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2017年 01月 17日

中国SNSでアパホテル炎上 春節はどうなる?

ネットで嫌なニュースを見つけてしまいました。

「アパホテル」中国のSNSで“炎上”「南京大虐殺を否定するCEOの著書が客室に」 
告発動画「微博」で6800万再生(ITmediaニュース2017年01月17日)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1701/17/news088.html

日本のホテルチェーン・アパホテルが、中国のSNS「微博」で炎上状態になっている。「アパホテルCEOが執筆した、南京大虐殺を否定する内容を含む書籍が全客室に置かれている。中国人はこの事実を知った上で宿泊するかどうか決めるべき」と、米国人の学生が「微博」に動画を投稿して告発。この動画が2日で6800万再生を超え、中国ネットユーザーの批判を浴びている。

動画は、米ニューヨークに住む米国人女子大学生Katさんと中国人男子大学生Sidさんのコンビ「KatAndSid」が15日夕方に投稿したもの。2人は1月、東京に旅行に行った際、アパホテルに宿泊し、部屋にあった書籍を読んでショックを受けたという。

書籍は、アパグループ代表の元谷外志雄さんが「藤誠志」のペンネームで執筆した「理論近現代史学II」(英題は「THEORETICAL MODERN HISTORY II」)で、「南京大虐殺はねつ造だ」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張している。

動画では、Katさんがアパホテルのフロントで書籍を購入し、ページを開いて英語版の内容を紹介。南京大虐殺を否定している部分などを読み上げ、「彼には、自分の本をホテルに置いたり自分が言いたいことを言う権利はあるが、彼の政治的思想を知らない中国人・韓国人客からお金を取っているのは不誠実だ。このホテルに支払ったお金は、CEOのこのような政治的思想をサポートすることになる」と話す。

2人は日本で素晴らしい時間を過ごしたといい、「日本の人達はとても親切で礼儀正しい」と称賛。アパホテルの書籍を批判する動画を公開するかは迷ったが、「このホテルにお金を払う人は真実を知るべき」と考え、公開に踏み切ったという。「これはこのホテルだけの問題で、この国やこの国の人々には関係ない。日本をディスるつもりはない」としている。

動画は17日午前11時半までに6800万再生を超えた。シェアは60万以上、「いいね」は32万以上、コメントは2万9000以上投稿されており、「客観的なリポートをありがとう」「このホテルには泊まらない」などの声が寄せられている。

中国共産党の機関誌「人民日報」国際版の「GlobalTimes」もこの問題を報道。記事によると、中国の旅行会社・黄光グループは、この問題を受けてアパホテルの予約受け付けを停止したという。アパホテルの公式サイトは17日午前10時現在、つながりづらい状態になっている。


この記事では、悪名高い中国のタブロイド紙「環球時報」の英語版でもこの問題を取り上げていることや、海外向けにはYOU TUBEも活用されていることを紹介しています。

Chinese outraged over books at Japanese hotels that deny Nanjing Massacre(南京虐殺を否定する日本のホテルの本に中国人は憤慨する) (Global Times Published: 2017/1/16)
http://www.globaltimes.cn/content/1029025.shtml

RIGHT-WING NATIONALIST HOTELS IN JAPAN 每个人都应该知道的事实(日本の右翼・国家主義者のホテル)(YOU TUBE)
https://www.youtube.com/watch?v=rmoTcP-G8r8

このように中国は、いつでも対日宣伝戦を用意しているんですね。たまたま今日配信されていたJBPressの以下の記事がそのテーマを扱っていたので、やっぱりなあという感じです。

無から有を創り出す中国のプロパガンダ戦略
『孫子』はいまも生き続けている(JBPress2017.1.17)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48918

今月1月28日は中国の旧正月(春節)ですから、この時期にこの一件を問題にしたのは、中国客の訪問を待つ日本のホテル業界をはじめとするインバウンド関係者とその背後にある世論に対する揺さぶりのためでしょう。もしこれで中国客のキャンセルが続出という事態にまで至るとしたら、「悪いのはアパグループだ」と責任を押しつけることで、同グループの評判を落とし、日本国内での立場を貶め、結果的に、自らの主張を認めさせることを迫るというわけです。そこまで波及することはなくても、アパグループに対して中国客の予約キャンセルを集中的に浴びせるよう自国民を誘導することで、同じ成果を手にすることを目的にしているのです。

※アパグループの客室稼働率は好調で、外国人利用比率も高いことで知られています。国籍的には必ずしも中国客の利用だけでなく、多国籍化が見られるようですが、地方都市では中国の団体客の利用も多そうです。

アパグループの都心出店攻勢は驚異的。今年も続々開業予定
http://inbound.exblog.jp/24543248/
今年4月、アパホテルの宿泊客の4人に1人が外国人だったことの意味
http://inbound.exblog.jp/24687702/
「ホテルは立地産業。五輪前のいまは攻めどころ」(元谷外志雄アパグループ会長)
http://inbound.exblog.jp/24688926/

中国の宣伝戦の特徴は、まず標的を決め、標的とそれ以外の民衆との間に敵対関係を演出し、お互いをいがみ合わせることにあります。最初にアメリカで火をつけ、中国国内に還流させるというやり方もよく計算されたものでしょう。

昨秋、中国政府は香港や台湾に続き、THAAD配備を決めた韓国への観光客を減らす通達を出したばかりです。その狙いは、これらの国々の経済に打撃を与え、中国の意向に従わないことは不利益をもたらすと悟らせることです。中国政府にとって観光は政治の取引に使う道具でもあるのです。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/

さすがに、この並びに日本を加えてしまうと、中国客を送る有望な海外旅行先が減ってしまい、困るのは中国の旅行産業ではないかという事情もありそうですが、中国政府としては、日本に対しても「いつでも観光客を減らすことはできるんだぞ」という脅しの意味はありそうです。

それでも、PM2.5苦にあえぐ中国都市部の中間層は、春節休みを使って海外逃避を図ろうとする動きは強いようです。その人気先は、タイと日本だそうです。

今年の春節休みも「肺を洗う旅」の中国客はどっと来るのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/26552082/

さあ、これからどんな展開になるのか。

今回は特定の企業を標的にしましたが、こうしたことは対象を変えて今後も起こりうることでしょう。

それにしても、こんなことして、世界中に争いの種をふりまいてばかりでどうするのでしょう。わかりやすい敵を設定し、民衆同士を盲目的に対立させ、諍いの火を投げ込み、双方を怒りや憎しみで火だるまにすることで、自らへの批判が向かわないようにするというのは、中国の為政者の常套手段です。自国内で散々繰り返されてきた民衆間の対立を煽る「工作」を、彼らは国際社会に持ち込みます。でも、これを仕掛けられたら、文革のときに苦しめられた中国の人たちと同じように、海外の人たちも中国の為政者をますます警戒するようになってしまいますよね。少なくとも、アジアにおいては、逆効果を生み始めているように思います。

【追記】
翌日、中国からアパホテルのネット予約ができなくなりました。これで政府が関与していることがはっきりしましたね。

アパホテル、ネット予約できず=南京事件否定の書籍批判-中国(時事通信2017/01/18)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017011800833&g=soc

【北京時事】中国の複数の大手インターネット旅行代理店で18日、客室に旧日本軍による「南京事件」を否定する内容の書籍が置かれているとして、批判が出ているアパホテルの予約ができなくなった。中国は27日から春節(旧正月)の大型連休に入る。日本も人気の旅行先だが、影響が長引く可能性もある。

このうち、予約サイトの「携程(シートリップ)網」では、18日には検索しても同ホテルが表示されなくなった。

問い合わせ先の担当者は「南京大虐殺を否定するような書籍が置かれているため。国内の多くのサイトでも予約できない」と語った。

書籍はアパグループの元谷外志雄代表の著作で、中国が犠牲者30万人と主張する「いわゆる南京虐殺事件がでっち上げであり、存在しなかったことは明らか」と記述している。同グループは「事実に基づき本当の歴史を知ることを目的としている」として、客室から撤去しない方針を示している。

日本国内のアパホテルは155カ所。アパホテルの公式サイトがつながらない状態になっており、アパグループは「詳細は調査中だが、サイバー攻撃と思われる異常なアクセスが継続している」と指摘した。


【追記その2】
朝日新聞でもこの問題を取り上げています。

南京事件に否定的な本、中国でホテル批判(朝日デジタル2017年1月19日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12754217.html

この記事によると、(ホテルに)「何を置くかは自由」という識者の声がある一方、訪日外国客の受入れを担うインバウンド関係者の以下のようなコメントを載せています。

中国人観光客を受け入れる旅行会社(福岡市)の役員は「日本国内に歴史修正主義的な議論があることは中国人はよく知っている。『またか』と受け止めるのでは」。一方、ある大手旅行会社幹部は「中国の人たちが日本全体のおもてなし業界に不信感を持つことが心配だ」と話す。

記事に客観性を持たせるために、異なる意見を併記するということなのでしょうが、中国側の主張を直接受けとめざるを得ないのがインバウンド関係者であることから、こうしたコメントを引き出すこと自体、中国政府の狙いどおりともいえます。

こんな記事も出てきました。

アパホテルの南京大虐殺否定本に対抗、中国のホテルが「ラーベの日記」を客室に―中国メディア(2017年1月19日レコードチャイナ)
http://www.recordchina.co.jp/a161256.html

(一部抜粋)2017年1月19日、澎湃新聞によると、日本のビジネスホテル大手のアパホテルが客室内に南京大虐殺を否定する本を置いた問題で、中国浙江省台州市のホテルがこのほど、旧日本軍から南京市民を救ったとされるドイツ人、ジョン・ラーベの日記を客室に置くと発表した。

こういうお調子ノリが中国ではすぐ出てくるんですよね。これなど「わかりやすい敵を設定し、民衆同士を盲目的に対立」させる政府の狙いを忖度し、同調する動きといえるでしょう。

【追記その3】
ついに中国政府は表に立ってアパホテルの利用中止を国内業者に強制し始めました。ここまで騒ぎ立てなければ気がすまないやり口をみる限り、特定の企業を標的にした「対日宣伝戦」という見立てどおりでしたね。

アパホテルの利用中止要求 中国政府、国内旅行業者に(朝日新聞2017年1月24日)
http://www.asahi.com/articles/ASK1S5FTNK1SUHBI01G.html

要するに、中国政府は今回の仕掛けによって、毎度のことですが、中国の民衆が日本の「右翼」の「歴史認識」について怒りを持っているというメッセージを広く日本の一般国民に印象付けることが目的だったのです。結果、アパホテルの中国客の利用が減れば、それもまたなおよし。日本国内に波紋をもたらし、自国民の批判の矛先を回避させるというふたつの目的を一挙に達成できる。両国民の関係を険悪にさせることは、いまの中国の為政者にとっては好都合なのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-17 14:59 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 01月 14日

