ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 08月 06日

このたび『観光ガイドになるには』(ぺりかん社)を出しました

自家広告ですいません。このたび『観光ガイドになるには』(ぺりかん社)という本を出しました。
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「観光ガイドになるには」(ぺりかん社)
http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001699&type=&flg=

基本的には、中高大学生向けのキャリア学習本のシリーズの一冊です。

今年上半期の訪日外国人旅行者数は914万人。このままいくと、45年ぶりに訪日外国人が出国日本人を越える象徴的な年になりそうです。当然、彼らを接遇し、案内する人材を社会は必要とします。その専門職が、通訳ガイドであり、添乗員です。

彼らのもともとの仕事は、前者は外国語でガイディングをすることで、後者は日本人を国内外のツアーに案内することでした。それぞれ仕事に就くには資格が必要です。通訳ガイドは国家資格の通訳案内士、添乗員は旅程管理主任者を取得する必要があります。語学を専門とする通訳ガイドと、ツアーの案内人だった添乗員は、訪日外国人が増加していくなかで、だんだん仕事の領域が重なり合うようになってきました。

この世界には、世間ではあまり知られていない気になる実態があります。たとえば、通訳案内士の資格を持ちながら職業にしているのは、全体の4分の1に過ぎないこと。訪日外客の5人に4人はアジア系なのに、7割が英語の通訳案内士で、市場とマッチしていないこと。人材の高齢化が進んでいて、若い世代が圧倒的に不足していることも指摘されています。

職業としての不安定さ、フリーランスとして生計を立てていかなければならなかったことが、これらの背景にあるといわれます。しかし、状況はずいぶん変わりつつあります。こんなに多くの外国人が日本を訪れる時代になったのですから。

この本には、その最前線で働いている人たちのインタビュー&なるにはノウハウ集が書かれています。どんな仕事でもそうですが、現場の話は面白いです。

たとえば、初めて日本を訪れた外国人を案内するのに、東京タワーとスカイツリーのどちらが喜ばれるのか?

答えは、東京タワーです。その理由は、東京タワーから見える景色にあります。お寺や学校、オフィスや港など、身近にいろいろ見えるぶん、日本についていろんな話題が提供できるからです。学校を見れば生徒の制服の話もできるし、お寺やお墓を見て日本人の宗教観を話すこともできる。でも、スカイツリーはあまりに高すぎて、見えるのは富士山とか東京の全景。これで何の話をすればいいのでしょうか。

これはある通訳ガイドから聞いた話です。

彼らが「日本文化の発信者」といわれるのはわけがあります。なぜなら、一般に通訳の仕事は相手のことばを正しく翻訳して伝えることですが、通訳ガイドは自分のことばで日本のあらゆる事象や文化を紹介しなければならないからです。

ある関係者がこんなことを話していました。
「靖国神社の前で、中国の無資格ガイドがツアー客にどんな説明をしているかと思うと、ゾッとする」。

だから、通訳ガイドには国家資格が必要なのです。日本について正しい知識がない人間は務まらないし、本来はやってはいけないことなのです。これは歴史認識に関する個人の信条とは別の話です。

この本を書きながら、いろんな人たちに会ったのですが、お世辞抜きで、みなさん魅力的な人たちでした。

べつに専門職として通訳ガイドや添乗員になる気はなくても、今後どんな仕事に就いても外国人をアテンドしたり、案内したりする機会は増えると思います。ですので、もしこの世界についてちょっと知りたいと思う人は、手にとっていただけると幸いです。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-06 17:11 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 09日

多言語化に取り組む楽天トラベル。宿泊プランは外国客に支持されるか?

エクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトの参入によって、日本の国内宿泊マーケットは変わりつつあります。それは単に外国客の利用が増える(国内客の減少を補てんしてくれる)というだけではなく、これまでの宿泊サービスのありように新しい刺激を与えてくれていると思います。

ホテルが外国客を受け入れるメリットは何か(エクスペディアの取材から)
http://inbound.exblog.jp/24669753/

もっとも、外資が参入する以前に、日本にもオンライン旅行会社は存在しました。楽天トラベルやじゃらん、一休などは広く普及しています。

なかでも楽天トラベルは、2001年3月に楽天の旅行部門として立ち上がり、02年に独立。05年には旅行業一種を取得し、本格的なオンライン総合旅行サイトとなりますが、早くとも10年にはJTBに次ぐ国内旅行市場取扱額2位にまで成長しました(その後、近畿日本ツーリストに再び2位の座を明け渡したり、取り戻したりといった状況が続いています。同社が急速に取扱額を拡大できたのは、店舗を持たず、ユーザーと宿泊施設の双方の便宜を追求するオンライン旅行会社の特性を消費者が支持したからでしょう)。

先日、楽天トラベルの関係者に話を聞くことができました。

訪日外客が増えるなか、楽天トラベルはインバウンドに対してどんな取り組みを始めているのか。海外客に人気の宿泊施設にはどんな特徴があるのか。以下、関係者とのやりとりです。

―楽天トラベルでは、訪日外客の取り込みに向けてどんな取り組みを始めているのですか。

「2014年7月、楽天トラベルは多言語化サイトの大幅なリニューアルを行いました。10ドメイン、7言語(英語、フランス語、中国繁体字、中国簡体字、タイ語、韓国語、インドネシア語)のサイトとなり、2020年の東京オリンピックに向けて海外訪日客を取りにいきます」
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―利用者の伸びはどうですか。どこの国が多いですか。

「おかげさまで前年度比60~70%増です。米国、香港、台湾などが多いです。利用者は基本的にFITですから、日本に興味があって、リピーターの多い国や地域が多くなると思います。また楽天グループでは海外拠点づくりを進めていて、特に台湾では楽天のECサイトがあり、台湾楽天カードも発行しています。弊社の場合、トラベル単体ではなく、グループのシナジーを活かしてプロモーションしていくというのが基本の考え方です」。

―確かに、旅行もショッピングも同じプラットフォームで商取引されるのですから、結局、日本のファンを増やしていくことがシナジー効果を生むということですね。日本が好きで旅行に行きたい人たちと、日本の商品をショッピングしたい人たちを分けて考える必要はない。

ところで、御社は海外客の予約件数の多いホテルの情報を有しておられると思います。海外客に人気のホテルを教えていただけますか。

「楽天トラベルでは、全国約2万9500施設の中から、毎年顕著な宿泊実績や高い顧客評価を得られた宿泊施設に対して『楽天トラベルアワード』を表彰しています。いくつかのジャンルに分かれるのですが、海外客に人気という意味では、『インバウンド賞』を受賞されたホテルがそれに当たります」。

楽天トラベルアワード2014
http://travel.rakuten.co.jp/award/2014/

―ここ数年の「インバウンド賞」受賞の施設をみると、エリア的には関東・甲信越が多いようですが、やはり全体でみると、外国客の楽天経由の予約件数はやはりこのエリアが多いといえますか。

「『インバウンド賞』は宿泊施設単位で受賞しているものですが、エリア単位で見た場合は、上記エリア以外でもご予約は多数いただいております。実際、楽天トラベルが全国を約300のエリアに分けているなか、すでに95%のエリアで外国客の予約が入っています」。

―そうですか。楽天経由でほぼ全国の宿泊施設に予約が入っているのですね。

「もちろん、実際に多いのはゴールデンルートとなる東京→富士山→関西エリアと、沖縄県、北海道です。しかし、楽天トラベルはFIT、特にリピーターとなって日本に複数回こられているだろうお客様の予約も多いため、九州エリアの福岡県・大分県・熊本県・鹿児島県や、中部の岐阜県・愛知県・長野県、北陸の石川県、中国四国の広島県や香川県などさまざまなエリアの予約が増えており、全国への分散化が見られます」。

―個別の施設でいうと、上野のノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)はここ数年連続して受賞しているようですね。この圧倒的な強さはどこにあるとお考えですか。禁煙は外客受入にとって重要なファクターといえるのでしょうか。

「日本に比べて海外では禁煙文化が浸透しているため、「禁煙」「喫煙」の区別に関しては日本よりも敏感になっているようです。

(参考) 
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_smoking_bans_in_the_United_States
http://www2u.biglobe.ne.jp/~MCFW-jm/tobacco.htm

ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)は、インバウンドだけではなく、国内のお客様も含めて「非喫煙ポリシー」を徹底しています。これが圧倒的な強さにつながっていると考えられます。また、浴室はシャワールームにして外国人の方も満足のいく最低限の設備にすることで、その他のスペースを広げた点や価格帯がマッチしていることも選ばれる理由になっているかと思います」。
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ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)
http://www.nonsmokers.jp/nosmoking/

―アパホテルグループの受賞も多いですね。渋谷道玄坂店と京都駅前堀川通店。これらの人気の理由は何でしょうか。

「アパホテルはビジネスホテルのカテゴリーに入りますが、シングルでも横120cmの広いベッドやシャワー、アメニティなどゲストのための細かいサービスが行き届いていて、中級ホテルとしてはサービスレベルが高いと評価されていることが考えられます。また駅に近いことも外国客にとってはホテル選びをするうえでのポイントになっていると思います」。

―受賞施設以外にも、最近外国客に人気が出ているホテルはありますか。

「たとえば、「休暇村 大久野島」(香川県)や「高野山の宿坊」(和歌山県)でしょうか。

全国の休暇村でいま積極的に外国客の受け入れに力を入れています。なかでも集客に成功しているのが大久野島です。
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休暇村 大久野島
http://www.qkamura.or.jp/en/ohkuno/rooms/

魅力は大自然を満喫できる宿で、瀬戸内海の離島にあることでしょうか。ネットを通じて予約されるFITのお客様はリピーターも多く、東京や大阪のような大都市圏ではなく、自然の豊かなローカルなエリアへの宿泊が増えています。

同じく、高野山の宿坊も、日本の自然と文化を体験できることで人気が上がっています」。

高野山の宿坊
http://www.shukubo.net/contents/stay/

―これら西日本のローカルな人気宿はどこの国の人たちが多いのですか。

「香港や台湾に加え、欧米の比率が高いです。大阪や広島などの都市部を拠点にしながら、1泊の予約をピンポイントで取り、これらの宿に泊まって地元をゆっくり観光されている傾向が見られます」。

―ところで、ここで少し話を変えますが、現在海外のホテル予約サイトが続々参入し、訪日客の国内予約の取り込みが急ピッチで進んでいます。それに対し、国内オンライン旅行会社(OTA)の雄である楽天トラベルは、どう立ち向かおうとしているのでしょうか。海外サイトに負けないサービスは何でしょうか。

「現在、海外のお客様を受け入れることに同意いただいた1万8000施設が外国語ページを持っています。日付を指定した検索結果には、海外のお客様向けに宿泊プランを作成され、在庫のご登録を頂いた施設が表示されます。

エリア的な偏りは、多少は見られるものの、全国津々浦々までカバーできているのが楽天トラベルの大きな特徴だといえると思います。

例えば、東京、大阪、京都などのインバウンドのメジャーエリアで検索をした際に、他のOTAさんとくらべ楽天は少し多いくらいですが、四国、東北、前述の高野山を含む和歌山などのローカルエリアを検索すると、大きな差が出ます。検索結果が数件では、ユーザーはそのエリアでの宿泊を選べませんので、ある一定以上の施設の数を各エリアで持つことが、インバウンド需要を伸ばすうえで重要なことだと考えています。

全エリアをしっかりカバーできていることが、楽天トラベルの強みであると同時に、日本のOTAとして担っていくべきところである。そうした結果が、先の高野山や大久野島での予約に繋がっていると考えています」。

―確かに「宿泊プラン」というサービスは日本オリジナルなもので、海外サイトにはあまりないですね。しかし、国内客には好評の「宿泊プラン」も、海外客には少し複雑に見えるかもしれません。こういうサービスを知らない海外客に支持してもらうには、少しわかりやすく打ち出す必要があるように思います。

