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2013年 11月 06日

台湾でいまホットな話題は「シニア旅行」と「自由旅行」(台北ITF報告その6)

海外の旅行博で面白いのが「論壇(フォーラム)」です。そこで議論されるテーマや話題は、その国の旅行市場を理解するのに役立つ多くの示唆を与えてくれるからです。登壇してくる企業関係者やトレンドを代表する人物らがどんな発言をするかを通して、現在の市況はもちろん、今後のマーケットの見通しがそれなりにうかがえるからです。
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フォーラムは最終日の21日(月)にありました。テーマはふたつ。「シニア旅行」と「自由旅行」でした。これがいまの台湾の旅行関係者や消費者にとって最も関心の高い話題だというわけです。ちなみに、今年4月北京で開催された中国出境旅游交易会2013のフォーラムの主要なテーマも同じ「自由旅行」でしたが、議論の内容は少し違うものでした(→「世界一になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか~中国の不満とその言い分(COTTM2013報告 その4)」)。

台北国際旅行博 旅游論壇(登壇者のPW資料をダウンロードできます)
http://www.taipeiitf.org.tw/Content/article2.aspx?Lang=1&SNO=02000042&TT=1

まず午前中に行われた「シニア旅行」に関するフォーラムから紹介しましょう。登壇者は以下のとおりです。
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司会進行:蘇成田(台湾国際旅行博主任委員)
基調コメント:Dr.Chuck Y.Gee(ハワイ大学ホテル管理学院名誉院長)
コメンテーター:沈方正(ホテルロイヤルグループ・ジェネラルマネジャー)、黄信川(雄獅旅行社総経理)、有村青子(指宿シーサイドホテルおかみ)

冒頭で、司会進行役の蘇成田ITF委員から、台湾のシルバー人口の増加に関する簡単な報告がありました。台湾でもシルバー世代の人口がふくらんでおり(2013年現在、11.3%)、2020年には65歳以上の人口が15%を超えるそうです。先進国で最も高齢化率の高い日本(2020年は25%超)に比べると台湾はまだ低いといえますが、現在の出生率は日本より低いため、40年代には日本とほぼ並び、30%を超えるといいます。

その一方、シルバー世代は時間とお金があり、旅行意欲は高い。だが、台湾ではまだシニア向けと若者向けの旅行商品は未分化で、今後は業界としていかにシルバー世代のニーズに対応するかが課題というわけです。こうした議論は、日本では1990年代から盛んに行われてきたものです。
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Chuck Y.Gee教授の基調コメントのタイトルは「The 21st Century Wave of Tourism :Surfing the Silver Tunami(21世紀のツーリズムの波:シルバー世代の“つなみ”を乗り越える」でした。教授は豊富な資料を駆使しつつ、今日のシルバー旅行について、以下のポイントを指摘します。
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①21世紀の高齢化の波は、台湾ではもちろん、世界中で起きている未曾有の経験であること。
②シルバー世代には時間はあるが、「なぜこんなに時計の針が早く進むのか」とも感じていること。現在のシルバー世代は「沈黙の世代(~1945年生まれ)」と「ベビーブーマー(1946~64年生まれ)に分けられ、前者が保守的であるのに対し、後者がこれまでのシニア像とは異なる新しいアクティブな世代であり、当然求められる旅のスタイルも異なること。
③シルバー世代の旅行にとって大切なのは金銭的問題とは別のハードやソフトの面にあること。旅行に求めるものも、単なるレジャーではなく、知的な好奇心や人とのコミュニケーションに重きを置くこと。

余談ですが、教授のなめらかな英語によるスピーチは、当初の25分という予定時間を1時間以上もオーバーしてしまいました。どうやら教授は自分の持ち時間を間違えておられたようで、スタッフが慌てて何度もその点をご本人に伝えたものの、ほとんど意に介せず、さながらハワイ大学の教室にいるかのような余裕綽々とした調子で講義を乗り切られたのでした。しかし、会場の誰もがそれを微苦笑しながら受けとめたのです。こういうのが、台湾ならではのおおらかさなんでしょうか。

おかげで、残りのコメンテーターたちは、すでにフォーラムの予定時刻を終了したところから、自分たちの話を始めなければなりませんでした。以後の登壇者のコメントについては、以下簡単に紹介します。

まずホテルロイヤルグループの沈方正ジェネラルマネジャーは、シルバー世代の旅の特質として、向学心や「有時間(時間のゆとりがあること)」「喜歓参興(参加すること)」とともに「好悪分明(好き嫌いがはっきりしていること)」などを挙げ、旅行業界は「需要傾聴(何を求められているか聞く姿勢が必要)」、とりわけ「需注意環境」「需注意個人身体状況」、すなはち個人によって異なるシルバー世代の体調に配慮したハード面の整備を進める必要があるといいます。そのうえで、バリアフリーの進んだ日本のホテルの事例を細かい写真を見せながら、台湾も学ぶべきだと指摘します。

台湾の旅行大手である雄獅旅行社の黄信川総経理は、台湾の年代別国内旅行の比較をしながら、シルバー世代は平日の旅行比率が高いことから、週末に偏りがちな宿泊旅行の分散化を図るうえで、大切な顧客と指摘します。いかにシルバー族の夢をかなえるかに貢献できるか、いくつかの事例を紹介しています(詳しくは上記サイトからPW資料をダウンロードしてください)。
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最後に登壇した指宿シーサイドホテルの有村青子さんは、シルバー世代に対する真心のこもった接待について語りましたが、会場からの大きな拍手が印象的でした。同じ日本人からすると、おかみは特別な話は何もしていないように思えるのですが、聴衆の多くは感心しながら聴いているようでした。台湾の人たちは、日本人の仕事に対する思いやまじめさをまっすぐ受けとめてくれるのだということをあらためて実感しました。
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結局午前中のフォーラムは13時に終わりました。一般にアジアの新興国の旅行者は若い世代が主役と思われがちですが、台湾のような成熟した市場が相手の場合、シルバー世代の訪日客に対するケアを配慮する必要があると思いました。また今回台北からの帰国が早朝便だったのですが、桃園空港の出発ロビーにシルバー世代のツアーグループがあふれかえっていたのが印象に残りました。

さて、午後2時からのテーマは「自由旅行のトレンドにいかに対応するか(How to respond to FIT trends)」。登壇者は以下のとおりです。
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司会進行:劉喜臨(台湾政府交通部観光局副局長)
基調コメント:何勇(中国C-Trip副総経理)
コメンテーター:平林朗(HIS代表取締役社長)、王春寶(台湾休閒農業発展協会顧問)、Cindy Tan(トリップアドバイザーアジア太平洋地区副総裁)

まず司会進行役の劉喜臨副局長から、自由旅行(FIT)は「バックパッカー」「家族旅行」「上班族(サラリーマン)」という3つの消費者像に分類されること。訪台市場のトップスリーが中国(35%)、日本(20%)、香港(14%)で、これから台湾も海外からのFIT客の受け入れ態勢を進めるべきだといい、コメンテーターにつなぎます。
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それを受けた基調コメントは、中国のネット旅行会社最大手C-Tripの何勇副総裁による「(中国の)自由旅行市場の展望」でした。何勇副総裁は「弊社では10年前からFITに関わってきた」と冒頭で語り、2003年同社で航空券+ホテルのいわゆるスケルトン型ツアーを利用した旅客数はわずか40名だったものの、10年後には100万人に達したといいます。その伸び率は毎年40%超で、同社の取り扱いはすでに85%がFITだそうです(ここでいう「FIT」はどうやら団体パッケージツアーに参加しない顧客すべてを指すようです)。今後中国でもFITのシェアは高まるだろうと指摘します。
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そして、中国のFITの旅行特性や志向性について解説が続きます。たとえば、「10大自由旅行出境地(海外目的地)」として、香港・マカオ、タイ、韓国、日本、モルジブ、インドネシア、シンガポール、カンボジア、マレーシア、アメリカ、フィリピンが挙げられます。また世代的には、25歳から45歳までが全体の70%を占めること(とりわけ30代前半に集中)、旅行期間の平均は4~5日と短いこと、男女比率では男性45%女性55%と女性が大きいこと(ただし、用意されたPW資料では逆になっていて、これは間違いだそうです)などを紹介しています。

同社では、ネット旅行会社の強みを活かしたFIT向けのさまざまな旅行サービスを開発中とのこと。テレビCMを打つよりはるかにSNSをはじめとしたネットによる情報やサービスの提供が効果的だといいます。また、同社では海外に営業店舗を出すのは人件費などのコストがかかるので、今後もITの技術力の活かしたサービス提供に注力するそうです。もちろん、C-Tripはネット専業ですから、日本の楽天トラベルと同様、「店舗より技術力」という発想になるのは当然なのでしょう(ただし、楽天トラベルはここ数年アジアを中心に海外営業拠点を増やしています)。