北海道のローカル駅の線路に入る「危ない訪日客」が出没する理由がわかってしまいました

今朝、ネットで地方新聞のこんな記事を読みました。

線路から撮影 危ない訪日客 JR朝里駅へ映画ロケ地巡り(北海道新聞2017.1.13)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/life-topic/life-topic/1-0357425-s.html

【小樽】JR函館線朝里駅(小樽市朝里)の周辺で、線路に入って写真を撮る外国人観光客が相次いでいる。昨年12月から列車の急停止や発車の遅れが6件発生。朝里でロケをした映画が中国と韓国で上映されたことを契機に、無人駅の同駅を訪れ、記念写真を撮る外国人観光客が増えていることが背景にあるようだ。JR北海道は朝里駅や小樽駅に注意を呼び掛けるポスターを張って再発防止に努めている。

朝里駅を所管する小樽駅によると、線路内に入る外国人観光客が最初に確認されたのは昨年12月4日。遮断機が下りている同駅近くの踏切内にいた外国人を普通列車の運転士が発見。同駅を出発するのが5分遅れた。その後も1月12日までに外国人が線路内に入ったり、踏切内に入ったりして列車が急停止や遅れた事例が5件続いた。列車の乗客も含めけが人はなかった。

朝里駅は2015年1月、新婚夫婦がハネムーン先の小樽で繰り広げる人間模様を描いた台湾の監督の短編映画のロケ地となり、同8月に中国で公開された。また、韓国では1995年に日本で公開され、99年に韓国で大ヒットした映画「Love Letter(ラブレター)」が昨年1月に再上映された。ラブレターは小樽市朝里の中学校がロケ地の一つで、短編映画とラブレターの再上映によって、中国人や韓国人の間で朝里の人気が高まっているという。


このところ連日出てくる“人騒がせな外国人観光客”の新ネタがまた登場したかと思いながら読んだのですが、記事に出てくる2015年夏に中国で公開されたという「台湾の監督の短編映画」とはどんな作品なのか気になったので、ネットで調べてみました。

なんでも5人の若手監督によるラブストーリーを集めた中国のオムニバス映画『Cities in Love(恋愛する都市)』の一編として、台湾人監督の傅天余さんが撮った『蜜月』という作品だそうです。傅さんは1973年台中生まれの女性で、『Love Letter』の岩井俊二監督に影響を受けたといいます。岩井監督はこの映画の監修も務めています。

【参考】
恋爱中的城市 (2015)
https://movie.douban.com/subject/26263443/
傅天余 Fu Tien-yu
https://movie.douban.com/celebrity/1320962/
台湾の監督が小樽ロケ!(2015年1月に行われたロケの経緯について)
http://kitanoeizou.net/blog/?p=9740
中国映画のロケ撮影が茨木家中出張番屋でありました   
http://tanage.jp/info/?c=1&s=16491

いったいこの作品はどんなストーリーなのでしょうか。中国のネットで調べてみると、北海道を舞台にした中国人カップルのハネムーン旅行を描いた20分ほどの短編作品ということです。

(参考)
最爱北海道蜜月之行的那个故事
https://movie.douban.com/review/7594646/
《恋爱中的城市》北海道特辑 江一燕张孝全蜜月(人民網2015年07月31日)
http://ent.people.com.cn/n/2015/0731/c1012-27393427.html
《恋爱中的城市》曝特辑 江一燕张孝全“滚床单”
https://m.sohu.com/n/417908331/

実際に映画を観ることにしました。YOU TUBEで誰でも観ることができます。
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恋爱中的城市(YOU TUBE)※『蜜月』は1時間2分40秒頃から。
https://www.youtube.com/watch?v=JT6K7HyzAPE

とてもほのぼのしたいい映画でした。この作品に見られる日本人に対する温かいまなざしは、いかにも台湾人監督らしいと感じました。ハネムーンの話ということで、いまの若い台湾人や、おそらく中国人も、日本で体験したいことがすべて盛り込まれているような印象です。

本当はこんなネタバレ許されないことなのですが、いま彼らが日本でどんな旅行をしたいのかを理解するという観点から、作品のいくつかのシーンをストーリーに沿って紹介しようと思います。
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ふたりが窓の外の雪景色を見ながら温泉に入るシーンから始まります。
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部屋に戻ったふたりがそろそろ床に就こうとしていると、新郎の携帯が鳴ります。電話の相手は彼の会社のボスで、彼のスマホに北海道産のある干物屋の写真を送ってきます。要するに、土産に買ってこいというわけです。
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「磯松屋」とあります。

翌朝の朝食シーンです。少々抵抗を覚えつつ、納豆を食べてみるというのは中国人の日本旅行の定番シーンです。
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新婦は北海道で行きたいこと、食べたいもの、体験したいことを時間刻みにいっぱい計画していて、そんな話ばかりしています。ところが、彼は浮かない顔。その理由は、昨晩のボスからの電話で頼まれた「磯松屋」の干物を土産に買ってこなければならないことを彼女に告げなければならないからです。
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結局、そのためふたりはその日の温泉宿をキャンセルし、住所しかわからない「磯松屋」を訪ねることになります。

小樽駅で駅員に降りるべき駅を聞いているシーンです。
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そして、ふたりは朝8時7分発の長万部行きに乗り込みます。
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自分の立てていた計画をすっかり変更させられたことで、彼女は電車の中でそっぽを向いています。
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駅弁シーンも盛り込まれています。「本当は焼肉を食べるはずだったのに…」と彼女は不満げです。
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そして、ふたりが降りたのが問題のJR函館本線の朝里駅です。小樽駅から札幌方面に向かう2つめの駅です。
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この映画を観た中国客たちが「危ない訪日客」となってしまうのです。ここは無人駅です。彼らからすると、映画のようにふたりだけの世界になれる無人駅ほど気分を盛り上げてくれるスポットもないのだろうと思われます。だいたい無人駅だなんて中国では考えられないでしょうし。
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面白いのは、その後ふたりは路線バスに乗ることです。中国の人たちというより、特に台湾の人たちが、こういうことを体験したくてたまらないのでしょう。日本のテレビ局が予算をかけずに作れることから盛んに放映している路線バスの旅番組の影響もあるのかもしれません。バスの中ではふたりの気持ちはとうとう離れてしまったようです。「せっかくのハネムーンなのに、自分はどこに連れて行かれているのだろう…」。彼女の気持ちは理解できます。
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バスを降りて、雪道をどこにあるのかもわからない干物屋を探して歩いているうちに、ふたりは大喧嘩を始めてしまいます。そして、ついに彼女は彼を置き去りにして、ひとりで歩いていってしまいます。
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そして、日が暮れます。ところが、なぜか日本家屋の中で横たわっている彼女のシーンに変わります。隣の部屋では老夫婦が睦まじく食事をしています。奥さんがご主人の茶碗にたくわんを入れてあげようとしているところなど、実に演出が細かいというべきか。
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一方、彼は大雪の人通りのない路上でスーツケースの上に座って途方に暮れています。すると、先ほどやけになって雪の中に投げ込んだ携帯が鳴ります。彼は慌てて雪の中から携帯を取り出します。彼はその電話の相手をボスだと思いこんでいます。というのも、昨晩からうるさいくらい何度も掛かってきていたからです。
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ところが、相手は彼女でした。そして、彼女は言います。「本当に見つかったのよ(我真的找到了)」。この台詞がいいですね。でも、彼は最初、その意味がわかりません。
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そして、次に映し出されるのが干物の入った「磯松屋」の木のケースでした。詳しい経緯は語られませんが、彼女はすでに干物屋を見つけていて、家の中で休ませてもらっていたのです。
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「磯松屋」の老夫婦は不思議そうにふたりを見つめます。「新婚旅行?」「こんなところに?」「若い人たちが考えることはわからないわねえ」。
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そして、彼らは自分たちが新婚旅行でハワイに行った話を始めます。ご主人はその費用を会社の社長に借りて、返すまでに2年もかかったという話をします。
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もちろん、ふたりはそんな日本語がわかるはずもないのですが、熱燗を酌み交わします。
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この日、喧嘩ばかりしていたふたりが寄り添うところで終幕です。

さて、この作品には、以下のようなシーンが出てきます。

雪景色、温泉、納豆、ローカル線、駅弁、無人駅、ローカルバス、雪道を歩くこと、日本酒、ホームステイ(民泊)

一見なんの変哲もないシーンのようですが、これらはすべていまの若い中国人が日本で体験したいことのラインナップ(もちろん、一例ですけれど)だと解釈できるのではないかと思いました。

ここには、彼女が計画に入れていた和牛の焼肉やタラバガニの食事もそうですし、ドラッグストアや免税店の買い物といった一般の日本人がイメージする訪日中国客が日本でやってることは一切出てきません。彼女が「見つけた」ものの価値に比べれば、そんな誰でもできるようなものなんて、たいしたことではないのです。

(とはいいつつも、実際には、帰国の前日、彼らは札幌市内のドラッグストアと免税店に必ず行くことになるとは思いますけれど….。それじゃ物語が台無しですものね)。

最初にも書きましたが、日本人老夫婦のキャラ設定やその描き方は、台湾人監督ならではで、地方に住む日本人の雰囲気をよく理解していると思いました。この世代の老夫婦の新婚旅行先がハワイだった(おそらく1970年代)という台詞も、昔から日本のことをよく知っている台湾人だからわかる話で、最近になって海外旅行に行き始めたばかりの中国人にはちょっと想像がつかないことでしょう。

「危ない訪日客」はこの作品を観た人たちだったのです。まずこれを確認しておきましょう。

だからといって、線路に降りたり、踏切内に入ってしまうことは問題です。

では、どうやって彼らにそれをやめさせるか。そのための告知をどうするか。北海道新聞の記事にあるように、駅に外国語表示を付けるだけでは十分ではなさそうです。やはり、こういう場合は、日本にある中国国家観光局に申し入れをして、中国側にメディアなどを通じて伝えてもらうことではないでしょうか。

せっかくのいい映画なので、これが元でお互いが険悪になるのだけは避けたいものです。

ところで、オムニバス映画『Cities in Love(恋愛する都市)』の残りの4つの作品の舞台は、プラハ、パリ、上海、フィレンツェです。それぞれ監督も違い、作風もまちまちですが、『蜜月』ほど旅を誘ってくれる作品はないと思います。

【追記】
この北海道を舞台にしたラブコメ映画は、2008年に中国で公開された 『非誠勿擾』(馮小剛監督)と比べてみると、いろんな意味で、この間の時代の変化を感じさせます。

非誠勿擾公式サイト
http://feichengwurao.sina.com.cn/
非誠勿擾 (YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=F1MOIhEVluI

