ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 02月 09日

楽天トラベル vs. Expedia これからが面白いと思いたい(そう思っていたけれど…)

2月8日、お台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAで「楽天トラベル新春カンファレンス2016」(首都圏)が開催されました。
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楽天トラベル、宿泊キャンセル料を代行収受へ、3月からカード払いを事前決済に1本化(トラベルボイス2016年2月8日)
http://www.travelvoice.jp/20160208-60705

今年楽天は創業20周年を迎えるそうです。楽天トラベルも2001年から。当時はいまほどインバウンド市場は大きくありませんでしたが、近年エクスペディアなどの海外のホテル予約サイトが続々参入し、訪日客を奪い合う動きが加速するなか、楽天トラベルは今後どうしていこうとしているのでしょうか。その点については、もうひとつ明快な説明はなかったように思いますが、多言語化の取り組みはかなり進んでいるようです。上記のトラベルボイスの記事によると「中国では訪日前に楽天で購入した商品を訪日中に受け取れるサービスをホテルモントレの3施設と試験的に行なっている」そうです。
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興味深いのは、毎年恒例の前年1年間に顕著な実績を収めた宿泊施設に贈る「楽天トラベルアワード2015」(首都圏地区)の発表です。その中に、外国客の予約件数で実績を残した宿泊施設に与えられる「インバウンド賞」があります。今年の首都圏の「インバウンド賞」は以下のとおりです。

ヴィラフォンテーヌ東京汐留 初受賞
三井ガーデンホテル上野 初受賞
レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草 初受賞
ドーミーインPREMIUM渋谷神宮前 初受賞

このうち「レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草」は知りませんでした。「浅草寺・東京スカイツリー至近のレジデンシャルホテル『ビーコンテ浅草』は、ワンランク上質なキッチン付きホテル」だそうです。

レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草
http://www.bconte.com/asakusa/
楽天トラベルでこのホテルの動画が見られますが、なるほどデザイン的にも魅力的なホテルですね。
http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/130043/130043.html

それにしても、楽天トラベルを通じた訪日客による予約実績の高いこの4軒。エクスペディアのランキングとはずいぶん違います。なにしろエクスペディアの利用者の3割は新宿のホテルなのですから。

エクスペディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿を選ぶ
http://inbound.exblog.jp/25331847/

インバウンド予約の総件数や国籍比率がわからない以上、単純に比較してもあまり意味はないのですが、楽天トラベルを利用する訪日外客は、台湾などの日本に精通したリピーターが多いと思われます。エクスペディアが初めて訪日する外国人の利用も多いこととは対照的かもしれません。

そもそも全国の予約可能なホテル物件の数では、日本のOTAの王者・楽天トラベルにはエクスペディアは足元にも及ばないはずです。ただし、彼らも訪日客の増加と地方への分散化の急速な流れの中で、これまでの東京、大阪に続き、昨年9月に九州支社、10月に名古屋支社、そして今年2月に沖縄支社を開設しています。

外資の参入によって国内客ではなく、急増する新規市場としての訪日客を奪い合うという構図は、これまで日本ではなかったことだけに目が離せません。その点、楽天は「英語公用語化」で有名ですが、意外にドメスティックな体質があるように思います。

楽天は以前、中国最大OTAのシートリップに出資していました。

楽天、中国旅行サイト「Ctrip.com」に出資、具体的な連携協議へ(トラベルビジョン2004年6月14日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=17406

でも、数年後にあっさり同社株を手放しています。

楽天、保有するCtrip株約664万株を売却へ(ロイター2007年8月7日)
http://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-27246320070807

いまではエクスペディア、ブッキングドットコムに並ぶ世界3大OTAと称されるまでに成長したシートリップとの提携がうまくいかなかった背景については、中国メディアも当時いろいろ報じていましたが、要は「お互いのカルチャーが合わなかった」せいでした。

訪日客5千万人時代へ 世界三大OTAの戦略(観光経済新聞 2016年1月1日).
http://www.kankokeizai.com/koudoku/160101/18.pdf

そして、シートリップは2014年5月に日本法人を開設し、拡大する訪日中国市場を貪欲に取り込んでいます。

C-TRIPが日本へ本格進出、中国の地方都市へのビジネス客狙う(NBOnline 2012年3月9日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120309/229645/

観光業界人インタビュー シートリップ・ジャパン社長の梁穎希氏 第2818号(2015年10月24日)
http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/tokusyukiji/interview/15_10_24.html

はたして楽天はこの状況をどう乗り越えていくのでしょうか。ドメスティックなやり方が一概に悪いとはいえないとぼくは思います。それぞれ良さ悪さがあるはず。日本の宿泊施設のサービスレベルの向上につながる「朝ごはんフェスティバル」みたいな取り組みは外資にはできないでしょうから。

朝ごはんフェスティバル
http://travel.rakuten.co.jp/special/asafesta/

とはいえ、今後訪日外国人がさらに増えていくのだとしたら、ひとまず彼らにもっと伝わりやすいサイトにしていく必要があるのでしょう。「カルチャー」の違いを乗り越えて、もっと歩み寄らないといけないのだと思います。

今後、訪日旅行市場が成熟していくことも確かでしょうから、そうなると楽天の優位性も出てくるはず。これからが面白いと思いたいです。ちょっと優等生的すぎるコメントでしょうか…。

【追記】
後日、こんな記事が出ました。楽天は本業においても外資に追われているのですね。これは大変だ。

楽天ネット通販、成長鈍化 迫るヤフー・アマゾン(朝日新聞2016年2月13日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ2D3WJ6J2DULFA00M.html