興味深いのは、次に登壇するHISの平林朗社長のコメントが何勇副総裁とはいかにも対照的だったことです。平林社長は、1980年に創業された同社のFIT向けの取り組みの歴史を紹介しながら、現在では海外157拠点の営業所(国内は280店舗)を持つこと。FIT向けには店舗をベースとしたコンサルティングや顧客ケアが重要で、今後は海外営業所同士の取引など、さらなるグローバル化を進めていくと話したからです。創業から歴史の浅いC-Tripが現状では海外に営業拠点をつくる余力がないことは確かでしょうが、そもそもその必要を感じていないと思われるところが、同じFIT市場への取り組みを語る場合でも、日中のビジネスに対する考え方の違いがこれほど鮮明に表れるところが面白いです。
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台湾休閒農業発展協会の王春寶顧問は、台湾と香港間の自由旅行の現状について報告しました。ここで面白かったのは、香港から台湾へのアグリツアー(農業観光:農業体験を目的とした旅行)が盛んになっていることです。実際、ITFの会場にもアグリツアーの大きなブースがありました。その顧客は台湾の国内客だけでなく、香港の旅行者も含まれるというわけです。あの狭い空間に高層ビルの林立する香港の人たちが自然に接する機会を尋常でなく求めているであろうことは容易に想像できますが、そのひとつの受け皿として台湾のアグリツアーがあることは、今後香港からの訪日客へのプロモーションや受け入れにも参考になる点が多いように思いました。日本は確かにアジアの最先端カルチャーの発信地なのでしょうが、それだけではないということでしょう。

最後の登壇者が、ホテルやレストラン、観光スポットなどの口コミをまとめたサイトを運営するトリップアドバイザーのCindy Tanアジア太平洋地区副総裁です。同サイトは他の類似サイトの追随を許していないことから、世界のFITの支持を勝ち得ています。実際、副総裁によると、年間書き込まれる1億件のコメントのうち、51%はホテルに関するものだといいます。膨大な口コミ情報をフィードバックできることが、同社のホテル業界に対するマーケティング・ビジネスを支えているようです。そして、「(FIT市場にとって重要なのは)割引ではなく価値だ」と、いかにも同社の関係者が言いそうだなと思われるすましたコメントを残しています。
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ちなみにトリップアドバイザーについては、以下のネット記事が参考になります。
http://wired.jp/2013/05/30/tripadvisor-ceo-interview/

フォーラムの登壇者たちのコメントを聞きながら、日本ではもうことさらFITの存在を強調して「自由旅行」について議論する時代ではないのですが(日本では、FITかパッケージツアー利用かというのは、消費者が目的によって好きに選べばいいというだけの話です)、いまの台湾や中国本土では「自由旅行」がホットな話題となっていることをあらためて感じました。

FIT化が進むと、パッケージツアーを造成してきた従来型の旅行会社の利益が減ることを懸念する業界からの問題提起(これはかつての日本、現在の中国本土で起きています)が出てくるものですが、今回のフォーラムではそうした議論はないようでした。すでに台湾ではエアライン主導のスケルトン型の安いツアーが多く出回っており、日本と同様もう決着のついた話なのかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2013-11-06 10:07 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 11月 01日

過去最高200万人超えなるか!台湾客急増の背景にはオープンスカイがある(台北ITF報告その5)

今年、訪日客の200万人超えが期待されている台湾。いまや訪日外客の5人に1人は台湾の人たちです。好調の背景には何があるのか。台北国際旅行博(ITF)会場でお会いした現地関係者にその理由を尋ねてみました。

――台湾の海外旅行は1979年の解禁。以来、30年以上の歴史をもつ成熟したインバウンド市場といえますね。

「台湾の訪日客は少しずつ増えていきました。当初は日本からの訪台客数のほうが多かったのですが、2000年前後一時逆転され、2005年以降はともに100万人を超えました。日台間には国交がないため、日本観光協会などが中心となって細々とPRを続けてきましたが、ビジットジャパンキャンペーンのスタートした2003年から本格的なプロモーションが始まりました。いまでも交流協会とJNTOで業務提携をしながら進めているのが現状です。

東日本大震災のあった2011年以降は、台湾からの訪日客のほうが日本の訪台客より多くなっています。昨年の訪日客数が146万人、そして今年200万人を超えそうな勢いです。ちょっとできすぎですかね」

――今年、台湾の訪日客がこんなに増えた背景には何があるのですか?

「最大の理由は、円安とオープンスカイが追い風になっていることです」

※台湾と日本の航空協定(オープンスカイ)改定は、2011年11月10日に調印されました。それによってチャイナエアライン(CI)とエバー航空(BR)の2社に加え、翌12年3月以降、マンダリン航空(AE)、トランスアジア航空(GE)の4社が定期便を就航させています。

現在、これに加えてLCCが日本と台湾を結んでいます。ジェットスター・アジア(3K)やピーチ・アビエーション(MM)、そして元エアアジアのバニラエア、シンガポールのスクート航空(TZ)です。もちろん、これに日本航空と全日空が加わります。しかも、台湾のエアラインは日本の地方都市とも多く就航していることが特徴です。

●オープンスカイ後、日台間に定期便を就航したエアライン
マンダリン航空
http://www.mandarin-airlines.com/index/index.html
トランスアジア航空(復興航空)
http://www.flytransasia.jp/
ピーチ・アビエーション
http://www.flypeach.com/jp/ja-jp/homeJP.aspx
バニラエア
http://www.vanilla-air.com/
スクート航空
http://www.flyscoot.com/index.php/ja/

――オープンスカイによる大幅な増便が背景にあることは当然として、JNTOでは早い時期からさまざまなプロモーションをしてこられたと思います。たとえば、1990年代、他の訪日マーケットに先駆けた北海道キャンペーンを打ち出し、ツアーを成功させたのも台湾市場でした。今回のITFでは、ジャパンゾーンを統括するJNTOブースはどんなテーマを掲げておられるのでしょうか。狙いや目的について一言教えてください。

「『日本で遊びまわろう』です。台湾の博覧会は即売会の意味合いが強いので、例年台湾の旅行会社を招き入れ、日本ツアーの販売増を目指しています」
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――台湾市場向けのプロモーションについてはどうですか。

「新聞やテレビ、雑誌などあらゆるメディアを使った通常のプロモーションはすべてやっていますが、台湾で特に有効なのはFacebookです。なにしろ人口2300万人の台湾で1400万人がFacebookを利用しているからです。若い世代はほぼ全員利用しているといっていい。
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日本の観光庁もFacebookのアカウントを持っています。ブロガーの意見を載せたり、おすすめコースを紹介したり、新しいデスティネーションのショートムービーををつくって公開したり、消費者の写真コンテストをやったりと、いろいろやっていますよ」

――そうしたSNSを活用した手法はいまや常道ともいえますが、仕掛けると最初に動き出すのが台湾市場なのでしょうね。

「台湾というのはありがたいことに、何かやると必ず反応が返ってくるんです。レスポンスがすごくいい。やりたいことはだいたいできている。もともと台湾の人たちは日本に行く気があるので、うまく押してあげるといいんです」

――同じことをやっても中国本土とは反応ずいぶん違うんですね。いちばん効くのは何でしょうか。

「やはりウエブ活用でしょう。最近は特に体験ものが人気があります。日本でサイクリングや農業体験、民泊をする。これといったキラーコンテンツがあるというより、目的が多様化しています。実際に体験した人がネットに書き込み、それを見て私もやりたいという動きがふつうに起きています。これからのプロモーションはFacebookやLINEが有効だと思います」

日本政府観光局(台湾)公式サイト
http://www.welcome2japan.tw/
日本旅遊活動 VISIT JAPAN NOW(Facebook)
https://www.facebook.com/VisitJapanNow

――それでも、台湾人の海外旅行は団体ツアーがかなりの割合を占めると聞きます。圧倒的にFIT化が進んだ香港とはどこが違うのですか。

「いまは台湾でも訪日旅行は団体とFITで五分五分です。香港の人たちは、考え方や行動スタイルが欧米化していて、何か気を引く情報があるとすぐに行ってみようとなるのですが、台湾の場合、最初はちょっとためらう人の割合が多いかもしれません。大丈夫かどうか、考えてから行動する慎重派が多い気がします。東京、大阪、北海道はFITでも大丈夫だけど、それ以外の地域はまだためらう人が多い。レンタカーもなかなか利用しない。中国語のナビがないからだといいます。香港人はとりあえず行って、あとで考えるという感じでしょうか。

ですから、プロモーションする側は彼らに安心感を与えてあげないといけない。後押しを丁寧にやってあげないといけません。ただ台湾の人たちはブームに弱いところもある。北海道やアルペンルートのツアーなどがそうでした。みんなが行くから私も行こう、となる」

――台湾の訪日旅行市場の特徴は他にもありますか。JNTOの重点五大市場に関する報告書によると、台湾は「M型社会」だと書かれていますね。

「それは台湾でも、中間層が減り、所得が両極端になって経済格差が起きているという話です。2000年代に入ってから言われていることです。富裕層専門の旅行会社もいくつかあります」

――鉄道旅行の可能性についても触れていますね。台湾では日本の鉄道旅行に関する雑誌の特集もよくあるようですね。
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「台湾には鉄道ファンが多いんです。九州の『ななつ星』がもし台湾でも買えれば必ず売れると思います。ジャパンレイルパスの売上がいちばん高いのは台湾でしょう。台湾は鉄道が発達していて、鉄道旅行に慣れています。だから、日本で鉄道旅をしてみたいという思いがあるのです。割引パスが普及してきたので、あとはポイントの情報をどう与えるかで、行き先が広がる。リピーターが多いのが台湾の特徴ですから、可能性はあります」

――今回のITFのフォーラムのテーマのひとつが「シルバー族」の海外旅行でした。

「台湾も少子高齢化が進んでいます。出生率は日本より低い。台湾も日本と同じで年寄りが多くて元気。これからはシニアを大事にしなければならないと思います」

――それにしても、ITFの会場を歩いて感じることは、台湾のツアーは驚くほど安いですね。その理由は何でしょうか。

「博覧会がなぜ人気があるか。割引して売ってくれるからです。香港に比べ台湾で団体ツアーの比率が高いのは、安いツアー商品が多いから。慎重派の台湾人にとってツアーは安心感があるのです」