「おしゃるとおりで、外国語サイトでは、なるべく簡単でわかりやすい選択肢を付けることにしています。たとえば。『(客室から)富士山が見える』『世界遺産のまち』『しゃぶしゃぶが食べられる』などです。

(例)[ Features ]
- Wonderful cuisine - Mt. Fuji-viewing - Nice view room - Japanese-style room

たとえば、『富士山』の例はこれです。
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Fuji New Kawaguchiko Onsen Hotel New Century
http://travel.rakuten.com/hotel/info/49256/

こちらの施設は、施設紹介やプランの詳細で、富士山へのアクセスや客室から富士山が見られることをしっかりPRしており、予約が増えています。

また『しゃぶしゃぶ』については、以下のプランがひとつの例です。
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Ryori Ryokan Karaku
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Kyoto-Kyoto_Ryori_Ryokan_Karaku/1849/

Yufuin Onsen Yufu no Irodori Yadoya Ohashi
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Oita-Yufu_Yufuin_Onsen_Yufu_no_Irodori_Yadoya_Ohashi/78074/

外国語版では、このようにプラン名に入れて紹介しています。詳しく画像や料理について説明することで、予約に繋がっていると考えています」。

―他にも、日本のOTAならではの仕掛けはありますか。

「たとえば、『楽天朝ごはんフェスティバル』です。旅における「朝ごはん」の大切さに注目し、日本全国のホテル・旅館で提供している美味しい「朝ごはん」を旅のきっかけにしていただきたい! という願いを込め、2010年からスタートしました。2014年には過去最大の宿泊施設様にご参加をいただき、約1000の朝ごはんの中からから日本一の朝ごはんを決定いたしました。

朝ごはんフェスティバルとは?
http://travel.rakuten.co.jp/special/asafesta/about.html

楽天トラベルとして、さまざまなベネフィットをオプションとして付け加えることによってより、宿泊施設の単価や価値を上げることができるのではないかと考えております。その付加価値となるものとして、宿が最大限のおもてなしをもって提供している「朝ごはん」を宿泊施設様ご自身にも再認識(おもてなしのこもった朝ごはんの価値を認識)してもらうきっかけにできればと考えています。実際、お客様の声を見ていると、「夕食よりも朝ごはんが楽しみ」や「朝ごはんが良かった」というお声も見受けられました。

また、お客様に対しては朝ごはんをきっかけに旅に出るという新たな旅行需要の創出やより満足度の高い旅行につなげていきたいと考えております。

なかでも2014年、西日本大会で準優勝した京都センチュリーホテルについては、実際に朝ごはん会場にて朝ごはんフェスティバル受賞を大々的に打ち出していただいています。

京都センチュリーホテル
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp

同朝ごはんページ
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp/restaurant/lajyho/post_95.php

同ホテルには、海外メディアからの取材も来ています。

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่30 "เทศกาลอาหารเช้า" Japanese breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=Yrz6z2x713Q

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่31 "เทศกาลอาหารเช้า 2" Japanese Breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=uAzxjH3StEo

この番組はタイのテレビ放送(チャンネル5)やYOUTUBEでの公開が行われています」。

実は、先月ぼくは京都に行く機会があり、噂の朝ごはんを食べに、わざわざ京都センチュリーホテルに早起きして訪ねてみました。2階ロビーにあるビュッフェレストラン「オールデイダイニング ラジョウ」には、アジアからのツアー客であふれていました。朝食に2600円もかけることはめったにありませんでしたが、自家製ローストビーフはわざわざ食べにくる人がいるというのもうなづけました。宿泊客ならこれがフリーというわけですから、前の晩の夕食は軽めにすませておきたいものです。

国内外に限らず、たいていのホテルで朝食を提供しているわけですから、それが美味しいと評判になれば、集客に活かせることは確かでしょう。

こうした日本流のサービスをベースに訪日客の取り込みを図る楽天トラベルのやり方は、エクスペディアなどの海外サイトとはさまざまな点で違うところがあり、これがかえって興味深いといえます。この際、どちらが正しいとかいう必要はなさそうです。訪日客は多様化しており、それに応じたサービスの領域が拡大していくことに意味があると思うからです。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-09 11:58 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 18日

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル

一般の日本人には見えにくい、中国語通訳案内士の信じられないような内情について、赤裸々に語ってくれた水谷浩さんですが、ご本人と中国との関わりは、大卒後に勤めたメーカー在籍中の1984年、中国政府が3000人の日本人青年を招いた交流イベントに参加したことに始まります。

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた
http://inbound.exblog.jp/24486566/

その後、水谷さんは上海、北京へと留学。帰国後は商社で中国市場への新商品の開発や展開を手がけてきました。2005年、中国語通訳案内士試験に合格。中国の訪日旅行市場は有望だと考え、翌年末勤務先を退社し、中国語通訳ガイドの道を歩き始めます。

「最初の仕事はいまでもよく覚えています。中国から来た社長のアテンドで、企業の工場視察に観光を加えた1週間の日程です。その後は翻訳の講師の仕事をしたり、ガイド業務も年々受注が増えていたのですが、2008年にリーマンショック、11年に東日本大震災が起こり、地獄を見ることになります」。

それでも、水谷さんは訪日旅行業界の将来に希望があることを確信していました。

「インバウンド後進国とか政府の失策とか非常にネガティブな話をしてきましたが、市場経済学的に見れば、発展の余地があるということで市場の将来に大いに希望が持てるということが言えます。これは私が現場で接待したお客様より直に市場のニーズを絶えず感じていたので、東日本大震災とか尖閣国有化といった絶望的なニュースがあっても、この仕事を続けてきた原因なのです。」(「驚くべきインバウンド後進国ニッポン」③果たしてここに市場は存在するのか!? より)

最初の数年間は、旅行会社や人材派遣会社からガイド業務を受託していた水谷さんですが、08年頃から日本観光通訳協会(JGA)の「通訳ガイド検索システム」に登録すると、ひきあいが来るようになったといいます。

通訳ガイド検索システム
http://www.guidesearch.info/

「海外のFIT、たとえば、マレーシアのご夫婦から直接メールが届く。ガイドだけでなく、旅行込みのガイドの依頼です。旅行代いくら、宿泊代いくら、交通費いくら、入場料いくらと見積もりを出すわけですが、最初のうちは、手配部分は旅行会社に投げていた。でも、旅行会社は個別の案件に対する対応が遅いんです。これでは自分でやらなあかんということで、旅行業務取扱管理者資格を取り、旅行業として起業することにしたんです」。

2014年4月に彩里旅遊株式会社として法人化、8月に第2種の旅行業となり、HPも開設。半年すると、少しずつ問い合わせが来るようになったといいます。

水谷さんが起業に至った理由として、同じ士業である弁護士と通訳案内士の置かれた状況が大きく違っていること。それゆえ「食えない」職業であることに強い問題意識がありました。この問題についてもネットメディアで熱弁を奮っています。

「通訳案内士と他の士業では、決定的な違いがあります。派遣が許されているか否かです。私も以前ある旅行ブローカーと口論をして「日雇い添乗員」と捨てぜりふを吐かれ頭にきたことがありました。弁護士や会計士は日雇いでなく、通訳案内士はなぜ日雇いできるのか、この意味には歴史があります。しかし日雇い派遣をやめれば、非常に多くの通訳案内士が路頭に迷うでしょう。そういう世界なのです。(中略)

奇妙に感じることは、所轄の役所に対する被害者意識や反感のようなものです。つまり観光庁に対して多くの通訳案内士は、われわれを守ってくれる役所であるとは思っておりません。それを証拠に観光庁からの依頼事項があると、どこの団体でも観光庁への批判や不満、悪口を言い続ける人がおり、観光庁と会員の間に入って事を進める時は必ず手間がかかります。根強い不信感があるのです。以前福祉事務所とケースワーカーの相互不信を取り上げたニュース番組がありましたが、この世界も同様なのです」。(⑪旧運輸省部局は業界が限界集落化する前に手を打て! より)

観光庁の「通訳案内士のあり方に関する検討会」についても、以下のように率直に感想を述べています。

「数年前に役所と民間の対立を象徴するような事件がありました。通訳案内士制度のあり方検討会が観光庁で開かれ、この制度を廃止するか継続するかの議論が交わされました。通訳案内士からは大規模団体代表2名、あと10数名は関連業界から出席しましたが、関連業界からは成果を上げられない通訳ガイド制度の廃止、業務独占の剥奪等の辛辣な意見も続出したように記憶しております。多くのベテラン通訳案内士が制度廃止による廃業を心配し、制度廃止時は訴訟を起こすと息巻いていた年配の方もおられました。結局数年の検討の結果、観光庁は通訳案内士制度を保持するとの見解を通訳案内士団体側に出すのと同時に、役所原案に沿って、通訳案内士団体に黙って「総合特区法案」の中に総合特区通訳案内士案を盛り込んで成立させました。

その結果、総合特区では通訳案内士試験なしで通訳案内士業務が可能になり、特区自治体の主催する講習を受けるだけで業務ができるようになったのです。これは中国から九州への豪華客船就航のための観光対策で九州の目玉政策でした。一方では難しい試験を課し、一方では試験なしの講習だけで同じ資格が取れるという、非常におかしい話です。加えて特に日本人のガイドからは、立場の弱い日本人の権利を取り上げて外国人に無条件で渡すという当時の過激系マスコミ論調を受けて、売国的外国人優遇政策であると非難していた人もおりました」。 (⑫役所と業界の対立のはざまで、日本の訪日政策を憂う! より)

しかし、その一方で水谷さんは通訳案内士自身にも問題があることを指摘しています。

「通訳ガイドが貧困な理由は、要するにアサインの仕事(配給)のみをあてにしているからです。蟹工船でしか働けないからです。自分で船を操船してカニを取りにゆかないのが原因です」。(⑬脱落した仲間の屍を越えて前進!前進!また前進! より)

「この世界に入って思うのですが、旅行業界に支配されているという感覚を持った方が非常に多い事です。確かに英語圏の世界は、ウォーキングガイド以外旅行業界に営業を握られているかもしれません。日本にはまだ男尊女卑の習慣が色濃く残っており、その為かもしれませんが、積極的に前に出て外客を直に受注しようとする人間は少ないようです」。(⑭通訳ガイドの社会は日本には珍しい女性社会 より)

通訳案内士が“絶滅危惧種”になる前に、稼げる仕事にしなければ。そうすれば、優秀な人材も集まってくるはず。水谷さんが起業を決意したのはそのためでした。

「通訳案内士で旅行会社を起業した人はまだ少ないですが、成功しようと思ったら、これがいちばん早い方法だろうと考えた。旅行会社として自らツアーを企画し、添乗、ガイド、これらを垂直統合する。このモデルしかないと」。

しかし、これまで見てきたように、訪日中国旅行市場の現状は、通訳案内士を必要としないツアーが大半です。それでも、水谷さんはこう言います。

「でもね、私の経験からいって、一度いいガイドにつくと、次もお願いしたいと言ってくる。これは中国客でも同じです」。

水谷さんには強い影響を受けたガイドがいたそうです。陳さんという台湾のカリスマ日本語ガイドでした。「いまはもうお亡くなりになったと聞いていますが、台北の故宮博物院で明の文物を説明するとき、『この壺はいつごろ作られたかわかりますか? 明智光秀が信長を討った頃ですよ』。退屈な歴史の説明もこれなら面白いでしょう。この人スゴイなと。自分もこうなりたいと思うんです」。

この仕事でいちばんうれしい瞬間は、お客さんから「この次来るときお前に連絡する」と言われること。そのお客さんから次のツアーの引き合いがあると、認めてもらったことを実感できるからです。「ツアーが終わってお客さん全員と握手するとき、握りしめた手にお札が入ってることもありますよ。エー何これ!? うれしいですよ」。

一般に中国客は買い物にしか興味がないと思われがちだが、水谷さんの話を聞いていると、通訳案内士として真剣に相手に向き合うことの大切さを教えられます。

訪日中国客が増えるなか、新しい悩みも生まれているそうです。

「中国語の方言です。中国では南方と北方では使われる言葉がまったく違う。外国語みたいなものです。基本的に私が学んだのは普通話ですが、地方から来たお客さんから『水谷の中国語はわからない』と言われる。でも、私はあなたの方言がわからない。

