ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

inbound.exblog.jp
ブログトップ

タグ:旅行会社・ランドオペレーター ( 51 ) タグの人気記事


2015年 05月 18日

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル

一般の日本人には見えにくい、中国語通訳案内士の信じられないような内情について、赤裸々に語ってくれた水谷浩さんですが、ご本人と中国との関わりは、大卒後に勤めたメーカー在籍中の1984年、中国政府が3000人の日本人青年を招いた交流イベントに参加したことに始まります。

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた
http://inbound.exblog.jp/24486566/

その後、水谷さんは上海、北京へと留学。帰国後は商社で中国市場への新商品の開発や展開を手がけてきました。2005年、中国語通訳案内士試験に合格。中国の訪日旅行市場は有望だと考え、翌年末勤務先を退社し、中国語通訳ガイドの道を歩き始めます。

「最初の仕事はいまでもよく覚えています。中国から来た社長のアテンドで、企業の工場視察に観光を加えた1週間の日程です。その後は翻訳の講師の仕事をしたり、ガイド業務も年々受注が増えていたのですが、2008年にリーマンショック、11年に東日本大震災が起こり、地獄を見ることになります」。

それでも、水谷さんは訪日旅行業界の将来に希望があることを確信していました。

「インバウンド後進国とか政府の失策とか非常にネガティブな話をしてきましたが、市場経済学的に見れば、発展の余地があるということで市場の将来に大いに希望が持てるということが言えます。これは私が現場で接待したお客様より直に市場のニーズを絶えず感じていたので、東日本大震災とか尖閣国有化といった絶望的なニュースがあっても、この仕事を続けてきた原因なのです。」(「驚くべきインバウンド後進国ニッポン」③果たしてここに市場は存在するのか!? より)

最初の数年間は、旅行会社や人材派遣会社からガイド業務を受託していた水谷さんですが、08年頃から日本観光通訳協会(JGA)の「通訳ガイド検索システム」に登録すると、ひきあいが来るようになったといいます。

通訳ガイド検索システム
http://www.guidesearch.info/

「海外のFIT、たとえば、マレーシアのご夫婦から直接メールが届く。ガイドだけでなく、旅行込みのガイドの依頼です。旅行代いくら、宿泊代いくら、交通費いくら、入場料いくらと見積もりを出すわけですが、最初のうちは、手配部分は旅行会社に投げていた。でも、旅行会社は個別の案件に対する対応が遅いんです。これでは自分でやらなあかんということで、旅行業務取扱管理者資格を取り、旅行業として起業することにしたんです」。

2014年4月に彩里旅遊株式会社として法人化、8月に第2種の旅行業となり、HPも開設。半年すると、少しずつ問い合わせが来るようになったといいます。

水谷さんが起業に至った理由として、同じ士業である弁護士と通訳案内士の置かれた状況が大きく違っていること。それゆえ「食えない」職業であることに強い問題意識がありました。この問題についてもネットメディアで熱弁を奮っています。

「通訳案内士と他の士業では、決定的な違いがあります。派遣が許されているか否かです。私も以前ある旅行ブローカーと口論をして「日雇い添乗員」と捨てぜりふを吐かれ頭にきたことがありました。弁護士や会計士は日雇いでなく、通訳案内士はなぜ日雇いできるのか、この意味には歴史があります。しかし日雇い派遣をやめれば、非常に多くの通訳案内士が路頭に迷うでしょう。そういう世界なのです。(中略)

奇妙に感じることは、所轄の役所に対する被害者意識や反感のようなものです。つまり観光庁に対して多くの通訳案内士は、われわれを守ってくれる役所であるとは思っておりません。それを証拠に観光庁からの依頼事項があると、どこの団体でも観光庁への批判や不満、悪口を言い続ける人がおり、観光庁と会員の間に入って事を進める時は必ず手間がかかります。根強い不信感があるのです。以前福祉事務所とケースワーカーの相互不信を取り上げたニュース番組がありましたが、この世界も同様なのです」。(⑪旧運輸省部局は業界が限界集落化する前に手を打て! より)

観光庁の「通訳案内士のあり方に関する検討会」についても、以下のように率直に感想を述べています。

「数年前に役所と民間の対立を象徴するような事件がありました。通訳案内士制度のあり方検討会が観光庁で開かれ、この制度を廃止するか継続するかの議論が交わされました。通訳案内士からは大規模団体代表2名、あと10数名は関連業界から出席しましたが、関連業界からは成果を上げられない通訳ガイド制度の廃止、業務独占の剥奪等の辛辣な意見も続出したように記憶しております。多くのベテラン通訳案内士が制度廃止による廃業を心配し、制度廃止時は訴訟を起こすと息巻いていた年配の方もおられました。結局数年の検討の結果、観光庁は通訳案内士制度を保持するとの見解を通訳案内士団体側に出すのと同時に、役所原案に沿って、通訳案内士団体に黙って「総合特区法案」の中に総合特区通訳案内士案を盛り込んで成立させました。

その結果、総合特区では通訳案内士試験なしで通訳案内士業務が可能になり、特区自治体の主催する講習を受けるだけで業務ができるようになったのです。これは中国から九州への豪華客船就航のための観光対策で九州の目玉政策でした。一方では難しい試験を課し、一方では試験なしの講習だけで同じ資格が取れるという、非常におかしい話です。加えて特に日本人のガイドからは、立場の弱い日本人の権利を取り上げて外国人に無条件で渡すという当時の過激系マスコミ論調を受けて、売国的外国人優遇政策であると非難していた人もおりました」。 (⑫役所と業界の対立のはざまで、日本の訪日政策を憂う! より)

しかし、その一方で水谷さんは通訳案内士自身にも問題があることを指摘しています。

「通訳ガイドが貧困な理由は、要するにアサインの仕事(配給)のみをあてにしているからです。蟹工船でしか働けないからです。自分で船を操船してカニを取りにゆかないのが原因です」。(⑬脱落した仲間の屍を越えて前進!前進!また前進! より)

「この世界に入って思うのですが、旅行業界に支配されているという感覚を持った方が非常に多い事です。確かに英語圏の世界は、ウォーキングガイド以外旅行業界に営業を握られているかもしれません。日本にはまだ男尊女卑の習慣が色濃く残っており、その為かもしれませんが、積極的に前に出て外客を直に受注しようとする人間は少ないようです」。(⑭通訳ガイドの社会は日本には珍しい女性社会 より)

通訳案内士が“絶滅危惧種”になる前に、稼げる仕事にしなければ。そうすれば、優秀な人材も集まってくるはず。水谷さんが起業を決意したのはそのためでした。

「通訳案内士で旅行会社を起業した人はまだ少ないですが、成功しようと思ったら、これがいちばん早い方法だろうと考えた。旅行会社として自らツアーを企画し、添乗、ガイド、これらを垂直統合する。このモデルしかないと」。

しかし、これまで見てきたように、訪日中国旅行市場の現状は、通訳案内士を必要としないツアーが大半です。それでも、水谷さんはこう言います。

「でもね、私の経験からいって、一度いいガイドにつくと、次もお願いしたいと言ってくる。これは中国客でも同じです」。

水谷さんには強い影響を受けたガイドがいたそうです。陳さんという台湾のカリスマ日本語ガイドでした。「いまはもうお亡くなりになったと聞いていますが、台北の故宮博物院で明の文物を説明するとき、『この壺はいつごろ作られたかわかりますか? 明智光秀が信長を討った頃ですよ』。退屈な歴史の説明もこれなら面白いでしょう。この人スゴイなと。自分もこうなりたいと思うんです」。

この仕事でいちばんうれしい瞬間は、お客さんから「この次来るときお前に連絡する」と言われること。そのお客さんから次のツアーの引き合いがあると、認めてもらったことを実感できるからです。「ツアーが終わってお客さん全員と握手するとき、握りしめた手にお札が入ってることもありますよ。エー何これ!? うれしいですよ」。

一般に中国客は買い物にしか興味がないと思われがちだが、水谷さんの話を聞いていると、通訳案内士として真剣に相手に向き合うことの大切さを教えられます。

訪日中国客が増えるなか、新しい悩みも生まれているそうです。

「中国語の方言です。中国では南方と北方では使われる言葉がまったく違う。外国語みたいなものです。基本的に私が学んだのは普通話ですが、地方から来たお客さんから『水谷の中国語はわからない』と言われる。でも、私はあなたの方言がわからない。

地方の中国人は必ずしも普通話ができるとは限らないのです。こういう悩みは中国語通訳案内士ならではかもしれません。特におばあちゃんの話を聞きとるのが難しい。娘が通訳してくれるからなんとかなるものの、これからは外国人と話したことのない中国客がやって来る。外国人の中国語を聞き慣れている中国人とそうでない人ではまったく違う。

日本人の通訳案内士は何を言うてるのかわからないとよく言われるのはそのためです。訪日客の増加にともない、方言しか話せない人が増えてくることを肝に銘じなければならない。これは大変なことです。

台湾客にも気を遣います。一般に台湾人は大陸の中国語に対する反感があり、私の話す中国語にクレームを食らったこともあります。これはたとえていうと、関西弁が嫌いな人に横山やすしがガイドに付いたようなもの。だから、台湾客の場合、最初に私は大陸で中国語を勉強したことを話すことにしています。すると『そうや、お前の話すのは大陸のことばや』と言われます」。

英語さえ話せれば、欧米諸国や東南アジアの国々の人たちならなんとかカバーできるという状況とはまったく違う話です。中国語通訳案内士に求められる能力とはなんと高度なものでしょう。それに対する水谷さんの答えはこうです。

「たとえ難しくても、だからこそやる価値がある。燕の巣を獲りに行く人間がいるのなら、そこで役立つ通訳ガイドになるべき。お客さんもそれを求めているはず。それが商売になる」。

