ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 05月 25日

なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?

ここ数日、日本国内で急増している中国の「越境白タク」の実態を見てきました。それにしても、この問題のみならず、なぜ彼らの周辺では次々と違法問題が起きてしまうのでしょうか。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/
日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/
中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/

これまで本ブログで何度も指摘してきたように、無資格ガイドや違法民泊、ブラック免税店問題など、すべてとはいいませんが、その大半は中国人観光客の周辺で起きています。その理由について、少し考えてみたいと思います。

その前に、不用意に話を進めると偏見を助長しかねない、この問題を考えるうえでの、今日の中国と中国人に対する正しい理解の前提となる2つのポイントを挙げておきたいと思います。

よく「中国人は遵法意識がない」と言われます。この点について、良識ある中国人はそれを否定しません。なぜなら、日本や欧米のような民主的な社会を生きていない彼らにとって、法は常に上から降りかかる災厄のようなもの。極端にいえば、彼らが法を守らないのは生きるため、といえなくもないからです。法の網をかいくぐり、利益を得た人間がむしろ評価される社会です。このような国に生きる人たちを、我々と同じ基準でジャッジしてしまうと、彼らのふるまいの背後にある真意を見間違いがちです。

もうひとつは、少しメンドウな話なのですが、中国が急速に経済力をつけ、ECやモバイル決済、そして配車アプリの普及など、明らかに日本の社会より利便性の進んでいる分野が次々と生まれてきたことから、「最先端のサービスを利用する自分たちがなぜ悪い? むしろ、遅れている日本の方が問題では」という心理が彼らの中に芽生えていることです。

この種の心理は、かつて(欧米社会に対するものとして)日本人にもあった気がしますから、やんわり受け流せばすむ話。とはいえ、国民感情として、言うは安しと感じる方も多いかもしれません。よく「中国人は傲慢だ」と言う人がいますが、あまりに単純固定化して彼らの言動を受けとめるのは思慮が欠けているといわざるを得ません。彼らがそう見えるのは、そうなる背景や理由があって、その道筋をある程度頭に入れておけば、理解できない話ではないことは知っておいたほうがいいでしょう。我々とはあらゆる面で価値観が違うのも、そのためなのです。

この2点をふまえたうえで、考えなければならないのは次のことです。

我々の側に、観光客として彼らを受け入れるうえでの原則やルールがあるかどうか。それを彼らにもわかりやすく説明し、理解させているか。それが問われているのです。

しかし、実際にはそのような原則やルールを日本の社会は用意しているとは思えません。そんなことはまるで考えてもいないかのよう。せいぜい観光客がお金を落としてくれるんだから、日本が得意の「おもてなし」をしましょう…。たいていの場合、これだけです。

つまり、結論を先に言ってしまうと、中国人観光客の周辺で起こる違法問題の根本的な原因は、彼らの側だけにあるのではなく、むしろ我々が彼らを賢く受け入れるためのルールづくりをなおざりにしてきたからだ、というべきなのです。

もう半年以上前のことですが、昨年10月、NHKのクローズアップ現代で、中国人観光客の周辺で起こる違法問題を題材にした番組を放映していました。

「「爆買い」から「爆ツアー」へ。いま中国人観光客が目指すのは、都心の百貨店や家電量販店よりも、地方の観光都市。そこは「無資格ガイド」や「白タク」などが暗躍する、無法地帯となりつつある。番組はその実態を探るために潜入取材。その結果明らかになったのは、日本の旅行業法の不備をついて不当に利益を上げる、闇業者の存在だった。急増する中国人観光客がらみのトラブルと、どう向き合えばいいのか。お隣の韓国で成果を上げる、目からウロコの処方箋も紹介!」(同番組HPより)

この番組の詳しい内容は以下のウエブサイトをみてもらえればわかりますが、NHKの取材陣が潜入したという「中国人爆ツアー」の現場のルポと識者らの解説にはいくつかの興味深い指摘がありました。と同時に、つっこみどころもけっこうあったので、解説します。

潜入!中国人 “爆ツアー”の無法現場(NHKクローズアップ現代+2016/10/23)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3879/

ルポの冒頭の舞台は沖縄です。沖縄はいま全国でいちばん白タク問題で悩んでいるからです。

NHKの中国人スタッフが観光客を装って接触を試みた白タク運転手は20代の中国人。聞けば留学生上がりで、在学中からやっていたといいます。もちろん、彼は通訳案内士の資格もなく、第2種運転免許もありません。明らかな違法営業です。

なぜこんな違法営業がまかり通るかについて、ランドオペレーターのひとりにこう言わせています。「しっかり監督をする組織が、部分がないですから、それが原因で白タクとか不法の民泊に、いま氾濫されている。一番大きいのは税金関係。税金みんな払ってない。資本金も何も必要なく、やり放題。これはおいしい、いっぱいおいしい利益をとるだけ」

そう、そのとおり。監督官庁の存在がまるで不明で、ルールづくりがおざなりにされてきたことが、無法状態の根源だというのです。

こうなってしまった理由として、立教大学の高井典子教授はこう説明します。

「まず前提として、これまでの日本の旅行業界というのは“日本人の、日本人による、日本人のため”の旅行を扱ってきた。

つまり「BtoC」、旅行会社から最終消費者である旅行者、ツーリストに向けてのビジネスに関して旅行業法という法律で管理してきたわけなんですね。

ところが、この数年、急激にアジアの市場が伸びてきていて、これが想定外の成長をしてしまい、いわば真空地帯だった所に新たに登場したのが、今、出てきました、多くの新しいランドオペレーターということになります」。

この指摘は基本的に間違いではないですが、「想定外の成長」「真空地帯」という説明を聞くと、ちょっとつっこみたくなります。というのは、訪日中国人団体客の受け入れは2000年に始まっており、「想定外」などというには時間がたちすぎています。時間は十分あったのに、やるべきことをやってこなかったというべきだからです。「真空地帯」というのも、そうなったのは、急増していくアジア系観光客の受け入れを本来担うべきだった国内業者が、彼らに対する国内の旅行手配や通訳ガイドによる接遇も含めた「おもてなし」をコストに見合わないという理由で投げ出してしまったというのが真相に近い。

とはいえ、言葉も地理もわからない外国人の団体を街に放り出すわけにはいきません。誰かが彼らの接遇を担わなければならなかったのに、国内業者がやろうとしない以上、その役割を買って出たのが在日アジア系の人たちだったのです。彼らは自分たちがそれを担った以上、自分たちなりのやり方でやろうとするのはある意味当然です。観光客の側にとっても、そのほうがわかりやすい。こうなると、日本のビジネス慣行やルールではなく、アジア的なスタイルで運営されていくことになる。それを国内業者は「触らぬ神に祟りなし」と、見てみぬふりをするほかなかった…。これが真相というべきです。

これは日本の家電メーカーがこの20年で中国や韓国の企業に市場を奪われていったケースと基本的に同じだと思います。コストが見合わないという理由で、新しい市場への取り組みを投げ出していった結果という意味で、決して飛躍した話ではありません。中国人観光客の周辺の違法問題を考えるとき、この視点を忘れてはならないと思います。そうでないと、結局、この番組の後半の流れのような、あたりさわりなく聞き流せばすむ議論で終わってしまうからです。

実際、番組では外国人観光客のマナー問題に話を移し、「ルールやマナーを知らない外国人と気持ちのいい関係をどう築いていくのか」と問いかけます。これからの時代は日本人もそれを受け入れていく(乗り越えていく?)気持ちを持たなければという精神論に向かっていきます。

その際、例に挙げられたのが、忍野八海の湧水にコインを投げ入れる中国人観光客の話でした。こういうことがなぜ起こるかについては、以前本ブログで説明していますが、ひとことでいえば、日本に関する知識のない無資格ガイドが案内しているから起こるというべきで、これも監督官庁の野放しが生んだ問題なのです。

〔TBS・Nスタ〕中国人観光客はなぜ民家に侵入して自撮りをするのか?
http://inbound.exblog.jp/26383490/

ところで、番組にひとりの中国人コンサルタントが登場します。この人の存在がなかなか微妙です。彼は白タクや違法民泊問題についても「シェアリング・エコノミーは世界的な流れ。その点では中国の方が進んでいます。日本人の日常生活を味わうのは大きな魅力です」という主旨の話をするのですが、前述したような、最近の中国人によく見られる「むしろ、遅れている日本の方が問題では」という心理がうかがえないではありません。これを聞くと、そういう風に話を丸め込まれてはたまらないと感じる視聴者も多かったのではないでしょうか。なぜなら、違法問題を引き起こしている当の本人が言い訳しているようにも聞こえるからです。

いろいろつっこみを入れましたが、番組のウエブサイトでは、違法問題の背景について以下の解説を試みています。

なぜ、悪質なランドオペレーターを取り締まれないの?

取り締まるための法律がなかったからです。1952年に制定された旅行業法は、消費者となる旅行者を保護するために旅行会社を監督する目的で作られました。旅行会社から依頼を受け、バスやホテル・ガイドを手配するランドオペレーターは、旅行会社との取引になるため、旅行業法の規制の対象外になります。中国人観光客の数はこの3年で5倍近く増加し、ランドオペレーターの需要が急拡大する中、法の目が届きにくい現在の法制度の隙間をつく形で、次々と悪質業者が生まれきたと見られています。番組で取り上げたバス会社やレストランへの「突然キャンセル」だけではなく、旅行客を物販店に連れ回し不当に高額な商品を買わせる「ぼったくりツアー」で大きな利益を手にする業者もあります。さらに昨今、団体ツアーから個人旅行にシフトする中で、小回りのきく移動手段として「白タク」(営業届けをしないまま乗客を車に乗せ、運賃を受け取る車)や格安の宿泊場所として「無届け民泊」を手配するなど、悪質行為を行う業者も出てきています。

国はどのような対策を取ろうとしているの?

