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2017年 12月 27日

新しい中国人観光客像の5つの傾向とは?

今年もトップを走る訪日中国人は過去最高の年間700万人を大きく超えそうな勢いだ。訪日外国人の4人に1人を占める彼らの日本旅行の内実は、我々の理解が追いつかないほどの多様化と先進化を見せている。従来どおりの古いイメージだけで見ていると、対応にも間違いを起こしがちだ。日本を訪れた彼らのさまざまな声を聞いてみたい。

12月上旬、中国黒龍江省新世紀国際旅行社日本部の呼海友部長は、映画『男はつらいよ』の舞台である葛飾区柴又にいた。
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↑柴又駅前の寅さん像と今年3月にできたばかりのさくら像

彼は毎年この時期、東京に1週間ほど出張に来て、旅行会社回りの営業をするかたわら、訪日旅行のテーマ探しをするのがもうひとつのミッションになっている。なぜ彼は柴又に視察に訪ねることにしたのだろうか。「お定まりのコースしかない格安弾丸ツアーに飽きた中国の中高年のお客さんを寅さんの町に連れて来たいから」という。

寅さんの自由な生き方は平和な日本の象徴

訪れたのが朝9時と少し早かったせいか、帝釈天の参道は人通りも少なく、まるで映画のセットのようだった。境内の裏手の『邃渓園』と呼ばれる日本庭園で和み、中国には少ない法華経の説話を描いた帝釈堂の木彫りを鑑賞後、寅さん記念館に足を運んだ。
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↑さくらの主人の博が勤めるタコ社長の印刷所のセット

館内には、寅さんの実家である「くるまや」の店内セットやミニチュア模型など、映画を構成する象徴的なシーンが再現されている。中国の人たちは、寅さん映画のどんなところが面白いと思っているのか。

呼部長はこう話す。「寅さんがいつもあちこち旅をし、自由に生きているところです」。

いまの40代以上の中国人にとって寅さんは善良で平和的な日本人のイメージを象徴しているという。この映画が中国で観られるようになったのは1980年代以降だが、それまでの「日本といえば日本兵」という悪のイメージを払拭し、相対化するうえで、この映画が果たした役割は大きかったといえる。

今日、中国の若い世代が日本のアニメ作品『君の名は。』(岐阜飛騨市)や『スラムダンク』(神奈川県鎌倉市)のロケ地を訪ねる話はよく聞くが、中高年の中国人がよく知る日本人は寅さんであり、彼らにとっての「聖地巡礼」でもあるというのだ。

「中国にはこんな静かでのどかな下町はない」と呼部長はいう。「帰国したら、少人数で柴又を訪ねるツアーを企画します。中国にはファンが多いですから」。

新しい中国人観光客像に見られる5つの傾向

中国人の訪日団体旅行が解禁された2000年から10数年、これまで我々が思い描いていた中国人観光客のイメージを大きく変えなければならなくなっている。それは世間でよくいう「モノからコトへ」「買い物から体験に移っている」という話でもあるが、実際には、もっと中身は深化している。

今年、中国人観光客に見られた新しい傾向として以下の5つのポイントが挙げられる。

1.特定の文化的テーマで目的地を選ぶ
2.日本の田舎を楽しみたい
3.女子旅から親子旅へ
4.日本より進んだSNSによる濃密な情報環境の実現
5.肌で感じる日本社会の中国人嫌いに対する不安


それぞれについて、これから解説していく。

旅行体験共有会が個人旅行客の情報収集の場に

まず、「1.特定の文化的テーマで目的地を選ぶ」について。背景にはリピーターの増加にともなう日本に対する理解や関心の深まりがある。彼らがいま日本にどんな関心を持っているかについては個人によって千差万別で、ひと口では言えない。それを知るには、たとえば日本政府観光局(JNTO)や全国の自治体が中国各地で開催している旅行体験共有会がひとつの参考になる。

旅行体験共有会(中国語「旅游体验分享会」)は、普段はゆるいSNSで結ばれた特定の旅行テーマに関するファンたちが集まるオフ会で、個人化の進む中国におけるプロモーションとしてよく採用される手法のひとつだ。そこで集まるファンたちが核になり、SNSを通じて情報や話題が伝播されていくことで、日本国内のまったく無名の場所でさえ、誘客の効果が生まれているのだ。

日本のパワースポットめぐりを楽しむ中国のOLも

11月下旬、上海で開催された中部地方(東海、中央高地、北陸の9県)の旅行体験共有会では、この地域を実際に旅した3名の中国人がスピーカーとして登壇し、50名の参加者たちとの質疑応答が繰り広げられた。
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↑11月に上海で開催された旅行体験共有会「深体験 魅力遊 日本中部旅行分享会」

会場にいた上海在住OLの張麗さん(仮名)によると、面白かったのは『櫻追う』というブロガー名の女性の話。彼女は桜の季節に日本を訪れ、Yahoo!アプリで桜の開花した場所を調べて各地を旅して回ったという。「私のようなOLは自由に休みが取れないから、彼女のように無計画な旅ができるのがうらやましい。この会に来ると、いろんな旅をしている人の話が一度に聞けるから面白い」。

張さん自身も日本旅行のリピーターで、神社が好きという。「中国のお寺と違って、神秘的な雰囲気が魅力。2015年に伊勢神宮でご朱印を手にしたことをきっかけに、今年は諏訪神社と穂高神社に行きました。来年は出雲大社を訪ねる計画です」。

ここで注意したいのは、いま中国で日本のパワースポットめぐりが流行っているという話ではないことだ。個人化した中国人はさまざまな個別の動機と目的を持って日本国内のあらゆる場所に出没しているのである。

LCC深夜便を活用して訪日する上海の若い女性たち

なかでも今日の訪日中国客の主役は若い女性の個人客だ。

ある上海のアパレル企業に勤めるOLは、スカーフのおしゃれな巻き方を身につけるコーディネイターの資格を取るため日本に旅立った。中国にないこの種の日本の資格は、仕事の現場に活きるからだという。このようにレジャーや買い物目的を超えた個人的な趣味や職業上のスキルアップまで含めたさまざまな訪日動機が生まれており、情報収集にも余念のない一定層のリピーターがすでに存在しているのだ。

こうしたOLたちの気軽で多彩な訪日旅行を支えているインフラのひとつが、羽田空港や関西空港への中国からの格安深夜便の増加である。

たとえば、羽田・上海深夜便は、日系のピーチアビエーションに加え、春秋航空や上海航空、吉祥航空が運航している。これらの便は多くの場合、往復ともに深夜便なので、金曜夜に上海を発てば、土曜早朝に羽田に着き、1泊して日曜夜に羽田を発てば、月曜早朝に上海に戻れる。彼女らのアクティブな行動力には驚くばかりだ。
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左:ピーチアビエーションの羽田・上海の深夜便は中国客の利用も多い
右:上海浦東空港から日本に向かう中国人の女子旅

中国の若い世代が思い描く「日本の田舎」とは?

