ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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タグ:通訳・多言語化 ( 33 ) タグの人気記事


2017年 05月 12日

日本語の美しさに見合わない雑な外国語併記は残念です

今年の初め、友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

そのブログの記事から転載します。

これは友人が高尾山に出かけたとき、見つけたものです。
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「想い出とゴミは持ち帰ろう」。なんという美しい日本語でしょう。

ところが、中国語は「不把垃圾扔掉,回去吧」。あえて直訳すると「ゴミを投げ捨てるな、立ち去れ」でしょうか。その語気の強さに一瞬ビックリです。

それに、中国語だけでなく、英語もちょっとおかしい気が……。

この看板をつくった方は、そんな命令口調で言うつもりなどなかったでしょう。なにしろ「想い出とゴミは持ち帰ろう」ですから。でも、この中国語表示には「想い出」に当たることばもありません。

このくらいの言い方がいいのではないでしょうか。

「请把垃圾和美好的回忆带回家」(ゴミと美しい想い出を持ち帰りましょう)

ここでは「想い出」より「ゴミ」を先に言っているのは、本来の目的がゴミの持ち帰りだからです。そのほうが中国人にはわかりやすいのです。

日本語の美しさに見合わない、あまりに雑な外国語併記はとても残念です。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-12 13:42 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと

その日、伊豆急行下田駅を降りると、改札に岡崎大五さんが待っていて、そのまま2時間ほど、街を案内してくれました。大五さんは『添乗員騒動記』(旅行人)で作家デビューした元海外旅行添乗員ですから、街歩きガイドは手馴れたもの。

伊豆下田でよく見かけたインド人ツーリスト、なぜここに?
http://inbound.exblog.jp/26828882/

下田の街歩きのテーマは歴史です。幕末の日本の開国後の細かい約束事を決めた下田条約が締結されたことは知っていても、当時の日本の様子やその頃、唯一外国人が自由に歩き回ることのできた数年間の下田でどんなことが起きていたのか。いわば、江戸期以降の日本人の欧米人との最初の生身の接触と交流の場であり、それを物語る実在の舞台があちこちに点在しているのです。

駅から南に向かって10分ほど歩くと、1854年3月に日米和親条約が締結され、ペリー艦隊が下田に入港した後、彼らの応接所兼幕府との交渉場所となり、下田条約(同年5月)が結ばれた了仙寺があります。子供の頃、歴史の教科書に載っていたかもしれない『ペリー陸戦隊了仙寺調練の図』(1856年)が寺に飾られていて面白いです。
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了仙寺 http://www.izu.co.jp/~ryosenji/

次は、下田開港後、入港してくる外国船の乗組員たちに薪・水・食料などの「欠乏品」を提供する拠点として使われた欠乏所跡。大五さんによると「日本最初の免税店」だそう。こういうたとえは面白いですね。
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それからペリー一行が入港地から了仙寺に向かう水路沿いの参道だった現「ペリーロード」を抜け、長楽寺へ。実はここは、同じ年の12 月、ロシア使節海軍中将プチャーチンとの交渉の末、日露和親条約が調印された場所。日本はアメリカだけでなく、同じ年にロシアとの国交を始めていたんですね。
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長楽寺 http://shimoda.izuneyland.com/chorakuji.html
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この条約によって日露の北方領土(択捉以南は日本、以北の千島列島はロシア)が確定し、樺太は日露雑居を認めることが決まったわけで、大五さんによると「日本政府の北方四島が日本に属するとの主張はこれを根拠にしている」とのこと。
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それからペリーロードを港に向かって歩くと、ペリー艦隊上陸の地に着きます。彼の正式な肩書きはアメリカ海軍の東インド艦隊司令長官。周辺はヨットハーバーになっていて、ベビーカーを押した欧米人カップルが歩いていました。
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そこから大五さんの奥さんの運転する車で、最初の駐日アメリカ領事館として使われた玉泉寺に行きました。最初の総領事はハリスで、唐人お吉の物語の舞台でもあります。寺院内には遭難したアメリカの水兵の墓があります。
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玉泉寺 http://shimoda.izuneyland.com/gyokusenji.html
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その日の散策はここまで。それにしても、外国とのゆかりを持つ寺がこんなにある町は珍しいのではないでしょうか。当時、遠来の客を迎えることができる施設はお寺くらいしかなかったということでしょうか。外国人から見た日本の住宅環境の問題は、当時もいまも変わらない気がしますね。しかも、その後の国運を決める国際的な条約を締結した歴史的な場所でありながら、そんなこともすっかり忘れ去られたかのように、いまはのどかな港町にすぎないことが不思議な気がしてきます。

翌朝、ひとりで下田開国博物館と了仙寺の境内にある黒船ミュージアムを訪ねました。
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下田開国博物館 http://www.shimoda-museum.jp/
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黒船ミュージアム http://www.mobskurofune.com/

展示の中身については、各ウェブサイトを参照していただくとして、この2館を訪ねたことで、昨日大五さんに案内された下田の歴史背景があらためてよくわかりました。なかでも面白かったのは、黒船ミュージアム内のシアターで観た映像でした。

黒船来航を日本人が描いた絵巻物や肉筆画、錦絵やかわら版など使って当時の様子をわかりやすく解説しているのですが、アメリカ人の中には芸者の写真を撮ろうとしたり、彼女らを何人もはべらして酒を飲む水兵がいたり、とにかく彼らのやることなすこと、身につけているもの、手にしているもの、そのすべてを当時の日本人は面白おかしく絵にしているのです。彼らがどれほど好奇のまなざしをアメリカ人に向けて、彼らとの交流を楽しんでいたかわかるのではないでしょうか。昔学校で習った教科書の内容とは違い、庶民の間ではペリーと黒船は必ずしも怖がられていなかったというのです。その例として挙げるのが、ミュージアムの入り口にある、当時人気だった西郷隆盛似にされてしまったペリーの肖像画です。
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同館のキャッチフレーズは『日本人が見た外国人、外国人が見た日本』。アメリカ人絵師が描いた当時の下田の様子も面白いです。アメリカ人の周りに群がる地元の子供たちもそうですが、背中に赤ん坊を負った若い母親も、じっと彼らを見つめています。こういう絵を観ると、昔、自分がインドやバングラディシュに旅行に行ったときのことを思い出します。

この映像は、英語と中国語のバージョンもあるそうですが、外国人にウケる面白い素材ではないかと思いました。YOU TUBEで100年以上前の日本の風物を外国人が撮った写真がアップされるのをよく見かけますが、この種の写真は日本人のみならず、外国人にも魅力的で、一緒に観ていると、ほのぼのします。なぜなら、外国人にとって、目の前にいる21世紀の日本人と150年前の日本人の間に、我々が気づかない共通点を見つけたりするものだからです。そして、無邪気に外国人と交流する日本人の姿が好ましく思えるのです。