今年になって、国はようやくランドオペレーターの実態調査に乗り出し、全国で800以上の業者があることをつきとめました。現在、旅行業法を改正して、悪質なランドオペレーターを管理監督出来る仕組み作りを進めています。しかし、その一方で、他の業種では規制緩和を進めています。たとえば、これまで外国人を有償でガイドするためには「通訳案内士」という国家資格が必要でしたが、今後は「無資格」でもガイドすることを可能にする方針を打ち出しています。また、「民泊」もこれまで禁止されていた住宅街での開設を解禁する方向です。「2020年に訪日外国人観光客4,000万人」という目標を掲げる中、入国を許可するビザの発給要件の緩和も続ける日本。様々な規制緩和の中で、いかに悪質業者の横行を防いでいくようなルールやチェック体制が出来るかが、今後の課題となっています。


このように番組では、こうした違法営業が大手を振るっているにもかかわらず、政府の方針は「通訳ガイドは無資格でも可能」「民泊は住宅街でもOK」「ビザの緩和」「悪質業者を監督できる法改正を検討」と、規制を緩める方向にあることに疑問を呈しています。

そのこと自体はいいのですが、あたりさわりなく終わってしまう精神論や経済効果の話だけではなく、また安易に偏見を助長する結果を生みがちな表層的な実態のルポだけでもない、本質的な議論をしていかなければと感じます。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-25 09:58 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 03月 15日

今日から中国人の韓国旅行がストップします(まったくひどい話ではないか!)

本日(2017年3月15日)から中国人の韓国旅行、正確にいうと、旅行会社が募集したり、手配する団体ツアーやクルーズ旅行がすべてストップします(個人手配によるビジネス出張などは含みません)。

この影響は想像以上に大きなものがあります。韓国メディアはそれを報じ始めています。

韓国系航空会社、THAADの影響で中国路線相次ぎ減便(中央日報日本語版 3/15)
http://japanese.joins.com/article/876/226876.html

<中国のTHAAD報復>韓国から日本に旅先変える中国人観光客(中央日報日本語版 3/15)
http://japanese.joins.com/article/859/226859.html

今後も続々と韓国からの悲鳴の声が上がることでしょう。もともと韓国のインバウンド市場にとって数的に半数近くを占める中国客の動向(しかも、昨年は過去最高)は影響が大きいからです。その点、日本の場合は中国客の占める比率は4人に1人で、揺さぶりをかけられにくいところがあるのと対照的です。

訪韓外国人が過去最高を更新 中国人観光客がけん引 (聨合ニュース2016/12/27)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2016/12/26/0500000000AJP20161226003600882.HTML

相手国の政策が気に入らないから、突然人的交流をストップさせるよう旅行会社に通達を出す中国政府は、卑劣きわまりないといえます。民間人の交流を否定する政府に、国際社会の信用はありません。こんなことばかりしていては、自国の観光客が海外で尊重されなくなることに気づかないのでしょうか。愚かとしかいいようがありません。

先週、ぼくは上海にいましたが、現地の関係者もこの話題で持ちきりでした。「北京では上からの通達が直接あったが、上海では通達はないものの、自主的に販売停止をしている」のだそうです。ある上海の旅行関係者は「まさか政府がそこまでやるとは思ってもみなかった。これはやりすぎだ」と話しています。こう付け加えるのも忘れませんけれど…。「これまでの経緯でいえば、日中関係のほうがはるかに悪かった。日本旅行に対する制限ならまだわかるけど…」。やれやれ、彼ら中国の民間人というのは、まったくもって無力な存在でしかありません。こうした情勢をみて「明日はわが身」と感じた日本の関係者もいたことでしょう。

2010年以降、急拡大していた東シナ海クルーズも韓国をスルーすることになります。これまで最もスタンダードな4泊5日のコースでは、九州(福岡、長崎、佐世保、熊本、鹿児島、宮崎)および下関や境港などの日本側1都市と、済州島か釜山、仁川の韓国側1都市に寄航していたのですが、今日から韓国側への寄航がいっさいなくなります。日本側への寄航が増えるのは悪くないと思う人もいるかもしれませんが、ここ数年、特に福岡のように寄航数が増えすぎて受け入れが困難になっているケースもあり、手放しで喜んでいる場合ではありません。

韓国観光の「禁止」開始 クルーズ船も経由なし(聨合ニュース2017/03/15 )
http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2017/03/15/0900000000AJP20170315002200882.HTML

<中国のTHAAD報復>韓国から日本に旅先変える中国人観光客(中央日報2017年03月15日)
http://japanese.joins.com/article/859/226859.html

今回の中国側の動きは、今月3日に始まりました。

中国、韓国旅行商品の販売中止=THAAD配備に「報復」か-報道(時事通信2017.3.3)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030201438&g=int

【ソウル時事】韓国の聯合ニュースなど複数のメディアは2日、中国政府が自国の旅行会社に対し、韓国旅行商品の販売を全面的に中止するよう指示したと報じた。

中国は、在韓米軍への最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に強く反対しており、韓国ロッテグループによる用地提供で今年前半にも配備される見通しとなったことを受け、「報復措置」を取ったとみられるという。

昨年、韓国を訪れた観光客は約1700万人で、このうち800万人が中国人観光客だった。報道が事実なら、韓国の旅行関連業界が大きな打撃を受けることになり、中韓関係が一層悪化するのは必至。北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる中韓の協調にも支障が出るのは避けられない。

聯合などによると、中国国家旅遊局は2日、北京の旅行会社を招集して会議を開き、韓国旅行商品の全面的な販売中止を口頭で指示した。

一方、ロッテグループは2日、ショッピングサイト「ロッテオンライン免税店」がサイバー攻撃を受け、一時接続できない状態になったと発表した。攻撃の発信源は中国とみられ、報復の可能性がある。大量のデータを送り付けてシステムをまひさせる「DDoS攻撃」が行われた。


同じことは、ニューズウィークや朝日新聞でも報じていました。

韓国THAAD配備に反発、中国が韓国旅行商品の販売停止へ(ニューズウィーク2017.3.3)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/thaad-6.php

中国、韓国への団体旅行禁止 THAAD計画に報復か(朝日新聞2017年3月3日)
http://www.asahi.com/articles/ASK3304H7K32UHBI02W.html

これらの記事の元ネタは、同日に発せられた以下の中国国家旅游局の通達です。

国家旅游局发布赴韩国旅游提示(2017-03-03)
http://www.globalview.cn/html/societies/info_16598.html

国家旅游局于今日中午11时左右,在官网更新发布一条信息,提醒中国公民赴韩国旅游存在一定风险:

最近一个时期,中国公民入境韩国济州岛受阻事件急剧增多,部分被拒入境者在当地机场等候遣返时间较长,引起舆论和社会各界广泛关注。国家旅游局对此高度重视,先后在京约见了韩国驻华大使馆、韩国文化院、韩国文化体育观光部驻华机构官员,就相关问题提出了严正交涉。

国家旅游局提醒中国公民,清醒认识出境旅行风险,慎重选择旅游目的地。赴韩旅游须于行前认真、全面了解韩国入境政策,并根据要求准备好相关材料。如遇紧急情况、受到不公正对待或发生纠纷,可及时与我驻当地使领馆联系,并收集和保存相关证据,以便日后通过投诉或司法途径解决。


ここでは、理由をはっきり明かしていませんが、その「真相」については、中国メディアが詳しく報じています。

赴韩游被叫停真相:没有收到相关部门正式文件(2017-03-03)
http://news.sina.com.cn/c/nd/2017-03-03/doc-ifycaafm5032380.shtml

3月3日,国家旅游局在官网上发布消息称,最近一个时期,中国公民入境韩国济州岛受阻事件急剧增多,部分被拒入境者在当地机场等候遣返时间较长,引起舆论和社会各界广泛关注。国家旅游局对此高度重视,先后在京约见了韩国驻华大使馆、韩国文化院、韩国文化体育观光部驻华机构官员,就相关问题提出了严正交涉。
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第一财经记者采访了解到,今天下午有不少旅行社正在就韩国旅游相关事宜开会,但目前为止并没有收到正式的文件。途牛、同程等OTA(在线旅游代理商)已经开始下架韩国旅游产品,而航空公司也在观望对韩国航线的影响,以便做出是否调整赴韩运力的决定。

目前韩国游是出境游市场非常主要的路线,业界预计,此次事件会给近期的韩国旅游带来直接的下滑影响。

旅游线路紧急下架

国家旅游局提醒中国公民,清醒认识出境旅行风险,慎重选择旅游目的地。赴韩旅游须于行前认真、全面了解韩国入境政策,并根据要求准备好相关材料。如遇紧急情况、受到不公正对待或发生纠纷,可及时与驻当地使领馆联系,并收集和保存相关证据,以便日后通过投诉或司法途径解决。

就在国家旅游局发布信息不久后,第一财经记者联系携程、途牛、同程、驴妈妈、春秋国旅、中青旅、锦江等旅游业者,不少业者透露,今天下午都在开会探讨韩国游线路如何处理的事宜,但是目前还没有收到相关部门的正式文件。目前一部分旅行社还在按照正常程序在走,而有一部分业者则开始主动下架韩国游产品。
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北京万众国旅已经发布公告称,将下架所有赴韩旅游产品。

而途牛在今天已经将所有的韩国跟团游、自助游产品下架,并表示强烈抗议韩国部署“萨德”系统及韩国乐天集团为“萨德”提供部署地。

途牛进一步表示,对于前期已预订相关产品近日出游团期的游客可正常出行,如涉及韩国乐天相关行程将对客沟通进行调整;相关产品远期出游订单途牛将对客沟通取消并全额退款或转至其它目的地。

同程旅游则向第一财经记者表示:“同程旅游对韩国方面部署‘萨德’反导系统以及乐天集团的行径表示强烈愤慨。我们将继续本着国家利益大于一切的原则开展业务,‘萨德事件’严重伤害了中国人民的感情,同程旅游已经采取措施,陆续全部下线赴韩旅游产品线路等相关业务。”

同程旅游进一步表示,对于韩国旅游产品的下架会在今天之内完成。

第一财经记者注意到,在2015年12月10日,同程旅游宣布与韩国乐天观光股份公司达成战略合作,双方将共同出资成立一家合资公司,致力于当地旅游资源的整合与采购。韩国乐天观光股份有限公司录属于韩国乐天集团。

谈及与乐天的合作,同程旅游方面表示,目前业务已经暂停,将视事态发展来决定如何处理与韩方合作者的关系,不排除采取进一步措施的可能。

同时还有部分旅行社表示,虽然还未开始全面下架韩国旅游产品,但是会考虑先将已经成团的旅游线路进行退团处理。至于后续如何与韩国的酒店方、地接旅行社以及景区等业者做进一步的处理,现在还在考虑中。

关于是否下架韩国旅游产品,截至第一财经记者发稿时,携程和驴妈妈方面还没有给予回复。上航旅游则表示3月15日开始不再受理韩国业务。

韩国旅游将受挫

据韩国官方统计数据显示,2016年1月至12月入境外国人为1741.8万余人。其中,中国游客人数最多,为826.8万多人,占47.5%。但2016年下半年中国游客赴韩旅游人数增幅锐减,韩媒称此或与韩国部署“萨德”反导系统带来的负面效应有关。

