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2015年 05月 13日

無資格ガイド問題とは何か?

通訳案内士をめぐる問題を考えるうえで、避けては通れないのが無資格ガイド問題です。一般の日本人からすると、なんのことやらわからないと思いますが、観光庁の「検討会」では初期の頃からこの問題が討議されていました。

以下の表は、観光庁がまとめた訪日旅行者数のトップ4である韓国、台湾、香港、中国におけるガイドの手配状況を整理したものです。

アジア主要国別インバウンドにおけるガイド等の手配状況(「通訳案内士の制度と現状について」2009年6月より)
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この報告は、株式会社JTBエイティーシー(当時)、NPO法人アセアンインバウンド観光振興会(当時、現社団法人)、JTBGMTの資料をもとに作成したとあります。これらは日本を代表する訪日旅行の手配を行う企業と業界団体です。

ここから何がわかるでしょうか。まず4カ国にほぼ共通する特徴が在日ネットワークで完結するビジネスモデルであることです。つまり、日本側の旅行業者を介さず、自分たちで旅行の手配を行っているわけです。なぜこういうことになっているのでしょうか。その何が問題なのでしょうか。

アジアからの訪日旅行の解禁は、さかのぼること1970年代の香港に始まり、79年の台湾、90年代の韓国と続いて動き出していました。ところが、当時の日本には彼らを観光客として受け入れようという認識やコンセンサスがまったくなかったため、彼らも在日ネットワークに頼るほかなく、ある意味野放しのまま手配が行われていたのです。当然無資格ガイドが添乗するツアーが大半でした。

1990年代の訪日外国人旅行者数はいまほど多くなく、せいぜい300~450万人でしたから、アジアからの訪日客は日本人の国内レジャーの閑散期を埋める存在に過ぎませんでした。

これが2000年代に入って変わっていきます。2000年に476万人だった訪日客は、03年の小泉政権時の「観光立国」宣言とビジットジャパンキャンペーンの開始とともに上昇カーブを描いて成長していきます。

ところが、在日ネットワークで完結するビジネスモデルはそのまま温存されてしまいます。その理由は後で述べますが、ここで確認しておくべきは、無資格ガイドの存在はいまに始まった話ではなかったということです。誰もそれをとがめることもなく20年以上経過していたわけで、それをいまさらやめろといっても、そこには彼らにとってなんのインセンティブもないわけですから、変わりようがなかったといえます。

では、この報告にもよく出てくる「スルーガイド」とは何でしょうか? 

ひとことでいうと、海外から団体客を連れて訪日し、ガイディングまでやってしまう添乗員のことです。本来日本で有償で観光案内できるのは通訳案内士という国家資格を必要とするガイドと定められているのに、それを不要としてしまうのです。

しかし、さらに根の深い問題もあります。彼らがただの添乗員であればいいのですが、そうではない場合があるからです。

台湾人や香港人には入国時にノービザで90日間の日本の滞在許可が下ります(これは相互免除という意味で、日本人が相手国に行く場合も同様です)。その間、ガイドたちは日本に自由に滞在しながら、いくつもの訪日ツアーの添乗を受け持つのです。だから、彼らは毎回ツアー客と一緒にやってくるのではありません。最初のツアーだけのことで、その後はずっと日本にいて、次々と添乗を繰り返すわけです。彼らが日本の通訳案内士資格を有していれば、まだいいのですが、必ずしもそうではなさそうです。

またその際、問題となるのは、土産店や免税店からのキックバックやバスの車内販売などで得た売上からホテル代や食事、交通費などの諸経費を引いて、そのまま自分の報酬として持ち帰ってしまうことです。彼らは観光ビザで訪日しておきながら、事実上労働していることになるわけです。何本もツアーを掛け持ちすれば、売上額は相当な金額に上ると思われますが、彼らはその営業活動に対して確定申告することもなく、帰国してしまうのです。

これらに象徴される世界が「華僑系土産店とタイアップしたビジネスモデル」あるいは「華僑系旅行会社ネットワークで完結するビジネスモデル」なのです。

観光庁の「検討会」の初期の議事録をみると、通訳案内士団体はこうした無資格ガイドの取り締りを強く要求しています。彼らに仕事を奪われていると考えているからでしょう。

2010年2月22日 第4回「検討会」議事録
http://www.mlit.go.jp/common/000060637.pdf

これを読むと、かなり乱暴で厳しい発言も見られます。

興味深いことに、2010年3月、JTB九州は九州運輸局から厳重注意処分を受けています。

2010年3月30日(レコードチャイナ)
JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局
http://www.recordchina.co.jp/a40879.html

急増する中国からのクル―ズ客船の上陸中のバスツアーで、無資格の留学生にガイド業務をさせたことが理由のようです。

これはちょうど「検討会」でこの問題が討議された時期と重なっているので、その影響を受けたのではないかと思えなくもありません。

さて、それでは実際、彼らをどこまで取り締まるべきなのか?

その後、東日本大震災が起き、いったんこの議論はヒートダウンします。それでも、時間の経過とともに訪日客は回復し、「検討会」も再開されます。

2014年12月24日の「検討会」資料=「過去の検討会における主な意見⑦(無資格ガイド・悪質ガイドへの対応)」では、以下のような無資格・悪質ガイド問題に対する意見が出ています。
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これをみると、業界関係者の中には、取締り一辺倒ではない意見も散見されます。通訳案内士の質の問題についても厳しいコメントが見られます。

なぜなのでしょうか。ひとつ考えられるのは、日本の旅行会社の姿勢にあります。2000年代に入り、訪日アジア客の受け入れを進めていくうえで本来担わなければならなかったはずの国内の旅行手配や通訳ガイドの領域を在日ネットワークに預けてしまったこと、いや預けざるを得なかった事情があったからです。もはや急増する中国団体客の受け入れはお手上げ状態になっていたなかで、取り締まりを叫んでみても詮無いことに思えたことでしょう。

では、なぜ預けざるを得なかったのか。

それが実際に起きていたのは、時をさかのぼること、2000年代初頭のことでした。この記事をみてください。

訪日観光旅行手配 中国発中心に下落進む(日経産業新聞2003年1月22日)


「訪日観光旅行(インバウンドツアー)の手配料金が下落している。インバウンドツアーは海外の旅行会社が企画し、日本の旅行会社が日本滞在部分の手配を請け負う形が主流。アジア地域の旅行会社を中心に手配料金の引き下げ要求が急速に強まっている。訪日外国人数は増加傾向にあるが、採算性の低さなどから取り扱いに消極的な旅行会社も目立つ。(中略)

顕著なのは、2000年9月に日本向け団体観光旅行が解禁となった中国だ。インバウンドツアーでは東京から箱根、京都、大阪を巡る通称「ゴールデンルート」という定番コースが一番の売れ筋商品。近畿日本ツーリストの場合、中国の旅行会社向けの同コース(4泊5日)の手配料金は、2年前の15万~23万円程度から、現在は7万5千前後と半額以下に下がった。(中略)

日本人の国内旅行が伸び悩むなか、旅行各社は潜在需要が大きいインバウンドへの関心を高めている。ただ「現状は採算性の低いツアーが多い」(近畿日本ツーリスト)こともあり、取扱量拡大や販促活動強化については消極姿勢が目立っている」。

これは中国の爆買い客が話題になるずっと前の話です。

2000年9月に解禁された中国からの団体ツアーのツアー代金がわずか1年で半額になってしまったこと。その結果、日本の旅行会社は一斉に中国側の旅行会社が主催する訪日中国団体客の手配から手を引いてしまいました。

いまでも忘れられないある旅行大手の幹部の当時の発言があります。

「なぜ中国からの団体ツアー客の手配を日本の旅行会社が請け負えないかというと、一人当たりワンコイン(500円)の利益ではどうしようもないんですよ」。

こうして引き受け手のいなくなった訪日中国客の国内手配を引き受けたのが、新興の在日華人系のランドオペレーターでした。当然、彼らはこれまでの在日ネットワークで完結するビジネスモデルを踏襲します。訪日中国ツアーの料金が下がったぶんは、免税店や土産店へのキックバックや車内販売の売上で補い、帳尻を合わせるやり方です。これが今日の無資格ガイド問題の起源といっていいでしょう。

その後も国交省は無資格ガイドの使用禁止を日本の旅行会社に呼びかけています。

有資格の通訳ガイドの使用の徹底について(周知依頼)[観国交第65号](2013年5月14日)

「平成25年2月に通訳案内士制度の周知強化の一環として、観光庁が実態調査を行ったところ、中国人旅行者向けのツアーの中には、通訳案内士法等に基づく資格を有さない一般の添乗員に通訳案内業務を行わせるなど、法令の遵守が徹底されていない場合が複数見受けられました」(一部)

これは訪日中国客の手配を行う日本の旅行会社の業界団体である中華人民共和国訪日観光客受入旅行会社連絡協議会(中連協)に宛てられたものです。以前出した「無資格通訳ガイドの使用禁止の徹底について」(2005年4月20日付け国土交通省国総旅振第32号)の要請に効力がないことから、再度周知徹底を促す内容です。

ところが、大半の日本の旅行会社は中国の旅行会社が主催した低価格の団体ツアーの手配を請け負っていないため、効き目はほとんどないわけです。実際には、誰が中国団体客の手配を請け負っているのか、捕捉できていないのか、できていても知らないことにしているのか。まあそういうことです。

※もっとも、ここでひとこと触れておきたいのは、すべてのアジア市場が在日ネットワークモデルに侵食されているかというと、そうではないことです。アジアの新興グループであるベトナムやインドネシアなど、華僑系旅行業者の影響が少ない国々の訪日ツアーはこれまで述べた話とは事情が違っていること(まだそれほど値下がりは起きていない)も知っておきたいと思います。

それにしても、なぜこんなことになる前に手を打たなかったのか。

こんな言い訳がよく使われます。アジア市場は成長が早く、FIT化や成熟化も進んでいるから、近い将来欧米市場と同じようになるだろう。そうすれば、いずれ通訳案内士との需給ギャップは埋まっていくはずだ。

ところが、実際には、上海など一部の成熟した市場が生まれても、次々と内陸からの初来日組も増えるので、いつまでたっても団体客は減りそうもありません。

国交省はずいぶん早い時期から訪日2000万人の目標を掲げていました。その内訳として中国本土からの観光客を600万人と見積もっていました。2014年には台湾、香港を含めた中華系はすでに600万人を超えています。取り締まることより、ビザの緩和などによる数の増加を優先したことは間違いありません。それはそれでひとつの決断だったでしょう。そう決めた以上、いまの問題は織り込み済みだったはずです。

なぜなら、現在の中華圏の訪日客600万人のうち、半分が団体として、通訳案内士制度の建前(有資格ガイドを使うこと)を通そうとするなら、どれだけの数の中国語通訳ガイドを育てる必要があったのか。そのために何かを緊急に着手したようには見受けられないからです。

そして、決め台詞はこうです。「もし本当にアジアの無資格ガイドを取り締まりを徹底するとしようものなら、市場の大混乱は避けられないだろう。外交関係にも影響が出かねない」。

この問題は、通訳案内士団体の主流が英語ガイドであることも、話をかみ合わなくさせている理由のひとつのように思われます。彼らはアジア市場の特殊性に対する理解は少なく、見方によっては偏見も感じられないではありません。

繰り返しますが、だからといって誰かを悪者に仕立て上げても始まりません。

訪日アジア客の増加は、一部の排外的な人たちを除けば、特に小売業界を中心に歓迎の世論が形成されていると思います。彼らは移民労働者ではありません。レジャー消費者です。ただ旅行の中身にお金を使うことより、買物に夢中なのです。だからこそ、本来あやうげな在日ネットワークで完結するビジネスモデルが成り立ってしまうのです。

そのあやうさは、やはり気がかりです。現実を直視し、受け入れつつ、立て直しのための方策を考えなければいけないと思っています。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-13 16:14 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 11日

通訳案内士制度をめぐる議論がかみ合わないのはなぜか

本ブログではここ数日、通訳案内士をめぐる問題を扱っていますが、ずっと疑問に思っていたことがありました。特に「「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?」(5月6日)を書くため、観光庁のHPに大量に掲載されている業界関係者らの主張や議論の中身を検討しながら、思ったことです。

すでにずいぶん長い時間をかけて議論されているようなのに、いつまでこの話し合いは続くのだろうか?