これはインバウンドにとって格好の素材といえます。

その本家本元が下田なのですから、このユニークな歴史を外国人相手にもっと前面に出したほうがいいのでは、と思いました。

駅前の観光案内所に置かれていた英語版の伊豆下田のパンフレットを見て思ったことがあります。本編全26ページのうち、表紙もそうですが、最初の12ページまでがビーチリゾートで、13ページ目がキンメダイに代表される下田のグルメ、15ページ目の見開きで初めて下田の歴史が紹介され、次の17ページは黒船祭り。以後は再び地元のローカル文化の紹介という構成になっています。

何を思ったかといえば、これでは日本国内客向けのPRをただ英語版にした焼き直しに見えてしまうことです。国内向けには、ビーチを前面に出す、この構成でいいのかもしれません。しかし、それでは下田の本当のユニークさが外国人相手に伝わらないのではないでしょうか。確かに、下田はビーチの美しい。それは国内向けには通じても(あるいは、日本在住欧米人やインド人には)、海外から日本を訪れる人たちには、ほとんど差別化になっていません。

なぜなら、日本でビーチリゾートといえば、沖縄なのです。下田のビーチの美しさは首都圏では定評がありますが、海外の特に欧米系や英語圏の人たちは、東アジアからの観光客のようなリピーターは少ないので、まず日本列島全体をみて目的地を決めますから、ビーチで売ろうとするのは厳しいのです。むしろ、下田にしかない別の顔を見せるべきでしょう。

その意味でも、1934 年に始まり、毎年5月に開催される黒船祭りは、下田のユニークな歴史を象徴するイベントです。

黒船祭り
http://www.shimoda-city.info/event/kurofune.html

問題は、それを海外に伝えるPRの発想の転換が必要なんだと思います。たとえば、先ほどの英文パンフレットの黒船祭りのページには、簡単な祭りの由来の英文と武士にコスプレした市民やペリー像の前に立つ米軍仕官の写真などが散りばめられていますが、残念ながら、これだけの説明では、祭りの意味を理解できる人は少ないのではないでしょうか。外国人のみならず、日本人にとってもそうなのでは。理解できなければ、訪ねてみようという気は起こりません。

この際、下田はインバウンド向けPRに限って、このユニークな歴史を伝えることに徹底したらいいのではないでしょうか。国内向けとはまったくPRの発想と中身を変えるのです。ビーチとグルメと宿の話は、最後に触れるだけでいい。あとは東京からの伊豆急行などの観光電車を使ったアクセスと。そうすることで、下田という町のオンリーワンの個性が明確になると思います。

もしその結果、多くの外国人が下田を訪れるようになったとき、初めて国内客向けと同じPR手法に変えていけばいいのです。現状では(国内向けと同様に)海もある、グルメもある、歴史もあるでは、個性が明快に伝わらないのです。「そんなの日本の他の地方と同じでしょう」と外国人には見られてしまうからです。
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ただし、外国語の説明文を新たにつくる場合、日本語の直訳ではダメです。一般の外国人には日本人が普通に知っている幕末開国の基礎知識がほぼないからです。説明の仕方も、日本人好みの人物や歴史ネタばかりでなく、あらすじをわかりやすく丁寧かつ簡潔に整理しなければならないため、一から外国語で文章をつくる必要があります。

「外国人目線を大切に」というわりには、最も基本的な情報発信の面で、日本のインバウンドは根本的に問題があると思います。それは、国内レジャー市場とインバウンド市場の違いを明確に区別していないことから起こるのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 15:00 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 04月 27日

「大腸癌」「ゴミ焼き」「蟹と強姦」……。もう翻訳ソフトはやめにしませんか

今年の初め、友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

先日、友人が中国のネットで見つけたある記事を教えてくれました。

なんでも外国人観光客に人気の大阪黒門市場の食堂の中国語メニューが大変なことになっているというんです。街場の食堂のことですから、翻訳会社に頼むようなお金はかけられなかったのでしょうし、良かれと思ってやったことでしょうから、茶化すつもりもなければ、いちゃもんをつけたいわけでもありません。この中国のネットの記事の内容も、悪意というより、単純に面白がっているだけです。そして、記事の書き手の中国人も、こうしたことが起きた理由はgoogle翻訳を利用したことにあると明快に指摘しています。

それをふまえたうえで、いまどんなことが起きているのか。それを知っていただくため、前述のブログの記事の一部を整理してここに転載します。

(前編)中国人もビックリ! 大阪黒門市場の食堂の中国語メニューが大変なことになっていた(2017年4月24日)http://ramei.exblog.jp/25720748/

先週、中国のネットに以下の記事がアップされました。

最近,有家日本餐厅做了一份中文菜单,结果把中国客人全吓跑了!(日本の食堂の中国語のメニューを見て、中国人はビッグリ仰天!)
http://www.gzhphb.com/article/73/737572.html

記事には、大阪の黒門市場で中国人観光客が見かけた食堂のハチャメチャ中国語メニューに笑いが止まらなかったこと。こうなるのは、安易にグーグル翻訳を使っているせいだと指摘しています。
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これがその店のメニューです。記事では、10個以上の間違い中国語の実例を挙げています。いくつか見てみましょう。
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これは「親子丼」ですが、「一碗米饭配上肌肉和鸡蛋(一碗のご飯の上に筋肉と卵)」。「肌肉(筋肉)」と「鶏肉」は発音(jīròu)が同じなので、打ち間違いとも取れますが、これ以外のとてつもない過ちぶりからすると、どうなのでしょう。正しくは「鸡肉蛋盖饭」あるいは「亲子盖饭」です。「丼」は中国語で「おかずでご飯に蓋(ふた)をする」という意味から「盖饭」といいます。
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次は「明太子入りおにぎり」ですが、「经验丰富你的鳕鱼子(経験豊富なあなたのタラコ)」とまったく意味不明です。
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そして「天とじ丼」が「天堂碗翻转」。「天堂」は中国語で「天国」、「翻转」は「反転する」の意味ですが、なぜこうなってしまったのか??? 天丼は「天麸罗(あるいは炸虾)蓋飯」ですが、天ぷらを卵でとじるのをどう表現すればいいか、難しいですね。
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「(とろろいもの)山かけうどん」が「山药你该骄傲(あなたが誇りに思うべき山芋)」? もうわけがわかりません。

(後編)「大腸癌」「ゴミ焼き」「蟹と強姦」……。もう翻訳ソフトはやめにしませんか(2017年4月26日)http://ramei.exblog.jp/25726044/

後半は、前回以上に度肝を抜かれるような中国語が次々に登場します。まずこれ。
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豚肉のホルモン焼きだと思いますが、その中国語がなんと「猪肉大肠癌(豚肉大腸がん)」。エーっ、癌を食べさせられるんですか!? ここまでくると、もう冗談は超えています。
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さらには、沖縄でよく食べるスパム焼き。その中国語が「烤垃圾(ゴミ焼き)」??

