えられない珍体験も含めて「たった2日では何もわからなかった。おいしいものもほとんど食べられなかったけど、また行ってみたいと思ったし、そういう旅がしたいといつも思っている」とふたりは話しています。

結局のところ、彼女らと話していて思うのは、旅行に行くのに、妙な思い込みや覚悟なんていらないのです。

ぼくは中国の旅行書をつくっている人間なので、「学生の中国離れ」をビジネスの当事者として受けとめざるを得ないところがあります。ですから、前半に書いたような、こうなる客観的な事情をふまえて物事を考えなければならないことを承知しているのですけれど、それとはまったく切り離して考える自由もあります。なにしろ中国は広く、いろいろ面白いことがたくさんあるのは本当です。こればかりは、そう思える人と思えない人がいるのは理解できますから、強制するつもりなどありません。

でも、逆にこれだけネガティブな話題が満載の国に行ってみようというのもありではないか。ネット情報ばかりに感化されてしまうのはシャクじゃないですか?

最近、ぼくがつくった旅行サイトを紹介したいと思います。

ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう
http://border-tourism.jp/

このサイトは中国だけでなく、ロシアやモンゴル、朝鮮半島を含めた北東アジアの旅を誘う内容です。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-18 17:10 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2017年 05月 17日

ハバロフスクから中国に船で渡る「中露国境紀行2017」ツアー募集中

この夏、中ロ国境を越える面白いツアーがあります。1969年には両国の武力衝突まであったアムール川(黒龍江)とウスリー川の交差する極東ロシアのハバロフスクから中国黒龍江省撫遠に船で渡ります。
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↑中国でいちばん早く日が昇る中国最東端のウスリー川の夕日(写真提供:大連金橋国際旅行社)

スケジュールは以下のとおり。
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両国の国境線が画定したのは2004年で、08年にロシア側が実行支配していたアムール川の中州の「黒瞎子島(ヘイシャーズ島)」半分を中国側に引き渡しました。現在、中国側では国境観光の地として空港もでき、観光客が訪れています。

この国境地帯については、以下の昨年末のNHK報道を参照のこと。

ロシア・中国国境 かつての係争地は今(NHK2016.12.14)
http://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2016/12/1214.html

このツアーを企画したのは北海道大学教授で、国境地域研究センターの岩下明裕先生です。

国境地域研究センター
http://borderlands.or.jp/

同研究センターでは、これまでもスペシャルな北東アジアと日本の周辺に位置する国境ツアーを企画してきました。

以下は、ツアー担当者および岩下先生のコメントです。

「今年はいよいよ中露の最大の懸案だった国境地域を訪れます。中露国境紛争の地域へ、いままで入れなかった所へ入ります。

ロシア側の国境、カザケヴィチェボ村を訪問し、中国の対岸烏蘇鎮の国境を遠望します。またこのカザケヴィチェボ村で村の人々とランチをいただきます。地域の博物館訪問も予定しています。国境に生きる人々の暮らしも垣間見える旅になるかと思います。
ロシア領の国境へは「観光ビザ」と「許可証」を取得し入ります。その許可証取得に2ヶ月もかかります。

一方の中国側国境烏蘇鎮へも参ります。中国側は国境画定から観光地として発展してきました。許可証などは不要です。

中露両国の国境越えは、今年は両国の国境となっているアムール川・黒龍江を船で渡り国境を越えます。

国境画定から今日までの中露の歩みは全く違っています。その違いも中露の国のそれぞれ今を写し、面白いものがあります」

岩下先生のコメント

「これはアムール川に最後まで残っていた係争地ヘイシャーズ島の現在をみるもので、今回初めて、ロシア側も中国側もこれまで長年メディアにさえ公開されていなかった場所(昨年HBC北海道放送が初めて入れましたが)に観光で入れる許可をとって実施できる、世界的にもかなり画期的なものです(その分、値段もかなり高いですが)。

係争地だった島が、国境画定の後、どのように安定し、地域の発展とつながっているかを知るためにもっともふさわしい場所への観光というかたちでのご案内となります。

私も同行して解説します」

中国側の関係者に確認したところ、「黒瞎子島は第三国人(中国、ロシア以外)の入境は不可」とのことですが、上記コメントによると、ロシア大使館に申請して、取得に2ヵ月かかるそうです。