まじめに議論に参加されている方には失礼な言い方かもしれませんが、やはりこの問題で7年以上も議論を続けているというのは、外から見ていると不思議でなりません。ここ数年の訪日外国人旅行市場の激変ぶりから考えると、そんなに悠長な話ではないように思うからです。実際はそうでもないのでしょうか。

こうした疑問を解くうえで、ひとつの示唆を与えてくれたのが、現役の通訳ガイド(英語)の河村輝夫氏でした。河村氏は、現在ある通訳案内士団体の役員を務める傍ら、旅行会社のマネージャーでもあるという方です。

以下、河村氏とのやり取りを紹介します(あくまで河村氏の個人的な見解で、所属する団体・企業の考え方を代表するものではありません)。

―河村さんは観光庁主催の「検討会」をずっと傍聴されておられるそうですが、ご自身も通訳ガイドという当事者の立場からみて、議論のあり方についてどうお感じになっていますか。

「さまざまな関係者が集まる検討会ですから、それぞれ主張があるのはわかるのですが、全体として議論が十分にかみ合っていないと感じています。その理由を私はこう考えます。

通訳案内士制度のあり方を検討するうえで、以下の3つの次元を明確に分けて考えなければならないと思います。

A:「通訳案内士」(法制度あるいは資格)
B:「プロ通訳ガイド」(通訳案内を業務とする職業または職業人)
C:「通訳ガイド行為」(通訳案内を何らかの形で行う社会活動)

ところが、「検討会」を傍聴している限り、それらがごちゃ混ぜになって同じ場で議論されていると感じています。まずはこの3つの次元を明確に切り分けて、整理することから始めるべきではないでしょうか。

―それはどういうことでしょうか。

たとえば、野球を例に考えてみましょう。野球という社会活動(あえてここではこういう言い方をしますが)は、プロ選手の世界と大学や高校、リトルリーグ、町内会の野球大会のようなアマチュアの世界に分けられます。この場合、職業人としてのプロ野球選手のあり方や求められる能力レベルの問題と、アマチュア選手の問題を同じ場で議論するのはおかしいことはわかりますよね。アマチュア選手が増えすぎるとプロ選手は困るから、社会活動としての野球を規制しようというような議論は起こりません。

ところが、通訳案内士の議論になると、なぜかこれらをごちゃ混ぜにしてしまい、議論が迷走しがちです。

この「検討会」では、「通訳案内士のあり方を見直す」「新たな地域限定、特区ガイドの制度を作る」「現行の特区、特例制度を拡充する」「新たな試験対象言語増やす」「いや、現行制度を維持すべき」といった本来区別して行うべき議論が同じ場で進められているのですから、論点がぼやけてしまいますね。

―なるほど。議論がかみ合わないのは、3つの異なる次元を区別するという基本的な共通認識ができていないからというわけですね。いまどの次元の議論をしているのか自覚されないまま、それぞれが発言しているためだと。そもそもプロのガイドをどうすべきかという話とボランティアガイドの話が同じ場で話題に上るというのはおかしいということですね。

先ほどの野球の話であれば誰でもわかるのに、なぜ通訳案内士の話になるとこうした議論のやり方がおかしいことに気づきにくいのか。通訳ガイドという職業の置かれた社会的地位や安定性、認知度などにも関係があるのではないでしょうか。そもそも日本社会で通訳ガイドという職業が広く認知されているとはいいがたい気がします。また登録者の4分の1しか就業していないという国家資格というのは、外からみるとかなり驚きです。

日本では通訳ガイド業に対する職業としての観念があいまいなのかもしれません。一般に観光ガイドとしてイメージされるのはバスガイドでしょうか。彼女たちの場合は、バス会社に勤務し、職業的訓練を受けて仕事をしているということは承知されているでしょう。他にも山岳ガイドやネイチャーガイド、トレッキングガイドなど、いろいろなガイド業が存在し、彼らも専門的な知識やスキルを有していることは知られています。

しかし、通訳案内士という国家資格を取得しなければ従事できないのが通訳ガイドです。外国人相手に外国語で旅行を案内するガイド業であるゆえに、語学力も含めた特別な知識やスキルを必要とする職業であるからです。そう説明されれば、漠然とはわかると思いますが、残念ながら、その社会的な役割や意義などまで含めて広く認知されているとはいいがたいですね。

実際、通訳案内士というのは資格名であって、職業に対する呼称ではありません。一般に通訳案内士団体では、自らの職業を「ガイド」あるいは「通訳ガイド」と呼んでいます。海外では「ガイド」といえば、外国語を使って外国人を案内する仕事という認知が一般的で、それがスタンダードな呼称だからというわけですが、日本ではそうではない。

―そうしたことは職業人としての自尊心にも関わることでしょうね。

一方、通訳案内士資格を取得する目的として、英検やTOEICなどと同じく、一種の語学力や歴史知識などの「能力証明」手段として利用する人もいます。特に少数言語の場合、適当な語学力証明手段や検定などがないため、検定代わりに利用して履歴書に記載する人も多いようです。

この制度を「能力証明」手段と考えるのならば、通訳案内士の「名称独占」さえ守られれば事足りるでしょう。これに対して「プロ通訳ガイドとして就労するため」または「通訳案内活動を行うため」に必要な知識や技術を確認するための手段と考えれば、当然「業務独占(通訳案内士しか外国人に対する有償の通訳ガイドはできない)」を守ることが重要と考えるでしょう。

さらにいえば、「プロ通訳ガイド」という職業を「食べてゆける職業」として確立、維持してゆくためにはどうしたらよいか、ということを議論するのであれば、それは社会政策の問題です。

それとも「プロ通訳ガイドとは、常に他の職業をセット(兼業)でなければやってゆけない副業専門の業種」と捉えるのかでも、議論の方向性は変わってきます。

農家といえば、現代日本社会では兼業農家を意味するといった感覚に近いかもしれません。「日本の農業を守るために、いかにして専業農家を保護するか」という問題と、「いかにプロ通訳ガイドを独立した生計を維持できるように職業環境を改善してゆくかどうか」という話は同次元の問題だと思いますね。

―通訳ガイドをひとつの職業として確立、維持できるかどうかということは、若い世代が参入できるかどうかの鍵になりますね。その意味では、現在の就業者に若い世代が少ないのは、これまでそこが保証されているとは思えなかったからでしょう。だからこそ、これ以上「規制緩和」してもらっては困るという議論になるのでしょうね。

ところが、ボランティア通訳ガイドや特区ガイドの議論については、通訳案内活動を「任意の社会活動」として捉えると、憲法上、基本的に誰でも何をしてもよいのが日本社会の大原則ですから、「通訳案内という活動の自由に対して法規制がかかっているのか」(案内士法の解釈の問題)、「通訳案内活動をどこまで規制すべきか」(法規制に関する立法論)という問題が出てきます。

これは憲法論でいうところの「経済的自由に関する人権制約の警察目的と政策目的の問題」とも絡んできます。弁護士のように「法制度先行、実体後行型」の資格や制度と、医師と医者のように「実体先行、法制度後行型(医療の実態は古くからあり、医者も存在したが、医師免許を国家資格としたのは明治以降のこと。通訳案内士も基本的に同じ)」の制度との違いという問題もあり、通訳ガイドという職業人のあり方を後行の法制度である通訳案内士がフォローして規定しているのが原則です。

それを国家政策の観点から制度を改変して職業や職業人たちのあり方を変化させようとするかどうかが問題です。そして職業上の対応とは別に、通訳案内活動という社会活動をどこまで規制する必要があるのか。そこを2020年や地方創生などの社会の要請により、規制緩和してゆくべきかどうか、といったことが論ぜられるべきです。

―確かに、「数が足りないから増やそう」となるのはわかりますが、本来そういう根本的な議論があるべきですよね。おかげさまで、もやもやが少しすっきりしてきたような気がします。

ぼくが通訳案内士をめぐる問題に関心を持つ理由のひとつは、日本のインバウンド市場が抱えるさまざまな矛盾や課題、可能性といったものまで含めて象徴的に見られる領域だと考えるからです。この際、誰かを悪者にしても仕方がない。これまでの議論を見ていても、どちらか一方の立場から議論を押し通そうとすると、かえって事態は膠着するという印象があります。

たとえば、メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたかを少し調べてみると、全国紙レベルで扱われたのは数少ないながら、2010年が比較的多かったようです。この時期、観光庁の「通訳案内士のあり方に関する検討会」(2009~11)が始まっていて、一部メディアに「通訳案内士資格の見直し議論が波紋を呼んでいる」という論調が見られました。「規制緩和」を進める観光庁に対して、現役の通訳案内士が「無資格ガイドの容認につながり、仕事を奪われかねない」と反発するという構図で描かれていました。

2010年1月21日(東京新聞)
中国人ツアーが激増 無資格ガイドを容認?
「日本を訪れる中国人観光客が激増している。本来は「通訳案内士」の国家資格を持ったガイドが観光案内するはずなのだが、格安ツアーは無資格の添乗員がガイド代わりだという。そんな中、国の検討会で「通訳案内士の業務独占や名称独占の廃止」が持ち上がり、通訳案内士らが反発している」(一部)

2010年4月2日(産経新聞)
通訳案内士資格 見直し議論波紋
「国が進めている外国人向けの有償ガイド「通訳案内士」資格の見直し議論が波紋を呼んでいる。中国人などアジアからの観光客急増に対応するため、観光庁の有識者会議で、ボランティアや留学生を有効活用する規制緩和策が浮上。「無資格ガイドの容認につながり、仕事を奪われかねない」と現役の案内士が猛反発している」(一部)

2010年7月13日(日本経済新聞)
「通訳ガイド」国家資格不要、中・韓国語など対応しやすく
「観光庁は来年度をメドに、国家資格を持たない人でも有料の外国人向け通訳ガイドができるように規制を緩和する。現行の「通訳案内士」制度がアジアからの観光客急増に対応できていないためだ。現在無料で通訳している日本人のほか、留学生や現地旅行会社のガイドといった外国人にも解禁される。同庁は一定の質を確保するため、研修ガイドラインを作成し、自治体や企業が認定する仕組みを検討中だ」(一部)。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1502L_S0A710C1CR8000/
※日経のみこの点に触れていないのが面白いですね。

ここで出てくる「無資格ガイド」の問題は、急増するアジアからの訪日客の受入をどうするかという問題に直結していたため、新たな制度設計を準備してこなかった観光庁にとっては最も痛いところを突かれた格好で、議論を押し返すことは難しかったでしょう。

しかし、2010年当時といまでは状況もかなり変わってきています。なにしろこの5年間で500万人近い訪日客の増加が見られるわけです。そして、今年は、戦後日本人出国者数が初めて訪日外国人数を上回った1970年から45年後にあたり、もしかしたらその再逆転が起こるかもしれないといわれています。時代の大きな変わり目を迎えているといってもいいでしょう。

通訳ガイドの関係者と話をしていると、「我々は絶滅危惧種だ」というような自嘲的な発言を聞くことがあります。確かに、これまではそうだったのかもしれません。でも、これからは通訳ガイドの社会的な役割が広く注目される時代へと変わっていくのではないでしょうか。

そんな無責任なことは部外者だからいえると言われればそれまでですが、せめてもっと若い世代が参入できるような業界にするためにはどうすればいいか、といった発想で議論を進められないものか。そのためにも、河村氏が指摘するように、まずは「資格」と「職業」と「社会活動」の切り分けから始めることが大事なのではないかと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-11 09:18 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 10日

海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう

海外の観光ガイドがどんな働き方をしているかという話は、国によって相当事情が違うため、それを掘り下げようとするとかなり専門的な内容になってしまいます。残念ながら、いますぐこの件を検討することは簡単ではありません。

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?
http://inbound.exblog.jp/24450294/

一方、我々も含め一般の旅行者が海外でどんなガイドサービスを受けられるかについては、いろんな事例を知ることはできそうです。

たとえば、ヨーロッパを中心とした18都市で実施されている地元ガイドによるガイドサービスとして知られるのが、new EUROPE です。
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New EUROPE
http://www.neweuropetours.eu/

※18都市は、アムステルダム、バルセロナ、ベルリン、ブリュッセル、コペンハーゲン、ダブリン、エジンバラ、エルサレム、ハンブルグ、リスボン、リバプール、ロンドン、マドリッド、ミュンヘン、ニューヨーク、パリ、プラハ、テルアビブ。

このサービスは、上記18都市でそれぞれ実施している地元ガイドによるウォーキングツアーなどにネットで予約すれば誰でも参加できるというもの。無料のツアーもあれば、有料で郊外の観光地などを訪ねるツアーもあります。

たとえば、これはドイツのミュンヘンのサービス内容です。面白いのは、このツアーを案内する地元ガイドが写真入りで紹介されており、さまざまなキャラクターが揃っていること。どこに行きたいかもそうですが、このガイドに案内してもらうと楽しそう、という選び方もできるわけです。
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New Munich
http://www.newmunichtours.com/