そうはいっても、「余暇を過ごす」ために日本を訪れるという中国人は若い世代ほど多い。最近、彼らに「日本のどこに行きたいか」と聞くと、たいてい最初に出てくる言葉が「日本の田舎」である。

彼らがそう語る真意はどこにあるのか。

中国の若い世代の「日本の田舎」志向を理解するうえで参考になる本がある。1986年生まれの史詩さんというブロガーが書いた日本を個人旅行するためのガイド書『自游日本(自由旅行日本)』(南海出版公司 2015年1月刊)だ。
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↑『自游日本(自由旅行日本)』は16年、17年と3冊目が出ている人気シリーズだ

今日中国では多くの旅行書が刊行されているが、同書が類書と異なるのは、彼女が自分の足で訪ねた日本の名所旧跡や日常食が写真入りで細かく紹介されていること。

一方、買い物に関する情報がほぼないのも特徴といえるだろう。

ここでいう「日常食」とは、日本人がふだん食べているカレーやラーメン、とんかつ、天ぷら定食といった料理のこと。基本的に冷めた食事を好まない中国人らしからず、駅弁と鉄道旅行の情報が詳しいのもユニークだ。

安全だからこそ楽しめる、地方の列車旅

この本の表紙として選ばれた一両きりのローカル線の車両と高く広がる青空の写真から、彼女の世代の想いが読み取れる。林立する高層ビルの中でストレスフルな競争社会を生きるいまの中国人にとって癒しとなるのは、こういう日本の澄み切った青空に違いない。

彼らの「日本の田舎」志向の背景にはもうひとつの理由がありそうだ。前述した張さんは「ローカル列車で若い女性が旅に出られるのも、日本が安全だから。中国で同じような地方の列車の旅に出る勇気は私にはない」。いかにも都会育ちの若者的な発言だが、日本の事情に精通したリピーターたちは日本と中国の社会の違いを知りぬいている。

「女子旅」から「親子旅」へ、子連れ旅行を指南する若い母親ブロガー

最近、都内の繁華街でベビーカーを押して歩く外国人ファミリー客の姿を日常的に見かけるようになった。当然、その中には中国客もいる。「3.女子旅から親子旅へ」についても見ていこう。

個人客として日本を訪れる中国の若い女性たちは一人っ子政策の申し子であり、すでに多くは母親になっている。

彼女たちの指南書として刊行されたのが、子連れ旅行ブロガーの王晶盈さんが書いた『日本东京亲子游(日本東京親子旅行)』(人民邮电出版社2017年1月刊)だ。
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↑『日本东京亲子游(日本東京親子旅行)』は姉妹編の関西版もある

同書は、親子で楽しめる東京の遊園地や動物園、水族館、レストラン、ホテル、キッズ&ベビー用品店、児童書店といった情報が満載だ。

体調が変わりやすい小さな子供を連れて日本を旅行する際の留意点や公共交通機関でのベビーカーの利用方法なども書かれている。

母親ブロガーが、親子旅行の様子を共有

2017年3月、上海で開催された長崎県主催の旅行体験共有会のテーマも「親子旅行」だった。登壇したのは、女性旅ブロガーの柳絮同学さん。

3歳の息子と一緒に長崎県に旅行に出かけた体験の報告だった。彼女は東京や大阪なども子連れで訪ねており、2回目の旅行先が九州。息子を連れて長崎県内の動物園を訪ねたり、天草でイルカをウォッチングしたり、日本旅館に泊まって手作り団子の体験をしたりと親子旅行を満喫したという。

日本は中国に比べ、小さな子連れ旅行をしやすい環境が整っていると彼女はいう。中国にはまだない便利なサービスやインフラも多い。彼女は日本を訪れて知った経験の数々をブログに紹介している。そこには中国人から見た日本の隠れた魅力や発見があふれている。
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左:長崎の日本旅館に泊まった柳絮さんと息子さん
右:上海で開催された、長崎県の旅行体験共有会に参加したみなさん

どの自治体も外国人ファミリー客向けの情報発信やサポートはまだ十分とはいえないが、自らの子連れ体験を発信する中国人がそれを補ってくれているのだ。

行先や目的を超えて行われる、SNS上での濃密な情報交換

これまで以上に、個人旅行化が進む中国人旅行客。彼らがいつどこで何をしているか、実際のところつかみようがない。そんな彼らを相手に、これまでと同様にパンフレットやサイトをつくって多言語化するだけのプロモーション手法では通用しなくなりつつある。微博(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)といったSNSのアカウントを開設しても、ただ一方的に情報を発信するだけでは効果はない。

では、諦めるしかないのだろうか。実はそうではない。日本を訪れた彼らのニーズを捕捉するためのひとつの手がかりを与えてくれるのが、中国の海外渡航者用Wi-Fiルーターレンタルサービス事業者「北京環球友隣科技有限公司(Beijing Ulink Technology Co., Ltd. 、以下ULINK)」が採用しているグループチャットの運営である。

北京環球友隣科技有限公司 http://www.uroaming.com.cn 

同社のサービスがユニークで他社を圧倒しているのは、出発日ごとにまとめられた微信のグループチャットを運営していることだ。

このグループチャットに参加しているのは、たまたま同じ日に中国各地から日本各地へ向かう見ず知らずの個人客同士で、目的地も宿泊先も行動も違う。
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↑誰かが質問を投げると、すぐに誰かが答えてくれる

グループチャット上で飛び交う質問はあらゆる内容に及ぶ。

たとえば「関空にどうやって行くの?」「どのコンビニでアリペイが使える?」「SUICAはどこで買える?」など。なかには「SUICAの余ったお金はどうする?」といった具体的な質問も多い。

確かに、成田や羽田のJRトラベルサービスセンターはいつも外国人観光客で長蛇の列。多くの中国人観光客はSUICAの存在を知っており、もっと簡単に買える方法を知りたいというのだ。

「タビナカ」の中国人への情報提供が可能に

日々交わされるチャットの内容をみていると、いま彼らの周辺で何が起き、何に困っているのか。何をどこで買いたいのかといったことが具体的に見えてくる。

実は似たようなサービスを中国のいくつかのオンライン旅行社も実施しているが、北京環球友隣科技有限公司のグループチャットが優れているのは、本社サイドに管理人がいて、1日100通を超えるチャットの整理を行うかたわら、日本のクライアントからのPR情報の提供も随時行っている。
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↑管理人が随時、日本の小売店や飲食店などの特典情報を伝えている

同社の営業代理店である株式会社日本遊の田熊力也部長は「微博や微信のアカウントを開設している日本企業や自治体は多いが、それだけでは個人客の動向をグリップすることはできない。弊社ではこのグループチャットにお得なクーポン券などの情報をいま日本にいて、まさに観光や買い物をしている中国の個人客に提供できる」と力説する。

このような、不特定対数の同胞同士による「SNSを通じた海外でのリアルタイムの情報交換」の存在を知る日本人は多くはない。「4、日本より進んだSNSによる濃密な情報環境の実現」というのは、そういうことだ。

団体から個人へ、旅行形態の変化とともに発生する様々な課題

いま日本を訪れる中国客の地域的構成をみると、地方在住で団体ツアーでしか日本に旅行する手段のない人たちの比率が年々減少して約4割。残りの6割以上は、これまで見てきたようなツアーに参加する必要のない上海や北京、広州などの経済先進地域の個人客だ。

背景には、今秋中国政府が一部地域で始めた日本を訪れる団体客への渡航制限もある。現地関係者の声をまとめると、対象となっているのは黒龍江省や遼寧省、山東省などだ。これらの省では、まだ団体客が多く、かつての「爆買い」を思い起こさせる購買意欲の高さから、当局は各旅行会社に年間の取扱客数の上限を通達している。これが中国の観光行政の実態の一面である。

こうした事情に加え、より自由に個人で旅行したいという中国人のニーズの高まりから、今後もますます個人化やリピーター化に拍車がかかるだろう。

中国客の個人化は、その一方で在日中国人による「白タク」や違法民泊(※これは中国人に限らない)を増加させた。多くのメディアが報じるとおりである。外国人観光客の増加が日本の社会にもたらすのは経済効果のような良いことばかりではないことを多くの人が知ることになった1年だった。

中国人旅行客の民泊志向が高い理由

なぜこうしたことが起こるのか、中国の旅行関係者に聞いてみた。

前者の「白タク」については、日本の社会が中国に比べてライドシェアが遅れており、リーズナブルで利用しやすい移動手段がないため不便を感じていること。日本のドライバーには中国語が通じないため、同胞が運転する「白タク」のほうが安心なのだ。また、後者の民泊についてはどうだろうか。旅行形態の個人化に伴い、一都市の滞在日数が延びたことで、ホテルより使い勝手のいい民泊に流れがちであることだという。

前述の呼部長(黒龍江省新世紀国際旅行社)も「一カ所に連泊する場合、毎日外食だと飽きてしまうので、キッチンがあると便利。ホテルより民泊を選びたいと考える中国人は多い」と話す。ここ数年の大都市圏のホテル価格の高止まりの影響もあるだろう。これらの問題は来年にも持ち越されることは必至で、日本のインバウンド市場の健全な促進にとって懸念材料となっている。