さらに、こんな記事も出ました。

楽天の海外戦略、地域拡大を転換 東南アジアからネット通販撤退(朝日新聞2016年2月26日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12228322.html

楽天は主力のネット通販で東南アジアから撤退するなど海外戦略の見直しに乗り出した。「脱・日本企業」宣言から5年以上たつが、国内依存の収益構造は変わっておらず、自ら海外事業を広げる道筋はまだ描けていない。

楽天は今月末、インドネシアなど3カ国でネット通販の取引を停止し、サイトも近く閉鎖する。タイの通ログイン前の続き販サイト運営会社も売却する方針で、東南アジアの進出先すべてのネット通販から撤退することになる。

2008年の台湾進出を皮切りに、楽天は地元の有力サイトを買収する形で海外展開を進めた。27カ国・地域に進出して流通総額の海外比率を7割にする目標を掲げ、10年には三木谷浩史会長兼社長が「日本企業をやめ、世界企業になる」と宣言。英語の社内公用語化にも乗り出した。

だが、進出先は12カ国・地域にとどまり、台湾以外は苦戦を強いられた。とくに東南アジアはドイツ系企業などに圧倒され、日本で成功した「楽天市場」モデルは歯が立たなかった。

そこで地域拡大路線を転換し、市場が大きい米欧と好調な台湾に経営資源を集中させる。三木谷氏は「戦略に合わないビジネスは修正する」と12日の会見で語り、「選択と集中」を進める考えを示した。


 一筋の光明は、14年秋に約1千億円で買収した米イーベイツの存在だ。提携サイトで買い物をするとキャッシュバックなどがもらえるサービスで、米国を中心に1千万人超の利用者を抱える。知名度のない楽天にも、客を呼び込むチャンスが見込めるわけだ。ただ、12日に発表した20年の業績目標は依然、利益の9割以上を国内のネット通販と金融部門に頼る内容だ。UBS証券の武田純人シニアアナリストは「薄くても幅広い取引に関わることで、いずれ金融など自前のサービスを海外でも売り込む狙いでは」とみる。

これはまずいのではないでしょうか…。いまエクスペディアでは、東南アジア方面からの訪日予約手配が急増しています。まさに市場が拡大しているこの時期に、その可能性を手放すとは…。

昨年ぼくは楽天トラベルを取材しています。

多言語化に取り組む楽天トラベル。宿泊プランは外国客に支持されるか?
http://inbound.exblog.jp/24671580/

このとき、同社の担当者たちは「グループのシナジーを活かす」という表現を多用していました。もちろん、楽天は旅行事業だけやっているわけではないのですけれど、今回の決定は経営上のゆきづまりが背景にあると思われますが、やはり海の向こうの事情が見えていない経営判断ではないかと思われます。残念というほかありません。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-09 17:44 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 02月 09日

渋谷公園通りの「ラッキーシェイクキャンペーン」を体験してみた

昨日少し触れましたが、いま渋谷の公園通りでは「Tokyo Prime Shopping 2016 in Shibuya」という商店街のイベントが開催され、外国人観光客向けの「ラッキーシェイクキャンペーン」というのを実施しています。
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Tokyo Prime Shopping 2016 in Shibuya
http://www.koen-dori.com/news/2015/12/tokyo_prime_shopping_2016_in_s.html

これは、キャンペーン期間中(1月2日~2月29日)、外国人観光客が所定の場所(参加店など)で中国版ツィッターこと「微信(WeChat)」を起動し、携帯端末をシェイクすると、アプリ画面上でくじ引きできるというものです。商品総額は200万円、それ以外に参加店舗からの商品券や景品などが当たるそうです。
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公園通りにひらめく大量の旗に書かれた中国語簡体字の「幸运摇出来」は、スマホをフルフルすることで幸福を呼び込もうという意味です。

公園通り商店街のHPによると、このイベントのターゲットや参加店は以下のとおりです。

●ターゲット
中国、台湾をメインエリアとして、それに、英語圏の外国人観光客を加えた、年齢 20~40 代の男女

●キャンペーン参加店舗数 
約900店舗(大型商業施設テナントも1つとしてカウント)
参加大型商業施設、11施設

同商店街では初の試みだそうですが、なかなか大規模なものです。

また協賛・協力に中国系の企業が多いのも特徴です。

●メイン協賛:サイバーマートグループ、FJサイバー株式会社(日本窓口)
●協賛・協力:東方網、東方航空、上海酷活電子貿易、SENSORO、ジャパンショッピングツーリズム協会

基本的に外国人向けのキャンペーンですから、日本人にはあまり関係ないのかもしれませんが、この「ラッキーシェイクキャンペーン」、どこでやっているのでしょうか。

そのひとつのスポットが、昨年オープンした渋谷モディの地下1階です。
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渋谷モディ
http://shibuya.m-modi.jp/

ここ、確か元丸井だったビルです。地下に降りると、そこはHISのずいぶんおしゃれな旅行カウンターとカフェスペースがありました。
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そのずいぶん奥まった場所にキャンペーンカウンターはあり、ひとりの若い女性スタッフがいました。以下、彼女との会話です。

「あのぉ、ぼく日本人なんですけど、できるんですか?」
そう聞くと、一瞬彼女は戸惑いながら、
「ええ、大丈夫ですよ。でもWeChatできますか」

「できますよ。普段よく使います」
「そうですか。それじゃあやり方を教えますね」

「ところで、あなたは中国の人ですか」
「いいえ、台湾人です」
「だったら、普段はWe Chat使わないんじゃない?」
「ええ、まあ」
「台湾のどこの出身?」
「台北の南の新竹市、わかりますか」
「ああ、桃園空港の南の…知ってるよ」
「そうです。あら、うれしいですね」
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そんな会話をしながら、彼女はやり方を教えてくれました。以下のとおりです。