なぜこんな間違いが起きたのか、想像がつきます。中国語ではスパムメールは「垃圾邮件」。このスパム(ゴミ)とスパム(SPAM)を、翻訳ソフトが勘違いしたのだと思います。
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ホルモン炒めも無茶苦茶です。「把激素烧掉」の「激素」は確かにホルモンですが、これは女性ホルモンという場合の本当の意味のホルモンで、そもそも造語にすぎない日本語のホルモンを直訳してはいけません。
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次は確かに難しい料理名ですが、「菜の花と蟹の辛子和え」が「有强奸和螃蟹扔芥末」。これもおそろしい中国語です。直訳すると「蟹と強姦する……」??? なんでこんなことになったのか。「西兰花蟹肉芥末沙拉」でいいでしょう。
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そして、これも翻訳ソフト頼みのミスでしょうか。ジャンボ豚串の「ジャンボ」が「伟大(偉大なる)」になっています。中国ではよく「伟大的卫国战争(大祖国戦争)」などというときに使われますが、そんな大それたことばを使うのはおかしいのです。
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最後はこれ。フランクフルトが「猪肉的肠最后关头」。「肠最后关头」とは腸のお尻の出口、焼き鳥でいうぼんじりにも取れますが、そもそもこんな中国語はありません。「香肠」でいいでしょう。豚肉なら「猪肉香肠」。

実は、よく見ると他にもいろいろあったのですが、結局のところ、翻訳ソフトで訳した中国語をそのまま使っているからこんなことが起きてしまうのです。

もうこういうやり方はやめにしませんか?
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by sanyo-kansatu | 2017-04-27 11:47 | “参与観察”日誌 | Comments(3)
2017年 04月 21日

これはマズいぞ! 間違いだらけの外国語表示

外国人向けのパンフレットやポスター、看板、案内表示、手書きのポップ、webサイトに間違いだらけの外国語があふれている。その何が問題なのか。どうすれば解決できるのか。日本に住む外国人やインバウンドの現場の関係者に話を聞いた。


今年のイースター(復活祭)は4月16日。これから初夏にかけて、多くの外国人観光客が日本を訪れる季節を迎える。だが、ちょっと気になる光景がある。外国人向けのパンフレットやポスター、看板、案内表示、手書きのポップ、さらにはwebサイトに間違いだらけの外国語があふれていることだ。たいていの場合、それを知っているのは外国人だけ。日本人の大半は気づいていない。これはかなりマズいことではなかろうか。

中国人に聞く間違いの実例

「爆買い」が収束し、量販店やドラッグストアの店内にうるさいほど貼り出されていた外国語表示も、以前に比べ控えめになっているようだ。むしろ、最近気になるのは、自治体や公共交通など公的機関の外国語表示に間違いが多く見つかることだ。地名を表記するだけならいいのだが、何らかのメッセージをテキスト化した途端、ボロが出てしまう。

筆者は最近、日本に住む中国の友人とおかしな中国語表記をチェックする以下のブログを始めた。

街で見かけた《お恥ずかしい》中国語表示
http://ramei.exblog.jp/

同ブログでは、知り合いの中国人留学生などにも呼びかけて、街で見かけた間違い中国語の写真を送ってもらっている。いくつかの例を紹介しよう。

1:街の看板

これはある留学生が中国から遊びに来た友人を連れて浅草を案内していたとき、見つけたもの。「ようこそ、台東区へ」の中国語が「欢迎悠来台东区!」となっている。一瞬、どこが間違っているのか気がつきにくいが、よくみると、「您(あなた)」と「悠」の誤植が起きているのだ。「悠」は「悠久の大地」の「悠」で、確かに「您」とよく似ているが、中国語の発音は違うため、入力の間違いは考えられない。なぜこんな単純な誤植が起きたのか?
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↑英語、ハングル、中国語簡体字が併記される台東区の案内板だが…

実は、この誤植、他の場所でも何度か目にしたことがある。よくある間違いなのだ。これを見て文句を言う中国人はいないと思うが、区の信用に関わるといったら言いすぎだろうか。

2:トイレの貼り紙

さらに、初歩的な中国語のミスの例。あるトイレにこんな貼り紙があったという。

「谢谢你总是漂亮地使用厕所」

「いつもトイレを綺麗にご利用していただき、ありがとうございます」と言いたいのだが、「綺麗に」の中国語が「漂亮」。これは「美しい」という意味だが、女性やファッションなどに使う。子供でもわかるおかしな使い方に失笑を禁じえないだろう。「清潔に/きれいに」を意味するのは「干净」。正しくは「请干净地使用厕所」だ。
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↑日本では中国人観光客のマナーやトイレの使い方についてさまざまな風評があるため、わざわざトイレの中にこんな注意書きがあると、中国人はあまりいい気分はしないという。

この貼り紙の写真を送ってくれた中国人は「安易に翻訳ソフトを使ったのではないか。どうして中国人の誰かにチェックしてもらわなかったのだろう」と不思議に思ったという。

3:「ながら歩き」ストップキャンペーン

最後は地下鉄にて。東京メトロでは、数年前から携帯の「ながら歩き」ストップキャンペーンを始めている。そのポスターの中国語が、ある中国人の目に留まってしまった。
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↑この中国文には携帯(手机)を指す語がないので、パッと見て何を言っているか意味不明

ここでは「ながら歩きは危険です」の中国語訳が「走路分散注意力是非常危险的」となっている。「走路」(歩く)、「分散注意力」(気を散らす)、「非常危险的」(とても危険です)というそれぞれの表現はともかく、その組み合わせは中国語としてありえないという。もっとシンプルに「走路看手机非常危险的」(携帯を見ながら歩くのはとても危険です)でいいだろう。日本語を厳密に直訳しようとした結果、中国人には何が言いたいのかわかりにくい奇天烈な文章になっているというのだ。

間違った表示が、日本への失望につながりうる!?

