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2011年 11月 12日

違法コピー侵害の訴えも黙殺(国際マンガサミット北京大会2011報告 その5)

「チャイナ大躍進」プレゼンテーション全開の中国側報告(それでも民間業者は課題を認識していましたが)に対して、他の東アジア参加国・地域の報告はどのようなものだったのでしょうか。

ひとことでいうと、同じ中華圏でも事情は本土とは大きく違う(本土以外はみんな共通の悩みがある)とういことでしょうか。

以下、各国・地域の現状報告を簡単にまとめてみます。

①韓国
デジタル化により紙媒体のマンガが衰退。海賊版問題でマンガ家の収入が激減。作家と読者の高齢化。創作意欲も減退。韓国政府も解決に向けて取り組み始めている。マンガとドラマのメディアミックスの可能性。マンガ批評と法整備(制度的保護)の必要性を強調。

②香港
マンガ書籍の売上減少。携帯マンガ導入後も、有料になるとアクセス減少。ペーパレスの時代、マンガをどう変革すべきか。

③台湾
台湾マンガにもヒーローが必要。「地球を救うのはいつも日本人ばかり」。台湾人キャラクターをどう生み出すか。貸しマンガ市場(50代以上の女性に人気)が流行する一方、若者が前よりマンガを読まなくなった。マンガ家はどうすれば食べていけるのか。

各国・地域ともマンガ市場がデジタル化の波を大きく受けていることがわかります。日本に比べると市場規模は小さいですが、基本的に日本と状況は共通しています。彼らが中国の報告者と違うのは、作品のあり方について言及していることでしょうか。

さて、いよいよ日本代表の里中満智子さんの報告です。里中さんはまず東日本大震災で日本の出版・印刷関係者が影響を受けたこと。しかし、いち早く復興に向けて取り組んできたことから話を始めました。そのうえで、マンガ業界にとって最も大きな問題は、違法コピー侵害であると主張します。

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演壇に立つ里中満智子さん

2010年2 月、『ワンピース』の違法コピーがネット上に現れたことを例にあげ、里中さんは次のように話しました。「現在もなお違法コピー問題は深刻な状況にある。各国のマンガ関係者は、目先の利益より読者の心を重視すべき。マンガ家の利益を侵害する違法コピー問題に対して出版社からの問い合わせに一切回答しないサイトもある。新しい企画、人材育成など、著作権が支えてきたマンガ文化を守ることこそ正しい社会のあり方です」

発表の場所が違法コピーの本場中国であっただけに、「社会の正しいあり方」という言葉をあえて使ったところに、ぼくは同じ日本人として胸のすくような思いがしましたが、あれれっ。会場はしらー……。里中さんのスピーチの後、その問題が再び取り上げられることはなかったのです。とりわけ中華圏の関係者には、違法コピー問題を討議する姿勢は見られませんでした。

翌日、たまたまホテルでお見かけした里中さんにお話を聞いたところ、「中国で開催されたフォーラムだからこそ、特に違法コピー問題は訴えたかった」と話されていました。ここが中国でさえなければ、もっともすぎるほどまっとうな主張なのに、意図してしらばくれているのか(中国側にすれば、そんなできもしないことを討議しても仕方がない、というのが本音だったでしょう)、暖簾に腕押しの会場に日本関係者のため息がこだましていたのでした。

いやはや、まったく……。ある別の日本関係者はこんなことも話していました。
「当初アニメフェアの会場を偽ディズニーで話題となった石景区遊園地で行うとの中国側の計画があり、日本側が慌ててやめさせた経緯もある。そんなことをしたら、笑いものになってしまうからです。今回のアニメフェアでも海賊版が売られているように、著作権侵害に対する中国側の意識の低さに呆れてしまう」。
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アニメフェア会場では、中国では版権を許可していない宮崎駿の簡体字版書籍(つまりは海賊版)が堂々と販売されていた。マズイという意識が希薄なことに呆れてしまう


里中さんの主張は、『ワンピース』の違法コピー問題の発生後、2010年4月に「週刊少年ジャンプ」の最新号と同社サイトに掲載された以下の文章の内容を踏襲するものといえます。

「読者の皆様にお願いです。ネット上にある不正コピーは、漫画文化、漫画家の権利、そして何より、漫画家の魂を深く傷つけるものです。それらすべて法に触れる行為であるということを、今一度、ご理解ください」

しかし、この話はそれほど単純ではありません。最近では雑誌の発売日より先にネット上にアップされる違法コピーも珍しくないというだけに、その深刻さははかり知れないものの、一方でネットのコピーがマンガ雑誌や単行本の売れゆきにPR効果があるという声もあります。また、すべての違法コピーを取り締まることは不可能である以上、打開策として新作をネットで発表するマンガ家も現れてきているといいます。これではまるで最初からネットで作品を発表するところからキャリアをスタートさせてきた人も多い中国のマンガ家の状況に似てきたというべきか。

