ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 07月 06日

HISタイの訪日旅行の取り組みは要注目です

このところ、タイの訪日旅行マーケットについて取材しているのですが、いろいろ調べていると面白い動きを見せているのが、HISタイの取り組みです。
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HISタイ
http://www.his-bkk.com/th

タイ語が読めないので内容は詳細にはつかめないのですが、HPを見る限り、さすが日本の旅行会社だけに、多彩な日本ツアーが商品化されています。現地の旅行会社に比べて商品ラインナップが豊富であると同時に、驚くのはツアー価格の安さです。

たとえば、これはいわゆるキャンペーン料金の商品ですが、東京・大阪4泊6日で29999バーツ(約9万6000円)です。

SUPER SPECIAL TOUR OSAKA-TOKYO-B
http://www.his-bkk.com/th/pdf/ProgramSuperSpecialOsa-Tyo6D4N-A.pdf

大阪から東京までを4泊5日でバス旅行するゴールデンルートの商品ですが、今回調べたタイの旅行会社の平均的なツアー価格に比べると2万バーツ(約6万3000円)近く安そうです。

そのぶん宿泊ホテルをみると、中国人の日本ツアーでよく使われる新宿ニューシティホテル(同等)利用です。このホテルは、新宿中央公園の裏にあり、シャトルバスで新宿駅とつないでいますが、買い物や散策の便はいいとはいえません。つまり、他社のツアーに比べると、低価格のホテルを利用することなどを通してツアー代金を下げていると思われます。

HISはタイで訪日ツアーの価格破壊をやっているということでしょうか?

必ずしもそうとはいえません。なぜなら、HISタイは個人旅行者(FIT)への取り組みを積極的に行っているからです。たとえば、日本の旅行会社の強みを活かして、国内でのさまざまな外国人向けオプショナルツアーやレイルパスなどを販売しています。いまやタイはビザ免除された国ですから、今後は航空券とホテルの予約だけで来日する旅行者は増えるでしょう。観光バスやガイドに頼ることなく、片言の英語しかできなくてもいいから安く日本に行ってみたいという若い世代や、商談や視察に行きたいと考えていたものの、これまで手続きが面倒で訪日のチャンスの少なかったビジネスマンらをターゲットにしていると思われます。

さらに、HISが設立した新航空会社「アジア アトランティック エアラインズ(AAA)」が7月下旬から9月下旬にかけて成田・関空とバンコクをつなぐチャーター便のフライトを始めます。同エアラインはいわゆる国際チャーター航空会社で、旅行需要のピークである夏休みに合わせた期間限定のフライトとなります。これもFIT向けの取り組みともいえますが、当然のように、AAAを利用した航空券とホテルだけのスケルトン型のフリーツアー商品も販売しています。その価格は、3泊5日でなんと2万バーツ相当というものです。

アジア アトランティック エアラインズ(AAA)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=57886

AAA利用の訪日格安ツアー
http://www.his-bkk.com/th/FIT_Tour/fit_package_japan.php

こうした取り組みは、1980年代に創業したHISが、日本のアウトバウンドに個人旅行のブームを巻き起こしたビジネスモデルを、そのままタイのアウトバウンドに持ち込んだものといえるでしょう。もちろん、いまはチャーター便を飛ばすにしても、タイと日本の両方から客を運べるわけで、まさにツーウェイツーリズム時代のビジネスといえます。

HISは2013年1月現在、世界46カ国・地域101都市138の支店を有しており、今後は日本での売上よりも海外での売上比率が大きくなることを見越して、積極的に海外展開してきました。その基幹支店のひとつがバンコクなのです。

HISタイの動向について、都内の旅行会社に勤めるタイ人のカウィワットさんに感想を求めてみたところ、彼はこんな風に話してくれました。

「HISのツアーは確かに安いですね。これなら予算が少ないお客さんでも日本に来られると思います。ビザも免除されていますし、これからますますターゲットが拡がっていきますね。

HISに限らず、タイの旅行会社はターゲットを分けて商品を造成しています。お客さんをABCのランクで分けるとしたら、HISはCランクのお客さんをターゲットにしようとしているかもしれないですね。Cランクというのは、学生や入社したばかりの若い会社員などです。

ツアー料金は、コースの内容や自由行動の時間、食事回数、ホテルのランクで決まります。若い人たちは内容やホテルのランクをそんなに気にしないので、安さは大きな魅力です。

その一方で、World Surprise Travelというタイの旅行会社はAランクのお客さんをターゲットにしているそうです。

World Surprise Travel
http://www.worldsurprise.com

この会社のツアーに参加すると、お客さんは空港や移動などで、自分のスーツケースを運ぶ必要がなく、ポーターが付くそうです。HPを見ると、北海道7日9日ツアーが113,900バーツ(約36万5000円)というデラックスなツアーもあります。同社のHPでは美しい海外の写真や動画を豊富に使っていて、見ているだけでも面白いです」

この旅行会社のHPを見ると、高額ツアーもある一方で、東京2泊4日15900バーツという航空券とホテルだけのスケルトン型商品もありました(ちなみに宿泊ホテルは池袋のメトロポリタンホテル)。

どうやら当初想像した以上に、タイでは訪日ツアーのバリエーションが豊かになりつつあるといえそうです。HISについては、後日あらためて正式に取材をするつもりです。

※その後の取材については以下参照。
HISバンコク中村謙志統括支店長に聞く「旅行業グローバル戦略の最前線がバンコクである理由」
http://inbound.exblog.jp/21753599/
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by sanyo-kansatu | 2013-07-06 18:47 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 06月 10日

今年の夏、日本はアジア客でにぎわいそうです(「社団法人AISO第1回総会」報告)

6月6日、JA大手町カンファレンスで一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の第1回総会が開催されました。AISOは、訪日外客の4分の3を占めるアジアからの観光客の手配を担当するツアーオペレーター(ランドオペレーター)を中心に、ホテルやアミューズメント施設などの各種サプライヤー、自治体などを会員として構成される組織です。
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一般社団法人アジアインバウンド観光振興会 http://shadanaiso.net/

総会終了後 「アジアインバウンドの最新動向」というテーマで各エリアのツアオペ担当者による報告がありました。今年の夏は訪日アジア客で活況を呈することになりそうです。

■「中国プライス」広まりへの危惧

まず、常務理事の株式会社トライアングルの河村弘之社長による全体挨拶からです。

河村氏は、日本旅行業協会(JATA)が今年3月に発表した「ツアーオペレーター品質認証制度」について話を始めました。

ツアーオペレーター品質認証制度 http://www.tour-quality.jp/

この制度が発足した背景には以下の状況認識があります。

「昨今ツアーオペレーター業者間で価格競争が激化し、その結果価格重視で低品質のツアーが数多く見受けられるようになり、また消費者保護、コンプライアンスなどを軽視する業者も散見されます。同制度の導入により、訪日旅行者が安全、安心で良質な旅行を楽しんでいただき、認証された事業者は顧客からの支持・信頼を得やすくなる効果を期待しています」(JATAニュースリリース2013年2月27日より)

6月3日、JATAは同制度の第1期認証23社を発表しています。今後年に2回認証申請を受け付けるとのことです。

第1期認証23社 http://www.tour-quality.jp/list/index.html

業界大手が並ぶ第1期の23社についてはともかく、河村氏はようやく業界としてツアオペの認証制度が開始されたことは評価すべきだといいます。中小企業の集まりであるAISOとしては、今後認証を得やすくなることを期待し、団結してセールスしようと呼びかけました。なぜなら、インバウンドにおいて本当のライバルは他国の業者だから、です。

最近「中国プライス」と呼ばれる訪日旅行の低価格化を、中国の旅行業者が東南アジア市場に持ち込もうとしていることに、河村氏は大いに危惧しているという話が気になりました。この点については、あらためて確認したいと思います。

■中国マーケットの二極化への対応

次は、中国本土市場でビジネスを展開している株式会社ジェイテックの石井一夫常務理事の報告です。

JNTOの統計によると、2013年4月の訪日外客数で唯一中国だけが前年度比33%減となっています。しかし、6月に入り、地域的にバラつきはあるとはいえ、中国客は戻りつつあるといいます。政治の中心、北京はまだ芳しくないものの、上海や広東では夏のツアー募集状況はいいようで、今年の夏は期待していいそうです。

ただし、中国のマーケットはすでに二極化していることを認識すべきだと石井理事は指摘します。確かに中国市場はパイが大きいけれど、どういう層のお客さまを取り込むかについては、よく考える必要があるというのです。やみくもに数だけ追っても、低価格化の圧力にさらされるだけだからです。その意味で、我々は試されている、といいます。

■年間訪日客250万人のお隣の国、韓国

韓国市場についての報告は(株)四季の旅の鄭眞旭社長です。日本の旅行大手のインバウンド事業会社で経験をつみ、2010年11月北海道で創業した同社は、いきなり東日本大震災に見舞われ、苦労したそうです。しかも、震災の影響が過ぎ去ったかと思うと、今度は日韓関係の悪化で韓国客はさらに激減しました。

それでも、韓国は年間訪日客250万人のお隣の国です。鄭社長はそう会員に呼びかけます。

今年に入って、円安の影響もあり、徐々に韓国客が戻ってきたそうです。JNTOの統計でも、4月は前年度比33.7%増となっています。

■訪日客は急増しているが、新興市場のタイには問題も

タイ市場の報告は、株式会社アサヒホリディサービスの和田敏男国際旅行部長です。

和田氏によると、今年の東南アジア市場における同社の取り扱いは、シンガポールが低迷、タイ、インドネシアは80%増と明暗がはっきり分かれるそうです。タイ市場急増の背景としては、中間層が増えてきたこと。タイ航空が訪日旅行に前向きで、驚くようなキャンペーン料金を打ち出したことも大きいそうです。もちろん、円安効果が絶大といえます。

タイ、マレーシアなど一部の東南アジア諸国に対する昨年6月の数次ビザ発給に続き、今年夏さらなるビザ発給要件の緩和が見込まれ、東南アジアの訪日客は激増することは必至。この夏、都内のホテルは“ひっちゃかめっちゃか”になりそうとも。

というのも、タイの観光行政はルールがあいまいで、ルート変更やキャンセルも多く、現地の旅行業界のスタッフもアウトバウンド客の取り扱いに慣れていないため、現場が混乱するケースが多いからだといいます。来日途中でのルートやホテル、食事の変更などが多発しているそうです。

それでも、タイには日本企業の工場も多く、社員の研修旅行などインセンティブツアーの需要も大きいこと。若い世代がアニメフェアやゲームショーといった文化的なイベントに合わせたツアー企画に対して食いつきがよく、企画次第で今後さまざまな可能性のある市場であることは確かだといいます。

■マレーシアでもインセンティブが動き出した

マレーシアとインドネシア市場については、AISCのミッキー・ガン氏が報告します。

4月の統計では、マレーシアは前年度比20.1%増、インドネシアは前年度比61.3%増。

「やっとこういう時代になってきた」と喜びの声を上げるミッキー・ガン氏ですが、その理由は「国によってインバウンドの中身は違うということに、ようやく多くの人が気づいてくれるようになったこと」だといいます。

マレーシアでもインセンティブツアーが動き出しているそうです。背景には自治体の誘致活動の成果があるといいます。

■香港市場は新しい企画さえあれば売れる!

最後に、AISO理事長の王一仁日本ワールドエンタ-プライズ株式会社社長が、香港市場を中心に報告しました。
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王氏はまずJNTOの4月の統計を読み上げます。「香港前年度比24.3%アップ、台湾前年度比42.5%アップ、フィリピン前年度比16.6%アップ、韓国前年度比33.7%アップ……」

JNTO2013年4月訪日外客数 http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/130522_monthly.pdf

そして、「今年に入り、アジアインバウンドは絶好調です」。

なかでも香港市場は75%が個人旅行(FIT)。2年前、香港にセールスに言っても「日本は本当に安全なのか?」。そればかり聞かれましたが、今年は「新しい企画を持ってきてくれ。企画さえ新しければ売れる」と言われるそうです。なぜって、中国は空気が悪いし、鶏インフルがこわい。韓国は北朝鮮問題がある。香港人は日本に行きたいのです、とのこと。

最近、同社にはフィリピンからの問い合わせも増えているそうです。東京を中心にした魅力的なオプショナルコースの開発が求められているといいます。

問題は、土曜日のホテルの確保だそうです。週末は都内のホテルの日本人利用率が高いため、なるべく土曜日は東京を外した日程を組まなければならなくなるからです。

最後に、王理事長は今回の報告をこう総括しました。「アジア客に対しても中身で売る時代がついにやってきました。東京を中心にこれまでアジア客が利用してこなかったようなホテルやテーマパーク、アトラクションなどを組み合わせた多彩な周遊コースを提案していただきたい。我々がそれをアジアマーケットにセールスします」。
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※今年の夏、アジアインバウンドは盛り上がりそうです。中国市場も回復するとすれば、なおさらです。ただし、それぞれのエリアの報告者たちが語る国・地域による市場の成熟度の違い、また同じ国・地域においての市場の二極化の諸相をきちんと見極め、自分はどの層を取り込みたいのか、どこにアプローチしていくべきか、その判断が問われる時代になりそうです。
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by sanyo-kansatu | 2013-06-10 15:02 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 30日

中国の海外不動産投資ブームをいかにビジネスチャンスとするべきか(COTTM2013報告 その5)

COTTM2013で開催されたフォーラムの最後のテーマは、「中国の旅行業界は海外不動産投資ブームをいかにビジネスチャンスとするか」というものでした。
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こういうストレートなテーマをビジネスフォーラムで討議するというのは、日本の旅行業界ではあまり考えられない気がします。個人投資家を集めた海外不動産投資セミナーを企画するのは異業種の領域だと信じられているからでしょう。日本の旅行業界人の多くは、消費者とともに一途に “旅のロマン”を追い求めることが業界としての使命なのだという自画像を好んでいるように見えます。

これは別に皮肉ではなく、実は中国の旅行業界の人たちも同じなのです。今回B2Bの商談会であるCOTTMの展示会場で見かけた中国の旅行業界人の顔だちを見ていると、これは直感的な言い方にすぎませんが、日本の旅行業界人と同じ人種だと思ったのです。そうそう、こういう顔だちの人、ファッションセンスの人、日本にもいるいる。たとえていえば、育ちがよくて、子供のころから両親に連れられ海外に出かける機会に恵まれ、留学もしたから英語もそこそこじゃべれるのだけど、バリバリビジネスをやる気もないので、つい知り合いのつてで海外の観光局で働くことになった……というようなタイプとでもいいましょうか。中国の対外開放の歴史は30年ですから、日本に比べると、その種のタイプが業界に集まる傾向はより強いといえるのかもしれません。ある意味、“中国人”離れしたタイプ、香港や東南アジアの華僑の資産家の子弟に近い感じといえばおわかりになるかもしれません。