――エアライン各社がFIT向けのスケルトンタイプ(航空券+ホテル)を破格の料金で売り出していますね。
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「台湾の場合、航空会社がキーエージェント制を敷いていて、特定の旅行会社に『座席買い取り制』に見られるようなビジネス慣行が通ってきたことが背景にあります。航空会社を頂点とした系列化で、優先的に席をあげるからと、押し売りもする。
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チャーター便は特に料金先払いで、売れないと旅行会社が損をするから、土壇場で叩き売りをする。まずいことに、消費者がそれを知ってしまったため、ぎりぎりまで待つ間際買いの傾向が出てしまった。いま日本にはビザがいらないから、前日でも申し込める。これには困っています。航空会社としては、飛ばせば飛ばすほど日本線は売れるからいいのですが、旅行会社は売り切れないと怖い」

――台湾の旅行業界は、日本のような大手は少なく小規模の会社が群雄割拠している感じでしょうか。それでもいくつか取扱規模の大きい企業はありますか。

「老舗は東南旅行社。北海道ツアーを最初に造成したのは同社です。取扱いでいうと、康福旅行社や雄獅旅行社、スタートラベルなどでしょうか」
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――今後、台湾の訪日旅行市場はどう発展していくと思われますか。

「いま台湾の海外旅行者数は年間1000万人程です。そのうち2割が日本というわけですが、これが4割や5割になることはちょっと考えられません。2~3割の間で落ち着くだろうと個人的には思います。これから先、欧米ツアーの料金が下がれば、そちらにずいぶん取られるかもしれません。

数もほしいが、質もほしい。それをどうやって実現できるか。(1990年代の日本人海外渡航者の急増を機に)アジアの安いツアーの造成のしくみを教えたのは日本です。コスト以下でランドに受けろという押し付けをやってきた。それをいまやり返されているんです。(インとアウトが拮抗してきた)ここらでお互い腹を割って話し合ういい時期になってきたかもしれませんね」

――これからの台湾向けプロモーションはどうあるべきでしょうか。

「これからはスター選手を次々作っていくことが大事だと思います。北海道の場合、東南旅行社と組んで造成したらよく売れた。すると2年後には他社もどんどん売り出し始めた。ひとつの成功事例をつくってしまえば、みんな売ってくれる。山形の蔵王もそう。どこでも売ろうと思えば売れるのが台湾です。

台湾の訪日旅行市場はますます多様化し、成熟化しているので、特別な地域を売ることも大事ですが、スポーツやグルメなど、いろんな新しい切り口での提案をすることではないでしょうか。たとえば、台湾国内ではマラソン大会が100近くあるんです。サイクリングも人気です。日本で走りたい人も多い。各種スポーツ団体と連携しながら、進めていくと面白いですね」
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by sanyo-kansatu | 2013-11-01 11:31 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 10月 31日

FIT向け商品が続出する台湾市場(台北ITF報告その4)

台北国際旅行博(ITF)で、広域連携化とともに目に付くのは、FIT向け商品が続出していることです。

自治体ブースがPR主体であるのに対し、企業グループはどれだけ販売できるかが勝負です。まず鉄道グループのブースから見ていきましょう。
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近畿日本ツーリストを擁する近畿鉄道グループです。なかでも注目は、国内メディア販売大手のクラブツーリズムがアジアのFIT向けに販売しているバスツアーです。
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Club Tourism YOKOSO Japan Tour
http://www.yokoso-japan.jp/tc/index.htm

一般にはとバスなどが催行する外国人向けバスツアーの多くは、英語圏の利用者の比率が高いとされますが、クラブツーリズムの催行するツアーは、アジア客に好評です。たとえば、最も人気があるのは富士山とフルーツ狩りを組み合わせたツアーだそうです。関係者によると、日本人向けと基本的に同じツアー内容で、最近では、日本人客とアジア客を混載する商品もあるといいます。

世界でいちばん目が肥えているといわれる日本の消費者を相手に長年練り上げられてきたクラブツーリズムのバスツアーが、アジアのFIT層にも受け入れられているというのです。日本人とアジア客が混載するバスツアーというのは、これからの新しい国内旅行のスタイルを先取りしているといえるかもしれません。

阪急阪神集団のブースです。近年のLCCをはじめとした台湾と関空をつなぐ路線の急増で、関西方面を訪れる台湾客は増えています。
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もちろん、富士箱根方面も定番です。これは小田急電鉄と藤沢市の共催ブースです。
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鉄道グループでいうと、JR東日本とJR西日本も出展していて、同社が販売するJRパスのうち、台湾客の販売数が最も多いといわれています。

ジャパンレイルパス(外国人向けJR割引パス)
http://www.japanrailpass.net/ja/ja001.html

次は、キラーコンテンツを有する企業グループです。その筆頭はやはりTDLでしょう。東京ディズニー30周年を記念したスペシャル料金を打ち出しています。これもFIT商品です。
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タイの国際旅行フェアにも出展していた札幌の「かに本家」です。
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台湾人に人気の北海道に高級リゾートを展開する星野リゾートです。今年3月の新石垣空港オープンで、台湾から夏期のみトランスアジア航空やマンダリン航空が就航。竹富島にある「星のや 竹富島」への集客も期待されます。
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星のや 竹富島
http://www.hoshinoresort.com/resortsandhotels/hoshinoya/taketomijima.html

異色のブースは日本の出版大手角川書店です。同社では現地法人の台湾国際角川股份有限公司がローカル向け情報誌『台北ウォーカー』を発行しています。同誌の付録に日本旅行のための冊子『Japan Walker』があります。
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台湾国際角川股份有限公司
http://www.kadokawa.com.tw/
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同社では、日本国内で利用できるSIMカードパッケージ「台灣VISITOR SIM」を11月から発売するそうです。『JAPAN WALKER』がもつコンテンツの中で、救急対応など緊急連絡先情報、日本の旅行情報なども利用できるといいます。もちろんFIT向けのサービスです。
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近年、インバウンドビジネスにさまざまなメディア企業が参画していますが、角川書店のような古くから現地に根付いて日本のコミックやライトノベルズ、情報誌などを販売してきた出版社こそ、台湾の訪日旅行市場の下支えに大きく貢献してきたといえるでしょう。

日本の大手エアラインもブースを出展しています。JALとANAはそれぞれ台湾と日本の主要空港を結んでいますが、今回のブースではFIT向けに「日本自由行」と称して、割安な航空券や航空券+ホテルを販売していました。台湾のエアラインでもさらに価格を下げたFITパッケージを販売しており、競争は激化しています。おかげで台湾客はますます日本に行きやすくなっていると思われます。
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最後に、他の国の旅行博ではあまり見られない独特の販売スタイルについて紹介しておきましょう。台北国際旅行博(ITF)では、現地の旅行会社を日本のブースの中に招き入れて、各地域のPRとツアー商品の販売を同時に行っています。
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なかには、「日本専門店」を掲げる大興旅行社のようなエージェントもあります。ブースにはびっしりと日本全国を網羅したツアー商品の貼り紙が並べられています。こうして会場の中では、あの手この手の商戦が繰り広げられているのです。
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以下は、ジャパンゾーンの中にブースを置いた台湾の旅行会社です。これだけ競合相手がいると、価格競争が熾烈になるのは無理もなさそうです。

大興旅行社
http://www.tahsintour.com.tw/
山富旅行社
http://www.travel4u.com.tw/
大栄旅行社
http://www.gogojp.com.tw/
康福旅行社
http://www.colatour.com.tw/
スタートラベル(燦星旅行社)
http://www.startravel.com.tw/
湯桂禎旅行社
http://www.rolisa-tour.com.tw/
百順旅行社
http://e.ptrtour.com.tw/Web_3/major.asp
新台旅行社
http://www.eztour.com.tw/
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by sanyo-kansatu | 2013-10-31 15:33 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 10月 31日

地方自治体の広域連携化で活気づくジャパンゾーン(台北ITF報告その3)

台北国際旅行博(ITF2013)では、出展規模が最大だったジャパンゾーンのにぎわいがひときわ目立っていたのは確かです。
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台湾人の渡航先は中国が1位で日本は2位ですが、海外旅行の人気先のトップは間違いなく日本です。しかし、それをいまさら強調することよりもっと大事なことがあります。アジアで最も成熟した旅行市場のひとつである台湾に対して、いかに効果的なプロモーションを進めるか、その手法を進化させることでしょう。

ざっとどんな団体が出展していたか見ていきましょう。

まずジャパンゾーンを統括する観光庁のVJゾーン。関係者によると、「テーマは特にないが、強いて言えば『日本で遊びまわろう』」。展示スペースと特設ステージが設置されていて、1日中イベントを繰り広げていました。
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たとえば、小林正典さんという2010年の「第4回全日本アニソングランプリ」で審査員特別賞を受賞したアニソン歌手のステージもありました。
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地方自治体のブースは、北は北海道から南は沖縄まで勢ぞろいです。興味深いのは、各県単位の出展ではなく、広域連携化がずいぶん進んでいたことです。

目についたブースを北から眺めていきましょう。まず台湾と多くの航空路線で結ばれている北海道。写真は、なぜかここだけジャパンゾーンの外にあった小樽と函館、道南地区のブースです。2013年3月に道内各地で撮影された台湾のトレンディードラマ『(邦題)ラブ・ラブ・ラブ』が、8月から放送を開始したことをふまえたPRのようでした。
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北海道マガジンの記事
http://pucchi.net/hokkaido/moviedrama/ftviuui.php