①まずbluetoothを立ち上げる
②次にWe Chat(微信)を立ち上げ、「揺一揺」でシェイクする
③「Tokyo Prime Shopping 2016 in Shibuya」のページをゲットし、3択の宝石箱からひとつを選ぶ。

残念ながら、ぼくはハズレてしまいました。あっけなく。

それを見て気の毒に思ってくれたのか、彼女は当たるとどうなるか、教えてくれました。
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これ、1000円の商品券。
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そして、こちらは109の商品券。
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「ああ、もっとよく考えて選べばよかった…」
「大丈夫。また明日来てください。1日1回なら何度でもできます」
「えっ、そうなの。じゃあまた今度渋谷に来たときやってみようかな。…それはそうと、いま台湾は大変だよね。ご家族や親戚は大丈夫だった?」
「はい、おかげさまで無事です。これから春節というときに、本当に悲しいことです」
「でも、台湾の人は東日本大震災のときに日本をずいぶん助けてくれたから、今度は日本が台湾を助ける番ですね」
「ありがとうございます。そう言っていただくと、本当にうれしいです」

そう言って彼女は、ぼくに台湾製のマンゴケーキをくれました。

「どうもありがとう」
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ほのぼのしたひとときでした。気になるのは、そうやってぼくがキャンペーン体験していた10数分間、ここに現れた外国人はいなかったことです。確かに、ちょっとわかりにくい場所にあると思います。実は、キャンペーンに参加した人は名前と国籍を書くことになっていたので、そのリストを見ると、この日ここを訪れた人は30人くらいでした。

NHKでこのキャンペーンについて報じていたようです。
https://www.youtube.com/watch?v=i9dhgZfdeXI&feature=youtu.be

春節休みの渋谷の通りは中国語簡体字表記であふれていた
http://inbound.exblog.jp/25337935/

【追記】
世の中にはいろんなショッピングキャンペーンがあるものですが、このWe Chatを使ったラッキーシェイク企画を考えたのは、当然中国系の企業でしょう。でも、考えてみてください。We Chatは日本人もそうですし、台湾人もアメリカ人もタイ人も韓国人もほとんど使いません。ちょっと無理のある企画じゃないかと思わざるを得ないのです。国籍別で中国本土の人たちがいちばん買い物すると統計的には指摘されているわけですが、そのような中国人がどれだけ渋谷に来るのだろう。やっぱり彼らは銀座や上野、せいぜい新宿が多いのでは。

最近の中国の人は、自分たちのやり方を押し付け気味の傾向がある気がします。自分たちには便利だとしても、それがどれだけ広い支持を得ているか、見えていないのでは…。おそらくこの企画、ニューヨークでやってもバンコクでやっても、台北でも、ちょっと難しいのではないでしょうか。そんな気がしてなりません。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-09 10:12 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 02月 06日

エクスペディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿を選ぶ

ホテル予約サイトのエクスペディアが、1月末に配信したリリースによると、2015年に同サイトを通じて都内のホテルを予約した外国人のうち、新宿を選んだ人は30%を占め、2位銀座(11%)、3位東京駅周辺(8%)、浅草(8%)、5位渋谷(6%)などを大きく引き離しています。外国客の新宿人気は昨年同様変わらないようです。
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新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)2015年5月24日
http://inbound.exblog.jp/24510962/

リリースでは、新宿が人気の理由として「高級ホテルからお手ごろなビジネスホテル、カプセルホテルなど、多様な宿泊施設が揃っていること」「都内各所だけでなく、人気スポットの富士山へもバスでアクセスしやすいこと」が理由に挙げられています。

実際、全国を含めたホテルの宿泊数ランキングでも、以下の5つの新宿のホテルがトップ10に入っています。

1位 ホテルグレイスリー新宿  歌舞伎町のコマ劇場跡地にできたゴジラで有名なホテル。以下参照。

※歌舞伎町ルネッサンス~外国人観光客の来訪増で街は変わるか?
http://inbound.exblog.jp/24740768/
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2位 京王プラザホテル  新宿副都心で最初(1971年開業)の高層ホテル 

3位 ホテルサンルートプラザ新宿  JTB系の外国人ご用達老舗ホテル(1978年開業)

4位 新宿グランベルホテル 歌舞伎町ラブホテル街に2013年開業のデザインホテル。以下参照。

※歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある
http://inbound.exblog.jp/24676453/

上記のホテルは、これまで本ブログでも紹介してきた施設ばかりですが、ちょっと意外というか、あまり知られていないホテルのランキング入りとしては、イーホテル東新宿でしょうか。
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8位 イーホテル東新宿 

このホテルは、2008年開業のビジネスホテルで、昨年8月全面リニューアルをすませています。フロントを訪ねたことがありますが、本当にごく普通のビジネスホテルです。人気の理由は、大江戸線東新宿駅前というロケーションと、いまとなってはまったく斬新でもなんでもないのですが、「e Hotel」というネーミングにあるのではないかと思います。特別デジタルリテラシーの高い人ということではなく、むしろエクスペディアを利用するごく一般の外国人ユーザーから見て、日本語のよくわからない地名や世界中どこにでもありそうな「グランド」「シティ」「ロイヤル」「パーク」云々といったネーミングが付けられたホテルに比べると、なんとなくシンプルな印象があり、好感度を上げているのではないか。そんな気がします。自分が海外のホテル予約をするときも、価格やロケーションが同じなら、ちょっとしたネーミングの違いで選びそうな気がするからです。