日本のマンガ業界がつくり上げたスタンダードが大きく揺らぎ始めています。その流れを加速させているのが、中国をはじめとした新興国であることは間違いありません。
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by sanyo-kansatu | 2011-11-12 10:26 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 11日

中国のマンガ産業と消費の動向(国際マンガサミット北京大会2011報告 その4 )

国際マンガサミット北京大会のフォーラムは、アニメフェアの会場である動漫遊戯城から車で5分くらい離れたプルマン北京ウエストワンダホテル(北京万達鉑爾曼大飯店)で開かれていました。こちらは、参加各国のマンガ関係者と中国側の関係者のみが集まる会合でした。そこでは、どんなことが話し合われたのでしょうか。

10月23日のテーマは「中国および各国のマンガ産業の状況報告」で、ぼくはひとりの聴衆として会場にいました。その日は、日本代表の里中満智子さんのスピーチも予定されています。

公式パンフレットによると、スピーチ内容は以下のとおりです。
「ニューメディアと出版の動向について」 北京出版集団副経理 李清霞
「中国の新しいアニメとマンガの現状」 中国新聞出版科学研究院院長 郝振省
「中国のモバイルマンガの発展モデル」 中国移動携帯閲読雑誌漫画中心総監 李飛宇
「ニューメディアマンガの技術と応用」 北京索引互動情報技術有限公司副経理 管培
「各国アニメ産業報告――韓国、香港、台湾、日本、中国」

まず中国の関係者のスピーチの紹介から始めましょう。彼らは自国のマンガ産業と消費の現状をどう認識しているのでしょうか。それは概ね以下の内容でした。

①2011年の中国のマンガ市場は空前の飛躍
②中国マンガ市場も開放の兆し?
③課題は、創作人材の不足とマンガ誌がまだ少ないこと
④携帯マンガ&アニメ視聴への期待が高いこと

以下、それぞれの内容を簡単に紹介します。

①2011年の中国のマンガ市場は空前の飛躍(だそうです)。

近年マンガ誌が多数創刊。読者も拡大。マンガ誌の地域別市場シェアは、北京8.3、上海5.6、広州13.6、杭州8.0…。広州が中国におけるマンガの最大市場のようです。ただし、市場拡大の速さは杭州が上回っているといいます。また上海人はあまりマンガを読まないんだそうです。

それにしても「空前の飛躍」とは……。そりゃまだ中国のマンガ産業はスタートしたばかりなんだから、数字だけ見れば拡大するのは当然でしょう。中国の公人の話ぶりは、いつもながら質を問うことなく規模の拡大を称揚する「チャイナ大躍進」プレゼンテーション全開!という感じです。話半分に聞き流すのが作法といえるでしょう。

以下、中国の主なマンガ誌を紹介します。中身については、言い出すとキリがないので、ここでは触れません。街中のキオスクや書店で購入できるので、ご覧になってください。
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『漫画世界』(漫画世界雑誌社 広州)
中国ナンバーワンマンガ誌(中国の雑誌総合ランキングでも8位と健闘。これまでにはなかった動きといえます)。

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『知音漫客』(湖北知音傳媒股份有限公司 武漢)
中国で有名な月刊誌『知音(親友)』のマンガ週刊誌

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『幽黙大師(ユーモア・マスター)』(浙江人民美術出版社 杭州)
キャラクターものより中国的お笑いマンガを収めた月刊誌。

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『北京卡通』(北京出版集団)
中国人マンガ家の夏達がデビューした雑誌。連載ものが多い。

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『動漫DVD』(齊鲁電子音像出版社)
アニメ雑誌だが、きわめて怪しい海賊版DVD付。ただし日本アニメの情報量は豊富

②中国マンガ市場も開放の兆し?

最近、日本のマンガを正式な版権を得て出版する事例が増えているようです。たとえば、『新世紀エヴァンゲリオン』(角川書店)の正規版や地方新聞における『ワンピース』(集英社)の連載などが報告されました。そんな当たり前のことをいまさらアピールされても、という感じですが、この国では公的な場で正規版が出るという話題がニュースのように語られているのです。確かに、中国の書店を覗くと、正規版の日本マンガが増えています。

注目すべき動きもあります。読者の支持が生み出す新しい傾向が見られることです。たとえば、日本のイラストレーター、高木直子さんの「ひとり」シリーズの翻訳作品が中国でヒットしています。都市在住の一人っ子世代のハートをつかんだといわれています。他にも、若い日本人のバックパッカー旅行の体験記などが多数翻訳されています(中国ではバックパッカーを「背包客」といい、広い意味での個人旅行、自由旅行を指します)。キーワードは「ひとり」で何かを体験する、旅に出る。その経験を面白おかしく綴った内容に共感が集まっているのです。
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高木直子さんの『第一次一个人旅行』陝西師範大学出版社(『ひとりたび1年生』メディアファクトリー)