「中国人は嫌われている!?」

気になる声もある。それは「5、肌で感じる日本社会の中国人嫌いに対する不安」である。

ある中国の旅行関係者は、今年中国人観光客を連れて数回大阪を訪ねたが、数年前に比べて日本人の中国人に対する風当たりの強さにショックを受け「中国人は嫌われている!?」という不安を感じることが増えているという。「私が初めて出張で日本に来たのは2000年だが、当時日本の方は本当に優しかった。道に迷っていると、どこまでも案内してくれる親切な人も多く、お世話になった。だが、最近は商店街を歩いているだけで、中国人に対して厳しい目つきや言葉を浴びせる人が多くなったと感じている」と話す。

彼女はなおも言う。「理由はわからないではない。かつて自分たちより貧しいと思っていた中国人が豪勢に買い物をしているのをみて面白くないのだろう。実は、同じことは中国にもある。不動産開発によって一部の農村の人たちが急に金持ちになって都会に遊びに来るようになったが、このような人たちをマナーが悪いと都会の中国人も嫌っている」。

日本をよく理解した旅行関係者だからこそ、こうした日本社会の変化とその理由に気づいているが、初めて日本を訪れる観光客は彼女と同じようには受けとめないだろう。

別の関係者はさらに気になる指摘をする。最近、関西方面の繁華街で中国客を狙ったスリが増えているというのだ。ある大阪心斎橋にあるビジネスホテルの中国人スタッフは言う。

「中国のお客様が外出する際には必ずスリに注意するよう呼びかけています。東南アジア系の外国人による中国客を狙った事件が増えているからです」。
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↑大阪心斎橋商店街は外国人観光客であふれているが、新たな問題が起きている

こうした実情は日本人には見えにくいが、ホテルやコンビニエンスストアで働く中国人らによる口コミで中国客の間では相当広まっているようだ。

こんな指摘をする中国の旅行関係者もいる。最近、ホテルの退出後に忘れ物が出てこないケースが増えているというのだ。

「あるお客様が日本で購入した高価な美顔器を洗面室に忘れて帰ったことに空港で気がついたのでホテルに連絡したところ、見つからないと言われました。以前なら、日本のホテルはお客様の忘れ物は預かっていたはずで、そんなことはあり得なかった」と話す。

一般に日本のシティホテルでは、ゲストの退出後、ゴミ箱に入っているもの以外はすべて一定期間預かっておくというのが常識だった。原因を特定するのは難しいが、外注の清掃業者へのチェックを怠ってはいないだろうか。そう前述の関係者は指摘する。

これらの好ましくない日本の評判は気がかりである。これまで日本は治安がいい、おもてなしの国だと言われてきたが、さすがにこれだけ外国人観光客が増えると、その評判を貶めるさまざまな問題が起きてくるのも当然かもしれない。

訪日客が抱える「不便解消」のための対応も必要

最後に、もうひとつだけ、新しい中国人観光客を理解するうえで知っておくべきことに触れておきたい。

これは多くの中国の旅行関係者が口を揃えて言うことだ。「多くの日本人は日本を訪れる外国人は日本が好きだから来てくれたと思うかもしれない。でも、必ずしもそうとはいえない。今日中国人は世界中どこにでも海外旅行に出かけており、日本はそのひとつの国に過ぎない。誰もが日本を好きだから来るわけではない」。

これも言われてみれば当然の話かもしれない。日本に来るのは日本好きなリピーターばかりではないのだ。だとすれば、モバイル決済への対応や免税店化促進など、彼らに気持ちよくお金を使ってもらえるような利便性の追求だけでなく、移動を快適化するためにSUICAや公共交通機関の1日乗車券などの入手場所を増やしたり、日本の事情に合ったライドシェアを進めるなど、彼らがいま、日本で不便に感じていることの解決に努めたいものだ。これは中国人観光客相手に限った話ではないが、彼らの声にどれだけ早く気づき、対応できるかが問われる時代になっている。

※やまとごころ特集レポート第70回 2017.12.24
https://www.yamatogokoro.jp/report/20489/
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by sanyo-kansatu | 2017-12-27 06:20 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2017年 12月 24日

中国シェアサイクル路上廃棄問題をマナーと結びつけるのは偏向報道だと思う

昨日、テレビ朝日が以下の中国シェアサイクルの路上廃棄問題を伝えました。
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人気の「シェア自転車」 路上に放置で「歩けない」(テレ朝ニュース2017/12/23)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000117350.html

(一部抜粋)町で気軽に自転車を借りたり、乗り捨てたりできるサービス「シェアサイクル」。日本でも無料通信アプリの「ライン」が、来年前半をめどにこのサービスを始めると発表しました。しかし、発祥の地とされている中国では、マナーの悪さなどが社会問題となってきています。

このニュース、いまごろ?という感じの新鮮味のない情報であることもそうですが、同局のアナウンサーがやたらと中国人の「マナーの悪さ」を強調しているのは大いに疑問です。そもそも「どこでも乗れて乗り捨て自由」という中国のシェアサイクルのルール自体に問題があったというべきで、こうなることは最初からわかっていたと思います。物事の本質を隠し、固定化したイメージを視聴者に植えつけようとする偏向報道といってもいいのではないでしょうか。

そもそも日本ではこんなルール考えられませんが、もし仮にそうなったとしたら、同じことは日本でも起こるでしょう。すでに駅前の駐輪問題が起きているわけですから。

テレ朝のアナウンサーが煽るべきは中国人の「マナー問題」ではなく、なぜこのようなことが起きているのか、その背景を伝えることでしょう。

今月に入ってようやく日本のメディアも、中国ではすでに報道されていたシェアサイクル企業倒産のニュースを報じています。

中国のシェア自転車、廃棄車両の山 破綻や経営悪化続く(朝日新聞2017年12月5日)
https://www.asahi.com/articles/ASKD141DZKD1UHBI00T.html

中国で爆発的にヒットしたシェア自転車の運営が曲がり角を迎えている。一部は日本など海外にも進出を果たすほどだが、現地では過当競争で利益が上がらず、破綻(はたん)や経営悪化が相次ぐ事態に。大手も例外でなく合併が話題に上る。無秩序な駐輪に頭を痛める地方政府が規制を始め利便性も減少。交通の邪魔になる車両は「墓場」と呼ばれる保管場に運び込まれている。

「大変申し訳ない。終始薄氷を踏むようだった」

青色の車体で親しまれた小藍単車(ブルー・ゴー・ゴー)の創業者李剛氏は11月半ば、公開書簡で倒産を表明した。外国進出も果たしたが、サービス開始から1年での退場。競争の厳しさを切々とつづった。

業者の倒産が相次ぐようになったのは、今年半ばからだ。背景には、収益性の構造的な低さがある。

シェア自転車は利用料と利用データの販売という二つの収益源がある。だが利用料は、草分けで大手の摩拝単車(モバイク)でさえ30分0・5元(約8・5円)からと格安。競争力の低い他社では無料をうたうケースもある。そのうえ、データも地方政府の都市計画に使える程度といい、収益力は強くない。経営悪化で、登録時に払った保証金がユーザーに返らない問題が頻発している。

経営の難しさは大手も例外ではない。モバイクともう1社の大手ofoの合併説が根強く流れている。中国イノベーションの旗手として投資を集めた両社が収益を上げる手っ取り早い手段が合併というわけだ。

地方政府による自転車の駐輪規制も影を落とす。急速な広がりと過当競争で自転車が街角にあふれ、通行の妨げになった問題を重く見た。だが、どこでも止められる利便性が普及に大きな役割を果たしたため、規制が厳しければ魅力を損なうことになる。

「環境にいい」という印象に傷がつく事態も起きている。交通の邪魔になる車両を地方政府が回収し、保管場に次々と運び込んでいる。その結果、各地の保管場は、シェア自転車の「墓場」と呼ばれている。
日本でも広がりつつあるシェア自転車。だが一大市場となった中国での持続性には今、大きな疑問が投げかけられている。(北京=福田直之)