この作品については、すでに多くの解説が行われているので、詳しくは触れませんが、ひとことで言えば、「中国人が北海道を発見」するきっかけとなる映画でした。普段は「日本といえばニッポン兵」とばかりに抗日ドラマばかりを見せられていた彼らにとって、映像で目にした北海道の風景は日本のイメージを大きく変えたといわれています。

当時、中国人に対する個人ビザが解禁されていませんでしたから、カップルが自由に車で移動しながら北海道を旅行するということは、一般中国国民にはできないことであり、それゆえ大ヒットとなったのです。当時は、「団体ではなく、個人で日本を旅行する」ということが憧れだったのです。

※主人公の男性が「海亀」(海外で働いた後、帰国した中国人)という設定だから、この時期、個人旅行できたといえます。商務ビザで日本を訪ねる人たちと同じです。

その後、北海道は中国人の人気観光地になり、大挙して訪れたことは周知のとおりです。

そして、『蜜月』が公開された2015年、すでに多くの個人客が日本を訪れるようになっていました。特にこの年1月の個人マルチビザの緩和は訪日中国客を倍増させました(14年:240万人→15年:499万人)。

監督が台湾人であることを大きく差し引かなければならないとは思いますが、『Cities in Love(恋愛する都市)』はまがりなりにも中国映画ですから、いまの中国人の日本旅行のニーズを先取りし、体現しようとしているところはあると思います。『蜜月』のカップルは、当たり前のように、個人ビザで北海道を訪れ、雪景色の温泉旅館に泊まっています。でも、それだけでは普通すぎる。この作品では、ふたりが新郎の会社のボスの与えた難題に応えなければならなかったため、結果的に、ローカル鉄道や路線バスに乗り、知らない町で日本人夫婦と交流することになるのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-14 14:12 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 01月 13日

今年の春節休みも「肺を洗う旅」の中国客はどっと来るのだろうか?

この冬も中国のPM2.5は猛威をふるっているようです。

北京の街が白く…PM2.5で大気汚染深刻(日テレNEWS24 2016年12月20日)
http://www.news24.jp/articles/2016/12/20/10349524.html

今年の春節は1月28日ですが、こんなニュースも届いています。

中国で「肺洗浄の旅」が人気 大気汚染まん延で需要増加(Forbes Japan2017.1.12)
http://forbesjapan.com/articles/detail/14845

中国は、2017年の始まりを、濃霧に対するものとしては同国史上初となる最高レベルの「赤色警報」と共に迎えた。1月4日には、濃霧によって視界が50メートル以下に悪化。航空便や地上交通に大きな混乱が生じた。

ハルビンから広州、成都から杭州にいたるまでの各都市ではスモッグに警戒を呼び掛ける「赤色警報」やその1段階下の「オレンジ警報」が発令され、私用車の交通が半分に制限された他、大気汚染の原因となっている工場の多くが操業停止を強いられた。

こうした中、中国のインターネット検索エンジンでは、大気汚染に関連する検索数が過去最多を記録。「どこに行くべきか」「洗肺(肺の洗浄)」「森」といった検索が相次いだ。また中国最大の旅行サイト、シートリップ(携程)は、「避霾(スモッグ回避)旅行」のトレンドに関する報告書を公開している。

同報告書によると、「避霾旅行」は近年、冬の観光において定番化している。2016年12月には15万人以上の中国人が大気汚染を逃れるため海外に渡航しており、新鮮な空気に対する欲求が中国の海外旅行需要の拡大における大きな要素となっていることを示しているという。

エール大学が毎年まとめる「環境パフォーマンス指数(EPI)」によると、空気の質が良い上位10か国は上からセーシェル、トリニダード・トバゴ、モルディブ、アイスランド、オーストラリア、ガイアナ、ニュージーランド、キューバ、モーリシャス諸島、ベリーズだった。

シートリップによると、新鮮な空気を求める中国人の旅行先として人気の上位10か国はタイ、日本、インドネシア、オーストラリア、モルディブ、ニュージーランド、米国、カナダ、モーリシャス諸島、セーシェルで、うち5か国はEPIのランキングでも上位10位内に入っていた。

日本を訪れる中国人観光客は、澄んだ空気を求めて北海道や九州、沖縄などの小さな村々を訪れているという。またオーストラリアとニュージーランドは夏冬が逆転する気候が、カナダは美しく広大な国立公園が人気となっている。

シートリップは、大気汚染レベルの上昇と旅行需要の増加には明確な相関性があると指摘している。避霾旅行が人気の都市には、大気汚染が特に深刻な北京と天津に加え、上海、成都、広州、深セン、重慶、西安、武漢、済南が上位10位に入った。また近年大気汚染レベルが上昇傾向にある長江デルタ地帯の江蘇省や浙江省でも、避霾旅行の需要が高まっているという。

今冬は、北欧でのオーロラ鑑賞ツアーの予約数が4倍に急増。また、「世界最後の浄土」である南極を訪れるツアーも、費用が高額にもかかわらず中国人の間で人気となっている。より経済的な旅行先としては、韓国の済州(チェジュ)島、タイのプーケット、インドネシアのバリ島、フィリピンのボラカイ島などが人気だという。

シートリップが集めたデータによると、旅行者の多くは旅行先を選ぶ際、まず空気の質と気候で絞り込み、その次に出発地からの距離や乗り継ぎの便利さなどを考慮していた。パッケージツアーもそうした需要に合わせて名前を変え、「きれいな空気と酸素で肺洗浄」や「乗り継ぎなし、スモッグなしの暖かい冬」といった宣伝文句で売り出しているのだという。


なかなか深刻ですね。この記事では「シートリップによると、新鮮な空気を求める中国人の旅行先として人気の上位10か国はタイ、日本、インドネシア」と伝えています。だとすれば、今月末に始まる春節で「肺を洗う旅」の中国客はどっと来るのでしょうか。

この記事を書いているドイツ人のWolfgang Georg Arlt氏は、2004年に自ら設立したCOTRI(中国出境旅游研究所)の代表として、中国の海外旅行市場に関する精力的で継続的な調査研究を行っている研究者です。

Wolfgang Georg Arlt
http://forbesjapan.com/author/detail/643
COTRI(China Outbound Tourism Research Institute)
http://china-outbound.com/
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数年前、ぼくは北京で彼の話を聞いたことがありますが、彼は中国の海外旅行市場の隆盛を国際社会に伝える第一人者です。

2012年、中国は米独を抜いて世界一の海外旅行大国になった(COTTM2013報告 その2)
http://inbound.exblog.jp/20499744/

さて、ここに出てくる「洗肺(肺の洗浄)」の旅については、いまから3年前のこの時期、中国のメディアで盛んに取り上げられ、流行語になっていました。中華網(www.china.com)によると、こういう意味だそうです。

「洗肺游」は、空気がきれいな場所へ旅行し、肺をきれいにすること。2013年の冬、中国では多く地域が深刻なスモッグに見舞われ、空気がきれいな場所へ行く「洗肺游」が観光市場の新しいトレンドになった。国内の多くの旅行社と観光ウェブサイトでは、この「洗肺游」を企画、販売している。人気の「洗肺」地は、国内は三亜、アモイ、麗江、桂林、昆明、長白山、シーサンパンナ、貴陽、大理、黄山など。海外では、プーケット、バリ島、モーリシャス、チェジュ(済州)島、モルジブなどが人気である。

中国の新人類は日本の青空に魅せられている
http://inbound.exblog.jp/24302307/

昨年末、大雪による欠航で新千歳空港で夜明かしした「中国客」がゲートに乱入した騒動がありました。

「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える
http://inbound.exblog.jp/26507044/

実は年末年始にも、今度はPM2.5のために多くの中国の空港が濃霧に覆われ、離発着ができないため羽田空港で夜明かしした中国客が出たことも伝えられたばかりでした。

大晦日に帰国予定の中国人観光客、スモッグ酷く羽田で年越し 快晴の初富士まで拝む羽目に・・・ (サーチナ2017-01-05)
http://news.searchina.net/id/1626473

年末年始も激しいスモッグに見舞われた中国国内では、航空便の欠航や大幅な遅延が相次いだ。東京の羽田空港では、大みそかに帰国するはずだった多くの中国人観光客が空港内で「越年」する事態となった。
「1月2日午前3時半、私が乗った飛行機は濃いスモッグが立ち込めた天津浜海国際空港に停止した。キャビンのドアが空いた瞬間、大半の乗客が激しい咳をし始めた」

中国メディア・斉魯晩報は4日、「スモッグのせいで東京に閉じ込められて越年 2度の遅延で帰国」とする記事を掲載した。記事は、年末に日本を訪れ旅行していた記者が昨年12月31日夜のオッケー航空(奥凱航空)便で羽田から天津に戻ろうとしていたところ、激しいスモッグにより遅延となり、出発が翌1月1日の午後以降にずれ込む見込みであるとの情報を得たと紹介。「乗客たちは空港で年越しの夜を過ごし、さらにその半日後にようやく帰国の途に就くこととなった」とした。

そして、スモッグにより遅延が発生したフライトはこの便だけではなく、羽田空港内の至る場所で中国北部地方へ向かう中国人観光客が充満していたことを伝えている。さらに、1月1日午前には「さらに残念な情報が国内から伝わってきた」とし、中国北部地域のスモッグが消えるどころかさらに酷くなり、目的地である天津などの空港では視界が50メートルにまで低下したと紹介した。

結局記者が乗る予定だった航空便はほぼ丸1日遅れて日本時間2日未明に出発、北京時間同午前3時半に天津に到着した。記事は最後に「天津から山東省の済南に向かう高速鉄道に乗った際、空はすでに明るくなっていたが、窓の外に見る華北平原は依然として濃い蒼白な色に覆われていた」とまさに「五里霧中」の状況であったことを伝えている。

冒頭に紹介した到着時の実況が、スモッグの激しさをリアルに物語っている。記事はまた「空気を吸っただけで帰って来たって分かったよ」と語った中年男性の話を「天津人特有のユーモアである」と紹介しているが、彼らに取ってみれば「ユーモアで済まされるレベルではない」といったところだろう。

皮肉なことに1月1日の東京は見事な快晴で、羽田空港からは富士山をはじめとする山々がはっきりと見えたという。運悪くして「めでたい風景」を拝むこととなった中国人観光客の心中は、さぞや複雑だったことだろう。


実は、ぼくも数年前に北京空港がPM2.5による濃霧に覆われ、帰国便が欠航になり、足止めを食ったことが2度あります。いつぞやこの国のリーダーは、国際会議の数週間前から北京周辺の工場の稼働を強制的に止めた挙句、記者会見場で「APEC Blue」などとうそぶいていたことを思い出します。本人はジョークのつもりだったようですが、会場の外国人を大いに引かせたことに気づいていないのが辛いところです。