そんな水谷さんに「これから通訳案内士を目指す人」にひとこと、と尋ねるとこう話してくれました。

「ぼくは野球好きです。将来、プロ野球選手になりたい。でも、実際そのうち何人なれますか。通訳案内士の世界も同じです。

通訳案内士試験はプロ野球でいえば、入団テストにすぎない。そこから先が問題。本当にこの仕事に向いているか。素質があるかどうか。生き残れるか。それは本人次第です。

通訳案内士は職人です。長年の鍛練なしでは務まらない。旅行商品は目に見えない。何時何分どこに行って…ではただの添乗にすぎない。旅という芸術作品はお客さんの心に刻まれるもの。私にとっての台湾の陳ガイドと過ごした1日のように。一生残るもの。

通訳案内士は、訪日旅行産業を構成する最も重要な成員です。コンシェルジェであり、道案内人であり、相談員であり、お客さんからいちばん信頼される存在になるべきです」。

さらに、業界への提言として以下のように話してくれました。

「今後の通訳案内士制度の設計において「業務独占」「名称独占」は個人的には強くこだわらないけれど、あってもいいと考えている。それは職人のプライドにかかわるものだから。職人は気難しいですから、「独占」廃止といわれると、カチンとくる。お前は能力がないと言われているような気がするから。ですから、制度を設計する側も、我々が職人であることを心得てうまく進めないとへそを曲げてしまう。

でも、食えないでしょう。そう言われるのがつらい。だからこそ、食うためのこういうシステムをつくるという話と一緒であれば、うまくいくのではないか。

訪日客が増えるなか、外国語を使った添乗(旅程管理)やガイド(案内)代をきちんと保証する仕組みをつくっていくべき。安売り競争ではなく、質が問われる仕事にしないと。それをお客さんが選んで買う。そこで勝負するという形にしていく。

だからこそ、業務の分業化ではなく垂直統合なのです。これからはトランスフォーマーで行かなければ。ネイティブ添乗員やスルーガイドを過去の遺物にするためにも」。
b0235153_9571847.jpg

インバウンド・コンサルタント(水谷さんが代表を務める中国語通訳案内士団体)
http://www.inbound-consultant.com/

[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-05-18 09:57 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 10日

海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう

海外の観光ガイドがどんな働き方をしているかという話は、国によって相当事情が違うため、それを掘り下げようとするとかなり専門的な内容になってしまいます。残念ながら、いますぐこの件を検討することは簡単ではありません。

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?
http://inbound.exblog.jp/24450294/

一方、我々も含め一般の旅行者が海外でどんなガイドサービスを受けられるかについては、いろんな事例を知ることはできそうです。

たとえば、ヨーロッパを中心とした18都市で実施されている地元ガイドによるガイドサービスとして知られるのが、new EUROPE です。
b0235153_1645766.jpg

New EUROPE
http://www.neweuropetours.eu/

※18都市は、アムステルダム、バルセロナ、ベルリン、ブリュッセル、コペンハーゲン、ダブリン、エジンバラ、エルサレム、ハンブルグ、リスボン、リバプール、ロンドン、マドリッド、ミュンヘン、ニューヨーク、パリ、プラハ、テルアビブ。

このサービスは、上記18都市でそれぞれ実施している地元ガイドによるウォーキングツアーなどにネットで予約すれば誰でも参加できるというもの。無料のツアーもあれば、有料で郊外の観光地などを訪ねるツアーもあります。

たとえば、これはドイツのミュンヘンのサービス内容です。面白いのは、このツアーを案内する地元ガイドが写真入りで紹介されており、さまざまなキャラクターが揃っていること。どこに行きたいかもそうですが、このガイドに案内してもらうと楽しそう、という選び方もできるわけです。
b0235153_16452961.jpg

New Munich
http://www.newmunichtours.com/

「ミュンヘンに滞在している外国人旅行者がこのサイトを見て集まってきて、ローカルガイドの案内で街歩きをしたり、ツアーに出かけたりします。ぼくはそのとき、ミュンヘン郊外にあるダッハウ(ナチスの強制収容所のあった町)を訪ねるツアーに参加しました。もちろん、自分ひとりでもバスに乗って行くことはできるけど、地元のガイドにしっかり説明してもらうことで、知的好奇心が大いに満たされた。日本でもこういう外国人向けのツアーをやれないものだろうか」
b0235153_1646412.jpg

こうした実体験をもとに新しい外国人向けツアーサービスを提供しようと2013年に起業したのが、株式会社トラベリエンスの代表・橋本直明さんです。
b0235153_16463886.jpg

トラベリエンス
http://www.travelience.com/

現在同社では、自社でオリジナルツアーを企画するtravelienceと、通訳ガイドと訪日外国人旅行者をマッチングさせるTripleLightsの両サイトを運営しています。

「最初はNew MunichのFree Tourと同じモデルで、プロのガイドの案内による浅草のウォーキングツアーから始めました。それからだんだん有料のツアーも始めたのですが、必ずしも料金が安いからといって人が集まるとは限らない。むしろ、カップルや友人同士、ファミリーなどのプライベートなガイドの需要の方が大きかった。目的地も、浅草や築地、渋谷など東京のメジャーどころを案内してほしいというリクエストが多かった。知らない人と一緒になって気を遣うことなく、自分たちのペースで歩きたい、そういうニーズが多いことを知りました」。

同社の提供するツアーのうち、人気なのは、東京発日帰りの日光や富士山、鎌倉。京都も人気だそうです。でも、東京で起業したばかりの橋本さんには、京都に事務所を置いて、人を配置してというのはすぐには難しかったため、次に思いついたのが通訳ガイドと外国人旅行者のマッチングサービスであるTriplelightsだったそうです。

「こちらはお客さんを集めることに徹し、地元のガイドさんご自身にオリジナルなツアーを企画してもらおうと考えました」
b0235153_16473254.jpg

Triplelights
https://triplelights.com/

「プロとボランティアではガイディングのレベルがまったく違う。ですから、Triplelightsに登録していただくのは、通訳案内士の資格を持つ方のみです。

これまで通訳ガイドの方たちは、旅行会社などのツアーに派遣されていました。でも、旅行会社の手配する宿泊ありのツアーに参加できないガイドもいます。たとえば主婦の方。能力があるのに、就業できないのは残念です。

たとえば、朝9時から12時までの半日ツアーに参加したい外国客がいた場合、それなら主婦の方でも仕事ができる。外国人旅行者には多様なニーズがあるのだから、それに応えられるようなマッチングサービスを提供したいと考えました」。

Triplelightsでは、外国人旅行者の立場からより自分に合った通訳ガイドを選択できるようサイト上に通訳ガイドの紹介動画を用意しています。一方、それぞれの通訳ガイドは自分の企画したツアーをサイト上に紹介。そのツアーに興味を持ってくれた外国人からサイト経由でメールの問い合わせがあると、日程の調整などのやり取りをし、仕事を請けることになります。
b0235153_16481534.jpg

実際にTriplelightsを介して外国人旅行者から仕事を請けている通訳ガイドの方に話を聞いたところ、次のように答えてくれました。

「メールが届くと、お客さまの希望日に仕事が請けられるかどうか答えます。その場合、家族構成や人数、特別なリクエストがあれば確認。ツアーコースに築地が入っているのに、お寿司が苦手という人もいますから。ご家族にお子さまがいると、スケジュールも柔軟に考えなければならないなど、事前の情報があると助かります。また国籍については聞かないようにしています。もし先約があって仕事を引き受けられないとき、国籍で差別しているように思われてはいけないからです。

これまでと違うのは、お客さまと事前にやり取りしているので、ツアー当日には気心知れたお友だち感覚で会えること。これからは自分の強みを積極的にアピールしていかないといけないと実感しています」。

ある通訳案内士団体の役員もこう評価しています。

「橋本さんのコンセプトやビジネスモデルは非常に興味深く、いわゆる、一般的なエージェントのツアーの下請けというイメージの強い通訳ガイドに対して、新しい業務提供、あるいは顧客確保のメソッドを提供しようとしているスタイルは評価できます」。

これまで本ブログでも述べてきたように、通訳案内士を取り巻く状況は、さまざまな課題を抱えつつも、大きく変わりつつあります。特に若い世代の参入のためには、こうした海外で人気を得ているガイドサービスを日本に持ち込むことも必要でしょう。

一方、確かに訪日外国人旅行者は増えていますが、その訪問先が一部の都市や観光地に集中しているという問題があり、新しいガイドサービスを提供している橋本さんにとっても気になるところでした。その背景には、特に地方において英語による情報発信が決定的に不足していることがあると橋本さんは言います。だから、いまだにメジャーどころを案内してほしいというニーズに偏ってしまうというのです。

そこで、橋本さんは新しい旅行ガイドブック「Planetyze(プラネタイズ)」の提供を4月20日より開始しました。

Planetyze(プラネタイズ)
http://planetyze.com

どんなサービスかについては、こう説明されています。

「Planetyze」は、「旅行ガイドブックで気に入った場所を選ぶと、旅程表が作成でき、その場所に精通した通訳案内士に案内してもらえるツアーマーケットプレイスへつながる」という、外国人のための新しい日本の旅の提案をします。

●定番以外も外国人に紹介する旅行ガイドブック

トラベリエンスの経験で、訪日外国人が希望する観光地が東京・京都など定番ばかりになるのはなぜかと考えたら、気が付いたのは彼らにさまざまな観光地の情報が届いていないこと。日本のことは日本人のほうがもっと詳しい。外国人への情報提供の経験がある株式会社ジャパンタイムズ元出版部長笠原仁子氏を日本版編集長として迎え、「外国人が旅行したい場所を発見できる」工夫をした記事をオリジナルに執筆し、日本全国を細かく網羅していったガイドブックを作っています。訪日外国人旅行者向けの英語版、日本人向けの日本語版からスタートし、今後多言語展開していく予定です。東京・京都はもちろんのこと、地方の名所旧跡を細かく網羅し、全国各地へ訪日外国人を送客することを目指します。

●旅程表作成

「Planetyze」ではワンストップで旅程表を作成できます。ガイドブックに掲載されている記事を読み、気に入った場所を旅行カレンダーに追加し、旅程表として印刷・ダウンロードすることができます。また、旅程表を作るのが難しい旅行者のために、通訳案内士が旅程を提案するサービスを提供します。

●通訳案内士によるツアーマーケットプレイス
日本全国の通訳案内士によるオリジナルツアーを提供します。いままでのトラべリエンスの実績をもとに、訪日外国人のニーズをふまえ、ガイドの自己紹介動画を揃えています。ガイドの語学力や知識・人柄を知ったうえで納得してツアーを申し込むことができます。


これまで多くの地方自治体が多言語化した地元の観光地図やパンフレットをたくさん制作してきましたが、どれほどの効果があったか大いに疑問でした。いまの時代、ネット上に情報を載せなければ意味がないからです。

それにしても、全国の地域情報を英語化して発信するというのは、壮大なチャレンジです。ですが、実は誰かがやらなければならないことでした。こういう取り組みはもっとみんなで応援していかなければならないと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-05-10 16:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 06日

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?