地方の中国人は必ずしも普通話ができるとは限らないのです。こういう悩みは中国語通訳案内士ならではかもしれません。特におばあちゃんの話を聞きとるのが難しい。娘が通訳してくれるからなんとかなるものの、これからは外国人と話したことのない中国客がやって来る。外国人の中国語を聞き慣れている中国人とそうでない人ではまったく違う。

日本人の通訳案内士は何を言うてるのかわからないとよく言われるのはそのためです。訪日客の増加にともない、方言しか話せない人が増えてくることを肝に銘じなければならない。これは大変なことです。

台湾客にも気を遣います。一般に台湾人は大陸の中国語に対する反感があり、私の話す中国語にクレームを食らったこともあります。これはたとえていうと、関西弁が嫌いな人に横山やすしがガイドに付いたようなもの。だから、台湾客の場合、最初に私は大陸で中国語を勉強したことを話すことにしています。すると『そうや、お前の話すのは大陸のことばや』と言われます」。

英語さえ話せれば、欧米諸国や東南アジアの国々の人たちならなんとかカバーできるという状況とはまったく違う話です。中国語通訳案内士に求められる能力とはなんと高度なものでしょう。それに対する水谷さんの答えはこうです。

「たとえ難しくても、だからこそやる価値がある。燕の巣を獲りに行く人間がいるのなら、そこで役立つ通訳ガイドになるべき。お客さんもそれを求めているはず。それが商売になる」。

そんな水谷さんに「これから通訳案内士を目指す人」にひとこと、と尋ねるとこう話してくれました。

「ぼくは野球好きです。将来、プロ野球選手になりたい。でも、実際そのうち何人なれますか。通訳案内士の世界も同じです。

通訳案内士試験はプロ野球でいえば、入団テストにすぎない。そこから先が問題。本当にこの仕事に向いているか。素質があるかどうか。生き残れるか。それは本人次第です。

通訳案内士は職人です。長年の鍛練なしでは務まらない。旅行商品は目に見えない。何時何分どこに行って…ではただの添乗にすぎない。旅という芸術作品はお客さんの心に刻まれるもの。私にとっての台湾の陳ガイドと過ごした1日のように。一生残るもの。

通訳案内士は、訪日旅行産業を構成する最も重要な成員です。コンシェルジェであり、道案内人であり、相談員であり、お客さんからいちばん信頼される存在になるべきです」。

さらに、業界への提言として以下のように話してくれました。

「今後の通訳案内士制度の設計において「業務独占」「名称独占」は個人的には強くこだわらないけれど、あってもいいと考えている。それは職人のプライドにかかわるものだから。職人は気難しいですから、「独占」廃止といわれると、カチンとくる。お前は能力がないと言われているような気がするから。ですから、制度を設計する側も、我々が職人であることを心得てうまく進めないとへそを曲げてしまう。

でも、食えないでしょう。そう言われるのがつらい。だからこそ、食うためのこういうシステムをつくるという話と一緒であれば、うまくいくのではないか。

訪日客が増えるなか、外国語を使った添乗(旅程管理)やガイド(案内)代をきちんと保証する仕組みをつくっていくべき。安売り競争ではなく、質が問われる仕事にしないと。それをお客さんが選んで買う。そこで勝負するという形にしていく。

だからこそ、業務の分業化ではなく垂直統合なのです。これからはトランスフォーマーで行かなければ。ネイティブ添乗員やスルーガイドを過去の遺物にするためにも」。
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インバウンド・コンサルタント(水谷さんが代表を務める中国語通訳案内士団体)
http://www.inbound-consultant.com/

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by sanyo-kansatu | 2015-05-18 09:57 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 17日

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた

本ブログでは、これまで通訳案内士を取り巻く現状と無資格ガイドに浸食される実情を紹介してきました。

なかでも中国からの訪日客は、数の上では今後最大市場となることは間違いないでしょうから、中国語通訳案内士の仕事の現場が大変なことになっているのだとしたら、これは看過できない話です。

この問題について、現場から発言しているひとりの中国語通訳案内士がいます。

現役の通訳案内士として働く傍ら、訪日外客コンサルティングとビジネスマッチングを行う会社を立ち上げた水谷浩さんです。
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http://www.inbound-consultant.com/

水谷さんはあるネットメディアに「驚くべきインバウンド後進国ニッポン」という連載タイトルで、15本の文章を書いておられます(2015年5月現在)。

ここには中国語通訳案内士を取り巻く驚くような内情が明かされています。水谷さんは自ら発言を行う理由について次のように書いています。

「私がなぜこのブログを書くかをご説明すると、黒船来襲から明治維新起こり近代国家が形成されたように、訪日外国人の増加により関連の産業が勃興・急成長して、日本の新産業になると思われるからです。(中略)

オリンピック誘致プレゼンでの滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」は有名になりましたが、諸外国からのお客さまへの「お・も・て・な・し」をどの様に具体化するのかが最大の課題です。そのソフト開発は多言語・多文化・多習慣の異文化理解から始まり、古き良き封建的で保守的な我国国民には、このシステム構築は複雑すぎて一朝一夕には不可能でしょう。まずは現状認識から始め、産業が発展してゆく予想を語りたく思います」。(<驚くべきインバウンド後進国ニッポン ①最大の課題は「お・も・て・な・し」の具体化より)

そして、水谷さんはこう問題提起します。

「訪日旅行はインバウンド後進国という不名誉なあだ花のもと細々と生き続けてきたと言えます。実際、訪日旅行は産業と呼べる代物にほど遠く、その実情は外国人ブローカーが跋扈する準アンダーグラウンドの世界でした」。(同上)

これはどういうことでしょうか。中国語通訳案内士から見た日本の訪日旅行市場の現状、課題について水谷さんはこう書きます。

「旅行業界は、国内旅行、海外旅行と訪日旅行の3種類より成り立っております。国内での業界シェア統計によれば、JTBグループがシェア50%を超えて、衆参両院の自民党状態になっており、2位以下の日本旅行やKNT(近畿日本ツーリスト)の野党を引き離しております。海外旅行ではJTB、HISと関西私鉄系2社(阪急とKNT)が3強となっております。しかしながら訪日観光分野を見ると全体の過半数以上を占める中華圏市場ではJTBグループでも団体10%強、個人15%強となり、大手3社でも団体で20%弱と圧倒的に弱者なのです。

ではこの市場のチャンピオンはどこか? 民族系と言われる中華系ランドオペレーターの群れです。中華系は商売数の多い会社でも雑居ビルで少数の運営でしのいでおります。悪い言い方をすれば中華圏旅行ブローカーが蠢く世界なのです」。(②中華圏旅行ブローカーが蠢く世界 より)

「中華圏旅行ブローカーが蠢く世界」とは何でしょうか。

水谷さんの実況報告は続きます。

「韓国からのお客様が約200万人、中華圏からは350万人、英語圏からは227万人という昨年(2013年)の統計ですが、通訳案内士の登録数は約1万6000人位ではないでしょうか。その内英語が1万1200人、中国語が1600人、韓国語が約600人となり、訪日客数と通訳案内士の数がアンバランスになっております。特にアンバランスになっている中国語と韓国語は、現地からの添乗員がガイドを兼ねて来日して、日本の通訳ガイド市場を業務独占しておりました。

来日人数が増え、本国からネイティブが添乗で来日すると、特に日本人通訳案内士はネイティブと語学面でガチンコ勝負しなければなりませんし、中国・台湾出身の通訳案内士は中国・台湾の基準で採用される傾向があります。つまり中国語や韓国語は、本国からのライセンスを持たないネイティブとの戦いを強いられているのです」。 (⑥通訳案内士の状況とオススメ言語 より)

訪日韓国、中国市場は「現地からの添乗員がガイドを兼ねて来日して、日本の通訳ガイド市場を業務独占」しているというのです。

水谷さんは、韓国や中国のネイティブガイドを『ハリー・ポッター』のヴォルデモート卿に例えてこう説明します。

「通訳案内士のライセンスを持たず仕事をしている外国人の中にはヴォルデモート一味は存在します。LCCという空飛ぶ箒とNOビザという透明マントでアジアを飛び回り荒稼ぎをするグローバル中華系闇ガイド(国際ノーライセンス・ガイド)の存在です。

その手下に白バスや白タクを含む運送を手配するブローカーや旅行登録が有るか無いか解らない様な旅行関係者、そして日本で暗躍する外人の土産物屋仕掛け人グループ。その一味のお友達が魔法省(黒度魔法省)幹部の中におられたのも事実です。

その分霊箱は旅行業や地上手配業を隠れ蓑にする闇ガイド、旧白バス系運送業や民族系土産物屋に分散して散らばっておりました。そしてかつては本国より旅行団を買って、中国をはじめとするアジア旅行客の銀聯カード等クレジット・デビッドカードや財布から金を吸って食い物にして生きてきました。一味の中の1人が日本の運輸業界に紛れ込んで格安ツアーバスの孫請けを行い、関越道で高速バスの大事故を起こしたのです。

この事件はインバウンドや闇ガイドとは別と考えられますが、根は繋がっているのです。この正体は何なのか? 政官軍共同体をもじって、多国籍の旅運土(旅行、運送、土産)共同体なのです。アジア的地縁血縁の世界に加え、日本と外国のグローバルアンダーグラウンドが一つの裏世界を形成して、日本の良貨駆逐とインバウンド業界の秩序のレベル低下を引き起こしてきました。これがインバウンド業界の闇の勢力(アジア黒魔術一味)の正体です。正統にインバウンドの商売をやっている者にとっては大迷惑な話です」。(⑦旅行業界の闇と高速バス大事故の関係 より)

ここでいう「バスの大事故」は、2012年4月29日に関越自動車道で起きた高速ツアーバス事故を指します。その件については以下を参照。

もし中国人ツアーバスが事故を起こしていたら……を真面目に考える
http://inbound.exblog.jp/18359541/

こうした商売のやり方を、水谷さんは「台湾式営業方法」と呼んでいます。

「通訳案内士のライセンスを持たず仕事をしている外国人のことを、今でこそ黒魔術師の一団だのヴォルデモート一味だとボロクソに言いますが、東日本大地震までは彼らこそがこのインバウンド業界をけん引していたのです。日本の観光業界のアウトロー的存在と異国の激烈なグローバル競争を生き抜いてきた猛者が組んだ。そして旅行社から旅行客を買うといういわば画期的な台湾式営業方法を確立したのです。

親しい台湾出身のガイド仲間によれば、ガイドは給料無料、基本ボランティアで長時間働きます、土産とオプションのみを売り、1週間で目標1ツアー100万円(すべて手取り現金、諸課税全く無し)。成田や関西に着いた団体をバスに閉じ込めて、指定の土産物屋の定置網に追い込んでからイルカ漁の如く水揚げタイムです。また、密室であるバスの中で催眠商法を駆使して納豆キナーゼとか深海ザメの油とかを高額で一本釣りをする。清水寺や富士山に行くときオプション費用として1人3000円を集金する。嫌な方は事前にどこかの駐車場で降りて貰う、「バスが帰って来なくても当局は一切関知しない、では安全を祈る」というとんでもない事をやっていたのです。

そういうイリーガルな営業の基本を実戦して売り上げを競う。参加する営業ガイドは生き甲斐ともいえる実戦競争販売を通じて、インバウンドの市場(貧バウンド市場)の基礎を作り上げたのです。日本人のほとんどが見向きもしなかった、呆れて物も言えない間にやってしまった。それも短時間で大勢の日本人の知らない間に市場を作ったのです」。(⑨貧バウンド時代のインバウンドと近未来の姿 より)

その結果、訪日中国旅行市場の大半は、通訳案内士が不要なマーケットとなってしまいました。

「現在、日本国内では訪日団体には通訳ガイドは必須ではありません。添乗員が一人でやってしまうか、無料の闇ガイド(物売り専門ガイド)が付く場合がほとんどなのです。添乗員さんには日本の旅程資格やガイド免許を持ってなくてもできる仕組みになっております。ところが中国でも欧州でも外国人がその国の通訳ガイドをすることは禁じております。多くの国がガイドに国籍制限を設けているのです。このような寛容な仕組みは極めて珍しい状態です。きわめて不適切と言わざるを得ない方法です。

中国も外国人ガイドを禁止しており、従って私は中国ではガイドをすることができません。最近、中連協(中華人民共和国訪日観光客受入旅行会社連絡協議会)の帰国報告書に通訳ガイド名を書く欄ができました。これによってびびっている海外の旅行会社もあるのですが、理想はやはり日本の通訳ガイドがすべての団体に付く事でしょう。これには時間がかなりかかると思いますが、地道に努力すべきだと思います」。(⑫役所と業界の対立のはざまで、日本の訪日政策を憂う! より)

先日本ブログで書いた「無資格ガイド問題とは何か」の実態とは、実はこのようなものだったのです。

このようなある種絶望的ともいえる状況の中で、中国語通訳案内士の方々は今後どう局面を打開していけばいいのでしょうか。次回、水谷さんにお会いしてお聞きした実践の日々を紹介したいと思います。

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル
http://inbound.exblog.jp/24489096/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-17 16:49 | “参与観察”日誌 | Comments(3)
2015年 05月 13日

無資格ガイド問題とは何か?