中国出身のマンガ家の中にも頭角を現す人材が登場しています。2009年に日本デビューした夏達さんです。彼女は美少女マンガ家として日本でも注目されています。1981年湖南省生まれの彼女は高校時代より創作活動を行い、短篇「成長」(『北京卡通』)でデビュー。卒業後は北京市でプロのマンガ家として活躍。08年に「子不語」の第3話「影」で第5回金竜賞最優秀少女漫画賞を受賞。09年、集英社の『ウルトラジャンプ』で同作の日本語版「誰も知らない~子不語~」を連載し、単行本も出ています。
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美少女マンガ家、夏達さんのビジュアルはネット上に飛び交っています

③課題は、創作人材の不足とマンガ誌がまだ少ないこと(だそうです)。

まあそうでしょうねえ、という感じです。いま中国では全国各地の大学にアニメ学科を新設し、人材育成を進めているようですが、いったいどんな人材を育成し、何を目指しているのか、彼らの説明を聞く限り、よくわからないところがあります。創作の話よりお金と産業振興の話ばかりだからです。

誰が教えているのか、という問題もあります。最近では、あとで触れる東アジア各国・地域の出版不況のせいか、香港や台湾のマンガ家が活動の拠点を本土に移す例もあるようです。立派な仕事場を中国側にあてがわれた彼らは、中国のマンガ人材の育成に尽力することを期待されているのでしょう。

中国政府はアニメ産業の振興についても、外資の導入と合作という改革開放以降の成功モデルを採用しようと考えているようです。なんか違うよなあと思わずにはいられませんが、同じようなことを中国の若いアニメファンにも言われたことがあります。彼は言います。「日本のアニメ産業の現場がそんなに厳しいのなら、日本のマンガ家も中国に住んで作品をつくればいいのに」と。一瞬、呆れて彼の顔をまじまじと見つめ直してしまいました。どうやら彼は真顔でそう言っているようです。確かに、コスト構造や労働条件の問題は産業を支える大切な要件ですが、作品が生まれる場や環境という創作に対する想像力があまりに欠けていると思わざるを得ませんでした。

今回もある中国の報告者が「過去の人間のためより生きている人間に投資したほうがいい」と、日本各地のアニメ博物館を視察した感想を批判的に述べていたことが印象に残りました。ここでも一瞬、「何を言ってんだよ、マンガやアニメをよく知らない世代やお役人が国策と称してアニメ産業の振興を仕切ろうとするから中国ではうまくいかないのではないか」と彼の後頭部をハタいてやりたい気がしましたが、彼にしてみれば、地方振興とワンセットでつくられた日本のアニメ関連施設にどれほどの投資効果があるのか、という観点を言いたいのでしょう。確かにその指摘には一理あるのですが、アニメ産業の発展段階が日中でまったく異なることに彼はどこまで気づいているのか。あらゆる局面で日中双方の思惑がすれ違ってしまう現実をここにも見た思いがしました。

かくのごとく中国では、創作の現場から遠い場所にいる人たちが文化産業の利権を操ろうとしていることが問題なのですが、日本側にも次元は違っても同様の問題がないわけではありません。

④携帯マンガ&アニメ視聴への期待が高い

近年、中国のマンガ市場で携帯マンガ&アニメ視聴への期待が高まっています。その現状と課題について、中国新聞出版科学研究院院長の郝振省さんはこう語りました。

「最近の中国の若者は図書館に行かない。ネットと携帯でのマンガ&アニメ視聴が進行している。2011年6月現在、中国の携帯ネット利用者は3.2億人(同年末には4億人との説も)。しかし課題は山積み。①日韓欧のアニメ作品が市場を席巻し、中国オリジナル作品が少ない。②3Gが普及してきたが、現状における携帯によるマンガ閲覧は無料の場合が多いうえ、コンテンツホルダーに比べ国営企業である通信キャリアが取り分を多く要求するため、マンガ産業の利益モデルが不透明になっている。③今後、マンガ産業はマルチメディア化を進め、正規版の普及に努めるべき」。
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中国移動通信の配信する携帯マンガの広告

2009年5月に杭州の中国移動通信社のビル内にオフィスを構えて起業した携帯マンガ配信サイト運営会社、中国移動携帯閲読雑誌漫画中心総監の李飛宇さんはこう言います。(手機閲読 http://www.CMread.com)。

「共産党は子供に本を読みなさいというが、デジタル化は出版コストの削減に貢献する。携帯書籍とマンガ市場をもっと拡大させたい。ターゲットは18~35歳。『北斗の拳』をネット配信したところ、1000万アクセスを獲得した(正規版かどうか未確認)。ただし、携帯マンガの普及に2つの課題あり。①日欧のように市場が成熟していない。どんな発展モデルがふさわしいか模索中。②携帯端末で読む優位性についてさらなる検討が必要」。
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中国でもスマホによる携帯マンガの視聴が始まっている