前回、通訳案内士の実態について観光庁の報告書を頼りに簡単に解説してみました。

NHK報道をめぐり思う。通訳案内士って何だろう?
http://inbound.exblog.jp/24442716/

そこでは、4月22日のNHKの報道に対する若干の疑問も指摘しました。ある関係者も次のように語ってくれました。

「2020年の東京五輪に向けて、あるいは地方創生の一環として、通訳案内のできるガイドの数を増やしたい、そのために簡易な形のガイドの制度を作って普及させたいというのは、観光庁と地方自治体との共通認識だと思います。旅行業界も同調しているように思えます。その意味で、「地域限定」ガイドの新設は、確かに観光庁の検討会でもほぼその方向で合意に向けて動いているのは事実ですので誤報ではありませんが、法改正や新制度の法的対応には立法措置が必要な場合も多いので、そこまで具体化していない時点でここまで報道してしまうのはどうかと思いますし、既定路線で改革を進めたがっている政府当局の意思と焦りのようなもの感じます」。

NHKはこうした見方があることをどこまで承知のうえで報じたのかな? そうぼくも感じました。というのは、自分も数回ではありますが、観光庁の検討会を傍聴したことがあるからです。

ところで、ここでいう「有識者や旅行関係者などで作る会議で制度の改善を検討する会合(検討会)」とは何のことでしょうか。

観光庁のHPによると、その正式名称は「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」といいます。

「我が国に通訳案内士制度が創設されて60年以上が経過している中、訪日外国人旅行者数の増加及びニーズの多様化に的確に対応できるよう、中長期的な視野から、新たな通訳案内士制度を構築するための具体的な方策について検討を行うため、「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」を設置しました」。

http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/tsuyaku.html

「検討会」の主なメンバーは以下のような人たちです。

通訳案内士団体
旅行業者
ホテル業者
地方公共団体
ボランティアガイド団体
日本政府観光局(JNTO)

通訳案内士は基本的にフリーランスの個人事業者ですが、通訳ガイドの仕事は、上に挙げたさまざまな業界との関係の中で成り立っています。仕事を発注してくれるのは、たいてい旅行業者やホテル業者、場合によっては地方公共団体のこともあるでしょう。また通訳案内士試験の運営をしているのは、日本政府観光局(JNTO)です。通訳案内士制度がどうあるべきかについては、彼ら自身がどう考えるかだけではなく、関係者らとさまざまな課題について協議していく必要があるわけです。

ちなみに、通訳案内士団体については、観光庁のHPにこう説明されています。「通訳案内士法において「通訳案内士の品位の保持及び資質の向上を図り、併せて通訳案内に関する業務の進歩改善を図ることを目的とする団体は、観光庁長官に対して、国土交通省令で定める事項を届け出なければならない。(通訳案内士法第35条)」。実際には、社団法人や協同組合、NPO法人などさまざまな運営主体となっていますが、通訳案内士自身による業界団体です。

主な通訳案内士団体(観光庁HPより)
http://www.mlit.go.jp/common/001067295.pdf

さて、この「検討会」の立ち上げは、観光庁が設立された2008年の秋にまでさかのぼります(最初は「懇談会」として始まっています)。

以後の経緯については、観光庁のHPに詳しく掲載されています。関係者らの発言や主張は閲覧できますが、あまりに膨大な内容であるため、ひとまず昨年12月に観光庁がまとめた報告書「通訳案内士の現状及び制度見直しの検討経緯」の中から「過去の検討会の開催状況」という資料を紹介しましょう。
b0235153_11462032.jpg

これを見ると、昨年12月から最近まで実施されていた「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」以前にも、4つの「検討会」があったことがわかります。正直なところ、これほど多くの関係者の声を集め、東日本大震災後などに一時中断はあったものの、7年近く続けられてきた「検討会」であることに驚きすらおぼえます。

では、そこでどのような内容が議論されたのでしょうか。これについても、前述の報告書から「過去の検討会等における主な意見」の記述を紹介することにしましょう。

意見①通訳案内士に求められる役割
b0235153_11455467.jpg

ここでは、3つの役割が期待されていることがわかります。すなはち、「語学力・豊富な知識」「ホスピタリティ」「旅行者の旅程管理」です。これらをすべて兼ね備えるというのは、そんなに簡単なことではないように思います。

意見②通訳案内士の試験
b0235153_11463882.jpg

ここではふたつの若干対立して見える意見に分かれているようです。ガイドの質に関わる問題だけに、当事者も含め、関係者にとっても意見の分かれるところなのでしょう。

意見③通訳案内士の研修
b0235153_11464876.jpg

訪日外国人旅行者の急増にともない、通訳ガイドに求められるニーズも多様化しており、試験合格後にもさまざまな研修が必要とされている実態がよくわかります。

意見④通訳案内士の地域・言語面での偏在
b0235153_1147163.jpg

前回述べた「都市」と「英語」への偏在が、訪日旅行市場の現場でどんな支障をきたしているのか、見えてきます。

意見⑤地域限定通訳案内士・特例ガイド
b0235153_11471867.jpg

2008年頃から進めてきた地域限定通訳案内士・特例ガイドの育成が思ったようには進展していないことがわかります。一般国民からみると、通訳案内士の実態すらよく見えない現状において、新設された通訳ガイドの存在とそれをめぐる議論の内容は、どこに落としどころがあるのか、よくわからないというのが正直な印象です。

意見⑥通訳ガイド料金、ボランティアの活用
b0235153_11474643.jpg

ここでは前回触れた通訳案内士の就業実態の背景を物語る意見が見られます。たとえば「ガイド料金の価格破壊」「旅行者が急増しているアジア諸国」などに関するものです。ボランティアの問題についても、現場からは厳しい声が聞こえてくるようです。

意見⑦無資格ガイド・悪質ガイドへの対応
b0235153_11481221.jpg

これが日本のインバウンドにとって実に悩ましい海外の「無資格ガイド・悪質ガイド」問題です。この件については、別の機会で実態も含め述べるつもりです。

意見⑧通訳案内士の活動機会の拡大 等
b0235153_11565267.jpg

ここでは外国人旅行者と通訳案内士をマッチングするシステムの構築や制度そのものに対する疑問などが触れられています。

これまでメディアは急増する外国人旅行者がもたらす「消費」や「経済効果」について多く報じてきました。ところが、現場の関係者の認識はそれほど単純なものではないことが、通訳案内士をめぐる「検討会」を通じて見えてきます。実際に、訪日外国人に接して旅行の案内をしている彼らだからこそ、抱えざるを得ない問題があるのです。

またこの問題は、それぞれの関係者ごとに見え方も違っているようです。これらの意見を集約して、新制度を立ち上げていくことは確かに簡単ではないでしょう。

ひとまずできることは、一般国民には見えにくい通訳案内士の現場をめぐる状況を広く知ってもらうことだと考えています。ここに至っては、関係者だけで解決できる問題ばかりではないことも多くの人にわかってもらうことが大事かと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-05-06 11:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 10月 08日

訪日外客1300万人超えなるか?(AISO臨時総会報告)

ツーリズムexpoジャパンの会期直前の9月24日の夜、東京ビッグサイト会議室で一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の臨時総会がありました。

AISOはアジアからの訪日客の旅行手配を扱う観光業者の団体です。国内ツアー手配を行う旅行会社(ランドオペレーター)をはじめ、ホテルやレジャー施設、自治体関係者らが会員で、アジアインバウンド市場の拡大に伴い、会員数は年々増えています。

AISO
http://shadanaiso.net

冒頭のあいさつで王一仁会長はこう語りました。「円安が続き、インバウンド(訪日外国旅行市場)にとって絶好のチャンスが訪れています」

続いて、石井一夫AISO理事(株式会社ジェイテック)が今年の訪日外国人旅行者の動向を以下のように報告しました。

「今年は毎月のように単月の訪日外客数が過去最高を更新し、1300万人超えなるか? という状況です。1~8月までで863万人と前年比25.8%増。伸び率が最大なのが中国で前年比84%増、タイやフィリピン、マレーシア、ベトナムなどアセアン諸国の伸びも大きいです。訪日客数のトップは台湾の190万人で、韓国、中国と続きます。訪日全体にアジア11カ国が占める割合は8割となっています。今後、バスやホテルなどの供給が厳しさを増してくることが予想されます。秋の紅葉のシーズンが心配されます。地方も含め、いかに供給量を増やすかが求められています」

各国市場別でそれぞれの関係者がこう言っています。

まず中国。「好調な勢いで伸びできた中国客ですが、8月末から9月にかけての予約状況でみると、団体客は若干ペースダウンが起きています。今年7月からのバス運賃改訂によって料金アップが起きていることも影響しているようです。中国の海外旅行市場はタイの混乱もあり、東南アジア方面は減少しているぶん、韓国に集中していますが、訪日はまあまあという感じでしょうか」

次に韓国「他国に比べると、訪日客は伸びていないが、最近沖縄が韓国市場で人気となっている」

そして香港「7月から始まった反中国デモの影響もあり、6月まで伸びていた訪日客の伸びが落ちてきた。ただし、香港客の8割は個人客(FIT)なので、円安が効いている」

アセアン最大の訪日客を誇るタイ「8月まで伸びてきた勢いが、9月は減速しそうな気配。バス不足や運賃アップが影響しているもよう」

好調な勢いを見せていたタイ以外のアセアン諸国からの訪日客も、秋以降減速していくのではないか、という声も聞かれました。

その理由について、王会長は言います。
「実は、最近海外の旅行業者から苦情が続出しています。苦情の中身は、貸切バスの不足と料金アップ。日本に送客しても、本当にバスが手配できるのか? 貸切バス運転手が1日10時間しか勤務できないのでは、ツアーに使えないのでは? それならドライバー2名制にすればいいではないか、などと海外の業者は言うのですが、日本のバス運転手は不足し、安全基準もそれを許さないため、対応できないことが増えているのです」

これが一見好調に見える訪日旅行市場の受け入れ態勢の現状です。このままで、本当に1300万人超えなるのか? 