東北ブロック広域観光振興事業推進協議会です。東日本大震災後、国内客は戻って来たものの、唯一外客の戻りが遅いとされる東北だけに、台湾の人たちにはぜひ訪ねてほしいものです。今回のテーマは雪で、蔵王の樹氷が人気のあることから、統一したイメージで売り出そうとしています。ただし、海外では東北は紅葉が有名。雪はむしろ北海道やアルペンルートのほうが知名度が高く、競合してしまうところが気になります。海外の人たちは、やはりその国でいちばん有名な場所に行きたいと思うものだからです。
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もっとも、関係者によると、今年の秋は台湾から東北へのチャーター便が計画されているそうです。実際、福島を除くと東北には少しずつですが、台湾客が戻っていると聞きます。

関東ブロック広域観光振興事業推進協議会です。とかく東京一極集中しがちな外客の流れを分散させるべく、首都圏周辺の各県がそれぞれの魅力をPRしています。ただし、外国人の目から見ると、内容がいろいろありすぎて、テーマを絞りにくい印象があります。
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ほかにも、山陰山陽観光推進協議会、四国ブロック広域観光振興事業推進協議会、九州観光推進機構などの広域連携ブースがありました。
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なかでも注目は、中部広域観光推進協議会でしょうか。中部北陸9県を巻き込んだ「昇龍道」プロジェクトを展開していたからです。
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日本 中部北陸の旅「昇龍道」プロジェクト
http://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/kikaku/syoryudo/index.html

関係者によると、「アルペンルートで人気を呼んだ富山県も、単独では集客に限界があるので石川県、福井県と横で連携し、さらに長野県、岐阜県、愛知県などとも縦で結び、『昇龍道』というネーミングをつけて一つのルートとして魅力付けした。日本は島国で、外国客は空から入ってくるしかないのだから、まず定期便の発着する空港同士を結ぶモデルコースをつくることが重要」とのこと。
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その点、台湾からは日本各地にフライトが多数就航しているぶん、モデルルートのバリエーションの可能性が広がっています。同じ航空会社の就航地同士でないと、割引が利かないためツアーはつくりづらくなるので、当然制約はあります。

今回強く感じたのは、これだけ広域連携化が進むと、単独県での出展は来場客の目を引かないということです。地域固有の事情からではなく、外国客の視点や利便に合わせて用意周到練り上げられた広域連携が仕掛けられていくと面白いと思います。

最後に、旅行博ならでは、いかにも日本的だと思える雑多でのほのぼの&おとぼけシーンをいくつか。

彼女たちは「知多娘。」というご当地アイドルです。なんでも「知多半島の活性化」と「若者の就職支援」のために結成されたグループだそうです。
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知多娘。
http://www.chita-musume.com/

JRレイルパスのパンフレットを配っている台湾人のコスプレ案内嬢もいました。
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「徳川家康開運の旅」は中部国際空港を受け皿にした中部各県連携の企画のようです。
http://www.iyeyasu-mikawa.asia/ja/
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鳥取県は単独のブースはありませんが、21世紀梨と松葉ガニのパネルをつくって会場を歩かせていました。こういう手もあるんですね。
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by sanyo-kansatu | 2013-10-31 12:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 10月 30日

台湾で中国本土ブースが不人気な理由(台北ITF報告その2)

台北国際旅行博(ITF2013)の会場の一画に中国本土の旅行関係者の出展するブースの集まるゾーンがあります。他のゾーンとの仕切りも特になく、来場者は同じイベントの一部だと思うのですが、なぜかそこは「海峡両岸 台北旅展」と呼ばれ、ITFとは別の入り口まで用意されています。
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主催は、ITFと同じ台湾観光協会と海峡両岸旅游交流協会の共催となっています。後者の組織については調べていませんが、ITFとはあくまで別企画という位置づけのようです。そのためか、ITFの制作した会場マップには、中国本土ゾーンだけ、出展者の配置図が書き込まれていません。なぜそんなことをするのか……。わざわざ「海峡両岸 台北旅展」としてITFとは別仕立てのイベントに見せようとする中国側の押しつけに対する台湾側の反発のようにも見えますが、どうでしょうか。

2日目の午前中、「海峡両岸 台北旅展」の中国本土ゾーンは気の毒なくらい閑散としていました。同じ時間、他のゾーンでは人ごみで身動きすら取れないほどだったのと比べると、いったいどうしたことなのか。
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中国本土ゾーンを歩いてみることにしました。ぼくは中国国内のレジャーシーンの変遷をこれまでウォッチングしてきたので、基本的に関心はあるのです。

そこには、中国全土の省と直轄都市、旅行会社などのブースが並んでいました。一部ミャオ族の民族衣装の展示した貴州省や省内の観光地の写真パネルを並べた遼寧省など面白いものもありました。また上海市のブースでは、来場者に特典をふるまうイベントがあったときだけ、人ごみが見られました。
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とはいえ、全体的には、簡素なブースを並べただけで、ただのやっつけ仕事にしか見えません。

確かに、中国の観光プロモーションのクオリティは他のアジア諸国と比べても著しく低い(あるいは、やる気がない)というのは、JATA旅博やタイの国際旅行フェアの会場でも見られたとおりです。だとしても、スタッフすらいない状況というのは、どうしたものか。こんなんでやる意味あるの?

現地の関係者に聞くと、毎年そうなんだそうです。

「台湾人の海外渡航者の数では中国がいちばん多いのですが、ほとんどビジネス渡航。レジャーは少ないんです」

かつて(たとえば1980年代)「大陸探親旅行」といって本土にいる親族を訪ねる中国旅行が台湾で流行ったものですが、それも遠い昔の話。確かに、いまの中国は環境破壊の話題に事欠きませんし、観光地は国内客であふれ返り、のんびり外国人が旅行を楽しむ雰囲気ではなくなりつつあるかもしれません。台湾の人たちも、わざわざそんな混雑する場所に行くより、日本など海外に行ったほうがくつろげると感じているのかも。

実際、ある台湾の旅行関係者はこんなことを言いました。「いま台湾には中国本土客がたくさん来るので、国内の観光地は中国客だらけ。台湾人が海外に旅行に行きたがるのは、近場のレジャーでは彼らと出くわしてしまうため、それを避けたいからなんですよ」

なるほど。……というか、なんとも言い難い話ですね。

実際、中台間の航空路線は全土にくまなく張りめぐらされています。この大半はビジネス路線と考えられます。
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中台の複雑な関係が、実に見事に表れているともいうべき、「海峡両岸 台北旅展」でした。
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by sanyo-kansatu | 2013-10-30 09:30 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 10月 29日

来場者数が過去最高となった台北国際旅行博(台北ITF報告その1)

8月のタイのトラベルフェア(Thai International Travel Fair #13)に続き、10月は台北国際旅行博(ITF2013)に行ってきました。日程は、10 月18 日(金)~21日(月)です。
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会場は、台湾を代表する超高層ビル「台北101」(高さ509.2m、地上101階)に隣接する台北世界貿易センター1号館と3号館です。午前10時から開門されるのですが、30分以上前から行列ができるほどの盛況ぶりでした。
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台北国際旅行博(ただし、サイトの内容はすでに来年の告知に更新)
http://www.taipeiitf.org.tw/

台湾からの訪日旅行者数の大幅な増加の背景に何があるのか、知りたいと思っていました。JNTOが10月23日に発表した訪日外客数統計によると、2013年1月~9月の訪日台湾人は前年比52.3%増の166万9900人。伸び率でみればタイ59.2%増、ベトナム49.8%増、香港49.5%増と並んで見えますが、母数が違います。台湾は香港の3倍、タイの6倍近い規模です。訪日外客全体の5人に1人(21%)を台湾が占めていることからも、今年いかに多くの台湾客が訪日旅行したかを物語っています。