「ミュンヘンに滞在している外国人旅行者がこのサイトを見て集まってきて、ローカルガイドの案内で街歩きをしたり、ツアーに出かけたりします。ぼくはそのとき、ミュンヘン郊外にあるダッハウ(ナチスの強制収容所のあった町)を訪ねるツアーに参加しました。もちろん、自分ひとりでもバスに乗って行くことはできるけど、地元のガイドにしっかり説明してもらうことで、知的好奇心が大いに満たされた。日本でもこういう外国人向けのツアーをやれないものだろうか」
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こうした実体験をもとに新しい外国人向けツアーサービスを提供しようと2013年に起業したのが、株式会社トラベリエンスの代表・橋本直明さんです。
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トラベリエンス
http://www.travelience.com/

現在同社では、自社でオリジナルツアーを企画するtravelienceと、通訳ガイドと訪日外国人旅行者をマッチングさせるTripleLightsの両サイトを運営しています。

「最初はNew MunichのFree Tourと同じモデルで、プロのガイドの案内による浅草のウォーキングツアーから始めました。それからだんだん有料のツアーも始めたのですが、必ずしも料金が安いからといって人が集まるとは限らない。むしろ、カップルや友人同士、ファミリーなどのプライベートなガイドの需要の方が大きかった。目的地も、浅草や築地、渋谷など東京のメジャーどころを案内してほしいというリクエストが多かった。知らない人と一緒になって気を遣うことなく、自分たちのペースで歩きたい、そういうニーズが多いことを知りました」。

同社の提供するツアーのうち、人気なのは、東京発日帰りの日光や富士山、鎌倉。京都も人気だそうです。でも、東京で起業したばかりの橋本さんには、京都に事務所を置いて、人を配置してというのはすぐには難しかったため、次に思いついたのが通訳ガイドと外国人旅行者のマッチングサービスであるTriplelightsだったそうです。

「こちらはお客さんを集めることに徹し、地元のガイドさんご自身にオリジナルなツアーを企画してもらおうと考えました」
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Triplelights
https://triplelights.com/

「プロとボランティアではガイディングのレベルがまったく違う。ですから、Triplelightsに登録していただくのは、通訳案内士の資格を持つ方のみです。

これまで通訳ガイドの方たちは、旅行会社などのツアーに派遣されていました。でも、旅行会社の手配する宿泊ありのツアーに参加できないガイドもいます。たとえば主婦の方。能力があるのに、就業できないのは残念です。

たとえば、朝9時から12時までの半日ツアーに参加したい外国客がいた場合、それなら主婦の方でも仕事ができる。外国人旅行者には多様なニーズがあるのだから、それに応えられるようなマッチングサービスを提供したいと考えました」。

Triplelightsでは、外国人旅行者の立場からより自分に合った通訳ガイドを選択できるようサイト上に通訳ガイドの紹介動画を用意しています。一方、それぞれの通訳ガイドは自分の企画したツアーをサイト上に紹介。そのツアーに興味を持ってくれた外国人からサイト経由でメールの問い合わせがあると、日程の調整などのやり取りをし、仕事を請けることになります。
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実際にTriplelightsを介して外国人旅行者から仕事を請けている通訳ガイドの方に話を聞いたところ、次のように答えてくれました。

「メールが届くと、お客さまの希望日に仕事が請けられるかどうか答えます。その場合、家族構成や人数、特別なリクエストがあれば確認。ツアーコースに築地が入っているのに、お寿司が苦手という人もいますから。ご家族にお子さまがいると、スケジュールも柔軟に考えなければならないなど、事前の情報があると助かります。また国籍については聞かないようにしています。もし先約があって仕事を引き受けられないとき、国籍で差別しているように思われてはいけないからです。

これまでと違うのは、お客さまと事前にやり取りしているので、ツアー当日には気心知れたお友だち感覚で会えること。これからは自分の強みを積極的にアピールしていかないといけないと実感しています」。

ある通訳案内士団体の役員もこう評価しています。

「橋本さんのコンセプトやビジネスモデルは非常に興味深く、いわゆる、一般的なエージェントのツアーの下請けというイメージの強い通訳ガイドに対して、新しい業務提供、あるいは顧客確保のメソッドを提供しようとしているスタイルは評価できます」。

これまで本ブログでも述べてきたように、通訳案内士を取り巻く状況は、さまざまな課題を抱えつつも、大きく変わりつつあります。特に若い世代の参入のためには、こうした海外で人気を得ているガイドサービスを日本に持ち込むことも必要でしょう。

一方、確かに訪日外国人旅行者は増えていますが、その訪問先が一部の都市や観光地に集中しているという問題があり、新しいガイドサービスを提供している橋本さんにとっても気になるところでした。その背景には、特に地方において英語による情報発信が決定的に不足していることがあると橋本さんは言います。だから、いまだにメジャーどころを案内してほしいというニーズに偏ってしまうというのです。

そこで、橋本さんは新しい旅行ガイドブック「Planetyze(プラネタイズ)」の提供を4月20日より開始しました。

Planetyze(プラネタイズ)
http://planetyze.com

どんなサービスかについては、こう説明されています。

「Planetyze」は、「旅行ガイドブックで気に入った場所を選ぶと、旅程表が作成でき、その場所に精通した通訳案内士に案内してもらえるツアーマーケットプレイスへつながる」という、外国人のための新しい日本の旅の提案をします。

●定番以外も外国人に紹介する旅行ガイドブック

トラベリエンスの経験で、訪日外国人が希望する観光地が東京・京都など定番ばかりになるのはなぜかと考えたら、気が付いたのは彼らにさまざまな観光地の情報が届いていないこと。日本のことは日本人のほうがもっと詳しい。外国人への情報提供の経験がある株式会社ジャパンタイムズ元出版部長笠原仁子氏を日本版編集長として迎え、「外国人が旅行したい場所を発見できる」工夫をした記事をオリジナルに執筆し、日本全国を細かく網羅していったガイドブックを作っています。訪日外国人旅行者向けの英語版、日本人向けの日本語版からスタートし、今後多言語展開していく予定です。東京・京都はもちろんのこと、地方の名所旧跡を細かく網羅し、全国各地へ訪日外国人を送客することを目指します。

●旅程表作成

「Planetyze」ではワンストップで旅程表を作成できます。ガイドブックに掲載されている記事を読み、気に入った場所を旅行カレンダーに追加し、旅程表として印刷・ダウンロードすることができます。また、旅程表を作るのが難しい旅行者のために、通訳案内士が旅程を提案するサービスを提供します。

●通訳案内士によるツアーマーケットプレイス
日本全国の通訳案内士によるオリジナルツアーを提供します。いままでのトラべリエンスの実績をもとに、訪日外国人のニーズをふまえ、ガイドの自己紹介動画を揃えています。ガイドの語学力や知識・人柄を知ったうえで納得してツアーを申し込むことができます。


これまで多くの地方自治体が多言語化した地元の観光地図やパンフレットをたくさん制作してきましたが、どれほどの効果があったか大いに疑問でした。いまの時代、ネット上に情報を載せなければ意味がないからです。

それにしても、全国の地域情報を英語化して発信するというのは、壮大なチャレンジです。ですが、実は誰かがやらなければならないことでした。こういう取り組みはもっとみんなで応援していかなければならないと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-10 16:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 07日

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?

前回、通訳案内士になるための試験や適性について関係者らの声をまとめてみましたが、フリーランスとしての実際の働き方は、1年の中で繁忙期と閑散期があるなど、専業にするのはなかなか難しいところがあることもわかってきました。

通訳案内士になるには? 適性は?
http://inbound.exblog.jp/24449064/

ここでは視点を変えて、海外では通訳ガイドはどのような制度として運営されているのか考えてみたいと思います。海外から観光客が訪れる国や地域には、どこでもガイドという職業は存在するものだからです。

観光庁では、2009年7月に「通訳案内士のあり方調査に関する中間報告(海外通訳ガイド制度事例)」として以下の資料を公開しています。

http://www.mlit.go.jp/common/000058983.pdf

さらに、それを2014年12月の「通訳案内士の現状及び制度見直しの検討経緯」という報告書の中で簡略化して表に整理しています(「海外における通訳案内士制度」)。

ここでは以下の7カ国の事例が表にまとめられています。
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アメリカのように国として統一した制度自体がない国もあれば、中国のように自国民にしか資格を与えず、実力によってガイドに等級を設けている国などもあるようです。

しかし、これだけではよくわからないというのが正直なところです。ポイントは「業務独占」や「資格取得方法」「事後研修・育成制度」「無資格者使用に対する罰則」の具体的な中身がそれぞれの国情や旅行市場との関係でどう設定されているのか、でしょう。専門家による解説がほしいところです。

昨年2月刊行された『訪日観光の教科書』(高井典子、赤堀浩一郎著 創成社)という本の中で、英国の観光ガイド制度に関する記述があります。

英国における観光ガイドは「Blue Badge Tourist Guide(ブルーバッジツーリストガイド)と呼ばれています。英国政府公認の観光ガイド制度によって認定されているプロのガイドです。

「彼らの多くは旅行会社との契約ベースで仕事を受け、フリーランスのガイドとして働いており、その点は日本の状況とよく似ている。しかし、ガイド制度や人材育成システムが日本とは大きく異なる」そうです。

以下、英国と日本の通訳案内士の制度を比較している箇所を転載します(同書の174~175ページ)。

■制度としての特徴―適正重視の入学試験

英国のブルーバッチガイドは、英国政府公認の観光ガイド境界であるInstitute of Tourist Guiding(以降、ITGと表記)が認可する資格の中でも最高ランク(Level 4)の資格である。日本の通訳案内士試験のようにいきなり試験を受けるのではなく、まず上記のITGでのトレーニングを受講する資格を得て、そのうえで観光ガイドとしての教育を受けるシステムになっている。受講資格を得る手続きとしては、書類先行→基礎知識テスト(記述問題および小論文)→面接を経る必要がある(使用言語は英語)。

受講資格を得るために面接を課すには理由がある。観光ガイドとしての「適性」を見るためだ。英国に関する知識が豊富で高い語学力を有していたとしても、接客業務で必要となる高度な対人コミュニケーション能力が低い人はここでスクリーニングされてしまう。また、身だしなみや言葉遣いなども重要だ。面接では「英国の顔」として観光客を案内する資質があるかどうかを見る。こうして基礎知識と適性をクリアした人だけが、ITGのトレーニングコース受講を許可される「観光ガイド候補生」となる仕組みである。日本の通訳案内士試験においても、口述試験においてコミュニケーション能力などガイドの現場で必要となる実践的な能力を問う形式の試験形態への移行が見られるが、英国のシステムはより適性を重視しているようだ。

英語が母国語の人は半年、英語以外を母国語とする人は通常18ヵ月のトレーニングをITGで受ける。歴史、建築、美術、地理、英国の産業といった基礎的な講座を受講するとともに、実地研修にも参加しなければならない。実際にマイクを持って人前で話す訓練やボイストレーニング、ファーストエイドなどの実務的な講座も用意されている(使用言語は英語)。

この講座を終了後、最終試験をパスすることで、ガイド資格を取得できます。最終試験は筆記試験と実地試験があるそうです。

こうした英国の制度について、同書では次のように日本との違いを説明しています。

●日本の通訳案内士試験に比べよりハードルの高い資格であること。
●これらの試験やトレーニングは英語で行われることから、ITGが育成するのは「観光ガイド」であって「通訳ガイド」ではないこと。

基本的に日本とは人材育成の考え方が違うようです。

一方、こんな記述もあります。

「英国の観光ガイドは総じて「生きるための職業」としてガイドを選択している人は少ないようである。中産階級の知識人で、現役をリタイアしたあとに趣味としてガイドをする人、あるいはそもそも給与所得を必要としない人もいる。そのため、自分の趣味や得意分野を生かしたガイディングをする人が多い。もともと自分の趣味としてその道を極めた分野でガイドをするのである。英国ならではと思わされるのが、美術館や博物館、建築物やガーデンなどを専門分野とするガイドたちである」。

この記述はよく考えると微妙な意味を持っています。観光ガイドを一般的な意味で職業として捉えていないとも受け取れるからです。日本の通訳案内士でも同様のことは指摘されていますから、似た面があるのかもしれません。

ともあれ、インバウンドの歴史の長い英国では、「通訳ガイド」ではなく、あくまで「観光ガイド」を育成していく仕組みがしっかりできていることがわかります。その一方、「これは世界で通用する英語が母国であるがゆえの制度といえる」と指摘されているように、この制度の背景には、英語の本家本元の国という圧倒的な強みがあることもわかります。日本が同じようにできるとは限らないということです。

こうなってくると、もっと他の国の事情も知りたくなります。そのうえで、もし共通する部分や参考にできる部分があれば、それを取り入れるなどして日本独自の制度設計を考えるべきなのでしょう。日本はこの方面では圧倒的に海外から後れを取っているというのは否定できない事実だからです。

誰かこのようなテーマで研究をしている方はいないものでしょうか。そこのところがすごく知りたいものです。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-07 17:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 07日

通訳案内士になるには? 適性は?