路透社随即报道称,部分中国旅游企业下架韩国游产品消息发出后,韩国旅游公司Hanatour 股价下挫7%,由此可见,“萨德”事件的持续发酵,引发了一系列连锁反应,而旅游业首当其冲。

“就出境游而言,韩国是非常主要的目的地,基本上日韩旅游是排在出境游前五位的,尤其是这几年,邮轮旅游非常盛行,日韩线路是常规的邮轮出游线路,因此这次部分旅行社下架韩国游产品后,会对韩国旅游、日韩邮轮旅游在近期造成直线下滑的影响。”劲旅咨询首席分析师魏长仁指出。

值得注意的是,中国游客赴韩国旅游的“买买买”热情也非常高涨,尤其是乐天等几家主要的免税店,经常挤满了中国游客。此次部分旅行社对韩国旅游产品下架后,旅游业界预计乐天等主要免税店的生意也会直接遭遇“滑铁卢”。

“以出境游而言,泰国、日本、韩国、欧美线路都是比较热销的,如今韩国游预计会直接下滑,那么接下来出境游的客流或许会分流到泰国、欧美等地区,出境游的格局会有所变化。”魏长仁认为。

航空公司观望

对航空公司来说,日韩航线也是航司开辟国际航线的首选目的地。目前三大国有航空在韩国航线上占有领先的市场份额,而包括春秋、吉祥、奥凯等民营航空近年来也在陆续开辟日韩航线。

据记者了解,目前春秋有国内多个城市直飞济州,以及上海、石家庄飞首尔的韩国航线,吉祥有到济州的航线,而奥凯则刚刚于去年底开始在韩国济州机场放置过夜飞机,希望打造以韩国济州为枢纽通往国内主要城市的航线网络。目前,奥凯已陆续开通天津、长沙、南京、重庆、宁波、杭州等国内城市往返济州的航线。

多家航空公司人士告诉记者,事实上韩国团队游的减少,从去年下半年开始已有体现,不过由于2015年有MERS疫情的影响,2016年的同比数据还是有所增长,北上广、东北地区前往韩国的航线客座率恢复到了同期水平,二线城市韩国航线的运力投入也逐步恢复。

记者从中航信获得的相关数据也显示,从2016年10月开始,中韩航线上国内航司的旅客量同比增减情况如下:10月3.15%,11月为-1.18%,12月8.46%,1月 6%,2月1.76%。

而对于旅行社陆续下架韩国游产品,多家航空公司也表示在密切关注后续的影响,有的已经在开会讨论对策,以便做出是否调整赴韩运力的决定。


記事によると、韓国のTHAAD配備に対する「強烈な抗議」があると政府に同調したもの言いをしていますが、本来メディアがすべきは、中国政府の今回のやり方に抗議することではないでしょうか。彼らには呆れてモノが言えません。

【追記】
中国は5月に実施される大統領選の結果をにらんで、クルーズの韓国寄航再開を決めるようです。THHAD配備を撤回すれば、クルーズ客を送るというわけでしょう。観光を政治の取引に使うこうした汚いやり方に怒りを禁じえません。

中国発クルーズの韓国経由便 6月まで運航中止継続か(朝鮮日報2017.3.16)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/03/16/2017031601446.html
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by sanyo-kansatu | 2017-03-15 12:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 03月 02日

【自家広告】「ポスト爆買い」時代のインバウンド戦略~日本人が知らない外国人観光客の本音(扶桑社)

今月8日、扶桑社より以下の単行本を上梓します。
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「ポスト爆買い」時代のインバウンド戦略
https://www.amazon.co.jp/dp/4594076238

2016年に日本を訪れた外国人観光客は2400万人。しかも、前年より20%も増えています。それに気を良くしたのか、政府は2020年に4000万人という目標を掲げています。

ところで、日本を訪れる外国人のうち、欧米人の比率は10人に1人にすぎないことをご存知でしょうか。では、アジアの人たちは? なんと85%を占めているんです。全国各地で外国人観光客の姿を見かけるようになりましたが、その全体像についてどこまで我々は把握しているでしょうか。

本書では「なぜこんなに外国人が増えたのか」について以下の8つの理由を挙げています。

①行政主導で始まった地道なPR活動
②オープンスカイ協定による航空自由化
③アジア各国へのビザ緩和施策
④メディアが伝えた「外国人客の消費力」の浸透
⑤東日本大震災がひとつの転機に
⑥アジアのグローバル観光人口の増大
⑦日本の長期デフレが外国人客に与えた割安感
⑧アジアの中間層の成長と富の平準化

それぞれの項目の中身については、本書をご一読いただくとして、このうち①から⑤までは、日本がインバウンド市場の拡大のために実施した成果といえますが、後半の⑥から⑧は、海の向こうで起きていた国際環境の変化がもたらした結果といえます。もしかしたら、日本がどうこうしたからというよりも、海外で起きていた変化が今日の事態をもたらしていると考えたほうがいいのかもしれません。

それにしても、いまあらためて考えなければならないのは、外国人観光客の数だけ増えればいいのだろうか、ということです。最近、我々は彼らの増加がもたらした負の側面も知るようになってきたからです。本書では、こうした日本人にとって不愉快な出来事がなぜ起こるのか、解説しています。

本書は当ブログが日々観察している日本のインバウンド市場の表と裏を、できるかぎりわかりやすく伝えるために書かれたものです。個々の記事だけでは見通しが利かない訪日旅行市場の全体像と個別の事象の因果関係を整理しています。その明暗も含めた日本の近未来に与える意味を、詳細なデータと長期にわたる観察をもとに分析し、彼らの活力をいかに社会に有効に使えるか提言しています。

ぜひご一読いただけるとさいわいです。
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by sanyo-kansatu | 2017-03-02 16:05 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 02月 04日

今年こそ、ウラジオストク観光の年になるか

昨年9月末、極東ロシアのに住む日本の友人から、2017年にはウラジオストクへの観光ビザが不要になるという連絡がありました。

「日本に最も近いヨーロッパ」こと、ウラジオストクが来年からノービザになりそうです
http://inbound.exblog.jp/26231701/

その後、12月には日露首脳会談がありましたが、その結果は玉虫色で、いったい両国関係はどうなるのか定かではありません。でも、少なくとも日本政府は極東ロシアへの経済協力を進めたいことは確かのようです。そのためには人的交流が不可欠とのことから、旅行業界へ日本人の極東ロシア観光を積極的に進めるよう要請しています。

旅行業界に「極東ツアー」要請 政府、ロシアとの人的交流を促進 (SankeiBiz2016.10.13)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/161013/mca1610130500018-n1.htm

政府が国内の旅行業界に対し、ロシア極東地域への観光ツアーを強化するよう要請したことが分かった。関係者が12日明らかにした。観光客の往来を通じ、安倍晋三首相が提案した対露経済協力プランの8項目に盛り込まれた人的交流を促進する。旅行各社は11月に担当者を現地に派遣し、ツアーの企画に向けて視察する方向だ。

安倍首相は極東のウラジオストクを「ユーラシアと太平洋とを結ぶゲートウエー(玄関)」と位置付けている。政府観光局はモスクワ事務所の開設を目指すが、現状ではロシアへの観光客は限られている。旅行業界は現地の観光資源や需要などを慎重に見極める。

関係者によると、世耕弘成ロシア経済分野協力担当相が9月、ウラジオストクやハバロフスクなど極東地域へのツアー旅行を増やすよう観光庁を通じて日本旅行業協会に求めた。大手旅行会社の幹部は「人の往来が増えれば、モノの動きも活発になる」と話す。

観光庁によると、2014年にロシアを訪れた日本人旅行者は約10万人。約357万人の米国や約271万人の中国と大きな差がある。観光客は首都モスクワやサンクトペテルブルクなど西部に集まり、主な観光シーズンも夏に限られる。旅行各社は視察で現地の観光資源や施設を確認し、日本からの旅行需要をどの程度掘り起こせるか検討する。

対露経済協力の人的交流分野では、政府はすでに閣僚級による交流促進会議の新設やロシアからの訪日客の査証(ビザ)発給要件の緩和などを盛り込んだ具体案を策定している。

【用語解説】ロシア極東地域の観光
帝政ロシア時代の建造物が残るウラジオストクやハバロフスクが主な観光地。ウラジオストクはロシア太平洋艦隊の基地があり、極東地域の経済や文化の中心都市。モスクワまでの約9300キロをシベリア鉄道で結んでいる。ウラジオストクへは日本航空などの直行便があるほか、鳥取県境港市から韓国を経由して向かうフェリーもある。


何はともあれ、こうした情勢の変化はウラジオストク観光にとって明るい展望です。

現地関係者によると、ロシア沿海地方(ウラジオストクを含む地域)を訪れる日本人の数は、ここ数年5000人前後のようです。一方、韓国は2014年にノービザとなって以降、すでに3~4倍に増えているとのこと。

2016年11月現在、ウラジオストク空港に国際線を運航している都市は以下のとおり。日本からは成田のみで、ロシアのS7航空が運航。新潟からは昨年8月まで便がありましたが、9月以降は運休しています。韓国の仁川線が圧倒的に多いことがわかります。

仁川 17往復
釜山 3往復
北京 3往復
上海 2往復
ハルビン 2往復
成田 3往復
香港 4往復
プーケット(タイ) 1往復
バンコク 1往復
平壌 2往復

※S7航空
http://flyteam.jp/airline/s7-airlines

こうしたことからも、日本も韓国と同様にノービザが実現すれば、旅行市場の拡大が見込まれると考えられます。2015年には4万人以上の韓国人がウラジオストクを訪れたそう。以下の韓国のテレビ番組をみると、彼らの現地の旅行の様子がわかります。若い女性客が圧倒的に多く、「世界でいちばん近いヨーロッパの街」を気軽に楽しんでいるという印象です。

First Time in Vladivostok [Battle Trip / 2016.07.17]
https://www.youtube.com/watch?v=49IyNno9uVE
https://www.youtube.com/watch?v=VtavnZRw5B4