もっとも、その種のタイプが多い業界といえども、ここは中国。“旅のロマン”だけを追いかけても生き延びてはいけない世界です。しかも、これまで述べてきたとおり、「新型旅客」の登場で、従来型のビジネスモデルでは立ち行かなくなりつつある。そんなこの国の業界人にとって“福音”となるのが、中国人の海外不動産投資家のニーズに業界としていかに貢献できるか、という話だというわけです。
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登壇したのは、司会進行のProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt、CBN China Business Network(中国商務集団)総裁のDr.Adam Wu,Coo、そしてスペインのカナリア諸島で一戸建てヴィラなどの不動産販売を手がけるM&S Fred Olsen SAのCamilla von Guggenbergさんです。

CBN China Business Network(中国商務集団)
http://www.chinabn.org/

M&S Fred Olsen SA
http://fis.com/fis/companies/details.asp?l=e&filterby=companies&=&country_id=&page=1&company_id=11802

まず、おなじみProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt(以下、教授)による趣旨説明から始まりました。なぜ中国の旅行業界は海外不動産投資ビジネスに関心を持つべきなのか、という話です。

教授はこんな話から始めます。先月(2012年3月)、ヨーロッパの主要な都市のいくつかの商工会議所で中国人観光客をテーマとしたワークショップが開かれたそうです。そこでは、いかに中国人観光客を呼び込み、ショッピングをしてもらうか。さらには、中国の投資家にどのようにプロモーションしていくべきか、といった内容が話し合われたといいます。それだけヨーロッパ諸国では、中国の観光客の来訪を歓待しているというメッセージが告げられます。

この話を聞きながら、ぼくは2008~10年頃の日本を思い出していました。その頃、日本ではいまのヨーロッパのような機運が盛り上がっていたからです。この約4年のタイムラグは、ヨーロッパ諸国が中国人団体観光ビザ(ADSビザ)の解禁を日本(2000年)に遅れること、2004年に実施したことを思うと、なるほどという感じもします。

次に、教授は中国の富裕層(high net worth individuals)の海外志向性について触れます。すなはち、1000万人民元以上の個人資産を持つ中国人富裕層の44%は、移住を考えていること。さらに85%が子弟の海外留学を計画している、と指摘します。
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そして、中国経済の成長は近年鈍化しているものの、海外旅行は依然拡大基調にあることが説明されます。なんだかバブルが崩壊した1990年代以降も、海外旅行市場が拡大し続けた日本と似ていますね。
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いよいよ本題です。中国の旅行業界は、なぜ海外不動産投資ブームをビジネスチャンスとみなすべきなのか。その理由は、ひとことでいえば、業界として顧客のニーズに応えるべきだから、というものです。わかりやすいですね。

教授は説明を続けます。

中国の個人投資家にとって、海外旅行は休暇や買い物を楽しむだけでなく、投資の機会と結びつけて考えられているのがふつうである。彼らは海外の高級な宿泊施設やサービスを体験するだけでなく、投資の機会を狙っている。なぜなら、中国の富裕層は、欧米と違ってすべて自らが起業した第一世代。海外の不動産投資情報についても、代理人に委託するよりも、自分の目で見極め考えるタイプが多い。それが中国の企業家の特性である。

彼らのサポートをするのが旅行業界の役割で、これはビジネスの好機といえる。中国の投資会社も、顧客のために海外の正確な投資情報を入手したいので、海外の事情に通じた旅行業界と協力したいと考えている。近年、中国でも投資家を集めた会員制クラブがいくつもできており、今後彼らを世界に案内する機会は増えるだろう。

実をいえば、中国の不動産投資ブームはいまに始まったものではありません。一般に「旅游地产(Tourism real estate)」と呼ばれ、1990年代にはすでに海南島や広東省などでリゾートホテル開発として進められていました。その動きが進化していくのが2000年代以降です。単なるホテルではなく、一戸建ての別荘やゴルフ場などがまずは国内各地に開発され、2007年のリーマンショック以降、海外に触手が伸びていったのです。

ですから、その動きに旅行業界も貢献するべくビジネスチャンスとしようという話は、ある意味、ごく自然な流れといえるのです。

さて、教授の講釈が終わると、座談会に移りました。登壇者のひとり、Camilla von Guggenbergさんは、欧米の観光客でにぎわうスペインのカナリア諸島でヴィラの投資を呼びかけるため、中国に来たといいます。一方、CBN China Business Network(中国商務集団)総裁のDr.Adam Wu,Cooは、いかにも1980年代早期の海外留学組といった感じの人物で、中国の旅行関係者に向かって投資ビジネスに関心を持つよう語りかけます。

これは日本でもそうですが、中国の大手旅行会社などは、これまで自ら投資して、国内に多数のホテル物件を開発し、運営してきました。しかし、ここで話題となっているのは、自らオーナーとなることではなく、富裕層の海外投資のサポート役となることが、新しいビジネスの可能性なのだということです。薄利多売で大量送客するだけの団体ツアービジネスでは、今後生き延びることは難しいため、富裕層を対象にビジネスを再構築しようという話ですから、それはそれで理にかなっているとは思います。さて、観衆の反応はどうだったでしょうか。

質疑応答の時間はたっぷり用意されていました。この種のイベントでは、中国の人たちは旺盛な好奇心と物怖じしない性格で、どんどん質問が出てくるというのが一般的な光景ですが、さすがに今回ばかりは挙手する人がなかなか出てきません。

そんな息苦しい雰囲気を気にしてか、ある女性が思い立って挙手しました。質問の内容は、Camilla von Guggenbergさんが紹介したヴィラ物件の広さと価格を問うものでした。いきなりカナリア諸島のヴィラに投資しませんか、と言われても、「それっておいくらくらいするものですか?」と聞くのがせいぜいというものでしょう。
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その質疑応答が無事すんで、その場もなんとなくホッとしていたところに、突然後ろの席のほうからひとりの男性が立ち上がりました。ちょっと聞き取りにくい英語でしたが、要するに、「カナリア諸島のヴィラにどれだけの投資価値があるのか。もっと詳しく説明しろ」という、かなり詰問調の質問でした。

おそらく彼は本気でその質問をしているのではなかったと思います。むしろ、そんな誰も知らない海の向こうの投資話をここですることに、どんな意味があるのか。もっと現実的で、業界のビジネスに直結する話をするべきではないか、というワークショップの主催者に対する異議申し立てのように感じました。その気持ち、わかりますよね。なぜなら、観衆としてここにいるのは、投資家の人たちではないからです。

こうして最後はちょっと気まずい雰囲気のまま、「詳しい物件の話は、あとで個人的にご質問ください」という教授のことばで締めくくられたという次第ですが、いかにもいまどきの中国らしい光景だと思いました。

中国で不動産投資を目的に海外に出かけようと考えている個人投資家はずいぶんいると考えられます。実際、彼らは日本にもやって来ています。

最近では、中国の投資家もただ海外の物件を購入し、資産価値を担保したうえで、家賃収入で儲けようという従来通りのタイプだけではなく、中国にはまだないさまざまな優良施設の運営ノウハウを取り入れ、自国で投資したいというニーズもあるようです。

彼らの存在をどう扱うかという話は、実のところ、我々にとっても新しいインバウンドビジネスの可能性のひとつとして、決して遠い話とは言えないのです。
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by sanyo-kansatu | 2013-05-30 11:44 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 26日

中国の旅行業界に貢献したツーリズム大賞2013受賞者の顔ぶれから見えること(COTTM2013報告 その3)

この種の展示商談会には、この1年業界に貢献した企業・団体へのツーリズム大賞の授賞式がつきものです。COTTM2013(中国出境旅游交易会)では、どんな人たちが受賞したのでしょうか。

授賞式のプレゼンターは、ここでもCOTRI(中国出境旅游研究所)の代表のProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt氏です。

以下、「マーケティング部門」「プロダクト・イノベーション部門」「インターネット部門」「サービス・クオリティ部門」「総合」の5つの部門の受賞者たちの顔ぶれを簡単に紹介しましょう。

COTTM2013 Award
http://www.china-outbound.com/fileadmin/template/pdf/Press_releases/2013/COTRIPress_ReleaseApril162013.pdf

●マーケティング部門
金賞 National Tourism Organisation of Serbia (NTOS) & National Tourism Organisation of Montenegro (NTOMNE) (Serbia & Montenegro)
http://www.serbia.travel/
http://www.visit-montenegro.com/
銀賞 Nicholas Publishing International (United Arab Emirates) http://www.npimedia.com/
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銅賞 Transaero Airlines(Russia) http://www.transaero.com/

●プロダクト・イノベーション部門
金賞 Travel Trade China(UK) http://www.traveltradechina.com/
銀賞 Fundatia Euro-Asia Promotion and Cultural Fundation (Romania)  http://culture360.org/members/euroasia/
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銅賞 Sun International (South Africa)   http://www.suninternational.com/
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●インターネット部門
金賞 Shanghai QinLu Electrical Technology Co., Ltd. & Xi'an HuaFan Instruments Co., Ltd. (China)  
http://www.shqinlu.com/
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銀賞 Tahiti Tourisme (Tahiti)    http://www.tahiti-tourisme.cn/
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銅賞 Central Hall Westminster (UK)

●サービス・クオリティ部門
金賞 Alila Hotels and Resorts (Bali, Indonesia)   http://www.alilahotels.com/
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銀賞 Abel Tasman Sea Shuttle (New Zealand)   http://www.abeltasmanseashuttles.co.nz/
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銅賞 The River Lee Hotel (Ireland)   http://cn.doylecollection.com/
銅賞 Himalayan Kingdom tours (Bhutan)   http://www.nepal-uncovered.com/tours/bhutan/bhkt.php
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●総合
金賞 Voortrekker Monument & Nature Reserve (South Africa)   http://www.voortrekkermon.org.za/
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銀賞 El Corte Inglés (Spain)    http://www.elcorteingles.es/
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銅賞 Uniline Croatia (Croatia)   http://www.uniline.hr/hrvatska/
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ぼくは一連の受賞風景を会場でずっと眺めていたのですが、受賞者たちは登壇しても短い挨拶程度のスピーチしかなかったこともあり、それぞれの受賞理由についてはあまりよくわかりませんでした。それでも、アフリカや東ヨーロッパなど、海外旅行先としてはまだ珍しいであろう国々の観光局や旅行会社などが多く受賞していることに、ちょっと驚きました。

こういう雰囲気は、旅行業界が次々と新しいディスティネーションを追い求めていた日本の1980年代~90年の感じに似ていると思いました。まだ誰も知らない、行ったことのない大陸や辺境へと勇んで出かけていこうとしている時代に、中国が向かおうとしていることを実感します。

マーケティング部門やインターネット部門の受賞者を選んでいることも興味深く思いました。中国の海外旅行マーケットでいま何が起きているかを知るには、これらの受賞者たちがどんな理由で評価されたかについて、もう少し調べてみる必要があるかもしれません。

ところで、JATA旅博でも「ツーリズム大賞」と称して、海外の旅行関係者の中から日本の海外旅行マーケットの促進に貢献した企業・団体を表彰しています。

JATA Tourism Awards(ツーリズム大賞)
http://www.jata-net.or.jp/tourism_awards/awards_record.html

ちなみに、2012年の受賞者は以下のとおりです。

●観光局部門 
台湾観光協会 
http://www.go-taiwan.net/
メルコスール観光局 ※南米4カ国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)の共同の観光局
http://www.mercosur.jp/

●特別賞
フィンエアー(フィンランド航空)
http://www.finnair.com/JP/JP/japan

●パブリシティ部門
日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」

受賞理由は話題性という意味でなんとなくわかる気はするのですが、サプライズはあまり感じられません。これが市場の成熟化というものかもしれませんが、少なくともいまの中国には海外旅行に対する熱気や期待が日本以上に感じられるのは確かです。
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by sanyo-kansatu | 2013-05-26 23:42 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 03月 25日

東京国際アニメフェア2013に行ってきました

東京国際アニメフェア2013に行ってきました。毎年時間を見つけて足を運んでいるのですが、今年は例年に比べ出展ブースが少ない印象でした。去年まで多数出展していた中国のアニメ制作会社のブースがなかったことも影響しているかもしれません。ビジネスデーの2日目(3/22)の午前中ということで、会場は少し閑散としていましたが、目についたのは外国人で、商談以外にも若い人たちがたくさんいて、楽しそうに回遊していました。

東京国際アニメフェア2013 http://www.tokyoanime.jp/ja/

個人的には、「テレビアニメ50年の軌跡」という展示コーナーが面白かったです。1963年以降のテレビアニメを年代別に書き出して、当時のキャラクター商品をちょろっと展示しているだけのブースなのですが、1970年代に少年期を過ごした世代としては懐かしかったです。なにしろぼくは「鉄腕アトム」の放映された年に生まれた人間なのですから(まいっちゃいますね)。
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「Tokyo Otaku Mode」というブースも目を引きました。海外アニメビジネスの可能性を探るシンポジウムもあるようでした。
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報道によると、東京国際アニメフェア実行委員会の発表する来場者数は、21日、22日のビジネスデーは伸び悩んだものの、パブリックデーで大きく取り返し、昨年大幅に減少した9万8923人(前年比24.5%減)から当初目標の10万人を超えたそうです。

ビジネスデーは、ビジネス関係者と学生のみを対象としている日ですが、やはり今年は少し元気がなかったのですね。対してパブリックデーは、子供や家族、アニメファンのための日で、『ドラえもん』や『名探偵コナン』「プリキュアシリーズ」などの人気作品が動員の牽引力になったようです。

ぼくはアニメ業界の人間ではないので、一般の来場者とはそもそも観点が違うのかもしれませんが、たまたま会場で「アニメと、メディア・商業・観光の世界展開」(第1期の成果と第2期展開への期待を背景に、アニメ&キャラクターコンテンツの、国際的な放送やオンライン・モバイルのメディア展開によって生み出される二次利用商品や観光などグローバルな波及効果について、メディア、商業、観光の立場の方とアニメ製作者が語り合う)というパネルディスカッションをやっていたので、途中からでしたが話を聞くことにしました。
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出版社や通信会社、ショッピングモールの関係者などと並び、JTBコーポレートセールス事業開発部 地域×メディアマーケティング室の古関和典室長という方も登壇者のひとりで、アニメの「聖地」巡礼で観光を盛り上げようという話をされていました。
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旅行会社として、いかに地域やメディアと関わり、アニメのコンテンツを活用した観光誘致や地域振興を行うかという話です。大ヒットした映画『テルマエ・ロマエ』と全国の温泉地を結びつけた特集企画を旅情報誌の「るるぶ」で展開したことや、中国人観光客向けに、昨年上海でアニメ「聖地」巡礼をアピールするイベントをした報告もありました。ただし、日中関係の悪化で、ツアーの催行には至ってないそうです。
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ぼくも2年ほど前、北京の大学の日本語学科卒業生のみなさん相手に、同じような話(アニメ王国ニッポンを旅しよう!)をしたことがありますけど、この手のイベント、その場はそれなりに盛り上がるのですが、だからといって日本に旅行に行こう、という動きにはすぐにはつながるものでもないようです。