こうした間違い外国語表示はいまや全国至るところで散見される。では、その何が問題なのだろうか。

国内の商業施設や観光地における中国向けコミュニケーション環境の調査やアドバイスを行ってきた日中コミュニケーション株式会社の可越さんは以下のようにいう。

「大切なコミュニケーションツールである外国語表示が間違いだらけということは、“おもてなし”を重んじているはずの日本の面目が丸つぶれであるだけでなく、個別の観光地や商業施設にとってのブランドイメージや信用に関わります」。

一般に中国やアジアからの訪日客は「日本の商品は高品質でニセモノがない」」「接客がていねい」「街が清潔である」など、高い期待値を持っている。ところが、間違いだらけの母国語表記を目にした途端、「なんだ、日本もこんなものか」と軽い失望を味わうかもしれないというのだ。

可越さんは、こうした間違い中国語が多くなる理由として以下の4点を挙げている。

1 翻訳ソフトに頼りすぎ
2 (翻訳は)中国人なら誰に任せてもいいという誤解
3 日本人的な発想は外国人には伝わらない(日本語の直訳はNG)
4 外国人は日本のことを知らないという認識の欠如


先ほどのトイレの例でも、実際に某翻訳サイトを使うと

“綺麗に” ⇒ ”漂亮”

と訳されてしまう。現状では翻訳ソフトは完璧ではなく、間違い外国語を量産するサービスと考えたほうがいい。そうである以上、中国人によるチェック態勢が必要だが、中国人なら誰でもいいというのは間違いだ。出身地の方言の影響を受けやすく、世代や学歴によって、その人の使う中国語は大きく違っているからだ。

中国語の文章のクオリティもおざなりにできない。若者やファミリー向けのスポットでは、新しい感覚や遊び心のある表現が求められる一方、高級なブランド店では品格ある落ち着いた文章でなければならない。商品のキャッチコピーも、顧客の対象に合わせて洗練された表現にしなければ、ブランドイメージを悪くするだけだ。おかしな中国語を使うくらいなら、むしろ英語と日本語だけで通したほうがいい。

日本人は表向き礼儀正しいのに、中国語表示になると、急に命令口調になると感じる中国人もいるらしい。たとえば、「銀聯カードが使用可」を中国語に直訳すれば「可以使用银联卡」だが、「欢迎使用银联卡(銀聯カードの利用を歓迎します)」とするだけで、ずいぶん印象が変わる。表現をちょっと変えるだけで、その店の印象が良くなったり、悪くなったりすることもあるのだ。

伝えたいメッセージを、その言語で一から考える

さらに、知っておくべき重要なことがあると可越さんはいう。

「一般に翻訳会社は、用意された日本語の文章を中国語に直訳するよう頼まれることが多いのですが、これが問題をはらんでいます。日本人と中国人の思考回路は違うので、日本語をそのまま直訳するだけでは中国人に意味が伝わらないことが多いからです。日本人的な発想は外国人には伝わらないと知るべきです。ですから、翻訳を頼む場合も直訳はNGで、日本語のニュアンスを忠実に伝えることより、中国人にわかりやすい表現に大胆に変換してもらったほうがいい。翻訳というより、相手に伝えるべきメッセージを中国語で一から考えて書いてもらうようにしてはどうでしょう」。

外国人は日本を知らないという認識の欠如

では、4つ目の、外国人は日本のことを知らないという認識の欠如とはどういうことだろうか。先日、都営地下鉄に乗っていて、こんな広告ポスターを見つけた。

「かつて偉大な漫画家たちが描いた景色が、ここにはあります」(PROJECT TOEI 013 日暮里・舎人ライナー)

というコピーが書かれている。英語やハングルも併記されていて、中国語はこうだ。

「以前那些伟大的漫画家们插绘出来的未来的景色,在这里都可以看到」
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↑「偉大な漫画家」というのは誰? 担当者によると手塚治虫とのこと。鉄腕アトムは中高年以上の中国人ならわりと知っているが、若い中国人はほとんど知らないだろう。

ここでは中国語の文章の問題については触れないが、考えなければならないのは「偉大な漫画家たちが描いた景色」とは何なのか。この文章だけでは、大半の中国人、いや英語を話す人たちも同様に、まったくわからないだろうということだ。それを理解するための手がかりは、高層ビルの合間を抜けるように走る高架電車の1枚の写真だけなのだから。

多言語化の取り組みにおいて、前提としなければならないのは、外国人は日本の社会や文化、歴史の背景をほぼ知らないということだ。その認識に、多くの日本人は気づいていないのではないか。ある日本在住の外国人によると、国内の観光地の外国語の解説の多くが、日本人向けの文章をただ翻訳しただけで、外国人にはまったく伝わっていないという。これは英語やタイ語など、すべての言語について共通している。

これまで挙げた例によって、筆者は誰かの揚げ足を取ったり、貶めようとする意図はない。

外国人たちから、いま日本で見られる多言語化のお寒い現状を指摘されることは残念であり、これをいかに改善できるか、筆者自身がもっと知りたいのである。

外国人によるチェック態勢を構築

では、どうすればこの問題を解決できるのだろうか。

外国客に対する情報発信の場合、日本人にとって当たり前のことでも、一からていねいに説明するという手間が必要で、これを惜しんではいけないということだ。ポイントは、外国人によるチェック態勢をいかに構築するか。前述したとおり、外国人であれば誰でもいいというわけではない。現場の環境や顧客対象、伝えるべき内容や目的を明確にしたうえで、外国語表示を担当する外国人との綿密な打ち合わせが必要だろう。

さらにいえば、外国語表示をどこまで進めるかも再検討し、なにがなんでもやらなければならないという考え方は見直すべきかもしれない。これまでみてきたとおり、中途半端な外国語は逆効果で、イメージダウンをもたらすこともあるからだ。

多言語表示対応が進むビックカメラの取り組み

この点、日々多くの外国客と接している量販店は対応が進んでいる。なかでも多くの外国人スタッフがいるビックカメラの外国語表示には定評がある。たとえば、都内の同店に行くと、商品によって中国語の簡体字と繁体字が使い分けられている。つまり、中国客が好んで買う商品には簡体字、台湾客がよく買う商品は繁体字の説明があるのだ。
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↑外国人スタッフと対応言語のリストが店内に表示される

この点を最初に指摘したのは、台湾の日本薬粧研究家の鄭世彬氏だが、こうしたことが可能になるのも、売り場のスタッフが国別の売れ筋商品を把握しているからだろう。

株式会社ビックカメラ広告宣伝部インバウンド室の松本真室長によると「個別の商品の多言語表示については、どの国からの来店が多いのか、店舗の特徴に合わせて表記しています。限られた時間の中でいかにお客様に買い物を楽しんでいただけるか。インバウンド客向けの取り組みのポイントは、何より会計回りの対応です。いかに現場の声に応えていくかが大事」という。

2014年10月、外国客向けの免税枠が拡大され、翌15年5月には最低購入額の引き下げの改正があるなど制度面での変更、突然の中国客の「爆買い」の収束など、小売業を取り巻く環境の変化は激しい。同社は日本ではまだ普及していない海外の決済サービスとして、中国のアリペイ(2016年6月)やウイチャットペイ(2016年10月。ただし一部店舗)などの導入もいち早く進めている。