現在のウラジオストクに関する日本語の情報は、ネット上でかなり収集できるようになっています。

そのうち主なものを紹介します。

まず、選りすぐりの海外旅行プランを紹介する『トラベルプラネット』のウラジオストク・コミュニティ。昨年、数回行われた現地取材のレポートで構成されています。

TRAVEL PLANET ウラジオストク・コミュニティ
http://travelplanet.jp/projects/vladivostok

最強というべきなのが、現地の旅行会社「アルファイオメガ ウラジオストク店(Альфа и Омега)」に所属する宮本智さんが制作した以下の旅行サイトです。ウラジオストクのことをこれほど詳しく紹介している情報源は他にはありません。
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ウラジオ.com
http://urajio.com/

同社では、極東ロシアの手配に実績のある旅行会社のJATM(ジャパンエアトラベルマーケティング)と共同で、昨年から今年の春にかけて、ウラジオストクのスタンプラリーを実施しています。

JATM(ジャパンエアトラベルマーケティング)
http://www.jatm.co.jp/

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YOU TUBEで偶然見つけたのは、ロシア人イラストレーターのユーリャさんによるウラジオストク動画レポートです。日本語を話す彼女が町を案内しています。

ロシア人が故郷ウラジオストク観光をおすすめしたい!
https://www.youtube.com/watch?v=GcqJK_H7YvY
ロシア・ウラジオストク空港が新しくなった!
https://www.youtube.com/watch?v=c5LI-SyqoWc
ロシア人2人でウラジオストク市街観光
https://www.youtube.com/watch?v=Jb3na9BoxG4
ロシア・ウラジオストクの歴史ある大学と不思議な電車
https://www.youtube.com/watch?v=mGqk7lR8Dj0
【ウラジオストク】ロシア人ユーリャおすすめの名所
https://www.youtube.com/watch?v=7ml8N0IkY-E
北朝鮮レストランに初めて行ってきた!【ロシア・ウラジオストク】
https://www.youtube.com/watch?v=wBpYzEMYnIo
ウラジオストク・ロシア人の生活環境
https://www.youtube.com/watch?v=kuOogZEWNxU

ユーリャさんはこういう人です。

ロシア人ユーリャの自己紹介『東京・そして私の仕事』
https://www.youtube.com/watch?v=PZKT9UA2z2c

Yurya Blinchik (ユーリャ ブリンチク)公式サイト
http://www.blinchik.jp/

ちなみに、本ブログでも、2012年夏に訪ねたときの話をベースにウラジオストクを紹介しています。

ノービザ解禁間近!極東ロシア
http://inbound.exblog.jp/i33/

ウラジオストク、なかなか面白そうな町だと思いませんか。なにしろ成田からフライト2時間もかからないくらいですから、ぜひ今年の旅行計画に加えていただけるとうれしいです。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-04 13:46 | ノービザ解禁間近!極東ロシア | Comments(0)
2017年 02月 04日

日本人は出不精、アジアの人たちは出たがり!? その理由は日本の高齢化にあると考えざるを得ない

今朝、ネットで以下の記事を読みました。

21世紀は世界中で高齢化が進行 日本以上の速さで高齢化が進むのはどの国? (THE PAGE2017.02.03)
https://thepage.jp/detail/20170203-00000005-wordleaf

「総務省が2016年10月発表した平成27年国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、初の減少に転じた日本の総人口。人口減と合わせて問題になっているのが、世界で最も進んでいる社会の高齢化です。では、世界の人口の推移、高齢化の進行はどのようになっているのでしょうか」

記事によると、内閣府の「平成28年版高齢社会白書」は、世界の総人口は今後も増え続け、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)も上昇するとみているそうです。

そして、日本は2005年以降、高齢化率は世界一(26.7%(2015年))となっています。しかも、高齢化進行の速さも際立っています。

他国の情勢について、記事では以下のように述べています。

「現在先進国の中で、高齢化が進んでいるのがイタリア22.4%(2015年)、ドイツ21.2%(同)です。しかし、2060年まで高齢化率が上昇し続けるとみられる日本に対し、イタリアは2050年(35.1%)がピーク値になると推測。ドイツは、2035年ごろから上昇が緩やかになり、2060年は33.1%と見込んでいます。

一方、アジア諸国は、今後、急速に高齢化が進むとみられています。特に韓国は、日本以上のスピードで高齢化が進行し、現在の13.1%(2015年)から2060年には、日本を除く他の先進諸国よりも高い37.1%にまで達すると推計。同様に2060年の高齢化率は、シンガポールが36.3%、中国32.9%となって、軒並み現在より20数ポイント上昇すると考えられています」

※同記事の元ネタはこれです。

平成28年版高齢社会白書(概要版)> 第1節 高齢化の状況
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_1.html

詳細なデータは以下のとおり。

①高齢化率は26.7%
•我が国の総人口は平成27(2015)年10月1日現在、1億2,711万人。
•65歳以上の高齢者人口は3,392万人。
•65歳以上を男女別にみると、男性は1,466万人、女性は1,926万人で、性比(女性人口100人に対する男性人口)は76.1。
•総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は26.7%。
平成72(2060)年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上

②平成72(2060)年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上
•総人口が減少するなかで、高齢化率は上昇。
•高齢者人口は、いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)が65歳以上となる平成27(2015)年には3,392万人となり、その後も増加。54(2042)年に3,878万人でピークを迎え、その後は減少に転じるが高齢化率は上昇すると推計される。
•平成72(2060)年には高齢化率は39.9%に達し、2.5人に1人が65歳以上。

③我が国は世界で最も高い高齢化率である
•先進諸国の高齢化率と比較すると、我が国は、1980年代までは下位、90年代にはほぼ中位であったが、平成17(2005)年には最も高い水準となった。
•アジア諸国についてみると、今後、急速に高齢化が進み、特に韓国においては、我が国を上回るスピードで高齢化が進行し、平成17(2005)年の9.3%から72(2060)年には37.1%まで達すると見込まれている。
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さて、これらのデータを訪日旅行市場の観点から読み直してみたいと思います。ここ数年、訪日旅行市場が拡大した背景にアジア客の増加があります。2016年に日本を訪れた外国人のうち、アジアからの訪問客は85%を占めます。いまや世界で最も高齢化率の高い国となってしまった日本と比べて、これらアジアの国々のそれは日本より相当低いことが、こうなる理由のひとつとして考えざるを得ません。その鍵は、出国意欲の違いではないでしょうか。

ここにもうひとつのデータがあります。

世界150数ヵ国が加盟する国連世界観光機関(UNWTO)によると、2015年に国境を越えて移動した「国際観光客到着数」は世界全体で11億8600万人だといいます。伸び率は4・6%で、年間で5200万人増。こうした数字だけ挙げられてもピンときませんが、いわゆる「グローバル観光人口」が右肩上がりで増加していることは明らかです。その結果、日本でも多くの外国人観光客の姿を見かけるようになっているわけです。実際、14年から15年かけての訪日外国人数は1340万人から1970万人に増えており、アジア全体の5200万人の増加分のうち、日本は630万人を占めているのです。

(図表18)世界のインバウンド観光の推移(UNWTO)
http://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2016/09/Tourism-Highlight-s-20116.pdf

アジアの観光人口は世界全体の24%を占める約3億人。先進国の多さや移動の自由ゆえに世界の半分を占める欧州にはかないませんが、伸び率は最も高い6・6%です。

こうしたアジアの勢いを担っているのは、残念ながら、この十数年間、海外旅行市場が伸びていない日本ではなく、東アジアの中国や韓国、台湾、香港、そしてアセアンの国々です。国土と人口が桁違いに大きい中国はすでに2012年に世界一の海外旅行市場になっていますが、韓国も15年の海外旅行者数は1930万人と日本より多いし、台湾は2300万人の人口なのに1320万人で、出国率でいうと60%近い。その点、日本は人口1億2700万人で1620万人(15年)だから、出国率は13%程度にすぎません。

先ほどの「平成28年版高齢社会白書」によると、アジアの国々の高齢化率は以下のとおりです。

日本26.7
中国9.6
インド5.6
インドネシア5.2
フィリピン4.6
韓国13.1
シンガポール11.7
タイ10.5

今後、アジアの国々でも高齢化率が上昇することが予測されていますが、現状においては日本だけが突出して高いといえます。このことと出国率の低さには相関関係があってもおかしくないだろうと考えます。日本人は出不精になってしまいましたが、アジアの人たちは出たがりになっているというのは、そういうことです。

しかも、こんな記事があります。

外出する人の割合過去最低…特に20代低下(日本テレビ2016/12/26)
http://www.news24.jp/articles/2016/12/26/07350031.html

国土交通省が全国の都市で人の動きを調査した結果、家から外出する人の割合が過去最低を記録したことが分かった。

昨年度、調査日に外出した人の割合は平日で80.9%、休日で59.9%と1987年の調査開始以来、過去最低となった。特に20代の休日1日の移動回数は1.43回と70代の1.6回を下回り、若者が以前よりも外出しなくなっていることが明らかになった。

また、買い物や食事など私用目的で外出する回数も大きく減少している。中でも就業していない人は就業者よりも外出が少なく、外出率の減少の割合も大きいという。


高齢化率が世界でトップの日本で、若い世代の外出率が減少しているとなれば、出国率が低くなるのも無理はないでしょう。

もちろん、これには経済的要因など、それ以外の理由もいくつか考えられますが、いまさらそれ自体をどうこう論じても意味はあまりないと思います。日本の海外旅行者数は、1990年代までは堅調に伸びていましたが、それが止まるのが2000年代に入ってからです。高齢化率の影響もそうですが、一般に出国意欲は経済成長にともなって高まる傾向にあると考えられるからです。

であれば、日本の周辺の国の人たちがこれほど出たがりになっているという現実をどう受けとめるか。UNWTOが予測するように、今後も長期的にアジアのグローバル観光人口が増え続けるかはともかく、いま起きていることをしっかり見て、自分が何をすべきか考えればいいのだと思います。

こうした情勢もあってか、国内の旅行業者団体が今月中旬に「アウトバウンド(海外旅行者)促進協議会」を設立するそうです。

日本人の海外旅行低迷を打開へ 中国人観光客増え「日本人の地位低下」(SankeiBiz2017.1.30 )
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170130/bsd1701300500006-n1.htm

記事によると、日本人出国者が伸び悩む一方、中国をはじめとしたアジアの国々の出国者が増加していることから、「海外旅行市場における日本人の地位が低下している」(日本旅行業協会関係者)のだそうです。

でも、この種の話はもう10年以上前から業界では言われていたことです。「地位」がどうとかいう話ではなく、今後多くの外国人観光客が日本を訪れるであろうことは確かのようなのですから、我々日本人もせめてもう少し海外の事情を知っておくべきだという観点から、若い世代を中心にもっと出国意欲を高められるような情報発信をしていく必要があると考えます。本来、人の移動は双方向であるべきなのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-04 12:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 10日