ちょっと面白かったのは、日本動画協会の松本悟さんという方が、アニメに出てくる食事シーンを観光プロモーションに結び付けようという話をされていたことです。ご当地アニメをつくって、登場人物たちに地元料理を食べさせることで、視聴者にも食べてみたい、行ってみたいという気にさせるということでしょうか。

最近、地方を舞台にしたアニメ作品が増えているのは、製作者側が地域と連動した動きを始めているからでしょう。確かに、自分の街が作品の舞台になるのって、ちょっと楽しいことかもしれません。

実際、今回の出展者には、自治体もいくつかありました。個人的にたまたま縁があったのは、埼玉県羽生市です。ある大学の学生さんと一緒に羽生のまち歩きマップの制作をしたことがあるのですが、なんでも昨年11月、「ゆるキャラさみっとin羽生」というイベントがあって、全国のゆるキャラのコンテストをやったんだそうです。
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ちなみに羽生には「ムジナもん」と「いがまんちゃん」というゆるキャラがいます。よその土地の人にはなんだかよくわからないと思うのですが、「ゆるキャラさみっとin羽生」のパンフレットをみると、全国265のゆるキャラが勢ぞろいしたそうです。こういう最近のブームって悪ノリすぎではないのか、そもそも地元のアピール効果が本当にあるのか疑問ですが、なんだか世の中すごいことになっているなと思ってしまいました。
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もうひとつが「まんが王国とっとり」のブースです。昨年世界マンガサミットをやったばかりですが、どうやら鳥取県では本気でマンガを地元の産業振興につなげていきたいと考えているようです。

鳥取県は、水木しげる、「名探偵コナン」の青山剛昌、谷口ジローという3人の日本のマンガ界を代表する作家を輩出しています。ただ中国の例をここに持ち出すのもどうかと思いますけど、お役所主導の文化産業振興はなかなかうまくいかないものです。応援したい気持ちはあるのですが、いったいどう進めていくのか。注目していきたいと思っています。

最後に会場で見かけた中国人関係者たち。視察という名目で来場しているのだと思われますが、みなさんそれほどアニメに関心があるようには見えないところが不思議というか。今年から一斉に消えた中国関連ブースも尖閣の影響なのかよくわかりませんが、会場には他にもたくさんの外国人がいるなか、ちょっと異質な存在感を見せているグループでした。
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by sanyo-kansatu | 2013-03-25 11:41 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2013年 03月 23日

北朝鮮観光25年を振り返る

日本人の北朝鮮観光は1987年に始まっています。以後、一進一退を繰り返してきました。

以下、北朝鮮観光の25年間のプロセスを書き出してみました。この貴重な年表を作成してくださったのは、北朝鮮観光に長く携わってこられた知り合いの旅行関係者の方です。単なる観光関連の出来事だけでなく、観光にさまざまな影響を与えたと思われる政治的な事件や関係国の動向も触れられており、業界のプロとしての知見が込められています。

それにしてもこうしてみると、北朝鮮の対外政策は、ある時期開放に向けた柔軟な姿勢を見せたかと思えば、急に手のひらを返したように強硬に転じてくるというサイクルを繰り返してきたことがわかります。

興味深いのは、北朝鮮は2000年代に入り、ヨーロッパ諸国と次々に国交を樹立していることです。北東アジアから遠く離れたヨーロッパでは安全保障上の懸念がないということなのでしょうが、年間数千人のヨーロッパ人観光客が北朝鮮を訪問していることは、我々も知っておいてよいかもしれません。我々とは異なる北朝鮮観というものが国際社会には存在することを理解する必要もあると思うのです。

ほかにもいくつかのことが読み取れそうですが、それは今後の課題とさせてください。

1987年
6月 北朝鮮が同年10月からの一般の日本人観光客受け入れを発表(6/12)
9月 北朝鮮国家観光総局は国連世界観光機関(UNWTO)に加盟
10月 日本人観光団初の北朝鮮観光12月まで9グループ130名,北京経由で訪朝日本の中堅旅行会社8社が北朝鮮観光に取り組む(日中旅行社,日中平和観光,日中国際旅行社,エントク・エンタープライズ社,阪急旅行社,日中旅行開発,関西国際旅行社,幹事:中外旅行社)
11月 大韓航空機爆破事件。日本人観光客受け入れ停止

1988年
1月 外務省,北朝鮮「渡航自粛」勧告
   米国,北朝鮮を「テロ支援国家」と認定して対北朝鮮制裁措置を発表
2月 日本人観光団受け入れ中止
   盧泰愚13代大統領就任
9月 ソウルオリンピック開催(9/17~10/2)。北朝鮮不参加
   韓国,貿易高1000億ドル突破し世界十大貿易圏の仲間入り
   朝鮮王朝最後の皇太子妃李方子死去

1989年
1月 鄭周永現代グループ名誉会長訪朝(1/23)
 北朝鮮労働党代表団訪日
6月 中国天安門事件(6/4)
7月 第13回世界青年学生大会平壌開幕。日本人観光団受け入れ再開
   中外旅行社,北朝鮮観光業務開始(7/21)
9月 北朝鮮建国40周年報告大会開催。130ヶ国から320名の代表団参加。
11月「ベルリンの壁」崩壊(11/9)
12月 米ソ首脳会談(マルタ島)冷戦終結(12/2)
   中外旅行社,北朝鮮観光業務中断(パチンコ疑惑,米韓合同軍事演習)

1990年
3月 中国国家主席,江沢民首席訪朝
5月 盧大統領訪日(5/24)
8月 イラク軍,クウェート侵攻,制圧(8/2)
9月 金丸元副総理,田辺社会党副委員長を代表とする代表団が訪朝し,早期国交樹立のための共同宣言に調印(9/24~28)
   韓国とソ連国交樹立(9/30)
10月 平壌での朝鮮労働党結党45周年式典に小沢自民党幹事長,土井社会党委員長らが出席し,金日成主席と会談
    東西ドイツ統一
12月 衛星通信回線を利用した国際電話サービスが始まり,直接国際電話が可能に
    韓国の首脳として史上はじめてソ連訪問(盧泰愚大統領)

1991年
1月 湾岸戦争始まる(1/17)
   日朝国交正常化交渉開始(日朝政府本会談)「わが国の朝鮮半島政策について」発表。「過去について深い反省と遺憾の意を表明」(1/20)
4月 日本国一般旅券の「北朝鮮を除く」渡航制限条項削除
5月 運輸省よりチャーター便の航空路線新設許可受ける
   金剛山国際航空で名古屋空港発第一回チャーター便運航(5/17)
6月 中外旅行社,北朝鮮観光業務再開「日朝国交正常化直前限定ツアー」
8月 ソ連でクーデター(8/19)
   ソ連ゴルバチョフ大統領,ソ連共産党解体を宣言
9月 国連総会,韓国,北朝鮮の国連同時加盟を承認
10月 平壌にて中国・韓国・日本・モンゴル・ロシア政府関係者初の国際会議開催
    ANA,日朝間にチャーター便(新潟/平壌)(10/23)
12月 JTB,初の北朝鮮ツアー(12/23)
 北朝鮮,羅津・先鋒地区に自由経済貿易地帯を設置(12/28)

1992年
1月 名古屋空港,新潟空港チャーター機開設決定,年間北朝鮮側・日本側各80便運航許可受ける
4月 北朝鮮憲法修正で「観光」を明記(4/9)
 金日成主席80歳の誕生日を祝い,在日朝鮮人が建造して贈った「万景峰92号」の就航。新潟~元山間6時間短縮し28時間でいける ようになる。中国は400トンの豚肉を贈呈。(4/15)
 金日成競技場にて主席生誕80歳記念のマスゲーム開催
8月 韓国と中国,国交樹立
10月 北朝鮮,「外国人投資法」「外国人企業法」「合営法」を制定
11月 日朝国交正常化交渉が決裂

1993年
1月 北朝鮮,「自由経済貿易地帯法」「外国人投資企業及び外国人税金法」「外貨管理法」を制定
2月 名古屋空港,新潟空港チャーター開設決定
    金泳三14代大統領就任(2/25)
3月 中国国家主席に江沢民共産党総書記就任(3/27)
5月 北朝鮮,ノドン・ミサイルを発射
6月 北朝鮮,外国人の入国を禁止。核査察問題
8月 韓国,大田世界博覧会(8/7~11/7)

1994年
6月 北朝鮮が国際原子力機関(IAEA)脱退宣言。カーター元大統領訪朝(6/15)
7月 金日成主席が死去。子息の金正日書記が実権掌握(7/8)
8月 中外旅行社,北朝鮮観光業務再開
10月 平壌郊外にて,檀君陵が竣工(10/11)。※93年9月に改築開始
     米朝枠組み合意
     世界卓球選手権大会に南北統一チーム参加
     韓国,漢江の聖水大橋崩壊

1995年
3月 自社さ,与党3党代表団が朝鮮労働党と国交正常化交渉早期再開合意
4月 アントニオ猪木,世界スポーツ祭典参加し,2800名が日本より参加しJTB,中外旅行社が手配
5月 北朝鮮,日本人観光客受け入れ停止(核疑惑,水害)
6月 日本政府による北朝鮮へのコメ支援が正式決定
7月 豪雨による洪水被害発生,国連諸機関等国際社会に支援を要請
   大邱市内の地下鉄工事の最中ガス爆発発生
   ソウル,三豊百貨店崩壊,高度経済成長時代の手抜き工事が原因
   旧朝鮮総督府建物解体開始(~1997年)

1996年
4月 北朝鮮,日本人観光客受け入れ再開
6月 北朝鮮の食糧危機に対し,国連が総額4300万ドル緊急支援アピール
7月 中外旅行社の李敏夫部長が退社,3種を拾得しKACを設立。
9月 羅津・先鋒国際投資・ビジネスフォーラム開催。日本人観光客受け入れ開始(9/13)

1997年    
1月 高麗文化観光社,江原道対外観光社等の部門別,地域別旅行社設立
2月 北京の韓国大使館に北朝鮮の黄書記が亡命申請と韓国が発表
    2002年ワールドカップサッカー韓日共同開催決定
4月 KAC平壌事務所設立。
7月 羅津でカジノ付設ホテルが営業開始
10月 金正日書記が朝鮮労働党総書記に就任(10/8)
    日本,北朝鮮へのコメ支援(23億円分)を閣議決定
11月 日本人妻里帰り第一陣15人が38年ぶりに故国日本の土をふむ
    森総務会長(自民),伊藤幹事長(社民)ら訪朝    
    大韓航空機爆破事件の犯人,金賢姫結婚

1998年
1月 日本人妻里帰り第二陣12人が来日(1/27~2/2)
2月 金大中、韓国15代大統領就任(2/25)
6月 日本人妻里帰り第三陣の対象者が里帰り申請を取り消しが明らかに
6月 鄭周永,500頭の牛を引きつれ板門店を超え2度目の訪朝。
7月 北東アジア経済フォーラム(鳥取)で北代表,外国投資と羅津先鋒の基盤整備を強調     
8月 北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン1」を発射,弾頭が日本列島上空を通過し太平洋に着弾と日本政府発表(8/31)
9月 日本政府が日朝国交正常化交渉と,北朝鮮への食糧支援を当面凍結する方針を決定(9/1)
    日本政府が日朝間の直行チャーター便の運航停止決定(9/2)
    ミサイル発射は人工衛星発射が目的と発表(9/4)
    金総書記,国防委員会委員長に選出(9/5)
    韓国政府,金剛山観光ツアー(現代グループ)を許可(9/7)
10月 金大中大統領訪日10/7。ニューヨークで米朝ミサイル協議
    韓国・現代グループ鄭周永名誉会長,牛501頭と共に板門店を越え、平壌入り。金正日と会見(金正日が韓国政府の承認を受けて訪朝した人物と会見したのは初めて)
11月 金大中大統領訪中(11/11)
    韓国財閥現代グループが客船にて金剛山観光開始(11/18)
12月 韓国海軍は全羅南道麗水沖で北朝鮮工作船らしき潜水艦を発見。追跡,交戦の上撃沈したと発表(12/18)
    金大中大統領,日本大衆文化の段階的開放処置発令

1999年
2月 現代峨山創設。中外旅行社が基軸を主催旅行から手配旅行に
4月 北朝鮮国家観光総局はアジア太平洋旅行協会(PATA)に加盟
5月 金正日国防委員長訪中
6月 黄海で南北艦艇が銃撃戦,北朝鮮の魚雷艇1隻が撃沈,中型警備艇1隻が大破
    黄海で南北艦船が交戦
8月 現代グループの金剛山観光再開。
11月 日本政府が日朝直行チャーター便の運航凍結解除発表
12月 村山元首相・野中幹事長代理ら超党派議員団が訪朝(12/1~3)
    北京で赤十字会議(12/19)、日朝国交正常化交渉予備会議(12/21)
    南北労働者サッカー大会,平壌で開催。ソウルで南北両チームによる「統一バスケットボール競技」開催