こうした現場で揉まれる量販店の多言語表示が進化するのは当然だろう。一方、自治体や公共交通などの公的機関の場合、外国客にどこまでメッセージが届いているかを検証する機会は少ないかもしれない。筆者が始めたブログでは、今後も多言語化の現状を観察していきたいと考えている。ぜひアクセスしていただきたい。

※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/report/3857/


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by sanyo-kansatu | 2017-04-21 14:43 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2017年 04月 09日

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示

このたび、ある中国の友人とこんなブログを始めることにしました。
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街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp

これまで本ブログでも何度か指摘してきましたが、外国人観光客が増えるのにともない外国語による案内表示が街に増えているのですが、ずいぶん間違いが目につくようなのです。

これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている
http://inbound.exblog.jp/24370756/
日本にあふれる「恥ずかしい中国語」をついに中国人に指摘されてしまいました
http://inbound.exblog.jp/26343657/

そこで、ぼくも中国語の勉強を兼ねて、街で見かける中国語表示のチェックを始めてみようかと思ったのですが、実際のところ、どこがどう間違っているか、よくわかりませんでした。間違いに気づくには、それなりの語学力が必要です。その話を友人にしたところ、中国人留学生なども巻き込んで、「間違い中国語探し」を始めてみようかということになったのです。

以下は、そのブログの代表である羅鳴さんの口上です。※同ブログより

日本を訪れる中国人の気持ちに気づいてほしい

僕は羅鳴と申します。広東出身で、来日してもうすぐ30年になります。

日本に来たばかりの1980年代後半、東京にはすでに多くの中国人がいましたが、今日のように街で中国語の案内表示を見ることありませんでした。その頃の日本の社会では、中国人はまだ貧しく、来日するのも出稼ぎのためと思われていて、そのような人たちに買い物や観光の案内が必要だとは誰も思っていませんでした。確かに、その当時、多くの中国人は僕のような留学生か、不法滞在者ばかりで、生活のためだけで精一杯、遊ぶ余裕も時間もありませんでした。

そんな中国人も、この30年間の改革開放政策のおかげで、経済大国になるほど成長を遂げました。国民もだんだん経済力を持つようになり、以前は夢のようだった海外旅行にも行けるようになりました。いまでは世界のあちこちに中国人観光客がいて、日本でも、銀座や新宿などでは、中国語がうるさいほど聞かれます。

中村さんとは古いつきあいです。ある日、彼から「おかしな中国語表示が増えていることに気づいていましたか」と聞かれたので、思わず苦笑してしまいました。「もちろんですよ」。そう答えた僕は、以前ある公衆トイレに貼られていた中国語表示をスマホで撮った写真を見せました。「やっぱり、そうですか…」。彼はやれやれというような困った顔つきになりました。

僕はもう日本に長く住んでいるので、こうした中国語を見ても、そんなに驚いたり、ガッカリする気持ちはありません。むしろ、多くの日本人が中国人観光客のために中国語表示を用意している姿を想像すると、悪い気分ではありません。もちろん、多くの場合、中国人にたくさん買い物をしてもらいたいからという理由からなのでしょうが、それは当然だと思うし、日本人の側から発せられるメッセージとしては、つたないぶん、微笑ましくもあるのです。

これを機会に、日本を訪れる中国人の気持ちに気づいてもらえるとうれしいです。 

                                                
そして、以下は同ブログマネージャーとなったぼくのあいさつということで。

【マネージャーからのひとこと】
中国語の勉強のつもりで始めました


私は中国語の初心者で、毎週1回、都内の小さな語学教室に通い、中国人留学生の先生に中国語を教えてもらっています。あまりまじめな生徒ではないので、すぐにテキストとは関係ない世間話を先生とするのですが、ここ数年日本の街角でよく目につくようになった外国人向けの案内表示やポスター、パンフレットなどで使われる、ちょっとおかしな中国語のことがよく話題になります。

正直なところ、私はそう言われても、どこがおかしいのかよくわかりませんでした。先生によると、単語の使い方や文法が間違っている以上に、日本語的な発想で中国語を使ってしまっている例や外国人が知らない日本人だけが了解している事情を説明なしに、そのまま翻訳してしまっているという例が多いそうです。あとは、安易に翻訳ソフトを使いすぎではないのかとも。

これまでそんなことを考えてもいなかったので、私は街角の外国語表示が急に目に入ってくるようになりました。日本人がつい間違えてしまう外国語表示とは、それすなわち、自分自身が普段使っている英語や中国語であり、それがいかにあやしげなものか、気になるようになったのです。

そんな話を古い友人の羅鳴さんにしたところ、当然のことかもしれませんが、日本に長く住む彼はとっくに気がついていました。そのうち、お互い街でおかしな中国語表示を見かけたら、写真を撮って、それを勝手に添削してネットで報告するブログを始めてみようか、という話になりました。聞きようによっては、意地悪なたくらみに思えるかもしれませんが、逆をいえば、このことについて日本を訪れる中国系の観光客の大半はすでに気がついていたわけで、それを知らなかったのは我々日本人だけだったのです。しかも、これは中国語に限った話ではありません。英語はもちろん、最近増えてきたタイ語も同様です。

中国語の勉強のつもりで始めたブログですから、誰かの揚げ足を取ったり、貶めようとする意図はまったくありません。もしよろしければ、皆さんもおかしな外国語表示を見つけたら、ご一報いただけるとさいわいです。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-09 09:57 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 03月 02日

【自家広告】「ポスト爆買い」時代のインバウンド戦略~日本人が知らない外国人観光客の本音(扶桑社)

今月8日、扶桑社より以下の単行本を上梓します。
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「ポスト爆買い」時代のインバウンド戦略
https://www.amazon.co.jp/dp/4594076238

2016年に日本を訪れた外国人観光客は2400万人。しかも、前年より20%も増えています。それに気を良くしたのか、政府は2020年に4000万人という目標を掲げています。

ところで、日本を訪れる外国人のうち、欧米人の比率は10人に1人にすぎないことをご存知でしょうか。では、アジアの人たちは? なんと85%を占めているんです。全国各地で外国人観光客の姿を見かけるようになりましたが、その全体像についてどこまで我々は把握しているでしょうか。

本書では「なぜこんなに外国人が増えたのか」について以下の8つの理由を挙げています。

①行政主導で始まった地道なPR活動
②オープンスカイ協定による航空自由化
③アジア各国へのビザ緩和施策
④メディアが伝えた「外国人客の消費力」の浸透
⑤東日本大震災がひとつの転機に
⑥アジアのグローバル観光人口の増大
⑦日本の長期デフレが外国人客に与えた割安感
⑧アジアの中間層の成長と富の平準化