通訳案内士の問題は、訪日旅行市場をこのまま順調に拡大させていきたい行政や旅行業者の思惑や、現場を支える現役の通訳案内士の人たちの事情を考慮することはもちろんですが、これからこの世界に入ってこようとしている若い世代の立場にたって考える必要もあると思います。

なにしろすでに見たとおり、この業界は高齢化が進んでいます。海外からやって来る旅行者は、自分の親のような、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんの年代ではなく、自分に近い世代の日本人にガイドしてもらいたいと思うはずです。自分ごととして考えればそうでしょう。では、この業界が若い世代を取り込むためにはどうすればいいのでしょうか。そもそも経験の少ない若い世代が現役で働くのは難しい仕事なのでしょうか。

ひとまず資格を取るにはどうしたらいいか、見てみましょう。観光庁のHPには資格の概要が、日本政府観光局(JNTO)のHPには受験に関する情報が掲載されています。

通訳案内士になるには(観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shiken.html

通訳案内士試験概要(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/interpreter_guide_exams/index.html
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※ここに載せたのは、2014年12月現在の観光庁の資料です。先頃発表された15年度の試験ガイドラインをみると、たとえば2次試験の面接時間が8分から10分に増えているなど、いくつか変更もあるので、詳しくはそちらを参照ください。

JNTOのHPによると「平成27年度通訳案内士試験受験申請受付は5月18日(月)~6月29日(月)」とあります。まもなく今年度の受験申請が始まるんですね。1次試験は8月のようです。

実は、いまある版元から通訳案内士を含めた観光ガイドになるためのキャリア本の制作をしていて、これまで何人かの現役の通訳案内士の方にお会いしてきました。そこでは、この試験に合格するためにはどんな勉強をすればいいかといった話もうかがってきましたが、語学的にネイティブに近い環境に恵まれた人などを除けば、それ相応の勉強を積み重ねない限り、クリアできない高いハードルがあるといえそうです。それは合格率などにも表れています。

実際にお会いした現役の通訳案内士の方々は、おだてるつもりではありませんが、みなさん人間的に魅力的な方たちでした。語学ができるというだけでなく、基本的に知的な能力の高い方たちだと思いました。さまざまな国籍の外国人旅行者を相手に「日本を売り込む」トークを繰り広げる毎日を送っている彼らは、共通して「引き出し(外国人が関心を持ちそうなあらゆるタイプの話のネタ)を多く持つこと」の大切さを語っておられました。そのためには、日々新しい情報をキャッチし、勉強を重ねていくことが不可欠だといいます。その意味で、プロの通訳ガイドとして評価を得るには、それ相応の時間と経験が必要とされることでしょう。

さらにいえば、向き合う相手に気を良くさせる気遣いやセンスを自然に身につけておられました。通訳ガイドにとって最も重要なのは、人が相手の仕事が無理なくできるかどうかということでしょう。

語学が好きなこととガイディングが得意かどうかは別の話だからです。これまで見てきたように、通訳案内士の登録者のうち全体の4分の1しか就業していないという現実は、一部の資格取得者のこの仕事に対する適性が必ずしもマッチしていなかったという面もあるのではないでしょうか。語学に関する唯一の国家資格ということで、自分の語学力を試すために試験を受けたという人の割合が高いという調査結果にもうなずけるところがあります。

それでも、ある時期までは訪日外国人旅行者の数がそれほど多くはなかったので、誰も困らなかったのです。しかし、状況は大きく変わりつつあります。

気になるのは、これだけの高い能力と努力が必要とされる通訳ガイドの仕事に見合った代価は得られるのか、ということです。そこが現状では判断の難しいところなのだと思われます。

今日通訳案内士に求められる資質や働き方などについて、通訳案内士団体のNPO法人GICSS研究会理事長のランデル洋子先生にお話をうかがったことあります。先生は現状をふまえたいくつかの具体的な提案をしておられます。

通訳案内士の第一人者、ランデル洋子先生の語る「求められるガイド」とは
http://inbound.exblog.jp/24051695/

ところで、少し別の観点から考えてみたいことがあります。

海外の同業者たちはどのような働き方をしているのだろうか、です。

もっと具体的にいうと、海外では通訳ガイドはどのように生計を立てているのか。この業界を志望している若い人たちがいちばん知りたいのは、そこではないでしょうか。制度設計も、それをふまえたものでなければ、新しい人材は参入してこないのではないか、と思えてなりません。

次回、この点を考えてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-07 09:45 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 06日

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか

前回、観光庁が主催する「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」等の中身を一部紹介しながら、関係者だけでは解決できない拡がりを持つに至った日本のインバウンドをめぐる問題を広く知ってもらうことが大事だと書きました。

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?
http://inbound.exblog.jp/24445622/

そのうえで、メディアの役割はとても重要です。

では、これまでメディアは「通訳案内士」問題をどのように報じてきたのでしょうか。

そこで、ネットを中心に通訳ガイド案内士をめぐる記事を探してみました。大手メディアの報道は少ないです。はっきり言って、メディアは十分この問題を報じてきたとは思えません。

無理もないともいえます。一般の日本国民には利害をともなわない世界だからでしょう。たとえば、3年前に起きた関越自動車道のバス事故によって多くの日本人乗客が死傷しましたが、運転手がふだんから訪日外国人を乗せたバスを運転していたこともあり、国土交通省は乗合バスの制度変更を急ピッチで進めました。しかし、通訳案内士の問題は、基本的に日本の消費者には関係ない話だからです。

もっともこれだけ外国人旅行者が増えてくると、外国語を使って案内する人材が必要であろうことは一般の我々にも理解できます。そのせいか、特に今年に入って報道は増えているようです。

以下、記事をいくつかの時期に分けて書き出してみました。潮目となるのは、観光庁設立から「検討会」の開催、東日本大震災、東京五輪開催決定などでしょうか(リンクできるものとそうでないものが混じっています。すべての記事をフォローできているわけではありません。ご了承ください)。

●2007年末~08年10月 観光庁設立まで

2007年12月15日(観光経済新聞)
国交省、通訳ガイド団体連絡会議の初会合開く

出席団体は、日本観光通訳協会、全日本通訳案内士連盟、通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会、関西通訳・ガイド協会、ひろしま通訳・ガイド協会、九州通訳・ガイド協会、中国語通訳案内士会、日本通訳案内士連合。
http://www.kankokeizai.com/backnumber/07/12_15/kanko_gyosei.html#02
※観光庁の「懇談会」は08年11月にスタートしているようですが、それ以前の07年12月に初会合があったようです。

2008年2月9日(観光経済新聞)
通訳ガイド制度周知へ、2月を強化月間に 国交省

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/02_09/kanko_gyosei.html

2008年2月23日(観光経済新聞)
地域限定通訳ガイド、岩手など4県の合格者は84人に

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/02_23/kanko_gyosei.html#02
※この時期すでに「地域ガイド」制度は動き出していることがわかります。

2008年4月3日(トラベルビジョン)
国土交通省、地域限定通訳案内士試験を新たに北海道、栃木で実施

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=35062

2008年8月30日(観光経済新聞)
通訳ガイドの低い稼働率が浮き彫りに、国交省初の実態調査で判明

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/08_30/kanko_gyosei.html#01
※国土交通省が初めて実施した「通訳案内士就業実態等調査事業」と思われる内容の報道です。

2008年9月1日(トラベルビジョン)
通訳案内士の専業率は10%、年収100万円未満38%−国交省、課題解決へ調査

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=37894
※この時期から通訳案内士の実態が明るみにされていきます。

2008.10.1観光庁設立

●2008年11月~11年2月 「検討会」スタートから東日本大震災直前まで

2008.11.19観光庁「通訳案内士のあり方に関する懇談会」第1回
※意見交換・認識共有の場の設置が目的

2008年12月6日(観光経済新聞)
通訳案内士就業実態調査

http://www.kankokeizai.com/image/top/081206_6.pdf

2008.12.11観光庁「懇談会」第2回
2009.1.27同第3回

2009年3月17日(レコードチャイナ)
<中国語ガイド>無資格横行が有資格者を圧迫、罰金の適用なく―日本

http://www.recordchina.co.jp/a29361.html
※興味深いことに、この問題に早くから関心を向けていたのは、中国情報を発信するニュースサイトでした。

2009.6.26観光庁「通訳案内士のあり方に関する検討会」第1回
※具体的な方策を検討

2009年6月27日(レコードチャイナ)
無資格者の観光客案内には問題多い=中国からの個人ビザ入国解禁控え、ガイド問題で活発な議論―観光庁

http://www.recordchina.co.jp/a32789.html

2009年7月11日(観光経済新聞)
観光庁、通訳案内士制度について検討会
就業率の低さ、地域や言語によって人材不足、無資格ガイドなど問題

http://www.kankokeizai.com/backnumber/09/07_11/kanko_gyosei.html

2009.7.31観光庁「あり方検討会」第2回

2009年8月3日(レコードチャイナ)
有資格者足りなくない!?「間違った前提」にガイド側が強い懸念―観光庁通訳案内士検討会

http://www.recordchina.co.jp/a34007.html
※通訳案内士不足という一般的な理解に対して通訳案内士団体が反論しています。

2009年8月4日(レコードチャイナ)
映画ロケで大人気の北海道ツアー、深刻な中国語ガイド不足が悩みの種?

http://www.recordchina.co.jp/a34066.html

2009.11.19(日本観光協会)地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会
http://vg.nihon-kankou.or.jp/admin/taikaikiroku/pdf/nara_houkoku.pdf

2009.10.8観光庁「あり方検討会」第3回

2009年10月11日(レコードチャイナ)
中国からの低レベルツアーに強い懸念!無資格ガイド問題置き去りに業界側は反発―観光庁検討会

http://www.recordchina.co.jp/a36085.html
※中国からの団体ツアーの問題が報じられ始めたのはこの頃からです。

2010年1月21日(東京新聞)
無資格ガイドを容認?

「日本を訪れる中国人観光客が激増している。本来は「通訳案内士」の国家資格を持ったガイドが観光案内するはずなのだが、格安ツアーは無資格の添乗員がガイド代わりだという。そんな中、国の検討会で「通訳案内士の業務独占や名称独占の廃止」が持ち上がり、通訳案内士らが反発している」(一部)。
※2009年から10年の夏(この年の9月、尖閣諸島沖漁船衝突事件が起きています)まで、中国からの観光客の急増が話題になっていました。“爆買い”という言い方もこの頃から始まったものです。一方、こうした勢いのなか、通訳案内士の関係者らは、制度が形骸化することを怖れ、反発を強めていました。

2010.2.22観光庁「あり方検討会」第4回

2010年2月27日(レコードジャパン)
有資格ガイドは仕事なしの「不思議な」旧正月?悪質な訪日ツアーの調査・取り締まり求める―観光庁検討会

http://www.recordchina.co.jp/a40064.html

2010.3.15観光庁「あり方検討会」第5回

2010年3月30日(レコードチャイナ)
JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局

http://www.recordchina.co.jp/a40879.html
※通訳案内士法違反が初めて摘発されたようですが、その後この問題がどうなったかについてはよくわかりません。

2010年4月2日(産経新聞)
通訳案内士資格 見直し議論波紋

「国が進めている外国人向けの有償ガイド「通訳案内士」資格の見直し議論が波紋を呼んでいる。中国人などアジアからの観光客急増に対応するため、観光庁の有識者会議で、ボランティアや留学生を有効活用する規制緩和策が浮上。「無資格ガイドの容認につながり、仕事を奪われかねない」と現役の案内士が猛反発している」(一部)。

2010.5.14観光庁「あり方検討会」第6回

2010年6月18日(レコードチャイナ)
<新ガイド>「業界は実質崩壊」―JFG山田理事長インタビュー

http://www.recordchina.co.jp/a42980.html

2010.6.25観光庁「あり方検討会」第7回

2010年7月3日(観光経済新聞)
通訳案内士、業務独占の廃止検討 観光庁

http://www.kankokeizai.com/backnumber/10/07_03/kanko_gyosei.html

2010年7月13日(日本経済新聞)
「通訳ガイド」国家資格不要、中・韓国語など対応しやすく

「観光庁は来年度をメドに、国家資格を持たない人でも有料の外国人向け通訳ガイドができるように規制を緩和する。現行の「通訳案内士」制度がアジアからの観光客急増に対応できていないためだ。現在無料で通訳している日本人のほか、留学生や現地旅行会社のガイドといった外国人にも解禁される。同庁は一定の質を確保するため、研修ガイドラインを作成し、自治体や企業が認定する仕組みを検討中だ」(一部)。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1502L_S0A710C1CR8000/

2011.1.14観光庁「あり方検討会」第8回
2011.3.25同第9回

2010.11.26観光庁「通訳案内士研修の高度化に関する検討会」第1回
2011.2.7同第2回

●2011年3月~13年8月 東日本大震災発生

2011.3.11 東日本大震災発生
※通訳案内士をめぐる熱い議論は、震災によって訪日客が激減していくなかで沈静化してしまいました。通訳案内士試験の受験者数も、この頃大きく落ち込んでしまいます。