2000年
1月 北朝鮮,イタリアと国交樹立(1/4)
2月 日朝友好議員連盟発足(会長に村山富市元総理)(2/23)
3月 日本政府が10万トン(40億円)のコメ支援を表明
   北京で日朝赤十字会談を開催。北朝鮮側は日本人拉致疑惑に関して「見つかれば日本側に通報して適切な措置をとる」と表明
   金大中大統領,ベルリン大学で講演(ベルリン宣言)
4月 第9回日朝国交正常化交渉(平壌)約7年5ヶ月ぶり再開
    金大中大統領,南北首脳会談の実地を発表
5月 北朝鮮,オーストラリアが国交回復(5/8)
    金正日総書記秘密裏に訪中。第10回日朝国交正常化交渉本会議延期。
6月 金大中大統領,平壌訪問し金正日総書記と史上初の南北首脳会談実現
7月 北朝鮮,フィリピンと国交樹立
   沖縄サミットで南北首脳会談を歓迎,歴史的重要性を強調する「朝鮮半島に関するG8声明。ソウルで第一回南北閣僚級会談
   河野洋平外相がバンコクで白南淳外相と初の日朝外相会議
   北朝鮮,カナダと国交樹立(7/27)
8月 南北で離散家族100組ずつの相互訪問実地
   第10回日朝国交正常化交渉(東京)
9月 日本人妻里帰り第三陣が来日
    韓国,非転向長期囚を北朝鮮に帰還させる
    朝鮮総連の初の「故郷訪問団」が訪韓
10月 金大中大統領にノーベル平和賞を授与
    現代峨山主催の金剛山観光に日本人参加可能になる(2008/7/12日中断)
 オルブライト米国務長官訪朝(10/23~25)
11月 現在現代グループの客船による金剛山観光は2年間で37万人突破。
12月 金大中大統領,ノーベル平和賞受賞
    北朝鮮,英国と国交樹立(12/12)
    日本語歌謡曲全面解禁第一弾として,チャゲ&飛鳥ソウル公演
    シドニー五輪の入場行進、統一旗を掲げアリランのメロディに合わせ南北選手団同時行進

2001年
1月 北朝鮮,オランダと国交樹立(1/15)
    金正日国防委員長訪中(1/15~20)
    北朝鮮,ベルギーと国交樹立(1/23)
2月 北朝鮮外務省,ブッシュ新政権に強い懸念を発表
    北朝鮮,スペインと国交樹立(2/7)
3月 北朝鮮,ドイツと国交樹立(3/1)
    北朝鮮,ルクセンブルグと国交樹立(3/6)
    北朝鮮,ギリシャと国交樹立(3/9)
    北朝鮮,ブラジルと国交樹立(3/10)
    北朝鮮,ニュージーランドと国交樹立(3/26)
    仁川新国際空港開業(3/29)
    鄭周永死去
4月 北朝鮮,クエートと国交樹立(4/4)
5月 洪昌守総連応援団韓国訪問
    EU代表団訪朝
    北朝鮮,バーレーンと国交樹立(5/23)
6月 北朝鮮と現代グループ,陸路からも金剛山観光で合意(6/9)
   北朝鮮,トルコと国交樹立(6/27)
7月 金正日国防委員長特別列車で訪露(7/26)
8月 小泉首相,靖国神社参拝(8/13)
 ピースボート主催のツアーが南北同時訪問
9月 江澤民中国国家主席訪朝(9/3~5)
 米国で同時多発テロ発生(9/11)

2002年
1月 高麗航空機材ICAOのAC騒音基準からはずれ乗り入れ不可
 4月末~6月末に開催の『アリラン祭典』JL.NHチャーター申請は不可
   米ブッシュ大統領一般教書演説にて,北朝鮮・イラン・イラクの3カ 国を「悪の枢軸」と名指しで非難         
3月 朝鮮赤十字会,「行方不明者」調査再開を表明
4月 小泉首相,靖国神社参拝(4/21)
    「大マスゲームと芸術公演『アリラン』」開催(4/23~8/15)
5月 瀋陽の日本領事館に脱北者5名が駆け込む
   日韓共催サッカーW杯開会式(5/31)
6月 南北の警備艇が黄海で銃撃戦。韓国兵23人死傷(6/29)
7月 北朝鮮,給与や物価を引き上げるなどの経済改革を実施(7/1)
    北朝鮮,初の常設の国際卸売市場が羅先(旧羅津・先鋒)に開設
8月 金正日国防委員長訪露
    北朝鮮,モンゴルと友好協力条約締結(8/9)
9月 釜山アジア大会に北朝鮮選手・応援団668名派遣
    日朝首脳会談,平壌開催(9/17)
    北朝鮮,中国国境の「新義州」を経済特区に(9/20)
10月 日本人拉致事件の政府調査団訪朝。拉致生存者5名帰国(10/15)
    米政府,北朝鮮が濃縮ウラン核開発を認めたと発表
11月 北朝鮮,ティモールが国交樹立(11/5)
    北朝鮮,「開城市」を新たに特別行政区とする。併せて,「開城工業地区」に関する最高人民会議常任委政令及び「開城工業地区法」採択に関する同政令を発表11/27
12月 北朝鮮の工業団地,韓国が協力して着工することで合意
    北朝鮮,核開発再開を発表し同国駐在のIAEA査察官を追放

2003年
1月 北朝鮮,NPO脱退を宣言(1/10)
    小泉首相,靖国神社参拝
    米ブッシュ大統領一般教書演説で北朝鮮を「抑圧的な政権」と非難
2月 韓国から金剛山への陸路観光がスタート 
    北朝鮮が北東部地域から日本海へ向け地対艦ミサイル発射2/24,3/10
    盧武鉉16代大統領就任(2/25)
3月 米英軍,イラクを攻撃
4月 SARSによる外国人観光客の全面受け入れ中断(~7/12)
5月 盧武鉉大統領訪米(5/11~17)
06月 盧武鉉大統領訪日(6/6~9)
    韓国国家情報院,韓国に亡命した脱北者3689人に上ると発表
    開城工業団地着工式(6/30)
8月 SARSが世界中に猛威をふるい,旅行業界は大打撃をこうむる。3~8月上旬査証おりず。
    北京で第一回6ヶ国協議開催
10月 北朝鮮が地対艦ミサイルを日本海へ向け発射(10/21・25)
    中国呉邦国全人常務委員長訪朝し6カ国協議に出席するように要望
12月 北朝鮮,アイルランドと国交樹立(12/10)

2004年
1月 小泉首相靖国神社参拝
4月 金正日国防委員長訪中
    中朝国境付近の竜川駅で大規模な爆発
5月 南北将官クラスが初の会談
    小泉総理再訪朝(5/22)
9月 高英姫夫人の死亡説報道される(9/1)
12月 2006年独W杯アジア最終予選に北朝鮮と日本が同じ組になる(12/9)
    開城工業団地での生産開始

2005年
2月 北朝鮮が核保有を宣言
3月 サッカー観戦は韓国人不可     
    北朝鮮 祖国光復60周年&朝鮮労働党創建60周年で『アリラン祭典』開催を発表する(8/15~10/31)
4月 北朝鮮代表VS日本代表の平壌での試合が第三国タイに決定。
    近畿日本ツーリスト団体200名弾丸ツアーが中止(4/29)
6月 現代グループの金剛山観光が100万人突破。1日平均1000名
    金正日総書記が鄭東泳統一相と会談
    鄭東泳韓国統一部長官が北朝鮮訪問。金正日国防委員長と会談
7月 現代アサンが北朝鮮側と白頭山観光事業と合意。政府支援を要請
    韓国政府が北朝鮮へ200万キロワットの電力を直接供給する計画を発表
8月 「大マスゲームと芸術公演『アリラン』開催10月29日」12年まで毎夏恒例
9月 6ヶ国協議で共同声明採択

2006年
1月 金正日総書記,非公式に中国訪問。広州など滞在(1/17)
2月 金正日総書記,満64歳の誕生日を迎える(2/16)
6月 韓国人拉致被害者の金英男さんが母親らと再会
7月 北朝鮮長距離ミサイル「テポドン2」連続発射(7/5)
    北朝鮮から8月からのアリラン祭典は中止と発表
    日本政府,北朝鮮入国に関して『自粛』を通告
    女性秘書金玉を事実上の夫人とする報道(7/23)
8月 北朝鮮外務省が金融制裁拡大で米を非難。北京で金桂寛・北朝鮮外務次官とヒル米国務次官補が会談。中国の唐家璇国務委員が訪朝,金正日総書記と会談
9月 安倍晋三内閣発足(9/27)
10月 北朝鮮核実験行う
11月 北朝鮮日本人観光客受け入れを例年より1ヶ月前からださず
12月 6ヶ国協議再開。北朝鮮が米による金融制裁の解除を強硬主張。議長国の中国が調整も進展なく休会

2007年
1月 ベルリンで金次官とヒル次官補が会談
2月 北京で第5回3セッション六者協議開催。共同文書採択。平壌で南北閣僚級会談
    韓国,脱北者受け入れが1万名突破
3月 5月の離散家族再会で合意。韓国,対北肥料支援を再開
    金次官が訪米。米財務省がバンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮関連資金凍結解除を発表     
4月 対北40万トンのコメ支援で合意
5月 南北連結鉄道が試運転。京義線:開城工団行き南北貨物列車が56年ぶりに定期開通
6月 ヒル次官補が訪中し,中国の武大偉外務次官と会談。その後,訪朝
7月 外務省,北朝鮮「渡航自粛」勧告。ミサイル発射。アリラン中止発表(7/5)
    6カ国協議の合意に基づき,韓国が対北重油提供を開始。北朝鮮,核施設の稼動を停止
8月 北朝鮮,40年ぶりの集中豪雨による被害をこうむる(8/7)。アリラン祭典が中断と発表される。水害による死亡者600人
    南北首脳会談の開催を発表(8/28予定を10月に延期)(8/8)
9月  安倍晋三内閣総辞職,解散(9/25)
    福田康夫内閣発足(91代内閣総理大臣就任)(9/26)
10月 盧武鉉大統領,北朝鮮訪問。7年ぶり南北首脳会談開催
12月 韓国大統領選挙
    現代峨山主催の開城観光開始(12/5)※2008/11/28中断

2008年
2月 第17代大韓民国李明博大統領就任(2/25)
7月 KACツーリスト(96年~)閉鎖
    金剛山で北の兵士が韓国人観光客を射殺
8月 金正日国防委員長に重症説飛び交う
    NYCフィル歴史的平壌公演(8/26)
    金正日脳梗塞で倒れ,三男・金正雲後継者浮上
    “韓国へ偽装脱北”北朝鮮の30代スパイ摘発,軍部関係者も逮捕
    金剛山観光1998年~2008年の10年間で193万4662人,外国人1万2817人

2009年   
4月 北朝鮮,「衛星」称して長距離弾道ミサイル発射。日本上空を通過し太平洋に落下
5月 北朝鮮2回目の地下核実験
7月 NLLを超えた韓国漁船を北朝鮮が拿捕
11月 黄海で南北海軍の艦船が交戦
    廬武鉉前大統領,親族の不正資金疑惑で批判を受けたことを苦に自殺
    日本人の年間訪朝者数が100名を下回る

2010年
3月 北朝鮮の魚雷攻撃による韓国哨戒艦撃沈事件発生
9月 金正恩が人民軍大将,党中央軍事委員会副委員長に選任。後継者として公の場に初登場
11月 北がNLL近くの韓国・延坪島などを攻撃。韓国軍が応戦

2011年
11月 サッカーW杯アジア3次予選,日朝代表観戦ツアー
12月 朝鮮国際旅行社・李応哲北京代表と会う。日本人渡航者400名サッカーW杯ブラジル予選北朝鮮代表VS日本代表に観戦者160名含む
    金正日死去と報道される【17日死亡】(12/19)
  金正日総書記の永訣式(告別式)(12/19)
    金正恩最高司令官に任命

2012年
3月 JTB設立100周年(3/31)
4月 金正恩,第一書記に(4/11)
   「衛星」と称した弾道ミサイル発射,失敗(4/13)
    金正恩,国防委第一委員長に
    金日成生誕100年。金正恩,初の公開演説(4/15)
6月 日本のメディア各社の北朝鮮取材受け入れが盛んに
7月 金正恩,元師になる(7/17)
10月 北朝鮮観光,欧州から年間2万人,中国から2万人弱
12月 弾道ミサイル発射(12/12)

2013年
1月 国連安保理が発射を非難。制裁を強化。決議案を全会一致で採択(1/22)
    北朝鮮3度目の核実験実施を明言(1/24)
    朝鮮中央通信が,金正恩氏が「国家的な重大措置を取る断固たる決心を表明」と報道(1/26)
2月 北朝鮮3度目の核実験実施(2/12)
    中国国営中央テレビは核実験の直後,「北朝鮮でマグニチュード4.9の地震が発生した」と速報
   
(2013年3月現在)
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by sanyo-kansatu | 2013-03-23 11:15 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2013年 02月 23日

18回 春にはちょっぴり中国客が戻ってきそうな気配ですが……。中国の旅行会社のHPを読み解く

今年も春節がやってきました。昨年秋からすっかり姿を消してしまった中国団体ツアーバスは、1月下旬頃からわずかながらですが、姿を見せるようになっています。

先日(1月31日)もいつものように仕事の帰り道、新宿5丁目のツアーバス路駐スポットを通りかかると、1台のバスが停まっていました。

乗車扉の脇に「南湖国旅 豪华六天(デラックス6日間)」というプレートが貼られています。ツアーバスから特定の旅行会社名がわかることは珍しいのですが、南湖国旅といえば広東省の旅行会社。すぐに同社のホームページをチェックしてみました。

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南湖国旅 http://www.nanhutravel.com/








グーグルに日本語で「南湖国旅」と入れると、同社のホームページが最初に出てきます。トップページから「出境游(海外旅行)」→「日本」とたどると、2月9日発の4泊5日北海道ツアーや16日発の東京・大阪ゴールデンルートなど、春節から3月にかけての日本ツアーが何本か募集・催行されていることがわかりました。

ホームページにツアーが告知されているからといって、実際にツアーが催行されたかどうかわからないものです。でも、同社のホームページには、出発日ごとにツアーの募集定員に対して空きが何名あるかを表示しているので、集客状況がわかるようになっています。この感じでは、春には中国客がちょっぴり戻ってきそうな気配です。

広東地区では、昨年の尖閣事件以降もいち早く日本ツアーは再開されていましたが、中国海軍のレーダー照射問題で日中関係が緊張するこの時期、上海や北京ではどうなのか? ひとつの目安になるのが、中国の旅行会社のホームページに掲載される商品造成の状況です。今回は広州、上海、北京各社のホームページから、春以降の日本ツアーの動向を探ってみようと思います。

超低価格志向で代わり映えしない広東発

まずは南湖国旅から。広東省ではどんなツアーが造成されているのでしょうか。

2月上旬現在募集中の日本ツアーを探すと、2月23日と25日出発の「东京、富士山、河津川早樱、京都、大阪六天游超级贵宾团」がありました。

ツアー名では「超级贵宾团(VIP)」を謳っていますが、定番の5泊6日東京・大阪ゴールデンルート、しかも5199元(約7万8000円)という激安料金です。成田inで2日目に東京観光、3日目に富士山、4日目はここがこのツアー唯一のポイントなのですが、西伊豆の河津桜見物と清水市のちびまる子ちゃんランドを訪ね、豊橋泊。5日目に京都と大阪を回り6日目の午後便で帰国というもの。いつも思うことですが、広州と東京・大阪のオープンジョー航空券代や中国側の旅行会社の利益を差し引くと、日本国内の手配費用はいくら残るのでしょう?