通訳案内士をめぐる問題を考えるうえで、避けては通れないのが無資格ガイド問題です。一般の日本人からすると、なんのことやらわからないと思いますが、観光庁の「検討会」では初期の頃からこの問題が討議されていました。

以下の表は、観光庁がまとめた訪日旅行者数のトップ4である韓国、台湾、香港、中国におけるガイドの手配状況を整理したものです。

アジア主要国別インバウンドにおけるガイド等の手配状況(「通訳案内士の制度と現状について」2009年6月より)
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この報告は、株式会社JTBエイティーシー(当時)、NPO法人アセアンインバウンド観光振興会(当時、現社団法人)、JTBGMTの資料をもとに作成したとあります。これらは日本を代表する訪日旅行の手配を行う企業と業界団体です。

ここから何がわかるでしょうか。まず4カ国にほぼ共通する特徴が在日ネットワークで完結するビジネスモデルであることです。つまり、日本側の旅行業者を介さず、自分たちで旅行の手配を行っているわけです。なぜこういうことになっているのでしょうか。その何が問題なのでしょうか。

アジアからの訪日旅行の解禁は、さかのぼること1970年代の香港に始まり、79年の台湾、90年代の韓国と続いて動き出していました。ところが、当時の日本には彼らを観光客として受け入れようという認識やコンセンサスがまったくなかったため、彼らも在日ネットワークに頼るほかなく、ある意味野放しのまま手配が行われていたのです。当然無資格ガイドが添乗するツアーが大半でした。

1990年代の訪日外国人旅行者数はいまほど多くなく、せいぜい300~450万人でしたから、アジアからの訪日客は日本人の国内レジャーの閑散期を埋める存在に過ぎませんでした。

これが2000年代に入って変わっていきます。2000年に476万人だった訪日客は、03年の小泉政権時の「観光立国」宣言とビジットジャパンキャンペーンの開始とともに上昇カーブを描いて成長していきます。

ところが、在日ネットワークで完結するビジネスモデルはそのまま温存されてしまいます。その理由は後で述べますが、ここで確認しておくべきは、無資格ガイドの存在はいまに始まった話ではなかったということです。誰もそれをとがめることもなく20年以上経過していたわけで、それをいまさらやめろといっても、そこには彼らにとってなんのインセンティブもないわけですから、変わりようがなかったといえます。

では、この報告にもよく出てくる「スルーガイド」とは何でしょうか? 

ひとことでいうと、海外から団体客を連れて訪日し、ガイディングまでやってしまう添乗員のことです。本来日本で有償で観光案内できるのは通訳案内士という国家資格を必要とするガイドと定められているのに、それを不要としてしまうのです。

しかし、さらに根の深い問題もあります。彼らがただの添乗員であればいいのですが、そうではない場合があるからです。

台湾人や香港人には入国時にノービザで90日間の日本の滞在許可が下ります(これは相互免除という意味で、日本人が相手国に行く場合も同様です)。その間、ガイドたちは日本に自由に滞在しながら、いくつもの訪日ツアーの添乗を受け持つのです。だから、彼らは毎回ツアー客と一緒にやってくるのではありません。最初のツアーだけのことで、その後はずっと日本にいて、次々と添乗を繰り返すわけです。彼らが日本の通訳案内士資格を有していれば、まだいいのですが、必ずしもそうではなさそうです。

またその際、問題となるのは、土産店や免税店からのキックバックやバスの車内販売などで得た売上からホテル代や食事、交通費などの諸経費を引いて、そのまま自分の報酬として持ち帰ってしまうことです。彼らは観光ビザで訪日しておきながら、事実上労働していることになるわけです。何本もツアーを掛け持ちすれば、売上額は相当な金額に上ると思われますが、彼らはその営業活動に対して確定申告することもなく、帰国してしまうのです。

これらに象徴される世界が「華僑系土産店とタイアップしたビジネスモデル」あるいは「華僑系旅行会社ネットワークで完結するビジネスモデル」なのです。

観光庁の「検討会」の初期の議事録をみると、通訳案内士団体はこうした無資格ガイドの取り締りを強く要求しています。彼らに仕事を奪われていると考えているからでしょう。

2010年2月22日 第4回「検討会」議事録
http://www.mlit.go.jp/common/000060637.pdf

これを読むと、かなり乱暴で厳しい発言も見られます。

興味深いことに、2010年3月、JTB九州は九州運輸局から厳重注意処分を受けています。

2010年3月30日(レコードチャイナ)
JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局
http://www.recordchina.co.jp/a40879.html

急増する中国からのクル―ズ客船の上陸中のバスツアーで、無資格の留学生にガイド業務をさせたことが理由のようです。

これはちょうど「検討会」でこの問題が討議された時期と重なっているので、その影響を受けたのではないかと思えなくもありません。

さて、それでは実際、彼らをどこまで取り締まるべきなのか?

その後、東日本大震災が起き、いったんこの議論はヒートダウンします。それでも、時間の経過とともに訪日客は回復し、「検討会」も再開されます。

2014年12月24日の「検討会」資料=「過去の検討会における主な意見⑦(無資格ガイド・悪質ガイドへの対応)」では、以下のような無資格・悪質ガイド問題に対する意見が出ています。
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これをみると、業界関係者の中には、取締り一辺倒ではない意見も散見されます。通訳案内士の質の問題についても厳しいコメントが見られます。

なぜなのでしょうか。ひとつ考えられるのは、日本の旅行会社の姿勢にあります。2000年代に入り、訪日アジア客の受け入れを進めていくうえで本来担わなければならなかったはずの国内の旅行手配や通訳ガイドの領域を在日ネットワークに預けてしまったこと、いや預けざるを得なかった事情があったからです。もはや急増する中国団体客の受け入れはお手上げ状態になっていたなかで、取り締まりを叫んでみても詮無いことに思えたことでしょう。

では、なぜ預けざるを得なかったのか。

それが実際に起きていたのは、時をさかのぼること、2000年代初頭のことでした。この記事をみてください。

訪日観光旅行手配 中国発中心に下落進む(日経産業新聞2003年1月22日)


「訪日観光旅行(インバウンドツアー)の手配料金が下落している。インバウンドツアーは海外の旅行会社が企画し、日本の旅行会社が日本滞在部分の手配を請け負う形が主流。アジア地域の旅行会社を中心に手配料金の引き下げ要求が急速に強まっている。訪日外国人数は増加傾向にあるが、採算性の低さなどから取り扱いに消極的な旅行会社も目立つ。(中略)

顕著なのは、2000年9月に日本向け団体観光旅行が解禁となった中国だ。インバウンドツアーでは東京から箱根、京都、大阪を巡る通称「ゴールデンルート」という定番コースが一番の売れ筋商品。近畿日本ツーリストの場合、中国の旅行会社向けの同コース(4泊5日)の手配料金は、2年前の15万~23万円程度から、現在は7万5千前後と半額以下に下がった。(中略)

日本人の国内旅行が伸び悩むなか、旅行各社は潜在需要が大きいインバウンドへの関心を高めている。ただ「現状は採算性の低いツアーが多い」(近畿日本ツーリスト)こともあり、取扱量拡大や販促活動強化については消極姿勢が目立っている」。

これは中国の爆買い客が話題になるずっと前の話です。

2000年9月に解禁された中国からの団体ツアーのツアー代金がわずか1年で半額になってしまったこと。その結果、日本の旅行会社は一斉に中国側の旅行会社が主催する訪日中国団体客の手配から手を引いてしまいました。

いまでも忘れられないある旅行大手の幹部の当時の発言があります。

「なぜ中国からの団体ツアー客の手配を日本の旅行会社が請け負えないかというと、一人当たりワンコイン(500円)の利益ではどうしようもないんですよ」。

こうして引き受け手のいなくなった訪日中国客の国内手配を引き受けたのが、新興の在日華人系のランドオペレーターでした。当然、彼らはこれまでの在日ネットワークで完結するビジネスモデルを踏襲します。訪日中国ツアーの料金が下がったぶんは、免税店や土産店へのキックバックや車内販売の売上で補い、帳尻を合わせるやり方です。これが今日の無資格ガイド問題の起源といっていいでしょう。

その後も国交省は無資格ガイドの使用禁止を日本の旅行会社に呼びかけています。

有資格の通訳ガイドの使用の徹底について(周知依頼)[観国交第65号](2013年5月14日)

「平成25年2月に通訳案内士制度の周知強化の一環として、観光庁が実態調査を行ったところ、中国人旅行者向けのツアーの中には、通訳案内士法等に基づく資格を有さない一般の添乗員に通訳案内業務を行わせるなど、法令の遵守が徹底されていない場合が複数見受けられました」(一部)

これは訪日中国客の手配を行う日本の旅行会社の業界団体である中華人民共和国訪日観光客受入旅行会社連絡協議会(中連協)に宛てられたものです。以前出した「無資格通訳ガイドの使用禁止の徹底について」(2005年4月20日付け国土交通省国総旅振第32号)の要請に効力がないことから、再度周知徹底を促す内容です。

ところが、大半の日本の旅行会社は中国の旅行会社が主催した低価格の団体ツアーの手配を請け負っていないため、効き目はほとんどないわけです。実際には、誰が中国団体客の手配を請け負っているのか、捕捉できていないのか、できていても知らないことにしているのか。まあそういうことです。

※もっとも、ここでひとこと触れておきたいのは、すべてのアジア市場が在日ネットワークモデルに侵食されているかというと、そうではないことです。アジアの新興グループであるベトナムやインドネシアなど、華僑系旅行業者の影響が少ない国々の訪日ツアーはこれまで述べた話とは事情が違っていること(まだそれほど値下がりは起きていない)も知っておきたいと思います。

それにしても、なぜこんなことになる前に手を打たなかったのか。

こんな言い訳がよく使われます。アジア市場は成長が早く、FIT化や成熟化も進んでいるから、近い将来欧米市場と同じようになるだろう。そうすれば、いずれ通訳案内士との需給ギャップは埋まっていくはずだ。

ところが、実際には、上海など一部の成熟した市場が生まれても、次々と内陸からの初来日組も増えるので、いつまでたっても団体客は減りそうもありません。

国交省はずいぶん早い時期から訪日2000万人の目標を掲げていました。その内訳として中国本土からの観光客を600万人と見積もっていました。2014年には台湾、香港を含めた中華系はすでに600万人を超えています。取り締まることより、ビザの緩和などによる数の増加を優先したことは間違いありません。それはそれでひとつの決断だったでしょう。そう決めた以上、いまの問題は織り込み済みだったはずです。

なぜなら、現在の中華圏の訪日客600万人のうち、半分が団体として、通訳案内士制度の建前(有資格ガイドを使うこと)を通そうとするなら、どれだけの数の中国語通訳ガイドを育てる必要があったのか。そのために何かを緊急に着手したようには見受けられないからです。

そして、決め台詞はこうです。「もし本当にアジアの無資格ガイドを取り締まりを徹底するとしようものなら、市場の大混乱は避けられないだろう。外交関係にも影響が出かねない」。

この問題は、通訳案内士団体の主流が英語ガイドであることも、話をかみ合わなくさせている理由のひとつのように思われます。彼らはアジア市場の特殊性に対する理解は少なく、見方によっては偏見も感じられないではありません。

繰り返しますが、だからといって誰かを悪者に仕立て上げても始まりません。

訪日アジア客の増加は、一部の排外的な人たちを除けば、特に小売業界を中心に歓迎の世論が形成されていると思います。彼らは移民労働者ではありません。レジャー消費者です。ただ旅行の中身にお金を使うことより、買物に夢中なのです。だからこそ、本来あやうげな在日ネットワークで完結するビジネスモデルが成り立ってしまうのです。

そのあやうさは、やはり気がかりです。現実を直視し、受け入れつつ、立て直しのための方策を考えなければいけないと思っています。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-13 16:14 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 11日

通訳案内士制度をめぐる議論がかみ合わないのはなぜか

本ブログではここ数日、通訳案内士をめぐる問題を扱っていますが、ずっと疑問に思っていたことがありました。特に「「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?」(5月6日)を書くため、観光庁のHPに大量に掲載されている業界関係者らの主張や議論の中身を検討しながら、思ったことです。

すでにずいぶん長い時間をかけて議論されているようなのに、いつまでこの話し合いは続くのだろうか?