中国政府は香港、台湾、韓国に対して自国の旅行客の渡航を制限する通達を出しています。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/

そうしたことから、この3ヵ国・地域を外したタイや日本、インドネシアなどが旅行先に選ばれることになりそうです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-13 07:17 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 01月 10日

中国の最果ての地、満州里からロシアへの日帰りボーダーツーリズム

満州里は中国内蒙古自治州フルンボイル市の西端に位置するロシアとの国境の町です。1901年に東清鉄道の駅を開業したのが町の始まりで、日本がこの地に満洲国を建国するまでは、モスクワとウラジオストクを最短で結ぶ鉄路の要衝でした。

※「満州里(Маньчжурия)」はロシア語で「満洲(Manchuria)」 を意味します。
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数年前まではロシアからの木材の集積地として発展していましたが、中国およびロシア経済の減速によって木材バブルが崩壊し、経済的には厳しいと地元の人は話しています。

それでも、市内には一時期の名残のように、高層ビルもいくつか建っています。

これは満州里駅です。市内には車も多いです。1990年代までは、北京からシベリア鉄道に乗ってモスクワへ向かう1週間の鉄道の旅に参加する人たちが、日本人に限らず、けっこういました。いまでは、短い夏の間、フルンボイル草原を観光する国内客のための拠点の町のひとつとしてそれなりににぎわっています。
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満州里のもうひとつの観光テーマがロシアへのボーダーツーリズムです。以前、黒龍江省の黒河のボーダーツーリズム事情について書きましたが、同じような日帰りツアーが満洲里にもあるようです。

黒龍江省北辺の町、黒河のボート遊覧とロシアへの日帰り観光
http://inbound.exblog.jp/26537280/

残念ながら、このツアーに参加するためには、黒河の場合と同様に、ロシア側の国境の町であるザバイカリスクを入国地として記載したロシア観光ビザを東京のロシア大使館で取っておく必要があります。

そのため、以下の情報は現地の旅行会社で入手したツアーパンフレットや、ネット上で見つけた中国人が実際に参加したツアーを報告したブログの記事からの内容を取りまとめたものです。

まず、これが満州里とお隣のロシアの町、ザバイカリスクの位置です。
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もう少し詳しくGoogleMapでみると、こうなります。ちなみに、中国人のボーダーツアーに登場する3つの町は以下のとおりです。
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ザバイカリスク(后贝加尔斯克 Забайкальск)
クラスノ カメンスク(克拉斯诺卡缅斯克(中国名:红石市) Краснокаменск)
ボルジャ(博尔贾 Борзя) ※地図外(左上)

これは中国のオンライン旅行会社大手のCTripのサイトで募集していた日帰りツアーの情報です。現地の旅行会社に聞いたときは、日帰りツアーは500元と言われましたが、ネット上では390元で販売しているようです。

俄罗斯红石一日游(ロシア紅石日帰りツアー)
http://you.ctrip.com/dangdiren/service/18821.html

ここでいう「紅石」というのはどの町を指すのか最初はよくわからなかったのですが、中国のネットを見て回っているうちに、クラスノ カメンスク(克拉斯诺卡缅斯克(中国名:红石市) Краснокаменск)であることがわかりました。

ツアーパンフレットによると、1日のスケジュールは以下のとおりです。

朝6時集合。国際バスで国境ゲートを抜け、ザバイカリスクへ。この間は18kmです。1904年に開業したザバイカリスク駅舎を訪ね、そこから約140km離れたクラスノ カメンスク(克拉斯诺卡缅斯克(红石市)へ向かいます。この町は1968年に建市されたばかりの新しい町で、人口は約8万人。この地域では大きな町のようです。都市施設も比較的整っているようで、訪問先として記されるのが以下のスポットです。

パブロフ広場
東方正教会
レーニン像
第二次世界大戦記念広場
第二次世界大戦英雄戦車

まるで中国国内でかつて一斉風靡した毛沢東と共産党のゆかりの地を訪ねる「紅色観光」のようです。

共産党の歴史や思想がコンセプト、「紅色観光」がブームに―中国
http://www.recordchina.co.jp/a50318.html

もっとも、参加する中国客の関心は、ロシア人の住む町を訪ね、地元料理を食べたりすることにあるようです。詳しいツアーの様子は、実際にこのツアーに参加したふたりの中国人のブログをみると、よくわかります。はっきり言って、シベリアの辺境の鄙びた田舎町を訪ねているのにすぎないのですが、地元のロシア人の結婚式風景に出合ったり、スーパーでロシア食材を購入したり、ほのぼのとしたロシア旅情を味わっている様子です。

俄罗斯红石市--- 一座活在记忆里的城市
http://mozhiyu6.blog.163.com/blog/static/1404415202013710102944554/

俄罗斯猎奇----神秘的克拉斯诺卡缅斯克(红石市)
http://blog.sina.com.cn/s/blog_91658d830102vrzo.html

こちらは、ロシア国境の町のザバイカリスクと日帰りツアーで訪ねるクラスノ カメンスクに加え、ボルジャという町を周遊する2泊3日のツアーです。

满洲里出境-俄罗斯红石、博尔贾、后贝加尔斯克三市两日民俗游(2泊3日ツアー)
http://www.cncn.com/xianlu/649044287354
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以下は、満州里発ボーダーツーリズムの関連スポットです。

これが鉄道のロシア国境です。2年前までは、国門旅游区として中国側の国境塔に外国人も登ることができたのですが、2016年夏に訪ねたときは、外国人はNGになっていました。
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これは前述の日帰りツアーのバスが出る満州里の国境ゲートです。
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ロシアから来た旅行者が荷物をいっぱい車に積み込んでいます。
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これはツアーではなく、中ロの一般旅客が利用する国際バスターミナルです。
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ここでバスチケットを買います。満州里からザバイカリスクまでが92元、ボルジャまでは102元(なぜか復路は132元)です。
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陸路の国境に囲まれた中国の人たちがお隣の国へのボーダーツーリズムを気軽に楽しんでいることがわかります。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-10 16:14 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(1)
2017年 01月 07日

黒龍江省北辺の町、黒河のボート遊覧とロシアへの日帰り観光

極東ロシア人たちが国境を越えてお隣の中国旅行を楽しんでいる話を以前しましたが、もちろん中国の人たちもロシアへのボーダーツーリズム(国境観光)を盛んにやっています。

ロシア最果ての地の人たちは中国でどんな旅行を楽しんでいるのか(黒河編)
http://inbound.exblog.jp/26503104/
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たとえば、黒龍江省北辺の黒河では、黒龍江(アムール河)のボート遊覧が楽しめますし、対岸のロシア・アムール州の州都ブラゴベシチェンスクへの日帰りや1泊2日のツアーも催行されています。
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シベリアのかなたから黒土を運んでくる黒龍江の河の色は、近くで見ると泥色をしているのですが、夏になると晴れ渡った空の青みを映し出して、まるで海のようです。さすがにここまでは北京のPM2.5は届いてこないため、空気も澄んでいて、避暑を過ごすには気持ちがいい町です。この町の人たちは、約1kmほど離れた対岸のロシアの町を眺めながら暮らしています。この雰囲気は、タイやラオス、ミャンマーが国境を接するゴールデントライアングルで暮らす人たちの様子ととても似ています。

インドシナ3カ国が接するゴールデントライアングル最新国境風景
http://inbound.exblog.jp/22434567/

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冬になると、河は氷結します。この写真は春になって氷が溶け出している時期のものですが、黒龍江から押し出された氷の流れ着く先が、北海道網走の流氷というわけです。
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さて、この辺境の地を訪れた中国の人たちが必ず乗るのが黒龍江の遊覧ボートです。河沿いがずっと公園になっているのですが、その西端にボートの発着場があります。夏の間は、朝8時過ぎから1日6~7回、つまり1時間に1本くらいの間隔でボートは出ます。時間は決まっていなくて、客が数十人くらい集まった頃合いにのんびり船出します。料金は40元でした。所要30分くらいのショートボートトリップです。
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ふと見ると、河で泳いでいる人たちがいます。
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さて、ボートは下流に向かって走り出します。乗客は対岸のロシアをじっと眺めています。
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しばらくすると、対岸が近づいてきました。マンションが見えます。実は、ぼくが初めて黒河を訪ねたのは1990年のことです。その当時は、まだロシアにはこんな高いビルはなく、町並みもくすんでいました。中国側の黒河も同様で、満洲国時代の建物も数多く残っていて、町で「仁丹」と書かれた広告のペイントすら残っていたことを思い出します。もちろん、いまはまったく別の町のようです。
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河沿いでは、ロシア人たちが水浴びを楽しんでいます。
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観覧車も見えます。
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ライフセーバーの監視員もいます。
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以前、ウラジオストクに行ったときも、ロシアの人たちはこの時期(7月)、海水浴を楽しんでいました。おそらくシベリアの果ての極東ロシアで水浴びができるのは、7月から8月上旬くらいまででしょう。短い夏を楽しんでいる様子がうかがえます。

短い夏を満喫。ウラジオストクで海水浴
http://inbound.exblog.jp/20112110/
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サングラス姿の若いママさんもいました。
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ロシアの町だけあって、町並みはきれいです。中国側に量産されているなんちゃってロシア風建築とはモノが違います。
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さらに、下流に向かうと、コンテナ埠頭や中国との国境ボートの発着する港も見えてきました。
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乗客たちはこうしたロシア人の様子を望遠鏡でじっと眺めています。まさにボーダーツーリズムを楽しんでいるのです。
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ブラゴベシチェンスクの町外れあたりでボートは中国側に向かって折り返します。
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途中、ロシア人を乗せた遊覧ボートが近づいてきました。
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彼らもまたボーダーツーリズムを楽しんでいました。
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さて、ここまでは第三国人であるぼくも気軽に参加できるのですが、お互いの国へのビザなし日帰り観光ができるのが両国民の特権です。もちろん、日本人でも東京のロシア大使館で入国地をブラゴベシチェンスクと記載を入れたビザを取れば、中国人と一緒にツアーに参加できるそうですが、まあ面倒です。日露平和条約が結ばれたあかつきには、北方四島で同じことが実現されることになるのでしょうか。
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市内にはいくつかの旅行会社があります。黒河からはロシアの3つの都市へのツアーが催行されているようです。「布市」がブラゴベシチェンスク、「海参威」がウラジオストク、「哈吧」がハバロフスクです。ブラゴベシチェンスク行きは日帰りだけでなく、1泊2日、2泊3日もあるようです。
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日本人が訪ねてくることなどまずないので、珍しがられてロシア日帰りツアーの話をいろいろ教えてもらいました。
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これがブラゴベシチェンスク行きの日帰りと1泊2日のツアーパンフです。日程は、早朝7時に黒河口岸(イミグレーション)に集合。夏は船で、冬は氷結した河上をバスで渡ります。
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主な訪問地は、この写真にあるように、レーニン広場や凱旋門、シベリア鉄道駅、州政府ビルなどの古いロシア建築や教会をめぐり、ロシア料理の昼食を取る。午後は自由行動で、日帰りなら夕方には黒河に戻るというもの。1泊2日は、市内のホテルに宿泊し、ロシア人宅への家庭訪問などのメニューもあります。