今後を考えると本当に現在の好調さが続くのか、明るい見通しばかりではなさそうです。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-10-08 17:16 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 07月 29日

31回 中国客の訪問地の分散化に期待。中国ナンバーワン旅行会社、春秋国際旅行社のビジネス戦略に注目

拡大する中国の訪日旅行市場の今後の動向を占う上で注目すべきは、春秋国際旅行社の果敢なビジネス戦略です。2012年9月、日本で4番目の格安航空会社(LCC)の春秋航空日本を設立。今年に入り、上海以外の地方都市からの日本路線も続々就航させています。彼らの描く訪日旅行戦略とはどのようなものなのか。関係者らのインタビューをもとに、同グループのユニークな取り組みをお伝えします。
b0235153_1237345.jpg

日中関係が最悪といわれるなか、中国からの訪日客が増えています。

こうした事態に戸惑いを感じるむきもあるかもしれませんが、中国の消費者の立場で考えれば、これだけ航空路線の拡充と円安基調が定着すると、訪日旅行意欲がかきたてられるのは無理もないことです。

中国メディアがどんなに騒ごうと、政治と民間交流は別次元の話。個人レベルでは日本に行ってみたいというわけです。

そんな中国の訪日旅行市場の今後の動向を占う上で注目すべきは、春秋国際旅行社の果敢なビジネス戦略です。

5月に開かれた上海旅游博覧会(WTF2014)でも、同グループの出展ブースが最も活況を呈していたことは、前回報告したとおりです。
b0235153_12385190.jpg

いったい春秋国際旅行社とはどんな会社なのでしょうか。

取扱・売上ともに中国ナンバーワンの旅行会社

春秋旅行社の創業は1981年。87年に海外インバウンド客の受入を開始。春秋国際旅行社と改称しました。
その後、全国に販売ネットワークを広げ、現在、全国39都市に支店を開設。2000店舗を超える代理店を持っています。
b0235153_1238215.jpg

国内・海外を合わせた旅行取扱人数と売上は、15年間連続1位(2013年)という中国のナンバーワン旅行会社なのです。

同社は自前のエアラインを所有していることが最大の特徴です。春秋国際旅行社を母体として、2004年春秋航空を設立。これは中国で現在唯一の格安航空会社(LCC)です。

国内においては上海、瀋陽、石家庄の3拠点をハブと位置付けし、全国主要都市への路線網を拡げています。

国際線においても、日本以外に、ベトナムのダナン、マレーシアのコタ・キナバル、カンボジアのセムリアップ(アンコール・ワット)、タイのバンコク、チェンマイ、プーケット、シンガポールなど東南アジアのレジャー路線を中心に、着々と新規路線を開拓しています。
b0235153_12394456.jpg

すでに国内106路線、海外41路線(2014年6月現在)と路線網を持っています。

春秋航空は積極的な広告戦略でも知られています。

上海市内の地下鉄駅構内や車両に随時、新規就航路線を告知する広告を打ち出しています。近年、中国経済の減速が指摘されるように、ここ一、二年地下鉄構内の派手な広告が姿を消しているなか、春秋航空の存在感は圧倒的です。
b0235153_1239117.jpg

b0235153_12391863.jpg

何より注目すべきは、初めての国際線就航地として茨城空港(2010年)を選んだことに象徴されるように、日本市場へのあくなき挑戦です。

さらに、春秋グループは、2012年9月、日本で4番目の格安航空会社(LCC)として春秋航空日本を設立。この夏国内線の運航を開始する予定です。

今年3月には上海・関空線も就航。7月以降、関空線を大幅に拡充し、天津、重慶、武漢、大連からの就航も予定されています。

中国・春秋航空、関空路線を大幅拡充(日本経済新聞2014年5月28日)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ280AR_Y4A520C1TJ2000/

訪日路線網の拡大で新しいツアー造成を

では、春秋グループが描く訪日旅行戦略とはどのようなものなのでしょうか。

上海旅游博覧会(WYF)閉幕の翌日(5月12日)、春秋国際旅行社本社で日本出境部経理の唐志亮氏に話を聞くことができたので、以下紹介します。

― 今回のWTFで御社は最大規模のブースを展開、多数のスタッフを会場に送り込み、即売にも力を入れていました。何をいちばん売りたかったのですか?

「会期中限定のキャンペーン料金を打ち出し、海外ツアーを販売するのが目的でした。販売コーナーの周囲には、クルーズや航空(春秋航空)、ビーチリゾート、自由旅行、都市観光バスなどのブースを個別に整え、プロモーションにも努めましたが、メインは販売です」

― 訪日旅行商品としてはどんなものがありますか?

「現在、春秋航空は上海から茨城、高松、佐賀、関空と4つの日本路線があり、それらの都市を組み合わせたツアーです。これから夏にかけて、北海道やファミリー向けにUSJやTDRを付けた本州のツアーも、市場のニーズに合わせて販売します」

— 御社の特長は自前の航空会社を持っていることですね?

「春秋グループが他社と違うのは、自前の航空会社を持つだけではなく、旅行会社と航空会社が対等な関係にあることです。

一般にこの業界では、航空会社が旅行会社の上位にあり、路線開拓に合わせてツアーを造成させるという主従関係にある場合が多いですが、弊社は母体が旅行会社でもあり、ともに協力しながら発展していくというのがビジネスモデルです。

春秋航空の路線計画はレジャー市場に合わせて展開されます。日本の航空会社が中国路線ではビジネス路線に注力しているのとは対照的です。もちろん、我々もビジネス客の動向も合わせて考えていますが、メインはレジャー市場です」

― 自前のエアラインを持つことで、他の旅行会社にはない、どんな訪日ツアーが商品化されているのでしょうか?

「そうはいっても、お客様のニーズに合わせた商品造成が基本となりますから、東京・大阪のゴールデンルートがいちばん人気であることは、実は変わりません。

そこで、弊社の場合は、春秋航空の乗り入れている高松や茨城を起点としてゴールデンルートに新しい変化を加え、3月15日から就航している関空+X、それ(X)は九州(佐賀out)であり、中部であり、鳥取(2012年9月、同社は米子空港へのチャーター便を計画するが、中止された)であり、四国(香川out)であるといったさまざまな組み合わせが可能となります」

― 関空就航の意味は大きいですね。さらに、まもなく春秋航空日本が国内線の運航を開始します。

「それ以後は国際線に加えて、成田―高松、佐賀、広島の国内線も組み合わせることができるようになります。それだけでなく、たとえば、佐賀inで福岡から他社便を利用し、人気の北海道に行くというツアーも考えています。

実は、春秋航空は今後さらに新千歳や那覇など日本各地に就航する考えを持っています」

― とはいえ、昨今の日中関係の悪化は気になるところですね。中国からの訪日客は増えていますが、日本からの訪中客は減少の一途をたどっています。

「確かに、政治的にはそうかもしれませんが、私には何とも言いようがありません。でも、はっきり言えるのは、日中間の民間交流は止まらないということです。

弊社の役割は、そのためのベースづくりをすることだと考えています。2011年5月、東日本大震災後、中国から初めて東北を訪ねる旅行関係者のツアーを実施したのも弊社です。上海・茨城線を利用したものですが、その後も茨城線は運航を続けました。

これからは中国からの訪日だけでなく、日本からの訪中の双方向の交流を進めたいと考えています。

そのためにはさまざまな手を打たなければなりません。また就航地を増やしたからといって、すぐにツアーのバリエーションが増えるかというと、そんなに簡単ではない。

新しいツアーコースの造成においても、東京や大阪は外せないと考えています。中国の消費者は、やはり日本に旅行に行く以上、東京や大阪には絶対立ち寄りたいのです。お客様のニーズがそうである以上、いきなり東京や大阪なしの新しいデスティネーションだけのツアーの造成は難しいと考えています。

佐賀線があるので、なんとか九州を売りたいと考えていますが、九州だけのツアーではまだなかなか売れない。そこで、佐賀inで春秋航空日本の国内線を利用して成田に飛び、東京に立ち寄り、茨城outとなるコースや、佐賀inで九州と中国地方を周遊し、関空outとなるコースなどを仕掛けたいと思います。

ツアー企画を成功させるためのポイントは『人気の場所+新しいデスティネーション』の組み合わせなのです」

― なるほど、明確な戦略を持ちつつも、あくまで現実的な戦術をとるわけですね?

「もちろん、今後はFITも増えていきますから、着地型の商品(日本国内で造成される中国客向け商品)も作っていくことになると思います」

唐志亮さんは1983年上海生まれの「80后」世代。福岡、京都(大学)、東京(就職)と8年間日本で暮らしたそうです。春秋旅行社入社は2年半前。「まだ経験が足りませんが、日本の事情には通じているので、それを活かしたい」とのこと。上海人の若い世代らしく、とても明快なビジネス戦略を言葉にしてくれました。

春秋航空日本を設立した理由

先頃、春秋航空日本の国内線の運航開始が6月末から8月上旬に延期となったことが報じられました。それ以前に他の国内LCCも減便を迫られる事態が伝えられていたばかりでしたから、日本のLCCの抱える課題が浮き彫りにされた面がありました。

春秋航空日本、8月に就航延期、高松線減便も−最大1万席に影響(トラベルビジョン2014年6月8日)
http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=61885

それでも、春秋航空が日本路線を拡充する動きは止まりません。その目的は何なのか。彼らは日本におけるLCC設立をどう位置づけているのでしょうか。

昨年11月、春秋航空日本市場開発部の孫振誠部長に話を聞いています。以下、その内容です。

― 中国の旅行会社で自前の航空会社を持っているのは春秋旅行社だけだそうですね。なぜ航空会社を所有しようと考えたのですか?