中国のネット配信業者の声を聞いていると、国家によるアニメ産業の管理、コンテンツの検閲事情が変わらない以上、せめてインフラの拡大に執心するほかない? そういう側面があるように思えてきます。

最近日本でも電子版マンガ市場の拡大が指摘されていますが、一般に紙の本と競合しにくい1960~80年代の名作が人気といいます。日本ではこうして過去の資産を再活用できますが、中国ではインフラがいくら進歩しても、配信できるコンテンツがどれだけあるのかという問題がつきまといます。結局、ここでも日本をはじめとした海外のマンガやアニメのコンテンツをメインに配信していかざるを得ない現状がありそうですが、その場合、著作権問題をどうクリアするつもりなのか。ここは日本側もしっかり注視し、正規版のネット配信につながるよう積極的に働きかけることが必要だと思います。
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by sanyo-kansatu | 2011-11-11 23:20 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 11日

「まんが王国とっとり」ブースと平井伸治知事(国際マンガサミット北京大会2011報告 その3)

この時期、北京で開かれる国際マンガサミットを視察しようと思ったもうひとつの理由は、次回開催地の鳥取県関係者と北京でお会いする約束をしていたからです。来年の鳥取大会開催に向けた一連の動きをできるかぎり追ってみようと考えていたのです。

鳥取県はアニメフェア会場内の海外展示スペースに、県の観光PRを兼ねた「まんが王国とっとり」ブースを出展していました。
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展示内容は「ゲゲゲの鬼太郎」(水木しげる)「名探偵コナン」(青山剛昌)「遙かな町へ」(谷口ジロー)ら三大巨匠の主要なキャラクターイラストを活用したPRパネルや、米子市出身のイラストレーター、赤井孝美のオリジナルイラスト展示。県の観光PRビデオの放映や県内にある水木しげる記念館と青山剛昌ふるさと館のパンフレット配布、そして鬼太郎の着ぐるみ登場というものでした。

実をいえば、海外展示ブースといっても出展は少なく、鳥取県以外は韓国の出版社などわずかのみ。自社の雑誌を販売しているだけの中国の出版社ブースに比べると鳥取ブースの中身はあったほうだと思います。ただ、来場者にどこまで鳥取をアピールできたかどうかはまた別の話でしょう。中国でやる以上、たとえばこの国の若者に絶大な人気のある『名探偵コナン』を鳥取の顔として全面に打ち出してアピールでもすれば、もっとインパクトがあったと思います。著作権等の制限があるため、県としてもそういうわけにはいかないのでしょうけれど。

さて、10月23日(日)午後2時から「第13回国際マンガサミット鳥取大会」のPRイベントがありました。なんでも同県で毎年開催している中華コスプレ大会に北京在住の参加者がいるそうで、彼らによるパフォーマンスと平井伸治鳥取県知事による県の観光PRという内容です。
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ブースの前にはかなりの人だかり
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平井伸治鳥取県知事

もともとイベントらしいイベントも少ないアニメフェアということもあり、何事だろうと野次馬が大勢集まってきた感じでしたが、平井知事による中国語のスピーチは大いに好感を持たれたようでした。あとで関係者に聞いた話では、平井知事は中国語を習得しているわけではなく、機内で中国語のスピーチ原稿を丸ごと暗記しているのだそうです。なかなか堂に入ったものです。中国に行って人前で何か話すのであれば、「ニイハオ」だけでなく、2~3分のスピーチなら中国語を暗誦して行うべきだと思います。そのほうが絶対ウケます。中国は何ごとも政治で動く国。これは政治的なセンスに関わる話でしょう。

その後、知事一行はマンガサミット会場の閉会式に向かい、国際マンガサミット大会旗が鳥取県に引き継がれることになりました。 

翌日、鳥取県の「まんが王国とっとり」担当者に話を聞きました。

「北京の若者にはマンガ文化の潜在需要があると思います。イベント会場も国営工場跡を現代アート風に再利用しており、中国の経済成長の勢いを感じます。今後、北京市石景山区はアニメ産業を機軸とした産業発展を目指すということで、鳥取県は同区との交流をさらに深めていきたいと考えています」。

ぼくは基本的に中国のアニメ産業振興のあり方に疑問を持っていますが、それはそれとして、今後中国の首都の一行政区と日本の地方自治体の交流がどう進展するのか、注目していきたいと思います。 
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by sanyo-kansatu | 2011-11-11 23:17 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 11日

北京のコミケにようこそ(国際マンガサミット北京大会2011報告 その2 )

今回ぼくが国際マンガサミットを視察しようと思ったのは、数年前に北京で知り合った「80后」(1980年代生まれ)の日本アニメファンの女の子(彼女についてはあとで紹介します)に半年前から誘われていたからです。彼女の友人がアニメフェアの運営に関わっている関係で、事前にプログラムを送ってくれたこともあり、その時期北京に行けるなら訪ねてみようと考えていました。

ぼくの中国とマンガにまつわる関心は以下のようなものです(その背景については、当ブログの同じカテゴリの中で少し書いています)。

①中国における日本マンガやアニメの人気や消費の実態は?
②中国の若い世代の日本マンガ受容の意味をどう考えるか?
③中国市場において日本のコンテンツビジネスの可能性はあるのか?