ツアー料金は安く、日帰りで450元、1泊2日で750元が相場だそう。

実は、1年後に東京でロシアビザを取って黒河からブラゴベシチェンスクに渡り、シベリア鉄道でハバロフスクまで行き、中国に再び戻ってくる取材を計画しているところです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-07 10:44 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2016年 12月 28日

パクリ疑惑の上海「大江戸温泉物語」は笑えるけど、中国にはもっと面白くて刺激的な日本式温泉がある

先日、ネット上にお台場にある「大江戸温泉物語」のパクリ施設が上海にオープンしたとの疑惑告発記事が載りました。

上海の温浴施設にパクリ疑惑 「大江戸温泉物語」そっくり 日本側は関係否定、中国側は「調印済み」主張(産経ニュース2016.12.24)
http://www.sankei.com/world/news/161224/wor1612240041-n1.html


中国上海市の宝山区にオープンした温浴施設をめぐり、日本国内で温泉旅館などを運営している「大江戸温泉物語」(東京都)の店舗の模倣ではないかとの疑惑が浮上している。上海の温浴施設は同じ名称を使い、店舗の外観も酷似している。

日本の同社は「海外のいかなる企業や団体とも資本提携、業務提携は行っていない」と上海との関係を否定した。

一方で、上海の運営会社「上海江泉酒店管理有限公司」では、「2015年11月に中国での名称使用を授権した契約に調印している」などと強硬に反論しており、今後、日中双方のトラブルに発展しそうだ。

上海の運営会社は、日本の「大江戸温泉物語株式会社」が発行したとする日本語と中国語で併記の「公認証明書」も公表。「18年10月まで公認ビジネスパートナー」と主張している。
中国版のツイッター「微博」に開設された公式サイトによると、入館料は大人1人が138元(約2300円)。名称のロゴや大浴場、レストランや漫画が読める畳敷きの部屋まで、東京都江東区にある「東京お台場・大江戸温泉物語」にそっくりな作りという。


大江戸温泉物語
http://www.ooedoonsen.jp/

上海で人気の日本のスーパー銭湯「極楽湯」(これは本物)を訪ねたことがあります。若い女性を中心ににぎわっていたので、いまの中国では日本の温浴施設が広く受け入れられているのだなあと思いました。だから、新たに浮上した「パクリ疑惑」だなんて、いかにも中国らしい話です。

上海の「極楽湯」はありがたい存在だけど、料金は「日本の3倍」の意味するもの(2016.6.24)
http://inbound.exblog.jp/25944594/

すると、数日後には現場を検証するこんな記事が出てきたので、やれやれと思いました。

パクリ疑惑の上海「大江戸温泉物語」に行ってみた
「日本人が指導にやって来た」と主張する従業員(JB PRESS2016.12.27)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48789

このルポ!?では、実際に上海の「大江戸温泉物語」に行って、お風呂や食事などのクオリティを日本人の感覚に照らしてあれこれ評価を下していますが、どうやらまずまずのようです。

とはいえ、最も基本的なつっこみをするとすれば、上海市内に「温泉」が出るとは思えないことです。地中を何千メートル掘ったとしても。そうでないのに「温泉」を名乗ることに、この施設の弱みがあります。

それもそうですが、さらにおかしいのは、日中双方の関係者が「業務提携」をめぐって対立していることです。この記事では、上海側に(正式な取材とも思えないのですが)その点を問い質しています。記事にはこうあります。

「その従業員によると、オープン前に中国側の従業員12人が東京へ研修に赴いており、また東京からも日本人が従業員の指導に上海に来ていたといいます。「提携について双方の現場は把握していたが、幹部層が知らなかっただけではないのか?」という見解を述べていました」

この発言はいかにも中国人らしくて、つい声を出して笑ってしまいました。こういう言い方するんですよね、彼らは。

筆者はその後、日本の熊本県庁くまもと商標推進課に上海の大江戸温泉物語でくまモングッズが販売されている件について電話取材を行ったそうです。

「最初に尋ねたのは、当該施設の売店内に展示されていた、日本語で書かれたくまモングッズの商品販売委託契約書についてでした。その契約書中には、熊本県庁から販売が許諾されているという日本の業者名が書かれてありました。その日本の業者に対して熊本県庁は実際にグッズの取り扱いを許諾しているのかを確かめたところ、その点については事実で間違いないという回答が得られました。

ただし、その担当者は、「(県庁が)問題視しているのはグッズ販売ではなく、当該施設の内装にくまモンのデザインを使用している点です」と述べました。中国側の業者に対して許諾は出しておらず、現在も抗議を行っているとのことでした」

「施設の内装にくまモンのデザインを使用している点」に抗議? でも、いまの中国人でこの種の抗議に聞く耳を持つ人はいるのでしょうか。大いに疑問です。

さらに、筆者は商標使用権問題の当事者である日本の大江戸温泉物語に電話取材を行っています。

「同社は既に12月22日付で「いかなる海外企業との資本・業務提携を行っていない」という発表を行っています。そこで筆者は、従業員との話に出てきた、中国側従業員の研修を受け入れたという話が事実かどうかについて尋ねてみました。すると同社からは「22日の発表の通りです」という回答しか得られず、否定も肯定もはっきりとは行われませんでした」

あれっ? これはどういうことでしょう。そして、記事はこう結ばれます。

「筆者の企業取材の経験から述べると、何かしらあったのではないかと疑わせるような対応と言わざるを得ず、案外、話を聞いた従業員の言っていた通りなのではないかという可能性も否定できません。この件については双方の対応をもっとじっくり見続ける必要があるのではないかというのが筆者個人の見解です」

このしりきれトンボ的な記事を読んで最初に思ったのは、これに類することは、これまで日中間で数え切れないくらい起きていただろう、ということです。

たとえば、これは商標使用権問題ではないのですが、日本の100円ショップそっくりの中国版<10元ショップ>の「メイソウ(名創優品)」のことをご存知でしょうか。
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MINISO
http://www.miniso.jp/

この10元ショップ、日本のダイソーと無印とユニクロをパクったといわれています。

中国で急拡大中!ダイソーと無印とユニクロをパクったチェーン店「メイソウ」がヤバすぎる
https://matome.naver.jp/odai/2139800287435985001

敵もさる者、実際には中国企業なのに、店内に日本語表示を多用するなど、まるで日本企業の出店であるように見せているところがあざといのです。しかし、よく考えてみれば、英語やフランス語のブランドイメージを活用するのは、日本でもかつてはよくあったこと(いや、いまでもそう。いかに欧文名の企業名や商品名が多いことか)。これをパクリと言われてしまうと、みんな困ってしまうことでしょう。

もしメイソウの経営者にその点を指摘したら、「イメージ戦略として使っているだけのこと。100円ショップのオリジナルは日本なので、日本風に見せることは当然」と答えるのではないでしょうか。

上記サイトをみると、どんな商品が売られているかわかりますが、おそらく日本の100円ショップチェーンが中国でつくらせていた工場で、中国国内向けの商品を大量発注しているのではないでしょうか。要するに、彼らは日本のビジネスモデルをそのまま真似して、巨大な中国市場に打って出たのです。

ぼくは3年前上海の南京路でこの店を見かけたのが最初ですが、今夏、東北地方の田舎町でもずいぶん見かけました。

さらに、驚くべきは、この中国版10元ショップの「メイソウ」が、中国国内だけでなく、オーストラリアなど、海外市場へも展開中なのです。

日本の100円ショップチェーンが海外進出にもたもたしているうちに、日本のやり方をパクった彼らはすでに世界を相手にし始めています。こういうのを見るとき、(すべてとはいいませんが)日本企業というのはなんて残念な存在なのだろうと思わざるを得ません。なぜなら、本来自身は固有の価値を持つにもかかわらず、自らの市場価値を正確に推し量ることも、その可能性を想像することも、海外の市場の動きをつかむことも、できないように見えるからです。

話を戻しましょう。日本の温浴施設が中国で支持されていることは、上海のみならず、地方都市でも続々登場していることからもうかがえます。

今夏、ぼくは中国遼寧省の瀋陽や丹東でも、「江戸」をネーミングに採り入れた、ある意味きわどい日本式温浴施設に足を運んでいます。

たとえば、瀋陽にあるのは「大江戸温泉」といいます。

瀋陽大江戸温泉
http://www.ooedo.cn/

ここは「極楽湯」の世界そのものでした。あえて「極楽湯」と比べたのは、同施設の関係者に聞く限り、地中を深く掘った温泉だということですが、本当なのかどうか怪しい気もするからです。しかし、コストをそれなりにかけているせいか、岩盤浴などの施設は日本よりはるかにゴージャス。しかも、料金は上海の半額くらいで良心的。遼寧省の冬は寒いので、地元でも人気だそうで、今年10月、市内に2号店ができたばかりです。

そして、極め付きはこれ。丹東の「江戸温泉城」です。
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北朝鮮の町並みが露天風呂から丸見え!?  丹東の「江戸温泉城」にて(2016. 12.11)
http://inbound.exblog.jp/26446784/

上記記事を読んでもらうとわかるとおり、中朝国境最大のまち、丹東にある日本式の温泉施設で、5階の露天風呂から鴨緑江をはさんで、なんと北朝鮮の町並みが望めるのです。なんと刺激的な温浴施設でしょう。中国ならではといえます。

そして、これらの両施設はともに日本の専門業者が設計を担当しています。ですから、施設のクオリティは、少なくともハード面では日本と変わりません。あとはサービスの質をいつまで維持できるか。さきほどのパクリ疑惑がささやかれている上海の「大江戸温泉物語」も、基本的に同じなのではないでしょうか。

つまり、上海の「大江戸温泉物語」も、設計は日本の業者が担当しているのでは、と考えられます。

ですから、今回の「疑惑」に関しても、彼らに話を聞くのがいちばん早いのでは、と思うのですが、どうでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-28 22:48 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2016年 12月 28日

実は香港客だった!?「新千歳空港で中国人観光客大暴れ」報道、中国側の反論

先日、新千歳空港で起きた「中国人観光客大暴れ」報道については、中国でも話題になっていたようです。

「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える
http://inbound.exblog.jp/26507044/