「航空会社を設立する前から、春秋旅行社ではチャーター便ビジネスを積極的に手がけてきました。中国は団体客が多く、ツアーコストを下げられるチャーター便利用のツアーは人気があるのです。1997~2004年までの7年間で約3万便。こんなに飛ばせるなら、自社で航空会社を持ったほうがいいと考えるのは当然です。ドイツの旅行大手TUIが航空会社を持っていることから、我々も学んだのです。

国内線の申請は2004年、就航は05年6月18日からです。最初は便数が多くないため、運営は苦しかったです。1日10機以上飛ばないと赤字になる。それでも、コストを下げるためのあらゆる工夫をして1年目から黒字となりました。中国では、それまでLCCの運営は不可能と言われていましたが、我々は不可能を実現したのです」

― 黒字になった理由をどうお考えですか?

「以下の5つの理由があります。
①チケットはすべてネット販売
②1機あたりの1日の運航時間を11時間とすること(通常は9時間)
③座席数は180とする(通常は157)
④オフィスビルは質素にするなど、できるだけ余計なコストをかけない
⑤搭乗率が高い(05年以来、平均95%を維持)

春秋航空の方針は、これまで飛行機に乗ったことのない人に乗ってもらおう。バスのように気軽に使ってもらおう、というものです。だから、席が余ったら1円でも乗ってくださいと。それをやったら、2012年秋の上海・茨城線で失敗しましたが(笑)。中国国内で反発が出たんです。発売後、3日目で中止となりました」

春秋航空、佐賀・高松~上海の「1円航空券」中止(2012年10月19日)
http://www.j-cast.com/2012/10/19150671.html

― 日本を最初の就航地に選んだ理由は何だったのですか?

「国際線は2008年頃から計画を始めました。これから中国は海外旅行客が増大するだろう。弊社が使うエアバスは運航効率から考えて5時間圏内が最適だったので、東南アジアの一部や韓国、日本の中から最初はどこに飛ばすか考えました。

当時は日本からの訪中客が多かった。経済交流も進み、双方の国の人的往来が頻繁でした。また中日路線は利益率がいいという経済的な理由もありました」

― そして、2012年10月に春秋航空日本株式会社を設立されました。その目的は?

「日本で航空会社を設立した目的は、現状では中国からの乗り入れの難しい成田や羽田から国際線を中国に向けて飛ばすことです。

実は、LCCである春秋航空は中国でも北京になかなか乗り入れできないのです。でも、日本の航空会社であれば、成田や羽田を利用できる。これは茨城線就航後、すぐに考えたことです。

今後は中国の地方都市からも日本路線を増やす予定です。

中国は人口が多いので、1%でも1300万人、大きいですよ。最近、中国人は年に何回も海外旅行に行きます。日本は近いし、1990年代からたくさんの中国人が日本に留学したり、仕事をしたり、つながりが多い。日本の良さをよく知っているんです」

春秋航空、関空拠点化へ−7月に武漢、天津、重慶線開設、上海線増便も(トラベルビジョン2014年5月28日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=61719

民営企業ゆえの徹底した顧客目線のビジネス

春秋グループの歩みを見ていると、国際標準に即した明確な戦略を持ち、一つひとつ市場を着実に開拓していけば、結果がついてくるということを教えられます。

そもそも新規路線の就航のための努力は、中国でも日本でも基本的に変わらない。いかに地元に受け入れられ、協力してもらえるかにかかっている。

日本路線の開設や日本法人の立ち上げも、これまでずっと中国国内で経験してきたことの積み重ねだったといえます。

ところで、取扱人数・売上ともに中国ナンバーワンの旅行会社とはいうものの、実際に訪ねた春秋旅行社本社の店舗は実に質素でささやかなものでした。カウンターの前に客が座り、スタッフが対面して静かに接客している光景は、ほとんど日本の旅行会社の店舗と変わらない印象でした。
b0235153_124758.jpg

同社のコスト削減の姿勢は徹底していることで知られています。

これは春秋航空本社ビルでも同じでしたが、昼間オフィス内は基本的に電気や冷房は付けないそうです。コスト引き下げのために関係各社や自治体に協力を求める以上、自らも姿勢を正すべきというトップの意向によるものです。

実は、先日成田の春秋航空日本のオフィスを訪ねたのですが、冷房を使わず、そこでも大きな扇風機が回っていたのは印象的でした。

ビジネスのあらゆる局面で政治に翻弄されがちな中国で、国営企業に比べ立場の弱い民営企業が生き残るには、マーケットのニーズにとことん忠実であること。徹底した顧客目線でビジネスを展開していくことが、ある意味日本以上に求められる面があるのに違いありません。

春秋グループの関係者と話をしていると、日本から学びたいという謙虚な姿勢も明快です。JTBとの提携や春秋航空日本の設立も、日本のサービスや安全基準を自社に取り入れることが強く意識されています。

確かに、中国を取り巻く国際情勢の行方は見通しが立てにくいと考えるむきは多いでしょう。しかし、重要なのは、個別の企業が具体的に何をやっているか、それで判断するしかない。春秋グループのブレない取り組みを見ていると、その思いを強くします。「国進民退」といわれる中国にも、こうした良質な民営企業があることを知っておくことは、時代のムードに安易に流されないためにも大切だと思います。

国内外のレジャー市場に注力し、茨城や高松、佐賀といった日本の地方都市にあえて路線を築いてきた春秋航空の取り組みは、東アジアにおけるLCCのビジネスモデルのひとつの先駆けといえるのではないでしょうか。

春秋航空と春秋航空日本の路線網の拡充がもたらすのは、中国客の訪問地の分散化です。

新たに就航する国際線と国内線を組み合わせることで、これまで実現できなかった多数の周遊ルートが考えられるからです。近年、過度な集中が懸念されている東京・大阪のゴールデンルート一辺倒だった中国客のツアーコースに新しいバリエーションが生まれていくことを期待したいと思います。
b0235153_12483451.jpg

[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-07-29 12:48 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2014年 06月 10日

訪日外国人数が出国日本人数を上回った4月とインバウンドの構造問題

「外国人旅行者が日本で使ったお金から、日本人旅行者が外国で使ったお金を差し引いた4月の『旅行収支』が黒字になった。大阪万博が開かれた1970年7月以来、約44年ぶりの黒字だ」 (朝日新聞2014年6月10日)との報道がありました。これはどういうことなのか。記事にもあるように、今年4月、訪日外国人数が出国日本人数を上回ったためです。

アセアン・インドトラベルマートの最終日の夜に行われたAISO(一般社団法人アジアインバウンド観光振興会)総会の冒頭、王一仁会長もこう語りました。

「今年の4月は特別な月となりました。40数年ぶりに日本の出入国においてOUTとINが逆転したのです。これは我々インバウンド事業者にとってもそうですが、日本にとっても画期的なことです。

しかし、日本は訪日外客の受け皿ができていません。4月にインバウンドの現場で起きたことは、それを物語っています」

AISOはアジアからの訪日客の旅行手配を扱う観光業者の団体です。国内ツアー手配を行う旅行会社(ランドオペレーター)をはじめ、ホテルやレジャー施設、自治体関係者らが会員で、アジアインバウンド市場の拡大に伴い、会員数は年々増えています。

AISO
http://shadanaiso.net
b0235153_12302664.jpg

会員同士の情報交換のため、年に数回行われるAISO総会は、訪日旅行市場の現場の生々しい話が聞かれるのが常です。どんな業界でもきれいことだけではすまない裏の事情があるものです。それはその後の市場動向に確実に影響を及ぼします。早めにキャッチしておくことに如くはありません。

以下、総会で繰り広げられたさまざまな事業者のコメントを紹介したいと思います。

まずAISO理事の石井一夫氏(株式会社ジェイテック)から2013年度の活動報告がありました。

「昨年度、日本政府観光局(JNTO)との会合を数回行いました。テーマは、観光バスやホテルの需給ひっ迫問題です。昨夏北海道で起きた訪日客向けの観光バス不足問題は、今春も起こってしまいました。立川アルペンルート行きツアーに参加するはずだった台湾客の多くが、バス手配ができないため催行中止となり、お客様にツアー代金を返金するという事態が起きたのです。また3月下旬に国土交通省から通達された貸切バスの新運賃制度の施行で、現場は混乱しています。こうした現場の声をいかに行政の施策とすり合わせるか。これまで以上にAISOの果たすべき役割が重要になってきています」

河村弘之理事(株式会社トライアングル)は本年度の取り組みとして、以下の話題を提供しました。

「我々が抱えるインバウンドの問題点は、これまでもずっとそうでしたが、改善されていません。ホテルとバス不足、そしてガイド問題の3点です。訪日外客2000万人を目指すのはいいですが、いったいどこに泊めるんですか? ということです。ガイドの問題も深刻です。

先日もこんな話がありました。シンガポールから団体客を連れてひとりのガイドが成田に着いたところ、ガイドのみ入国拒否になりました。シンガポール人は日本の観光ビザが免除されていることから、そのガイドはツアー客を連れて日本への出入国を何度も繰り返していたため、出入国管理法に抵触してしまったのです。入国後、空港に残されてしまったツアー客はどうなったと思いますか?