2011.3.18観光庁「通訳案内士研修の高度化に関する検討会」第3回

2011.3.31観光庁「通訳案内士制度のあり方に関する最終報告書」
http://www.mlit.go.jp/common/000140060.pdf
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2011.10.4観光庁「通訳案内士試験ガイドラインに関する検討会」第1回
※通訳案内士試験の内容や採点基準などの検討
2011.11.28同2回
2012.1.23同3回

2012.4.16観光庁「通訳案内士試験ガイドラインの改訂」
http://www.mlit.go.jp/common/000208491.pdf

2012年10月30日(トラベルビジョン)
観光庁、通訳案内士養成セミナー開催へ、全国20ヶ所で

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=55409

2013.1.9観光庁「通訳案内士専門性研修支援事業」を実施

2013年5月30日(日本経済新聞)
九州の官民、独自の通訳ガイド資格創設 アジアから誘客狙う

「九州の官民でつくる九州観光推進機構(会長・石原進九州旅客鉄道会長)と九州7県、福岡市は2014年度、九州独自の通訳ガイドの資格を創設する。観光産業振興に向けた国の特区指定を受けた取り組み。外国人留学生らに九州の歴史などについての研修を実施、認定する。旅行業者などに活用を促し、韓国や中国などアジアからの観光客の誘致強化につなげるのが目的だ」。
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO55620370Z20C13A5LX0000/

2013年5月30日(琉球新報)
沖縄 地域限定通訳案内士セミナー参加者募集

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-207322-storytopic-4.html

●2013年9月~現在 東京五輪決定、1000万人突破以後

2013年9月8日(日本経済新聞)
2020年五輪、東京開催が決定 56年ぶり

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG07047_Y3A900C1000000/
※東京五輪決定で再び訪日外国人旅行者に対する関心が盛り上がり始めます。

2013年10月28日(スポニチ)
「通訳案内士」も東京五輪心待ち!プロ1万6779人が登録

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/10/28/kiji/K20131028006896740.html

2013年12月1日(観光経済新聞)
札幌市が札幌特区通訳案内士制度創設、まず17人が登録

http://www.kankokeizai.com/backnumber/13/12_01/chiiki_kanko.html

2014年1月29日(東京新聞)
「五輪までに2000万人」大丈夫? 訪日客ガイド不足

「日本を訪れる外国人旅行者を案内する観光ガイドの不足が深刻化している。ガイド不足に向けて、観光庁は「通訳ガイド制度」の創設を打ち出したが、これが逆に既存のガイド資格の受験者数減少を招いている。観光庁は新資格創設を事実上断念。政府は東京五輪が開かれる二〇二〇年までに外国人旅行者を現在の倍の二千万人に増やそうとしているが、政策の混迷が足を引っ張っている」(一部)。
※一部の通訳案内士団体は、こうした案内士不足という見方に反論しているようです。

2014年2月5日(レコードチャイナ)
簡単な研修でガイド業が可能に?通訳案内士団体反発=経産省が法案提出の見込み―日本

http://www.recordchina.co.jp/a82823.html

2014年4月21日(Cnet Japan)
東京五輪に「質の高いガイド」を--外国人観光客と通訳案内士をつなぐ新サービス

http://japan.cnet.com/news/service/35046839/

2014年12月1日(中日新聞)
通訳案内士試験、珍問だらけ 観光庁見直し検討

「外国人観光客に同行し、外国語で案内する国家資格「通訳案内士」の試験問題について、「観光ガイドの実務と無関係な問題が多すぎる」として業界から改善を求める声が上がっている。訪日外国人観光客は昨年、一千万人を突破して過去最多。通訳案内士の需要は高まっているが、このままでは十分な能力を持たない人材が現場へ出かねないという。所管する観光庁は見直しの検討を始めた」(一部)。

2014.12.24観光庁「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」第1回
※新たな通訳案内士制度を構築するための具体的な方策について検討

2014年12月25日(トラベルビジョン)
第1回通訳案内士制度のあり方検討会開催-15年7月に最終まとめ

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65121

2015年1月15日(excite)
アジア圏旅行客増大に対応 通訳案内士制度見直しへ

http://www.excite.co.jp/News/politics_g/20150115/Economic_45511.html

2015.1.20観光庁「制度のあり方検討会」第2回

2015年1月21日(京都新聞)
「京都通」の通訳ガイド100人増へ 特区活用で観光振興

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150121000011
※京都市は独自の通訳ガイド育成に積極的のようです。

2015年1月24日(観光経済新聞)
観光庁、通訳案内士の制度見直しへ会合

http://www.kankokeizai.com/backnumber/15/01_24/inbound.html

2015.1.26観光庁「制度のあり方検討会」第3回
2015.2.9同第4回

2015年2月9日(トラベルビジョン)
JATAやはとバスから意見聴取、法改正要望も-通訳案内士検討会

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65720

2015.2.17観光庁「制度のあり方検討会」第5回

2015年2月17日(トラベルビジョン)
旅行会社から要望続出、新たな資格案も-通訳案内士検討会

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65835

2015年2月18日(産経新聞)
7外大が連携し「東京五輪」へ通訳育成

http://www.sankei.com/life/news/150218/lif1502180004-n1.html

2015年3月2日(産経ニュース)
通訳ガイド拡大へ規制緩和 訪日外国人観光客の急増に対応 観光立国に向け政府方針

「政府が、報酬を受けて外国人旅行客を案内できる国家資格「通訳案内士(通訳ガイド)」制度の規制緩和を検討していることが1日、分かった。現行の単一資格を見直し、語学力やガイド知識のレベル、訪日客の案内回数といった実務実績などに応じた等級制を新たに導入する案が有力だ。資格認定の幅を広げて、訪日客の急増に伴う通訳ガイド需要の拡大・多様化に対応。無資格ガイドによるトラブル防止にもつなげて、「おもてなし」の質を高める狙いだ」(一部)。

2015.3.6観光庁「制度のあり方検討会」第6回

2015年3月8日(トラベルビジョン)
通訳案内士検討会、自治体などから意見聴取、次回から議論開始

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=66142

2015.3.23観光庁「制度のあり方検討会」第7回

2015年3月23日(トラベルビジョン)
通訳案内士検討会、4つの論点に集約-試験は語学力重視へ

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=66407

2015年4月11日(旬刊旅行新聞)
通訳案内士制度の検討会、業務独占の是非も課題

http://www.ryoko-net.co.jp/?p=12092

2015年04月16日(京都新聞)
通訳ガイド不足?十分? 地域資格めぐり論争

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150416000026

2015年4月22日(NHK)
外国人向け「地域限定」通訳ガイド新設へ

「日本を訪れる外国人旅行者の増加に伴って、有料で通訳ガイドができる国家資格の「通訳案内士」が地方を中心に不足していることから、観光庁は自治体の研修を受ければ地域を限って有料で通訳ガイドができる新しい制度の創設を検討することになりました」(一部)。
http://inbound.exblog.jp/24442716/

これらの記事にはいろんな論点が含まれているため、あらためて個々の論点について考えてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-06 17:43 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 06日

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?

前回、通訳案内士の実態について観光庁の報告書を頼りに簡単に解説してみました。

NHK報道をめぐり思う。通訳案内士って何だろう?
http://inbound.exblog.jp/24442716/

そこでは、4月22日のNHKの報道に対する若干の疑問も指摘しました。ある関係者も次のように語ってくれました。

「2020年の東京五輪に向けて、あるいは地方創生の一環として、通訳案内のできるガイドの数を増やしたい、そのために簡易な形のガイドの制度を作って普及させたいというのは、観光庁と地方自治体との共通認識だと思います。旅行業界も同調しているように思えます。その意味で、「地域限定」ガイドの新設は、確かに観光庁の検討会でもほぼその方向で合意に向けて動いているのは事実ですので誤報ではありませんが、法改正や新制度の法的対応には立法措置が必要な場合も多いので、そこまで具体化していない時点でここまで報道してしまうのはどうかと思いますし、既定路線で改革を進めたがっている政府当局の意思と焦りのようなもの感じます」。

NHKはこうした見方があることをどこまで承知のうえで報じたのかな? そうぼくも感じました。というのは、自分も数回ではありますが、観光庁の検討会を傍聴したことがあるからです。

ところで、ここでいう「有識者や旅行関係者などで作る会議で制度の改善を検討する会合(検討会)」とは何のことでしょうか。

観光庁のHPによると、その正式名称は「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」といいます。

「我が国に通訳案内士制度が創設されて60年以上が経過している中、訪日外国人旅行者数の増加及びニーズの多様化に的確に対応できるよう、中長期的な視野から、新たな通訳案内士制度を構築するための具体的な方策について検討を行うため、「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」を設置しました」。

http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/tsuyaku.html

「検討会」の主なメンバーは以下のような人たちです。

通訳案内士団体
旅行業者
ホテル業者
地方公共団体
ボランティアガイド団体
日本政府観光局(JNTO)

通訳案内士は基本的にフリーランスの個人事業者ですが、通訳ガイドの仕事は、上に挙げたさまざまな業界との関係の中で成り立っています。仕事を発注してくれるのは、たいてい旅行業者やホテル業者、場合によっては地方公共団体のこともあるでしょう。また通訳案内士試験の運営をしているのは、日本政府観光局(JNTO)です。通訳案内士制度がどうあるべきかについては、彼ら自身がどう考えるかだけではなく、関係者らとさまざまな課題について協議していく必要があるわけです。

ちなみに、通訳案内士団体については、観光庁のHPにこう説明されています。「通訳案内士法において「通訳案内士の品位の保持及び資質の向上を図り、併せて通訳案内に関する業務の進歩改善を図ることを目的とする団体は、観光庁長官に対して、国土交通省令で定める事項を届け出なければならない。(通訳案内士法第35条)」。実際には、社団法人や協同組合、NPO法人などさまざまな運営主体となっていますが、通訳案内士自身による業界団体です。

主な通訳案内士団体(観光庁HPより)
http://www.mlit.go.jp/common/001067295.pdf

さて、この「検討会」の立ち上げは、観光庁が設立された2008年の秋にまでさかのぼります(最初は「懇談会」として始まっています)。

以後の経緯については、観光庁のHPに詳しく掲載されています。関係者らの発言や主張は閲覧できますが、あまりに膨大な内容であるため、ひとまず昨年12月に観光庁がまとめた報告書「通訳案内士の現状及び制度見直しの検討経緯」の中から「過去の検討会の開催状況」という資料を紹介しましょう。
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これを見ると、昨年12月から最近まで実施されていた「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」以前にも、4つの「検討会」があったことがわかります。正直なところ、これほど多くの関係者の声を集め、東日本大震災後などに一時中断はあったものの、7年近く続けられてきた「検討会」であることに驚きすらおぼえます。

では、そこでどのような内容が議論されたのでしょうか。これについても、前述の報告書から「過去の検討会等における主な意見」の記述を紹介することにしましょう。

意見①通訳案内士に求められる役割
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ここでは、3つの役割が期待されていることがわかります。すなはち、「語学力・豊富な知識」「ホスピタリティ」「旅行者の旅程管理」です。これらをすべて兼ね備えるというのは、そんなに簡単なことではないように思います。

意見②通訳案内士の試験
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ここではふたつの若干対立して見える意見に分かれているようです。ガイドの質に関わる問題だけに、当事者も含め、関係者にとっても意見の分かれるところなのでしょう。

意見③通訳案内士の研修
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訪日外国人旅行者の急増にともない、通訳ガイドに求められるニーズも多様化しており、試験合格後にもさまざまな研修が必要とされている実態がよくわかります。

意見④通訳案内士の地域・言語面での偏在
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前回述べた「都市」と「英語」への偏在が、訪日旅行市場の現場でどんな支障をきたしているのか、見えてきます。

意見⑤地域限定通訳案内士・特例ガイド
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2008年頃から進めてきた地域限定通訳案内士・特例ガイドの育成が思ったようには進展していないことがわかります。一般国民からみると、通訳案内士の実態すらよく見えない現状において、新設された通訳ガイドの存在とそれをめぐる議論の内容は、どこに落としどころがあるのか、よくわからないというのが正直な印象です。

意見⑥通訳ガイド料金、ボランティアの活用
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ここでは前回触れた通訳案内士の就業実態の背景を物語る意見が見られます。たとえば「ガイド料金の価格破壊」「旅行者が急増しているアジア諸国」などに関するものです。ボランティアの問題についても、現場からは厳しい声が聞こえてくるようです。

意見⑦無資格ガイド・悪質ガイドへの対応
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これが日本のインバウンドにとって実に悩ましい海外の「無資格ガイド・悪質ガイド」問題です。この件については、別の機会で実態も含め述べるつもりです。

意見⑧通訳案内士の活動機会の拡大 等
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ここでは外国人旅行者と通訳案内士をマッチングするシステムの構築や制度そのものに対する疑問などが触れられています。

これまでメディアは急増する外国人旅行者がもたらす「消費」や「経済効果」について多く報じてきました。ところが、現場の関係者の認識はそれほど単純なものではないことが、通訳案内士をめぐる「検討会」を通じて見えてきます。実際に、訪日外国人に接して旅行の案内をしている彼らだからこそ、抱えざるを得ない問題があるのです。

またこの問題は、それぞれの関係者ごとに見え方も違っているようです。これらの意見を集約して、新制度を立ち上げていくことは確かに簡単ではないでしょう。

ひとまずできることは、一般国民には見えにくい通訳案内士の現場をめぐる状況を広く知ってもらうことだと考えています。ここに至っては、関係者だけで解決できる問題ばかりではないことも多くの人にわかってもらうことが大事かと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-06 11:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 05日

NHK報道をめぐり思う。通訳案内士って何だろう?