上海在住の友人はこう言います。

「中国のSNS上では、中国人の恥さらしだ、けしからん。そう嘆く人も多いのですが、一方で航空会社の不手際と空港側の対応を非難する声も多いです。事実かどうかわかりませんが、彼らの反論の主旨は「航空会社がホテルを手配せず、3日間も空港での缶詰め状態で、かつ中国だったら当然ある飲食の差し入れもなく、そして航空会社からの満足のいく説明がない。これなら乗客が怒って当たり前だ。これで黙っているのは、異常な忍耐力のある日本人だけだ。これでおもてなしとか、サービスが良いとか言ってる日本人が聞いて呆れる」というものです。

ここでのひとつのポイントは食事です。天候不順やよくわからない理由で航空機が遅延した際に航空会社の職員に詰め寄って、大声で抗議しまくるのは、中国大陸ではよくあることです。ニュースになるなんてありえないくらい、本当によくあることです。

ただそういった場合、中国の航空会社も慣れたもので、まずお詫びと誠意の印として弁当などの食事とミネラルウォーターを出してくれます。中国人の気を静めるのに「食事」が重要だということをわかっているからです。食への思い入れは、日本人には想像できないものがあります。だから、航空会社は乗客を絶対に空腹にさせないことをまず考えます。中国人に日本人のような忍耐力と自己犠牲を求めるのは不可能です。他のみんなも同じ状況なのだから、自分だけ不平不満をいうのはやめようなどとは、考えられない人たちです。

そういう事情をふまえて中国側の記事を読むと、少しでも中国事情に精通している人であれば、なるほど彼らが言いたいのはそういうこと(日本側にも落ち度があったに違いない)かと納得できます。そこがわからないと、また愚かで傲慢な中国人がバカをやらかしているという最近日本でよくある失笑誘いネタになってしまいます。

今後も、アジア、特に中華圏からの観光客が増えていくなかで、マナーうんぬんは別にして、空港など公共施設や交通機関は、リスク管理が必要だと思います。

ちなみに、今回トラブったのは、正確には中国大陸人ではなく香港人のようです。そのことに、日本のメディアがどこまで気がついていたのか。もしそれを承知で「中国人観光客」と書いているのだとしたら、最近の中国人を蔑んで喜んでる系の大衆迎合報道と受け取られても仕方がありません」。

そうなんです。騒ぎを起こしたのは、中国客ではなく、香港客だったというのです。あるいは、これでは中国報道をただうのみにしたことになるので、公平を期して言うと、香港便の乗客だったようなのです。ただし、香港便は広東省住民もよく利用するので、本当のところはわかりません。

※新千歳空港の香港便は、日本航空とキャセイパシフィック航空(共同運航)、そして中国の海南航空のグループ会社の香港航空です。

さらに、彼のいう「それを承知で「中国人観光客」と書く」という意味は、ちょっと込み入っています。中国では、香港も台湾も「ひとつの中国」として見ています。つまり、香港人も台湾人も中国人だというのが中国政府の主張です。一方、日本に限らず海外のメディアは、「ひとつの中国」という主張を一応受け入れながらも、実は香港も台湾も民主的な社会である以上、中国とは別物として見ています。実際、当の本人たちもそう考えている。ですから、今回日本のメディアが騒ぎを起こした香港客のことを「中国人観光客」と書くことは、中国政府の主張に立てば間違っていないのですが、中国のネットユーザーからみると、「普段は香港も台湾も中国とは別物」と言わんばかりの日本のメディアが、粗相をしたときに限って、香港客を「中国人観光客」と書くのは底意地が悪すぎる、というわけです(ああ、面倒臭さい)。

以下は、中国版SNSのWe Chat(微信)に転載された記事です。

100余名中国游客航班延误大闹日本机场?这些幕后细节你也要知道!(100名の中国客が日本の空港
で大騒ぎ? あなたはこの舞台裏の詳細を知らなければならない) (原创 2016-12-26)
http://mp.weixin.qq.com/s/m-9PhwJQNwt3RB5zhNlB4w

上海の友人の見解は、この記事を読んで書いたものでした。日本のメディアでは一方的に中国客が悪いと報じているけれど、日本の空港側にも不手際があったのではないか、という中国側の反論です。彼らがこのように言いたくなるのは、以下のような日本のテレビ番組に対しても見られたものと共通しています。彼らだって言われ放題ではたまらないと思うのは当然のことでしょう。

中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!? (2016.5.30)
http://inbound.exblog.jp/25834092/

彼のメールを読みながら改めて思ったのは、不測の事態に陥った中国人にケアする際の「食事」の重要性の認識です。このあたりは、日本人にはまったくわからないですよね。日本人なら、物事には優先順序があり、まず重要なのは正確な情報で、こんなときに食事のことなんて言ってる場合じゃない。それが普通の感覚でしょう。

でも、彼らはそうではないのです。ひとまず落ち着かせるためには、食事に最も気を使うべきだった、というわけです。だとしても、3日3晩も夜明かしした人がいたとしたら、それどころの話ではなかったでしょうけれど。

要は、彼が言いたいのは、これだけ中国客が増えた以上、中国客専用の「取り扱い説明書」をつくり、その内容を空港関係者も把握しておかなければ、今回のようなことがまた起きるということです。

空港側が実際に夜明かし客にどのような対応したか具体的に知らないのに、あれこれ書くのは気が引けますが、考えられることは、空港側と外国客との間のコミュニケーションが十分とはいえなかっただろうということです。

基本的に日本人には中国人のモノの考え方がよくわからないので、日常的にもコミュニケーション不全に陥りやすいわけです。である以上、こういう特殊な状況ではなおさら、マニュアル的な対応だけでは、中国の人たちに対して、こちらの配慮も届かないことをまずは知るべきなのでしょう。

一方、香港のような亜熱帯に暮らす人たちは、大雪で欠航という事態を頭ではわかっても、現実的に受けとめることは簡単ではないことが考えられます。彼らにとって大雪とは天変地異と変わらないでしょうから。それだけ彼らは精神的に追い詰められていたということでもあります。

日本人の感覚では、空港の滑走路を覆う大雪を見ながら「こういう状況なんだから、しょうがないでしょう」と暗黙のうちに、言葉をかけなくても、相手も理解してくれるだろうと期待するかもしれません。しかし、それが以心伝心で伝わるのは、国内客とサハリンから来たロシア客だけだったかもしれません。

まったく難しいものです。

【追記】
その後、この件の真相を解き明かす検証記事が出てきました。

興味深いことに、以下の記事では、中国側が指摘する「騒動を起こしたのは、中国客ではなく、香港客(正確にいうと、香港線の乗客)」は誤りのようで、「13:50発予定の北京行の中国国際航空のCA170便」の乗客であるかのように書かれています。

「新千歳空港で暴れた中国人乗客」騒動の真相(Wedge2017年1月17日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8701

えっ、騒動を起こしたのは、やっぱり中国客だった? 

一方、この記事を受けて、ひとりの在日中国人の論客が以下の記事を書いています。

中国人観光客による新千歳空港での「暴動」、真相はこうだった(ダイヤモンドオンライン2017.1.19)
http://diamond.jp/articles/-/114700

これによると、「新千歳空港で3日間も足止めされた香港の女優ミッシェル・リー(李嘉欣)もいよいよ我慢できなくなったのか、12月25日未明の3時頃、SNSの微博にキャセイパシフィック航空を名指して、私たちは新千歳空港で3日間も待たされていたのに、キャセイパシフィック航空から情報の連絡や手配の一つも提供されていない。一方、他の航空会社は次々と運航を再開した、と批判の書き込みをした」とあり、おそらくこれに中国側が反応して、「騒動を起こしたのは香港客」という判断が生まれたでのはないか、という気がしないではありません。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-28 20:40 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(3)
2016年 12月 27日

「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える

年の瀬にこんな話を書きたくないのですが、また訪日中国客の騒ぎが報じられました。TBSが伝えています。

「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ(TBS系(JNN) 12/26(月) 14:10配信)
https://www.youtube.com/watch?v=3Og11ZvYUrM


大雪の混乱が続いた北海道の新千歳空港で、飛行機が欠航したことに腹を立てた中国人が、警察官に激しく詰め寄る騒動がありました。

中国人観光客がゲートを勝手に越え、駆け付けた警察官に激しく詰め寄ります。撮影されたのは24日午後8時ごろ、新千歳空港の国際線ターミナルで、大雪のため飛行機が欠航したことに腹を立て、100人ほどの中国人が騒ぎ出しました。さらに、数人がゲートを勝手に越えたため、警察官と小競り合いになりました。この騒ぎによるけが人はいませんでしたが、2人が気分が悪くなり病院に運ばれました。

新千歳空港では大雪の影響で、22日から24日の3日間で、1万1600人が空港で寝泊りしました。


いったいなぜこんなことが起きてしまったのか。現場で取材することはできないので、ネットなどで知りうる限りの情報から考えてみたいと思います。

まず北海道の天気から。確かに、今月22日(木)、23日(金)と札幌は大雪だったようです。

札幌の過去の天気(2016年12月)
http://weather.goo.ne.jp/past/412/

NHKも大雪による欠航や「新千歳空港では23日に284便が欠航し、空港で夜を明かした人がこれまでで最も多い6000人に上」るとすでに報じていました。「50年ぶりの大雪」ともなれば、夜明かしも無理はないことでしょう。

北海道で50年ぶりの大雪 交通への影響続く(NHK12月24日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161224/k10010818641000.html

北海道では各地でまとまった雪が降り、札幌市では12月としては50年ぶりの大雪となりました。JRが札幌駅を発着する24日午前中のすべての列車を運休するなど、影響が続いています。

札幌管区気象台によりますと、北海道の各地は23日、日本海側の南部を中心に大荒れの天気となり、雪が降り続きました。

札幌市では23日午後9時すぎに96センチの積雪を観測し、12月としては昭和41年以来50年ぶりの大雪となりました。

札幌市では24日午前中から除雪に追われる人たちの姿が多く見られました。このうち札幌市北区の住宅街では、住民が道路に出て、シャベルなどを手に、家の前に降り積もった雪を次々に片づけていました。

除雪された雪は場所によっては2メートルほどの高さにまで積み上げられ、山のようになっています。

雪の山が車道にはみ出して、車1台がやっと通れる幅しかないため、行き交う車が道を譲り合う様子などが見られました。

70歳の男性は「雪かきの作業を始めて2時間くらいたちます。今月は珍しいくらいに次々に降るので、除雪も大変です」と話していました。

また、28歳の男性は「クリスマスイブに雪があるということは、ロマンチックでいいことなのでしょうが、雪の量があまりにも多いので、半分くらいがちょうどいいですね」と話していました。