いうまでもないことですが、エクスペディアのデータは、あくまで同サイトを利用した外国人に限ったもので、訪日外国人全体の傾向をどこまで表しているかについては、なんともいえません。

しかし、もうひとつの面白いデータがあります。

エクスペディアで宿泊予約する訪日外国人のうち、15年最も伸びたのは香港人(前年度比272%)でした。ちなみに、2位韓国、3位タイ、4位インドネシア、5位台湾と続きます。
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もはやエクスペディアもアジア系が多く占める時代になってきているのですね。実際、訪日外国人に占めるアジア系はすでに10人に9人近くになっているはずです。圧倒的に欧米人よりアジア人が多いのですから、当然でしょう。

このリリースには、さらに興味深い指摘があります。なぜ昨年香港人の利用が増えたかという理由について「日本就航2年間で利用客100万人を突破した香港エクスプレスの存在があげられます。2015年の1年間でも、名古屋-香港路線が週9便に増便、新たに広島-香港路線が就航するなど、現在、東京(羽田・成田)や大阪のほか、福岡、名古屋、広島にもフライトが飛んでいます」と説明していることです。

LCCが香港-広島を飛ぶ時代なのですね。関係者によると、広島線を飛ばすことで、福岡や大阪、名古屋などとOJ(オープンジョー:入国地と出国地を変えた往復航空券のこと)が可能となることで利用客のニーズに合わせることができたのだといいます。実際、昨年名古屋を訪れる香港客が相当増えたと聞きます。

それにしても、昨年152万人もの訪日客があったという香港。確か、人口700万人ほどの香港から、そんなに多くの訪日客があったとは驚きです。彼らは個人客が大半なため、日本での動きがつかみにくい存在ですが、ホテルは誰でも利用するわけで、エクスペディアのデータは彼らの動きを知るうえで有効といえます。

台湾人以上に全国各地に足を伸ばし、訪日旅行の最先端のトレンドを先取りしているのが香港人です。もっと彼らのことを知りたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-06 10:20 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 02月 04日

今年の春節は「思っていたほどでもなかった」?(ツアーバス路駐台数調査 2016年2月)

今年も春節がやって来ました。今年は2月8日(月)です。そのせいか2月に入ると、新宿5丁目界隈には中国団体客を乗せたバスが少し増えてきました。

中国経済がさすがに怪しくなってきて、今年は昨年のような爆発的な数の伸びは期待できない気はしますが、たまに例の専用食堂の前の路上でバスを待っている中国客に話をしてみると、そんな感じはまったくしません。まあ当たり前か、彼らは遊びに来ているのですから。不景気な顔をしているはずもありません。

新宿には団体客ばかりでなく、欧米人も含めた個人客や小グループの若い旅行者の姿もよく見かけます。これは午前中、靖国通りを新宿駅方面に向かって重いスーツケースをガラガラ引いている中華系の若い小グループです。
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彼らのような個人旅行者は東新宿では、ほぼ1日中出くわします。なんでも先ごろ出たホテル予約サイトのエクスぺディアのプレスリリースによると、昨年エクスぺディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿に宿泊したそうです。新宿には高級ホテルからカプセルホテル、ゲストハウスまでさまざまな価格帯とカテゴリーの異なる宿泊施設が豊富に揃っているからです。
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欧米のバックパッカーの姿もよく見かけます。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(月)12:20 4台
2日(火)12:10 4台、18:20 5台 
3日(水)17:30 2台
4日(木)11:50 5台
※この日たまたま新宿5丁目の交差点を歩いていたら、ひとりの中国人観光客の女性が道の真ん中でなにやらスマホで写真を撮っていたところ、トラックが左折してきたので、思わず「危险(あぶないよ)」と声をかけたことをきっかけに、彼女と同行の旅行グループの子たちとちょっと立ち話することになりました。

「きみたち、中国人旅行者だよね。中国のどっから来たの?」
「鄭州よ。河南省」
「えっ、ぼく去年の10月に河南省行ったよ。少林寺のあるところだよね」
「知ってるの? 面白かった?」
「少林寺は面白かったよ。河南省は歴史がある見どころがいっぱいあるね」
(ひとしきり、河南省の話をしたあと…)
「ところで、あなた日本人?」
「そうだよ」
「不像(似てない。見えない)」

……確かに、いきなり声をかけてくるおじさんにすぎないぼくは、彼女らから見れば相当怪しいですね。でも、こんなとき、思うのです。昔インドに旅行に行ったとき、まちを歩いていると、暇そうなおじさんからよく声をかけられたものです。「Hello」と言われると、つい振り向いてしまいます。「えっ、何?(あんまりしつこいと、ちょっと声を上げて What do you want?)」と聞くと、ニヤニヤしています。まさか自分がそんなアジアのおじさんみたいになるとは当時は思っていませんでしたが…。でも、せっかくですから彼女たちをパチリ。
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「那我走吧.一路平安!(じゃあぼくは行きます。いい旅を!」
「謝謝」

東新宿の昼下がりには、こんなのどかなひとときがあります。

5日(金)12:20 4台
6日(土)未確認
7日(日)未確認
8日(月)12:30 6台、13:40 4台、18:50 2台
※この日は春節にあたり、昼間多くのバスが訪れていました。でも、夕方は少ないですね。ここ数年の春節の時期としては、バスの台数は決して多いとはいえません。同じ日の午後、お台場に楽天トラベルのカンファレンスがあり、取材に行ったのですが、お台場も少なかったです。ただし、ゆりかもめで新橋に戻り、銀座方面に歩くと、さすがに銀座7~8丁目あたりはラオックスもあるせいか、多くの中国人観光客とバスであふれていました。