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです

昨日、中国黒龍江省から訪れた友人の旅行関係者に会ったのですが、突然こんなことを言い出しました。

「韓国はこれから大変ですね」
「朴大統領の支持率が急落し、デモが起きていること?」
「それもそうですが、11月上旬に政府から訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達があったからです」。
「ハルビンからも多くの観光客が韓国に行っているんですか?」
「ええ、そうです。日本に行くより多いです」
「ハルビン・ソウル線も多いのですか」
「はい。でも、こうなると、減便になるかもしれません」

この話は、すでに韓国メディアで報じられていました。

中国政府「韓国に行く中国人観光客20%減らせ…ショッピングも1日1回だけ」(中央日報/中央日報日本語版2016年10月25日)
http://japanese.joins.com/article/987/221987.html

一部を抜粋します。

「中国政府が韓国を訪問する中国人観光客数を昨年より20%以上減らせという指針を各省の一線の旅行会社に出したことが確認された。

在中大使館および各地域総領事館・旅行業界によると、先週、上海・江蘇・浙江・安徽・陝西など現地政府が管轄地域内の旅行会社の幹部を招集したり電話をかけたりしてこうした内容を口頭で伝えた。通知内容の中には▼韓国に送る旅行客を減少させる方法と対策を今月末までに報告▼格安団体観光の販促中止▼韓国現地ショッピングは一日1回に制限▼これを犯した場合は30万中国元(約450万円)の罰金--などの内容がある」。

同じ通達が少し遅れて黒龍江省にも発せられたということでしょう。

このようなお上からの民間企業への通達は、中国ではよく行われるものです。今回は、国家旅游局の省の部局が現地旅行関係者を集め、口頭で伝えたようです。中国では自国民の海外旅行者の名簿は旅游局に提出が義務付けられています。ですから、たとえば今年2000名の訪韓客を扱った旅行会社は来年は上限1600名以上は許可を出さないということです。まったく市場経済とはほど遠い世界ですね。

「なぜいま頃になって急に?」と彼に聞くと、「THAADの影響でしょう」と迷わず答えます。そりゃそうでしょう。中国メディアは連日のように韓国のTHAAD配備決定を批判し続けていたからです。中国の一般国民からすれば、間違いなく報復措置だというのが認識のようです。

それでも、上記記事には「中国当局がなぜこうした決定をしたのかはまだ疑問だ。韓国関連機関・業界は高高度ミサイル防衛(THAAD)体系の韓国配備決定に対する報復措置である可能性と格安観光の弊害を減らすための対策である可能性を分析中だ。ソ・ヨンチュン韓国観光公社北京支社長は「中国当局が今回の決定を出した理由についてはっきりと説明していない。いかなる理由であれ中国人観光客の減少による打撃が懸念される」と話した」とあります。韓国側は、それを報復措置だとは受け取りたくないのでしょうか。現実から目を背けたいのでしょうね。

もっとも、「通知内容には格安旅行に対する規制が含まれている。格安商品はビラやインターネット・SNSを通じた一切の広告活動ができないようにし、これを犯した場合は30万元の罰金を科して行政監視も強化すると警告した。一部の地域は価格基準を2000元(約3万1200円)と明示したりもした」とあるように、土産の売上からコミッションを得て成立させているようなツアーの弊害を根絶することが狙いという説明もあるようです。

しかし、それは受け入れ側の韓国の問題だけでなく、送り出し側の中国の問題でもあるわけで、結果的には訪韓中国人観光客を減らすことにつながることは変わりありません。

これをうけ、韓国メディアは「韓国のホテルと免税店の打撃は避けられない」と言っています。

中国当局、「遊客」の韓国行きを制限...泣き面に蜂の旅行・流通業(MK NEWS2016-10-27)
http://japan.mk.co.kr/view.php?category=30600004&year=2016&idx=5246

表向き、消費者保護を謳いながら、その実、観光を政治の取引に使うやり口は、台湾や香港ですでに見られたものでした。

中国政府は相手が気に入らなければ観光客を減らす― 蔡英文当選後の台湾インバウンド事情
http://inbound.exblog.jp/25941821/

いまのところ、日本への中国人観光客の制限は出ていないようです。黒龍江省の彼からすれば、韓国方面が減る以上、タイや日本への送客は増えるだろうといいます。

もっとも、今回の措置、中国側の表向きのロジックは「格安旅行の弊害を減らすための対策」ということですから、いずれ日本国内の「ブラック免税店」問題などを持ち出す日がくるかもしれません。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/

今回のような韓国に対する報復につながる通達は、政権上層部から直接出ているというより、中国の場合、各行政機関が政権の意に沿うように自発的に打ち出しているのではないか。政権のおぼえをよくすることは出世につながる。少々訪韓客が減っても、天秤にかければ利は残るという自分都合の発想から出てきたに違いないでしょう。これまでの経緯をみていると、そう思ってしまいます。

でも、こうした中国政府のやり口で影響を受けるのは周辺諸国だけではありません。実際には自国民への不利益をもたらすはずです。なぜなら、中国政府は相手が弱いとみると、容赦なく弱みを突いてくるけれど、そんなことばかりしていては、中国人観光客の受入国は彼らを尊重しようとする意欲を失いかねないからです。「中国人観光客縮小」カード(中央日報)の安易な持ち出しは、周辺諸国から警戒されるだけで、尊敬されることはありません。そんなことに、いつになったら気づくのでしょう。

【追記】
中国政府も、いよいよ日本にも物申してきたようです。北朝鮮に対する防衛のため、THAADの配備を日本が検討し始めたとたん、黙ってはいられないようです。

「慎重な対応を」=日本のTHAAD導入検討で-中国外務省(時事通信2016.11.28)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016112800714
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by sanyo-kansatu | 2016-11-10 16:04 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 10月 22日

ランオペ登録制は一歩前進。ガイドも登録制にできるだろうか

今朝の朝日新聞の一面に以下の記事が掲載されました。

「ランオペ」業者、登録制に 旅行会社に代わってバスなど手配 観光庁方針」(朝日新聞2016年10月22日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12619915.html

観光庁は、旅行業者に代わってツアーバスやガイドの手配などをしている仲介業者の規制に乗り出す方針を決めた。仲介業者は「ランドオペレーター(ランオペ)」と呼ばれ、全国に少なくとも864社あるが、安すぎる運賃でバスを手配したり、不適切なガイドを派遣したりするトラブルが相次いでいた。旅行業法の規制の対象外ログイン前の続きだったが、登録制を導入して指導・監督する。来年の法改正を目指す。

■訪日客、トラブルも

ランオペは、旅行業法で登録されている旅行会社の依頼を受けて、バスやホテル、ガイドを手配する業者。自前の調達能力に乏しい中小の旅行業者にとって、欠かせない存在だ。旅行客と直接契約を交わさないことから、旅行業法の規制の枠外とされてきた。国や自治体への登録も必要なく、観光庁も実態を把握できていなかった。
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今年1月、長野県軽井沢町で15人が死亡したスキーバス事故も、ランオペがツアー会社とバス会社を仲介していた。バス会社は道路運送法に基づき、安全な運行に最低限必要な下限運賃を国に申請している。事故を起こしたバスは、それより安い料金で手配されていたが、規制対象外のため、観光庁はランオペには行政処分を科すことができなかった。

観光庁はランオペの実態を探ろうと6月以降、国内の旅行業者やバス、宿泊業者など約1万社に、ランオペとの取引状況を尋ねた。その結果、少なくとも全国で864社のランオペが営業していることがわかった。そのうち、業務範囲について調査に応じたランオペ223社は、訪日外国人旅行の専業が68社(30・5%)、日本人国内旅行専業が57社(25・6%)、両方が98社(43・9%)だった。

ランオペが絡むトラブルについては、旅行業者812社のうち46業者が「キックバックを前提とした特定の土産店などへの連れ回しへのクレームがあった」と回答。宿泊施設やバスなどの関連事業者186社への問いでは、43社が「直前でのキャンセルがあった」と答え、32社が「バス事業者への最低価格割れ料金での手配があった」、18社が「料金未払いがあった」と回答した。

訪日外国人からは、ランオペが手配したとみられるガイドに対し「酵素や納豆を不当に高い価格で薦められた」「熱心に薬を薦められたが偽物だった」などの苦情が相次いでいた。

2020年に東京五輪・パラリンピックを控え、近年、日本を訪れる外国人観光客が増えている。悪質な業者を野放しにしてツアーの質が落ちれば、好調な誘客に水を差すとの懸念も指摘されていた。

観光庁はランオペを登録制にすることで、不正が起きないように監督、指導していく方針。具体的な監督や指導の手法は固まっていないが、旅行中の安全確保などランオペの責任を明文化し、違反した場合にペナルティーを科すことなどを検討している。年内に取りまとめて、ツアーの質や、バス運行の安全性向上につなげる意向だ。(伊藤嘉孝)


9月下旬には、読売新聞が「ニッポン観光の影」という全6回の連載をしていましたが、メディアがいわゆる「外国客の消費力による経済効果」ばかりを報じていた去年までと違い、訪日外国人旅行者の増加にともなう負の側面を伝えるようになったことを歓迎したいと思います。

この記事では、「旅行業者に代わってツアーバスやガイドの手配などをしている仲介業者」である「ランドオペレーター(ランオペ)」が全国に少なくとも864社あることを観光庁が調査し、今後は「登録制を導入して指導・監督」すると報じています。

ランドオペレーターは「旅行業法で登録されている旅行会社の依頼を受けて、バスやホテル、ガイドを手配する業者」であり、「旅行客と直接契約を交わさないことから、旅行業法の規制の枠外とされてきた」とあります。

これはどういうことかというと、訪日ツアーの場合、ここでいう「旅行会社」は海外の旅行会社のことで、彼らが集客した海外のお客さんの日本国内の旅行手配業務をランドオペレーターが請け負うことになるわけです。そのため、ランドオペレーターはお客さんとは直接契約を交わしていないことから、消費者保護をうたう旅行業法には抵触しない存在だったということです。これまで観光庁は、海外のお客さんの消費者保護については、彼らが契約を交わした海外の旅行会社の責任で、ランドオペレーターの業務を管理監督する立場にはないという(少々言いすぎかもしれませんけれど)のが言い分でした。