気象台によりますと、24日は冬型の気圧配置が緩み、天気は回復していますが、気象台は積もった雪による雪崩や交通への影響に注意するよう呼びかけています。

新千歳空港 混雑続き遅れも

23日に欠航が相次いだ北海道の新千歳空港は、24日もキャンセル待ちの人などで混雑し、発着便に遅れが出ています。

国土交通省新千歳空港事務所などによりますと、新千歳空港では23日に284便が欠航し、空港で夜を明かした人がこれまでで最も多い6000人に上りました。

24日も航空会社のカウンターの前にはキャンセル待ちをする人などで長い列ができています。

搭乗手続きに時間がかかっているほか、JRが運休している影響で、発着する多くの便に遅れが出ています。また、空港のバスの乗車券売り場は、JRが運休している影響で、バスで札幌などに向かおうと長い列ができていました。

空港事務所によりますと、24日は1日を通してまとまった雪は降らない見通しで、機材繰りで欠航となっている一部の便以外は運航する予定です。航空各社は、今後も発着に遅れが出るおそれがあるとして、最新の運航状況を確認するよう呼びかけています。


さて、この事件の背景がだんだん見えてきました。

問題は、すっかり晴れたという24日(金)になっても、乗れない人たちが続出したことだと考えられます。乗客たちの多くは当然、飛行機に乗れるだろうと思ったのに、そうならなかったこと。これが一部の中国客の混乱を呼んだものと思われます。

しかし、空港の除雪作業もあったでしょうし、何より3日間で「1万1600人」が空港で夜明かししたわけですから、当日客もいる以上、どんなに機材をやりくりしても、全員が乗れると考えるほうが無理があったと思われます。

空港で夜明かしした人は、国内客も含め、中国客ばかりではなかったことでしょう。新千歳空港の国際線は、中国線以外にも、ユジノサハリンスク(ロシア)やソウル、プサン、大邱、台北、高雄、香港、バンコク、クアラルンプール、シンガポール(ホノルルとグアムはアウトバウンド路線なので外国客は少ない)があります。

ちなみに中国路線は以下のとおりです。

北京
中国国際航空CA170(全日本空輸 NH5757) 13:50発 火・水・金・土・日曜運航(12月19日から毎日運航)
天津
天津航空GS7972 20:05発 金・日曜運航
上海
中国東方航空MU280(日本航空JL5633) 13:30発 毎日運航
春秋航空9C8792 13:50発 毎日運航

新千歳空港HP
http://www.new-chitose-airport.jp/ja/

これをみると、北京、天津、上海のすべてが木・金いずれかが運航日になっているので、中国客の多くが空港で夜明かししたことがわかります。

一般に天候などの理由で国際線が欠航した場合、乗客は航空会社が宿泊ホテルを手配し、そこで一夜を明かし、翌日便に振り返られます。実は、ぼくは北京空港で2年連続欠航の憂き目に遭い、航空会社が手配した空港に近いホテルに泊められたことがあります。

ただし、北京で欠航になったのは、大雪ではなく、PM2.5による視界不良で航空機の発着が不可能になったためでした。最近も改善していないようです。

北京の街が白く…PM2.5で大気汚染深刻(日テレNEWS24 2016年12月20日)
http://www.news24.jp/articles/2016/12/20/10349524.html

中国・北京で20日朝、大気汚染物質PM2.5の値が上昇するなど状況が悪化している。

16日から大気汚染警報としては最も重い「赤色警報」が発令されている北京では、20日朝、PM2.5の値が日本の環境基準の10倍以上になった。警報を受け、北京では車のナンバーによる車両規制を行ったり、一部の工場で操業を停止したりするなどの緊急措置がとられている。

市民「気持ち悪い気がするが、マスクをするとだいぶマシになる」

来年2月からは排ガス規制の基準を満たさない乗用車の中心部への乗り入れ禁止などが決まっているが、対策が追いついていないのが現状。


中国の新人類は日本の青空に魅せられている
http://inbound.exblog.jp/24302307/

そのとき、ぼくはチェックインをする前から遅延だと言われ、空港で5時間近く待たされましたが、結局、夕方になってようやく欠航だと告げられました。北京空港の空の事情ゆえに、日本から航空機を本当に飛ばして大丈夫なのか、決めかねていたものと思われます。大雪とか台風といった理由ならわかりやすいのですが、PM2.5による視界不良という事態は、中国ならではの特殊な事情だからです。実際、空港は深い霧に覆われたような世界でした。空港に向かうタクシーも50m先くらいしか見えない状態でした。

「いったい、どうなるの? まさか、ホテルを手配してくれないってことはないよね」。

こういうときに、どう適切に乗客に対応するかが航空会社のサービスの評価になるのですが、たとえ日系航空会社の便だとしても、北京線は中国系との共同運航も多く、実際は中国系と変わらない場合も多い。

で、当然のように、きちんとした説明もなく、いきなり数人の職員が現れ、「これからホテルに移動します」と声をかけられ、バスに乗ることになりました。特に欠航の理由を説明されたわけでもなく、まあひどい対応です。こういうとき、中国人はすぐに官僚的になり、サービスのことなど考える余裕すらないようです。実は、ぼくは同じことを2年連続で経験したため、2度目のときは、市内に戻り、昨日まで泊まっていたホテルに頼んで連泊扱いにしてもらいました。

あてがわれたホテルとそこで供された食事がひどかったせいもありますが、せっかく滞在が延びたので、友人と一緒に食事をするほうがずっと楽しいと思ったからです。

結局、こういう場合、地元客は自宅に帰って待機すればすむ話なのですが、外国客はそうはいきません。ぼくの場合も、通い慣れていた北京だったので、しかも同じことを2度も経験したことから、それなりの対処法をとることができたわけです。

でも、そうはいかないケースがほとんどでしょう。これは特に中国線にいえることですが、北京、天津、上海線のどれも大半の乗客は、日本客ではなく、中国客だからです。つまり、欠航した航空会社が彼らのためにホテルを用意できたかというと、(これは事実確認できない以上、よけいなことは書けませんが)当然難しかったでしょう。空港周辺のホテルの客室には限りがありますし、クリスマスシーズンを北海道で楽しみたいと訪れたいた外国客はハンパなく多かったからです。

また、はっきり言えば、海南航空のグループ企業にすぎない天津航空やLCCの春秋航空では、最初から対応することは考えていなかったでしょう。LCCは安価と引き換えに自己責任が伴うのは世界の常識です。

ところで、このニュースをぼくは最初、ヤフーで知ったのですが、コメント欄をみると、あるジャーナリストの以下のような書き込みがありました。

「こうした出来事によって、日本人の中国人全体に対する悪感情が強まるだろうと思うと、とても残念です。多くの日本人は「ああ、やっぱり中国人は・・・」と思うことでしょう。でも以前、私の上海の友人も新千歳空港でまったく同じ出来事に遭遇して、悲しい思いをしたことがあったと話してくれたことを思い出しました。その人は日本語ができるので、暴れる中国人たちを制止して、厳しく注意した上、日本のマナーを教えてあげるとともに、このような出来事によって、他のちゃんとした中国人が日本の旅行先で、どんなにつらい思いをしているかわかるか、と涙ながらに語った、と話してくれました。今回、現場がどのような状況だったかわかりませんが、暴れた中国人たちが、日本人の係員や空港関係者に迷惑を掛けただけでなく、中国人観光客全体のイメージも大きく下げていることに気づいてほしい、と願うばかりです」

う~ん、これどうなんでしょう。

これまでぼくは本ブログでも、訪日中国客の増加に伴いメディアなどでも扱われるようになったこの種の騒ぎについて書いてきました。特に今年に入ってその回数は増えています。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は? (2016.3.5)
http://inbound.exblog.jp/25461430/
中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!? (2016.5.30)
http://inbound.exblog.jp/25834092/
韓国メディアが教えてくれた銀座のツアーバス駐停車90秒ルール (2016.6.15)
http://inbound.exblog.jp/25913731/
中国個人客の増加で電車内でのトラブルが増える予感 (2016.11.15)
http://inbound.exblog.jp/26380202/
〔TBS・Nスタ〕中国人観光客はなぜ民家に侵入して自撮りをするのか? (2016.11.16)
http://inbound.exblog.jp/26383490
中国客が挙動不審に見えてしまう理由(すでに個人比率54%というけれど) (2016.11.19)
http://inbound.exblog.jp/26390881/
じわじわ増えている医療観光だが、盲点を突くあの手この手の不正も明らかに (2016.12.9)
http://inbound.exblog.jp/26442310/
中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道 なぜ彼らはそこまでやるのか (2016.12.16)
http://inbound.exblog.jp/26479516

この種の報道があるとき、いつも思うことですが、件のジャーナリストのような情に訴えるようなもの言いは、広く共感されるようには思えません。もちろん、ネットに安易に書き込まれる悪意のこもった文面をみると、そんな正義感もわいてくるのかもしれませんが、大半の日本人は中国の現状を知る限り、自分には関係ないし、彼らとは関わりたくはないと思うだけで、わざわざ罵声を浴びせたいとすら考えていないと思われます。事情をよく知る者としては、こうした状況をどう受けとめるべきか客観的な判断を示し、さらに悪化しないためにどうすればいいかという対処を考えるべきでしょう。

残念なことですが、中国ではこの種の騒ぎはままあるものです。そうはっきり言うべきです。

特に中国の国内線に乗ったとき、遅延などあろうものなら、今回のケースほど深刻でなくても、日本では考えられないことはよくあります。あるときなど、航空機が搭乗ゲートを離れ、出発準備態勢に入ったというのに、何らかの理由で管制塔から離陸の許可がなかなか出なかったため、乗客はシートベルトをしたまま滑走路の上で1時間近く待たされていたのですが、機内はもう大騒ぎ。隣の席の子供がトイレに行きたいというので、親が客室乗務員にそう伝えたところ、「いつ離陸許可が出るかわからないので、この段階でトイレに行ってはならない」と回答。「では子供が席でおもらししたらどうするのだ」と親が言うので、その男性客室乗務員は「これにおしっこを入れてください」と空のペットボトルを持ってくる始末です。呆れて眺めていると、親は安心したように、座席で子供におしっこをさせていました。

子供のせいだから仕方がない……。この感覚をよしとする風潮がいまの中国社会にはあります。国際社会の感覚とはかなりズレていることは疑いようがありません。こうした彼らのズレた感覚の実例とその背景については、上記のブログ記事で実情に即して説明してあります。

もちろん、説明を読んだところで、なるほどそうかと受けとめることができない面も多々あるでしょう。それが証拠に、実際もし今回と同じことが欧米の空港で起こった場合、逮捕者が出ていたかもしれません。日本は何事も穏便にすませたいと処理するのが普通です。

そうしたすべてのことを差し引いても、今回のケースは、誰であれ、イライラが極限まで高まる状況にありました。その際、国内客であればまだ対処のしようがあったことも、日本に慣れていない外国客は、いかんともし難かった。彼らの多くには、なんの救いの手もなく、別の選択肢もなかったわけですから。なにしろ「50年ぶりの大雪」です。本来、いちばん同情されるべきは、夜明かし客の皆さんだったのに、それをぶち壊しにしてしまったことは、なんとも後味の悪い結末といえます。