GWに入る前の週、NHKが以下のニュースを報じています。もうネットには記事が残っていないので転載します。

外国人向け「地域限定」通訳ガイド新設へ(2015年4月22日 NHKニュース)

「日本を訪れる外国人旅行者の増加に伴って、有料で通訳ガイドができる国家資格の「通訳案内士」が地方を中心に不足していることから、観光庁は自治体の研修を受ければ地域を限って有料で通訳ガイドができる新しい制度の創設を検討することになりました。

外国人旅行者に通訳をしながら、有料で観光ガイドをする場合、原則として通訳案内士の国家資格が必要ですが、外国人旅行者が増加するなかで地方を中心に通訳案内士が不足しています。

観光庁は有識者や旅行関係者などで作る会議で制度の改善を検討してきましたが、22日の会合で見直しの案が示されました。具体的には、自治体の研修を受ければ、一定の地域に限って、外国人に対して有料で通訳ガイドができる「地域ガイド制度」を全国的に導入することを検討するとしています。

また増加している東南アジアからの観光客の需要に応えるため、現在、英語や中国語など10か国語しかない通訳案内士の言語を増やし、インドネシア語やベトナム語などを加えることも検討することにしています。

一方、制度の罰則も強化し、資格を持たない通訳ガイドを有料で手配した旅行業者を罰則の対象にできないか議論することにしています。観光庁は制度の見直しによって、外国語ができる主婦や学生などを活用しやすいようにして、地域に根ざした通訳ガイドを増やしたい考えで、今後検討を重ねたうえで、ことしの夏までに結論を出すことにしています。
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通訳案内士 大都市に集中

通訳案内士は、旅行会社などから依頼されてツアーに同行し、外国人の観光客に日本の地理や歴史、文化などを分かりやすく説明します。

原則として、「通訳案内士」の資格を持たない人が報酬を得てガイドの仕事をすることは法律で禁じられています。

60年以上前の昭和24年に創設されたこの制度は、このところ、多くの課題が指摘されるようになりました。

その1つは地方での通訳案内士の不足です。

通訳案内士は、去年の4月時点で全国に1万7000人余りいますが、そのうちの4分の3は東京や大阪などの大都市に集中しています。

このため観光庁は、3年前から全国の9つの地域(※)を特区に指定し、自治体の研修を受ければ、その地域に限り、報酬を受け取って通訳ガイドの仕事ができるようにしました。

この特区で、通訳ガイドになった人は633人いて、観光庁は「一定の成果を挙げ始めている」として、この制度を全国に拡充しようとしているのです。

※札幌市、福島県、高山市の中心市街地、和歌山県の一部、泉佐野市、奈良公園、沖縄県、九州、島根の一部

試験と言語は

通訳の言語にも偏りがあります。

案内士の資格を取ることができる言語は、10か国語。このうち7つが欧米のことばで、アジアは、中国語、韓国語、タイ語の3つだけです(※)。

しかも全体の67%は、英語の通訳で、中国語ができる人は12%韓国語は5%タイ語ができる人は僅か0.1%にとどまっています。

急増するアジアからの観光客の需要に、どう応えて行くかが課題となっています。
さらに通訳案内士の国家試験の見直しも課題です。

去年の案内士の合格率は22.7%。かつてより合格率は高くなったとは言え、難問や奇問が多く、およそ4人に1人しか受からない状況です。

問題は、複数の選択肢の中から1つの正解を選ぶ形式ですが、2012年の年末と2013年の年末の日経平均株価を問う問題や、高知県室戸岬での林産資源の活用方法を答える問題など、外国人向けの観光ガイドには、必ずしも必要とされないような細かい知識が求められています。

このように試験が実務に沿った内容になっていないという指摘があるため、観光庁は試験問題の見直しも行いたい考えです。

例えば、外国人のニーズの多様化に合わせて、ポップカルチャーなど新しい文化やトレンドの知識を盛り込むことや、外国人とのコミュニケーション能力を重視して行くことなどが検討される見込みです。

※対象言語=英、仏、独、露、スペイン、イタリア、ポルトガル、中国、韓国、タイ

鹿児島県 現状は

日本を訪れる外国人旅行者は、去年1年間で、1300万人を超えて過去最高となりましたが、多くの自治体では、通訳ガイドの不足に頭を痛めています。

温泉をはじめ、多くの観光地を抱える鹿児島県では、去年1年間に延べ25万人を超える外国人が宿泊しました。前の年よりおよそ36%増えています。

最近、増加が目立つのが海外からクルーズ船で訪れる外国人たち。船を下りた観光客の多くは、旅行会社が手配したバスで観光地に向かいますが、案内をするガイドが必要になります。

しかし鹿児島県内には、資格を持った通訳案内士が65人しかいないため、大型の船が入港する時には、他の県から応援を呼んで対応しているということです。

鹿児島県の通訳案内士の1人、内山眞弓さんは「観光していて、ただ通りすぎるのと、通訳案内士から詳しい話を聞くとでは全然捉え方が違う。大きい船が入ると、東京、大阪、福岡、広島あちこちから応援がきて、数が足りない状況です」と話していました。

このため鹿児島県は、通訳ガイドの育成に力を入れています。

韓国や中国からの観光客が多い九州では、おととし、国から特区の指定を受けて、自治体などが主催する中国語と韓国語の研修を受講すれば、九州内に限り通訳ガイドの仕事ができるようになりました。

報酬も受け取ることができるため、今回、国が検討を始める「地域ガイド制度」を先取りした形です。

鹿児島県では、特区の制度を使って、地元の通訳ガイドが26人誕生しました。地元の歴史や文化の紹介のしかたを教わりながら、ガイドとしての質の向上を図っています。

鹿児島県観光課の五田嘉博課長は「通訳案内士は非常に難しい試験なので、短期的に増えるのは難しい現状にある。急増する外国人旅行者に対応するためには、特区ガイドを増やしていかないといけない。鹿児島の魅力を多くの外国人に伝えて、また来たいと持ってくれるガイドをしてもらいたい」と話していました」。

さて、このニュース、視聴者はどう理解したでしょうか。そもそも「有料で通訳ガイドができる通訳案内士」とはどんな資格なのか。

一般の視聴者にとって、この問題をどのように理解すればいいか、よくわからないところが多いと思われます。あらためて言うまでもないことですが、通訳ガイドのサービスを受けるのは日本を訪れた外国人であり、日本の消費者ではないからです。もちろん、日本人も海外旅行先で通訳ガイドのサービスを受けたことはあるでしょうが、現在日本で行われている通訳ガイドの質や、居住都市、言語の片寄り、人材不足、制度の見直しといった問題について、ぴんとことないのは無理もない話だと思われます。

一方、この問題の当事者である現役の通訳案内士の人たちはこのニュースをどう受け取ったでしょうか。彼らは事業者のひとりとして、新設されるという「地域限定」通訳ガイドが自分の仕事にどう影響を与えるのか、気にしていることでしょう。

さらにいえば、東京五輪開催や訪日外国人旅行者の増加で、いはゆる「おもてなし人材」が求められるなか、将来観光ガイドとして外国人の旅行を案内したり、接遇する仕事に就きたいと考えている若い世代にとっても、この報道と議論の行方は関心のあるところでしょう。

そこで、通訳案内士の現状について考えてみたいと思います。観光庁の以下のサイトをみると、かなり具体的な状況が公開されています。

通訳ガイド制度
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/tsuyaku.html

以下、その内容の一部を見ていきましょう。

通訳案内士とは
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通訳案内士試験に合格した人に与えられる資格です。

通訳案内士の仕事の受注の流れ
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通常、通訳案内士には旅行会社などから通訳ガイドの仕事が発注されます。

通訳案内士の合格者・登録者数
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受験者数は2005年頃から増えていますが、09年頃には下がり始めています。また13年に急に合格率が上がっています。といっても25.5%で、4人に1人の合格率です。NHKは、「去年(14年)の案内士の合格率は22.7%。かつてより合格率は高くなったとは言え、難問や奇問が多く、およそ4人に1人しか受からない状況です」と報じています。

この点については、関係者の間では逆の意見もあるようです。合格率が上がることで、質が低下するのではないかという懸念です。

通訳案内士の登録者数(都道府県別)
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東京都や神奈川県、大阪府、千葉県、兵庫県、埼玉県、京都府などの都市部で75%を占めています。都市への片寄りとはこのことです。

通訳案内士の登録者数(言語別)
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2014年4月現在、通訳案内士として登録しているのは17736人。そのうち66.9%が英語(11865人)で、次が中国語(2202人)です。14年に日本を訪れた1341万人のうち、アジア客が全体の約8割、また全体の半数近くが中国語圏(中国、台湾、香港)の人たちだったことからすると、中国語ガイドがわずか2202人と聞けば、なるほど人材不足であると思わざるを得ないでしょう。

通訳案内士の全体像
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これがすでに始まっている地域限定通訳案内士」「特例ガイド」の実態です。「3年前から全国の9つの地域を特区に指定し、自治体の研修を受ければ、その地域に限り、報酬を受け取って通訳ガイドの仕事ができるようにしました」と説明されています。NHKは「観光庁は『一定の成果を挙げ始めている』として、この制度を全国に拡充しようとしているのです」と報じています。

いずれにせよ、訪日外国人旅行者が東日本大震災以降のここ数年で500万人以上増えたという市場の激変があるだけに、通訳ガイドの人材育成は待ったなし、というのは多くの関係者の共通の認識でしょう。

ところが、観光庁では「通訳案内士の就業実態等について」(2014年12月)という報告もまとめていて、そこにはかなりショッキングな内容が書かれています。

通訳案内士の就業実態等について
http://www.mlit.go.jp/common/001066340.pdf

その一部を紹介します。

通訳案内士の年齢構成
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ここには「通訳案内士は、どの年代にも満遍なく分布している」と書かれていますが、年齢別で最も多いのは50代(31%)で、60代(24%)、40代(23%)と続きます。一般的に働き盛りと思われる30代(9%)、20代(1%)がこれほど少ないとは驚きではないでしょうか。

就業者の就業日数
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「就業者の年間就業日数は、30日以下が半数以上を占めており、より一層の活用方策が求められる」とあります。しかし、社会一般の通念からすると、年間30日以下の就業で生計を立てているとは考えられません。

通訳案内業に関わる年収
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「就業者の年収割合は、200万以下が約半数を占める」とあります。この数字からも、通訳案内業で生計を立てているといえるのだろうか、という疑問が生じます。

※ちなみに、観光庁の2009年の通訳案内士に関する報告書の中に、通訳ガイドのガイド料金の目安が記されています。そこには「1日25000円~45000円 半日20000円~30000円」とあります。
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通訳案内士の兼業先
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このデータをみて納得した人も多いでしょう。兼業先として「通訳・翻訳、学校教職員、塾・語学学校講師」があり、「主婦(夫)」の割合が高いというのが、通訳案内士の実態だったのです。

だとしたら、NHKが報じていた通訳ガイドの人材不足という指摘の妥当性はどうなのでしょうか。確かに、訪日外客がものすごい勢いで増えているのは事実なので、そう言って間違いではないとは思いますが、実際に資格を持ちながら、これほど就業実態が少ないという状況をどう考えたらいいのか。

次回以降、関係者の声を聞きながら、この問題をさらに考えてみたいと思います。

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?
http://inbound.exblog.jp/24445622/

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか
http://inbound.exblog.jp/24446629/

通訳案内士になるには? 適性は?
http://inbound.exblog.jp/24449064/

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?
http://inbound.exblog.jp/24450294/

海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう
http://inbound.exblog.jp/24460875/

通訳案内士制度をめぐる議論がかみ合わないのはなぜか
http://inbound.exblog.jp/24463450/

無資格ガイド問題とは何か?
http://inbound.exblog.jp/24472149/

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた
http://inbound.exblog.jp/24486566/