料金は33万4000円(2名1室利用)。ツアー定員は15名。募集締切は6月19日まで。

今回のツアーを催行するのは、以下のロシア専門旅行社です。

エムオーツーリスト
http://www.mo-tourist.co.jp
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by sanyo-kansatu | 2017-05-17 16:24 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2017年 05月 12日

日本語の美しさに見合わない雑な外国語併記は残念です

今年の初め、友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

そのブログの記事から転載します。

これは友人が高尾山に出かけたとき、見つけたものです。
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「想い出とゴミは持ち帰ろう」。なんという美しい日本語でしょう。

ところが、中国語は「不把垃圾扔掉,回去吧」。あえて直訳すると「ゴミを投げ捨てるな、立ち去れ」でしょうか。その語気の強さに一瞬ビックリです。

それに、中国語だけでなく、英語もちょっとおかしい気が……。

この看板をつくった方は、そんな命令口調で言うつもりなどなかったでしょう。なにしろ「想い出とゴミは持ち帰ろう」ですから。でも、この中国語表示には「想い出」に当たることばもありません。

このくらいの言い方がいいのではないでしょうか。

「请把垃圾和美好的回忆带回家」(ゴミと美しい想い出を持ち帰りましょう)

ここでは「想い出」より「ゴミ」を先に言っているのは、本来の目的がゴミの持ち帰りだからです。そのほうが中国人にはわかりやすいのです。

日本語の美しさに見合わない、あまりに雑な外国語併記はとても残念です。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-12 13:42 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 04月 27日

「大腸癌」「ゴミ焼き」「蟹と強姦」……。もう翻訳ソフトはやめにしませんか

今年の初め、友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

先日、友人が中国のネットで見つけたある記事を教えてくれました。

なんでも外国人観光客に人気の大阪黒門市場の食堂の中国語メニューが大変なことになっているというんです。街場の食堂のことですから、翻訳会社に頼むようなお金はかけられなかったのでしょうし、良かれと思ってやったことでしょうから、茶化すつもりもなければ、いちゃもんをつけたいわけでもありません。この中国のネットの記事の内容も、悪意というより、単純に面白がっているだけです。そして、記事の書き手の中国人も、こうしたことが起きた理由はgoogle翻訳を利用したことにあると明快に指摘しています。

それをふまえたうえで、いまどんなことが起きているのか。それを知っていただくため、前述のブログの記事の一部を整理してここに転載します。

(前編)中国人もビックリ! 大阪黒門市場の食堂の中国語メニューが大変なことになっていた(2017年4月24日)http://ramei.exblog.jp/25720748/

先週、中国のネットに以下の記事がアップされました。

最近,有家日本餐厅做了一份中文菜单,结果把中国客人全吓跑了!(日本の食堂の中国語のメニューを見て、中国人はビッグリ仰天!)
http://www.gzhphb.com/article/73/737572.html

記事には、大阪の黒門市場で中国人観光客が見かけた食堂のハチャメチャ中国語メニューに笑いが止まらなかったこと。こうなるのは、安易にグーグル翻訳を使っているせいだと指摘しています。
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これがその店のメニューです。記事では、10個以上の間違い中国語の実例を挙げています。いくつか見てみましょう。
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これは「親子丼」ですが、「一碗米饭配上肌肉和鸡蛋(一碗のご飯の上に筋肉と卵)」。「肌肉(筋肉)」と「鶏肉」は発音(jīròu)が同じなので、打ち間違いとも取れますが、これ以外のとてつもない過ちぶりからすると、どうなのでしょう。正しくは「鸡肉蛋盖饭」あるいは「亲子盖饭」です。「丼」は中国語で「おかずでご飯に蓋(ふた)をする」という意味から「盖饭」といいます。
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次は「明太子入りおにぎり」ですが、「经验丰富你的鳕鱼子(経験豊富なあなたのタラコ)」とまったく意味不明です。
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そして「天とじ丼」が「天堂碗翻转」。「天堂」は中国語で「天国」、「翻转」は「反転する」の意味ですが、なぜこうなってしまったのか??? 天丼は「天麸罗(あるいは炸虾)蓋飯」ですが、天ぷらを卵でとじるのをどう表現すればいいか、難しいですね。
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「(とろろいもの)山かけうどん」が「山药你该骄傲(あなたが誇りに思うべき山芋)」? もうわけがわかりません。