9日(火)12:30 0台、19:10 0台
※この日、正午過ぎにバスは1台もいませんでした。ただ、中国団体客専用居酒屋「金鍋」の前には多くの団体客が食事をすませて、バスが来るのを待っている様子でした。去年の春節に比べ、今年はバスの台数が少なく感じます。

10日(水)12:10 4台(ただし、信号を待つ間(2分ほど)、インバウンドバス5台が通り過ぎる)
11日(木)未確認
12日(金)12:20 8台、12:50 6台、19:00 4台
※この日の新宿5丁目はバスラッシュとなりました。次々とバスがやってきて、中国客を降ろしてすぐに移動していきます。例の金鍋にも何台ものバスの客が来店していました。実はぼくも近所の店でランチをすませ、店を出てから明治通りをみると、すでに先ほど停車していたのとは違うバスが停車していました。団体客たちは20分くらいで食事をすませているようです。そんなに急いでこれからどこに行くのでしょうか。
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13日(土)~21日(日) 未確認
22日(月)11:20 4台
※ただし、この日の正午過ぎは「金鍋」や「味仙荘」の前では、中国客が店をあふれて待っていました。

23日(火)11:40 4台
24日(水)11:30 4台、12:20 5台
25日(木)12:40 5台
※この日も食堂の前は中国客であふれていました。
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26日(金)11:40 2台
27日(土)未確認
28日(日)未確認
29日(月)12:20 2台
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by sanyo-kansatu | 2016-02-04 12:41 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2016年 01月 07日

欧米客が増えて、新宿がちょっと楽しいことになっています

年が改まって2016年、最初の本ブログの記事は、年末に新宿界隈で見かけた欧米人ツーリストたちの様子をさらっと報告しようと思います。

新宿界隈で欧米人が多いスポットといえば、ロボットレストランでしょう。その日、近くを通ると案の定、チケット売り場の前では欧米人の男たちが列をなしていました。
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これはもう見慣れた光景です。以前はカップルも多かったのですが、野郎の比率が妙に高い気もします。まあそういうエンタメであることは確かです。
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歌舞伎町の中の飲食店は、さまざまな外国人ツーリストが利用するようになっています。ラーメン屋の前には英語や中国語のパンフレットや表示が並んでいます。
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新宿といえば、ゴールデン街も外国人の人気エリアのひとつです。以前は区役所方面から入ったすぐ前の外国人向けバーにしか姿を見せなかった彼らが、いまでは路地の奥まで入り、小さなスナックやバーで飲むようになっています。先日も、友人となじみの店で飲んでいたら、突然扉が開いて外国人が入ってきました。店主はいつものことだと「ウエルカム、ウエルカム!」と手招きし、彼らと一緒に日英カラオケ合戦になりました。連中はオーストラリア人でした。
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もっと面白いのは、これまで日本人しかいなかったような渋い居酒屋にも彼らは姿を見せるようになっていることです。
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このカップルがいるのは、おやじ居酒屋として知られる清龍の新宿店です。とにかくこの店は平均年齢が高く、もともと若い子すら見かけなかったのですが、最近ではこのとおり新宿界隈に泊まっている欧米人が現れるようになりました。
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これ、こっそり撮ったのでピンが甘いですが、黒人と金髪のカップルが我がニッポンのおやじたちに囲まれて焼き鳥に食らいついています。

かつてはダサい、ヤバい、コワいの代名詞だった新宿がちょっと楽しいことになっていると思いませんか。

翌朝、東新宿の仕事場に向かう途中、スーツケースをガラガラ引いてホテルに向かう女の子も見かけました。
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これがいまの新宿なのです。
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by sanyo-kansatu | 2016-01-07 14:27 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 12月 30日

タトゥーが入っていてもOKの日暮里「斉藤湯」でひと風呂浴びてみた

先日のとある午後、タトゥーが入っていても入浴OKで知られる斉藤湯でひと風呂浴びてきました。場所はJR日暮里駅から徒歩3分。住宅街のちょっとわかりにくい場所にあります。80年前の創業だそうですが、今年4月に改装したばかりのきれいな銭湯でした。
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斉藤湯
http://saito-yu.com

なぜこの銭湯がタトゥー客OKだと知ったかというと、以下のネット情報からです。

タトゥー入っててもOKな温泉・銭湯・プールまとめ【関東編】(Find Travel)
http://find-travel.jp/article/18883

訪日外国人の増加で全国の温浴施設やプール、海水浴場でタトゥーを入れた外国人観光客と管理者の間で入店・入場をめぐってトラブルが起きているようです。その問題に関する報道は以前、本ブログでも紹介しています。

入れ墨・タトゥーの外国人の入浴、やっぱり気になりますか?
http://inbound.exblog.jp/25180252/

そんな事情もあり、都内でタトゥーOKをうたう銭湯というのはどんなところなのか、気になっていたのです。

午後2時開店とほぼ同時にぼくは斉藤湯に入りました。すでに2、3人の利用客はいて、その後も続々入店してきます。この銭湯の売りは、高濃度人工炭酸泉と超微細粒気泡がシルクのように身を包む露天風呂です。ぼくはまず通常のお湯風呂に浸かって、常連の誰かにこの銭湯について尋ねることにしました。