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル
http://inbound.exblog.jp/24489096/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-05 16:41 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 04月 17日

これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている

昔アジアの国々では、おかしな日本語の使われ方をした表示や商品コピーが氾濫していました。今でも見かけることはありますが、そういう物件を見つけては脱力感を味わいつつ、面白がっていたものです。

たとえば、海外のお土産店などに書かれた「どうぞフタタビよくいらっしやいませ」(「またのお越しをお待ちしております」のつもり?)というような日本語表示です。

雑誌『宝島』で連載されていた「VOW街のヘンなもの」という読者コーナーには、国内外の看板や標識、商品コピーなどに見られる誤植や間違った日本語の例が数多く投稿されていました。海外旅行に行ってわざわざおかしな日本語を探したり、変な日本語が書かれたTシャツを土産にしたりする、なんてことを競い合っていたのです。

VOW街のヘンなもの
http://vowtv.jp/

ところがです。最近の訪日中国客とその爆買い旋風にあおられた全国各地の観光地や量販店などで、同じことが起きてしまっているようなのです。

そうなんです。いまや日本でも、間違った中国語が使われた看板や標識、商品表示が続々と現れ、中国語VOWな世界と化してしまっているのです。

海外でもそうであるように、そのまちに暮らすコミュニティの人たちはほとんどその間違いに気づいていません。この場合、それに気づくのは中国語を使っている人たちです。彼らから見れば、「なんじゃこりゃ!?」という感じでしょう。

このことをぼくに教えてくれたのは、台湾のドラッグストア研究家の鄭世彬さんです。以下、彼が見つけてぼくに送ってくれたVOWな中国語表示をいくつか紹介します。

台湾のドラッグストア研究家、鄭世彬さん
http://inbound.exblog.jp/24182824/

まず単純に笑っちゃうものから。これは大阪のあるコンビニに貼られていた中国語表示です。
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「从清晨到深夜 你可以购买便利店 上午7:00~2300(全年无休)」

これを見たとき、鄭さんは「エーっ」と思わず声を上げたそうです。なぜなら、これは「早朝から深夜まで、あなたはコンビニ店を購入できます」という意味になるからです。購入できるのは商品であって、コンビニ店舗そのものではありませんよね。

正しくはこうなります(以下すべて、ぼくが中国語を教えていただいている中国人大学院生に添削してもらったものです)。

「可以在便利店买东西 7:00~2300(全年无休息日)」

次は某量販店の告知です。「万引きは犯罪です。発見次第、警察に通報します」と日本語では書かれているのですが、中国語簡体字の表記はこうです。
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「高是犯罪,找到在次序和警察通」

ここでも、鄭さんは一瞬頭がポカーンとしたそうです。「高」って誰だ? 中国人の名字に高さんというのはよくありますが…。なぜこんな単純な間違いをしたのか、笑うしかなかったそうです。万引き=偷窃です。

正しくはこうなります。

「偷窃是犯罪,一旦被发现将被通知警察」

次はもうなんというか、たいして中国語のできないぼくから見ても、唖然としてしまいました。「多目的トイレ」の中国語繁体字表示です。
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「多功能馬桶」

「馬桶」というのは、室内で使用するふた付き簡易トイレ、要はおまるのことです。いまのように高層ビルが建つ30年くらい前、水洗化の遅れていた上海では、ふつうに使っていたそうですが……。このトイレ、ウォシュレットや赤ん坊を寝かせるベッドなども付いた最新式のものだと思われますが、なぜこういう中国語が充てられたのか。悪意すら感じられないでもない。トイレの中国語は、初級者でも知っている「洗手間」「廁所」でいいはずなのに。鄭さんも、さすがにびっくりしたそうです。

【追記】
後日、ネットで以下の記事を見つけました。

日本で爆買いされているウォシュレットが売れている理由
http://omiyagejapan.blue/omiyage/panasonicwashlet.html

この記事によると、ウォシュレットは中国では「馬桶蓋」と呼んでいるようです。そこで、鄭さんにこれは正しい理解かどうか尋ねてみました。以下、彼のメールによる回答です。

「「馬桶蓋」は台湾では、一般に便座の蓋の意味です。ウォッシュレットは「免治馬桶座」と言っています。調べたところ、中国では一部の人がウォッシュレットのことを「智能馬桶蓋」と呼んでいるようです。

もしかしてそこから略してそう呼んでいるのではないかと思います。でも、「馬桶蓋を買う」という言葉は中国人なら理解できるかもしれませんが、台湾人には便座の蓋を買うことに聞こえるため、なんで蓋だけ買うの? と理解不能かもしれません。やはり台湾と中国の言葉遣いは大きな差がありますね」。

以下は、ちょっと惜しい!という例。

これもある量販店の表示です。
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「我可以使用银联卡 可使用 各种信用卡」

「当店では、中国のデビットカードである銀聯カードが使えますよ」と伝えたかったのでしょう。でも、これでは「私は銀聯カードが使えます」と読めてしまいます。

正しくはこうなります。

「您可以使用银联卡 也可以使用各种信用卡」

あるいは、主語の「您(あなた)」を取って「可以~」でもいいはずです。

次は、成田空港行バス乗り場の表示。「未予約のお客様」という意味の中国語として以下が充てられています。
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「客户毫无保留」

「毫无保留」というのは、「保留なく(隠すことなく)、すべてを打ち明ける」といったときに使われる四文字熟語です。ただ予約の済んでいない乗客ということなのに、すごく大げさな表現になっているのです。こういうのも、中国客から見ればVOWそのものでしょう。

正しくはこうです。

「没约的乘客」

次は同じくバス乗り場の表示。
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「客人乘坐请等待巴士站」

これなどはぼくには、どこがどうおかしいかうまく説明できませんでしたが、通常お願いの場合、頭に「请」を持ってくるべきでしょうし、以下のように直すと中国人にはわかりやすいそうです。

「请乘坐(巴士的)乘客在巴士站等候」

最後の例は、かなりやばいことになっています。中国人向けにファストフード店がアルバイトの募集をしているようなのですが、鄭さんならびに中国人大学院生も、これでは何を伝えようとしているのか、よくわからないと言っていました。
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「新的船员大学招募
1周两次在1日从2小时起热烈欢迎!
每周能改变日程!
计时初次来访的用户放心,能工作。
如果日语能说的话,可以。
许多的外国人工作」

ここで仰天なのは、頭の「新的船员」です。「船員」すなはち「Crew(クルー)」という表現は日本では一般化しているようですが、中国人にはまずこれがわからないそうです。「船員」は文字通り船で働く人だからです。中国では一般にレストランなどのスタッフを募集する際、「服务员(服務員)」を使っています。

そして「如果日语能说的话,可以」ですが、これを直訳すると「もし日本語を話せればいい」というようなことになるのでしょうが、その前文の「初めての人でも安心して仕事ができます」の後に続く一文だとして、採用に当たって「日本語を話せなくてもいい」のか「話せた方がいい」のかよくわからないそうです。中国人大学院生による添削語の文章は以下のとおりです。

「新的服务员招聘
1天工作2个小时也可以
每周能改变工作日/时间
1000日元~/小时 从5:00到22:00
夜间1250日元~/小时 从22:00到6:00
第一次打工人也能放心地工作
不会说日语的人也可以(日本語が話せなくてもいい)/会说日语的话更好(日本語が話せればなおいい)
有很多外国人在这里工作」。

……とまあこんなことになっているのです。これらが中国客の脱力感を誘い、「日本人もかわいいところあるね」と好意的に解釈してもらえるといいのですが、鄭さんによると、このままではいろいろ支障もあるのではないか、といいます。

たとえば、高額なブランド品や化粧品のコーナーでこうした“とんでも”中国語表示を見かけると、なかには品質を疑いたくなる人も出てくるのではないか、というのです。笑いや脱力ではちょっとすまされないシーンであることは、確かに想像できます。

またこれは彼が台湾人であることからくるものですが、とにかく日本は簡体字に席巻されていることが不満だといいます。これは微妙な話ですが、一般に台湾の人たちは簡体字を見ると、目を背けたくなるといいます。つまり、台湾人は簡体字表記ばかりの店には足を運びたくないという心理があるということです。

鄭さんはこんなことも話してくれました。

「いま台湾では日本のオーブンレンジが人気で、購入する人が多いのですが、中国本土ではまだブームになっていません。先日、新宿のビックロに行ったとき、オーブンレンジのコーナーの商品表示に繁体字が使われていました。よくわかっているな、とぼくは思いました。オーブンレンジを買うのは、台湾客だけだから、繁体字を使っていたのです」。

ビックロの販売スタッフは、中国本土客と台湾客の売れ筋商品を理解したうえで、簡体字と繁体字を使い分けているというのです。実際に、ビックロの免税品コーナーに行くと、オーブンレンジは「過熱水蒸氣水波爐」と繁体字表記されていました。すごいですね。
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中国語をかじったことのない人からすると、こうした話をされてもお手上げと思うかもしれませんが、そんなに難しく考えることではないと鄭さんはいいます。

「最近では外国客がよく利用するショッピング施設に中国人スタッフを置いていることが多くなりました。であれば、まずは彼らにチェックしてもらうことが必要でしょう。ただし、中国人だからといって安心してはいけません。中国人は出身地によって方言もあり、言葉の使い方が異なります。正直なところ、台湾人からすると、中国本土の中国語はかなり違和感があります。ですから、そうした両岸や地方による違いも理解している正式な中国語翻訳会社に発注したほうがいいと思います。そのうえで、売れ筋ごとに簡体字と繁体字の使い分けまでできると、さすが!と思います」。

実をいうと、これは中国語に限った話ではありません。同じことは、タイ人留学生も気づいていました。日本のショッピング施設には、タイ語のおかしげなポップや表示も各所に見られるというのです。

タイ人留学生とお土産談義~なぜ日本の文房具は人気なのか?
http://inbound.exblog.jp/22471366

その留学生は、安易に翻訳ソフトを使うのは間違いのもと、と指摘しています。

訪日客が増えると、実にいろんなことが起きるものです。彼らといかにフレンドリーなコミュニケーションを築いていけるのか。そのためにも、台湾や中国、タイの皆さんからの指摘には謙虚に耳を傾けていきたいと思います。

【追記】
その後、中国本土の人たちも指摘してくるようになりました。

日本にあふれる「恥ずかしい中国語」をついに中国人に指摘されてしまいました
http://inbound.exblog.jp/26343657/
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by sanyo-kansatu | 2015-04-17 10:27 | “参与観察”日誌 | Comments(2)
2015年 01月 25日

通訳案内士の第一人者、ランデル洋子先生の語る「求められるガイド」とは

訪日外国人旅行者の増加に伴い、活況が伝えられるインバウンド業界ですが、かねてより多くの関係者が危惧している懸案のひとつに、通訳ガイド問題があります。

これは単なる通訳ガイド不足という話にとどまりません。ガイドの質や待遇、市場とのミスマッチングとそれをもたらした制度上の問題を含めた現実的な解決が求められています。問題の詳細についてはおいおい触れていくとして、東京五輪開催も決まり、ますます多くの人材が必要とされるなか、通訳ガイドの仕事の現場はどうなっているのか。いま求められるガイド像とはどのようなものか。第一人者であるランデル洋子先生に先週、話をうかがうことができました。

当初取材をお願いした際、ぼくの先生に関する認識は、以下の通訳案内士団体の理事長というお立場でした。

NPO法人GICSS研究会
通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会 理事長
http://www.gicss.org

ランデル洋子先生
http://www.randells.jp/president.html

名古屋市出身。南山大学英語学英文学科卒業。国際ロータリ財団奨学生として、ノーザンイリノイ大学に留学。YMCA英語学校などの英会話講師、通訳ガイド、海外旅行添乗員・海外駐在員・ツアーオペレーター、一般通訳翻訳業務など幅広く活動。

1980年にバイリンガル人材の派遣会社を設立し、1992年までに代表取締役。外国企業数社の日本代表業務を兼務。退職後に通訳、通訳ガイドとしての現場業務に復帰したが、その後は研修研究、執筆・講演活動、NPO法人主宰などで活躍中。日本を紹介する通訳ガイドの技術研鑽研究の基礎を築き、一方では国際プロトコルや、多様性対応コミュニケーション・スキルの研修など時代のニーズに応じた研修を提供しており、新入社員など大手企業の若手社員教育にも多く取り上げられている。(HPより)

同NPO法人は、通訳ガイドに求められるガイディングやコミュニケーションなどの研究や指導を行うために1999年に設立されたものです。HPによると、2014年現在会員は501名。会員にはタイ語を除く、9か国語(英仏独西露伊葡中韓)の通訳案内士が所属しています。

HPの内容で目を引いたのは、「新人通訳ガイド【実務】研修会」でした。そこにはこう書かれています。

「資格があるだけでは現場業務に繋がりません。資格+実務知識を習得しましょう。GICSSの新人実務研修は、即使える本物の実務力、ガイディングスキルが育成される定評のオリジナル特別研修です」

「無料説明会・講演会では、通訳ガイド業界の実態概要、合格後の資格の生かし方、実務の学び方、就業にあたっての注意点など合格者に必要な情報をご紹介します」

実は、ぼくはいま新しい時代の観光ガイドに関する書籍を制作中で、まさにそこが知りたいことでした。これはぜひお話をうかがわなければと思って取材を申し込んだわけです。

【追記】
これがその本です。

このたび『観光ガイドになるには』(ぺりかん社)を出しました(2015.8.6)
http://inbound.exblog.jp/24763487/

以下、先生との一問一答です。

――まず昨年8月に開催されたGICSS設立10周年記念イベント「第2回通訳ガイドコンベンション」についてお聞きしたいと思います。私は残念ながらこのイベントをあとで知ったのでうかがうことはできませんでしたが、案内には以下のように書かれていました。

GICSS設立10周年記念イベント「第2回通訳ガイドコンベンション」告知
http://www.gicss.org/9/img/event/20140831/2014-3.jpg

「心をつなぐ通訳ガイドに求められるコミュニケーション力とは?