アジア客の増加とともに、こういうことが起こり始めています。AISOとしては、今後全国でインバウンド事業者を対象にしたセミナーを始めるつもりです。またホテルやバス不足問題については、会員同士がホテルやバスの確保情報を共有し、手配を都合しあう協力体制をつくっていきたいと考えています」

続いて「インバウンドの現状と課題について」と題された討論会がありました。出席者からの質問や意見にAISO理事が答えるという形式でした。いろんな声がありました。

「訪日外客は急増し、手配不能な状況になっているといいますが、東北はどうでしょう。置き去りにされていると思わざるを得ません。AISOとして東北の外客回復のために何ができないのか」

これに対して、「確かにインバウンド事業者全体に、東北を盛り上げる気迫が欠けている。各事業者がバラバラで取り組んでも回復にはつながらない」「東京・大阪5泊6日と東京・東北5泊6日のツアーでは、どちらが高いか? 現状は後者である以上、選ぶのはお客さんであり、難しい面も」(ミッキー・ガン常務・AISC)「日本政府観光局のジャカルタ事務所が開設され、そこでは東北をプッシュし、ツアー募集は始まっている」(須田理事・株式会社フリープラス)「東北単独の商品が難しいなら、たとえばソウル青森線を使って、函館などを周遊するツアーを企画したらどうかと考えている」(鄭理事・株式会社四季の旅)「上海で祭りをテーマにしたツアー企画を1本募集しているが、中国からの集客はできていないのが現状」(清水理事・アメガジャパン株式会社)などのコメントがありました。

貸切バスを運行する株式会社平成エンタープライズの田倉貴弥社長のコメントも印象的でした。

「4月に施行された貸切バスの新運賃制度の特徴は、運行距離と時間制の併用だが、実際に1台あたりの運賃を計算してみると、旧運賃と比べてそんなに変わらないようだ。しかし、新制度施行後、バス会社に直接監査が入り、罰則規定もあることが、大きな違い。これまでランドオペレーターなどの手配業者は、バスやホテルなどが包括されているため、バス運賃の中身が見えなかった。それが過剰なダンピングにつながった面がある。問題は、運転手にきちんと給料が支払われているかどうか、にある。新運賃制度は、それを改善するためのものだ。だが、バス業界には問題は山積みだ。運転手が高齢化し、若い人が少ない。今後、運転手不足が顕在化してくるだろう」

ホテル関係者の次のコメントも気になりました。

「訪日外客のためのホテル不足が懸案となっていますが、現在、国内マーケットが堅調で、料金も上がっている。現場レベルでは、安く叩かれる海外の団体客には売り控えたいというのが本音だ。これでは、ホテル不足が起こるも当然だろう。せめて早い時期に、どの程度の客室数が必要か投げてもらえれば、検討する余地があるのだが、間際に数字を出されても対応が難しいケースが増えている」

今秋から導入される免税制度の見直しへの期待を語る理事もいました。

「今年10月から始まる新制度の下では、これまで消耗品とみなされていた商品に対しても免税扱いとなります。外客に対する免税品の幅が大きく広げられるため、免税処理手続きの認可をとることで、訪日客受け入れの入り口に立つことができる」

こうして関係者はそれぞれの立場から、日本のインバウンドの課題について率直に意見を表明したわけですが、この場にいると、いま訪日旅行の現場で何が起きているのか、よくわかってきます。そこには構造的な問題があり、徐々に顕在化してきていることも。

王会長は言います。「しかし、状況は我々を後押ししていることには変わりない。実際に訪日客を手配しているのは、他でもない、我々なのだから。この好機を逃さないよう頑張りましょう」

訪日外客に携わる事業者は業種もさまざまで、各自が個別の利益を追求してばかりいては収拾がつきません。それを強く自覚した人たちの集まりであるAISOの今後の連携に向けた取り組みを期待したいと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-06-10 12:33 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 06月 06日

訪日路線の加速と国内線拡充で訪問地の分散化を図る(春秋旅行社日本部インタビュー)

この夏、関空への路線を大幅に拡大する春秋航空を有する春秋グループは、訪日旅行市場に対してどのような戦略を持っているのでしょうか。
b0235153_10343822.jpg

上海WTF閉幕の翌日(5月12日)、春秋旅行社本社で日本出境部経理の唐志亮氏に話を聞くことができたので、以下報告します。
b0235153_10345883.jpg

―今回のWTFで御社は最大規模のブースを展開、多数のスタッフを会場に送り込み、即売にも力を入れていました。何をいちばん売りたかったのですか。

「会期中限定のキャンペーン料金を打ち出し、海外ツアーを販売するのが目的でした。販売コーナーの周囲には、クルーズや航空(春秋航空)、ビーチリゾート、自由旅行、都市観光バスなどのブースを個別に設え、プロモーションにも努めましたが、メインは販売です」
b0235153_10352233.jpg

b0235153_10353671.jpg

世界一周クルーズも販売していましたね。

「はい、これは上海で初めての商品です。来年5月の出航に向けて販売を始めています」

―訪日旅行商品としてはどんなものがありますか。

「現在、春秋航空は上海から茨城、高松、佐賀、関空(2014年3月15日運航開始)と4つの日本路線があり、それらの都市を組み合わせたツアーです。これから夏にかけて、北海道やファミリー向けにUSJやTDRを付けた本州のツアーも、市場のニーズに合わせて販売します」
b0235153_1036073.jpg

b0235153_10361498.jpg

―御社の特徴は旅行会社を母体に自前のエアラインを有していることですね。近年、吉祥航空など、中国のLCCが日本に就航していますが…。

「春秋グループが他社グループと違うのは、旅行会社と航空会社が並列の関係にあることです。一般にこの業界では、航空会社が旅行会社の上位にあり、路線開拓に合わせてツアーを造成するという主従関係にある場合が多いですが、弊社は母体が旅行会社でもあり、ともに協力しながら発展していくというのがビジネスモデルです。

ですから、春秋航空の路線計画はレジャー市場に合わせて展開されます。日本の航空会社が中国路線ではビジネス路線に注力しているのとは対照的です。もちろん、我々もビジネス客の動向も合わせて考えていますが、メインはレジャー市場です」

―自前のエアラインを持つことで、他の旅行会社にはない、どんな新しい訪日ツアーが商品化されているのでしょうか。

「そうはいっても、お客様のニーズに合わせた商品造成が基本となりますから、東京・大阪のゴールデンルートがいちばん人気であることは、実は変わりません。そこで、弊社の場合は、関空や成田利用ではなく、春秋航空の乗り入れている高松や茨城を起点としたコースにしてゴールデンルートに新しい変化を加えたり、3月15日から就航している関空+X、それ(X)は九州(佐賀out)であり、中部であり、鳥取(2012年、同社は鳥取へのチャーター便を実現している)であり、四国であるといったさまざまな組み合わせが可能となります」
b0235153_10364541.jpg

―関空就航の意味は大きいですね。さらに、6月27日から春秋航空日本が国内線を運航します。

「はい、それ以後は国際線に加えて、成田―高松、佐賀、広島の国内線も組み合わせることができるようになります。またそれだけでなく、たとえば、佐賀inで福岡から他社便を利用し、人気の北海道に行くというツアーも考えています。実は、春秋航空は今後さらに新千歳や那覇など日本各地に就航する考えを持っています。

―国際線と国内線を組み合わせると多彩なコースが考えられますね。これまで東京・大阪のゴールデンルート一辺倒だった中国人のツアーコースにさまざまなバリエーションが生まれていくことは、日本側からみると、訪問地の分散化につながるだけに、御社の取り組みに対する期待は大きいです。

「弊社は2012年5月、東日本大震災後、中国から初めて東北を訪ねる旅行業界関係者のツアーを実施しました。茨城線を利用したものです。同じ年の夏、鳥取へのチャーター便も運航しました。今後もチャーター便の計画はあります。

もっとも、これからは中国からの訪日だけでなく、日本からの訪中の双方向の交流を進めたいと考えています」

―すでに日本に2つの法人を設立していますね。

「航空会社の春秋航空日本株式会社と、旅行会社の日本春秋旅行株式会社です。前者は日本の旅行大手のJTBの出資を得ていること、後者はすでにJATAから第1種旅行業を取得しています。日本から中国へのアウトバウンドもやりたいのです」

―とはいえ、昨今の日中関係の悪化は気になるところですね。中国からの訪日客は増えていますが、日本からの訪中客は減少の一途をたどっています。

「確かに、政治的にはそうかもしれませんが、私には何とも言いようがありません。でも、はっきり言えるのは、日中間の民間交流は止まらないということです。弊社の役割は、そのためのベースづくりをすることだと考えています」

―昨年11月、春秋航空の日本市場担当の孫振誠さんに話を聞いたのですが、日中間の観光交流の将来について、とても楽観していると話していたのが印象的でした。当時は確かに、尖閣問題以降減少した中国の訪日客が徐々に戻って来ていたのですが、本当にこのまま回復するのだろうか? と私は少々疑心暗鬼でした。でも、年が明けて孫さんのいうとおりになった。唐さんも同じことをおっしゃるんですね。

「もちろん、そのためにはさまざまな手を打たなければなりません。また就航地を増やしたからといって、すぐにツアーのバリエーションが増えるかというと、そんなに簡単ではない。新しいツアーコースの造成においても、東京や大阪は外せないと考えています。中国の消費者は、やはり日本に旅行に行く以上、東京や大阪には絶対行きたいのです。お客様のニーズがそうである以上、いきなり東京や大阪なしの新しいデスティネーションだけのツアーの造成は難しいと考えています。

佐賀線があるので、なんとか九州を売りたいと考えていますが、九州だけのツアーではまだなかなか売れない。そこで、佐賀inで春秋航空日本の国内線を利用して成田に飛び、東京に立ち寄り、茨城outとなるコースや、佐賀inで九州と中国地方を周遊し、関空outとなるコースなどを仕掛けたいと思います。ツアー企画を成功させるためのポイントは『人気の場所+新しいデスティネーション』の組み合わせなのです」

―なるほど、明確な戦略を有しつつも、あくまで現実的な戦術をとるわけですね。

「もちろん、今後はFITも増えていきますから、着地型の商品(日本国内で造成される中国客向け商品)も作っていくことになると思います。JTBとの関係構築も、その布石となります」

唐志亮さんは1983年上海生まれの「80后」世代で、福岡、京都(大学)、東京(就職)と8年間日本で暮らしたそうです。春秋旅行社入社は2年半前。「まだまだ経験が足りませんが、日本の事情には通じているので、それを活かしたい」とのこと。上海人らしく、とても明快なビジネス戦略を言葉にしてくれました。
b0235153_10382762.jpg