それぞれの項目の中身については、本書をご一読いただくとして、このうち①から⑤までは、日本がインバウンド市場の拡大のために実施した成果といえますが、後半の⑥から⑧は、海の向こうで起きていた国際環境の変化がもたらした結果といえます。もしかしたら、日本がどうこうしたからというよりも、海外で起きていた変化が今日の事態をもたらしていると考えたほうがいいのかもしれません。

それにしても、いまあらためて考えなければならないのは、外国人観光客の数だけ増えればいいのだろうか、ということです。最近、我々は彼らの増加がもたらした負の側面も知るようになってきたからです。本書では、こうした日本人にとって不愉快な出来事がなぜ起こるのか、解説しています。

本書は当ブログが日々観察している日本のインバウンド市場の表と裏を、できるかぎりわかりやすく伝えるために書かれたものです。個々の記事だけでは見通しが利かない訪日旅行市場の全体像と個別の事象の因果関係を整理しています。その明暗も含めた日本の近未来に与える意味を、詳細なデータと長期にわたる観察をもとに分析し、彼らの活力をいかに社会に有効に使えるか提言しています。

ぜひご一読いただけるとさいわいです。
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by sanyo-kansatu | 2017-03-02 16:05 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 11月 05日

日本にあふれる「恥ずかしい中国語」をついに中国人に指摘されてしまいました

先日、上海に住む友人に以下のネット記事を教えてもらいました。

日本の中国語翻訳、恥ずかしいショットの数々!中国人にはわからない。これは人の話す言葉なの?
(来自日本的中文翻译,好羞射!中国人表示看不懂,你确定这叫人话?)(北海道指南 2016-11-01)
http://travel.sohu.com/20161101/n472051954.shtml

これは「北海道指南」という北海道旅行に関する情報交換サイトにアップされた記事のようで、日本旅行中に見かけた「恥ずかしい中国語」表示を見て、面白おかしく茶化しています。

たとえば、これ。
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ここではトイレットペーパー(中国語は「手纸」)のことを「論文」という語を充てています。なぜこんな間違いが生まれたのか不明としかいいようがありません。
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これは「静静请看」という、中国語でありながら日本語的な語順の間違いが指摘されています。正しくは「请静静地看」でしょう。
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この中国文も、簡体字と繁体字に分けてあるものの、文字が間違っていたり、文法もおかしい。正しくは「这个厕所是自动沖水」でしょう。「中国文はよくわからないけど、英文があるからなんとかわかる」と笑われています。
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ここはちょっと惜しくて「您(あなた)」の中国語が「悠」になっています。
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外国客が多いことで知られる一蘭ラーメンの店内で見かけた表示のようです。スープ(汤)の中国語が「汁」になっているのは驚きですし、文法もめちゃくちゃです。同店には中国人店員がいるはずですが、なぜこれが通ってしまったのか。彼らは黙って見ているのでしょうか。
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日本語の「お買い忘れありませんか?」の意味のつもりが、すごく日本語的な中国文になっています。翻訳ソフトの影響が感じられます。「有忘买的东西吗?」でいいのではないでしょうか。中国文もそうですが、英語も変ですね。
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最後はこれ。ここでは「ぶっかけ」の中国語訳が「顔射」になっています。これは単なる間違いではなく、悪意を込めた翻訳のように思われます。誰がこれを書いたのでしょうか。店のアルバイトをしている中国人? 店になにか恨みでも? …なんて詮索したくなってしまいます。

それにしても……。

1年半くらい前に本ブログでも、同じ指摘をしています。

これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている
http://inbound.exblog.jp/24370756/

このとき、日本で見かけたおかしな中国語表示を指摘してくれたのは、台湾人の鄭世彬さんでした。彼の指摘にはどこか日本に対する親しみや愛情にあふれているのですが、中国人が同じことをすると、ちょっとニュアンスが違ってくるようです。

日本人の多言語力の弱みをさらしてしまっているこの「恥ずかしい中国語」問題、中国人から指摘されて不機嫌になる前に、我々は少し手を抜きすぎであることを自覚すべきではないかと思います。店のアルバイトの中国人におまかせ、ではダメですね。留学生ならともかく、飲食関係で働く中国人にはまかせられないかもしれません。プロの翻訳会社に頼まむとコストがかかりすぎるというなら、せめて街場の中国語教室の中国人の先生に書いてもらうとか、最低限度そのくらいのことはしないといけないのでは。

【追記】
ネットをみていたら、こんな記事もありました。

「おかしな中国語訳」が話題に、メルマガ「日中中日翻訳フォーラム」第31号が紹介(日本僑報社のプレスリリース2016年 11月 01日)
http://pressrelease-zero.jp/archives/102621

在日中国人たちからすれば、これも商売になりそうですね。

いっそのこと、誰か中国の方で、ネット上で商店や飲食店、その他の中国語表示の翻訳を格安で請け負うサービスをしたら、けっこう問い合わせが来るのではないでしょうか。だって、翻訳といっても短い文章や表記ばかりですから簡単でしょう。誰かやりませんか? 喜ばれると思いますよ。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-05 11:52 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 10月 22日

ランオペ登録制は一歩前進。ガイドも登録制にできるだろうか

今朝の朝日新聞の一面に以下の記事が掲載されました。

「ランオペ」業者、登録制に 旅行会社に代わってバスなど手配 観光庁方針」(朝日新聞2016年10月22日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12619915.html

観光庁は、旅行業者に代わってツアーバスやガイドの手配などをしている仲介業者の規制に乗り出す方針を決めた。仲介業者は「ランドオペレーター(ランオペ)」と呼ばれ、全国に少なくとも864社あるが、安すぎる運賃でバスを手配したり、不適切なガイドを派遣したりするトラブルが相次いでいた。旅行業法の規制の対象外ログイン前の続きだったが、登録制を導入して指導・監督する。来年の法改正を目指す。

■訪日客、トラブルも

ランオペは、旅行業法で登録されている旅行会社の依頼を受けて、バスやホテル、ガイドを手配する業者。自前の調達能力に乏しい中小の旅行業者にとって、欠かせない存在だ。旅行客と直接契約を交わさないことから、旅行業法の規制の枠外とされてきた。国や自治体への登録も必要なく、観光庁も実態を把握できていなかった。
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今年1月、長野県軽井沢町で15人が死亡したスキーバス事故も、ランオペがツアー会社とバス会社を仲介していた。バス会社は道路運送法に基づき、安全な運行に最低限必要な下限運賃を国に申請している。事故を起こしたバスは、それより安い料金で手配されていたが、規制対象外のため、観光庁はランオペには行政処分を科すことができなかった。