活躍の場が広がりつつある通訳ガイドの世界! 魅力あるガイドのコミュニケーション力として求められているのは単なる知識情報の発信力だけでなく、お客様はもとよりビジネスパートナーや周囲の人的環境をつなぐ力。このコンベンションでは、国際的イベントが目白押しの日本を舞台に「世界に誇れる通訳ガイド像」を目指し、ガイド力アップのコツやヒントを楽しくご紹介します。通訳ガイド業務の獲得に関するホットな話題のあれこれや、業界で高く評価されているGICCSガイド研修の新メソッドもぜひ体験してください」。

プログラムをみると「オリンピックが視野に入ったインバウンドと通訳案内士、今後の課題と展開」というパネルディスカッションがありました。そこでは、観光庁の通訳ガイド担当者や旅行会社、バス、ホテルなどの関係者が一堂に会しています。どんな内容が話し合われたのでしょうか。

「通訳ガイドに必要なコミュニケーション力というのは、外国人に対するものだけでなく、現場のビジネスパートナーとの間にも求められるということです。バスのドライバーさんやホテルのスタッフ、また一般に通訳ガイドに仕事を発注する立場にある旅行会社の方たちとの現場でのやり取りや打ち合わせの場面などで何が求められているか。通訳ガイドの側もこうしたことを理解しておかなければならないのです。

実はちょうどいま、この内容を報告書にまとめているところなので、詳細についてはもう少しお待ちいただきたいのですが、たとえば、昨年バス業界で制度変更があった関係で、運転手さんの業務時間の制限などのルールが変わったことを通訳ガイドも知っておかないと現場で支障をきたすということを知りました。またホテルのコンシェルジュさんからは、ホテルにご宿泊の外国のお客様を案内したあと、通訳ガイドからフィードバックがあると助かる、というようなお話も聞き、なるほどと思いました」。

――「資格があるだけでは現場業務に繋がりません。資格+実務知識を習得しましょう」というのは、まさにそういうことなのですね。コミュニケーション力が問われるのは、外国客に対してだけでなく、国内のビジネスパートナーに対する理解や円滑な関係を築くことが通訳ガイド業者には必要不可欠だと。

「語学力が高いだけでは、通訳ガイドは務まりません。ガイドとしての資質や実務能力、体力も必要です。

GICSSでは毎年、通訳案内士の合格発表後に「新人【実務】研修会」を企画しているのですが、最近新しい傾向が見られます。これまで通訳ガイドの男女比率は男性3女性7といわれていましたが、昨年の受講生、つまり新人ガイドの男女比率が男性6女性4だったのです。

これらの男性の多くは現役をリタイアされた世代で、職歴をうかがうと、以前は名だたる多国籍企業で海外勤務をされていたとか、錚々たる方たちばかりでした。国際的なセンスや教養も高く、語学力にはまったく問題がないのですが、必ずしもこの仕事に向いているかどうかは疑問の方もいました。

たとえば、通訳ガイドは先ほど述べたように、バスの運転手さんや若い旅行会社の社員とのやり取りが多い。声をかけにくいような威圧的なオーラを放っているようなタイプだと、現場の仕事もそうですが、仕事の発注があるとは思えません。要は、能力ではなく、この仕事に対する基本姿勢の問題です。

そういう意味では、ライセンスを取得した方が、自分はこの仕事に向いているかどうかを見極めてもらうためにGICSSの研修に参加していただいてもいいと思います」。

――これは団塊の世代のリタイア後に起きた現象なのでしょうね。いま実際に通訳ガイドに従事しておられるのはどのような方が多いのでしょうか。

「通訳ガイド業界では高齢化が進んでいます。全体の4割が50代で最も多い。あとは40代と60代が2割ずつ、もちろん30代もいますが、まだ少ないです。なぜそうなるのかというと、通訳ガイド業だけでは生計を立てる保障がないからです。

通訳ガイドの仕事はいわば季節労働者。訪日する外国人は、一般に旅行シーズンの春と秋に集中します。そのため、夏と冬はどうするかという問題があり、若い世代の業界参入が難しくなっているのです。

実際、国家資格である通訳案内士の資格所有者のうち、就業しているのは全体の4分の1といわれています。多くは家庭の主婦で、趣味の延長として都合のいいときだけ通訳ガイドに従事するケースが多い。基本的に通訳案内士はフリーランス。それぞれの方が自分のライフスタイルに合わせて従事できる自由さが魅力ですが、こういう方は「お金はいくらでもいい」というようにおっしゃることも多いので、通訳ガイド全体のギャラの値崩れにつながるということもあります」。

――魅力的でやりがいのある仕事にもかかわらず、保障がないため、現役世代が従事することが難しくなっているのですね。しかし、時代的な要請もあり、通訳ガイドを志望する方は多いと思われます。どうすればいいのでしょうか。

「やはり兼業を勧めたいと思います。

私のこれまでの職歴について少しお話しましょう。私は名古屋出身で、大学時代にライセンス(通訳案内士資格)を取りましたが、26歳のとき、上京して通訳案内士としての仕事を始めました。当時は、訪日客の通訳ガイドだけでなく、日本人の海外旅行の添乗も兼業していました。春と秋は訪日客が多く、夏と正月は日本人の海外旅行が多いことから、1年を通じて仕事があり、スーツケースと一緒に暮らしていたといってもいいかもしれません。また英語学校の講師も兼任していました。日本の旅行会社の現地駐在員としてアメリカ西海岸で勤務していたこともあります。

そして29歳のとき、通訳ガイドの派遣会社を立ち上げました。現役の通訳案内士としての仕事も続けていましたが、この仕事はライセンスを取得しただけでは務まらないことを強く感じていたので、通訳ガイドのネットワークをつくるとともに、研修を通じて優秀な人材育成し、派遣しなければならないと考えたからです。

こうして私はいわばプレーイングマネージャーになったというわけですが、起業するかどうかは別にして、フリーランスとしての通訳ガイドが生計を立てていくには、語学力やコミュニケーション以外にも、営業マインドが必要ではないかと思います」。

――通訳ガイドをこれから目指す人たちにとって、ライセンスを取るための難易度が高いうえ、なってから職業として生計を立てていくことがさらに大変だとすれば、これはかなり覚悟のいる仕事だといえそうです。通訳ガイドの未来に向けた新しい動きは何かありませんか。

「昨年、TripleLights(トリプルライツ)という訪日外国人と通訳案内士を直接つなぐインターネット上のサービスが始まりました。このサイトの登場で、全国各地の通訳案内士が自分の提案するツアーを本人のコメント付き動画で紹介し、それを気に入った外国人と個別にやりとりしてガイド契約できるようになりました。GICSSの会員の中にも、登録している人がいます」。

TripleLights(トリプルライツ)
https://triplelights.com/

このサービスを提供しているトラベリエンスという会社とその代表に対するインタビュー記事は以下のとおりです。

“通訳案内士”による魅力的なツアーが人気!今、訪日旅行者が注目するサービス「travelience/TripleLights(トラベリエンス/トリプルライツ)」
http://smartbusiness.jp/news/2731
通訳案内士と旅行者をつなぐ新サービス、橋本CEO「ガイドのマッチングで世界一を目指す」
http://www.travelvoice.jp/20140630-22842

同サイトをざっとみたところ、多くの通訳案内士がそれぞれ自分の簡単なプロフィールや、自ら得意とする地元の案内やテーマについて英語で説明していました。こうしたプラットフォームの登場には新しい可能性が感じられます。これからは通訳ガイドも企画力やプレゼンテーション力が問われる時代になってきたといえそうです。

――これまで旅行会社や派遣会社を通しての仕事の受注が基本だった通訳ガイドのあり方が変わっていくかもしれませんね。自分の仕事をマネジメントする才覚も問われると思います。一方、通訳案内士をめぐる制度上の不備もずいぶん前から指摘されています。観光庁では、数年前から通訳ガイドのあり方をめぐって検討会が開かれていますが、先生のご見解をお聞かせいただけますか。

通訳ガイド制度(観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/tsuyaku.html

「私も先日、観光庁で開かれた検討会でお話申し上げてきたことなのですが、訪日外国人観光客が多様化するなかで、地域に即した通訳ガイドを特区ごとに設定することは必要だろうとは思うのですが、『通訳案内士』という名称は使わないでほしいと思っています。

一般に訪日客が増えて通訳ガイドが不足していると言われますが、実際に通訳案内士が不足するのは、クルーズ客船の寄港などで一度に大勢のお客様がいらっしゃるときや、一年でも春や秋など時期が集中していて、年中仕事があるというわけではないからです。東北地方にお住いの通訳案内士の方などは、『ガイドが不足しているのではない。仕事が不足しているのだ』とおっしゃっていましたが、地域によっても片寄りがあるなかで、ただでさえ“絶滅危惧種”と自嘲的にいわれている通訳案内士のプライドややる気をそぐことになってしまうことは避けてほしいと思っています」。

第2回「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」(2015年1月20日)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news05_000186.html

先生のご見解は、あくまで通訳案内士の多数を占め、これまで業界の主流をなしてきた英語ガイドの立場に沿ったものといえなくはありません。なぜなら訪日外客の5人に4人はアジア系である現状をふまえると、中国語や韓国語、タイ語などのアジア語系の通訳案内士を取り巻く状況は、さらに深刻というべきか、制度と実際のマーケットとの間に信じられないような乖離が見られるため、状況認識もかなり違っていると言えなくもないからです。解決の道筋も同じやり方でいいのか、関係者の苦悩が思いやられます。

先生は「通訳案内士は日本文化の発信者」であるとおっしゃいます。まさにおっしゃるとおりだと思います。自分が海外に取材に行くとき、優れた通訳ガイドにあたるかそうでないかによって現地で得られる情報の質や量はまったく違うので、その意味はよく理解できます。未熟なガイドにあたると、正直いって仕事にならないことさえあります。ガイドを見る目は、本来それほど厳しく、同じことは旅行でもいえるでしょう。日本の価値を正しく魅力的に伝えることのできる通訳ガイドの価値は国の宝といってもいいほどです。

たとえば、富裕層相手のガイドはまさにそう。こういうケースで活躍するのは選りすぐり通訳ガイドの方たちです。

日本滞在おひとり様100万円の富裕層旅行市場
http://inbound.exblog.jp/21754098/

そうした通訳案内士の役割の重さを考えると、制度的な保障は必要でしょう。社会における広い認知ももっと必要です。ヨーロッパはもとより、他のアジアの国々と比べても、日本はこの面で制度的に立ち遅れていることは、海外の旅行関係者からよく批判的に指摘されることなのです。

いずれにせよ、通訳案内士の制度問題を考えるうえで、訪日旅行に関わるさまざまな業界の人たちのコミュニケーションのあり方が大切のように思います。冒頭で触れた「通訳ガイドコンベンション」は、通訳ガイドの側から業界に対する理解を進めようとする取り組みであり、こうした積み重ねが大事だと強く思った次第です。

さて、最後にランデル洋子先生のもうひとつの顔について紹介したいと思います。ぼくはそのことをお会いするまで存じ上げておらず、大変失礼したとともに、とてもばつの悪い思いをしました。

それは先生がジャズ歌手でもあることです。

Yoko Randell(Jazz Vocalist)
http://jazz-yoko.randells.jp/

まさに通訳ガイド界のスターのような方だったのです。勉強不足でした。

まもなく出来上がるという「第2回通訳ガイドコンベンション」の報告書の内容を待つことにしたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-01-25 11:15 | “参与観察”日誌 | Comments(0)