(後編)「大腸癌」「ゴミ焼き」「蟹と強姦」……。もう翻訳ソフトはやめにしませんか(2017年4月26日)http://ramei.exblog.jp/25726044/

後半は、前回以上に度肝を抜かれるような中国語が次々に登場します。まずこれ。
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豚肉のホルモン焼きだと思いますが、その中国語がなんと「猪肉大肠癌(豚肉大腸がん)」。エーっ、癌を食べさせられるんですか!? ここまでくると、もう冗談は超えています。
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さらには、沖縄でよく食べるスパム焼き。その中国語が「烤垃圾(ゴミ焼き)」??

なぜこんな間違いが起きたのか、想像がつきます。中国語ではスパムメールは「垃圾邮件」。このスパム(ゴミ)とスパム(SPAM)を、翻訳ソフトが勘違いしたのだと思います。
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ホルモン炒めも無茶苦茶です。「把激素烧掉」の「激素」は確かにホルモンですが、これは女性ホルモンという場合の本当の意味のホルモンで、そもそも造語にすぎない日本語のホルモンを直訳してはいけません。
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次は確かに難しい料理名ですが、「菜の花と蟹の辛子和え」が「有强奸和螃蟹扔芥末」。これもおそろしい中国語です。直訳すると「蟹と強姦する……」??? なんでこんなことになったのか。「西兰花蟹肉芥末沙拉」でいいでしょう。
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そして、これも翻訳ソフト頼みのミスでしょうか。ジャンボ豚串の「ジャンボ」が「伟大(偉大なる)」になっています。中国ではよく「伟大的卫国战争(大祖国戦争)」などというときに使われますが、そんな大それたことばを使うのはおかしいのです。
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最後はこれ。フランクフルトが「猪肉的肠最后关头」。「肠最后关头」とは腸のお尻の出口、焼き鳥でいうぼんじりにも取れますが、そもそもこんな中国語はありません。「香肠」でいいでしょう。豚肉なら「猪肉香肠」。

実は、よく見ると他にもいろいろあったのですが、結局のところ、翻訳ソフトで訳した中国語をそのまま使っているからこんなことが起きてしまうのです。

もうこういうやり方はやめにしませんか?
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by sanyo-kansatu | 2017-04-27 11:47 | “参与観察”日誌 | Comments(3)
2017年 04月 26日

中国少数民族の「悲しくてやりきれない」物語の後日談(顧桃監督『最後のハンダハン』)

先週土曜日に立教大学で中国の独立系映画の顧桃監督作品『最後のハンダハン』の上映会がありました。

この作品は山形国際ドキュメンタリー映画際や中国インディペンデント映画祭などですでに上映されています。

「ハンダハンは、中国・東北地方、大興安嶺(ダーシンアンリン)山脈最大の鹿で、力強く威厳があるが、次第に生息地がなくなりつつある。当地に住むエヴェンキ族は定住を余儀なくされ、ハンダハンとあだ名される維如(ウェイジャ)も狩りが思うようにできず、消えゆくエヴェンキ文化を語りながら、飲んだくれるしかない。ガールフレンドと一緒に南の都会に住んでも、結局酒がやめられずに帰ってくる。『オルグヤ、オルグヤ…』、『雨果(ユィグォ)の休暇』と、エヴェンキの人々を撮り続けてきた顧桃監督3部作の最終章」(同映画祭ウエブサイトによる解説)。

最後のハンダハン/罕达犴/The Last Moose of Aoluguya(中国/2013)
http://www.yidff.jp/2013/cat041/13c062.html