しかし、今年1月に軽井沢で起きたスキーツアーバス事故(これは海外の旅行会社は無関係)などが再発したことや本ブログでも扱った「日本のブラック免税店」とランドオペレーターの関係などが明るみに出たことから、「観光庁はランオペを登録制にすることで、不正が起きないように監督、指導していく方針」となったようです。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/
「中国客を陥れる日本のブラック免税店」の隠れた舞台裏(日経BPネット2016.07.13)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/071200017/

記事では全国にランドオペレーターが「864社」あったと書かれていますが、実際のところ、これを調べるのは大変なことだったと想像します。でも、海外の旅行客に直接サービスを提供する存在であるランドオペレーターが誰だかよくわからなかったというのは、考えてみれば、困ったことでした。

これで一歩前進。ただし、この先もっと大変なことが待ち構えています。ランドオペレーターから仕事を請け負うツアーのガイドとは誰なのか。その実態を調べていくことが次の段階でしょう。つまり、ランオペの次は、ガイドの登録制に向けた取り組みです。

ランオペ経由で調べていくことになるのでしょうが、これは簡単なこととは思えません。しかし、これをやらないと、観光ビザで来日し、滞在有効日数内にガイド業務を繰り返し、そのまま所得申告もしないで帰国する外国籍のガイド、いわゆる「スルーガイド」問題の解決には至りません。

もっとも、それをどこまでやるかのさじ加減も問われるところがありそうです。現在のアジアの多くの国々から訪れる団体ツアーのビジネスモデルの根幹に関わることだからです。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-22 09:28 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 26日

HISが都内各地で訪日外客向けエンタメツアーを収集・開発・販売しています

原宿竹下通りは、いまや外国人のための撮影スポットのひとつになっているようです。
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原宿竹下通りは外国人の撮影スポットとなっていた
http://inbound.exblog.jp/25703031/

その入り口に向かって左側の道沿いに、HISの外国人向けインフォメーションセンターがあります。昨年8月31日にオープンしたそうです。
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あまり目立たない感じのスポットなのですが、所内には外国客を対応するカウンターや都内の観光スポットのチラシなどが置かれています。
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両替機もあります。
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実は、HISの外国人向け観光案内所は、同社の営業所内のものも含めると、すでに都内11ヵ所にあるそうです。
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独立した案内所は、渋谷や新宿、新宿3丁目、銀座、有楽町、上野、秋葉原にあるようです(六本木、品川、池袋は営業所内にある)。

エイチ・アイ・エス関東インバウンド推進グループの池村あずささんによると、原宿の観光案内所では、18言語に対応できるスタッフを揃えているそうです(常に全員常駐ではない)。いま同所が最も力を入れているのは、外国客向けの都内のアクティビティ(観光素材)の収集・開発・販売だそうです。

ここを訪れた外国人にHISが収集した都内のオプショナルツアーを紹介し、予約を入れてもらうためです。もちろん、ネットでも予約できます。

詳しい中身は、hisgoJAPANの「Tokyo Activity」をクリックすると、現在71種類のツアーが用意されていることがわかります。
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hisgoJAPAN
http://www.hisgo.com/n1/Contents/

そのうち、人気のあるツアーはチラシになっていました。左上にあるのが、本ブログでこれまで紹介してきた夢乃屋のサムライ体験ツアーです。

TBSテレビの「あさチャン」でも紹介されたサムライ体験ツアー(by夢乃屋)
http://inbound.exblog.jp/25840817/
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ほかにも「ラーメンづくり体験」や「お茶」「寿司にぎり」体験、相撲部屋見学、そしてうさぎやふくろうのカフェなどもあります。人気のロボットレストランやサムライミュージアムの予約もしてくれます。

池村さんによると、今後もどんどんこの種の体験ツアーを増やしていきたいそうです。夢乃屋もHISのおかげで認知度を獲得したといいます。

これまで都内には、日本政府観光局や都が運営する外国人観光案内所は、空港や都庁、東京駅くらいにしかありませんでした。しかし、訪日客が増えたことで商機と見たHISは、都内に独立した案内所を設置し、国内の旅行手配はもちろんのこと、体験モノを中心にしたエンタメ施設&ツアーの紹介および予約手配を行うようになったのです。

興味深いことに、これまで本ブログで紹介してきた都内のインバウンド体験スポットの数々(サムライミュージアム、夢乃屋、どすこい相撲茶屋、ふくろうカフェなど)は、すべて2015年にオープンしています。昨年は、訪日外客が爆発的に増えた年です。これらの動きを進めているのは、みな若い人たちで、彼らが一斉に訪日外国客向けエンタメ事業を始めたことは、いかにも時代を感じます。

トリップアドバイザーで人気のサムライミュージアムとふくろうカフェを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25702798/

これからどんな新種のエンタメ施設が生まれるか、楽しみです。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-26 16:36 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 02月 29日

「重慶・東京5400円から」「日本旅行5泊6日6万3000円」~重慶、成都の街角にて

2月中旬、重慶と四川省の成都を訪ねたのですが、街でさまざまな日本旅行の情報を見かけました。

いま中国の内陸都市から日本に向かう航空路線が急増しています。重慶や成都でも、日本旅行が少しずつブームになり始めています。

東アジア航空網に新時代、訪日客増大の本当の理由は地方路線の大拡充
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/022600007/

街角で見かけた日本旅行の募集告知や案内版を紹介しましょう。

まず訪ねてみたのが、スプリングジャパンの就航で成田との直行便が実現した春秋国際旅行社です。
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春秋国際旅行社重慶支店
渝中区民生路268号
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旅行店舗の表に春秋航空の日本線が書かれています。

重慶=東京(火木土日) 5時間
重慶=大阪(月水度) 4時間
春秋航空 www.ch.com

そして、スプリングジャパンの就航で実現した「重慶・東京299元(5400円)より」が目を引きます。
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店舗に入ると、春節休暇も終わったばかりだというのに、けっこうにぎわっていました。やはり、日本旅行が一番人気のようです。ためしに客を装って、日本線やツアーの料金を尋ねてみたところ、2月18日発の重慶・成田便の片道は980元(1万8000円)、26日初の東京・大阪6泊7日のツアーが3500元(6万3000円)でした。
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これでわかるように、スプリングジャパンの片道299元(5400円)というのは最安値であって、通常は片道2万円相当のようです。春秋航空の茨城・上海線でも同様で、同社はよくキャンペーン料金を出すものの、時期と席数は限定です。だとしても、個人観光ビザを取得して、うまく日程を調整すれば、重慶の人たちも片道5000円相当で日本に来られるというわけです。

春秋国際旅行社では、今年も福岡など九州を訪れるクルーズ商品も販売しています。重慶市民の場合は、まず上海まで飛んで、そこからクルーズ船に乗船します。
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重慶に来て気がついたことがあります。中国の一定の所得層の人たちは、東シナ海のクルーズツアーの前段階として、重慶発の三峡クルーズを経験済みだろうということです。三峡クルーズもたいてい3泊4日から4泊5日ですから、東シナ海クルーズと日程的にも同じです。彼らはカジュアルなクルーズに慣れているといっていいでしょう。
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それにしても、これまで何度も指摘してきましたが、「日本旅行5泊6日3500元(6万3000円)」というのは呆れてしまいます。

実は、成都でも同じでした。街場の小さな旅行会社の店舗にこんな貼り紙があったからです。
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すべては免税店での“爆買い”を前提として成立させている、きわどい商品です。

もっとも、新しい動きも見つけました。重慶で最もにぎやかな繁華街の解放碑地区で見かけた電光掲示板です。

これはシンガポール旅行の案内です。
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次が、日本旅行。しかも、「日本自由行」。つまり、個人観光ビザ取得者だけが可能な自由旅行の意味です。
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興味深いことに、ずいぶん細かく料金が表示されています。個人旅行の場合、個々の手配を自分でしなければならないからです。

机票(エアチケット)2700元より
4星酒店(4つ星ホテル)400元より
JR交通卡(JRパス?※これがどのパスを指すのか不明)65元
WIFI 18元/天
本州机场接送机(空港からの送迎・片道)600元/趟

新亜国際旅行社
http://www.cqxygl.com
※同社のHPをみると、重慶発の日本ツアーがいくらくらいで売り出されているかわかります。またエアチケットの値段(2700元より)からすると、春秋航空ではなく中国南方航空利用のようです。春秋航空を利用できれば、もっと安くうたえるわけですが、春秋国際旅行社の独壇場なのでしょう。

中国の内陸都市発の訪日旅行市場がいま、どのようになっているのか。これら街場の広告はそれを理解するうえで手がかりになりそうです。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-29 15:50 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 11月 27日

「爆買い」はいつまで続くのか? 500万人市場になった中国インバウンド大盛況の舞台裏

10月下旬、成田発鄭州行き中国南方航空の機内は、日本旅行を終えて帰国の途に就く中国人団体客であふれていた。

同航空が中国内陸部に位置する河南省の省都・鄭州と成田を結ぶ定期便を就航させたのは今年8月下旬のことだ。同機に搭乗していた山西省出身の公務員、李輝さん(31)は5泊6日の日本ツアーをこう振り返る。

「初めての日本の印象は、街が清潔で社会の秩序が安定していること。なかでも東京で訪ねた書店の静かで落ち着いた雰囲気が気に入った」。

同行した夫人や親戚の子連れの夫婦らは買い物三昧の日々だったと李さんは苦笑する。次回の訪日ではひとりで自由に街を歩いてみたいと話す。鄭州空港に着くと、自家用車で3時間かけて自宅のある太原に向かうという。
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河南省中国国際旅行社の東京・大阪ゴールデンルート5泊6日ツアーのチラシ

鄭州市出身の元運転手、丁守現さん(70)夫婦も初めての日本旅行だった。「去年タイに行ったが、日本にも行ってみたかった。日本語がわからず、スケジュール表を見ても自分がどこにいるのかわからない。グループについていくだけだったが、楽しかった」と笑う。

今回のツアーは旅行会社に勤める娘が手配し、代金も出してくれた。東京・大阪ゴールデンルート5泊6日で3500元(7万円)という。

内陸都市が訪日客を送り出す

日本政府観光局(JNTO)の最新リリースによると、2015 年1~10 月の訪日外国人数(推計値)は1631 万人。なかでも中国本土客は前年比2倍増の428万3700人。年間で500万人規模の市場になることが見込まれている。