実は、これらの観点は、2004~08年頃、日本のコンテンツビジネス業界の周辺でさかんに議論されてきたテーマでした。その議論の基調は、海外における日本アニメの受容や人気ぶりに着目し、これだけ支持されているのだから海外進出は可能なはずだ。……ただ、実際にはこうした希望的観測に基づく期待感だけが大いにふくらんだものの、海外における人気や消費の実態、受容の意味、そして何より市場の中身を検討する作業は十分になされてこなかったと思います(国・地域にもよりますが)。

確かに、パリでサンパウロで上海で、コスプレに興じる海外の若者の姿を見たら、みんな日本のアニメに夢中で、ビジネスの可能性は世界に広がっていると多くの日本人が思い込んでしまったのも無理はなかったといえます。

しかし、実際のところ、これもあとで触れますが、日本のアニメ企業の海外売上は2005、6年をピークに減少傾向にあることが知られています。期待値の上昇と売上は反比例していたのが実情なのです。

こうしたことから、さすがに過度な盛り上がりもひと段落。安易な思いつきだけでは思惑どおりにはいかないことを関係者の多くが理解したことまではよかったと思いますが、時代は動いています。電子書籍やスマートフォンの普及によって市場環境が変わりつつあるなか、あらためてなぜうまくいかないのかも含め、中国の事情を冷静に探っていくことは必要だと思います。
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さて、10月22日の朝、ぼくは北京の彼女と待ち合わせ、北京動漫遊戯場を訪ねました。会場はさすがに首都鉄鋼工場跡の巨大な廃墟空間を再利用しているだけあり、迫力満点でした。これだけ意味ありげな舞台が用意された中で、北京のアニメ関係者はどんなサプライズを見せてくれるのか。まずは会場の様子をお見せしましょう。

コミケの風景
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コスプレ大会
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出版社ブース。携帯マンガのブース(中国移動通信)も
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来場者たち
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皆さん、どうお感じになったでしょうか。北京のアニメ文化の盛り上がりもなかなかのものではないか。……はたしてそうなのでしょうか。ぼくの正直な感想は、一見にぎわっているようだけど、ずいぶん退屈な世界だな、というものでした。来場しているのは、いわゆる「80后」「90后」の子たちが大半です。男女比率は四六くらいかな。コスプレ率も高く、みんな思い思いのキャラクターに扮して会場を闊歩しています。みんな楽しそうといえば楽しそうなんだけど。これで本当に満足なのかな?

確かに、上海などに比べるともともと北京の若者はサエない印象があります。でも、それは仕方がないというか、別にいいじゃない。そこがかわいいともいえるのだから。ただコミケというのに、アニメ関連グッズやコスプレ関係の出店がほとんどで、同人誌の売買はあまり見られません。もちろん、いまの時代、作品を印刷製本するよりネットにのせるほうが一般的なのでしょうが、せっかく与えられた場を自分たちの手で最大限に活用しようというパッションがあまり感じられないのです。みんな所詮お客さんにすぎないという印象です。

あとこれは中国の国情だから仕方がないのでしょうが、至る場所にやたらと制服姿の公安がいます。人がたくさん集まる場所は政府が管理しなければならないという環境に、コスプレ姿の中国の若者は慣れているのか、あまり気にしていないようです。
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まあ参加しているみんなが楽しけりゃそれでいいとは思うのですが、関係者はこの状況をどう思っているのでしょうか。北京の彼女の友人で北京国際アニメフェアのコスプレ大会運営責任者である北京出版集団『北京卡通』の張帆さん(30)に話を聞くと、こういう次第でした。

「今回は北京で初めてのアニメフェア。広州や杭州に比べるとまだまだ。国際マンガサミット開催のおかげで政府から支援があったから今回はイベントが実現したのですが、来年も開催できるかどうかまだわからないのです。入場券やコミケ、出版社ブースの収益だけではこれだけの規模のイベントはとても賄えるものではないからです」。

あらら、そういうことだったんですね。コミケの運営資金もすべて政府持ちというのが、北京国際アニメフェアの実情だったのです。

張帆さんは「ぼくもいつか日本のコミケを観にいきたい」と言っていました。中国と日本では運営の仕方がどこが違うのか、ぜひ見てもらうと面白いと思います。

それにしても、なぜ中国ではアニメフェアの運営まで政府がお膳立てしなけりゃならないのか? そもそも国家主導のやり方が、中国におけるアニメ文化と産業の発展の足かせとなっていることに彼らは気づいていないのか?