観光庁はランオペの実態を探ろうと6月以降、国内の旅行業者やバス、宿泊業者など約1万社に、ランオペとの取引状況を尋ねた。その結果、少なくとも全国で864社のランオペが営業していることがわかった。そのうち、業務範囲について調査に応じたランオペ223社は、訪日外国人旅行の専業が68社(30・5%)、日本人国内旅行専業が57社(25・6%)、両方が98社(43・9%)だった。

ランオペが絡むトラブルについては、旅行業者812社のうち46業者が「キックバックを前提とした特定の土産店などへの連れ回しへのクレームがあった」と回答。宿泊施設やバスなどの関連事業者186社への問いでは、43社が「直前でのキャンセルがあった」と答え、32社が「バス事業者への最低価格割れ料金での手配があった」、18社が「料金未払いがあった」と回答した。

訪日外国人からは、ランオペが手配したとみられるガイドに対し「酵素や納豆を不当に高い価格で薦められた」「熱心に薬を薦められたが偽物だった」などの苦情が相次いでいた。

2020年に東京五輪・パラリンピックを控え、近年、日本を訪れる外国人観光客が増えている。悪質な業者を野放しにしてツアーの質が落ちれば、好調な誘客に水を差すとの懸念も指摘されていた。

観光庁はランオペを登録制にすることで、不正が起きないように監督、指導していく方針。具体的な監督や指導の手法は固まっていないが、旅行中の安全確保などランオペの責任を明文化し、違反した場合にペナルティーを科すことなどを検討している。年内に取りまとめて、ツアーの質や、バス運行の安全性向上につなげる意向だ。(伊藤嘉孝)


9月下旬には、読売新聞が「ニッポン観光の影」という全6回の連載をしていましたが、メディアがいわゆる「外国客の消費力による経済効果」ばかりを報じていた去年までと違い、訪日外国人旅行者の増加にともなう負の側面を伝えるようになったことを歓迎したいと思います。

この記事では、「旅行業者に代わってツアーバスやガイドの手配などをしている仲介業者」である「ランドオペレーター(ランオペ)」が全国に少なくとも864社あることを観光庁が調査し、今後は「登録制を導入して指導・監督」すると報じています。

ランドオペレーターは「旅行業法で登録されている旅行会社の依頼を受けて、バスやホテル、ガイドを手配する業者」であり、「旅行客と直接契約を交わさないことから、旅行業法の規制の枠外とされてきた」とあります。

これはどういうことかというと、訪日ツアーの場合、ここでいう「旅行会社」は海外の旅行会社のことで、彼らが集客した海外のお客さんの日本国内の旅行手配業務をランドオペレーターが請け負うことになるわけです。そのため、ランドオペレーターはお客さんとは直接契約を交わしていないことから、消費者保護をうたう旅行業法には抵触しない存在だったということです。これまで観光庁は、海外のお客さんの消費者保護については、彼らが契約を交わした海外の旅行会社の責任で、ランドオペレーターの業務を管理監督する立場にはないという(少々言いすぎかもしれませんけれど)のが言い分でした。

しかし、今年1月に軽井沢で起きたスキーツアーバス事故(これは海外の旅行会社は無関係)などが再発したことや本ブログでも扱った「日本のブラック免税店」とランドオペレーターの関係などが明るみに出たことから、「観光庁はランオペを登録制にすることで、不正が起きないように監督、指導していく方針」となったようです。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/
「中国客を陥れる日本のブラック免税店」の隠れた舞台裏(日経BPネット2016.07.13)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/071200017/

記事では全国にランドオペレーターが「864社」あったと書かれていますが、実際のところ、これを調べるのは大変なことだったと想像します。でも、海外の旅行客に直接サービスを提供する存在であるランドオペレーターが誰だかよくわからなかったというのは、考えてみれば、困ったことでした。

これで一歩前進。ただし、この先もっと大変なことが待ち構えています。ランドオペレーターから仕事を請け負うツアーのガイドとは誰なのか。その実態を調べていくことが次の段階でしょう。つまり、ランオペの次は、ガイドの登録制に向けた取り組みです。

ランオペ経由で調べていくことになるのでしょうが、これは簡単なこととは思えません。しかし、これをやらないと、観光ビザで来日し、滞在有効日数内にガイド業務を繰り返し、そのまま所得申告もしないで帰国する外国籍のガイド、いわゆる「スルーガイド」問題の解決には至りません。

もっとも、それをどこまでやるかのさじ加減も問われるところがありそうです。現在のアジアの多くの国々から訪れる団体ツアーのビジネスモデルの根幹に関わることだからです。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-22 09:28 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 10月 04日

中国客向けフリーペーパーはもう時代遅れな気がします

中国の建国記念日(国慶節)に当たる10月1日の正午過ぎ、銀座中央通りを歩いた話をしましたが、その続き。ホコテンを抜けると、中央通りと交差する首都高の下にショッピング施設「銀座ナイン」があります。その周辺は中国人ツアー客を乗せたバスの停車スポットになっています。
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2016年の国慶節の日、銀座ホコテンは多国籍ツーリストが記念撮影を興じていた
http://inbound.exblog.jp/26247961/

なぜなら、この周辺は、銀座7丁目のラオックスが近いこともありますが、同じく量販店のドンキホーテや中国団体客向けショーのある日本料理店「どすこい相撲茶屋」があるからです。
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銀座インバウンドレストランのサムライショーは中国客の食いつきがすごい
http://inbound.exblog.jp/25841438/

銀座のドンキ、LAOXに徹底対抗!価格以外でも負けません!?
http://inbound.exblog.jp/25347932/

さらにいうと、「どすこい相撲茶屋」の向かいに永山免税店もあります。
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永山免税店 ステファニー銀座店
http://japan.eisan.jp/store-ginza/

もっというと、少しはずれに「銀座百薬粧」という名の免税店もあります。明らかに日本語の使い方ではない店名ですね。
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銀座百薬粧
http://www.taxfreeshops.jp/ja/shop/21646

まさに中国団体客向け免税店の集積地である銀座8丁目周辺は、いま深刻な状況に見舞われています。

中国客が以前のように積極的に買い物をしなくなったからです。

今年8月のラオックスグループの売上が、前年同月比マイナス53%だったという衝撃の報告もあります。

ラオックス月次報告(2016年8月)
http://www.laox.co.jp/ir/upload_file/library_05/getsuji_201608_jp.pdf

そんな折、この日そこで見たのは、バスから降りる中国客に在日中国人のアルバイトが銀座のショッピングスポットを紹介するフリーペーパーを配る姿でした。
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それはどう考えても、時代遅れな光景といっていいでしょう。もはや中国ではフリーペーパーの時代は終わり、割引クーポン等をアプリで入手するのが一般的です。