台北国際旅行博(ITF)は毎年10月に開催されます。1987年から始まり、今年で27回目。夏期の旅行商品の販売のために5月に開催される台北国際観光博覧会(TTE)や台中国際観光旅展(TITF)、高雄国際旅展(KITF)などもありますが、ITFが台湾最大の旅行商品展示会といえます。主催者発表によると、今回の来場者数は31万5240人と過去最高になったそうです。
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では、会場を歩いてみましょう。以下のように構成されています。
①台湾ゾーン
②アジア太平洋ゾーン
③欧米・中東アフリカ・南米ゾーン
④旅行会社ゾーン
⑤航空・運輸交通ゾーン
⑥その他関連団体
⑦グルメゾーン
⑧海峡両岸(中国本土)ゾーン
⑨ホテルゾーン(※ここのみ3号館)
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このうち最大エリアを占めるのは①台湾ゾーンで、国内の自治体や旅行会社などのブースが集まっています。次は⑧海峡両岸(中国本土)ゾーンですが、どうやら同じ会期中に同じ会場にありながら、「第9回海峡両岸台北旅展」として別企画の位置付けのようです(その理由は次回)。
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ざっと海外ゾーンのブースを眺めていきましょう。アジア太平洋を中心に数多くの政府観光局のブースが出展していました。
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なかでも注目は、スノーレジャーにテーマを絞り込んでPRのコンセプトを明確化した韓国でしょうか。韓国は海外の旅行博において毎回オールコリアでワンテーマを打ち出してくるのが特徴です。各自治体がバラバラに地元の魅力をアピールする日本とは違って、いかにも戦略的です。韓国の観光プロモーションのスタイルは日本を先んじているといわれても仕方がなさそうです。
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現地関係者によると、台湾の訪韓客は現状では訪日客の半数くらいに過ぎないものの、この10年の韓流ドラマやK-POPの流行で、台湾の若者の中にも「一度は韓国に行ってみようかな」という動きはあるようです。しかも旅行商品の価格帯が日本の半分とくれば、日本にとってライバルとなりうる存在かもしれません。その一方、韓国ではリピーターが育っていないのでは、という指摘もあるようで、こればかりはすぐに答えが出る話ではなさそうです。
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韓国のPRとくれば、やっぱり絶大な知名度を誇るこの人なんでしょうね。
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ほかにも、台湾や海外の航空会社ゾーン(写真はエア・アジアのキャンペーンガール)や、今年のGWに東京湾に寄航して話題を呼んだ超大型クルーズ客船「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」、那覇と石垣島に寄航する台湾発のクルーズ客船「スーパー・アクエリアス」の予約ブースなど、さまざまな企業団体が出展し、PRを繰り広げています。
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広い会場の中で、最も活況を呈しているのは、やはり地元の旅行会社のツアー即売会でしょう。旅行会社の担当者はマイク片手にステージに上がり、びっしり貼り出された会期中限定のスペシャル価格のツアー商品を声を上げて販売します。「ツアー商品の叩き売り」といってしまうと、少し言い過ぎかもしれませんが、日本ではちょっと見ることのない光景です。売れ行きを見ながら、スタッフはその場でチラシも書き直します。
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各旅行会社のブース内にはPC端末がいくつも用意されていて、来場者はスタッフの説明を聞きながら商品を検討しています。
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海外から多くの関係者が集まっているだけに、会場内はフリーWifiです。
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台湾滞在中に見たテレビニュースや新聞でも、ITFのことは報道されていました。台湾の年間出国者数は1000万人相当で、総人口2300万人の40%にあたる高い出国率が知られています(日本は13%)。それだけに台湾の人たちにとって旅行博は、日本では想像できないほど話題性の高いビッグイベントなのです。
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by sanyo-kansatu | 2013-10-29 14:51 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 09日

20回 観光の島、沖縄でいま何が起きているのか?

3月29日の早朝、那覇港新港ふ頭8号岸壁(若狭バース)に台湾から来たクルーズ客船「SUPERSTAR AQUARIUS」が入港しました。あいにくの雨でしたが、今年度、最初の入港です。
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SUPERSTAR AQUARIUSは、ゲンティン香港(スター・クルーズ・ピーティーイー・リミテッド)が運航するカジュアルなクルーズ客船です。毎年4月から10月まで週1回、那覇港に寄港し、毎回約1500人の台湾客が観光のため上陸します。基本、3泊4日で基隆―那覇―石垣―基隆(基隆―石垣―那覇―基隆の場合もある。また基隆―那覇往復、基隆―石垣往復も)を航行します。料金は最も安いシーズンで、2泊3日の基隆―石垣往復が9900台湾ドル(約3万3000円)から。1日の単価は約1万円という破格の安さです。
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スタークルーズ日本語公式サイト
http://www.starcruises.co.jp
スタークルーズ台湾サイト
http://www.starcruises.com.tw

約1300人の台湾客が沖縄に上陸

さて、この日約1300人の台湾客が那覇に上陸しました。
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そのうち約650人は、沖縄各地を周遊するオプショナルツアー(岸上観光)に参加します。

お出迎えは、那覇にある台湾系のランドオペレーター、太陽旅行社のスタッフです。そのひとりはこう言います。

「朝8時入港で17時に出港というスケジュールは、観光や食事、買い物を楽しむには十分といえないかもしれません。でも、一般の航空便のツアーでは移動が多くて、かえって自由時間が少ないこともあります。その点、クルーズでは自由観光に出かければ、じっくり買い物を楽しむこともできます。台湾のお客様は食品から家電、生活用品まで、いろいろ買っていかれますよ」。

※クルーズ客のオプショナルツアーの詳細は、中村の個人blog「【前編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント」を参照。

半数は那覇市内を自由観光

では、残りの約650人はどう過ごすのでしょうか。もちろん、那覇市内に自由観光に出かけるのです。

彼ら個人客の観光をサポートするのが、那覇市観光協会のスタッフです。クルーズ船の寄港する若狭バースの入り口に臨時のツーリストインフォメーション(観光諮訽處)を開設。中国系や台湾系のネイティブのスタッフを揃え、市内に向かう個人客の質問に対応し、用意した観光案内資料や市内マップを渡します。
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スタッフを統括する那覇市観光協会の国里顕史さんに話を聞きました。

—— 個人客のみなさんはどこに行かれるのでしょう?

「たいてい国際通りや新都心(おもろまち)のショッピングモールなどに行きます。リピーターも多いので、自分の足でどこでも行かれますよ。なかには日本人と同じように、レンタカーで沖縄本島北部まで遠出される方もいます。
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那覇市内では買い物や食事をして過ごします。クルーズのお客様は、那覇に宿泊はされませんが、わずかな時間で一度に買い物をされるので、大きな経済効果が見込めます。沖縄は台湾や上海、韓国からも近いので、クルーズ市場において優位な立地にあります。来春には13万トン級の大型客船が接岸できる国際ターミナルとして整備される予定になっています」
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※個人客の那覇観光についての詳細は、中村の個人blog「【後編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント」を参照。

翌朝は石垣島へ

さて、オプショナルツアーやまち歩きを楽しんだクルーズ客たちは、遅くとも出港時刻(17時)の1時間前には船に戻ってきます。いよいよ那覇ともお別れです。

今年度の初入港ということで、この日は地元那覇の子供たちによるエイサーがクルーズ客を楽しませてくれました。いたいけな子どもたちが精一杯、踊り舞う姿は心を和ませます。
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そして定刻通り、17時の出港。客船は大きな汽笛を鳴らしながら、徐々にふ頭から離れていきます。こうしてクルーズ客船の長い1日が終わりました。

このあと、この船は石垣島に向かいます。翌朝、クルーズ客たちは石垣島や八重山の離島を訪ねることになります。

※石垣島の最新事情については、中村の個人blog「新空港開港で石垣にインバウンド客は増えるのか?」を参照。

この夏、沖縄では毎週こうした光景が見られることでしょう。

台湾からのクルーズ客船は1990年代から那覇に寄港していました。しかし、一時期、休止していたこともあります。そのため、沖縄県は台湾側に再開してもらうよう強く働きかけたといいます。ただし、大型客船が入港するためには、それなりの規模の港湾施設が必要でした。そこで、沖縄県はもともとコンテナふ頭だった若狭バースを国際客船用のふ頭として整備し、乗降を始めたのが2005年です。県の資料によると、スタークルーズ社の大型客船の定期運航が始まったのは2006年からのようです。以来、毎年4月から10月の夏季シーズンに毎週1回、年間で約30回の台湾客が那覇を訪れるようになったのです。

那覇に寄港するクルーズ客船は台湾からだけではありません。翌日(3月30日)には、欧米客を乗せた世界一周クルーズ客船が入港しています。この客船は、初代「飛鳥」を改装した3万トンクラスの「AMADEA」で、SUPERSTAR AQUARIUSに比べると小さいですが、約600名の欧米客が那覇に上陸しました。
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※欧米からのクルーズ客船については、中村の個人blog「沖縄には欧米客を乗せたクルーズ客船も寄港します」を参照。

海外からの沖縄ツアーは3泊4日が一般的

このように那覇港は現在、全国トップクラスの国際クルーズ客船の受入港となっています。クルーズ関係者がいうように、日本の南西約600kmに位置する沖縄本島は、東シナ海の中央に位置する絶好の立地にあるのが強みです。

それでも、沖縄県の観光要覧によると、2011年度の沖縄入域外国人30万1400人のうち、空路は18万2500人、海路は11万8900人。市場規模でいえば、空路のほうが大きいことは日本の他の地域と変わりません。

一般に東アジア各国・地域からの沖縄ツアーは3泊4日か4泊5日が主流のようです。香港で日本への送客数がナンバーワンのEGLツアーズ(東瀛遊旅行社)の3泊4日ツアーの定番コースを見てみましょう。

※EGL Tour(東瀛遊旅行社)http://www.egltours.com

■港龍直航沖繩4天(ドラゴン航空利用沖縄3泊4日)
5 月6日発 6699香港ドル

第一天(1日目):香港~直航沖繩~波之上神宮
宿/國際級MARRIOTあるいは萬豪SEA VIEW海景房洒店

第二天(2日目):海洋博水族館~觀賞海豚表演~水果樂園試食時令水果~有趣蝴蝶溫室~雀鳥天地館~著名電影『戀戰沖繩』拍攝地萬座毛★
食/網燒燒肉地道美食+多款飲品自助餐
宿/LOISIR HOTEL NAHA 海底露天溫泉及溫泉泳池酒店
※連續2晚入住同一酒店享受旅遊舒適樂趣包海底露天溫泉及溫泉室內泳池

第三天(3日目):漁港海鮮市場~金鎗魚SHOW~海底玻璃生態觀光船~守禮門~世界遺產『首里城』~建築奇觀『樹包厝(樹屋)』~國際通商店街
食/有機名菜健康自助餐+琉球海鮮鍋餐