宿泊ホテルは、「成田日航」「サンシャインシティプリンス」「富士五湖地区豪華ホテル(豪華? おそらく河口湖と山中湖にある某インバウンド専用ホテルでしょうけど……)」「ロワジールホテル豊橋」「関西エアポートワシントンホテル」と記載されていますが、ホテル名の隣に「或同級(同等)」と書かれてあり、確定されているわけではないようです。

2月下旬のこの時期しか見られない河津桜見物を加えるなど、新たな趣向がまったくないとはいえませんが、基本的には「弾丸バスツアー」です。先日ぼくが新宿5丁目で出会ったのも、こうしたツアーの1本だったのでしょう。3月以降には、関西周遊4泊5日5999元、北海道周遊5泊6日6899元、8999元、東京・大阪ゴールデンルート+北海道6泊7日8899元、9499元などが募集されていますが、ツアー行程を見る限り、広東発の日本ツアーは相変わらずの超低価格志向で、代わり映えしないといわざるを得ません。

ツアーの多様化が見られる上海発

次に、上海の錦江旅游のホームページを見てみましょう。

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錦江旅游 http://www.jjtravel.com/





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錦江旅游の日本ツアーの豊富なラインナップ








こちらはツアーの種類も数も豊富で、さすがは中国の最先端消費地である上海の旅行会社という印象です。春節期間中のツアーでは、2月11日発「日本精华特惠6日(全日空利用の東京・大阪ゴールデンルート)7800元」「迎春爱恋九州—乐活特惠4日之旅(福岡、熊本、大分周遊。主な訪問地は別府温泉と阿蘇山観光)5999元」、12日発「日本北海道札幌、小樽、函馆、登别、洞爷湖5日游(北海道周遊)13800元」など、すべて満席でツアーが催行されるようです。広東省に比べると、旅行ルートの新しさもそうですが、さまざまな付加価値を付けることで、価格帯もそれなりのバリエーションがあります。

なかでも面白いと思ったのは、2月13日発の「迎春『御享温泉•饕餮盛宴』日本九州大纵断5日之旅(独家私房)11999元」です。これまで中国からの九州ツアーは、クルーズを除けば福岡や長崎、大分方面に集中していたのですが、これは鹿児島、宮崎、熊本など南九州を周遊するコースです。指宿の砂風呂や桜島、阿蘇山を周遊し、各地の温泉旅館に宿泊。特に2日目の宿泊先は鹿児島県霧島市にある旅行人山荘で、ここは旅行作家の蔵前仁一さんのご親族が経営する温泉旅館です。

錦江旅游のホームページには、ツアー行程が詳細に書き込まれていることも特長です。ふだんから中国のツアーにケチをつけてばかりいるぼくですが、上海発のツアーに関しては、台湾市場の成熟度にだんだん近づきつつあることを実感します。2月上旬現在まだ定員は埋まっていないようですが、3月7日発の「日本深度探索系列—中部探幽6日游9999元」のように、以前台湾でヒットした立山黒部アルペンルートの雪の壁を歩くコースが約10年遅れとはいえ企画されているのを見ると、ゆっくりした歩みではあるけれど、上海に限っては日本ツアーの多様化が進んでいることがうかがえます。

残念としかいいようのない北京発

では、北京はどうでしょうか? 北京中国国際旅行社のホームページを見てみましょう。


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北京中国国際旅行社 http://www.citsbj.com/









最初に気づくのは、日本市場に対する消極的な姿勢です。広東や上海の旅行会社の「出境游(海外旅行)」コーナーでは「日本」は当然のように独立したページだったのに、北京中国国際旅行社では「日韓旅游」と日本と韓国がひと括りにされています。しかも、最初のページは韓国ツアーばかり。日中関係の悪化で、今年の春節は中国客が大挙して韓国に訪れるとは聞いていましたが、そうした市場の変化はホームページにも表れています。

それでも、掲載されている「日韓旅游」計61本のツアーのうち40本は日本行きで、ツアーコースも上海発の多様さには及ばないものの、広東発にはない沖縄ツアーや1万元を超える東京滞在型があるようです。たとえば、2月10日と13日発の「动漫乐园东京迪斯尼双园宫崎动漫5日11880元」では、初日に富士山、東京ディズニーランド&シーを2日かけて遊び、最終日に都内観光と三鷹の森 ジブリ美術館を訪ねるものです。

とはいえ、この種のツアーは何年も前からすでに催行されていたものですし、はっきり言ってやる気があるとはとても思えない保守的な商品ばかりです。政治の影響が強い土地柄だからなのでしょうが、これが首都の旅行会社かと思うと、残念としかいいようがありません。明らかに日本ツアーのマンネリ化が感じられます。

このように、中国の海外旅行市場の成熟度は北京、上海、広東で大きく異なっています。よく巷で中国経済に対する両極端の評価が聞かれますが、それは中国のどこの話をしているかで違うのであって、上海とそれ以外の中国を分ける必要性が自覚されていないせいだと思います。上海で起きていることは、中国ではかなり特殊で局地的な状況だと考えた方がいい気がします。その違いは各社のホームページを比較すると、つかめるのではないでしょうか。今後も定期的にチェックしてそれぞれの動向を検討する必要がありそうです。

ツアー代金は日本行きと変わらない国内旅行

せっかくですから、今年の春節期間中に延べ34億人の大移動があるというレジャー大国、中国の国内旅行の状況も少し見てみましょう。

中国でいちばん人気のある国内旅行先といえば、「中国のハワイ」と呼ばれる海南島でしょう。北京中国国際旅行社では、2月6日発の「环海深度游三亚往返双飞5日5780元」が催行されています。海南島の最南端にある三亜にはアジアンリゾート風のビーチホテルがあり、基本そこに滞在しながら南国体験をするものです。ツアー代金の内訳は往復の航空券+ホテル代+島内バス観光ですが、料金は東京・大阪ゴールデンルートと変わりません。

第2の人気先は世界遺産である雲南省の麗江でしょうか。春節期間中の北京発のツアーは、昆明まで飛行機で飛び、鉄道やバスで周遊する5泊6日のコースが一般的で、価格帯は1000元台から5000元台までと、それなりのバリエーションがあるようです。同じ目的地で価格帯に広がりがあることは商品の多様化を意味し、市場の成熟度の目安といえます。日本ツアーに必要なのは、まさにこうした価格のバリエーションでしょう。

最近は中朝国境にある長白山へのツアーも人気があるようです。ふだん雪を見ることのない広東省では冬季の東北旅行はもともと人気でしたが、南湖国旅の2月上旬現在の国内旅行で注目の商品となっているのが、2月19日発の「长白山北景区 长白山万达国际度假区 激情滑雪 中国雪乡 东北三大省会(哈尔滨、长春、沈阳)双飞六特惠贵宾5299元」です。このツアーは広州から飛行機で遼寧省の瀋陽に飛び、バスで吉林省の長春や長白山の山岳スキーリゾートを訪ね、黒龍江省のハルビンから戻る5泊6日のコースです。

実は、昨年ぼくは取材で長白山を訪ねているのですが、天池と呼ばれる美しいカルデラ湖があり、富士山に似たなだらかな山麓の広がる中国では珍しい休火山で、周辺にスキー場がいくつもできています。ここ2、3年で山岳リゾートホテルも続々と誕生しています。2008年にできた長白空港には北京からの直行便もあり、アクセスも飛躍的に向上しています。

ただし、このツアーではせっかくスキーリゾートを訪ねているのに、一泊しかしなく翌日から移動を続ける日程になっています。なぜなのか。実は、これは冬の北海道ツアーに参加する中国客に見られるのと同じ光景で、実際にスキーをするわけではなく、スキー場の入り口付近で雪とたわむれるだけというのがほとんどのケースだからです。

スキー人口はまだ少ないのに、スキー場だけがいくつも開発され、すぐにつぶれていくというような中国のゆがんだレジャー投資ブームの顛末をいくつも見てきただけに、苦笑するしかない話なのですが、これらのいくつものツアー行程をみていると、今日の中国の国内ツアーの多くが基本、「弾丸バスツアー」であることに気づかされます。

ゴールデンルートを旅する中国客を見ながら、「毎日バスに乗りどおしで面白いのかな?」とつい思ってしまいますが、いまの中国の人たちにとって、旅行とはそういう“欲張り”なイベントなのでしょう。「いろんな場所に行きたい」が最優先。これは「ロンパリローマ」と呼ばれた1970年代前期の日本人のヨーロッパツアーに似ているのだろうと思います。

今回紹介した中国の国内ツアーはすべて東京・大阪ゴールデンルートと同じ5泊6日で、価格帯も5000元前後のものを選んでいます。今日の中国には、同じ日程でツアー代金も日本行きと変わらない国内旅行商品がたくさんある。本コラムでこれまで何度も書いてきたように、日本ツアーの不当な安さにはさまざまな背景や経緯があることは確かですが、少なくとも中国の消費者にとっては関係ないことです。安けりゃ安いに越したことはない。価格帯で見れば、中国の国内ツアーはすでに日本の競合相手となっているのです。

まずは日本の競合相手を知ること

競合相手を知るという意味では、日本以外の海外ツアーの事情も気になります。

錦江旅游の「出境游(海外旅行)」のトップページをみると、主なツアー商品のトレンドや価格帯がざっとわかります。

たとえば、激安ツアーの氾濫でトラブルが続出した香港にも、いまでは5000元台のツアーもあること。台湾での個人旅行がすでにはじまっていること。上海発の国際クルーズ商品が人気なこと。上海人の平均的なヨーロッパ周遊ツアーが12日間で15000元相当、アメリカ周遊が2週間で25000元相当であること。かつて日本人のビーチリゾートのメッカだったサイパンの主要客が中国にとって代わられようとしていること。激安商品の多い東南アジア方面でも、モルジブのビーチリゾートに限っては5泊6日で23000元という高額商品を造成していることなど、上海人の海外旅行の現在形がうかがえます。

一方、北京中国国際旅行社の「出境游(海外旅行)」には、欄外に「热点目的地(ホットな目的地)」として20の国名や都市名(ロンドン、ローマ、スイス雪山、北海道、済州島、ケニア、トルコ、南アフリカ、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランド、モルジブ、サイパン、東南アジア、パタヤ、ロシア、スペイン、カンボジア、ドバイショッピング、ネパール)が雑然と並べられています。これが北京で旬の旅行先だということでしょう。日本からは東京や大阪ではなく、北海道がランキングしていることからも、北海道は日本で唯一、単独で中国客を呼べるブランドとしての地位を確立していることがわかります。第2、第3の北海道が出てきてほしいものです。

次に、海外旅行商品のエリア別カテゴリーを見てみましょう。錦江旅游では、「香港・マカオ」「台湾」「国際クルーズ」「自由旅行」「アメリカ・カナダ」「オセアニア」「サイパン」「日本」「ヨーロッパ」「東南アジア」「中東アフリカ」「韓国・朝鮮」(掲載順)に分けています。

この区分けは重要です。これがいまの上海人が海外旅行先を選ぶ際、頭に浮かべる世界地図だといえるからです。もっとも、それは固定化されたものではなく、常に新しいトレンドが登場することでこれから先も変化していくものです。

一方北京中国国際旅行社では、「ヨーロッパ」「東南アジア」「中東アフリカ」「アメリカ」「ビーチリゾート」「ロシア」「オセアニア」「日韓」「ネパール・インド」(掲載順)に分けています。上海と北京の市場の違いはエリアの区分けや掲載順にも表れていると見るべきです。

ともあれ、これらもまた「観光立国」を掲げる日本にとっての競合相手だということです。この中で、中国人消費者から日本が選ばれるためにはどうすればいいのか。まずは日本が相対的にどんな位置付けにあるのか。長所と短所は何か。それをふまえ、今後何を目指し、どう差別化を打ち出すべきか。こうしたことを明確に意識して戦略化する必要があります。

それを考えるうえで参考になるのが、ツアー検索のための目的別キーワードです。

たとえば、錦江旅游では2月上旬現在、「アウトドア」「ハネムーン」「健康診断」「親子旅行」「ディズニー」「ヘルスツーリズム」「桜見物」「名校游」「シルバー」「スキー」「温泉」「美容」「フラワーツーリズム」などのキーワードが挙げられています。ちなみに「名校游」というのは、主にアメリカでハーバードなどの有名大学のキャンパスを訪ねるもので、いかにも教育熱心な中国らしいですね。

また北京中国国際旅行社では、「親子旅行」「絶景の旅」「ビーチリゾート」「チャーター便利用」「映画の旅」「ディズニー」「春節特集」「神秘を訪ねる旅」「美食の旅」「自由旅行」「クルーズ」「ハネムーン」「サマーキャンプ(自然満喫の旅)」「Club Med」など。

さまざまなキーワードが入り混じっていますが、これがいまの上海と北京の消費者の海外旅行シーンを理解する鍵だと考えられます。それぞれのキーワードで検索される商品群からツアーの価格帯や、彼らが何を求めているのかが少しずつ見えてきます。

話をわかりやすくするために、同じことを日本の旅行会社の場合と比較してみましょうか。海外旅行大手のHISのホームページでも、ツアー選びがエリアと目的から検索できるようになっていますが、2月上旬現在の「目的から探す」には以下のキーワードがあります。

「間際出発」「家族旅行」「ゴールデンウィーク」「学生旅行」「ウェディング」「ハネムーン」「海外発航空券」「スポーツ」「留学」「鉄道」「世界遺産・秘境」「社会貢献」「音楽鑑賞」「登山・トレッキング」「バリアフリー」「クルーズ」「温泉」

日中双方には共通するキーワードもありますが、海外旅行商品のトレンドはもちろんのこと、ツアーを選ぶ際のポイントや目的についての認識も違っていることがわかると思います。たとえば、いまの中国の人たちが「留学」をお手軽な海外旅行商品と捉えることは少ないでしょうし、「社会貢献」や「バリアフリー」といったキーワードで差別化される商品群もまだないでしょう。それを市場の成熟度の違いといってしまえばそれまでですが、ここで考えなければならないのは、中国客に日本をPRする際、決して日本市場のトレンドに囚われてしまってはならず、中国市場が求める嗜好や目的に、日本側が合わせて訴求する必要があるということです。