そんな素朴な疑問が出てきますよね。
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by sanyo-kansatu | 2011-11-11 21:53 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(2)
2011年 11月 10日

国際マンガサミット北京大会2011報告 その1(概要、イベント、会場について)

10月下旬、北京に行ってきました。毎回中国出張に行くときは、いくつかの用件をまとめてこなしてくるのですが、今回はそのひとつとして国際マンガサミット北京大会の視察を予定に入れていたのです。
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国際マンガサミットは、アジアMANGAサミット運営本部(ICC)によって開催される国際フォーラムです。日本をはじめ中国や韓国、台湾、香港などアジア各国のマンガ家や業界関係者らが集まり、マンガ市場の現状や著作権問題などを協議します。1996年に日本で第1回大会が開催されてから今年は12回目で、北京市石景山区政府が主催しています(民間団体ではなく、政府が主催するところが中国らしい)。これにあわせて第1回北京国際アニメフェアも同時開催されました。

国際マンガサミット北京大会2011
■期日  2011年10月21日~25日
■会場  プルマン北京ウエストワンダホテル(国際マンガサミット北京大会)
       中国動漫遊戯城(北京国際アニメフェア)
http://comic.qq.com/zt2011/2011icc/
アジアMANGAサミット運営本部
ICC(International Comic Artist Conference)
http://mangasummit.jp/

今回、主催国の中国以外に、日本、韓国、香港、台湾の関係者らが参加していました。日本からは代表の里中満智子さんがスピーチのために出席。また来年度(第13回)開催地の鳥取県から平井伸治知事をはじめ県関係者が海外ブースにPR展示を出していました。意外に思われるかもしれませんが、鳥取県は、水木しげるや『名探偵コナン』の青山昌剛、谷口ジローを輩出した「マンガ王国」なのです。

フォーラムの内容については後述するとして、今回視察していくつかの発見があったのが、同時開催されたアニメフェアでした。そこでは、中国ではおなじみのコスプレ大会やコミケ(同人展)などのファン向けイベントに加え、中国のマンガ業界各社と海外の関係者の展示ブース、「世界漫画家作品展」と呼ばれる日本や中国、韓国、香港、マレーシア、フィリピン、モンゴルなどアジア各国のマンガ家の原画展が開かれていました。
コスプレ大会b0235153_2234369.jpg
コミケb0235153_2243944.jpg
出版社ブースb0235153_225229.jpg

会場は中国動漫遊戯城(北京市石景山区)といい、中国共産党文化部と北京市の合作によりデジタル産業基地を目指す石景山区の首都鉄鋼工場跡地を利用し、2011年9月28日にオープンした巨大展示場です。敷地120万㎡、建築面積24万㎡と、とにかく広い。正門から会場まで徒歩5分以上はかかります。その杮落としイベントが今回のアニメフェアだったわけです。

北京市政府はこの施設を「第二の798大山子芸術区」にすると表明しています。確かに、国営工場跡を文化スペースとして再利用するという798のコンセプトを、政府がそのまま形だけ借用したような空間となっています。はたしてこの先、798と同様に発展していくものなのか。お手並み拝見といいたいところですが、全国各地に建設された中国政府主導のアニメ産業基地の実情を見る限り、ぼくには「仏作って魂入れず」で終わりそうな感じがしてなりません。まあしかし、せっかくの杮落としイベントを訪ねて、そんな憎まれ口をたたくのもどうかというのもあるので、じっくり視察してみようと思います。

北京アニメフェアの会場内b0235153_13175858.jpg
中国動漫遊戯城b0235153_13181483.jpg
中国政府文化部主催の中国動漫遊戯城オープン式典b0235153_13442144.jpg

首届中国动漫游戏嘉年华将于2011年9月28日开幕
http://game.163.com/11/0821/09/7BVJLQB000314K8I.html#from=relevant
从钢铁厂区到动漫基地:首钢腾挪“变身”
http://news.eastday.com/gd2008/f/2011/1215/2510052777.html
首钢老厂区将变身动漫乐园 打造第二个“798”
http://www.fengyunlu.com/news/2011122000007744.html
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by sanyo-kansatu | 2011-11-10 22:00 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 09日

上海アート最前線~なぜ上海市政府は2010年までに100館の美術館をオープンさせるのか?