エヴェンキ族というのは、もともとツングース系の狩猟民で、ロシア・シベリアと中国東北部の大興安嶺山脈周辺(内蒙古自治区エヴェンキ族自治旗や黒龍江省)に居住している少数民族です。生業は狩猟とトナカイの放牧で、白樺の木を何本も組んで円錐形にした天幕式住居が伝統的な住まいでした。戦前の京都大学の今西錦司を隊長とする大興安嶺探検隊の調査地にいた狩猟民といえば、おわかりになる人がいるかもしれません。

ところが、現在、彼らは政府によって定住生活を強いられています。これは中国に限った話ではなく、世界中で行われてきたことで、むしろごく最近まで狩猟民の移動生活が残っていたという意味では珍しいと言えるのかも知れません。顧桃監督が最初にこのテーマを扱った作品『オルグヤ、オルグヤ…』(2007)によると、主人公たちが住む中国内蒙古自治区の敖魯古雅(オルグヤ)周辺では、2003年から定住化が進められたそうです。政府は彼らのために現代的な住居を用意しているのですが、狩猟民の血が騒ぐのか、慣れない定住生活の無為の日々ゆえにアルコール中毒になって命を落としたり、かつて暮らした森の野営地に戻ろうとする者が現れます。

この作品は、『オルグヤ、オルグヤ…』(2007)、2作目の『雨果の休暇』(2011)に続く、エヴェンキ族の人たちの煩悶の日々を記録した作品群の後日談ともいえる3作目です。できればこれら前2作も併せて観ることをおすすめします。

というのも、多くの中国独立系ドキュメンタリー作品と同様、この作品も、まるで撮影者がその場にいないかのように、彼らの生活と喜怒哀楽と葛藤と嘆きのことばを延々と長回しのカメラで撮り、その一部を編集するというスタイルを取っています。また中国の辺境に住む狩猟民の文化や政治的環境は広く知られていないこともあり、主人公たちが置かれた状況や言動の意味について理解するには、本作だけでは十分とは思えないからです。

幸いなことに、『オルグヤ、オルグヤ…』については、講談社からDVDが発売されていますし、その他2作については、香港のテレビ局で放映されたものをYOU TUBE上で観ることができます。

『敖魯古雅(オルグヤ、オルグヤ)』
現代中国独立電影 最新非政府系中国映画ドキュメンタリー&フィクションの世界(書籍+DVD3枚)中山大樹著(講談社)
https://www.toho-shoten.co.jp/toho-web/search/detail?id=4062182676&bookType=jp

『雨果の休暇(雨果的假期)』 https://www.youtube.com/watch?v=zu03bEJo_kA
『最後のハンダハン(猂達罕)』 https://www.youtube.com/watch?v=8L9TbT_ZItg
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上映会後のディスカッションでは、顧桃監督がなぜ少数民族をテーマに撮り続けているのか。また彼が最近、仲間と始めた独立系映画の映画祭「内蒙古青年電影周」の話などを聞くことができました。

2016 IMFW 首屆內蒙古青年電影周
https://kknews.cc/entertainment/5n3jr6.html

もともと絵画を勉強していた彼は、最初から「独立映画」を撮ろうなどという考えはなかったそうですが、今回開陳されたエピソードは、自身も満洲族である彼が、少数民族をテーマにドキュメンタリー作品を撮ることになった理由がよくわかるものでした。もともと彼の父親がエヴェンキ族の暮らしを長く取材し、その記録を1980年代に本にまとめていたからです(書名は『猎民生活日記』)。そのとき父親が撮っていた写真をもとに彼はスケッチを描いていたそうです。
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こうした話をふまえると、『最後のハンダハン』に関する以下の監督のことばの真意も理解できます。

「2005年、私は故郷のオロチョンから500キロほど離れた場所に住む、エヴェンキ族の人々を題材にドキュメンタリーを撮り始めた。それは私の父・顧徳清(グー・ドゥーチン)から大きな影響を受けていたためである。父は70年代から写真と文章で北方の少数民族の生活ぶりを記録しており、彼の勇気と辛抱強さに私はずっと励まされてきた。