実際、シェアサイクル大量放棄問題は、今年夏くらいから中国のネット上では問題提起されていました。日本ではようやく中国のシェアサイクルの先進性が広く話題になり始めていた頃の話です。

こんなネット記事もありました。

厦门出现壮观“共享单车”山丘:ofo亮了(アモイに出現した壮観なシェアサイクルの山)
https://mbd.baidu.com/newspage/data/landingsuper?context=%7B%22nid%22%3A%22news_9780158454380636161%22%7D&n_type=0&p_from=1
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これは中国福建省アモイのシェアサイクル廃棄場をドローンかなにかで撮ったものでしょう。すごいことになっていますね。

ここまでに至る背景には中国人の「マナー問題」があったというより、このシェアサイクル事業のビジネスモデルとともに、中国政府の姿勢(あるいは読みの甘さ)があったというべきでしょう。

その点について、ぼくは以下のForbesJapanの記事で少し解説しています。

日本のシェアサイクルはツーリスト向けに徹するべき?(ForbesJapan2017/11/08)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18335

最初に言っておくと、この記事は「盛況が伝えられる中国のシェアサイクルを日本はどう受けとめればいいだろうか」という観点から書いたものです。

(一部抜粋)では、この画期的な中国式シェアサイクル事業は日本で支持されるだろうか。

まず中国企業はどうやって収益を得ているのか。中国の友人によると「最初に利用者から預かる保証金の金利ビジネスですよ」とのこと。これほど安価でサービスを提供するビジネスが超スピードで拡大したのも、どれだけ利用者を集められるかに事業の成敗がかかっていたからだという。昨今の中国では投資規模が破格だからこそ実現できたわけだが、低金利の日本ではちょっと考えにくい。

さらにいえば、いまの中国の経営者の考え方も強く反映されている。新興企業の経営者は新しい市場が生まれると、いち早く参入し、そこそこのシェアを獲得しておけば、どこかの時点で大企業に買収してもらえると考えているふしがある。そうすれば、事業自体に利益が出ていなくても、売り抜けてひと財産築ける。

一方、資金力のある大企業も、最初は利益度外視で市場拡大にひた走る。そのうち大半の中小企業はふるい落とされ、結局は大手の寡占状態となるから、利益を取るのはそれからでいい……。このように中国のビジネスシーンが展開していくさまは、一時は群雄割拠だった配車アプリも「滴滴出行」が一強になったことからわかるだろう。


要するに、昨今の金余り中国での投資依存のビジネス手法が背景にあること。さらにいえば、世界に自らの先進性を誇りたい中国政府が、今年3月上旬に開かれていた全国人民代表大会の記者会見で「共享単車(シェアサイクル)」の支持を強く表明していたように国家の後押しがあったことも、もし批判されるとすればされるべきでしょう。
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それからもうひとつ、このテレ朝のニュースを見て思ったことがあります。確かに上海などの大都市圏では過剰な自転車の配給によって日常的に路上駐輪問題が起きているのですが、地方のもっと小さな都市ではどうかというと、たとえば吉林省朝鮮自治区延吉では、ようやく10月下旬にシェアサイクルが始まったと聞きます。そのような地方都市も多いのです。ですから、「中国では」とひと括りにすることは偏向報道になりやすいのです。

中国の国土は広く、投資マネーが集まりやすい大都市では問題が起きていますが、地方ではほどほどの感じでシェアサイクルが進んでいく可能性もあります。つまり、ビジュアル的にインパクトの強い、野放図な廃棄自転車問題が中国の大都市で起きているからといってシェアサイクルビジネス自体が頓挫してしまうかというと、そうとはいえないのです。

前述のForbesJapanの記事で、ぼくは以下のように書いています。

今年7月までに中国全土で1600万台もの自転車が街に投入されたというから、街頭での自転車の氾濫を引き起こしていることも確か。だが、中国はかつての「自転車大国」。通りも広く、自転車専用道路もそこそこあり、歩道上に駐輪用スペースも多く設けられている。我々に比べ「小さなことは気にしない」彼らの感覚ではそれほど深刻な問題でもなさそうだ。

我々に比べて「小さなことは気にしない」彼らの感覚とあえて書いたのは、ためしに身近な中国の知人にこの件について尋ねてみてはどうでしょう。おそらく彼らの多くは「でも、どこでもそうではありません。シェアサイクルは便利ですよ」と答えるかもしれません。そして、心の中で「また日本のメディアは中国の悪いところばかり報道している」と感じているに違いないでしょう。

さて、以上のことをふまえたうえで、考えたいのは、日本においてシェアサイクルをどう進めていけばいいかということです。

以下の記事は、日中のシェアサイクルの現状の違いをとてもわかりやすく説明しています。

シェア自転車、なぜ中国は急増、日本は停滞?(サステナブル・ブランド ジャパン2017.11.16)
http://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1189521_1534.html

この記事が指摘する中国シェアサイクル盛況のポイントは「料金と使いやすさ」「SNSで利益度外視のキャンペーン」「自治体が積極的に後押し」「中国の投資ブームと『走りながら考える』メンタリティ」です。

それをふまえ、ぼくが思うのは、日本のシェアサイクルは中国のような住民向けではなく、国内外のツーリスト向けに特化した方が動き出すのではないか、ということです。

今年、中国のシェアサイクル大手が鳴り物入りで日本に参入しましたが、彼らは中国式のビジネス手法を持ち込むだけで、法律も都市環境も異なる日本で、誰のためにサービスを提供しようとしているのかよくわからないところがあります。でも、もし国内の観光地にあるホテルや(場合によっては)民泊先で、中国式のシェアルサイクルが気軽に使えたら、外国人観光客にとってもそうですし、日本人にとっても便利です。要は、訪日外国人の数が世界でいちばん増えているというインバウンド成長大国である日本の事情に合わせたルールづくりをしたうえで、中国式の“いいとこ取り”だけするのが賢いやり方です。

そんな国内外のツーリストをターゲットに絞り、全国の宿泊施設に導入できるシェアサイクルサービスをはじめたのが、ツアーバイク社です。

ツアーバイク
http://www.tourbike.jp/

先日、同社の営業担当者と会う機会があったのですが、彼らは中国大手とは違い、国内の宿泊施設や民泊オーナーを対象にシェアサイクルを提供しようとしています。今後の彼らの動きに注目しています。
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by sanyo-kansatu | 2017-12-24 11:55 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 12月 23日

ハルビン、氷点下30 度の絶景

毎年1月5日から2月下旬まで黒龍江省ハルビンで開催される氷雪祭は、札幌の雪まつり、ケベック(カナダ)のウィンターカーニバルと並び称される世界3大雪祭りのひとつ。この時期、街の至るところで氷や雪の彫刻が並び、国内外の観光客が押し寄せる。日本からわずか3 時間弱のフライトで出合える氷点下の絶景をレポートする。(写真/佐藤憲一)
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↑氷雪大世界のモニュメントは日が暮れるトワイライトの瞬間がいちばん美しい

人生一度は行ってみたい
ハルビン氷雪祭の夜


2月初旬、夕闇が訪れる直前のハルビン氷雪大世界の入口は人ごみでごったがえしていた。

ようやく入場口を抜けると、目の前に現れたのは巨大な氷の建造群だった。色とりどりのLED電飾を埋め込まれた氷のモニュメントが薄暮の空に光彩を放ち、きらめいている。夢うつつに見る桃源郷のようだが、氷の壁に手で触れると指先がちくりと痛い。
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↑氷塊に埋め込まれた電飾の色が刻々と変わり、幻想的な効果を生み出している

札幌の雪まつり、ケベック(カナダ)のウィンターカーニバルと並び称される世界3大雪祭りのひとつとして知られるハルビン氷雪祭が開催されたのは1985年から。年々イベント色が強まり、2008年から松花江の中州である太陽島に特設会場を設置。氷雪祭のメイン施設であるハルビン氷雪大世界が誕生した。毎年1月5日から国内外の、特に雪を見たことのない中国南方からの旅行客が「一生一度は行ってみたい」とハルビンに押し寄せる。
 