しばらくすると、映画『テルマエ・ロマエ』の銭湯シーンで見かけたちょっとふやけたスルメのような(ごめんなさい!)おじいさんが隣に入ってきました。映画を思い出し、笑いをこらえつつ、聞いてみました。

―あのぉ、こちらの常連さんですか。
「そうだよ。でも、最近はたまにだけどね」
―この銭湯、外国人がよく来るんですか?
「そうなの? 俺は知らないね。家族連れはよく来るよ。いろんな風呂があるからね。ここは昔からある銭湯だから」。

あまりご存知ないようです。そこで、次にシルキー風呂に行ってみました。天井には屋根がありますが、露天気分を味わえます。ひとりの若い男性がいたので声をかけてみました。

―この銭湯、外国人が多いんですか?
「どうかなあ。ぼくは週末しか普段は来ないから」
―なんでもタトゥーを入れた外国人さんもこの銭湯は入浴OKだと聞いて、どんなところだろうと思ってきたんです。
「ああその話ね。ここ、改装する前からずっと入れ墨OKでしたよ」
―あっ、そうなんですか。

どうやら日暮里という土地柄で古くから銭湯を営んできたことから、外国人観光客うんぬんとは関係なく、その筋の人も含め、ずっとOKだったようです。実際、ここの客層は中高年のおじさんおばさんを中心に子供連れなど、昔ならではの光景です。たまにその筋の人が見えても、皆さん普通にお風呂に入っているのでしょう。

風呂上りに入浴客のおじさんたちにならってビールを注文し、オーナーの奥さんに話を聞いてみました。

―こちらは外国人のお客さんが多いんですか。
「まあそうね。けっこういらっしゃいますよ。夏休みなんか、家族連れで韓国や中国の人たちが来て、ここはどこなのかしらという感じになります。でも、普段はふつうの銭湯ですよ」
―インターネットでこちらは入れ墨やタトゥーのお客さんの入浴もOKと聞きました。
「ここは下町だから。昔からねえ、そうなんですよ」

奥さんは「中国の人」と言っていますが、たぶん台湾や香港の個人客なのでしょう。彼らが多く宿泊している上野のホテル街に近いことから、彼らも利用しやすいと考えられます。

オーナーの息子さんが英語で紹介する以下の動画をYOU TUBEで発信していることも影響があるに違いありません。

Visiting a japanese bath house
http://saito-yu.com/publicBath.html

いまや日本人のよく知らないラーメン屋がトリップアドバイザーなどで外国人に広まり、行列ができる時代です。この銭湯が外国人であふれるようになってしまうと、地元のお客さんは困ってしまいますが(たぶん、そんなことにまではならないでしょう)、タトゥーうんぬんの問題も、土地柄しだいでクリアできる面もあるのだと思いました。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-30 16:50 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 12月 02日

東新宿の新ゲストハウス「IMANO TOKYO HOSTEL」の宿泊客国籍別トップは台湾人

今日のお昼過ぎ、東新宿の東京医科大通りに先月20日オープンしたばかりのゲストハウス「IMANO TOKYO HOSTEL」のカフェを訪ねてみました。
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IMANO TOKYO HOSTEL
http://imano-tokyo.jp/

同ホステルのサイトには、以下のような紹介文があります。

「東京での滞在をより深く楽しむことができるよう、
館内には東京の文化、日常生活に触れられるようなキッカケが多く詰め込まれており、
施設全体が”トーキョー”のガイドブックとなるホステルです。

1Fには、東京のお酒や料理を提供するカフェ&バーを併設し、
世界中から集まった旅行者との交流を楽しむことが出来ます」。

カプチーノを一杯頼んで、カフェでぼんやりしていたら、宿泊客の白人の若い男の子が現れました。やっぱりこういう子たちが泊まっているのですね。

たまたま同ホステルのオーナーの清水さんがいらっしゃったので、少し話を聞きました。

―先月オープンされたのですね。ぼくは毎日ここを通っているので、面白そうだなあと思って眺めていたんです。

「今日でオープン12日目です。PRはネット以外に特にしていませんが、外国のお客様がいらっしゃっています。国籍でみると、最も多いのは台湾人で、次がタイ人、シンガポール人、その次くらいから欧米人。日本人もけっこういますよ。就活のために地方から出てきた女の子が何泊もし、面接に行ってきたりするそうです」。

―このホステルは全室ドミトリーだそうですね。

「ええ、でも4人くらいの個室もあり、そこはグループ客が利用しています」。

―アジア客は小グループが多いですからね。歌舞伎町のカプセルホテルもそんな感じでしたよ。東新宿はいまや外国人ツーリストだらけですね。

「うちがここにオープンしたのもそのためです。いま都内にゲストハウスが次々誕生しています。昼間はカフェですが、夜はバーになり、外国人だらけで雰囲気もずいぶん変わりますよ。今度いらしてください」。

―ええ、ぜひうかがいます。

カフェが併設されたロビーには、この種の外国人宿がどこでもそうであるように、チャックアウトした客のスーツケースやザックが置かれていました。昼間は街に散策に出かけているのでしょう。
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ささやかながら、宿泊客のインスタントカメラ写真が貼られていたりしました。
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このカフェはwifiフリーなので、ときどきPC持ってお茶しにこようと思います。
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東新宿は外国人宿が多いことで知られますが、実はAirbnbのオーナーも多いようです。ぼくの仕事場の近所の民家から、ザックを担いだ若い欧米人の女の子ふたりが出てきて、住人のご夫婦に見送られているなんて光景もよく見かけます。