上海市の中山公園に近い春秋旅行社本社の1階カウンターには、上海の消費者が来店する姿が見られました。実は、こうした日本の旅行店舗と変わらぬ光景というのは、中国では珍しいことです。旅行商品のEC化がいち早く進んだ結果、旅行店舗でツアーを申し込むというのは、それほど一般的なことではないからです。
b0235153_10385914.jpg

唐さんによると、同社は上海市内に約60の支店をもち、中国各省にも旅行店舗を展開しているそうです。今後は上海や北京以外の都市でも、海外旅行を取り扱っていくそうです。

そういう観点でみても、春秋旅行社は中国でも異色の存在といえます。唐さんのいう「お客さまへのフェイスtoフェイスの対応を大事にしたい」という考え方は、いまの中国ではあまり一般的ではないからです。

中国では旅行市場が成長する過程とネットの普及が同時期(2000年代)に起こったことから、確かに市場の規模は飛躍的に拡大したものの、“成熟”の質という面からみると、独りよがりなところがあったと思います。海外で取りざたされるマナー問題や奇態なショッピング行動などに見られるように、中国国内では許されるローカルな行動規範が悪評を買っていることに、なかなか気づきませんでした。もし、旅行店舗で販売スタッフから“フェイスtoフェイス”で海外事情について話を聞いたり、質問したりというプロセスを一定時期、経験していれば、ここまでひどいことにはならなかったかもしれません。

旅行店舗販売を重視するという春秋旅行社のあり方は、一見時代遅れのように見えて、実は中国の海外旅行市場が、本来通過しなければならなかったプロセスをきちんとふみ直すという意味で、とても意義があるように思います。利益の追求だけ考えれば、EC化が進むのは当然ですが、旅行というモノではない商品を扱う企業が原点を忘れてしまうと必ずしっぺ返しを食らうということを彼らは理解しているからでしょう。
b0235153_10395965.jpg

※この記事をアップした2時間後、ぼくの携帯に春秋航空日本の担当者からの電話がありました。6月27日の運航開始が延期になったというのです。その日の午後、記者会見がありました。あまりのタイミングに驚きましたが、日本のLCCは同社に限らず、苦難続きのようです。詳細は、あらためて書くつもりですが、以下のニュースがすでに配信されています。

春秋航空日本、8月に就航延期、高松線減便も-最大1万席に影響(トラベルビジョン)http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=61885
[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-06-06 10:41 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 06月 04日

春秋旅行社の果敢なビジネス戦略はもっと注目すべきだ(上海WTF2014報告その6)

上海旅游博覧会(WTF 2014年5月9日~11日)の会場で、出展規模や集客状況も含め、最も目立つ存在だったのは春秋グループの販売展示ブースだったことを誰も否定することはできないでしょう。
b0235153_1144224.jpg

※バンコクや台北に比べて地味だった上海旅行博(上海WTF2014報告その1)http://inbound.exblog.jp/22687971/
※春秋旅行社のチラシに見る上海人の海外ツアーの中身(上海WTF2014報告その4)http://inbound.exblog.jp/22702574/
b0235153_1145462.jpg

b0235153_11451774.jpg

春秋グループでは、展示スペースの中央に旅行即売コーナーを置き、その周辺にビーチリゾート、クルーズ、春秋航空などの展示ブースを並べており、各ブースごとのイベントも次々繰り出されています。
b0235153_1145298.jpg

おふたりは春秋航空のスタッフです。
b0235153_11455320.jpg

同社の即売コーナーは、黄色いTシャツを着た数十人のスタッフを動員し、旅行エリア別に分かれて来場客相手に接客する光景は熱気に包まれていました。他社と比べても勢いが断然飛びぬけている印象です。
b0235153_11461541.jpg

b0235153_11463889.jpg

春秋グループは1981年創業の春秋旅行社を母体として、2004年春秋航空を設立。昨年9月、日本の国内LCCとして春秋航空日本を設立するなど、訪日旅行に積極的に取り組んでいることで知られています。今年3月には上海・関空線も就航。夏には関空線を大幅に拡大し、天津、重慶、武漢からの就航も予定されています。

中国・春秋航空、関空路線を大幅拡充(日本経済新聞2014年5月28日)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ280AR_Y4A520C1TJ2000/
春秋航空、関空拠点化へ-7月に武漢、天津、重慶線開設、上海線増便も(トラベルビジョン2014年5月28日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=61719


春秋航空の路線網(2014年5月1日現在)
b0235153_1148344.jpg

これをみるとわかるように、彼らは中国国内においては上海、瀋陽、石家庄の3拠点をハブと位置付けし、全国主要都市への路線網を拡げています。また国際線においても、ベトナムのダナン、マレーシアのコタ・キナバル、カンボジアのシェムリアップ(アンコール・ワット)、タイのバンコク、チェンマイ、プーケット、シンガポールなど東南アジアのレジャー路線を中心に、着々と新規路線を開拓しています。

しかし、注目すべきは、初の国際線就航地が2008年の茨城空港だったことも含め、日本市場への果敢な挑戦といえるでしょう。なにしろ最悪といわれる日中関係です。日系エアラインが中国線はビジネス路線のみに注力しているのに対し、LCCのビジネスモデルにふさわしく、高松や佐賀などの地方都市に路線を築いてきた彼らの取り組みはもっと評価すべきだと思います。
b0235153_1151289.jpg

春秋航空は積極的な広告戦略でも知られています。今回上海市内でもよく見かけましたが、地下鉄駅構内や車両の中に随時、新規就航路線を告知する広告を打ち出しています。近年、中国経済の減速が指摘されるように、去年くらいから数年前に比べ地下鉄構内の派手な広告が減ってきているなか、春秋航空だけはここぞとばかりの展開が見られました。
b0235153_11502263.jpg

b0235153_11503658.jpg

では、春秋グループは訪日旅行市場に対してどのような戦略を持っているのでしょうか。

5月12日、春秋旅行社本社で日本出境部経理の唐志亮氏に話を聞くことができたので、次回報告したいと思います。

※訪日路線の加速と国内線拡充で訪問地の分散化を図る(春秋旅行社日本部インタビュー)
http://inbound.exblog.jp/22743078/
[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-06-04 11:51 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 02月 19日

100年前(1913年)の訪日外客数は2万人、消費額は1300万円

いまでこそ「インバウンド」ということばや「訪日外国人の旺盛な消費への期待」から外客誘致に対する理解が広まってきましたが、歴史を振り返ると、日本の外客誘致はいまからちょうど100年前に始まっています。

それは、1912年3月に創立されたジャパン・ツーリスト・ビューロー(現在のJTBの前身)の活動によってスタートしました。今日の「観光立国」政策や外客誘致のためのプロモーション活動も、すでに戦前期にひな型があったのです。

では、戦前期の外客誘致とはどんなものだったのか。

それを知るうえで格好の資料となるのが、ジャパン・ツーリスト・ビューローが発行した「ツーリスト」(1913年6月創刊)です。JTBのグループサイトによると、同誌は当時の外国人案内所として国内外に次々と設立されたツーリストビューロー間の連絡を密にし、事業進展を図ることを目的として創刊された隔月刊の機関誌で、1943年まで発行されていました。

JTB100年のあゆみ
http://www.jtbcorp.jp/jp/100th/history/

そもそも100年前のジャパン・ツーリスト・ビューローは、今日の日本を代表する旅行会社のJTBとは創立の目的も実態もかなり異なるものでした。むしろ現在の日本政府観光局(JNTO)に近い存在でした。

「ツーリスト」創刊号(1913年6月刊)の巻頭には、「ジャパン、ツーリスト、ビューロー設立趣旨」なる以下の文章(一部抜粋)が寄せられています。
b0235153_1113479.jpg

「日本郵船会社、南満州鉄道会社、東洋汽船会社、帝国ホテル及我鉄道院の有志聯合の上『ツーリスト、ビューロー』を設立せんことを期し、諸君の御会合を請ひたるに、斯く多数其趣旨を賛成して、御参集を辱ふしたるは、我々発起人一同の感謝とするところである。抑も漫遊外客は、我日本の現状に照らし、各種の方面より大いにこれを勧誘奨励すべきは、今更贅言を要せない次第である、外債の金利支払及出入貿易の近況に対し、正貨出入の均衡を得せしめんが為め、外人の内地消費を多からしむるに努め、又内地の生産品を廣く外人の耳目に触れしめて、我輸出貿易を発達せんが為め、国家経済上の見地より、外国漫遊旅客の発達を促すは、刻下焦眉の急たること申す迄もなく、更に一方により考ふれば、東西交通の利便開け、東西両洋の接触日に頻繁を加ふるの際、我国情を洽く海外に紹介し、遠来の外客を好遇して国交の円満を期すべきは、国民外交上忽にすべからざる要点である。随って外客好遇の問題は、国家の重要なる問題であるが、尚我々交通業者、ホテル業者、外人関係商店等の従事者としては、如上の必要と共に、其業務の営利的感念よりするも、廣く遠来の珍客を好遇することは、一層の急を感ずるのである。然るに目下の状態を以てすれば、未だ我日本の風土事物を世界に紹介するの施設も全たからざれば、又一方に渡来の外客を好遇するの設備も乏しく、余は最近萬国鉄道会議に臨席せんが為め、我政府を代表して瑞西国に遊びたるが、彼国に於ける外客待遇設備の完備せるを見て、大に彼に学ぶこと多きを考へ、又帰朝後朝野各方面の人士よりも、此事業の必要なることを勧誘せらるるあり玆に於いて原総裁とも相談の上、今日諸君へ連名御案内したる在京有志と会合し、我々当業者進んで此任に当るの決心を以て、本会設立を申出たる次第である」。

ここには、今日の外客誘致の必要を提唱する基本的な考え方(「外人の内地消費」「内地の生産品を廣く外人の耳目に触れしめて、我輸出貿易を発達せんが為め」「遠来の外客を好遇して国交の円満を期す」など)とほぼ変わらない内容が書かれています。

さらに、ジャパン・ツーリスト・ビューローの事業として以下の点を挙げています。

「一、漫遊外人に関係ある当業者業務上の改良を図ると共に、相互営業上の連絡利便を増進すること。
 二、外国に我邦の風景事物を紹介し、且つ外人に対して旅行上必要なる各種の報道を与ふるの便を開くこと。
 三、我邦に於ける漫遊外人旅行上の便宜を増進し、且つ関係業者の弊風を矯正すること。
右三項の外、總て外客を我国に誘致し、是等外客に対し諸般の便利を図るため各種の事業を計画実行せんとするの希望である」