彼女らが配っていたのは、ダイヤモンド・ビッグ社が発行する「東京・大阪名品淘」と「尚Life Japan」の2誌でした。後者は在日華人が発行しています。
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尚Life Japan
http://www.lifejapan.info/

だからでしょうか、「尚Life Japan」では、誌面に掲載されている店舗(銀座の有名ブランドショップやMIKIMOTOなどの宝飾店)のQRコードをスマホで読み取れば、店舗情報やGPSで地図を表示してくれるしくみになっています。「東京・大阪名品淘」にも一応同じしくみはあります。これを見て、いまのフリーペーパーは中国の実情がよくわかっているといえなくもないのですが、結局のところ、これらの情報を日本に来てから入手していたのでは、使いこなせないのが実情ではないでしょうか。やはり、日本に旅行に来る前に入手させないと意味がないと思います。

いよいよ中国客向けのフリーペーパーは潮時という気がしてなりません。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-04 18:34 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 06月 06日

通訳案内士の新しい動きに注目! 東京建築案内ユニットShowcase

前回、紹介した東京建築ツアーを催行している「Showcase」のメンバーは、英語通訳案内士の吉田優香さんや木原佳弓妃さん、松原智佳子さんたちで、結成は2014年末。現在、11人のメンバーが登録しています。「Showcase」は「Sense Harajuku Omotesando by Walking Come and See」の頭文字をとったのだそうです。
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銀座と表参道をめぐる東京建築ツアー(英語)が面白い
http://inbound.exblog.jp/25882521/

ところで、Showcaseでは、どういう経緯で東京建築ツアーを企画することになったのか。

木原佳弓妃さんによると「これまで外国人向け体験ツアーというと、すし握り体験のようなフードツアーや相撲部屋を訪ねるツアーが知られていたが、建築をテーマにしたツアーはなかった。代表の吉田優香が2012年春に表参道で始まったTokyo Grand Shopping Weekの事務局に関わったこともあり、表参道で外国人向けのウォーキングツアーができないかと考えていたところ、この街には魅力的な建築が点在していて、実際に外国人を案内すると反応が良かったことからコースを考えた」そうです。

さらに、「表参道周辺には、近代建築だけでなく、一般住居や団地もあり、多様な建築を歩きながら一度に見せることができる。目立たないディティールであっても、そこにデザイナーのこだわりや地域の歴史などのストーリーが込められている。その意味では、専門家ではない私たちでも、建築を通して日本文化のある側面を説明できると思う」と言います。

Showcaseのメンバーには、インテリアコーディネイターや商社勤務、書道家など、通訳案内士の有資格者でありながら、多彩な趣味や才能を持つ人たちが集まっているそうです。共通点は、建築好きであること。

今後は、表参道だけでなく、都内の別のエリアも加えたコースを増やしたいと考えており、そのトライ企画のひとつが、今回の銀座と表参道のツアーだったのでした。

彼女らが催行する東京建築ツアーには、3つの新しい特徴があると思います。

まず、日本ではまだ数少ない東京の現代的な側面を紹介する知的なカルチャーツアーであること。

たとえば、日本の大手旅行会社などが催行する外国人向けツアーをざっと見てもらうとわかると思いますが、これらにはないオリジナルな内容です。

JTB Sunrise Tour
http://www.jtb-sunrisetours.jp/
はとバス(外国語)ツアー
https://www.hatobus.com/
HIS go Japan
http://www.hisgo.com/n1/Contents

通訳案内士を多数登録しているユニークなインバウンド専門旅行会社もあります。でも、こちらは侍や忍者、書道、着物、お茶体験など日本の伝統文化に特化したツアー内容となっています。

日本文化体験交流塾
http://www.ijcee.com/

大手各社には当然のことながら、集客とコストの問題があり、コンテンツの専門性より大衆性を選ばざるをえない面があります。でも、伝統的なコンテンツだけでなく、もっと現代的なものを求める外国客もいるはず。だからといって、秋葉原に連れていけばいいのか。クールジャパンをもち出さずとも、東京の現代的な魅力をわかりやすく伝えられるツアーがもっとあっていいはずなのです。彼女らはそれにチャレンジしています。

ふたつめとして、一般の東京の外国人向け観光地の多くが東部(お台場、銀座、皇居、上野、浅草など)に偏るなか、表参道や青山といった西部地区の街歩きの新しいモデルをつくろうとしていること。これまでの東京のウォーキングツアーは、谷中や浅草方面の江戸情緒を味わうというものが多かった気がします。それはそれでいいのですが、東部(銀座)と西部(表参道)を銀座線という公共交通でつなぐウォーキングツアーであることも、ひとつのチャレンジだと思います。

3つめとしては、通訳案内士という語学のプロらが結成したユニットであり、自ら世界の旅行マーケットプレイスに名乗りを上げ、外国人からダイレクトブッキングを受けてツアーを催行していることです。
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Showcase Tokyo Architecture Tour(東京建築ツアー)
http://showcase-tokyo.com

これまで日本の通訳案内士たちは、旅行会社や通訳案内士団体から外国人ツアーのガイドを仕事として受けることが多く、営業は受身でした。しかし、今日世界には以下のようなツアーを扱うマーケットプレイスが存在し、直接外国客とガイドがマッチングできるプラットフォームがあります。

viator (世界最大の現地ツアーを扱う。最近、トリップアドバイザーの傘下に入る)
http://tourguides.viator.com/
Voyagin (2012年にサービス開始した日本発の旅行体験予約サイト。15年、楽天の傘下に)
https://www.govoyagin.com/?lang=ja
Triplelights (2013年にサービス開始した通訳案内士と外国客のマッチングサイト)
https://triplelights.com/

それぞれのサイトには特徴があり、得意分野も微妙に異なるようですが、訪日旅行市場の拡大にともない、通訳案内士自らこれらのプラットフォームに登録し、自己プレゼンテーションすることでガイディングの仕事を得られる時代になっているのです。Showcaseでも、自らのサイトに加え、Voyaginに登録して、集客しているそうです。

こうした取り組みは、これからもっと地域発のオリジナルで魅力的なツアーが生まれる可能性を示しています。一般に地元で企画されたツアーを「着地型ツアー」といいますが、ネットによるプラットフォームのない時代はそれを国内外の発地や旅行者に直接売り込むことができませんでした。しかし、いまは違います。今後は、全国でこういう動きが広がっていくことを期待したいと思います。

外国客に「娯楽サービス」は足りている?
http://inbound.exblog.jp/25886445/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-06 14:00 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)