またこのゲストハウスのはす向かいに9月にオープンした中国人団体客専用の中華料理店もあります。

新宿5丁目に中国客向けインバウンド居酒屋がオープン
http://inbound.exblog.jp/24938094/

この界隈がインバウンド先端エリアだというのは、そういうわけなのです。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-02 13:44 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 10月 05日

株価暴落は中国の訪日旅行市場にどんな影響を与えるか(前編)AISO王会長、大いに語る

一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長は、日本で訪日外国人旅行市場がひそかに動き出した1980年代の黎明期から大盛況を迎えた今日に至るまでのすべてを知り尽くした人物です。

一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)
http://shadanaiso.net/index.html

総合ワールドトラベルとAISOのこと(トラベルマート2011 その6)
http://inbound.exblog.jp/17150936/

ぼくは年に何度か王会長の話を聞きにいくことにしています。

今回(9月中旬)どうしても王会長に尋ねてみたかったのは「株価暴落は中国の訪日旅行マーケットにどんな影響を与えるだろうか」という質問でした。

7月の訪日客の伸び率減速は正常に戻ったとみるべき

それに対する王会長の答えは以下のようなものでした。

「日本のメディアが騒ぐほど、中国の人たちは株価暴落後の世界をそれほど心配していないようだ。確かに、個人投資家の多くは資産をいくぶん目減りさせたとはいうものの、株価は去年の今頃の水準に戻ったようなもの。不動産バブルについても、一年前に政府が投資用のマンションの購入を事実上禁止したことから、すでに景気の後退は実感していたと思う。それでも、訪日旅行は増える一方だった」。

―つまり、影響は少ないということでしょうか。

「その前にふまえておくべきことがある。今年上半期の中国の訪日旅行市場はご存知のように異常な伸びでした。それは円安もあるが、それ以上にMERSの影響で、韓国から日本へ旅行先を変える中国人が増えたことが大きい。夏以降、若干訪日客の伸び率が減っているのは、株価暴落のためというより、韓国にも7月下旬頃から人が戻りつつあることで、いまはむしろ正常に戻ったと理解すべき」。

―確かに、今年7月の中国の訪日客数は前年同月比105.1%増と6月に比べて伸び率が落ちています。でも、総数は57万6900人と単月で60万人近い過去最高を記録。会長は上半期までが異常だっただけで、下半期に入ると、正常に戻るだろうという認識なんですね。

7月の訪日外客数、単月過去最高192万人を記録(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/150819_monthly.pdf
※ところが、8月は前年同月比133.%増の59万1500人と伸び率を増やしています。話をお聞きしたときはまだ発表前だったので、7月の伸び率の低下をみて王会長は「正常に戻った」と指摘しているものと思われます。

「だいたい今年1月頃は、訪日中国客が初めて単月で30万人超えたと騒いでいたのですよ。それがいまは60万人近い。大化けといっていい。実際のところ、日本のホテルやバスなどの受け入れ側は、正常に戻って(訪日中国客の伸びが減速して)かえって良かったと思っているのではないか。上半期は海外からの集客を断ってばかりだったのだから」。

人民元切り下げは関係ない

「9月に入ると、訪日客の勢いはだいぶ落ち着いたと思う。もともと9月は夏休みと国慶節のはざまのオフシーズン。だが、今年の中秋の名月は9月27日。国慶節より少し前倒しで中華圏からの予約が入っている。いま中国の長期休暇は、旧正月と国慶節の大きくふたつ。以前は5月の労働節もそうだったが、3つもいらないということで、政府が5月の長期休暇は取りやめにした。今年の国慶節は10日以上の連休を取る中国人も多いと聞いている。今年の国慶節は例年並みだと思う」。

―人民元の切り下げもありましたが、どうですか。

「切り下げたといっても4%程度。すでにこの数年間で30%以上円安になっているので、中国人にとっては大した影響はない」。

―では、“爆買い”には影響なさそうですね。

「いま中国では、自国で買い物をするように働きかける施策が打たれている。6月にまず一部の輸入品の関税を下げた。そして、8月には深圳に海南島と同じような免税店をつくったという報道もあった。そこでは香港と同じ価格で輸入品を購入できるそうだ」。

爆買いを見るにみかねた中国政府は輸入品の関税を引き下げるもよう
http://inbound.exblog.jp/24564700/

「実は、いま香港の景気は良くないようだ。昨年以来の反中デモや今年2月に起きた中国の運び屋に対する市民の反発もあり、中国政府は中国人の香港訪問を週に1回に制限するなどしたことから、かえって香港経済は影響を受けている。おそらく今後香港の不動産価格は下落に向かうだろう。もちろん、これまで高すぎたことが是正されるともいえるが、これまで好調だった香港の訪日客に影響が出るかもしれない」。

“爆買い”が減るとツアー代が上がるという連鎖

―なるほど。株価暴落以外に中国の国内外の事情が与える影響も考える必要がありそうですね。

「こういう言い方ができるかもしれない。確かに、株価暴落で少し懐具合が寂しくなると以前に比べて一人当たりの中国客の“爆買い”量が減ることは考えられる。それは中国団体客が日本国内の免税店に支払うキックバックが減ることを意味する。そうなると、在日中国人を中心とした国内のランドオペレーターは中国客のホテルやバスの手配をカバーできなくなる。すると何が起きるかというと、これまでのような安いツアーを中国の旅行会社が提供できなくなる。つまり、ツアー代金が値上がりする。そうなると、これまでのようにお客が集まるとは限らない」。

―う~む。そういう連鎖でいずれ訪日中国客の伸びが鈍化する可能性もあるということですか。まさにインバウンドの裏表を知り尽くした王会長らしい指摘ですね。その兆しは見えているのでしょうか。