現在の日本政府観光局(JNTO)や観光庁がやっていることは、すでに100年前に企画され、実施されていた事業だったのです。

ところで、当時の訪日外客の規模はどのくらいのものだったのでしょうか。同誌の創刊を告げる「発刊之辭」でこう述べられています。

「想ふにツーリスト、ビューローの事業たる、欧米諸国にありては早く業に其必要を認め、今や各国其設備整はざるなしと雖も、本邦にありては其規模誠に小さく、世上一般は之に対して殆ど知るところないものの如し。然れども漫遊外客の来遊するもの年々二萬人内外を有し、其費す金額も一年大略一千三百萬圓を下らずと云ふに至りては、是を国家経済上より見るも亦決して軽々に看過すべからざる事實たらずんばあらず」。

100年前(1913年)の訪日外客数は2万人、消費額は1300万円でした。つまり、2013年に訪日外客数が1000万人を超えたということは、この100年で500倍になったということになります。

これから何回かに分けて「ツーリスト」の約30年の軌跡を追いながら、戦前期の外客誘致の姿について見ていきたいと思います。当時と現在では大きく違うこと(当時の外客は客船で来日。航空機時代を迎えた戦後の輸送量の飛躍的拡大)があるものの、基本的な誘致に対する考え方はそれほど違わないことがわかり、とても興味深いです。そこには、今日から見ても学べる多くの知見があります。

また最初にいってしまうと、1913年に始まった日本の外客誘致の努力に対して、その10年後、20年後を見る限り、戦前期における外客数の大きな増加は、結果として統計的には見られなかったという事実があります。いったいそれはなぜだったのか。これも検討してみようと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-02-19 11:15 | 歴史から学ぶインバウンド | Comments(0)
2014年 02月 07日

2013年 年末年始の海外旅行者数、円安でも過去最高(世界の旅行動向とインバウンドの関係)

旅行大手JTBの2013年12月4日のプレスリリースによると、2013年の年末年始(2013年12月23日~14年1月3日)の旅行動向調査の結果、海外旅行者数は前年比2.1%増の69万5000人、過去最高となる見通しだと伝えています。

その理由として「12月28日から1月5日まで11年ぶりの最大9連休、冬のボーナス増も旅行を後押し」と解説。海外旅行先としては「ヨーロッパ、アメリカ、ハワイの中長距離が増加傾向、アジアも韓国を除けば、引き続き高い人気を維持」とのこと。

同社のツアーブランド「ルックJTB 」の売れ筋コースは「ヨーロッパ方面ではイタリアやスペインが人気の他、オーロラを鑑賞するコース」「ハワイ方面では、年々オアフ島以外の島々で過ごす旅行者が増えており、年末年始をリゾートで静かに過ごしたり、ハワイらしい島々の魅力を味わいたい意向が強まっている」「東南アジアでは、マリーナ地区の人気で火が付いたシンガポール、座席供給数が増加傾向にあるインドネシアやベトナム、台湾などが人気。世界遺産の他に、高級リゾート地として最近注目を浴びているスリランカ、癒しやパワーも魅力の一つとされるネパールやブータンなども注目」といいます。

■年末年始海外旅行人気ランキング

1位 ハワイ
2位 台湾
3位 タイ
4位 シンガポール
5位 グアム
6位 ベトナム
7位 アメリカ(本土)
8位 イタリア
9位 香港
10位 フランス

JTBプレスリリース(2013年12月4日)
http://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00001&news_no=1780

とはいえ、2013年は円安が大きく進んだ年であり、海外旅行商品も為替の関係で値上げが起きています。

「海外旅行 10月から値上げ」(産経新聞2013年8月16日)では、「旅行大手各社が、平成25年度下期(10月~26年3月)の海外パック旅行の価格を相次ぎ引き上げる」と報じています。「外国為替市場で円安が進み、現地での宿泊代などが上昇したためで、前年同期に比べて最大10%程度値上げする」というのです。

確かに、「円相場は、安部晋三政権発足前の昨年11月中旬には1ドル=79円台だったが、今年5月下旬には一時1ドル=103円まで下落」したわけですから、「現地通貨建てのホテル代やレストラン代、バス代などの負担が増している」のは無理もないでしょう。

海外ツアー料金の値上げは円安ばかりが理由ではありません。

「海外ツアー 客室争奪戦 新興国から旅客増加」(日経MJ2013年9月18日)では、「円安という値上がり要因に加えて、新興国の消費者が海外をどんどん旅行するようになった結果、ホテルの仕入れコストがかつてないほどの上昇圧力にさらされている」ことも大きく影響しているからです。
b0235153_1824246.jpg

同紙によると、「国連の専門機関、世界観光機関によると、今年1~6月の世界の海外旅行者数は4億9400万人と前年同期比で5.2%増えた。地域別では世界全体の約半分を占める欧州が5.1%増とばったほか、アジア・太平洋が6.2%増と伸び率が最も高くなるなど世界的に旅行者数が拡大。こうしたなか、仕入れを巡る争いも世界規模で展開される」ためと解説しています。

日本人の海外旅行の動向は一見インバウンドには無関係のように思えますが、こうした世界の旅行市場の拡大が、海外ツアーの料金アップにつながるだけでなく、日本のインバウンド旅行市場の成長の背景にもなっていることを理解しなければなりません。要はインもアウトも連動しているのです。

同紙は、海外ツアー商品の2013年度下期(10月~14年3月)から14年度上期(4月~9月)にかけての価格動向の見通しとして以下のように予測しています。

●ヨーロッパ
2013年度下期(10月~14年3月) 3~8%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%未満UP
※ユーロ高や新興国からの旅行者が増加し、ホテルの仕入れ価格が上昇するため。

●アメリカ(本土)
2013年度下期(10月~14年3月) 8~10%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%未満UP
※円安が響くため。

●ハワイ
2013年度下期(10月~14年3月) 8%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%以上UP
※米国や中国からの旅行者が増加。ホテルが価格で強気になるため。

●アジア(中国、韓国を除く)
2013年度下期(10月~14年3月) 3%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%未満UP
※東南アジア内の旅行需要が拡大。ホテル価格が上昇のため。

●中国
2013年度下期(10月~14年3月) 3~5%UP
2014年度上期(4月~9月) 横ばい
※日本人旅行者減と他国からの旅行者増がほぼ相殺。

●韓国
2013年度下期(10月~14年3月) 10%DOWN
2014年度上期(4月~9月) 5%未満DOWN
※竹島問題を受けて、日本人旅行者が減少してホテル単価が下落傾向。

それにしても、これだけ料金がアップしているのに、今回の年末年始は過去最高の海外旅行者数となったのは、なぜだったのでしょうか。

前述のJTBプレスリリースは、2013年の海外と国内をあわせた総旅行消費額の回復を触れたうえで、以下のように指摘しています。

「総旅行消費額は、対前年比6.1%増、1兆1,055億円となり、5年ぶりに1兆1千億円を超えました。2008年のリーマンショック以前の水準にはまだ戻っていないものの、回復を見せていると言えます。

昨年以降の円安傾向や物価の上昇が旅行意欲を減退させる動きには、この年末年始に関しては直接繋がってはいないようです」。

つまり、「円安でも過去最高の理由」は、国内の「景気回復」ムードにあると素直に判断してよさそうです。でも、それは「この年末年始」に限っての話なのか。今年4月の消費増税後は、海外旅行マーケットにどんな影響が出てくるのでしょうか。

一般の消費財と違って旅行商品は、買いだめや駆け込み消費ができないのが特徴です。これまで見てきたように、日本の消費者はすでに昨年の時点で円安他の理由から今年4月の消費税率アップ以上の海外旅行商品の値上がりを経験しています。だとすれば、それほど大きな阻害要因にはならないとも考えられます。

海外旅行マーケットを考えるうえで、いわゆる金融資産1億円以上の富裕層と一般層の購買行動を分けて考える必要がありそうです。

「高額消費、主戦場は車・住宅 消費増税前、富裕層は株価と両にらみ」(日経消費インサイト2013年11月号)によると、2013年に富裕層が「購入・契約した高額の商品・サービス」(複数回答)のアンケートのトップは「海外旅行」(27.8%)。次いで「1人1泊3万円以上の国内旅行」(24.2% )。旅行マーケットにおける富裕層の存在感は大きいといえます。

同誌では、富裕層の購買行動にいちばん影響を与えるのは「株価」だと指摘しています。一般層が「給与・賞与」に影響されるのとは違うところです。これは、海外旅行マーケットが消費増税以上に株価の動きに影響されることを意味しているのかもしれません。

むしろ、昨今の新興国の金融不安に伴う日本株の変動は気がかりといえます。

ところで、年末年始の国内旅行の動向ですが、こちらも前年度比2.0%増の2983万人で過去最高だそうです。

連休が長いため、旅行日数は「二極化」傾向。「日並びの良さを利用した長期間の旅行を計画するタイプ」と「三が日前後に短期間の旅行をするタイプ」に分かれるそうです。

方面別では、「世界遺産に登録された富士山周辺への旅行者が増加」「観光列車が数多く走る九州」「LCCの就航で地方都市からの路線が増えた大阪」「東京ディズニーリゾートや東京駅舎周辺、東京スカイツリーなど東京周辺」が人気といいます。

年代別の出発日は「29歳以下の若い世代は早めに」「熟年世代は年明けに出発する」傾向が見られたようです。旅行の目的については、東日本大震災直後の2011年末や12年末に多かった「家族や友人と一緒に過ごす」「この時期しか一緒に旅行できない」の項目のポイントが減少し、「正月情緒を味わう」「おいしいものを食べる」といった項目が上昇したといいます。震災のショックから、家族や友人など大切な人間関係を重視する傾向が見られた昨年までの年末と比べ、今回はより通常型の旅行目的に回帰していると思われます。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-02-07 17:58 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)