実際、新千歳空港の職員も、さぞ大変だったことでしょう。今後、中国客をめぐるリスク管理から関係者は逃れることはできないという事実は静かに受け入れるしかありません。逆にいえば、中国客を相手にする際は、日本では起こりえないこの種のことは想定内と考えなければならないでしょう。

というのも、中国では人が多く集まる場所(空港や駅はもちろん、広場や公園、商業地などもそう)には必ず公安警察やときには武装警察まで多数配置されています。いついかなるとき、騒ぎが起こるかわからない社会であることをいちばん理解しているのは中国政府です。

ですから、観光庁はそろそろ中国国家観光局とのこの点についてもっと積極的かつ冷静に話し合いを持つべきではないでしょうか。

中国国家観光局 
http://www.cnta.jp/
http://www.cnta-osaka.jp/

【追記】
この一件について、中国側から反論が出ているようです。

実は香港客!?だった「新千歳空港で中国人観光客大暴れ」報道、中国側の反論
http://inbound.exblog.jp/26510740/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-27 10:10 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 25日

ロシア最果ての地の人たちは中国でどんな旅行を楽しんでいるのか(黒河編)

中国最北部に位置する黒龍江省は、周辺をロシアに囲まれていて、両国民の国境を越えた交流は盛んです。日本人は、このような国境を河で隔てた土地で生きる人たちの自由闊達な生活感覚について、ほとんど知らないのではないかと思います。

今年7月、黒龍江省北部でアムール河(黒龍江)のほとりにあるロシアとの国境のまち、黒河を訪ねました。
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省都のハルビンから夜行列車に乗って、朝6時に黒河到着。
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寝台車両ですでに見かけていたのですが、ロシア人観光客が多く乗っていました。
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これが黒河駅です。
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若いロシア人カップルも多くみかけました。彼らの多くは、黒河の対岸のブラゴビシェンスクというロシアの都市から中国旅行に来た人たちです。
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さて、ぼくは黒龍江のほとりに建つ黒河国際飯店に予約を入れていました。ホテルの屋上から見た対岸のブラゴビシェンスクの町並みです。川辺に浮かんでいるのは、中国人を乗せた国境観光を楽しむ遊覧船です。
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一方、こちらが黒河市内です。都市の規模も人口も、中国側が当然勝っています。
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駅で会ったロシア人たちは、黒河で一泊する場合、市内のもっと安いホテルに泊まるか、その日のうちに船でロシアに帰ります。1泊5000円相当の料金なので、えらそうに言うつもりはありませんが、黒河でいちばんいいホテルとされる黒河国際飯店には、ぼくのような外国人か、遠方から来た中国国内客、ロシア人ビジネスマンなどが利用することが多く、対岸のブラゴビシェンスクから格安ツアーで来るロシア人観光客が泊まる宿はもっとリーズナブルな場所がいくらでもあるのです。

さて、ロシア人たちは黒河で何をして過ごすのでしょうか。実は、黒河は中国にしては(なんていい方は失礼かもしれませんが)、空気も澄んでいて、中国的な猥雑さは少なく、信じられないくらいきれいな町です。1年のうち大半は厳寒の地だけに、短い夏(6月から8月くらい)を惜しむかのように、市民はこの季節を楽しんでいます。もちろん、ロシア側に比べると、町のにぎわいがあるはずです。

ロシア人たちは、そこで買い物に明け暮れます。安価で役立つ日用品や衣料など、ここぞとばかりに買い込んで帰るのです。モスクワから遠く離れた極東という土地ゆえの物価高と慢性的なモノ不足という事情があります。
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彼らが繰り出すのは、ロシアに戻る船の出る国境ゲートに近い大黒河島貿易城のロシア人向けショッピングモールです。
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ここは中国の国内客がロシア産品、たとえば、ロシア産ビールやウォットカ、チョコレートなどを買っていく場所でありますが、ロシア人たちは、中国産の日用品などを購入していきます。
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これがロシアに戻る船です。
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ちょうど護岸工事をしていて、港の周囲は土盛り状態でした。
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黒河市のメインストリートである中央街の一部は歩行者天国で、「中央商業歩行街」と呼ばれています。この界隈もロシア人にとってのショッピングゾーンです。
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この通りで目につくのは、ロシア語の看板を掲げる商店です。
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ロシア料理店もいくつかあります。歩行者天国のはずれにある「レナ・レストラン(列娜餐庁)」はロシア客ばかりでした。
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これがメニューです。基本、西洋料理ですが、ボルシチがあるのが特徴です。
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パスタとボルシチを頼んだら、新疆(ウイグル)料理風のパンが出てきました。
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衣料品の店も人気のようで、ロシア人女性が何人かである店に入ったので、どんなものが売られているのか覗いてみました。3元=100ルーブルが相場のようです。
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失礼しました。下着のお店でした。でも、ロシアの人たちにとって、こういう日用衣料がロシアに比べ中国はとても安いので、まとめ買いしたくなるのです。
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もうひとつ目についたのは、100円ショップならぬ「2元ショップ」です。2元は日本円で35円くらいなのですが、きっと現地感覚では100円くらいの値ごろ感なのでしょう。ただし、売っているのは「安かろう悪かろう」という感じでした。こんなの、ロシアの人たちは買うのだろうか? 
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そんな疑問を感じていたところ、この町でいちばん大きなショッピングモールと思われる華宮商場に、日本の100円ショップそっくりの中国版10元ショップの「メイソウ(名創優品)」が出店していました。
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この10元ショップ、日本のダイソーと無印とユニクロをパクったといわれています。
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MINSO
http://www.miniso.jp/

店内には、中国客も多いですが、ロシア人の若い女の子も多いです。100円ショップは世界中の若い子に人気のようですね。

これは商場の装飾品売り場です。安い中国の装飾品は、彼女らにとってお値打ちでしょう。
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最後は、黒河空港で出会ったロシア娘です。彼女らはスマホを当たり前に使っています。もちろん、中国製でしょう。
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黒河空港では、搭乗まで歩いていきます。
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これまで見てきたのは、中国最北端、さらにいえばシベリアの僻地ともいうべき町での出来事です。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-25 19:46 | ノービザ解禁間近!極東ロシア | Comments(0)
2016年 12月 23日

ハルビンの「中華バロック」文化街が面白い

近年中国東北地方では、外国人租界のあった上海や青島、天津などで十数年前に起きていた1920年代を復古するレトロブームの東北版ともいうべき「百年老街」が各地に生まれています。その多くは、かつての旧市街の一画を再開発した観光地区や当時の町並みを再現したテーマパークです。

中国東北のレトロブーム「百年老街」と丹東のテーマパーク「安東老街」
http://inbound.exblog.jp/26446671/

黒龍江省の省都ハルビンの老道外中華バロック歴史文化区も「百年老街」のひとつ。20世紀初頭、ロシアが建設した東清鉄道は満州里から東南に向かって延び、松花江を渡って市内に入り、ハルビン駅に至るのですが、当時、その鉄路(現在の濱州線)の西側はロシア人を中心にした外国人居留地となり、東側の「道外」と呼ばれた地区に中国人が住んでいました。

その後、この「道外」地区に西洋のバロック建築と中国の伝統的な様式が奇妙に融合した「中華バロック」と呼ばれる折衷建築群が生まれました。その特徴は以下のとおり。

「外観は、一見すると西洋古典系建築と、とくにバロック建築に似ていながら、その細部をよく見ると本来の西洋建築とは大きく異なる。また、建物の内部は伝統的な中国の都市建築、すなわち、一階を店舗として、二階から上を住宅にしたり、あるいは、一階の店舗の部分の中央を二階までの吹き抜けとして、建物の奥に住居部分を加えている。また、通路を通って奥に行けば中庭が広がり、それを取り囲んで長屋のような住宅が建てられていることもある。いずれにしても、道路に面した一階部分は商店や飲食店であることがほとんどである」(『「満洲」都市物語 ハルビン・大連・瀋陽・長春』(西澤泰彦著 河出書房新社 1996年))
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こうした構造上の特徴もそうですが、たとえば、最も代表的とされる元同義慶百貨店(現・順化医院)の場合、過剰な装飾性を特色とする西洋バロック建築に似せて、中国の植物などをモチーフとした彫刻を建築の表面に飾り立てていることでしょう。西洋建築では、古代ギリシャ以降、モチーフとして装飾によく使われたのは、聖なる植物とされた地中海産のアカンサスの葉ですが、ここではまったくの別物です。
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日本で最初にハルビンの「中華バロック」建築を紹介した建築学者の西澤泰彦さんの前述の著書には、建物の正面の柱頭部分の装飾について「西洋建築本来のアカンサスの葉を載せたコリント式の柱頭からはほど遠く、よく見れば白菜に似ている」と書かれていますが、本当にそうですね。
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こちらは、順化医院の通りをはさんだ向かい側の建物です。現在は金を扱う金行です。この建物の壁面の装飾も面白いです。
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これが外観は西洋建築でありながら、近づいてよく見ると、東洋的な印象を与える理由でしょう。当時の中国の職人が見様見真似で西洋建築らしく見えるように急ごしらえした事情もあると思われますが、結果的に、世にも不思議な風合いを持つ世界が現出しているのです。

これは20世紀初頭の道外の写真です。
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その特色ある建築群は長い間放置され、老朽化していました。それでも、2000年代半ば頃から少しずつ補修作業が始まりました。それが老道外中華バロック歴史文化区として全面的に再開発され、多くの飲食店が老舗の看板を掲げ、観光スポットとなってきたのは、2010年代になってからです。
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このポスターは、北京の代表的な老街である后海の名を挙げて、ハルビンの老道外も悪くないだろうと訴えています。
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地区には、創業から100年近い歴史をもつ肉まん屋の「張包舗」のような飲食店もあります。
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また東北地方の古い演芸「二人転」などの劇場もあります。
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二人転
http://www.china7.jp/bbs/board.php?bo_table=2_7&wr_id=31

レンガ造りの老建築のレトロな感覚を活かしたゲストハウスやカフェもでき、国内各地から若い旅行者が訪れるようになっています。
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ところで、東北地方で「百年老街」という場合、南京条約(1842年)や北京条約(1860年)で開港された上海などの沿海都市のケースとは違い、ロシアの南進が顕著となった清朝末期の19世紀半ば頃より、山東省などから満洲へ移民労働者が大挙して渡り、各地に華人街ができたという経緯から、そう呼ばれています。あくまで主人公は当時もいまも、外国人ではなく、華人というわけです。

ハルビン老道外中華バロック歴史文化区
http://laodaowai-baroque.com/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-23 10:41 | 北東アジア未来形:満洲の今 | Comments(0)