中国客激増の背景に成田・鄭州便のような内陸都市と日本を結ぶ定期便の大幅な拡充がある。中国からの定期路線が国内最多となる関西国際空港では、11月現在、約40都市からの定期便がある。日本ではそれほど知名度のない江蘇省の塩城や貴州省の貴陽などの地方都市からの定期便が増えていることも今年の大きな変化だ。
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関西国際空港に就航する東アジア路線マップ(関西国際空港のHPより)
http://www.kansai-airport.or.jp/flight/flight_nw/swf/index.html

河南省中国国際旅行社の張東昇日本部部長は「河南省からの訪日旅行は今年始まったばかり。いまは団体旅行が大半だが、日本との直行便ができて今後拡大するだろう」という。

JETROによると、河南省の人口は9406万人で、2014年の省内GDPは3兆4939億元(約70兆円)。台湾やタイなどアセアン諸国をすでに上回っている。1人当たりのGDPも1万ドル前後と中進国の水準だ。
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鄭州の新都心「CBD区」では人工湖の周辺に高層建築が立ち並ぶ

省都の鄭州では新都心の建設もほぼ完成している。今日、中国の主な地方都市に見られる光景は、ちょうど10年前の上海のようだといっていいかもしれない。内陸都市も訪日客を送り出せるだけの経済発展を達成しているのだ。これは今年の中国インバウンドを語るうえでのひとつの大きなトピックである。

「ニッポンヤスイネ(日本便宜)」の時代

さらによく知られたトピックは中国客による「爆買い」だろう。11月上旬、今年の流行語大賞に「爆買い」がノミネートされたが、観光庁の試算によると、2015年7~9月の訪日中国客の旅行消費額は4660億円と全体の半分近く(46.6%)を占め、1人当たりの平均消費額も28万788円とトップ。データからも「爆買い」ぶりが裏付けられている。

中国客激増の背景には、言うまでもなく円安がある。だが、その結果、日中の物価が逆転したことが大きい。

今日の中国都市部に住む一般市民の物価感覚を知るには、たとえば、彼らが朝の通勤タイムに手にしているスターバックスのカフェラテが27元(540円)だといえばわかりやすいかもしれない。これは日本の2倍近い感覚だ。

以下は、上海の観光施設の入場料を東京の類似した施設と比べた例だ。すべて東京より上海が高いことがわかる。

上海動物園 800円(40元)―上野動物園 600円
上海水族館 3200円(160元)―すみだ水族館 2050円
東宝明珠塔 3200円(160元)―東京タワー 1600円
環球金融中心(通称「上海ヒルズ」)展望台 3600円(180元)―東京スカイツリー 3090円(2060円(展望デッキ当日入場券)+1030円(展望回廊))
※すべて大人一般料金(2015年11月現在)。

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環球金融中心(通称「上海ヒルズ」)から眺める上海の夜景

個別に比べると交通運賃など日本のほうが高い例もあるが、大きな階層格差が存在する中国社会で、日本に旅行できるだけの経済力を有する特定の層は、日本よりコスト高の消費生活を送っているのである。だから、彼らにしてみれば、日本は何でも安い国だと感じられる。この機に日本に行かない手はない。そう考えるのは無理もないのだ。中国語が少しわかれば、全国のショッピングモールを訪れた中国客が口々に「ニッポンヤスイネ(日本便宜)」と声を上げる姿を見かけるだろう。

クルーズ激増で東シナ海がレジャーの海に

6月下旬、博多港に上海発の米国クルーズ会社ロイヤルカリビアンが運航する世界で2番目の大きさを誇る豪華客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が初入港した。同客船は昨年11月にカリブ海でデビューしたばかりだが、世界最速で急拡大するクルーズ市場となった中国に今年から投入されたものだ。

福岡市によると、同船の乗客数は約4450名(中国 約4150名、台湾 約50名 アメリカ 約50名、その他 200名)。過去日本に寄港したクルーズ客船の中で最大規模(総トン数、乗客数)だ。この日、乗務員を含めて約5000人が博多に上陸した。

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カジノやプールもあるクァンタム・オブ・ザ・シーズの船内

中国発クルーズ客船の博多港初寄航は2007年。主な出航地は上海と天津で、今年は264回(11月1日現在 中国発以外も含む)の予定だ。上半期に韓国でMERSが発生した影響で増えたせいもあるが、昨年の115回に対して一気に倍増した。年間で約50万人の中国クルーズ客が上陸することになる。

博多港におけるクルーズ客船寄航回数の昨年までの推移(福岡市クルーズ課より)

2009 外航28 内航14 計42
2010 外航63 内航21 計84
2011 外航32 内航23 計55
2012 外航91 内航21 計112
2013 外航22 内航16 計38
2014 外航99 内航16 計115

いまや福岡市は中国発東シナ海クルーズラッシュの主要な舞台である。ではなぜ中国ではクルーズ旅行がこんなに人気なのか。その理由を中国旅行社総社(上海)日本部担当の武暁丹氏はこう説明する。

①4泊5日の標準的なクルーズ料金が空路のツアーより安い。
②船内の食事や遊興施設の利用は無料で、家族でのんびり過ごせる。
③買い物による持ち込みが無制限なこと。

これらの指摘は、血縁を大切にし、経済合理性に富み、買い物好き、ギャンブル好きという中国人の特性に驚くほどマッチしている。上海で訪日旅行のコンサルティングを行う上海翼欣旅游咨询有限公司の袁承杰総経理も「クルーズ客のメインは80后(1980年代生まれ)。彼らの多くは30代になり、結婚し、子供ができた。クルーズ旅行は航空旅行のような移動も少なく、船内で家族が一緒に過ごせるので、3世代旅行にぴったり。ハネムーナーにも人気」と世代動向から理由を分析する。

現地クルーズ関係者によると、来年も新規投入する大型客船が予定されていて、この勢いは続くという。いまや東シナ海は中国人にとってのレジャーの海になったといえるだろう。

ビザ緩和が日本旅行ブームに火をつけた

中国インバウンド大盛況の舞台裏を考えるうえで、日本のビザ緩和策も重要だ。今年中国客が激増した理由について、日本政府観光局(JNTO)上海事務所の山田泰史副所長は以下の3つの点を指摘する。

①円安の定着
②中国からの航空路線の拡充とクルーズ客船寄港の増加
③中国人に対する観光ビザ発給要件の緩和

このうち①と②についてはすでに触れたが、実は大きく市場を動かしたのが③「中国人に対する観光ビザ発給要件の緩和」なのだ。

今回の措置が運用されたのは今年の春節前の1月19日から。ポイントは「一定の経済力を有する過去3年以内に日本への短期滞在での渡航歴がある者とその家族」に対する個人観光数次ビザの発給要件の緩和である。要は、ここでいう「一定の経済力」の指す年収基準が下げられたのだが、これに本人を伴わない家族のみでの渡航も認めたことで、上海や北京などの沿海都市部に住む富裕層のみならず中間層まで含む日本への渡航が容易になった。

国土の広大な中国では、各地域の経済発展状況に準じ、8ヵ所ある日本総領事館の担当エリアごとにそれぞれ適用基準が異なっている。これまで日本政府は中国人に対する観光ビザの発給要件の緩和を小出しに進めてきたが、一定期間内にビザなしで何度でも入国できる今回の数次ビザの緩和が中国側に与えた心理的な影響は大きかったようだ。

今回の措置の発表は昨年11月8日に行われたが、その反響はすでに成熟市場となっていた沿海都市部だけでなく、訪日旅行市場が十分に形成されていなかった地方都市にも広がった。ビザ緩和で日本旅行へのハードルが下がるとの情報は中国国内に広まり、ブームに火がついた。昨年末の時点で中国の旅行関係者は「これで訪日旅行の次のステップが始まる」と期待を込めたという。2015年が日本旅行の飛躍の年になることは、中国側では早い時期から予測されていたのだ。それゆえ、精力的に航空路線を拡充し、クルーズ客船の大量投入を進めたのである。

訪日中国客には2つの異なる顔がある

訪日中国旅行市場が拡大し、多様化するなか、中国客には2つの異なる顔があることをあらためて確認する必要がある。特に近年登場してきた個人客の動向は注目だ。

9月下旬、上海発茨城行き春秋航空に搭乗していた米国系IT企業に勤める李淑雲さん(28)は、同僚の女性とふたりで国慶節休暇を使った初めての日本旅行を計画していた。ふたりはオンライン旅行社で航空便やホテルを手配し、今夏開業したばかりの二子多摩川エクセル東急ホテルに宿泊した。日本でのスケジュールを事前にほとんど決めておらず、『孤独星球 东京到京都』(世界的なガイドブックシリーズ『Lonely Planet』の中国語版 ゴールデンルート編)を機内で目を通しながら日本滞在中の予定を考えるという。

同機には、AKB48劇場に行きたいと話す20代半ばのいわゆる「オタク(宅男)」6人組の上海人男性グループもいた。上野のビジネスホテルに予約し、1週間東京に滞在するそうだ。

彼らは、スケジュールはすべてガイドにおまかせの団体客とはまったく異なり、目的を持って日本を自由に旅する個人客である。その行動半径やスタイル、旅の動機は、これまでの団体客には見られなかったものだ。中国では「自助游(個人旅行)」という。

中国の書店では、個人客のニーズに合わせた旅行書が流通している。今年2月に出版されたガイドブック『日本自助游』は、全国の交通機関の乗り方を中心に実用情報が載っており、若い個人客が初めて日本をひとり歩きするのに重宝する内容だ。

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中国の個人旅行者向けガイドブック『日本自助游』(人民郵電出版社 )
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同じく『搭地铁 游东京(地下鉄で歩く東京) 』(人民郵電出版社 )

もっとも、彼らの主な情報源はむしろネット上の口コミで、いわゆる旅行「攻略」サイトや微信(We Chat)などのSNSの利用が定着している。彼らがいま日本のどんなことに関心を持っているかについては、以下の「攻略」サイトをチェックしてみると面白いだろう。

穷游(貧乏旅行)
http://place.qyer.com/japan/
去哪儿(どこへ行く?)
http://travel.qunar.com/p-gj300540-riben

訪日客の動向に詳しい一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長は、中国に個人客が出現した背景についてこう語る。

「いま中国の旅行市場で注目すべきは、C-Tripに代表されるオンライン旅行社の勢いだ。同社の関係者によると、訪日市場の伸びは前年比で7倍増。上海市場では旅客のすでに半分、北京で30%をオンライン旅行社が占めるという。彼らの多くは個人客なので、個人向けの移動や宿泊、通信サービスなど新しい商機が生まれている」。