第四天(4日目):玉泉鐘乳石洞~琉球王國村~熱帶果樹園~玻璃陶器工房~元氣大鼓表演~MAIN PLACE 購物城~機場~香港
(同社のHPから抜粋)

香港の旅行会社なので繁体字が使われていますが、地名だけなので訪問先はだいたいわかると思います。2日目に「著名電影『戀戰沖繩』拍攝地萬座毛」とあるのは、ゴードン・チャン監督の香港映画『恋戦沖縄』(2000)のロケ地が万座毛ビーチだったからです。主演は、いまは亡きレスリー・チャン(張國榮)。フェイ・ウォンやレオン・カーフェイ、ジジ・ライ、加藤雅也らの出演する娯楽作です。
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一般に香港や台湾、中国本土の沖縄ツアーでは、華人とゆかりのある福州園や、波之上宮に近い孔子廟を訪ねることが多いようです。
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嘉手納米軍基地を一望できる「道の駅 かでな」を訪ねるツアーもあります。米軍基地という沖縄の特殊な景観を見るためとHPでは紹介されています。
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※香港、台湾からのツアーの詳細については、中村の個人blog「沖縄外客トップ2、台湾客と香港客のツアーについて」を参照。

消えた中国客

沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課が2013年1月に発表した「平成24年沖縄県入域観光客統計概況」よると、2012年度の沖縄県入域観光客数は592万4700人と過去2番目で、震災後の回復ぶりを強くアピールしました。そのうち、海外入域観光客数は過去最高で、「年間37万6700人となり、対前年比で9万6700人増加、率にして+34.5%となった」とあります。

これは沖縄の旅行関係者にとっても予想以上の好結果だったようです。中国情勢が下半期に影響したにもかかわらず、外客数が過去最高になったのは、台湾や韓国の新規航空会社就航と夏までのクルーズ客船の寄港数の拡大が貢献していると思われます。

内訳でみると、外客のトップは台湾で約14万人、2位は中国で約7万人、3位は香港で5.8万人、4位は韓国で3.4万人です。ただし、昨年秋以降、中国からの訪問客は激減していますから、2013年上半期の沖縄の外客トップ2は、台湾客と香港客だといわざるを得ません。

実際のところ、昨年飛躍的に増加した(2倍以上の伸び)中国本土客は、2013年5月現在、鳴りを潜めています。北京・那覇線は中国国際航空、海南航空ともに運休、上海線はかろうじて中国東方航空が週4便でつないでいますが、運休もけっこう多いようです。

※中国本土客の動向については、中村の個人blog「中国人の沖縄旅行(今は激減、今後はどうなる?)」を参照。

それでも、今後は風向きが少しずつ変わっていくかもしれません。中国国際航空が北京・那覇線を7月から運航再開するそうですし、海南航空も(5月2日現在、同航空那覇支店に尋ねたところ、再開の時期は決まっていない)それに続いて、あるいは中国国際航空より先に運航再開する可能性はあります。また関係者の話では、上海線は6月以降、週4便からデイリー運航となるそうです。しばらくは行方を見守るしかなさそうです。

沖縄におけるインバウンドの課題とは

こうして日々変転する状況のなか、ある旅行関係者は、沖縄のインバウンド市場について「結果的には中国市場の落ち込みが、かえって香港など他の市場を押し上げた格好になっている」といっています。なんとも皮肉なものですが、これは今年、東南アジアからの訪日客が増えている日本の内地の状況と同じといえます。

琉球新報2013年2月22日によると、沖縄県文化観光スポーツ部は、2013年度の入域観光客数の目標値を630万人(前年度比8.2%増)、外国人客は50万人(前年度比56.3%増)という目標を掲げています。特に後者については、かなりチャレンジングな数値目標だとぼくは思います。中国客の激減が足を引っ張りそうだからです。

個々の市場はともかく、こうした高い目標を実現するためには、いくつもの解決しなければならない課題があることを沖縄の旅行関係者はよく認識しています。ある事業者は、沖縄の訪日客受け入れ体制の課題として以下の点を指摘しています。

①覇空港国際線ターミナルは、競合する海外のグアムやプーケット、海南島、シンガポールの空港と比較してどうか。“リゾート気分”を感じられるのか?
②外国客のための通訳案内がしっかりしているか。
③Wi-Fiの普及度はどうか。
④中国客はレンタカーを利用できない状況で、公共交通機関がしっかりしているのか。
⑤沖縄ならではの、おもてなしができているのか。
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まず挙げられているのが、現在の老朽化した那覇空港国際ターミナルの問題です。確かに、現状はひと昔前の離島の空港といった雰囲気です。ただし、来年には新国際ターミナルが開港する予定です。通訳案内やWi-Fiの普及については、東京でもその遅れは指摘されており、沖縄だけの問題ではないといえます。レンタカーについては、台湾客や香港客は沖縄本島でレンタカーを利用できるけれど、中国本土客は利用できないことから、中国のマルチ観光ビザ取得者のような個人客の交通の利便性をいかに高めるかという課題です。

ハード面の課題は時間がある程度解決してくれるとして、気になるのは「沖縄ならではの、おもてなし」というソフト面での課題です。そもそも「沖縄ならでは」とはどういうことを指すのか。これは海外から見た沖縄イメージはどうあるべきかという問いに直結する問題です。那覇空港国際ターミナルが「競合する海外のグアムやプーケット、海南島、シンガポールの空港と比較してどうか。“リゾート気分”を感じられるのか?」という課題認識は、沖縄が今後どんなリゾートを目指すべきなのか、という問いかけにつながってくるのです。それは、沖縄が自らこうありたいという自己イメージとの整合性をどう図るかという話にもなってくるでしょう。

さらにいえば、沖縄がグアムやプーケット、海南島、シンガポールのようになることがいいことなのか。この点は沖縄の人たちの間でも必ずしも意見が一致するとは限らないのではないでしょうか。ただこうもいえます。自らのあるべき姿について揺らぎがあること自体、グローバル資本によってなかば強引かつ主導的に形成されてきたバリやプーケットといった一見華やかではあるけれど、きわめてポストコロニアルな色彩の強いアジアのビーチリゾートと、そもそも沖縄は違うということです。自主性が担保されているがゆえに、揺らぎが生まれてしまうともいえるのです。

沖縄のインバウンド振興にこうしたいくつもの課題や揺らぎが見られることは、実のところ、日本のインバウンド最前線ともいうべきポジションに沖縄があるという証左です。インバウンド振興では、グローバル化とどう向き合うかが常に問われます。観光の島、沖縄でいま何が起きているのか ――。グローバル化がもたらすさまざまな課題に先駆けて直面しなければならなかった沖縄の姿を知ることを通して、内地にいる我々も多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか。

今回の報告は、3月下旬に沖縄本島と石垣島を訪ねたときの取材を元にしており、ほんの“さわり”にすぎません。沖縄の観光を語るには、もとより全体の入域観光客のわずか5%に過ぎないインバウンド市場の動向だけ追っていたのでは十分とはいえません。また何より本土復帰から40年の歴史をふまえ、現地の旅行関係者が何を考えてきたのか、もっと話を聞いてみなければならないと感じています。近いうちに、あらためて沖縄を再訪してみたいと思います。

やまとごころ.jp 20回
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by sanyo-kansatu | 2013-05-09 15:19 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2013年 05月 01日

沖縄外客トップ2、台湾客と香港客のツアーについて

これまで沖縄を訪れる台湾や欧米のクルーズ客船や中国本土客のツアーの現状を見てきました。
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文化観光スポーツ部観光政策課が2013年1月に発表した「平成24年 沖縄県入域観光客統計概況」によると、沖縄の海外入域観光客数は「年間37万6700人となり、対前年比で9万6,700人増加、率にして+34.5%となった」とあります。

そのうち、外客のトップは台湾で約14万人、2位は中国で約7万人、3位は香港で5.8万人です。ただし、昨年秋以降、中国からの訪問客は激減していますから、少なくとも2013年の上半期において沖縄外客トップ2は、台湾客と香港客だと言わざるをえません。

そこで、沖縄外客トップ2の台湾と香港のツアーについて見ていきたいと思います。

台湾からは、那覇に寄港するクルーズ客船のオプショナルツアーを担当している太陽旅行社。香港からは日本への送客ナンバーワンのEGLツアーズ(東瀛遊旅行社)にしましょう。ちなみに、EGLツアーズは、2011年の東日本大震災の後、香港で最も早く日本ツアーを再開させた旅行社で、以前ぼくはあるビジネス誌で同社の袁社長にインタビューしたことがあります。

殺し屋と批判されても日本ツアーを再開したわけ
感動の復興ドラマ【香港EGLツアーズ】 PRESIDENT 2011年7月18日号
http://president.jp/articles/-/1369

太陽旅行社
http://www.okaking.com.tw

EGL Tour(東瀛遊旅行社)
http://www.egltours.com

一般に台湾や香港の沖縄ツアーは3泊4日か4泊5日が主流のようです。まず台湾の太陽旅行社の沖縄ツアーから。

■沖繩繽紛精選四日遊
4月下旬~5月中旬発(料金不明)

第一天台北~沖繩(琉球)~建築奇景『樹屋』~『波之上神宮』、『孔子廟』~半潛水艇『銀河探險號』~『福州園』~那霸西門町『國際名人通』~新都心
參考班機 CI 120 0815/1045

第二天 安保之丘(嘉手納基地が望める)~『夢幻森林公園BIOS』~暢遊人氣主題公園『國營沖繩紀念公園』(海豚表演)、世界之最 (美之海水族館) ~『亞熱帶水果樂園』(熱帶果園、蝴蝶樂園、飛鳥樂園)