私は6年の年月をかけ、『オルグヤ、オルグヤ…』(2007)と『雨果(ユィグォ)の休暇』(2011)というオルグヤに暮らすエヴェンキ族についての作品を2本完成させたが、その間に維如(ウェイジャ)のこともたくさん撮影していた。力強さとともに多くの悲しみを抱えた彼の姿は、森に残された孤独な一頭のハンダハンのように見えた。

今から2年前、維如は恋愛をし、三亜にいる夏(シア)先生のために森を離れ、北緯52度のオルグヤから北緯18度の海南島へ移り住んだ。彼に会うために三亜へ行った私は、そのときブログに「森の最後のハンダハンは熱帯雨林に困惑し、吼える力もなく、ただ鳴くばかりだ」と記した。ヤシの木柄の、気取った海南島の服を着た維如がビーチで日光浴をする姿に私は違和感を覚えたが、彼の幸福を邪魔する権利があるでもなし、ただ彼自身が将来を選択するのを見守るしかなかった」(山形国際ドキュメンタリー映画祭ウエブサイトによる解説)。

ディスカッションの最後には、作品にも出てくるエヴェンキ族の口琴の演奏を監督が披露し、和やかにイベントは終わりました。

ただし、ちょっぴり不満もありました。これは文句でも批判でもありませんが、ディスカッションで話された内容の多くが、この種の映画祭が次々に当局によって閉鎖されるなど、中国の独立映画の置かれた厳しい状況、ゆえに日本はもっと彼らを応援すべきであるというような、ある意味「教育的」な話に偏っていたように思えたからです。

個人的には、もっと顧桃監督の作品の世界そのもの、エヴェンキ族と彼らの置かれた状況に対する理解を深めるような話を聞きたかったです。

たとえば、森で暮らすエヴェンキ族とトナカイの関係について。彼らがトナカイを放牧しながら、食肉やミルクをどう取り、調理しているのか。『オルグヤ、オルグヤ…』の中には、仕留めたばかりの野うさぎを切り刻み、食肉にするシーンや包子(肉まん)を食べるシーンがありますが、この肉はトナカイなんだろうか、など。彼らの食文化や森の生態とその変化についてもっと話を聞いてみたかったです。

今回気になって調べたのですが、この作品のタイトルであるハンダハンはヘラジカ(elkあるいはmoose)のことで、作品内によく出てくるトナカイ(reindeer)とは別の生き物です。どこ違うかというと、見た目が違う。ヘラジカの角は文字通りヘラのように平たく横に広がって生えているのに対し、トナカイの角は縦に長く伸びるそうです。この地域にはどちらも棲息していたそうですが、特にヘラジカは密猟によって数が少なくなっています。エヴェンキ族にとって両者の違いはどう理解されているのでしょうか。

もうひとつは、中国における少数民族に対する現地の人たちの見方について。この問題はどの立場からみるかによって見方が変わるものだと思いますが、漢族ではなく、同じ少数民族である満洲族の顧桃監督からみてエヴェンキ族とはどのような存在なのか。個人レベルでは父親の影響から親しみのある存在であったことはわかりますが、一般の中国社会における少数民族同士の関係についてはどうなのか。

主人公のウェイジャはかつての放牧の暮らしを絵に描いていて、それが縁で惹かれた女性と一緒に海南島に旅立つことになったのですが、彼の描く絵に対して顧桃監督はどう感じているのだろうか。技術うんぬんというより、少数民族自身が描く絵画の美術的価値、あるいは社会的価値をどう考えているのか。

なぜこんなことが知りたいと思うかというと、これは偶然のことですが、昨年7月ぼくはこの作品の舞台である中国内蒙古自治区の大興安嶺の近くを訪ねていたからでした。

この地域はエヴェンキ族に限らず、多くの少数民族が入り乱れるようにして居住しています。モンゴル族の住むフルンボイル草原から北に向かうと、草原は徐々に湿原になり、さらには白樺の並木が増え、ついには大森林に変わります。かつては、それぞれの自然環境ごとに異なる少数民族が暮らしていたのです。