中国人の日本旅行が解禁されて15年目に当たる今年、2つの初めてがある。まず中国が国・地域別のランキングでトップになったこと(以下、韓国、台湾、香港、米国が続く)。訪日中国人の数が訪中日本人を逆転するのも、実は初めてだ。

この15年間で中国の海外旅行客は進化した。それをリードするのが上海などの沿海都市部から来る個人客である。一方、いま始まったばかりの内陸都市発の団体客もいる。彼らはいわば10年前の上海人である。中国インバウンドの実態は、こうした異なる2つの層が10年遅れのタイムラグをはらみながら同時に進化していく過程にある。当然受入側も、まったく異なる対応が求められるだろう。

静岡でツアーバス衝突事故発生

大盛況の中国インバウンドだが、この勢いに死角はないのだろうか。

新しく登場した中国の個人客は、日本人の旅行感覚にも近く、その動向に目が向かいがちだが、実際には旧来然とした内陸客の増加もあり、現場ではさまざまな問題が起きている。

今年のGW中、静岡県浜松市で中国客を乗せたツアーバス同士の衝突事故があった。千葉県のバス会社が運行する大型バスが信号待ちしていた別のバスに追突したのだ。28人の中国客が市内の病院に救急搬送されたという。事故の原因はバスの整備不良だった。

観光バス同士、追突 中国人客28人搬送 浜松(静岡新聞2015年4月28日)
http://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/45509.html

背景には、ここ数年の静岡空港への中国からの新規就航の激増がある。

富士山静岡空港のHPによると、11月現在の中国発静岡線は以下のとおり。地方空港としては国際線が多く、中国だけで12都市13路線。大半が内陸都市からの便である。

中国発静岡線(2015年11月現在)
 
 上海浦東(中国東方航空) 毎日
 杭州(北京首都航空) 月、木、土、日
 合肥(中国東方航空) 水、日
 南京(中国東方航空) 火、土
 南寧(中国南方航空) 月、金(11月は運休)
 寧波(中国東方航空) 火、水、金、日
 石家荘(北京首都航空) 水、土
 天津(天津航空) 火、金、土
 西安(天津航空)土
 温州(中国東方航空) 水
 武漢(中国東方航空) 毎日(11月は運休) 
 武漢(中国南方航空) 月、金
 塩城(北京首都航空) 木、日

中国の内陸都市から来る団体客の大半が東京・大阪ゴールデンルートのツアーに参加しているが、これまでゲートイン・アウトは成田と関空だった。そこに静岡空港が新たに加わったことがわかる。中国の地方都市から日本の地方都市へ直接定期便が飛び始めているのだ。

しかし、昨年本特集レポートで指摘したように、アジアからの団体客の急増で慢性的にツアーバス不足が問題になっている。その状況は改善されるどころか、今年のさらなる市場拡大で悪化していることが推測される。

(やまとごころ特集レポート1回)
バスの不足が国際問題に!~今春、訪日旅行の現場では何が起こっていたのか
http://www.yamatogokoro.jp/report/2014/report_01.html

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中国からの団体客を乗せたツアーバス。都内にて

実は、死傷者も出た2012年の関越高速バス事故もGW中だった。この時期、日本人の移動も多く、貸切バスの需給が逼迫し、運転手も休みが取れないという労働条件の中で、今回のような事故が起きたと考えられる。

追突事故を起こしたバス会社が、後日道路運送法違反で摘発されたことがそれを物語っている。千葉県に営業所を持つバス会社が「営業区域」外の静岡空港でツアー客を乗せたことが問題だったのだ。

中日新聞の取材によると、同社は中国の旅行会社からの依頼を受けて「営業区域」外での運送を常習的に行っていたようだ。逮捕された社長は「違法だとはわかっていても、断るに断れなかった。断ると仕事がなくなる」と話しているという。

「営業区域」問題は、成田や関空などの国際空港周辺に集中している中小貸切バス事業者にとってはいかんともしがたいところがある。そのためAISOなどのインバウンド団体はこれまで国土交通省運輸局に撤廃を求めてきた経緯がある。実際、桜シーズンなどに時限的に撤廃することもあった。しかし、それだけでは問題の根本的な解決に至らないだろう。

いま海外からの人の流れが多様化し、地方へと拡大している。今回のバス事故は、日本のシンボルである富士山のふもとに位置する静岡空港が激増する中国客を一気に呼び込んだことでやむなく起きてしまったといえるだろう。

バス不足と並んでホテルの客室不足も深刻だ。11月上旬、京都市右京区のマンションで中国人観光客向けの「民泊」を無許可で営業した旅行業者が書類送検されている。中国からの観光客約300人を宿泊させた疑いがあるという。

無許可で「民泊」容疑=中国人観光客300人-旅行業者ら2書類送検へ・京都府警(時事通信2015年11月5日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015110500008

今年議論を呼んだ外国客の「民泊」とそのマッチングサイトであるAirbnbの運用ルールづくりをめぐる問題も、背景には訪日旅行市場の急激な拡大がある。ホテルの客室不足は、とりわけ団体客の比率の高い中国市場にとって影響は大きい。今後も市場が拡大する見込みの中で、外国客の足と宿という最も基本的なインフラをいかに構築していくか。いまや外国客の誘致ではなく、むしろ受入態勢の整備が喫緊の課題となっているのだ。

数が増えても赤字という現地旅行会社の嘆き

課題は中国側にもある。現地の旅行関係者が口を揃えて挙げるのが、訪日ツアーのショッピングに過度に依存したビジネスモデルである。

これは中国インバウンドの舞台裏の核心的部分といっていい。なぜ鄭州市の老夫婦が参加した5泊6日の日本ツアー(航空運賃、交通費、宿泊費、食事すべて込み)の料金がわずか3500元(7万円)にすぎないのか。それは日本国内でのバスやホテル、ガイドなどにかかる費用が特定の免税店などのショッピング施設からの売上に応じたキックバックで補填されているからだ。

これはクルーズ旅行についても同じである。上海のある旅行会社社員は「今年日本行きのクルーズ市場は急拡大したが、集客を担当した我々旅行会社はほぼすべて赤字だった。運航数の増加でかえってツアー単価が安くなりすぎたせいだ」と嘆く。

上海発日本行きの標準的なクルーズ料金は、昨年4泊5日で約5000元(10万円)だったが、今年は半分以下の2000元代に下がっているという。それだけに、数の勢いとショッピングに依存したツアー構造は持続可能なのかと現地でも危惧されているのだ。

実際、博多港のHPをみると、今年7月1日現在の博多に寄港する年間のクルーズ客船数の予定が286回だったのに、11月1日現在では264回と減少している。当初の見込みどおりクルーズ客の集客ができなかったためだろう。

同じことは航空路線についてもいえると、前述の王一仁AISO会長はいう。「今年すごい勢いで中国からの日本路線が増えて、特に10月以降、羽田路線は1日約20便になると聞いている。はたしてそれだけ増やして席が埋まるのか。ちょっと疑問だ」。

さらに、今夏の中国の株価暴落以降、国内外のメディアから中国経済の減速で海外旅行市場の活況もそんなに長くは続かないのではないかと指摘する声も出てきた。もしそうだとしたら、ショッピングに依存するビジネスモデルにも影響が出るはずだ。訪日中国人ツアーは「爆買い」によるキックバックでコストを補填している以上、購入金額が減少すればこれまでのような安いツアーで募集することはできなくなるからだ。以下のような悪循環が考えられるのである。

「爆買い」減少 →ツアー代金の上昇 →ツアー客の減少(市場の縮小)

来年以降もこの勢いは続くのか

ただし、これまで見てきたように、中国の旅行市場は広大かつまだらで一様ではない。沿海都市部と内陸都市では経済市況も異なり、一概にこうだと決めつけられないのだ。

筆者の個人的な見解では、来年は今年の2倍増のような飛躍的な伸びを続けるのは厳しいものの、中国インバウンドの勢いは続くと考えている。「爆買い」もすぐになくなるとは思えない。いまや中国人の「爆買い」は、単に訪日客のお土産購入シーンに見られるだけのものではなく、中国国内での日本商品のネット販売の領域にまで広がっているからだ。

確かに、多くの論者がいうように、マクロ的にみれば中国経済は減速しているようだが、だからといって年間500万人程度の訪日客数は、総人口からみると0.4%にも満たない規模で、桁違いの人口を有する中国ではたいした数字ではない。何より富の偏りの大きい社会だけに、海外旅行ができる特定の層の比率は周辺国に比べて低くても、それを全土からかき集めるだけでも相当なボリュームになるのだ。

中国には公的統計に捕捉されない膨大なアンダーグラウンド経済(「未観測経済」という)の存在がある。そもそも多くの中国客にとって「爆買い」の原資は、GDPに換算される表向きの収入ではなく、「未観測経済」によるものと考えた方が自然だろう。このように中国の動向を占うには、我々の社会とはあらゆる尺度が違うことを知らねばならない。

さらにいえば、中国経済のバブルが崩壊しても、すぐに海外旅行者数が減るとは思えないのは、日本でもそうだったからだ。バブル崩壊直後の1990年代初頭、日本人の海外旅行者数は約1000万人。その後10年間伸び続け、頭打ちとなったのは2001年の米国同時多発テロの年だった。それ以降は1600万人前後で伸びは止まり、そうこうしているうちに、今年は1970年以降45年ぶりに訪日外国人の数が出国日本人を逆転する。

では、ポストバブル崩壊時代の日本の海外旅行のトレンドは何だったのか。それは「安近短」と呼ばれたアジア方面への市場の拡大だった。これと同様、中国の航空市場をみると、この秋以降、欧州や北米路線が減少する一方、アジア太平洋路線は増加を見せている。

一度バブルの味を知った国民はすぐにはその味を忘れられないものだ。ただし、そう遠くには行けないので近場を目指す。その恰好の旅行先のひとつが日本であることは間違いないなさそうだ。

とはいえ、11月13日に起きたパリ同時多発テロ事件が与えた世界的な衝撃と暗雲のように広がる不安が、新疆ウイグル自治区を抱える中国に今後どう波及するか。さらには、南シナ海における中国の覇権的な動きが周辺国との関係にどんな緊張を強いるかなど、来年の訪日旅行市場にとって気がかりな国際情勢の変調もある。これまで以上に海外の動向を気にかけねばならない年になるだろう。

やまとごころ.jp
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_19.html
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by sanyo-kansatu | 2015-11-27 02:25 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)