第二天『守禮門』~藥妝購物店(ドラッグストア)~『玉泉洞』鐘乳石 ~『王國村』傳統工藝~造酒場~『琉球傳統大鼓隊』~北谷町『美國村(アメリカンビレッジ)』自由逛街購物。

第三天沖繩( 琉球 )~台北 參考班機 CI 121 1155/1230

宿 SOUTHERN BEACH RESORT 
RIZZAN SEA-PARK HOTEL海景皇宮 
PS:或MOON BEACH、SOUTHERN LINKS、KARIYUSHI RESORT、SUN MARINA、MURASKI MURA、TOKYO DAI-I-CHI、殘波岬など。

食 中餐:1.沖繩麵套餐 2.沖繩傳統料理 3.琉球王國自助餐
晚餐:1.健康食彩自助餐(或)日式料理 2.燒烤無限暢吃(或)精選BAR.B.Q套餐 3.琉球御膳料理(或)海鮮火鍋+沖繩豬肉吃到飽 (或) 日式料理
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※嘉手納基地を一望する小さな丘は「安保の丘」と呼ばれています。「道の駅 かでな」のすぐそばにあります。

次に、EGLツアーズの沖縄ツアー。
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■港龍直航沖繩4天
5 月6日発 6699香港ドル

第一天 香港~直航沖繩~波之上神宮
宿 國際級MARRIOTあるいは萬豪SEA VIEW海景房洒店

第二天海洋博水族館~觀賞海豚表演~水果樂園試食時令水果~有趣蝴蝶溫室~雀鳥天地館~著名電影『戀戰沖繩』拍攝地萬座毛
食 網燒燒肉地道美食+多款飲品自助餐
宿 LOISIR HOTEL NAHA 海底露天溫泉及溫泉泳池酒店
連續2晚入住同一酒店享受旅遊舒適樂趣包海底露天溫泉及溫泉室內泳池 (請帶備泳衣)

第三天 漁港海鮮市場~金鎗魚SHOW~海底玻璃生態觀光船~守禮門~世界遺產『首里城』~建築奇觀『樹包厝(樹屋)』~國際通商店街
食 有機名菜健康自助餐+琉球海鮮鍋餐

第四天 玉泉鐘乳石洞~琉球王國村~熱帶果樹園~玻璃陶器工房~元氣大鼓表演~MAIN PLACE 購物城~機場~香港
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※香港映画『恋戦沖縄』(2000)は陳嘉上(ゴードン・チャン)監督、主演は、いまは亡きレスリー・チョン(張國榮)、フェイ・ウォン、レオン・カーフェイ、ジジ・ライ、加藤雅也らの出演する娯楽作。万座毛が撮影地のひとつ。

最も安い定番ツアーを選んだせいか、両者の違いはほとんどないようです。中国本土客のツアーもだいたいこんな感じです。

それでも、沖縄のある旅行業者によると、沖縄のインバウンドはまず台湾市場が新しい商品や方向性を打ち出すと、その3か月後くらいに香港市場も呼応して動き出す。そして、しばらくすると上海市場にも飛び火していく、というような連動した動きがあるそうです。

もともとツアー客の比率の高かった台湾(2003年は全体の64%が団体。しかし、現在は半々)も、すでに個人客の多い香港も、ツアー以外の個人客の動きを見ていかなければ全体像を捉えることはできません。

今回、ビーチリゾートが集中している恩納村のホテルをいくつか訪ねたのですが、ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートのフロントで、明らかに香港の人だろうなと思われる個人の宿泊客を見かけました。きっと『恋戦沖縄』の影響もあり、このリゾートは人気なのだろうと思われます。
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香港の人たちというのは、台湾の人たちに比べ、欧米的なセンスを身につけているというのか(あるいは、そう見せたがりたいのか?)。たまたま波之上宮で出会ったツアー客のガイドと少しだけ会話を交わしたのですが、「最近、香港のお客さんが多いようですね」というぼくの問いに対して、「いまはイースターの休みに入っていますから、香港のお客さまは多いんですよ」と彼は答えるのです。中国や台湾、沖縄でさえ、これから清明節だといっている時期に、香港ではあえてイースターだという。こんなところからも「ぼくらは中国本土の人間とは違うんだよ」とさらりとアピールしているように見えてしまいます。
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それだけに、沖縄観光に関するクレームは、やはり香港客がいちばん多いと、旅行関係者はいいます。

沖縄県香港事務所が出した「東南アジアから見た沖縄インバウンド業界の課題とは?」という資料では、香港の旅行業界からのクレーム事項として、以下の点を挙げています。

①那覇空港国際線ターミナルの設備
②外国語表記(案内表示、案内パンフレット、メニューなど)
③ショッピングの魅力…?
④食事(宗教上の制約)
⑤ナイトライフ
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確かに、現状の那覇空港国際ターミナルは一昔前の離島の空港といった雰囲気です。でも、来年には新国際ターミナルが開港する予定です。ショッピングの魅力という点に関しては、世界を代表するショッピング都市である香港客の目から見れば、厳しい評価になるのも無理はありません。ナイトライフもどうでしょう。これは単なる夜遊びというだけでなく、文化観光にもつながるテーマだと思います。その点については、近年内地から移り住んできた若い世代と地元の人たちがともにこの地に根づかせつつあるアートやサブカルチャーの動きをうまくアピールしていくことで、香港とはまったく異なる新しい沖縄の魅力を打ち出すことはできないものでしょうか。

個人化、欧米化の進んだ香港の人たち相手には、他のアジアの地域の人たち向けの見せ方とは少し趣向を変えることが必要なように思います。それは、台湾の若い世代向けにも効果があるはずです。
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by sanyo-kansatu | 2013-05-01 09:30 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 04月 30日

【後編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント

前編では、台湾からのクルーズ客船「SUPERSTAR AQUARIUS」の乗客のうち、沖縄本島のオプショナルツアーに参加した人たちのことを紹介しました。では、残りの約650人はどう過ごすのでしょうか。

もちろん、個人旅行者として那覇市内に繰り出すのです。
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彼ら個人客の観光をサポートするのが、那覇市観光協会のみなさんです。クルーズ船の寄港する若狭バースの乗り場の入り口に臨時のツーリストインフォメーション(観光諮訽處)を開設。中国系、台湾系などネイティブのスタッフを揃え、これから市内に向かう個人客の質問に対応し、用意した観光案内資料や市内マップを渡します。
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那覇市内観光に便利なのが、市内を走るモノレール「ゆいレール」です。しかし、これだけ大勢の台湾客が一気に駅に押しかけてチケット売り場の前に並んだら、那覇市民の利用にも支障がでてくるので、1枚600円の1日乗車券を販売しています。
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なかにはタクシーを利用する人たちもいますから、運転手たちにきちんと行き先を通訳するのも仕事です。
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スタッフを統括する那覇市観光協会の国里顕史さんに話を聞きました。

――個人客のみなさんはどこに行くのでしょうか?

「那覇市内で買い物や食事をして過ごします。たいてい国際通りや新都心(おもろまち)のショッピングモールなどに行きます。リピーターも多いので、自分の足でどこでも行かれます。なかには日本人と同じように、レンタカーで遠出される方もいますよ。

クルーズのお客様は、那覇に宿泊はされませんが、わすかな時間で一度に買い物されるので、大きな経済効果が見込めます。沖縄は台湾や上海、韓国からも近いので、クルーズ市場において優位な立地にあります。来年春には、このふ頭に13万トン級の大型客船が接岸できる那覇港若狭バースが整備される予定になっています」

こうして慌しい対応が一段落するのが、10時過ぎくらい。インフォメーションのテントを撤収し、スタッフ一同は国際通りに向かいます。今度は通りにあふれる台湾客の案内や買い物のサポートなどをスタッフ総出で行ないます。

そこで、ぼくも国際通りに繰り出してみました。すると、いるいる(当たり前ですね)。あちこちから中国語が聞こえてきます。
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面白かったのは、公設市場です。ここでは1階の市場で買った魚介類を2階の食堂で調理してくれます。
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家族連れの台湾客も多いようです。
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2階の食堂街は、この日、明らかに日本の観光客より台湾客と香港客のほうが多くいたように思います。
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各店にはたいてい英語とハングルに加え、「有中文菜単(中国語のメニューあります)」という中国語の表示があります。それはそうと、食堂のスタッフはどうやら地元の人だけではなさそうです。
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ある食堂の日本人スタッフに聞いてみました。
「もしかして、お店で働いているのは中国の人ですか?」
「ええ、そうですよ。うちでは、ぼく以外は全員中国人です」
「それは台湾の人ということですか?」
「いえ、中国本土の人ですよ」

そうあっさり答えられたので、ちょっと拍子抜けしてしまいました。ここは那覇を代表する観光名所、公設市場です。多くの観光客が沖縄のローカルな世界を味わうために来ているはずなのに、そこで働いている大半は中国本土の人たちだというのです(さすがに1階の市場は地元の人が多そうでしたけれど)。

公設市場の食堂でアルバイトする沖縄の若い人たちはもういないのでしょうか。これはかなりショッキングな出来事のようにも思います。でも……、よく考えてみれば、東京をはじめ日本の大都市の飲食店でも多くの中国本土の人たちがアルバイトをしています。同じことかもしれません。