今回ぼくは、別の関心からこの地を訪ねていたので、エヴェンキ族が居住する地域には直接足を運んでいません(実をいうと、現地のモンゴル族の知人から、エヴェンキ族の集落に行くことには価値がないと言われたからです。その意味はあとで説明します)。でも、はっきりしていることは、この地域では、彼らだけでなく、それ以外の多くの遊牧の民も、同じように定住生活を強いられていたのです。集落ごとに民族が住み分けされ、ひと目で居住民族がわかるように、政府が建てた家の壁の一部は赤やブルーなどに塗り分けられていました。国家による管理は、このような可視化を強いるものなのです。

その一方で進められていたのは、国家レベルでの草原と森の産業化でした。内蒙古のフルンボイル平原には近代的な工場がいくつも建ち、丘陵の尾根伝いにどこまでも風力発電の巨大なプロペラが並んでいます。都市部に近い草原は、所有と管轄を示す鉄条に区切られていました。また、もともと草原の顔だった羊や馬以外に、白黒まだらの乳牛が草を食んでいます。内蒙古は中国の乳産業の基地となっているからです。

近年、中国政府は国内の辺境地域の観光振興にも力を入れています。産業の乏しい辺境地の地域振興としては、国際的にみても特別なことではありませんが、顧桃監督作品を観ることで、それがもたらす別の意味を考えさせられます。

もともとこの地域は1年の大半は雪に覆われ、零下40度以下になる厳寒の地ですが、近年では6月から8月までの夏の約3ヵ月間、北京や上海などから多くの観光客が訪れるようになっています。メインの目的は内蒙古の草原観光ですが、それ以外のハイライトのひとつが、根河という町にあるエヴェンキ族の文化村とトナカイ牧場を訪ねることです。

実は、この根河こそ、顧桃監督作品に出てくる「敖魯古雅(オルグヤ)」の中国語の地名です。YOU TUBEで探すと、根河のエヴェンキ民族村とトナカイ牧場を訪ねた中国人観光客の姿を撮った映像がいくつも見つかります。

2014內蒙根河敖魯古雅博物館&使鹿部落 https://www.youtube.com/watch?v=SFnX5uFNuRU
2014中華新聞記者協會參觀敖魯古雅鄂溫克使鹿部落景區 https://www.youtube.com/watch?v=yU0mgWuWatw
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根河を訪れた北京や上海からの観光客は、フルンボイル市にあるハイラル空港で民族村を紹介する、いかにも通俗的な観光PR広告を目にすることになります。「馴鹿」はトナカイのこと。エヴェンキ族の住居と老人の写真に「中国極寒の地、根河はあなたを歓迎します-森林の町、トナカイの里、保養の地」というコピーが謳われています。こうした観光化は2000年代から徐々に進められてきました。これは、中国国内でこの20年間かけて拡大していったマスツーリズムにフロンティアが組み込まれていくプロセスだったといえます。つまり、顧桃監督が描いたエヴェンキ族の「悲しくてやりきれない」物語と同時進行で、彼らの周辺ではこうした観光化が起きていたのです。『最後のハンダハン』の冒頭のシーンのエヴェンキ族の定住地で、民族衣装を着た彼らがステージのような場所で歌と踊りを披露していましたが、これは彼らのための祝祭ではなく、観光客に見せるためのものなのです。
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これらを知ってしまった以上、前述したような、いろいろ気になることが出てきます。日本人であるぼくは、属する国家は違うとはいえ、北京や上海からこの地を訪れる漢族にきわめて近い立場にあると思います。その限界をふまえたうえで、エヴェンキ族について何か考えられることがあるとすれば、せめていま現地につくられた文化村の展示品を観ることだけで満足せず、彼らについてもっと知りたいという気持ちになるのです。

でも、一度にすべてを聞き出そうとするのは欲張りというものでしょう。きっとこれから先、なにかの縁で、顧桃監督からそんな話を聞く機会もあるだろうと思います。自分で調べられることもいろいろありそうです。

今回の上映会の後、しばらくぶりに『オルグヤ、オルグヤ…』や『雨果の休暇』を観たのですが、ウェイジャが何度も語る次のことばにあらためて無常を感じざるを得ませんでした。

「俺たちの世代で狩猟文化が消えていく。残念なことだよ」

しかし、彼は私たちの同時代人なのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-26 12:28 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)