2006年当時、日経NBOnlineに連載した上海の現代アートの連載の企画書が見つかったので、ちょっと古いんですが、公開します。

ぼくのブログの右肩の小さな写真は、翁奮という海南島在住のカメラマンの作品で、「Sitting on the Wall」シリーズのひとつです。中国沿海部の都市の光景をみつめる制服姿の女子高生の後姿をモチーフにしたものです。これらはみな2000年代初頭の作品で、これから発展していくであろう中国の未来に対する希望と怖れ、そんなアンビバレントに揺れる感情を思春期の少女たちに託して表現したものです。そう、この当時の中国の人たちはまだ本当に初心だったのです。ほんの10年前の話です。

上海アート最前線~なぜ上海市政府は2010年までに100館の美術館をオープンさせるのか?
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by sanyo-kansatu | 2011-11-09 16:03 | 現代アートは中国社会の鏡である | Comments(0)
2011年 11月 08日

日経ビジネスNBonline 中国現代アート

日経ビジネスNBonline 中国現代アート(上海のケース)
(2006年9月~07年2月)
上海のアートシーンの舞台裏や関係者らの取材を元にした連載コラムです。中国現代アートの本場はむしろ北京と当時も今もいわれていますが、単なる作品論ではなく、アートと社会の関係を考えるうえで、万博開催を控えた当時の上海のアートシーンも、それなりに面白い材料を提供してくれたと思います。
(1)変わりゆく都市を見つめる制服少女たち
(2)文革知らずはファンタジーがお好き
(3)改革開放時代を懐かしむ『80年代明星シリーズ』
(4)いま上海で最もやんちゃな新人類の冒険
(5)新しい摩天楼のリアルとは何か?
(6)アートビジネスを育む廃墟「莫干山路50号」
(7)アングラ展での駆け引きが活力にめげない上海人の「パーティーやろうぜ」感覚
(8)上海万博は大阪万博超えを目指す-「文化都市」建設を進める市政府の思惑と内情
(9)革命戦士からポップアートへ-上海が彫刻で埋め尽くされる日、人民は「くすくす笑う」
(10)「芸術オタクvsマーケッター」の図式-上海版「朝まで生テレビ」があぶり出した現実
(11)華僑系セレブ娘が仕掛ける「社交界」-ファッションビル化する上海の歴史的建造物
(12)アニメ美術展で中国を変える「出戻り上海人」
(13)夜遊びするなら「コスプレ」「ゴスロリ」-上海の若者が豹変する秘密のイベント
(14)「スーパー80年代生まれ」の肖像-中国社会も悩む“一人っ子政策”の申し子たち
(15)70年代生まれは「自分探し」の世代-天安門とおこちゃま達のハザマで
(16)中国的「格差社会」の実像-ニューリッチから出稼ぎ労働者までのお宅訪問
(17)写真で見る「格差」不感症大国、中国
(18)中国ニューリッチのメンタリティ-画商が語る新興富裕層20年史
(19)超格差社会のキーは60年代生まれにあり-天安門事件の挫折はどこに消えたのか?
(20)わかるかも「天安門」~爆走する現代中国人に与えた影響

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by sanyo-kansatu | 2011-11-08 15:40 | 現代アートは中国社会の鏡である | Comments(0)
2011年 11月 08日

日経ビジネスNBonline アニメと「80后」をめぐる話

日経ビジネスNBonline アニメと「80后」をめぐる話
(2008年4月~5月)
2004年頃から08年くらいまで、JETROが旗振り役になって、日本のマンガやアニメの著作権者や制作会社らが海賊版をはじめとした著作権侵害問題の解決を中国側に働きかけ、国家ぐるみでアニメ産業を育成しようとしている同国といかにビジネス提携できるか、という議論が盛り上がっていました。でも、最近はその熱もすっかり冷めてしまったかのようです。

なぜなら、中国はオリンピックの頃こそ、海賊版を一掃すると世界に向けた調子のいいキャンペーンの真似事をやっていましたが、そんなのいまはまったく忘れてしまったかのよう。日本の関係者にすれば、もうやってられるか、という気持ちになるのも無理はありません。

この連載は、その当時の上海を中心にした取材を元に書かれたものです。上海のオタクビルを覗いたり、「80后」の女の子と秋葉原に行ってみたり、いろいろフィールドワークをしていますが、なかでも上海美術館で開催された「80后世代美術展:ゼリーの時代」はぜひ読んでほしいと思います。

(1)上海のメイドカフェに行ってみた【前編】
バイトは名門女子大生「この服と日本のアイドルが好き」

(2)上海のメイドカフェに行ってみた【後編】
中国版「電車男」に戸惑うメイドたち

(3)主役は、大人になんかなりたくない「ゼリーの世代」
共産党公認“オタク展覧会”の真意は?

(4)政府の無策に沈むオタクビル「動漫城」
でも日本アニメ人気は健在

(5)本物を愛する目を「日本のフィギュア」で培って!
すでに日本と同時発売。「アルター上海」に聞く、中国アニメビジネス事情

(6)上海の若者がアキバへ社会科見学
宿題は「なぜ中国でアニメの産業化が進まないか?」

(7)日本のドラマ・アニメはこれからも支持されるだろうか
日本動漫ファンは、1977~83年生まれに集中?