ツアー価格の相場観とマンネリ化を打破するために

日本のインバウンドが今日抱える問題は、中国市場で定着した日本のツアー価格の低すぎる相場観と商品のマンネリ化です。どうすればこれを打破できるのでしょうか。

ひとつの方向としては、上海でモルジブ5泊6日23000元の高額ツアーが造成されていることをふまえ、日本でも超高級リゾート路線を打ち出すことが考えられます。ただし、その際の競合相手はインド洋に浮かぶ水上ヴィラが売りのモルジブです。ビーチリゾートでそれに打ち勝つだけの素材が日本にあるかどうか。またあるとしても必ずしもビーチリゾートである必要はなく、山岳リゾートでも都市観光でもジャンルは何でもありといえるのですが、相当インパクトのある斬新さでアピールできるかどうかが問われます。

というのも、いまの中国の消費者は、日本が得意とするきめの細かい商品の差別化に慣れておらず、とりわけ海外旅行のような形のない商品においてそれを理解することが難しいので、誰もが見てわかるようなド派手な仕掛けが必要なのです。これはバブル崩壊後、“まったり”と過ごしてきた日本人のセンスではなかなか難しい取り組みかもしれません。

もうひとつの路線は、コツコツと日本ツアーのバリエーションを増やしていくことに尽きるでしょう。そのための手本は台湾の訪日市場にあります。台湾の旅行業界が長年かけて日本全国をいくつかの広域に分けて造成してきたチャーター便のツアーのいくつかは、いま上海市場で地方空港やLCCを利用した集客がはじまろうとしています。ただし、「弾丸バスツアー」の時代を生きるいまの中国の消費者に対して、それらがどこまで支持されるかは、こちらが黙っていても日本を愛好してくれる台湾の消費者ほど簡単ではないでしょう。彼らの旅行意欲を焚き付ける新たな仕掛けが必要になると思います。

ここ数年、中国で欧米諸国への観光ビザが相次いで緩和されたことは、日本ツアーのマンネリ化に影響があったとぼくは思います。中国の消費者もそうですが、商品造成に関わる旅行業者の人たちも、次々と新しい旅行先が解禁されると、そちらに関心が向かうのは無理もないからです。また、宿泊施設や交通機関をはじめとした中国の国内旅行のクオリティがそれなりに向上したことで、相対的に日本ツアーのバリューが、我々の気がつかないうちに低く見積もられてしまっている面もありそうです。

それでも、上海市場に限っていえば、北海道に次ぐ旅行先として九州のツアーが増えており、新しい可能性も感じられます。中国映画のヒットで突如中国人に“発見”された北海道のようなラッキーなケースを望んでも仕方ありませんが、九州を単独で中国客を呼べるブランドに育てるための、いまは正念場といえるでしょう。

もともと九州には、戦前の上海・長崎航路を利用して雲仙温泉で避暑を楽しむ上海租界のロシア人や中国の富裕層がいたことが知られています。これは思いつきにすぎませんが、1930年代の雲仙温泉に中国客が訪れた当時の歴史を掘り起こし、九州の温泉地を中国人にとっての避暑地として美しくイメージ化して売り出すというのはどうでしょう。

日本人にとっての避暑地は箱根や軽井沢と相場が決まっていますが、ここは目をつぶりましょう。誰にとっての避暑地かということが問題なのです。その土地に住む人と旅する人の視点は違うのです。そういう発想の転換が大事です。中国の人たちが北海道の美しい自然というサプライズに魅せられたように、九州では温泉という素材を避暑という歴史的な縁とつなげてサプライズとして仕掛けるのです。

そのためには、歴史を巧みに落とし込んだ甘美なストーリーと魅力的なキャッチコピーも必要でしょう。中国の旅行会社のホームページには、世界各地の旅行先のキャッチコピーがあふれています。たとえば、錦江旅游だとこんな感じです。

「“峰”景如画瑞士自然之旅(絵画のようなスイス自然の旅)」

「花色夏威夷浪漫假期之旅(ロマンチックな色彩あふれるハワイの休暇)」

「西葡太阳海岸热情之旅(西ポルトガル太陽海岸情熱の旅)」

「巴厘甜蜜蜜(スィート・バリ)」

日本の旅行会社のツアー名ともよく似ていますが、中国語で表現されると独特の味わいがありますね。では、この並びで日本各地のツアーにどんなキャッチコピーを付ければ中国の消費者の心をつかめるのか。ツアーのマンネリ化を打破するには、こうした検討作業も必要でしょう。ただし、こればかりは中国のビジネスパートナーと時間をかけて取り組んでいくしかありません。

日中関係が政府間で緊迫するなか、この春節の時期、例年と比べて沈みがちな中国の訪日旅行市場の話題をあえて提供したのは、今回ぼくが新宿5丁目で1台のツアーバスに出会ったことをきっかけに、その旅行会社のホームページを覗いてみたことで多くの発見があったことをどうしてもお伝えしたかったからです。震災や尖閣問題で厳しい停滞を迫られた訪日市場ですが、少なくとも民間ベースでは中国側にもそれなりの動きがあることに、あらためて気づかされました。今後も雲行きはあやしく、どんな揺り戻しが起こるかわかりませんが、こんなときこそ、中国の旅行会社のホームページをご覧になってみられることをおすすめします。

やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/column/2013/column_113.html
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by sanyo-kansatu | 2013-02-23 06:55 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2012年 05月 07日

9回 香港で3000元以下の激安ツアーを停止させる動きが始まるか

東京では桜シーズンも終わりましたが、今年の春は中国インバウンド市場が回復基調にあることを実感した関係者も多かったと思います。

ぼくが中国インバウンドバスの路駐台数を定点観測している明治通り新宿5丁目付近の推移を見ても、東京で桜が開花した4月に入るとバスの台数が一気に増えたことがわかります(http://inbound.exblog.jp/18145846/)。そのピークは4月の第2週で、11日は過去最大の台数でした。明らかに今年1月の春節時を上回っていました。
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4月11日の夜、新宿5丁目付近には中国人観光客を乗せたバスが数多く見られた

震災から1年という節目を迎えたことが大きかったといえますが、日本の観光プロモーションの継続的な取り組みが実を結んできたことは確かでしょう。3月下旬から4月上旬にかけてぼくは北京出張に行っていたのですが、今回は現地での見聞や関係者から聞いた話の中から中国インバウンドに関する注目すべき動きをいくつか紹介したいと思います。

北京の地下鉄通路に日本の桜の全面広告
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北京の地下鉄では2月中旬から3月末まで日本の桜をPR

3月下旬、ぼくが北京で最初に目にしたのは、日本政府観光局の巨大な広告ポスターでした。地下鉄1号線と10号線をつなぐ国貿駅の地下通路を美しい桜の満開の写真が埋め尽くすという仕掛けです。通行人は桜に包まれているような感じがして、日本の花見を体感させる効果を出そうとしているようです。日本ではあまり見かけない地下通路を使った大掛かりな全面貸し切り広告は、視覚的にかなりインパクトのある宣伝手法といえるでしょう。さすがに中国は「宣伝の国」というべきか(政治プロパガンダが中心だった時代の伝統を受け継いでいるともいえます)。知人から聞いた話では、同じものが東直門駅でも見られたそうです。

もうひとつの興味深い取り組みは、日本国大使館や日本政府観光局が中国版ツイッターといわれる微博(ウェイボー)の活用を精力的に進めていることです。

微博(ウェイボー)については、昨年の中国高速鉄道事故をめぐる情報開示の影響力の大きさがメディアで報道されたことからご存知の方も多いと思います。いまや3億人を超える中国人が日常的に活用しているSNSで、中国進出している多くの日本企業や政府・自治体、個人がアカウントを取得し、双方向の情報発信を始めています。

4月初旬に刊行された『中国版ツィッター・ウェイボーを攻略せよ!』(ワニブックスPLUS新書)の著者で、北京在住の山本達郎さんによると、日本大使館のアカウントの開設は2011年2月1日で、同月14日からツイートをスタートさせています。その1カ月後、東日本大震災が発生。震災関連情報の発信に努めるとともに、中国人が日本に対して興味があるといわれる4つのテーマ(「食事」「文化」「政治」「日中交流」)を中心に平日は1日2本、土日は1本ずつツイートを行なったところ、開設から8ヵ月でフォロワー数(中国では「粉丝」といいます)が10万人に達し、2011年4月現在14万人を超えています。これは北京にある各国大使館のフォロワー数ランキングでみると、アメリカ、イギリス、フランスに次ぐ4位です。
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日本大使館の微博ページ


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日本政府観光局北京事務所の微博ページ

同じく日本の観光プロモーションの中軸をなす日本政府観光局北京事務所でも、2011年8月頃より本格的に微博によるツイートをスタートさせており、4月現在フォロワー数は3万3000人を超えています。日本大使館と連携しながら観光に特化した情報発信に努めているわけですが、大使館とスタンスの違うところとしては、なるべく中国人自身にリツイートしてもらえるよう働きかけていることです。この発想はインバウンドにとって重要です。

中国人によるツイートには、観光局からの一方的な情報発信にも勝る強い説得力があるからです。たとえば、同事務所では今年1月から3月にかけて、日本を訪れた中国人観光客による写真コンテストを企画し、微博で応募してもらい、人気投票を実施しています。微博の双方向性を活用し、プロモーションや今後のマーケティングにつなげていく取り組みはすでに始まっているのです。

2012年は大型周年事業の当たり年

北京在住の友人から聞いた今年ならではの話題に、2月16日から4日間、北京国際展覧中心で開催された日中国交正常化40周年記念行事「2012日中国民交流友好年」と「元気な日本」展示会があります。日本でも報道されたAKB48のコンサートをはじめ、アニメソング歌手のライブから神戸コレクションのファッションステージ、マグロの解体ショーまで。会場を取材した現地メディアによると「中国的な意味での派手さはないものの、日本の洗練された文化を伝えるうえで、綿密に企画制作されたイベントだった」(『Whenever BEIJING』持田吉彦氏)ようです。

ご存知のように、2012年は日中国交正常化40周年に当たります。外務省は、経済界を中心に立ち上げられた日中国交正常化40周年記念事業実行委員会(委員長・米倉弘昌日本経済団体連合会会長)と協力しながら、青少年交流と地域レベルでの相互理解を促進するための地域間交流に重点を置いているといいます。

もっとも、昨年11月、14年ぶりに上海航路が再開された長崎県の日中青少年交流など、一部地方での動きが見られるものの、全体としてみると、日本国内では機運はあまり盛り上がっているようには見えません。近年の日中関係を考えれば国民感情的にみても無理はない気もしますが、それ以上に、民間交流が40年にわたって実質的に進み、日常化したことがかえって無関心の背景になっているように思います。

クールジャパンと称される日本のポップカルチャーを中心に構成されるプロモーションは、いまや日本のお家芸といえますが、民間交流のためのわかりやすいツールであるポップカルチャーの中国に対する日本の圧倒的な優位性が日中両国民の相互理解に非対称ともいえるほどの偏りをもたらしていることも大きいでしょう。
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日中国交正常化40周年記念として、北京国際空港の出国ゲートに並ぶ日本の観光プロモーションボード

さらに言えば、2012年は日本政府がワシントンに桜を寄贈した日米親善100周年やインドとの国交樹立60周年、沖縄返還40周年など、大型周年事業の当たり年といえます。こうした場合、全方位外交を掲げるのが政府の立場でしょうから、日中40周年も数ある大型周年のひとつに過ぎません。今年の日中記念事業が30周年や35周年時に比べて盛り上がりに欠けるのは、政権交代と関係があるとの関係者の声も聞かれます。これまで記念事業の推進を関係官庁に強力に働きかけていた政治家が野党に下ったことが大きいというのです。

なんとも微妙な話ですが、今年の停滞ぶりをみる限り、観光振興にとっては大型周年事業を推進させる政治的なプレイヤーも重要な存在であることを認めざるを得ません。

中国で高品質ツアーの造成を阻む障害

ぼくは北京で毎回中国の旅行会社の関係者にヒアリングしています。中国インバウンドの現況を理解するうえで、彼らとの意見交換ほど貴重なものはありません。ここでは、日本のインバウンド関係者に示唆を与えるふたつの話を紹介しようと思います。

ひとつ目は、北京で高品質なオリジナルのツアー造成に取り組んでいる某旅行会社から聞いた話です。

中国の旅行関係者にとっての大きな悩みは、日本側と同様、日本行きのツアーが安すぎることです。いくら特色のあるツアーを企画しようとしても、日本の事情を知らない中国の消費者は、中身を比較検討できるほど商品知識がないため、値段だけで選んでしまう。

前述した微博をはじめ、中国には日本観光に関するネット情報があふれているではないかというかもしれませんが、それらは所詮ピンポイント情報に過ぎません。個別のショップやスポット情報、特定商品の内外価格差に彼らがいくら詳しくても、それで日本がわかったとはいえないのです。旅行は一般の小売商品のように手にとって比べることができないものですし、その国の交通機関や宿泊施設、人的資源など、さまざまな観光インフラや社会システム、ルールによって支えられて成り立っているものだからです。

東京都内のホテルとパンフレットに書かれていても、実際には千葉にあることを事前に理解しているツアー客がどれだけいるでしょうか(これは旅行業者も同じ)。一見豊富に見えるネット情報と中国の消費者の旅行商品に対する成熟度は別の次元の話なのです。もちろん、ここでぼくは情報発信に意味がないといっているのではなく、認知度アップのための不断の努力は欠かせないとして、もっと重要視されなければならないのは、中国の消費者が実際にツアーに集客されるビジネスの現場を知ることです。

中国で高品質なツアーの造成を阻む障害となっているのは次のような事情だといいます。仮に自社企画のオリジナルなツアーを募集しても、すぐに他社にパクられてしまうため、積極的な新規のツアー企画をためらう風潮が中国の旅行業界にあるというのです。たとえチャレンジするとしても、クローズドな市場に向けて用心深く告知し、ツアーの中身を他社に悟られないよう最大限の注意を払わなければならない。日本人の目から見れば、なんと異常な光景でしょう。同社のスタッフは吐き捨てるようにこう言いました。「中国では知的財産権の保護などありえないのです」。

ツアー企画のパクリというのは、中国に限らず日本でもあるように思うのですが、彼が言うには「中国ではパクったうえ、中身を低品質の素材にすり替え、安く販売しようとする」といいます。企画造成のための地道な努力を欠いた商品の乱造はオリジナルの商品までイメージダウンさせ、共倒れさせてしまう。これは旅行商品に限った話ではなく、中国の消費市場一般にいえると思いますが、まったくたちの悪い話です。

中国でのビジネスには日本人が通常考えにも及ばない苦労があるというのです。だとしたら、日本のインバウンド関係者は、彼らの事情を理解し、高品質なツアーを造成しようと努力している一部の優良な旅行会社とそうでない粗製濫造型の旅行会社をきちんと判別し、直接前者を支援することが必要なのではないでしょうか。こうした連携については、後日具体的な提案をしてみたいと思います。