氷のモニュメントのうち代表的なのは、摩天楼のような氷雪世紀塔やハルビンらしくタマネギ屋根のロシア風宮殿、北京の天壇など。これらの建築素材となるのが、松花江で切り出される氷塊だ。松花江は例年11月下旬には氷結するので、12月に入るとすぐに1000人以上の労働者が氷塊の切り出しと運搬に従事する。地元紙によると、16万立方メートル分の氷を切り出すという。
 
1時間もあれば会場内は歩いて回れる。子供も楽しめる巨大な氷の滑り台や暖を取れるコーヒーショップ、食堂もある。凍てつく外気は零下30度に限りなく近くても、最初はこの感じなら案外大丈夫だと思った。出発前に買い込んだヒートテックの上下2枚重ねで身を包み、耳あて付き防寒帽をかぶり、ネックウォーマーで顔を覆っていたからだ。
 
だが、日暮れ後は何時間も外にいられるものではないことがだんだんわかってくる。身体の芯がこちこちに硬くこわばってくるような変化を感じてくるのだ。氷雪大世界では視覚的な絶景に魅了されるが、さらに面白いのは、非日常ともいうべき氷点下の低温環境に身を置くことで生じる身体的、心理的な異体験にあるのではないかと思えてくる。これは中国南方の人たちにも共通するだろう。
 
会場を出て市内に戻ると、まず駆け込んだのは火鍋屋である。寒さで縮こまった身と心を温めるにはこれしかない。香辛料の利いた東北風の羊鍋だ。ぐつぐつ煮えた鍋をつついていると、全身の毛穴から汗が吹き出してきた。それがうれしくてたまらない。

店を出ると、熱を取り戻した身体にわざと冷気を当てたくなった。頬がひりひりして気持ちいい。こんな感覚は日本では味わえない。濡れたハンカチを広げると、一瞬で煎餅のようにパリパリに固まったのもおかしかった(……風邪を引く前にホテルに戻ろう)。
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↑ハルビン氷雪大世界の入場券売り場は大混雑。2018年の入場券は330 元 
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↑会場のシンボルのひとつ、ハルビン氷雪世紀塔 
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↑世界遺産の北京の天壇は実物大の迫力 
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↑赤い光に包まれた氷の宮殿の回廊を歩く 
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↑会場をバックに若者たちが記念撮影に興じている 
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↑中国の冬の風物詩、サンザシ(山査子)の水飴も凍りついている 
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↑会場の外に放置された松花江の氷板 
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↑昔ながらの石炭式鍋で煮えたぎる火鍋が食欲を刺激する

寒中水泳とアイスキャンディ
氷の都のおもしろ風物詩


早朝、松花江を訪ねると、遊覧船が氷に閉じ込められていた。昨夏訪ねたときの水辺の光景は様変わりし、川面は厚い氷と雪で覆われ、冬の間だけの臨時アミューズメントパークになっていた。寒風が肌を刺す氷上で、ヨットのように風を切って走るウィンドサーフィンや浮き輪乗りなど、子供たちが大喜びで真冬のレジャーを楽しんでいた。
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↑重量級のおばさんも果敢に氷のプールに飛び込む

元気なのは子供だけではない。氷結した松花江の一角の氷を切り開け、プールにして泳いでいる一群の人たちがいた。その多くはハルビンのご隠居世代である。おかしなことに、老人たちの寒中水泳は有料(30元)の見世物になっている。趣向はこうだ。寒空の下、音楽とともに水着姿のおじさんおばさんが登場。おじさんたちはプロレスラーに扮して殴り合うという爆笑寸劇を始め、次々とプールに落ちていく。一方、おばさんたちはプールを一周しながらダンスを始め、ついには勢いよくプールに飛び込み始めるのだ。泳ぎを見せるのはなぜか女性ばかりなのだが、彼女らは見事25mほどのプールを泳ぎきるのだった。
 
氷の都ハルビンの冬の風物詩はほかにもある。氷雪大世界の会場で、フルーツ串(外気に触れるだけで凍ってしまう)や氷飴と化したサンザシ(山査子)の水飴を中国の若者たちが口にしていたのには驚いた。彼らは冬空の下でアイスキャンディを食べるのも好きなようだ。中央大街にあるクラシックホテル「モデルン」のアイスキャンディは地元で有名で、夏と同様行列ができている。食べ歩きをしている人が大勢いたが、見ているだけで身震いしてしまった。夏はビヤホールとしてにぎわう屋台も、客がいるからだろう、営業を続けていた。尋常ではない寒さにあえて極冷をぶつけるかに見えるこの現象についてハルビンの友人に聞くと「寒いところで冷たいものを食べるなんてめったにできない。中国の南方から来た人たちは寒さという未知の体験を味わいにハルビンに来ている」という。
 
ところで、氷雪祭が開かれるハルビンは、19世紀末にロシア人によって造られた都市だ。この百十数年で松花江沿いの小さな漁村は人口600万人もの大都会へと変貌した。
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↑中央大街の並木にイルミネーションが施され、輝くばかりの美しさ

実をいうと、この氷のイベントは20世紀前半から行われていたことが記録に残っている。当時ハルビンに住んでいたロシア人や日本人も多く、今日と同様、この時期氷の彫刻が街を彩っていたのだ。それをハルビン市が1985年に復活させたのだった。さらにいうと、冬の街頭に氷灯を飾る文化はこの地の先住民族だった満洲族(女真族)の伝統だった。起源は遼金時代にさかのぼるという。ずいぶん現代化してしまったかに見える氷雪祭だが、川の氷を切り出し、彫刻とする文化風習は古来この地で見られたものなのである。
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↑夏は川に浮かんでいた遊覧船が氷の上にちょこんと乗っている 
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↑車に引かれて松花江の氷上を走る浮き輪乗りが大人気 
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↑街角で売られる毛で包まれた防寒帽の最近のトレンドは角付きデザイン? 
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↑太陽島には雪彫刻芸術博覧会もあり、会場内には雪の彫刻が多数並ぶ 
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↑氷上をすいすい走る自転車は決して倒れない構造 
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↑ウィーンにあるヨハン・シュトラウスの像を模したと思われる氷の像 
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↑中央大街の脇道につくられた氷の滑り台
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↑どんなに寒くても屋台は営業しているのがすごい
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by sanyo-kansatu | 2017-12-23 08:34 | 日本人が知らない21世紀の満洲 | Comments(0)
2017年 12月 11日

寅さんが結ぶ日中民間人の縁をあらためて実感しました

週末は朝から柴又帝釈天に行きました。

中国でいつもお世話になっているハルビンの黒龍江省新世紀国際旅行社の呼海友さんを案内することになったのです。

彼は毎年この時期、東京に1週間ほど出張に来て、旅行会社回りをしています。彼はいまとなっては数少ない日本からの黒龍江省や内モンゴル自治区を中心としたツアーの企画と受け入れをやっています。もっとも、いまでは日本を訪れる中国人の数のほうが圧倒的に多いため、訪日旅行の企画のためのテーマ探しがもうひとつの重要なミッションです。

呼さんはクラシック音楽とコーヒーが好きという物静かな人で、東京に来ると、個人的に名曲喫茶やCDショップなどに足を運ぶのを楽しみにしているそうです。ぼくも何度か彼を案内したことがありますが、渋谷の老舗名曲喫茶の『ライオン』が気に入ったそうで、今回もひとりで訪ねたと話していました。

中国のクラシック音楽ファンも気に入ってくれた名曲喫茶ライオン (2014年12月02日)
http://inbound.exblog.jp/23821487/

そんな彼がなぜいま『男はつらいよ』の舞台、柴又に行きたいと言い出したのか?