まじめに議論に参加されている方には失礼な言い方かもしれませんが、やはりこの問題で7年以上も議論を続けているというのは、外から見ていると不思議でなりません。ここ数年の訪日外国人旅行市場の激変ぶりから考えると、そんなに悠長な話ではないように思うからです。実際はそうでもないのでしょうか。

こうした疑問を解くうえで、ひとつの示唆を与えてくれたのが、現役の通訳ガイド(英語)の河村輝夫氏でした。河村氏は、現在ある通訳案内士団体の役員を務める傍ら、旅行会社のマネージャーでもあるという方です。

以下、河村氏とのやり取りを紹介します(あくまで河村氏の個人的な見解で、所属する団体・企業の考え方を代表するものではありません)。

―河村さんは観光庁主催の「検討会」をずっと傍聴されておられるそうですが、ご自身も通訳ガイドという当事者の立場からみて、議論のあり方についてどうお感じになっていますか。

「さまざまな関係者が集まる検討会ですから、それぞれ主張があるのはわかるのですが、全体として議論が十分にかみ合っていないと感じています。その理由を私はこう考えます。

通訳案内士制度のあり方を検討するうえで、以下の3つの次元を明確に分けて考えなければならないと思います。

A:「通訳案内士」(法制度あるいは資格)
B:「プロ通訳ガイド」(通訳案内を業務とする職業または職業人)
C:「通訳ガイド行為」(通訳案内を何らかの形で行う社会活動)

ところが、「検討会」を傍聴している限り、それらがごちゃ混ぜになって同じ場で議論されていると感じています。まずはこの3つの次元を明確に切り分けて、整理することから始めるべきではないでしょうか。

―それはどういうことでしょうか。

たとえば、野球を例に考えてみましょう。野球という社会活動(あえてここではこういう言い方をしますが)は、プロ選手の世界と大学や高校、リトルリーグ、町内会の野球大会のようなアマチュアの世界に分けられます。この場合、職業人としてのプロ野球選手のあり方や求められる能力レベルの問題と、アマチュア選手の問題を同じ場で議論するのはおかしいことはわかりますよね。アマチュア選手が増えすぎるとプロ選手は困るから、社会活動としての野球を規制しようというような議論は起こりません。

ところが、通訳案内士の議論になると、なぜかこれらをごちゃ混ぜにしてしまい、議論が迷走しがちです。

この「検討会」では、「通訳案内士のあり方を見直す」「新たな地域限定、特区ガイドの制度を作る」「現行の特区、特例制度を拡充する」「新たな試験対象言語増やす」「いや、現行制度を維持すべき」といった本来区別して行うべき議論が同じ場で進められているのですから、論点がぼやけてしまいますね。

―なるほど。議論がかみ合わないのは、3つの異なる次元を区別するという基本的な共通認識ができていないからというわけですね。いまどの次元の議論をしているのか自覚されないまま、それぞれが発言しているためだと。そもそもプロのガイドをどうすべきかという話とボランティアガイドの話が同じ場で話題に上るというのはおかしいということですね。

先ほどの野球の話であれば誰でもわかるのに、なぜ通訳案内士の話になるとこうした議論のやり方がおかしいことに気づきにくいのか。通訳ガイドという職業の置かれた社会的地位や安定性、認知度などにも関係があるのではないでしょうか。そもそも日本社会で通訳ガイドという職業が広く認知されているとはいいがたい気がします。また登録者の4分の1しか就業していないという国家資格というのは、外からみるとかなり驚きです。

日本では通訳ガイド業に対する職業としての観念があいまいなのかもしれません。一般に観光ガイドとしてイメージされるのはバスガイドでしょうか。彼女たちの場合は、バス会社に勤務し、職業的訓練を受けて仕事をしているということは承知されているでしょう。他にも山岳ガイドやネイチャーガイド、トレッキングガイドなど、いろいろなガイド業が存在し、彼らも専門的な知識やスキルを有していることは知られています。

しかし、通訳案内士という国家資格を取得しなければ従事できないのが通訳ガイドです。外国人相手に外国語で旅行を案内するガイド業であるゆえに、語学力も含めた特別な知識やスキルを必要とする職業であるからです。そう説明されれば、漠然とはわかると思いますが、残念ながら、その社会的な役割や意義などまで含めて広く認知されているとはいいがたいですね。

実際、通訳案内士というのは資格名であって、職業に対する呼称ではありません。一般に通訳案内士団体では、自らの職業を「ガイド」あるいは「通訳ガイド」と呼んでいます。海外では「ガイド」といえば、外国語を使って外国人を案内する仕事という認知が一般的で、それがスタンダードな呼称だからというわけですが、日本ではそうではない。

―そうしたことは職業人としての自尊心にも関わることでしょうね。

一方、通訳案内士資格を取得する目的として、英検やTOEICなどと同じく、一種の語学力や歴史知識などの「能力証明」手段として利用する人もいます。特に少数言語の場合、適当な語学力証明手段や検定などがないため、検定代わりに利用して履歴書に記載する人も多いようです。

この制度を「能力証明」手段と考えるのならば、通訳案内士の「名称独占」さえ守られれば事足りるでしょう。これに対して「プロ通訳ガイドとして就労するため」または「通訳案内活動を行うため」に必要な知識や技術を確認するための手段と考えれば、当然「業務独占(通訳案内士しか外国人に対する有償の通訳ガイドはできない)」を守ることが重要と考えるでしょう。

さらにいえば、「プロ通訳ガイド」という職業を「食べてゆける職業」として確立、維持してゆくためにはどうしたらよいか、ということを議論するのであれば、それは社会政策の問題です。

それとも「プロ通訳ガイドとは、常に他の職業をセット(兼業)でなければやってゆけない副業専門の業種」と捉えるのかでも、議論の方向性は変わってきます。

農家といえば、現代日本社会では兼業農家を意味するといった感覚に近いかもしれません。「日本の農業を守るために、いかにして専業農家を保護するか」という問題と、「いかにプロ通訳ガイドを独立した生計を維持できるように職業環境を改善してゆくかどうか」という話は同次元の問題だと思いますね。

―通訳ガイドをひとつの職業として確立、維持できるかどうかということは、若い世代が参入できるかどうかの鍵になりますね。その意味では、現在の就業者に若い世代が少ないのは、これまでそこが保証されているとは思えなかったからでしょう。だからこそ、これ以上「規制緩和」してもらっては困るという議論になるのでしょうね。

ところが、ボランティア通訳ガイドや特区ガイドの議論については、通訳案内活動を「任意の社会活動」として捉えると、憲法上、基本的に誰でも何をしてもよいのが日本社会の大原則ですから、「通訳案内という活動の自由に対して法規制がかかっているのか」(案内士法の解釈の問題)、「通訳案内活動をどこまで規制すべきか」(法規制に関する立法論)という問題が出てきます。

これは憲法論でいうところの「経済的自由に関する人権制約の警察目的と政策目的の問題」とも絡んできます。弁護士のように「法制度先行、実体後行型」の資格や制度と、医師と医者のように「実体先行、法制度後行型(医療の実態は古くからあり、医者も存在したが、医師免許を国家資格としたのは明治以降のこと。通訳案内士も基本的に同じ)」の制度との違いという問題もあり、通訳ガイドという職業人のあり方を後行の法制度である通訳案内士がフォローして規定しているのが原則です。

それを国家政策の観点から制度を改変して職業や職業人たちのあり方を変化させようとするかどうかが問題です。そして職業上の対応とは別に、通訳案内活動という社会活動をどこまで規制する必要があるのか。そこを2020年や地方創生などの社会の要請により、規制緩和してゆくべきかどうか、といったことが論ぜられるべきです。

―確かに、「数が足りないから増やそう」となるのはわかりますが、本来そういう根本的な議論があるべきですよね。おかげさまで、もやもやが少しすっきりしてきたような気がします。

ぼくが通訳案内士をめぐる問題に関心を持つ理由のひとつは、日本のインバウンド市場が抱えるさまざまな矛盾や課題、可能性といったものまで含めて象徴的に見られる領域だと考えるからです。この際、誰かを悪者にしても仕方がない。これまでの議論を見ていても、どちらか一方の立場から議論を押し通そうとすると、かえって事態は膠着するという印象があります。

たとえば、メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたかを少し調べてみると、全国紙レベルで扱われたのは数少ないながら、2010年が比較的多かったようです。この時期、観光庁の「通訳案内士のあり方に関する検討会」(2009~11)が始まっていて、一部メディアに「通訳案内士資格の見直し議論が波紋を呼んでいる」という論調が見られました。「規制緩和」を進める観光庁に対して、現役の通訳案内士が「無資格ガイドの容認につながり、仕事を奪われかねない」と反発するという構図で描かれていました。

2010年1月21日(東京新聞)
中国人ツアーが激増 無資格ガイドを容認?
「日本を訪れる中国人観光客が激増している。本来は「通訳案内士」の国家資格を持ったガイドが観光案内するはずなのだが、格安ツアーは無資格の添乗員がガイド代わりだという。そんな中、国の検討会で「通訳案内士の業務独占や名称独占の廃止」が持ち上がり、通訳案内士らが反発している」(一部)

2010年4月2日(産経新聞)
通訳案内士資格 見直し議論波紋
「国が進めている外国人向けの有償ガイド「通訳案内士」資格の見直し議論が波紋を呼んでいる。中国人などアジアからの観光客急増に対応するため、観光庁の有識者会議で、ボランティアや留学生を有効活用する規制緩和策が浮上。「無資格ガイドの容認につながり、仕事を奪われかねない」と現役の案内士が猛反発している」(一部)

2010年7月13日(日本経済新聞)
「通訳ガイド」国家資格不要、中・韓国語など対応しやすく
「観光庁は来年度をメドに、国家資格を持たない人でも有料の外国人向け通訳ガイドができるように規制を緩和する。現行の「通訳案内士」制度がアジアからの観光客急増に対応できていないためだ。現在無料で通訳している日本人のほか、留学生や現地旅行会社のガイドといった外国人にも解禁される。同庁は一定の質を確保するため、研修ガイドラインを作成し、自治体や企業が認定する仕組みを検討中だ」(一部)。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1502L_S0A710C1CR8000/
※日経のみこの点に触れていないのが面白いですね。