上海市旅游局の取り組みに日本も連携できないか

ふたつ目の話は、別の担当者から聞いた中国の観光政策に関するニュースです。それは「Travel Link Daily(旅业链接)」という中国の旅行業界誌に掲載された以下の報道です。

「上海市旅游局全面整治3000 元以下低价港澳游(旅业链接2012月3月16日号)」

簡単にいうと、免税品店の連れ回しやツアー客の置き去りといったクレーム続きで中国の消費者から悪評高い香港・マカオ行き激安ツアーの停止に、いよいよ上海市旅游局が着手し、違反した旅行会社に罰則を下すというものです。注目すべきは、ツアー代金が3000元以下だと取り締まるという基準です。

この記事をぼくに教えてくれた北京の某旅行会社の女性主任はこう言います。「なにしろ安い香港ツアーでは旅行代金すべてを集客した旅行会社が懐に入れ、現地に客を送って終わりという無責任なケースがほとんど。香港側のランドオペレーターはツアー客からいかに金をむしり取るしか考えようとしない。さすがにこの状況を改善しなければならないと上海市旅游局が重い腰を上げたのです。とてもいいことだと思います」。

ただし、この施策がどれほど厳密に適用されるかについては、今後の行方を見守る必要があるようです。帰国後、この話を日本のアジアインバウンド界の重鎮であるNPO法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁理事長にしたところ、「これまでも何度か同じようなニュースが伝えられたことがあったが、状況が改善したとは思えない」と厳しいコメントをいただいたからです。

たとえそうだとしても、こうした報道を受けて、ツアーの激安化に悩む日本の監督官庁や業界関係者も行動を起こしてほしいとぼくは思います。端的にいうと、上海市旅游局の取り組みに日本も何らかの連携ができないか、ということです。

そんなに単純な話ではないことはわかっています。文字通りの連携は難しくても、上海市旅游局が取り組みを始めるに至った経緯や状況認識をヒアリングすることには意味があると思います。我々からみれば複雑怪奇に見える中国の旅行ビジネス市場において、当局がどこからどう手をつけるか、中国式の施策運用の実態を理解することも必要ではないか。

実際のところ、いったん定着した価格帯を引き上げることは、そんなにたやすいことではありません。激安ツアーの停止は短期的には集客を減らし、エアラインや香港側のホテル営業に直撃するからです。当然彼らは反発するでしょう。関連業界の利害調整が不可欠です。事情は日本だって同じです。日本の監督官庁がメイド・イン・チャイナ化した中国人の日本ツアーを野放しにしている背景には、エアラインをはじめとした一部の業界団体の利益を守ろうとする暗黙の了解が働いているはずです。

上海市旅游局が取り締まりに着手する錦の御旗は消費者保護でしょう。こうした課題解決に中国がいかに取り組むか。その手法や発想がたとえ我々と大きく違ったとしても、その道筋を知ることは日本の対中国インバウンド施策の立案に参考になります。来日中の中国ツアー客を日本の消費者と同様にいかに保護するかは、本来日本の国内問題でもあるはずです。彼らにお金を落としてもらうことを期待する以上、当然のことでしょう。野放しのままでいいわけがないのです。

前述の中国人主任は「日本政府も上海市にならって中国側に最低ツアー価格を打ち出してほしい」と言います。そこで、試しに「日本ツアー停止の基準を設けるとしたら、いくらにすべきだと思いますか」と尋ねたところ、「1万元、いや、せめて8000元」と答えてくれました。香港3泊4日の最低基準価格が3000元だとしたら、東京・大阪5泊6日が1万元(約13万円)というのが中国側からみれば妥当な価格帯なのかもしれません(日本側からみると、それでも十分とは思えませんが……)。

中国の日本ツアーのコストを無視した激安問題を解決することの難しさは、中国市場の著しい地域格差も大いに関係があります。上海市場ではすでに訪日旅行の主流は団体から個人に向かって進化していて、今後も引き続き激安化が問題となるのは、市場の成熟度が遅れた中国の2級都市や内陸都市からのツアーだからです。ツアー下限料金の取り締りは、現状では中国で最も消費者意識が高いとされる上海だけで、今後それ以外の地域にどこまで広がるかはまだわからないのです(北京でも今後始まるとは思いますが、上海に比べ消費者意識に沿ったというより、どこか権威主義的な運用になるような気もします)。

まったく難儀なものですね。でも、こうしたことは新興国市場から利益を得ようとすれば、誰もが避けられない現実でしょう。インバウンドは自分を知ると同時に、相手を知ることが欠かせません。今回紹介した「Travel Link Daily(旅业链接)」のような中国の旅行業界誌の報道にもこれからは目配りが必要だと思います。(2012年4月)

http://www.yamatogokoro.jp/column/column_76.html
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by sanyo-kansatu | 2012-05-07 22:49 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2012年 05月 07日

8回 震災から1年。いまだからこそ、インバウンドのビジネスモデルをおさらいしよう

東日本大震災から1年がたち、訪日中国旅行市場もようやく回復の兆しを見せ始めているようです。3月中旬のある夕刻、ぼくが定点観察している新宿5丁目明治通り沿いにある中国インバウンドバス路駐スポットで久しぶりに大型バスを発見しました。ローソンの前にバスを停め、ツアー客が食事から戻ってくるのを出迎えていた運転手さんに声をかけてみました。
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新宿5丁目明治通り沿いにある中国インバウンドバス路駐スポットにて

「どこから来たお客さんですか?」
「天津から」
「桜の時期はどうですか?」
「今年は戻って来そうだよ」

また数日前、北京の旅行会社の知り合いに電話で話を聞いたところ、春節後、MICE(企業視察や交流を兼ねたビジネス訪日旅行)の大口案件が次々と決まり、忙しい毎日だと話してくれました。おととし秋の尖閣諸島沖漁船衝突事件以降、「いい話はひとつもなかった」と渋い顔を見せていた北京の旅行業者も、久しぶりに明るい声を聞かせてくれたのです。

とはいえ、この春中国客が日本全国津々浦々に姿を見せることになるかというと、そういうものではありません。残念ながら、彼らが訪れる場所とそうでない場所については、残酷なほど明暗を分けることになるでしょう。中国客の来訪を待ち望むすべての観光地やホテル、小売店、飲食店、アミューズメント施設が公平に潤うことはまずあり得ないのです。

なぜなのか。日本人の眼から見ると、その違いがどこにあるのかわかりにくいかもしれません。でも、彼らが訪れる場所には必ず選ばれる理由があります。今回は、それを理解するための前提として、あらためてインバウンドのビジネスモデルをおさらいしたいと思います。

ランドオペレーターなくしてインバウンドビジネスは成り立たない

今回ぼくがビジネスモデルの話に立ち返る必要を感じたのは、3月7日に行なわれたやまとごころ主催の第25回インバウンド勉強会「観光の力が問われている復興の道のりと可能性」に出席したことにあります。そこでは震災後1年という時節柄をふまえ、被災地観光の可能性がテーマとなっていましたが、パネルディスカッションに登壇されたNPO法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の石井一夫さん(株式会社ジェイテック取締役営業部長)と河村弘之さん(株式会社トライアングル代表取締役)のおふたりの発言に触発されたからでした。

司会者から東北の被災地観光の可能性についてインバウンドの視点でのコメントを求められたとき、石井さんはこう発言されています。

「国によって温度差があります。台湾はひと通り東京から大阪のゴールデンルートは終わり、その後に北海道のブームが来て、九州、最後に東北という流れがあります。それに比べて中国はゴールデンルートが7割と、東北へ目を向けている人がまだ少ない状態です。また、放射能の心配から、東北に行く際に福島を通って大丈夫かという声があります。被災地でもコースを造成することは出来るかもしれませんが、売れる国とそうでない国に分かれると思います。日本全体に外国からのお客様が来ていただいてないという現状を考えると、まずは日本全体が良くなってから東北という順番があるのかなと思います」(やまとごころHPより抜粋)。

ここで石井さんが述べておられるのは、対象国・地域によって訪日旅行マーケットの成熟度がまったく異なっているという認識です。被災地としての東北地方への誘客は、台湾のような成熟したマーケットの旅行者であれば可能性はあるものの、中国のような後発マーケットでは難しいだろうということをリアリズムで語っておられます。

一方、河村さんからは昨年9月、香港から約100名の宗教関係者の四国お遍路めぐりを手配されたという興味深い報告がありました。「東北大震災の被災者を供養するための7泊8日の巡礼ツアー」だそうです。こうしたユニークなツアーが催行できたのも、香港が台湾同様、成熟したマーケットであることの証でしょう。そして、何より河村さんが海外客を相手に日本の旅行手配を長く手がけてこられた豊富な経験をお持ちだからです。

おふたりはインバウンド専業のランドオペレーターです。いまさらですが、ランドオペレーター(ツアーオペレーター)というのは、海外旅行(アウトバウンド)で観光案内やホテル、レストラン、現地の交通手段などの手配を専門に行う現地会社のことです。それがインバウンドでは、外国人の訪日旅行のための日本側の手配会社になります。もしこうした手配会社がなければ、今日の消費者が望むような旅行商品を誰もが等しく享受することはできません。いくつかの選別された旅行素材をまとめて仕入れることで安価な商品を造成するのが、旅行業の最も基本的なビジネスモデルです。
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世界は広く、マーケットも多様ですから、それぞれのランドオペレーターは国・地域別に専門が分かれている場合が一般的です。石井さんは中国本土市場、河村さんは東南アジア市場が専門です。当然、おふたりは専門とされるマーケットの事情に精通しておられますし、現地の旅行会社と強いパイプを持っています。情報とパイプがインバウンドビジネスにとっての肝であることは言うまでもありません。

インバウンドのビジネスモデルにおいて、ランドオペレーターは要の役割を果たしています。ランドオペレーターなくして本来、健全なインバウンドビジネスは成り立たないのです。ところが、これまで書いてきたように、とりわけ中国からの訪日旅行市場において、要となるはずのランド業務の大半が日系業者ではなく、日本手配経験の乏しい新興の在日中国系業者の手に渡ってしまったことで、中国人の日本ツアーがメイド・イン・チャイナ化してしまったのです。

日本のランドオペレーターともっと手を組もう

今回のやまとごころ勉強会で、ふたりのランドオペレーターの話を聞きながら、どれだけのインバウンド関係者がこうした実情を理解しているのだろうか、と疑問に思いました。

インバウンドに関連する業界は、宿泊施設や運輸交通といった観光産業だけではありません。小売や流通、金融、情報通信といったサービス産業に加え、製造業や不動産業、国・地方自治体まで広範囲にわたっています。もともと観光産業とは無縁だった異業種の方々からすれば、インバウンドのビジネスモデルにおけるランドオペレーターの役割をあまりご存知なかったとしても無理はないかもしれません。しかし、日本国内と誘致相手国・地域事情に精通した日系ランドオペレーターがキープレイヤーとして活躍できないようでは、日本のインバウンドビジネスはうまく機能するはずがないのです。

さまざまな異業種が参入し、海外のあらゆる地域の情報が入り乱れていることで、日本のアジアインバウンド市場は情報だけが先走りし、内実が追いついていないように見えます。各プレイヤーの方々も自分の果たすべき役割や本来取り組むべき課題が見えていないのではないかと感じます。
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2011年秋のトラベルマートの会場にて。世界各国の旅行会社と日本のサプライヤーによる商談が行なわれた

これまで多くのインバウンド関係者が個別に海外の旅行博覧会にブースを出展したり、自治体の首長と一緒に現地の旅行会社を表敬訪問したりしてきましたが、いったいどれほどの誘客効果があったでしょうか。海の向こうに出かける前に、まずは現地のマーケットと直接つながって日々外客を迎え入れているランドオペレーターに相談すべきだったのではないでしょうか。

実はランドオペレーターの側もそれを望んでいます。前述のおふたりもパネルディスカッションの中で、会場に集まった関係者に向けて「もっと皆さんの話を聞かせてほしい」と問いかけていました。

石井さんはこう語っています。
「外国人の目線で日本に求めているものは何かを理解し、旅行の食べる・寝る・遊ぶという要素を満足できるものにする必要があります。東北では和、温泉、祭りといった特色や良さをどうやって旅行商品に組み込んでいくのかが課題です。海外の現地旅行社が知りたいのは料金と特色とルートなので、皆さまには我々のような企画提案できる人間に情報を提供していただいて、協力しながらやっていければと思います」(やまとごころHPより抜粋)

ランドオペレーターは国内各地の旅行素材を海外マーケットの嗜好に即して商品となりうるかどうか日々吟味検討しています。アジアインバウンドの歴史は約30年といわれるように、彼らの海外マーケットに対する理解は深いものがあります。いまからでも遅くはありません。インバウンド関係者の皆さんは、日本のランドオペレーターともっと手を組むべきだと思います。

呼び込みたいのは誰ですか?