そう尋ねると、彼は「格安弾丸ツアーに飽きた中国の中高年をぜひ連れて来たい」と言います。彼は中国のネットで事前に柴又についていろいろ下調べしていて、実際に歩いてみたかったのでした。

朝9時に京成金町線の柴又駅の前で待ち合わせました。そこには有名な寅さんの像があるのですが、今年3月、その向かいにさくらさんの像ができました。寅さんの目線の先にさくらさんが立っていて、心配そうに兄の姿を見つめているというものです。なんとも泣かせる構図じゃないですか。こんな銅像、あまりお目にかかったことがありません。
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帝釈天の参道は、少し早めに来たせいか、人通りも少なく、まるで映画のセットのようでした。参道の店はたいてい10時が開店だそうです。呼さんは熱心に写真を撮っています。
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この老舗団子屋の『とらや』は、初期の作品で実際に撮影に使われたそうです。
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帝釈天の門が見えてきました。
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実は、ぼくは初めて柴又に来たのですが、想像していたよりこじんまりとした境内だと感じました。まだそれほど参拝客もおらず(写真は10時過ぎのもの)、とても静謐な雰囲気だったのですが、しばらくすると、突然境内に『男はつらいよ』のテーマソングが流されたのには、ちょっと興ざめというか、苦笑せざるを得ませんでした。
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境内には自動おみくじ機があり、200円を入れると、獅子舞が動き出し、おみくじを取り出してくれます。こういうの、絶対中国人は好きだと思います。
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今回初めて知ったのですが、帝釈天の裏には『邃渓園』と呼ばれる日本庭園があります。入場料400円で、長い床を歩いて庭を四方から眺められます。お茶を飲むスペースもあり、和めました。池には錦鯉がいました。
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この入場料で、帝釈堂の精巧な木彫りはギャラリーを観ることができます。お堂の裏手がガラスで囲われていて、そこに法華経の説話を描いた10枚の木彫りが施されています。中国には石彫りは多いですが、木彫りは珍しいそうです。
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これだけの散策で約1時間ほど。帝釈天から歩いて5分ほどの場所に寅さん記念館があります(入場料500円)。

寅さん記念館
http://www.katsushika-kanko.com/tora/

この記念館は渥美清が亡くなった1996年の翌年にできています。つまり、今年は開業20周年でした。

これはさくらさんの旦那の博さんが勤めるタコ社長の印刷所です。活版印刷機がどーんと置かれています。このように、記念館の中は映画の象徴的なシーンのセットが再現されています。
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これは寅さんの実家である「くるまや」のミニチュア模型。2階のたたみ間にごろんと寝ころがっている寅さんが見えます。
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参道の商店街の再現された町並みです。昭和30年代の設定だそうです。
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笑ったのが、寅さんの全財産を詰めたカバンの展示でした。荷物の中に高島暦がちらっと見えたので、呼さんが言いました。「中国でも高島暦を持っている人がいますよ。あれはよく当たるからと」。「へえ、そうなんだ」。
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そして、歴代マドンナと寅さんの出会いシーンの映像集も楽しいです。たまたま最後の48作目のボタンを押すと、後藤久美子との再会のシーンが出てくるのですが、彼女が「なんで寅さん、こんなところにいるの?」と聞くと、「なんでだろうなあ。俺にもわからないんだ」ととぼけて答えるところで、吹き出してしまいました。そう、彼はいつも自分がなぜそこにいるのかわからないような生き方をしている。まさに“ふーてんの寅”です。
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「中国の人は、寅さん映画のどんなところが面白いと思っているんですか?」。そう呼さんに聞いたところ、彼はこう答えました。

「寅さんがいつもあちこちに旅をし、自由に生きているところです」。

いまの40代以上の中国人にとって寅さんは善良で平和的な日本人のイメージを象徴しています。この映画が中国で観られるようになったのは1980年代以降ですが、それまで中国政府が熱心に自国民に対して叩き込んできた「日本といえば日本兵」という悪のイメージを払拭し、相対化するうえで、この映画が果たした役割は大きかったのです。

呼さんと柴又を訪ね、寅さんが結ぶ日中民間人の縁というものを、あらためて実感しました。

実をいえば、ぼくはこれまで『男はつらいよ』シリーズをちゃんと観たことはほとんどありませんでした。若い頃は特にそうですが、ベタな昭和コメディというイメージが強く、まともに観る気がしなかったからです。渥美清も自分の親よりひとまわり近く年上でしたし、およそ自分とは関係のない時代の話だと感じていたからです。

今回記念館に行って知ったのですが、このシリーズの第一作は昭和44年(1969年)。それから最後の作となった平成7年(1995年)まで48作品が上映されるのですが、当時はまだ昭和を懐かしむには早すぎたのでしょう。その後、2000年代に入って『ALWAYS 三丁目の夕日』をはじめとした昭和レトロブームが起こり、そこで多くの日本人が過去の時間にまどろむことに淫してしまった(とぼくは思います)ことで、日本社会は国際社会の変化に追いつけなくなってしまったわけですが、平成の世がまもなく終わろうとするいま、あらためて中国の中高年以降の人たちが好ましく受けとめてくれたこの物語の価値に、ぼくも気づかされたといえます。

記念館の裏は江戸川の堤防になっていて、天気のいい日は富士山が見えます。残念ながら、ぼくらが行ったときは、雲で富士山が隠れていたのですが、この情報を教えてくれたのは、記念館のボランティアのおじさんでした。「朝方はきれいに見えたんだけどね。お客さんが来たとき、その話をしたろ。だから、確認しに行ったら、見えなくなっていた。残念だったねえ」。
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このボランティアのおじさんはとても人懐っこくて、まるで寅さん映画に出てくる人物のようです。彼はぼくらが記念館に入館する前に富士山の話をしたものだから、展示を観ている間に、わざわざ確認に行ってくれていたのでした。

帰り際、帝釈天のわき道を歩いていると、偶然玉垣に倍賞千恵子さんの名前が彫られているのを見つけてびっくり。
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お昼は参道の老舗の「川千家」で蒲焼のランチ。行き帰りに乗るわずか2駅しかない京成金町線もいい味です。
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「中国にはこんな静かでのどかな下町はない」と呼さんは話しました。「帰国したら、柴又を訪ねるツアーを企画します。中国にはファンの人が多いから」。彼のように、自分の足で歩いてツアをー企画する中国の旅行関係者ほどありがたい存在はありません。「これからも何でも知りたいことは聞いてくださいね」。そう彼に話しました。

いま彼が考えているのは、10名くらいのお客さんを案内するツアーだそうです。実際、柴又には団体バスを停めるような場所はなく(実際には、さくらさんと博さんの披露宴の場所として有名な蒲焼屋『川甚』は日本のバスツアーを受け入れており、駐車スペースがありますが、あくまでも食事のお客さん専用です)、銀座や浅草のように大挙して訪れられては困ります。

記念館の人に聞くと、柴又を訪れる外国人は日本通の台湾人くらいだそうです。呼さんには、いい感じのお客さんを連れて来てほしいと思います。


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by sanyo-kansatu | 2017-12-11 09:31 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 11月 24日

中朝最大の物流ルートの丹東・中朝友誼橋が一時的に閉鎖されるようですが、こういうことはよくあります

今朝、ネットで以下のニュースを知りました。中朝最大の物流ルートである遼寧省丹東市と北朝鮮新義州をつなぐ中朝友誼橋が一時的であるにせよ閉鎖されるようです。

北国境の橋、中国が閉鎖…貿易制限で北に圧力か(読売新聞2017年11月24日)
http://www.yomiuri.co.jp/world/20171123-OYT1T50091.html

(一部抜粋)【瀋陽=中川孝之】中国の政府当局が24日から、中国遼寧省丹東と北朝鮮の新義州を結ぶ鉄橋を一時閉鎖することがわかった。

丹東の税関関係者が本紙に明らかにした。鉄橋は中朝貿易の主要ルート。表向きは補修工事が理由だが、北朝鮮との貿易を一定期間制限することで、北朝鮮に圧力を加える意図があるとみられる。

一時閉鎖されるのは中朝国境の鴨緑江に架かる「中朝友誼ゆうぎ橋」。全長約940メートルの橋上を車道と線路が並行している。税関関係者は「補修工事のため、車道部分を10日間の予定で閉鎖する」と説明した。