ここで出てくる「無資格ガイド」の問題は、急増するアジアからの訪日客の受入をどうするかという問題に直結していたため、新たな制度設計を準備してこなかった観光庁にとっては最も痛いところを突かれた格好で、議論を押し返すことは難しかったでしょう。

しかし、2010年当時といまでは状況もかなり変わってきています。なにしろこの5年間で500万人近い訪日客の増加が見られるわけです。そして、今年は、戦後日本人出国者数が初めて訪日外国人数を上回った1970年から45年後にあたり、もしかしたらその再逆転が起こるかもしれないといわれています。時代の大きな変わり目を迎えているといってもいいでしょう。

通訳ガイドの関係者と話をしていると、「我々は絶滅危惧種だ」というような自嘲的な発言を聞くことがあります。確かに、これまではそうだったのかもしれません。でも、これからは通訳ガイドの社会的な役割が広く注目される時代へと変わっていくのではないでしょうか。

そんな無責任なことは部外者だからいえると言われればそれまでですが、せめてもっと若い世代が参入できるような業界にするためにはどうすればいいか、といった発想で議論を進められないものか。そのためにも、河村氏が指摘するように、まずは「資格」と「職業」と「社会活動」の切り分けから始めることが大事なのではないかと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-11 09:18 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 10日

海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう

海外の観光ガイドがどんな働き方をしているかという話は、国によって相当事情が違うため、それを掘り下げようとするとかなり専門的な内容になってしまいます。残念ながら、いますぐこの件を検討することは簡単ではありません。

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?
http://inbound.exblog.jp/24450294/

一方、我々も含め一般の旅行者が海外でどんなガイドサービスを受けられるかについては、いろんな事例を知ることはできそうです。

たとえば、ヨーロッパを中心とした18都市で実施されている地元ガイドによるガイドサービスとして知られるのが、new EUROPE です。
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New EUROPE
http://www.neweuropetours.eu/

※18都市は、アムステルダム、バルセロナ、ベルリン、ブリュッセル、コペンハーゲン、ダブリン、エジンバラ、エルサレム、ハンブルグ、リスボン、リバプール、ロンドン、マドリッド、ミュンヘン、ニューヨーク、パリ、プラハ、テルアビブ。

このサービスは、上記18都市でそれぞれ実施している地元ガイドによるウォーキングツアーなどにネットで予約すれば誰でも参加できるというもの。無料のツアーもあれば、有料で郊外の観光地などを訪ねるツアーもあります。

たとえば、これはドイツのミュンヘンのサービス内容です。面白いのは、このツアーを案内する地元ガイドが写真入りで紹介されており、さまざまなキャラクターが揃っていること。どこに行きたいかもそうですが、このガイドに案内してもらうと楽しそう、という選び方もできるわけです。
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New Munich
http://www.newmunichtours.com/

「ミュンヘンに滞在している外国人旅行者がこのサイトを見て集まってきて、ローカルガイドの案内で街歩きをしたり、ツアーに出かけたりします。ぼくはそのとき、ミュンヘン郊外にあるダッハウ(ナチスの強制収容所のあった町)を訪ねるツアーに参加しました。もちろん、自分ひとりでもバスに乗って行くことはできるけど、地元のガイドにしっかり説明してもらうことで、知的好奇心が大いに満たされた。日本でもこういう外国人向けのツアーをやれないものだろうか」
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こうした実体験をもとに新しい外国人向けツアーサービスを提供しようと2013年に起業したのが、株式会社トラベリエンスの代表・橋本直明さんです。
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トラベリエンス
http://www.travelience.com/

現在同社では、自社でオリジナルツアーを企画するtravelienceと、通訳ガイドと訪日外国人旅行者をマッチングさせるTripleLightsの両サイトを運営しています。

「最初はNew MunichのFree Tourと同じモデルで、プロのガイドの案内による浅草のウォーキングツアーから始めました。それからだんだん有料のツアーも始めたのですが、必ずしも料金が安いからといって人が集まるとは限らない。むしろ、カップルや友人同士、ファミリーなどのプライベートなガイドの需要の方が大きかった。目的地も、浅草や築地、渋谷など東京のメジャーどころを案内してほしいというリクエストが多かった。知らない人と一緒になって気を遣うことなく、自分たちのペースで歩きたい、そういうニーズが多いことを知りました」。

同社の提供するツアーのうち、人気なのは、東京発日帰りの日光や富士山、鎌倉。京都も人気だそうです。でも、東京で起業したばかりの橋本さんには、京都に事務所を置いて、人を配置してというのはすぐには難しかったため、次に思いついたのが通訳ガイドと外国人旅行者のマッチングサービスであるTriplelightsだったそうです。

「こちらはお客さんを集めることに徹し、地元のガイドさんご自身にオリジナルなツアーを企画してもらおうと考えました」
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Triplelights
https://triplelights.com/

「プロとボランティアではガイディングのレベルがまったく違う。ですから、Triplelightsに登録していただくのは、通訳案内士の資格を持つ方のみです。

これまで通訳ガイドの方たちは、旅行会社などのツアーに派遣されていました。でも、旅行会社の手配する宿泊ありのツアーに参加できないガイドもいます。たとえば主婦の方。能力があるのに、就業できないのは残念です。

たとえば、朝9時から12時までの半日ツアーに参加したい外国客がいた場合、それなら主婦の方でも仕事ができる。外国人旅行者には多様なニーズがあるのだから、それに応えられるようなマッチングサービスを提供したいと考えました」。

Triplelightsでは、外国人旅行者の立場からより自分に合った通訳ガイドを選択できるようサイト上に通訳ガイドの紹介動画を用意しています。一方、それぞれの通訳ガイドは自分の企画したツアーをサイト上に紹介。そのツアーに興味を持ってくれた外国人からサイト経由でメールの問い合わせがあると、日程の調整などのやり取りをし、仕事を請けることになります。
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実際にTriplelightsを介して外国人旅行者から仕事を請けている通訳ガイドの方に話を聞いたところ、次のように答えてくれました。

「メールが届くと、お客さまの希望日に仕事が請けられるかどうか答えます。その場合、家族構成や人数、特別なリクエストがあれば確認。ツアーコースに築地が入っているのに、お寿司が苦手という人もいますから。ご家族にお子さまがいると、スケジュールも柔軟に考えなければならないなど、事前の情報があると助かります。また国籍については聞かないようにしています。もし先約があって仕事を引き受けられないとき、国籍で差別しているように思われてはいけないからです。

これまでと違うのは、お客さまと事前にやり取りしているので、ツアー当日には気心知れたお友だち感覚で会えること。これからは自分の強みを積極的にアピールしていかないといけないと実感しています」。

ある通訳案内士団体の役員もこう評価しています。

「橋本さんのコンセプトやビジネスモデルは非常に興味深く、いわゆる、一般的なエージェントのツアーの下請けというイメージの強い通訳ガイドに対して、新しい業務提供、あるいは顧客確保のメソッドを提供しようとしているスタイルは評価できます」。

これまで本ブログでも述べてきたように、通訳案内士を取り巻く状況は、さまざまな課題を抱えつつも、大きく変わりつつあります。特に若い世代の参入のためには、こうした海外で人気を得ているガイドサービスを日本に持ち込むことも必要でしょう。

一方、確かに訪日外国人旅行者は増えていますが、その訪問先が一部の都市や観光地に集中しているという問題があり、新しいガイドサービスを提供している橋本さんにとっても気になるところでした。その背景には、特に地方において英語による情報発信が決定的に不足していることがあると橋本さんは言います。だから、いまだにメジャーどころを案内してほしいというニーズに偏ってしまうというのです。

そこで、橋本さんは新しい旅行ガイドブック「Planetyze(プラネタイズ)」の提供を4月20日より開始しました。

Planetyze(プラネタイズ)
http://planetyze.com

どんなサービスかについては、こう説明されています。

「Planetyze」は、「旅行ガイドブックで気に入った場所を選ぶと、旅程表が作成でき、その場所に精通した通訳案内士に案内してもらえるツアーマーケットプレイスへつながる」という、外国人のための新しい日本の旅の提案をします。

●定番以外も外国人に紹介する旅行ガイドブック

トラベリエンスの経験で、訪日外国人が希望する観光地が東京・京都など定番ばかりになるのはなぜかと考えたら、気が付いたのは彼らにさまざまな観光地の情報が届いていないこと。日本のことは日本人のほうがもっと詳しい。外国人への情報提供の経験がある株式会社ジャパンタイムズ元出版部長笠原仁子氏を日本版編集長として迎え、「外国人が旅行したい場所を発見できる」工夫をした記事をオリジナルに執筆し、日本全国を細かく網羅していったガイドブックを作っています。訪日外国人旅行者向けの英語版、日本人向けの日本語版からスタートし、今後多言語展開していく予定です。東京・京都はもちろんのこと、地方の名所旧跡を細かく網羅し、全国各地へ訪日外国人を送客することを目指します。

●旅程表作成

「Planetyze」ではワンストップで旅程表を作成できます。ガイドブックに掲載されている記事を読み、気に入った場所を旅行カレンダーに追加し、旅程表として印刷・ダウンロードすることができます。また、旅程表を作るのが難しい旅行者のために、通訳案内士が旅程を提案するサービスを提供します。

●通訳案内士によるツアーマーケットプレイス
日本全国の通訳案内士によるオリジナルツアーを提供します。いままでのトラべリエンスの実績をもとに、訪日外国人のニーズをふまえ、ガイドの自己紹介動画を揃えています。ガイドの語学力や知識・人柄を知ったうえで納得してツアーを申し込むことができます。


これまで多くの地方自治体が多言語化した地元の観光地図やパンフレットをたくさん制作してきましたが、どれほどの効果があったか大いに疑問でした。いまの時代、ネット上に情報を載せなければ意味がないからです。

それにしても、全国の地域情報を英語化して発信するというのは、壮大なチャレンジです。ですが、実は誰かがやらなければならないことでした。こういう取り組みはもっとみんなで応援していかなければならないと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-10 16:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 07日

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?

前回、通訳案内士になるための試験や適性について関係者らの声をまとめてみましたが、フリーランスとしての実際の働き方は、1年の中で繁忙期と閑散期があるなど、専業にするのはなかなか難しいところがあることもわかってきました。

通訳案内士になるには? 適性は?
http://inbound.exblog.jp/24449064/

ここでは視点を変えて、海外では通訳ガイドはどのような制度として運営されているのか考えてみたいと思います。海外から観光客が訪れる国や地域には、どこでもガイドという職業は存在するものだからです。

観光庁では、2009年7月に「通訳案内士のあり方調査に関する中間報告(海外通訳ガイド制度事例)」として以下の資料を公開しています。

http://www.mlit.go.jp/common/000058983.pdf

さらに、それを2014年12月の「通訳案内士の現状及び制度見直しの検討経緯」という報告書の中で簡略化して表に整理しています(「海外における通訳案内士制度」)。

ここでは以下の7カ国の事例が表にまとめられています。
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アメリカのように国として統一した制度自体がない国もあれば、中国のように自国民にしか資格を与えず、実力によってガイドに等級を設けている国などもあるようです。

しかし、これだけではよくわからないというのが正直なところです。ポイントは「業務独占」や「資格取得方法」「事後研修・育成制度」「無資格者使用に対する罰則」の具体的な中身がそれぞれの国情や旅行市場との関係でどう設定されているのか、でしょう。専門家による解説がほしいところです。

昨年2月刊行された『訪日観光の教科書』(高井典子、赤堀浩一郎著 創成社)という本の中で、英国の観光ガイド制度に関する記述があります。

英国における観光ガイドは「Blue Badge Tourist Guide(ブルーバッジツーリストガイド)と呼ばれています。英国政府公認の観光ガイド制度によって認定されているプロのガイドです。

「彼らの多くは旅行会社との契約ベースで仕事を受け、フリーランスのガイドとして働いており、その点は日本の状況とよく似ている。しかし、ガイド制度や人材育成システムが日本とは大きく異なる」そうです。