もうひとつ気がついたのは、国際通りのお土産店などでも普通に中国語の表示があるのですが、たいてい簡体字表記になっていることです。簡体字を使う中国本土客は昨年秋以降、激減してしまっており、街にあふれるのは繁体字を使う台湾や香港の人たちなのに……。
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市内を走るタクシーの運転手の何人かに聞いてみたのですが、普段から外国客を乗せて運ぶ彼らでさえ、中国本土客と台湾・香港客の区別がついていないようです。当然、一般の那覇の人たちもそうです。

まあしかしこれは内地でも同じことでしょう。東京を歩いている中国系の観光客を見て、それが台湾客なのか香港客なのか、それとも中国本土客なのか、ひと目でわかる人はほとんどいないでしょう。それに、全国どこでも中国語表示は簡体字が基本となっています。

なぜ那覇の人たちが、台湾客や香港客を見ても、ひとくくりに中国本土客と思ってしまうかというと、そこにはひとつの理由がありそうです。

それは昨年(2012年)7月、先ごろ東京港にも寄港して話題となった豪華大型客船ボイジャー・オブ・ザ・シーズ(巨大すぎてレインボーブリッジをくぐれなかったため、東京港のコンテナふ頭に接岸)が、那覇に入港したことのインパクトが大きかったからではないか、と推測します。

那覇港管理組合のHPでは、ボイジャー・オブ・ザ・シーズの大きさについてこう説明しているほどです。

「同船は、乗員乗客最大で約5000人が乗船することが可能で、沖縄県庁と比べると、高さはほぼ同じ高さ、全長はなんと、約2倍です」

そのボイジャー・オブ・ザ・シーズが、7月5日、16日、24日、8月1日と約1か月間に4回連続で入港し、3000人超の上海からの中国本土客がいっせいに那覇に繰り出したのです。特に16日は、ボイジャー・オブ・ザ・シーズ以外にも、欧米客を乗せたクルーズ船が寄港したため、その日は5000人近い外客が那覇に上陸したのです。その日、観光バス90台が那覇港に乗りつけたといいます。

その結果、那覇の人たちはこれからどんどん中国本土客が訪れるものだと思い込んでしまったのではないでしょうか。

ところが、実際には今年は秋までボイジャー・オブ・ザ・シーズが寄港する予定はありません。もちろん、日中の尖閣問題が影を落としているからです。
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さて、岸上観光を楽しんだ台湾客たちも、遅くとも出港時刻(17時)の1時間前には船に戻ってきました。乗船前にクルーズのスタッフに頼めば、記念撮影してくれます。
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いよいよ那覇ともお別れ。その前に、今年度の初寄港ということで、地元那覇の子供たちによるエイサーがクルーズ客を楽しませてくれます。いたいけな子供たちが精一杯踊り舞う姿は心を和ませます。多くの客が甲板に出て、子供たちのエイサーをいつまでも眺めています。
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そして定刻通り、17時の出港。客船は大きな汽笛を鳴らしながら、徐々にふ頭から離れていきます。
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でも、子供たちはすぐにはエイサーをやめようとしません。客船が那覇港を遠く離れていくまでずっと手を振り続けています。「バイ、バーイ!」。こういう姿を見せられると、大人はまいってしまいますね。こうしてクルーズ客船の寄港する長い1日が終わりました。

このあとこのクルーズ客船は石垣島に向かいます。翌朝、寄港すると、石垣島や八重山の離島を訪ねることになるでしょう。

沖縄では、この夏こうした光景が毎週のように見られることになります。

※那覇に寄港するクルーズ客船は台湾からのものだけではありません。実は、翌日(3月30日)にも、欧米客を乗せた世界一周クルーズ客船が寄港しています。この客船は、初代「飛鳥」を改装した3万トンクラスの「AMADEA」で、SUPERSTAR AQUARIUSに比べると小さいですが、約600名の欧米客が那覇に上陸しました。その話は、別の機会で。

「沖縄には欧米客を乗せたクルーズ客船も寄港します」http://inbound.exblog.jp/20366268/
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by sanyo-kansatu | 2013-04-30 16:12 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 04月 30日

【前編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント

2013年3月29日早朝、台湾からのクルーズ客船「SUPERSTAR AQUARIUS」が那覇港新港ふ頭8号(若狭バース)に入港しました。あいにくの雨でしたが、今年度最初の入港になります。
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SUPERSTAR AQUARIUSは、ゲンティン香港(スター・クルーズ・ピーティーイー・リミテッド)が運航するカジュアルなクルーズ客船です。毎年4月から10月まで週1回、那覇港に寄港し、毎回約1500人の台湾客が観光のため上陸します。基本、3泊4日で基隆―那覇―石垣―基隆(基隆―石垣―那覇―基隆の場合もある。また基隆―那覇往復、基隆―石垣往復も)を航行します。料金は最も安いシーズンで、2泊3日の基隆―石垣往復が9900台湾ドル(約3万3000円)から。1日の単価は約1万円という破格の安さです。ただし、今回の客船に限っては基隆発ではなく、高雄発だそうです。
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スタークルーズ日本語公式サイト
http://www.starcruises.co.jp
スタークルーズ台湾公式サイト
http://www.starcruises.com.tw/

日本ではまだクルーズは豪華客船だから料金も高いというイメージがありますが、アジアや欧米ではこうした格安クルーズが多いのです。しかし、格安クルーズだといっても、館内の施設はそれなりに揃っています。

多様な娯楽施設、各種レストラン、プール、スパ、そして台湾サイトには載っていませんが、カジノもあります。実はこれが台湾客を惹きつける理由のひとつだとか。まさに“動くアミューズメントモール”。台湾でクルーズ旅行が人気というのもうなづけます。

SUPERSTAR AQUARIUS 台湾サイトの紹介
http://www.starcruises.com.tw/aquarius/info.aspx

同船のフェイスブックを見ると、台湾客がクルーズ旅行を楽しむ様子がうかがえます。
https://www.facebook.com/StarcruisesTaiwan

さて、この日は約1300人の台湾客が沖縄に上陸しました。
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そのうち約650人は、沖縄各地を周遊するオプショナルツアー(岸上観光)に参加します。お出迎えは、台湾系のランドオペレーター太陽旅行社のスタッフです。そのひとりはこう言います。「朝8時到着で17時には出港というスケジュールは、観光や食事、買い物についても十分とは言えないかもしれません。でも、一般のツアーでは移動が多くて、かえって自由時間が少ないのです。その点、クルーズではオプショナルツアーに参加しなければ、じっくり買い物を楽しむことができます。台湾のお客様は食品から家電、生活用品まで、いろいろ買っていかれますよ」。
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ふ頭にはずらりと大型バスが並んで待っています。
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乗客を乗せたバスからいざ出発。
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HPによると、以下のツアーの中から好きなコースを選べるようになっています。日本人の沖縄ツアーとさほど大きくは変わらない内容です。

①異國風情之旅 北谷町─美國村(アメリカンビレッジ沖縄
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②美食購物之旅 三郎伊勢海老專門料理店(老舗家海老料理 味の店 三郎本店 那覇市若狭1-14-10)─新都心商業圈(新都心「おもろまち」でショッピング)
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おもろまちにある那覇メインプレイスのフードコートには、たくさんの台湾客がいました。
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③海洋公園之旅 海洋博公園、水族館(沖縄美ら海水族館)、海豚秀(イルカショー)─超級市場(スーパーで買い物)

④采風探趣之旅 首里城、守禮門─新都心、藥粧店(ドラッグストアで買い物)─國際通/平和通
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⑤熱帶風情之旅 藍鯨號玻璃船(ホエールウォッチング)─萬座毛國立公園─北谷町購物(アメリカンビレッジ沖縄)
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⑥琉球傳統之旅 琉球村─沖繩婚禮教堂─北谷町美國村(アメリカンビレッジ沖縄)

⑦民俗文化之旅 王國村玉泉洞、大鼓秀─ASHIIBINAA OUTLET(あしびなーアウトレット)─藥粧店(ドラッグストアで買い物)、超級市場(スーパーで買い物)
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あしびーなアウトレットには、台湾客だけでなく、香港客の姿も見られました。

⑧沖繩風味之旅 國際通─BBQ吃到飽(含餐費)─AEON購物城

⑨那霸精華遊 Itoman魚市場─3A購物城─ASHIIBINAA OUTLET

SUPERSTAR AQUARIUSのオプショナルツアー(岸上観光)
http://www.starcruises.com.tw/aquarius/trip.aspx

コースによって所要時間は違いますが、朝9時頃に出発し、船の出航する17時の2~3時間前には戻ってきます。

実は、台湾からのクルーズ客船は1990年代から那覇に寄港していました。しかし、5万トンを超えるクラスの大型客船が入港するためには、それなりの規模の港湾施設が必要となります。そのため、もともとコンテナふ頭だった若狭バースを国際大型客船のふ頭として整備し、乗降を始めたのが2005年です。沖縄県の資料によると、SUPERSTAR AQUARIUSのような大型客船の定期運航が始まったのは2008年からのようです。以来、毎年4月から10月の夏季シーズンに毎週1回、年間で約30回台湾客が那覇を訪れるようになったのです。

台湾では、誰でも気軽に楽しめるクルーズ旅行として広く知られています。台湾客は日本への渡航がノービザなので、入国手続きも簡単です。船内でのパスポートチェックで終わりです(その点、上海からのクルーズ客は団体観光ビザが必要なため、入国手続きのための時間がそれなりにかかるのと、大きく違います)。

話は後編に続きます。
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by sanyo-kansatu | 2013-04-30 11:18 | “参与観察”日誌 | Comments(0)