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by sanyo-kansatu | 2011-11-08 15:27 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 08日

かわいらしさと強面の二面性を併せ持つ「80后」

ぼくが中国本土で初めて日本のマンガの精巧な海賊版を見たのは、1992年頃の深圳でした。双葉社の「クレヨンしんちゃん」だったと思います。それから10年後、中国で会った多くの若い子たちは、日本のマンガやアニメのファンになっていました。

ぼくは1960年代生まれなので、小学生だった70年代のアニメに親しんだ世代ですが、おかしいことに、中国のテレビでは90年代にほぼ日本の20年遅れで70年代アニメが放映されており、いわゆる「80后」(80年代生まれ)の子たちとぼくは、同じ年の頃に同じアニメを視聴して育っていたことを知りました。

いまでも思い出すと吹き出してしまうのが、日経ビジネスNBonlineの連載で書いた上海のメイドカフェでバイトする上海外国語学院の女の子と一緒にカラオケで「一休さん」を歌ったときのことです。「♪スキスキスキスキスキスキ!あいしてる」。そう歌いながら、いったいこの時空を超えた共有感ってなんだろか? そんな甘ったるく不思議な感触を味わいながら、メイド服を身に包んだ彼女らに妙な親しみをおぼえたものです。おかしなもんですね。もちろん、それはこちらの勝手な妄想に近い思い込みにすぎないのですけれど。

日経ビジネスNBonline アニメと「80后」をめぐる話

いまでは中国の若者たちは、いわゆる違法ダウンロードサイトを通じてリアルタイムで日本の深夜アニメを視聴しています(中国では違法ではないのかな。当局が違法だといえばそうなるし、お目こぼしがあれば堂々と営業できる。この国では法が物事の是非の基準にならないため、海賊版はいつまでもなくならない)。

彼らは日本のアニメで描かれる中学高校の文化祭やアルバイトなど、中国ではまだそれほど一般的ではない学校生活の勉強以外の世界に憧れもあるようです。

そういうかわいらしい一面もある一方で、彼らが学んだ「愛国主義教育」の効果てきめんというべきか、ある局面においては(いわゆる歴史認識や領土問題などナショナリズムがからむと)、断固たる強面という二面性を併せ持つのも、彼ら「80后」の特徴です。

状況によってコマのようにクルクルと回る彼らの二面性をどう取り扱うべきか。ぼくにすれば、親戚のおじさんが甥っ子姪っ子を見つめる目線に近いのですが、彼らも自らの立ち位置にどうやら不安を抱えているらしいことも確か。それとなく続いている彼ら彼女らとお付き合いのなかで、何かしらの発見があれば、つらつら書いてみようと思います。

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by sanyo-kansatu | 2011-11-08 15:19 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 08日

現代アートは中国社会を映し出す鏡である

こういう言い方も何ですが、中国のような言論統制のある国で、社会に対する深い洞察や批評精神、ひとりの人間としての正義感のありかをストレートかつ巧妙に見せてくれる数少ないメディアとして、中国の現代アートの存在に注目しています。

アートは広告とは違い、マスメディアでないぶん、存在を許されているといえます。へんに目立たないかぎり、ある意味自由でいられる。彼らアーチストたちは常に時代と政治との間に流れる微妙な風向きを気にしながら、ときに飄々とそれを受け流し、ここぞというときには思いのたけを作品に注ぎ込もうとする。その結果、中国社会の闇や矛盾、しかしそこで生きていかざるを得ない人々の現実をあぶりだします。なるほど、こんなことまで考えていたのかと感心させられることも多いです。現代アートは中国社会の諸相を映し出す鏡=メディアといえます。

ぼくが中国の現代アートの存在を初めて知ったのは、1994年頃、たまたま仕事でオーストラリアに行ったとき、「MAO goes POP」と題された回覧展をパースで見たときです。今日有名になった中国の現代アートの立役者たちが、90年代に入って中国版イーストビレッジ(北京東村)でボヘミアン生活をしながら作品制作に打ち込むようになる以前の世界を南半休の片田舎で知ったというわけです。

そのときは「なんじゃこりゃ」という感じでしたが、その後、2000年代に入り、上海で莫干山路の工場跡のアトリエ群(M50)を知り、一時足しげく通うにようなり、何人かのアーチストに会って話を聞いたりしました。そのときの見聞を元にしたコラムが、日経ビジネスNBonlineで20回ほど連載されました。
日経ビジネスNBonline 中国現代アート 
その後も、中国出張に行くと、北京を代表する芸術区として知られる草場地など、仕事の合間に通っています。07年頃をピークにちょっとトーンダウンしたかに見える中国のアートシーンですが、イケイケの時代ばかりが面白いわけじゃない。観光地化されたといわれる「798大山子芸術区」だって、歩き回っていると、何かしら発見があったりします。このカテゴリでは、そんな発見をちょこちょこ書いてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2011-11-08 14:45 | 現代アートは中国社会の鏡である | Comments(0)