以下、英国と日本の通訳案内士の制度を比較している箇所を転載します(同書の174~175ページ)。

■制度としての特徴―適正重視の入学試験

英国のブルーバッチガイドは、英国政府公認の観光ガイド境界であるInstitute of Tourist Guiding(以降、ITGと表記)が認可する資格の中でも最高ランク(Level 4)の資格である。日本の通訳案内士試験のようにいきなり試験を受けるのではなく、まず上記のITGでのトレーニングを受講する資格を得て、そのうえで観光ガイドとしての教育を受けるシステムになっている。受講資格を得る手続きとしては、書類先行→基礎知識テスト(記述問題および小論文)→面接を経る必要がある(使用言語は英語)。

受講資格を得るために面接を課すには理由がある。観光ガイドとしての「適性」を見るためだ。英国に関する知識が豊富で高い語学力を有していたとしても、接客業務で必要となる高度な対人コミュニケーション能力が低い人はここでスクリーニングされてしまう。また、身だしなみや言葉遣いなども重要だ。面接では「英国の顔」として観光客を案内する資質があるかどうかを見る。こうして基礎知識と適性をクリアした人だけが、ITGのトレーニングコース受講を許可される「観光ガイド候補生」となる仕組みである。日本の通訳案内士試験においても、口述試験においてコミュニケーション能力などガイドの現場で必要となる実践的な能力を問う形式の試験形態への移行が見られるが、英国のシステムはより適性を重視しているようだ。

英語が母国語の人は半年、英語以外を母国語とする人は通常18ヵ月のトレーニングをITGで受ける。歴史、建築、美術、地理、英国の産業といった基礎的な講座を受講するとともに、実地研修にも参加しなければならない。実際にマイクを持って人前で話す訓練やボイストレーニング、ファーストエイドなどの実務的な講座も用意されている(使用言語は英語)。

この講座を終了後、最終試験をパスすることで、ガイド資格を取得できます。最終試験は筆記試験と実地試験があるそうです。

こうした英国の制度について、同書では次のように日本との違いを説明しています。

●日本の通訳案内士試験に比べよりハードルの高い資格であること。
●これらの試験やトレーニングは英語で行われることから、ITGが育成するのは「観光ガイド」であって「通訳ガイド」ではないこと。

基本的に日本とは人材育成の考え方が違うようです。

一方、こんな記述もあります。

「英国の観光ガイドは総じて「生きるための職業」としてガイドを選択している人は少ないようである。中産階級の知識人で、現役をリタイアしたあとに趣味としてガイドをする人、あるいはそもそも給与所得を必要としない人もいる。そのため、自分の趣味や得意分野を生かしたガイディングをする人が多い。もともと自分の趣味としてその道を極めた分野でガイドをするのである。英国ならではと思わされるのが、美術館や博物館、建築物やガーデンなどを専門分野とするガイドたちである」。

この記述はよく考えると微妙な意味を持っています。観光ガイドを一般的な意味で職業として捉えていないとも受け取れるからです。日本の通訳案内士でも同様のことは指摘されていますから、似た面があるのかもしれません。

ともあれ、インバウンドの歴史の長い英国では、「通訳ガイド」ではなく、あくまで「観光ガイド」を育成していく仕組みがしっかりできていることがわかります。その一方、「これは世界で通用する英語が母国であるがゆえの制度といえる」と指摘されているように、この制度の背景には、英語の本家本元の国という圧倒的な強みがあることもわかります。日本が同じようにできるとは限らないということです。

こうなってくると、もっと他の国の事情も知りたくなります。そのうえで、もし共通する部分や参考にできる部分があれば、それを取り入れるなどして日本独自の制度設計を考えるべきなのでしょう。日本はこの方面では圧倒的に海外から後れを取っているというのは否定できない事実だからです。

誰かこのようなテーマで研究をしている方はいないものでしょうか。そこのところがすごく知りたいものです。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-07 17:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 07日

通訳案内士になるには? 適性は?

通訳案内士の問題は、訪日旅行市場をこのまま順調に拡大させていきたい行政や旅行業者の思惑や、現場を支える現役の通訳案内士の人たちの事情を考慮することはもちろんですが、これからこの世界に入ってこようとしている若い世代の立場にたって考える必要もあると思います。

なにしろすでに見たとおり、この業界は高齢化が進んでいます。海外からやって来る旅行者は、自分の親のような、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんの年代ではなく、自分に近い世代の日本人にガイドしてもらいたいと思うはずです。自分ごととして考えればそうでしょう。では、この業界が若い世代を取り込むためにはどうすればいいのでしょうか。そもそも経験の少ない若い世代が現役で働くのは難しい仕事なのでしょうか。

ひとまず資格を取るにはどうしたらいいか、見てみましょう。観光庁のHPには資格の概要が、日本政府観光局(JNTO)のHPには受験に関する情報が掲載されています。

通訳案内士になるには(観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shiken.html

通訳案内士試験概要(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/interpreter_guide_exams/index.html
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※ここに載せたのは、2014年12月現在の観光庁の資料です。先頃発表された15年度の試験ガイドラインをみると、たとえば2次試験の面接時間が8分から10分に増えているなど、いくつか変更もあるので、詳しくはそちらを参照ください。

JNTOのHPによると「平成27年度通訳案内士試験受験申請受付は5月18日(月)~6月29日(月)」とあります。まもなく今年度の受験申請が始まるんですね。1次試験は8月のようです。

実は、いまある版元から通訳案内士を含めた観光ガイドになるためのキャリア本の制作をしていて、これまで何人かの現役の通訳案内士の方にお会いしてきました。そこでは、この試験に合格するためにはどんな勉強をすればいいかといった話もうかがってきましたが、語学的にネイティブに近い環境に恵まれた人などを除けば、それ相応の勉強を積み重ねない限り、クリアできない高いハードルがあるといえそうです。それは合格率などにも表れています。

実際にお会いした現役の通訳案内士の方々は、おだてるつもりではありませんが、みなさん人間的に魅力的な方たちでした。語学ができるというだけでなく、基本的に知的な能力の高い方たちだと思いました。さまざまな国籍の外国人旅行者を相手に「日本を売り込む」トークを繰り広げる毎日を送っている彼らは、共通して「引き出し(外国人が関心を持ちそうなあらゆるタイプの話のネタ)を多く持つこと」の大切さを語っておられました。そのためには、日々新しい情報をキャッチし、勉強を重ねていくことが不可欠だといいます。その意味で、プロの通訳ガイドとして評価を得るには、それ相応の時間と経験が必要とされることでしょう。

さらにいえば、向き合う相手に気を良くさせる気遣いやセンスを自然に身につけておられました。通訳ガイドにとって最も重要なのは、人が相手の仕事が無理なくできるかどうかということでしょう。

語学が好きなこととガイディングが得意かどうかは別の話だからです。これまで見てきたように、通訳案内士の登録者のうち全体の4分の1しか就業していないという現実は、一部の資格取得者のこの仕事に対する適性が必ずしもマッチしていなかったという面もあるのではないでしょうか。語学に関する唯一の国家資格ということで、自分の語学力を試すために試験を受けたという人の割合が高いという調査結果にもうなずけるところがあります。

それでも、ある時期までは訪日外国人旅行者の数がそれほど多くはなかったので、誰も困らなかったのです。しかし、状況は大きく変わりつつあります。

気になるのは、これだけの高い能力と努力が必要とされる通訳ガイドの仕事に見合った代価は得られるのか、ということです。そこが現状では判断の難しいところなのだと思われます。

今日通訳案内士に求められる資質や働き方などについて、通訳案内士団体のNPO法人GICSS研究会理事長のランデル洋子先生にお話をうかがったことあります。先生は現状をふまえたいくつかの具体的な提案をしておられます。

通訳案内士の第一人者、ランデル洋子先生の語る「求められるガイド」とは
http://inbound.exblog.jp/24051695/

ところで、少し別の観点から考えてみたいことがあります。

海外の同業者たちはどのような働き方をしているのだろうか、です。

もっと具体的にいうと、海外では通訳ガイドはどのように生計を立てているのか。この業界を志望している若い人たちがいちばん知りたいのは、そこではないでしょうか。制度設計も、それをふまえたものでなければ、新しい人材は参入してこないのではないか、と思えてなりません。

次回、この点を考えてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-07 09:45 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 06日

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか

前回、観光庁が主催する「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」等の中身を一部紹介しながら、関係者だけでは解決できない拡がりを持つに至った日本のインバウンドをめぐる問題を広く知ってもらうことが大事だと書きました。

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?
http://inbound.exblog.jp/24445622/

そのうえで、メディアの役割はとても重要です。

では、これまでメディアは「通訳案内士」問題をどのように報じてきたのでしょうか。

そこで、ネットを中心に通訳ガイド案内士をめぐる記事を探してみました。大手メディアの報道は少ないです。はっきり言って、メディアは十分この問題を報じてきたとは思えません。

無理もないともいえます。一般の日本国民には利害をともなわない世界だからでしょう。たとえば、3年前に起きた関越自動車道のバス事故によって多くの日本人乗客が死傷しましたが、運転手がふだんから訪日外国人を乗せたバスを運転していたこともあり、国土交通省は乗合バスの制度変更を急ピッチで進めました。しかし、通訳案内士の問題は、基本的に日本の消費者には関係ない話だからです。

もっともこれだけ外国人旅行者が増えてくると、外国語を使って案内する人材が必要であろうことは一般の我々にも理解できます。そのせいか、特に今年に入って報道は増えているようです。

以下、記事をいくつかの時期に分けて書き出してみました。潮目となるのは、観光庁設立から「検討会」の開催、東日本大震災、東京五輪開催決定などでしょうか(リンクできるものとそうでないものが混じっています。すべての記事をフォローできているわけではありません。ご了承ください)。

●2007年末~08年10月 観光庁設立まで

2007年12月15日(観光経済新聞)
国交省、通訳ガイド団体連絡会議の初会合開く

出席団体は、日本観光通訳協会、全日本通訳案内士連盟、通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会、関西通訳・ガイド協会、ひろしま通訳・ガイド協会、九州通訳・ガイド協会、中国語通訳案内士会、日本通訳案内士連合。
http://www.kankokeizai.com/backnumber/07/12_15/kanko_gyosei.html#02
※観光庁の「懇談会」は08年11月にスタートしているようですが、それ以前の07年12月に初会合があったようです。

2008年2月9日(観光経済新聞)
通訳ガイド制度周知へ、2月を強化月間に 国交省

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/02_09/kanko_gyosei.html

2008年2月23日(観光経済新聞)
地域限定通訳ガイド、岩手など4県の合格者は84人に

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/02_23/kanko_gyosei.html#02
※この時期すでに「地域ガイド」制度は動き出していることがわかります。

2008年4月3日(トラベルビジョン)
国土交通省、地域限定通訳案内士試験を新たに北海道、栃木で実施

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=35062

2008年8月30日(観光経済新聞)
通訳ガイドの低い稼働率が浮き彫りに、国交省初の実態調査で判明

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/08_30/kanko_gyosei.html#01
※国土交通省が初めて実施した「通訳案内士就業実態等調査事業」と思われる内容の報道です。

2008年9月1日(トラベルビジョン)
通訳案内士の専業率は10%、年収100万円未満38%−国交省、課題解決へ調査

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=37894
※この時期から通訳案内士の実態が明るみにされていきます。

2008.10.1観光庁設立

●2008年11月~11年2月 「検討会」スタートから東日本大震災直前まで

2008.11.19観光庁「通訳案内士のあり方に関する懇談会」第1回
※意見交換・認識共有の場の設置が目的

2008年12月6日(観光経済新聞)
通訳案内士就業実態調査

http://www.kankokeizai.com/image/top/081206_6.pdf

2008.12.11観光庁「懇談会」第2回
2009.1.27同第3回

2009年3月17日(レコードチャイナ)
<中国語ガイド>無資格横行が有資格者を圧迫、罰金の適用なく―日本

http://www.recordchina.co.jp/a29361.html
※興味深いことに、この問題に早くから関心を向けていたのは、中国情報を発信するニュースサイトでした。

2009.6.26観光庁「通訳案内士のあり方に関する検討会」第1回
※具体的な方策を検討

2009年6月27日(レコードチャイナ)
無資格者の観光客案内には問題多い=中国からの個人ビザ入国解禁控え、ガイド問題で活発な議論―観光庁

http://www.recordchina.co.jp/a32789.html

2009年7月11日(観光経済新聞)
観光庁、通訳案内士制度について検討会
就業率の低さ、地域や言語によって人材不足、無資格ガイドなど問題

http://www.kankokeizai.com/backnumber/09/07_11/kanko_gyosei.html

2009.7.31観光庁「あり方検討会」第2回

2009年8月3日(レコードチャイナ)
有資格者足りなくない!?「間違った前提」にガイド側が強い懸念―観光庁通訳案内士検討会

http://www.recordchina.co.jp/a34007.html
※通訳案内士不足という一般的な理解に対して通訳案内士団体が反論しています。

2009年8月4日(レコードチャイナ)
映画ロケで大人気の北海道ツアー、深刻な中国語ガイド不足が悩みの種?

http://www.recordchina.co.jp/a34066.html

2009.11.19(日本観光協会)地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会
http://vg.nihon-kankou.or.jp/admin/taikaikiroku/pdf/nara_houkoku.pdf

2009.10.8観光庁「あり方検討会」第3回

2009年10月11日(レコードチャイナ)
中国からの低レベルツアーに強い懸念!無資格ガイド問題置き去りに業界側は反発―観光庁検討会

http://www.recordchina.co.jp/a36085.html
※中国からの団体ツアーの問題が報じられ始めたのはこの頃からです。

2010年1月21日(東京新聞)
無資格ガイドを容認?