丹東は中朝貿易の7割が通過する最大拠点。輸送には船舶も利用されるが、農業用機械や食糧など北朝鮮向け貨物の大半はこの鉄橋を往復するトラックで運ばれており、一時閉鎖は事実上の「貿易制限措置」となる。


これが中朝友誼橋です。どれだけ中朝関係が緊張しているといっても、橋のたともには中国国内や韓国などから来た観光客がくつろいでいます。
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鴨緑江の上流にあたる左が中朝友誼橋で、右にあるのが1909年に造られた「鴨緑江橋梁」で1950年に米軍の爆撃機によって破壊されたため、現在では「鴨緑江断橋」として観光スポットになっています。
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今回の報道で、中国側が中朝友誼橋を一時的に閉鎖したとのことですが、この橋はかなり老朽化しているため(日本時代の昭和18年に造られたので)、この種の閉鎖はよくあります。昨年夏も1ヵ月近く、これは北朝鮮側の事情で車両の通行が停止していました。

この写真は一見怪しげですが、昨年7月末、バスが利用できないため、中国客が歩いて新義州に渡っているときのものです。さすがに中朝関係が悪化した今年は、新義州に遊びに行く中国人は激減したようですが、昨年まではこんな光景も見られたのです。
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実は、これは北朝鮮側から見た中朝友誼橋と丹東の街並みです。
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以前、ForbesJapanの連載で以下の記事を書いたことがあります。

なぜ中国は制裁中でも北朝鮮とつなぐ橋を架けるのか(2017/10/16)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18081

今回の閉鎖もいつまで続くのか、中国側もどこまで本気なのかはわかりません。
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by sanyo-kansatu | 2017-11-24 10:36 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2017年 11月 04日

人手不足の日本より中国や韓国のキャッシュレス化が進んでいる東アジアの現在

昨日、ある郊外のファミレスチェーンで食事をしたところ、たまたまクレジットカードと小銭しか持っていなくて、支払いに困ってしまいました。まさか全国チェーンで、中国など海外にも多数の店舗を出店している店だったので、まさかカードが使えないとは思ってもいませんでした。

若い店員の男性も申し訳なさそうな顔で、でも「本日12時までに現金をお持ちください」と言います。

「エーッ」と思わず声を上げてしまいました。なんでも都内にはカードが使える店舗もあるそうですが、使えない店もあるそうです。なにも自分はキャッシュレス積極派でもなんでもないのですが、やはり1000円ちょっとの支払いはカードが使えるようにしてもらいたいと思いました。

結局、家に歩いて戻って、現金を持って支払うほかありませんでした。

今週、あるファミレスが都内で「現金支払いお断り」、すなはちキャッシュレス専用の店舗を実験的に始めるという報道がありました。背景には、外食産業の深刻な人手不足があります。

「現金支払いお断り」東京で実験店開店へ―ロイヤルHD(朝日新聞2017年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/ASKC15V5KKC1ULFA02T.html

ロイヤルホールディングス(HD、福岡市)は1日、支払いを電子マネーやクレジットカードだけにした実験店を東京都内に6日に開くと発表した。現金の管理を完全になくすなどして従業員の作業効率を上げ、深刻化する人手不足に対応する狙いだ。

東京都中央区に6日、開店するレストラン「GATHERING(ギャザリング) TABLE(テーブル) PANTRY(パントリー)」は、現金のやりとりをなくすため、入り口にレジを置かず、電子マネーのチャージもできない。店舗入り口に「現金お断り」を知らせる表示を出す。

注文はテーブルのタブレット端末から。代金も同じタブレット端末で、電子マネーやクレジットカードを使って支払う。店舗運営の作業が減ることで、約40席の店を3人で運営できるとロイヤルHDはみている。

今後は、この店で得たノウハウを主力の「ロイヤルホスト」の店舗などにも導入していく方針だ。(牛尾梓)


店内にはレジがなく、入り口に「現金お断り」の表示を出すそうです。これをみて、多くの人はどう感じることでしょう。これは便利と思うのか、それとも軽い反発をおぼえるのか…。実験の結果に興味があります。

一方、同じ日の朝刊にこんな記事がありました。

ソウル、無人コンビニ出店 文政権は雇用に力を入れるが…(朝日新聞2017年11月2日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13209688.html

記事によると、日本よりキャッシュレス化が進んでいる韓国では、この種のサービスが増えると、かえって「雇用が減る」との懸念もあるそうです。上海でも無人コンビニができましたが、中国や韓国の方がこの方面では日本よりはるかに進んでいるのに、それが社会にとっていいことなのか。難しいものですね。

こんな記事もありました。

コンビニの人手不足、ロボットが解決 「レジロボ」登場(朝日新聞2016年12月12日)
http://www.asahi.com/articles/ASJDD5FPHJDDPLFA00V.html

記事の中の動画では、買い物籠に購入する商品のバーコードを読み取る装置が付いていて、レジロボに置くと精算してくれます。とても便利そうです。

近所のスーパーでもこれとは少し違いますが、無人レジを導入していて、有人レジの行列が長いときだけ、利用することがあります。でも、正直なところ、個人的には有人レジの方が好きです。便利で早いかどうかより、おばさんが商品を一つずつ打ってくれるのを見てる方がなんとなく安心だからかもしれません。自分はちょっと古い人間だからでしょうか。

こうしたなか、中国からモバイル決済アプリ大手が参入しており、日本の金融機関と組んで、日本人にも使える仕組みを導入しようとしています。

中国式決済、世界で台頭 スマホで簡単、日本開拓着々と(朝日新聞2017年11月3日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13211358.html

中国のネット通販大手阿里巴巴(アリババ)の関連会社が展開する決済システム「支付宝(アリペイ)」がグローバル規模で存在感を発揮している。中国をキャッシュレス社会にした立役者でもあり、世界銀行も注目。貧困層に金融サービスを広げる役目も期待される。日本では訪日中国人向けだが、日本人も使えるよう計画が進む。

「おつりを返す手間が省けるのでとても便利だ」

北京のビジネス街・建国門の屋台で朝食を売る黄さん(30)は、パネルに印刷したQRコードを店頭に並べる。客は、それをスマートフォンのカメラ機能で読み取り、黄さんへの支払い画面で代金を入力し電子決済する。「現金払いは3、4割」という。

中国は現金不要のスマホ決済によるキャッシュレス社会を迎えている。先導したのはアントフィナンシャルサービスグループが提供するアリペイだ。銀行口座などとつながり、支払いは口座から引き落とされる。国内常用者数は5・2億人に達する。

最初はネット通販の支払い用途だった。2011年からコードを読み取る方式により、実店舗での支払いに使えるようにした。紙幣に偽物が多く、最高額が100元(約1720円)と低額なこともあり、人々は喜んでアリペイを選んだ。クレジットカードとは異なり専用の読み取り機も不要だ。スマホのカメラで相手のコードを読み取りさえできれば決済できるので、中小企業から屋台にまで、あっという間に普及した。

10月中旬のワシントン。世界銀行総会のイベントで、キム総裁が繰り返し触れたのがアリペイだ。「中小企業の金融へのアクセスを完璧に変えた」。銀行口座を持てない人に金融サービスを提供する「金融包摂」機能への強い期待感をにじませた。

スマホにアプリを入れればお金を受け取る口座が持てる。これによって銀行口座を持てない人でも少額の融資の受け皿ができる。キム総裁は「経済発展への道を模索している国のためになる」と述べた。

アントが今、力を入れているのが外国展開だ。各国の企業と提携して参入し、アリペイを現地化している。現在、国外は34カ国・地域の3・6億人が使う。最大はインドの2・5億人だ。

井賢棟最高経営責任者(CEO)は「中国での経験を新興国で再現しようと考えた。個人や企業によい環境を提供すれば我々の成長の基礎になる」と話す。

アリペイは実は、すでに日本にも浸透している。まだ中国人しか使えないが、百貨店やコンビニエンスストア、レストランなど約3万店舗が対応。訪日中国人の買い物を促進している。
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10月上旬にあった中国の建国記念日・国慶節の休暇中、東京・日本橋の高島屋は多くの中国人観光客でにぎわっていた。同社は16年2月にアリペイ支払いを導入。「中国と同じ方法で支払えれば便利だと思ってもらえる」と営業推進部の楼ヤテイ主任は話す。