それをふまえたうえで、あらためて考え直さなければならないことがあります。自分たちが呼び込みたいのはどの国・地域の市場なのか。あるいは呼び込むのにふさわしい市場はどこかをはっきりさせることです。観光産業以外の業種から新規参入してきたインバウンド関係者の大半が絞り込みでつまずいているようにぼくは思います。
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世界にはたくさんの国があるが、市場の絞り込みが必要だ

しかし、一部の観光地やホテル、小売店、飲食店、アミューズメント施設の中にはすでに集客に成功している事例が見られるのも確かです。彼らに共通しているのは、自分の呼び込みたい市場が明確になっていることです。

たとえば、日光江戸村や新横浜ラーメン博物館のようにタイ人観光客の集客で知られるアミューズメント施設は、タイ市場に特化したさまざまな取り組みを続けていることで知られています。なぜタイ市場だったのかという検討も、さまざまな海外マーケットとの比較検討から導き出されています。こうした市場の絞り込み作業が実はいちばん重要なのです。当然、河村さんのような東南アジア専門のランドオペレーターとの協力連携も不可欠だったでしょう。

旅行とはいってみれば、線を描いて時間軸に沿って移動していく営みですから、石井さんのいうように「料金と特色とルート」をめぐって導線を結ぶ素材選びが必要であり、それを仕切り、アレンジしているのがランドオペレーターです。ですから、旅行素材の提供者(サプライヤー)が、もし自分の対象とするにふさわしい海外マーケットがどこなのかよくわからないのだとしたら、それぞれの国・地域を専門とする日本国内のランドオペレーターに個別に相談し、検討してもらうといいいでしょう。自前で海外に出向き、やみくもに現地の旅行会社を訪問するというコストのかかるわりには成果の見えにくいやり方に比べると、そのほうがずっと現実的で確実だと思います。

こうしたマッチングのための受け皿として期待しているのが、石井さんや河村さんらランドオペレーターを中心に結成されたNPO法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)です。彼らはアジア市場のインバウンドビジネスの豊富な経験と知見が集約された日本でもほとんど唯一の実践的な組織といえるでしょう。現在では、多くのサプライヤーも会員となっており、日本のインバウンドビジネスにおけるさまざまな課題のソリューションのために活動されています。

最後に提案があります。これからインバウンド市場に参入しようと考えておられる皆さんや自治体の方たちのために、AISOはインバウンド相談部門を設け、それをやまとごころが窓口となって国・地域別のマーケットごとに振り分け、マッチングさせるというしくみをつくってはいかがでしょうか。

ここでいうマーケットとは、日本政府観光局がインバウンドの重点市場と考えるアジア市場を中心に台湾、香港、タイ・マレーシア・シンガポール、その他の東南アジア、韓国、中国本土、極東ロシアなどを指します。中国本土に関しては、北京、上海、広東、東北三省、その他内陸地方(重慶)など、いくつかの地域別に分けるべきでしょう。中国は地域によってマーケットの成熟度が大きく異なるため、マーケット的にひとつの国だと考えると、うまくいかないと思います。インバウンドに参入するなら、まずはこれらのうちどこの市場が自分にふさわしいかを検討することから始めてほしいのです。

ぼくがこの連載で中国市場を中心に据えて書いているのは、人口規模は大きく、見かけの経済成長率は高いものの、最も後発で成熟度が遅れ、地域格差が大きく、しかも国家資本主義を採用し、政治が執拗にビジネスに介入してくるというきわめて難易度の高い特殊なマーケットであるからです。ですから、ビギナーである新規参入業者がいきなり難しいところから始めるというのは無謀といえるかもしれません。これまで少々辛口で中国インバウンドの実情を明らかにしてきたのは、そこに気づいていただきたいからです。もし検討の結果、自分にふさわしい市場でないとの結論が出れば、中国を選ぶ必要はないのです。(2012年3月)

http://www.yamatogokoro.jp/column/column_74.html
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by sanyo-kansatu | 2012-05-07 22:33 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2012年 05月 07日

5回 中国人の日本ツアーはメイド・イン・チャイナである【後編】

前回ぼくは中国人の日本ツアーをさんざん酷評しました。

対中国ビジネスにおいて、表向き語られていることと実態面が大きく違っていることはよくありますが、海の向こうの出来事ですから、多くの人の目に触れることはありません。しかし、中国インバウンドのビジネスの舞台は日中双方にあります。我々の目の前で起きている国内の実態を見て見ぬふりをしていては、市場の健全な発展は望めないと思います。

ぼくは中国が新興国と呼ばれる以前の1980年代の姿を知っている世代であり、彼らが改革開放以降の30年間にわたる経済成長によって、海外旅行に出かけられるまで豊かになったことを歓迎すべきだと考えています。それは誰が考えてもビジネスの好機です。

でも、どうやら我々は彼らの経済成長の中身を少し買いかぶりすぎたのかもしれません。中国の成長ぶりは見かけが派手なだけに、ジリ貧気味のわが身と比べてしまい、期待値をむやみに高めてしまったところがあったのではないでしょうか。

激安化はいつから始まったのか

そもそも中国人の日本ツアーの激安化はいつ頃から始まったのでしょうか。日経産業新聞2003年1月22日に以下の記事があります。

「訪日観光旅行(インバウンドツアー)の手配料金が下落している」「顕著なのは、2000年9月に日本向け団体観光旅行が解禁となった中国だ。(中略)ゴールデンコースの場合、国内4泊5日の手配料金は2年前の15~23万円から、現在は7万5000円前後と半額以下に下がった」「日本人の国内旅行が伸び悩むなか、旅行各社は潜在需要の大きいインバウンドへの関心を強めている。ただ『現状では採算性の低いツアーが多い』(近畿日本ツーリスト)こともあり、取扱量拡大や販促活動強化について消極的姿勢が目立っている」。

そうなのです。解禁からわずか2年で半値以下という激安化が起きていたのです。

数年前、ぼくは日本の旅行大手のインバウンド担当者にこう言われたことがあります。「中国団体客ひとりワンコイン(=500円)の利益でビジネスできると思いますか?」

返す言葉がありませんでした。これでは日本の旅行各社が中国インバウンドに消極的になるのも無理はありません。中国人の日本ツアーの価格があまりに安すぎて、日本企業のコスト構造に合わないというのです。

これは海外に進出する日本の輸出企業が抱える問題と同じです。新興国市場の消費者を対象にする以上、これは仕方がないことなのか。

日本政府が「観光立国」を掲げ、ビジット・ジャパン・キャンペーンを開始した2003年、すでに中国人の日本ツアーの採算を無視した激安化が起きていたことは、ひとまず確認しておきましょう。

アンタッチャブル化で暗躍したスルーガイドたち

その結果、何が起きたのか。本来自国の消費市場を担うべき日本の旅行関係者の中国本土客のアンタャッチャブル化であり、それに代わる在日アジア系インバウンド業者による中国人ツアー受け入れの独占でした。
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中国人ツアーが利用する免税店はたいてい繁華街のはずれにある

今日中国からの日本ツアーの手配を手がけるのは、在日アジア系外国人が経営する中小のランドオペレーターが大半というのが実情です。そこでは日本と異なるビジネス慣行がまかり通ることになります。端的にいえば、提携関係を結んだ家電量販店や免税店へのツアー客の連れ回しや、ガイドによるオプションや車内販売の利益から手配コストを補填するギャンブル的経営です。

どこの世界にも営業報酬をキックバックするという商慣行はあるものです。ランド業者が小売店から売上に応じて営業報酬を受け取るのは当然のことでしょう。小売店側も販促経費として計上するはずです。しかし、その利益を最初からコスト構造に原資として組み入れてしまっては危うすぎる。

中華圏では、こうした商慣行が日常的に行なわれています。問題なのは、そのやり方が持続可能といえるのか、ということです。

実際、震災後いくつかの中国系ランドオペレーターが廃業したようです。この半年仕事がないので中国の実家に戻っていたという中国人ガイドにも最近会いました。彼らの多くは専業ではないため(たいてい貿易業を兼業。商売になることはなんでもやる、というのが彼らです)、なんとかしのいでいるように見えますが、ここまで激安化した市場でこの先いつまで持ちこたえることができるのか。彼らの一部が淘汰されることは歓迎すべきだとの声も業界内にありますが、荒れ放題と化した市場だけが残されるというハタ迷惑この上ない現実もあるのです。

残念ながら、彼らのやり方がそのまま訪日旅行市場に持ち込まれたことが、ツアー料金の際限なき激安化に拍車をかけたことは間違いないでしょう。その流れを食い止めようにも、インバウンド市場の主なプレイヤーは中華圏の人たちしかいなかったのです。

こうした危ういビジネスを支えたのが、スルーガイドと呼ばれる人たちでした。彼らの多くは、台湾や香港で元日本客相手のガイドをしていた人たちです。

90日間のノービザ渡航を利用して自腹で来日、訪日中国人ツアーのガイドをハシゴしながら、オプションと車内販売で荒稼ぎしてきました。それが過去形なのは、震災後、団体ツアーが半減したことと、こうしたカラクリが東南アジアだけでなく日本でも常態化していることが中国全土で知れ渡ってしまったため、中国客も以前ほど"爆買い"しなくなったからです。

バスの運転手さんの話では、最盛時には1台のバスで1000万円近い売上を上げるガイドがいたそうです。彼らは車内販売の売上を源泉徴収することもなく帰国してしまいます。これでは中国客が来ても地元にお金が落ちないといわれるのは当然でしょう。

中国の旅行業界は人材育成より価格競争

もちろん、日本ツアーの激安化の張本人は送客元の中国の旅行会社であることは言うまでもありません。改革開放以降、彼らのビジネスの主力はインバウンド(訪中外国人旅行)市場でした。アウトバウンドが始まったのは1990年代末、せいぜい10年の経験しかありません。中国の海外旅行市場の多様化や成熟度はいまだに遅れており、価格競争ばかりが先行しているのが現状です。
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中国のツアー広告は料金以外で他社の商品との中身の差別化はまずできない

実際、中国の消費者向け旅行パンフレットやツアー広告は、見ていてかわいそうなものばかりです。目的地と料金とわずかな文言だけが並び、ツアーの詳細なスケジュールや宿泊ホテルなどの具体的な明記はありません。比較するのは中身ではなく価格のみ。

いまでこそ、悪評高い免税店の連れ回しに対する拒絶感から、ツアー行程表に記載された以外の店の立ち寄りを禁じるよう出発前に旅行会社と消費者が契約書を取り交わすようになっています。とはいえ、基本的に中国の大半の消費者は旅行商品の品質を比較検討するすべがありません。

なぜなら、中国の旅行会社の販売スタッフが海外の事情に通じていないため、正しい情報を伝えることなどできないからです。

日本の旅行会社で働く人たちであれば海外旅行経験は普通のことですが、中国ではそうではありません。外客受け入れのインバウンド人材から海外に通じたアウトバウンド人材への切り替えが遅れているのです。

その育成のためには本来コストがかかるものですが、中国の旅行業界はアウトバウンド解禁とともに価格競争に突入してしまったため、それもままならないようです。

日本のアウトバウンドの解禁は1964年。渡航の大衆化は1980年代以降です。解禁から10年後の1970年代初め、ヨーロッパ旅行の代金は70~80万円が一般的でした。1ドル=360円の時代です。その後、ドルショックとプラザ合意などを経てドラスティックな円の高騰が進み、日本人の海外ツアーの激安化が起こりますが、アウトバウンドを扱う人材を育成する時間はありました。

一方、中国では人民元高基調にあるとはいえ、対日本円では近年人民元安が続いていますから、ツアー価格の値崩れは自らの首を絞めるはずです。ところが、社会の変動が激しい中国では、いつ何が起こるかわからないと誰もが考えていますから(現状がこのまま続くとは考えていない)、常に目先の利益を優先してしまいます。

客を集めてツアー料金の中からいくばくかの利益を抜けば、あとは適正コストがどうかなどおかまいなしに日本に客を送り出して終わり。あとは日本側のランドオペレーターにお任せです。これでは人材の育成は進みようがありません。

ある北京の旅行会社の販売スタッフからこんなことを言われたことがあります。「いまの中国人にとって5000元(約62000円)のツアーは高くないです」。彼は数年前まで日本客のインバウンド(訪中旅行)担当でしたが、会社の経営方針の転換で中国客のアウトバウンド担当になりました。これまで日本人はお金持ちだと思っていたけど、いまでは中国人も負けていない。お金持ちがたくさんいる。彼はそうぼくに訴えているわけです。

その切ないまでの愛国的心情は理解できますが、彼は末端の販売スタッフで、日本語教育は受けていても、日本に行った経験はありません。5000元では日本側のコスト構造に合わないことを理解していないのです。

厳しい言い方になりますが、現状の中国の旅行業者の実力からすれば、それ相応のツアーしか催行できないのは仕方がないといえます。

メイド・イン・チャイナを甘受する中国客
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震災後、中国系免税店の経営も悪化している

未成熟という意味では、同じことは、中国の消費者であるツアー客にもいえます。ぼくは日本ツアーの激安化の最大の被害者は中国人客だといいましたが、実は彼らはそれを甘受している面もあるようです。

ある親しい中国人ガイドはこう明かしてくれました。
「中国のお客さんだって、ツアー料金がこれだけ安いのだから免税店の連れ込みも承知の上。仕方がないと思っているのよ。言葉もわからないし、自分ひとりでは何もできない海外旅行先で1週間も寝起きを共にしていると、ガイドさんに対しても情が出てくるから、車内販売でも協力してあげようかという気持ちになるんです」

オプションと車内販売に明け暮れる中国人ツアーバスが、狼に囲われた子羊たちのような殺伐とした世界であるかというと、必ずしもそうではない。彼らだって物事には道理があることを知っている。車内販売でガイドが高く売りつけていることに薄々気づいていても、自分が納得できる範囲と思えば受け入れる。それが中国の消費者でもあるのです。

ただし、あこぎなことが後で判明したら大変な騒ぎです。よくあるのが、中国製をメイド・イン・ジャパンとして騙して売ること。中国ではよくこの手の話題でネットが盛り上がります。もっとも、最近北海道の業者が中国客にニセ松坂牛を食べさせたとの報道がありました。これじゃ日本人も偉そうに言えませんし、情けない限りですが、中国側では「騙されたほうが悪い」という声も半数近かったとか。「騙し、騙される」という関係が日常的に繰り広げられているのが中国の消費社会であることは確か。彼らの物事の判断基準は我々とはずいぶん違うようです。

こうした事情を知悉(ちしつ)した中国系ガイドであれば、アメとムチを使い分けることで、中国客を納得させながらツアーを切り盛りできるのでしょう。結局のところ、中国人の日本ツアーがメイド・イン・チャイナだというのは、舞台は日本でありながら、すべてを取り仕切っているのが中華圏の人たちだったから、そうなってしまったといえます。

「奪われた10年」を取り戻すために

これまでの中国インバウンドを振り返ると、日本企業がコストに合わないと手をこまぬいているうちに、主導権を中華圏の人たちに「奪われた10年」だったといえます。

やむを得ないところはあったと思いますけれど、繰り返しますが、問題はツアーの激安化がもたらす日本のバリューの破損であり、「日本はお金をかけて行くような国ではない」というイメージが中国の消費者に定着してしまうことです。

そして、残念なことに、半ばそうなっています。ツアー料金を見れば明らか。東京・大阪5泊6日の料金はバリ島5泊6日の料金より安いのです。移動経費や適正なガイド代などを考えれば、日本のコストがはるかに高いにもかかわらず。日本はすでに激安ツアー圏として位置付けられているのです。

このままでいいのでしょうか。アンタッチャブル化した訪日中国旅行市場を日本の手に取り戻す必要があります。

そのためには、彼ら新興国市場の消費者の実像とビジネス慣行を理解することなくして、対策の立てようがない。

いかにすれば正当な収益を確保できるビジネスモデルを再構築できるか。これは今となっては難事業といえますが、頭を切り替えてビジネスを組み立て直していかなければならないと思います。

そのためには、もうひとつ考えなければならないことがあります。

これらの問題は彼らのせいだけだったのか。日本側に非がなかったといえるのか――。次回は我々の内なる問題について検討したいと思います。(2011年12月)
http://www.yamatogokoro.jp/column/2011/column_68.html
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by sanyo-kansatu | 2012-05-07 20:45 | やまとごころ.jp コラム | Comments(1)