「日本を訪れる中国人観光客が激増している。本来は「通訳案内士」の国家資格を持ったガイドが観光案内するはずなのだが、格安ツアーは無資格の添乗員がガイド代わりだという。そんな中、国の検討会で「通訳案内士の業務独占や名称独占の廃止」が持ち上がり、通訳案内士らが反発している」(一部)。
※2009年から10年の夏(この年の9月、尖閣諸島沖漁船衝突事件が起きています)まで、中国からの観光客の急増が話題になっていました。“爆買い”という言い方もこの頃から始まったものです。一方、こうした勢いのなか、通訳案内士の関係者らは、制度が形骸化することを怖れ、反発を強めていました。

2010.2.22観光庁「あり方検討会」第4回

2010年2月27日(レコードジャパン)
有資格ガイドは仕事なしの「不思議な」旧正月?悪質な訪日ツアーの調査・取り締まり求める―観光庁検討会

http://www.recordchina.co.jp/a40064.html

2010.3.15観光庁「あり方検討会」第5回

2010年3月30日(レコードチャイナ)
JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局

http://www.recordchina.co.jp/a40879.html
※通訳案内士法違反が初めて摘発されたようですが、その後この問題がどうなったかについてはよくわかりません。

2010年4月2日(産経新聞)
通訳案内士資格 見直し議論波紋

「国が進めている外国人向けの有償ガイド「通訳案内士」資格の見直し議論が波紋を呼んでいる。中国人などアジアからの観光客急増に対応するため、観光庁の有識者会議で、ボランティアや留学生を有効活用する規制緩和策が浮上。「無資格ガイドの容認につながり、仕事を奪われかねない」と現役の案内士が猛反発している」(一部)。

2010.5.14観光庁「あり方検討会」第6回

2010年6月18日(レコードチャイナ)
<新ガイド>「業界は実質崩壊」―JFG山田理事長インタビュー

http://www.recordchina.co.jp/a42980.html

2010.6.25観光庁「あり方検討会」第7回

2010年7月3日(観光経済新聞)
通訳案内士、業務独占の廃止検討 観光庁

http://www.kankokeizai.com/backnumber/10/07_03/kanko_gyosei.html

2010年7月13日(日本経済新聞)
「通訳ガイド」国家資格不要、中・韓国語など対応しやすく

「観光庁は来年度をメドに、国家資格を持たない人でも有料の外国人向け通訳ガイドができるように規制を緩和する。現行の「通訳案内士」制度がアジアからの観光客急増に対応できていないためだ。現在無料で通訳している日本人のほか、留学生や現地旅行会社のガイドといった外国人にも解禁される。同庁は一定の質を確保するため、研修ガイドラインを作成し、自治体や企業が認定する仕組みを検討中だ」(一部)。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1502L_S0A710C1CR8000/

2011.1.14観光庁「あり方検討会」第8回
2011.3.25同第9回

2010.11.26観光庁「通訳案内士研修の高度化に関する検討会」第1回
2011.2.7同第2回

●2011年3月~13年8月 東日本大震災発生

2011.3.11 東日本大震災発生
※通訳案内士をめぐる熱い議論は、震災によって訪日客が激減していくなかで沈静化してしまいました。通訳案内士試験の受験者数も、この頃大きく落ち込んでしまいます。

2011.3.18観光庁「通訳案内士研修の高度化に関する検討会」第3回

2011.3.31観光庁「通訳案内士制度のあり方に関する最終報告書」
http://www.mlit.go.jp/common/000140060.pdf
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2011.10.4観光庁「通訳案内士試験ガイドラインに関する検討会」第1回
※通訳案内士試験の内容や採点基準などの検討
2011.11.28同2回
2012.1.23同3回

2012.4.16観光庁「通訳案内士試験ガイドラインの改訂」
http://www.mlit.go.jp/common/000208491.pdf

2012年10月30日(トラベルビジョン)
観光庁、通訳案内士養成セミナー開催へ、全国20ヶ所で

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=55409

2013.1.9観光庁「通訳案内士専門性研修支援事業」を実施

2013年5月30日(日本経済新聞)
九州の官民、独自の通訳ガイド資格創設 アジアから誘客狙う

「九州の官民でつくる九州観光推進機構(会長・石原進九州旅客鉄道会長)と九州7県、福岡市は2014年度、九州独自の通訳ガイドの資格を創設する。観光産業振興に向けた国の特区指定を受けた取り組み。外国人留学生らに九州の歴史などについての研修を実施、認定する。旅行業者などに活用を促し、韓国や中国などアジアからの観光客の誘致強化につなげるのが目的だ」。
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO55620370Z20C13A5LX0000/

2013年5月30日(琉球新報)
沖縄 地域限定通訳案内士セミナー参加者募集

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-207322-storytopic-4.html

●2013年9月~現在 東京五輪決定、1000万人突破以後

2013年9月8日(日本経済新聞)
2020年五輪、東京開催が決定 56年ぶり

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG07047_Y3A900C1000000/
※東京五輪決定で再び訪日外国人旅行者に対する関心が盛り上がり始めます。

2013年10月28日(スポニチ)
「通訳案内士」も東京五輪心待ち!プロ1万6779人が登録

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/10/28/kiji/K20131028006896740.html

2013年12月1日(観光経済新聞)
札幌市が札幌特区通訳案内士制度創設、まず17人が登録

http://www.kankokeizai.com/backnumber/13/12_01/chiiki_kanko.html

2014年1月29日(東京新聞)
「五輪までに2000万人」大丈夫? 訪日客ガイド不足

「日本を訪れる外国人旅行者を案内する観光ガイドの不足が深刻化している。ガイド不足に向けて、観光庁は「通訳ガイド制度」の創設を打ち出したが、これが逆に既存のガイド資格の受験者数減少を招いている。観光庁は新資格創設を事実上断念。政府は東京五輪が開かれる二〇二〇年までに外国人旅行者を現在の倍の二千万人に増やそうとしているが、政策の混迷が足を引っ張っている」(一部)。
※一部の通訳案内士団体は、こうした案内士不足という見方に反論しているようです。

2014年2月5日(レコードチャイナ)
簡単な研修でガイド業が可能に?通訳案内士団体反発=経産省が法案提出の見込み―日本

http://www.recordchina.co.jp/a82823.html

2014年4月21日(Cnet Japan)
東京五輪に「質の高いガイド」を--外国人観光客と通訳案内士をつなぐ新サービス

http://japan.cnet.com/news/service/35046839/

2014年12月1日(中日新聞)
通訳案内士試験、珍問だらけ 観光庁見直し検討

「外国人観光客に同行し、外国語で案内する国家資格「通訳案内士」の試験問題について、「観光ガイドの実務と無関係な問題が多すぎる」として業界から改善を求める声が上がっている。訪日外国人観光客は昨年、一千万人を突破して過去最多。通訳案内士の需要は高まっているが、このままでは十分な能力を持たない人材が現場へ出かねないという。所管する観光庁は見直しの検討を始めた」(一部)。

2014.12.24観光庁「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」第1回
※新たな通訳案内士制度を構築するための具体的な方策について検討

2014年12月25日(トラベルビジョン)
第1回通訳案内士制度のあり方検討会開催-15年7月に最終まとめ

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65121

2015年1月15日(excite)
アジア圏旅行客増大に対応 通訳案内士制度見直しへ

http://www.excite.co.jp/News/politics_g/20150115/Economic_45511.html

2015.1.20観光庁「制度のあり方検討会」第2回

2015年1月21日(京都新聞)
「京都通」の通訳ガイド100人増へ 特区活用で観光振興

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150121000011
※京都市は独自の通訳ガイド育成に積極的のようです。

2015年1月24日(観光経済新聞)
観光庁、通訳案内士の制度見直しへ会合

http://www.kankokeizai.com/backnumber/15/01_24/inbound.html

2015.1.26観光庁「制度のあり方検討会」第3回
2015.2.9同第4回

2015年2月9日(トラベルビジョン)
JATAやはとバスから意見聴取、法改正要望も-通訳案内士検討会

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65720

2015.2.17観光庁「制度のあり方検討会」第5回

2015年2月17日(トラベルビジョン)
旅行会社から要望続出、新たな資格案も-通訳案内士検討会

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65835

2015年2月18日(産経新聞)
7外大が連携し「東京五輪」へ通訳育成

http://www.sankei.com/life/news/150218/lif1502180004-n1.html

2015年3月2日(産経ニュース)
通訳ガイド拡大へ規制緩和 訪日外国人観光客の急増に対応 観光立国に向け政府方針

「政府が、報酬を受けて外国人旅行客を案内できる国家資格「通訳案内士(通訳ガイド)」制度の規制緩和を検討していることが1日、分かった。現行の単一資格を見直し、語学力やガイド知識のレベル、訪日客の案内回数といった実務実績などに応じた等級制を新たに導入する案が有力だ。資格認定の幅を広げて、訪日客の急増に伴う通訳ガイド需要の拡大・多様化に対応。無資格ガイドによるトラブル防止にもつなげて、「おもてなし」の質を高める狙いだ」(一部)。

2015.3.6観光庁「制度のあり方検討会」第6回

2015年3月8日(トラベルビジョン)
通訳案内士検討会、自治体などから意見聴取、次回から議論開始

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=66142

2015.3.23観光庁「制度のあり方検討会」第7回

2015年3月23日(トラベルビジョン)
通訳案内士検討会、4つの論点に集約-試験は語学力重視へ

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=66407

2015年4月11日(旬刊旅行新聞)
通訳案内士制度の検討会、業務独占の是非も課題

http://www.ryoko-net.co.jp/?p=12092

2015年04月16日(京都新聞)
通訳ガイド不足?十分? 地域資格めぐり論争

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150416000026

2015年4月22日(NHK)
外国人向け「地域限定」通訳ガイド新設へ

「日本を訪れる外国人旅行者の増加に伴って、有料で通訳ガイドができる国家資格の「通訳案内士」が地方を中心に不足していることから、観光庁は自治体の研修を受ければ地域を限って有料で通訳ガイドができる新しい制度の創設を検討することになりました」(一部)。
http://inbound.exblog.jp/24442716/

これらの記事にはいろんな論点が含まれているため、あらためて個々の論点について考えてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-06 17:43 | “参与観察”日誌 | Comments(0)