アントによると10月1~7日、日本でのアリペイ取引件数は前年同期比16倍に膨張。平均利用額は2040元で、中国国外の平均に対して1・6倍という。

アリペイは今、中国人観光客向けに整備してきた決済基盤を一気に日本人が使えるようにする計画を進めている。「現在の加盟店開拓は日本人向けの準備でもある」とアント日本法人の陳清揚執行役員。

日本は依然、現金志向が強い点にアントは潜在性を感じている。ただ、JR東日本のICカード「Suica(スイカ)」や中国国内のアリペイと同じようにQRコードを読み取って支払い可能にした楽天ペイなど、ライバルも多い。陳執行役員は「日本は難しい市場だ。今は提携先を探している段階。来春は難しいが、できるだけ早くサービスを始めたい」と話す。(福田直之)


いま東アジアで起きている急激な変化の中で、中韓と日本の社会の対比についていろいろ考えることがあります。日本は彼らの社会に比べ圧倒的な高齢化社会ですし、既存のそれなりに便利な仕組みがいくつも残っており、新しいシステムが普及するまでには時間がかかってしまいます。一方、彼らの社会は日本に比べ若いぶん、新しいシステムが次々に浸透していきますが、そのぶん雇用問題や、地域や階層による格差が生まれます。

日本でもキャッシュレス化はゆっくり進んでいくでしょうけれど、モバイル決済はどうでしょう。少なくとも、いまのところ、カードの方が軽くて財布にも入るし、ポイントもためられるので、さらにカードが使える店を増やしてもらえば、それほど不自由しない気もします。さあ、どうなっていくのか。注視していきましょう。
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by sanyo-kansatu | 2017-11-04 10:16 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 11月 04日

104 ポーランド生まれの木材商人コヴァルスキーの館(ハルビン)

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ハルビン駅から紅博広場に向かって郵政街を左に曲がった先に、かつてポーランド生まれの木材商人コヴァルスキーの建てた洋館がある。彼は東清鉄道建設が始まった1898年にハルビンに来て、木材ビジネスで巨万の富を築いた。ハルビンを代表する豪邸で、新中国建設後は毛沢東をはじめとする領袖たちの黒龍江訪問時の住居兼執務室として使われた。現在、革命領袖視察記念館となっている。(撮影/2014年7月)

※ハルビンには古い洋館がたくさん残っていて、その豪奢さに驚かされます。東京の鳩山御殿などよりずっと高い価値があるはずです。20世紀初頭のハルビンの繁栄ぶりがわかります。

ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう(ハルビン編)
http://border-tourism.jp/haerbin/
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by sanyo-kansatu | 2017-11-04 08:59 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2017年 11月 03日

103 長白山には快適な山岳リゾートホテルがある

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長白山には、2010年頃から国際的な山岳リゾートホテルがいくつもできている。西坡にあるホライズン・リゾート(長白山天域度假酒店)は、館内に温泉施設もあり、快適な滞在が楽しめる。しかも、長白山空港から車で5分、山門まで10分の好ロケーション。(撮影/2012年7月)

※長白山の麓には5つ星の外資系ホテルもいくつかできています。このホテルは中国資本ですが、客室はラグジュアリータイプで申し分ありません。

ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう(長白山編)
http://border-tourism.jp/changbaishan/
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by sanyo-kansatu | 2017-11-03 12:22 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2017年 11月 02日

ついに中国「白タク」の逮捕者が出ちゃいました

ついに中国「白タク」の逮捕者が大阪で出たようです。

「中国式白タク」容疑で逮捕 訪日客狙い、各地で問題化(朝日新聞2017年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/ASKB0541SKB0PTIL011.html

訪日中国人客を相手に無許可でタクシー営業をしたとして、大阪府警は31日、無職唐家栄容疑者(28)=大阪市東成区=ら中国籍の男3人を道路運送法違反(無許可一般旅客自動車運送事業経営)の疑いで逮捕し、発表した。こうした営業は、空港や観光地で訪日外国人客(インバウンド)相手の「中国式白タク」と呼ばれ、各地で問題になっている。

国際捜査課によると、他に逮捕したのは、運転手の男2人。唐容疑者らは国土交通相の許可を得ずに6~9月、7回にわたって関西空港から大阪市内などに観光客計約40人を料金を取って運送した疑いがある。唐容疑者は「来日した友達をホテルや観光地に送っただけで、金はもらっていない」と容疑を否認。運転手2人は「唐容疑者の依頼で報酬をもらい送迎した」と容疑を認めているという。

同課は、唐容疑者らの車が、多くの荷物を持つ訪日客を乗せて関空と大阪市内を何度も行き来するのを確認し、白タクとして営業していると判断したという。さらに、唐容疑者が中国語の配車アプリを介し、訪日客からの依頼を受けて営業していたとみている。アプリ上では、関空から大阪市内の片道料金は約1万3千円に設定され、決済もできる仕組みという。

国交省によると、中国式白タクは訪日客が多い沖縄や東京でも確認されているが、台数などの詳しい実態はわかっていない。正規のタクシーと違って二種免許を持たないため運転技能が担保されていないほか、任意保険への加入がない場合もあるため、事故時の補償が不十分になる恐れがあるという。


先月中旬、沖縄に続き、関西方面の「白タク」問題を産経新聞が報じていましたが、やはりこの日が来ましたか。

奈良公園周辺にも「中国式白タク」進出 主要観光地で横行か、スマホで予約・決済、摘発難しく… (産経WEST2017.10.13)
http://www.sankei.com/west/news/171013/wst1710130046-n1.html

これが全国に波及すると、けっこう大騒ぎになるかも。興味深いのは、彼らを逮捕したのは大阪府警の「国際捜査課」だということ。確かに、通常の捜査では摘発は難しいことから起用されたのでしょう。

先日、ForbesJapanの連載で「彼らを営業車として登録させ、管理する方向に呼び込むか、ツーリスト相手に限りグレーゾーンの存在としてこのまま泳がせるのか。違法営業であるという前提がある限り、今後、日本の社会が中国「白タク」の横行になんらかの制限を加えようとするのは当然だろう」と書いたばかりでしたが、そのとおりになったようです。

野放し「中国人白タク」で見えた、日本の遅れ(ForbesJapan2017/10/26)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18241

ただし、九州に寄航する中国発大型クルーズ客船の中国人闇ガイドのときもそうだったように、一度摘発したところで、ほとぼりが冷めると実態はまったく変わらないという話になるかもしれません。

じゃあ徹底して取り締まるかといっても、実はそんなに簡単ではありません。ひとまずは「日本では違法」という認識を中国人ドライバーたちに周知することにはなったでしょうが、彼らの国では「法の裏をかくのが賢い人間」と考えるのが普通のことです。それは彼らが悪人だからそうなのではなく、民主的な社会ではないから、法に対する認識が違うだけです。中国では法は常に上から突然下りてくる理不尽極まりないものだからです。

やはり、同時に中国客に限らず、日本を訪れる海外の個人客のニーズに応えられる代替サービスを作り出さなければならないと思います。それは簡単なことではありませんが、そこに知恵を働かせなくては。また「彼らを営業車として、登録する方向に呼び込む」ことも考える必要があると思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-11-02 09:29 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 10月 31日

102 長白山北坡の天文峰展望台

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長白山登山のレジャー化は1990年代から始まったが、それが可能となったのは、北坡の天文峰展望台への自動車道路が整備されてから。展望台の下の駐車場に見えるランドクルーザーの台数やドライバーなどすべては吉林省の長白管理委員会が運営管理している。(撮影/2014年7月)

※日本の富士登山道のひとつ「富士スバルライン」が開通したのは1964年。五合目まで車で登れるようになったことが、富士登山客を急増させました。同じことが中国では1990年代に始まったのです。

ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう(長白山編)
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by sanyo-kansatu | 2017-10-31 07:54 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)