「実際、大阪などの大都市圏ではホテル料金が高騰していて、国内のランドオペレーターはホテルの確保に窮している。だから、いまは噴火の影響で観光客が減った箱根のホテルが穴場だという話も出てくる。訪日客の動向は、日本側の受入事情によるところも大きいといえる」。

今後は個人客の動きに注目すべき

「訪日中国旅行市場を考えるうえでもうひとつのポイントは、C-Tripに代表されるオンライン旅行社の勢いだ。いまや中国ではオンライン旅行社による予約が浸透していて、C-Tripの関係者によると、訪日市場の伸びは前年比で7倍増らしい。上海市場においてはすでに半分、北京で30%をオンライン旅行社が占めるという。彼らの多くは個人旅行者なので、これまでの中国団体客とはまったく違う動きをするため、これからは目が離せない」。
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C-Trip
http://www.ctrip.com/

―いよいよ中国も個人旅行者の時代になろうとしているのですね。もちろん、内陸からの日本路線も急増しており、おなじみの団体客も減ることはないのでしょうが、これからは訪日中国人マーケットは二極化した実態に対応しなければならないということですね。

※以下の記事は2年前に書いたものですが、いよいよ彼らが日本に上陸する時代を迎えたといえるでしょう。

日本の1980年代を思い起こさせる中国のバックパッカーブーム
http://inbound.exblog.jp/20348104/

「もっとも、不安要因もある。中国の日本路線は激増している。特に10月以降、羽田への日本路線は1日約20便になると聞いている。はたしてそれだけ増やして席が埋まるのか。ちょっと疑問もある」。

そんなに飛んでくるの!?  ちょっと驚いてしまいますが、今後の市場がどう動いていくのか。要注目です。

バブル崩壊後も海外旅行者の増えた日本と同じ道を進む!?

中国の株価暴落と訪日旅行市場の関係については、個人的に思うところがあります。日本がバブル崩壊を迎えた1990年代初頭、日本人の海外旅行者数は約1000万人でした。では、バブル崩壊で日本人の海外旅行者数は減ったのでしょうか。実は違います。その後10年にわたって伸び続け、頭打ちとなったのは2001年の米国同時多発テロの年でした。それ以降は1600万人前後で伸びは止まっています(そうこうしているうちに、今年は45年ぶりに訪日外国人が出国日本人を逆転しそうです)。

つまり、中国で仮にバブルが崩壊したのだとしても、海外旅行者数はしばらくは増え続けるのではないか。ただし、やみくもに増えるというのではなく、「安近短」のアジア方面への渡航が拡大するのだろうと思うのです。

これから中国でも日本と同じようなことが起こるのではないか…。そう思っていたところ、最近こんな記事が東洋経済オンラインに出ていたので、一部抜粋しておきます。

株価下落でも「中国爆買い団」が減らないワケ(東洋経済オンライン2015年10月2日)
欧米旅行は急減し、日本に人気が集中
http://toyokeizai.net/articles/-/86559

「中国での海外旅行需要が縮小しつつあることから、日本のインバウンド業界にもなんらかの影響を及ぼす可能性は否めない。ところがフォワードキーズは、「欧米など遠くに行くのをやめ、日本や台湾などの近場に行こうとする需要は堅調」と分析している。

たとえば、11月の国際線航空券販売数の予想を見ると、欧州行きが前年と比べて11%、南北アメリカが50%も落ち込んでいるにもかかわらず、アジア太平洋行きは35%増加と引き続き高い伸びを示している。つまり「中国で株価下落が起きたものの、当面は日本への爆買いの波は止まらない」と見るべきだろう」。

やっぱり一度バブルの味を知った国民は、すぐにはやめられないのです。ただし、そう遠くには行けないので、近場を目指す。その恰好の旅行先のひとつが日本であることは間違いないようです。

次回は、王会長の日本のインバウンド業界に対する辛口の指摘を紹介したいと思います。

ニッポンのインバウンドはここがおかしい!?(後編)AISO王会長、大いに語る
http://inbound.exblog.jp/24974742/
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by sanyo-kansatu | 2015-10-05 12:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 10月 01日

外国客の国内ドライブ旅行、本格始動中!~先行する沖縄、北海道の事例と予約サイトの動向から

羽田空港国際線ターミナルの到着フロアは、いつも多くの外国客でにぎわっている。レンタカーを予約した外国客が最初に向かうのは、ゲイトに向かって右側にあるカウンターだ。

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羽田空港国際ターミナルのレンタカーカウンター

リムジンバスの発券所の隣に、ニッポンレンタカーやオリックスレンタカー、トヨタレンタカー、Hertz、日産レンタカー、Times Car RENTAL、Europcarの合同カウンターがある。ここで予約の照会をすませると、1階の「乗車レーン」まで歩き、レンタカー会社の用意した車に乗せられ、各社の営業所に向かう。

羽田空港の外客レンタカー利用が増えている

ニッポンレンタカー羽田営業所の佐藤大助サブマネージャーによると「外国客の利用が目立って増えてきたのは、2014年3月30日の国際線の増便の頃から。最近では香港や韓国を中心に毎月70組以上の利用があり、特に1~2月の旧正月のシーズンは香港客が多く、直近ではタイ客も増えている」という。

外国客がレンタカー利用の手続きをする際、パスポートと国際免許証の写しが必要だ。「手続きは10分程度で国内客と変わらない。ただし、外国客は羽田で乗って成田や関空などで乗り捨てるケースも多いので、返却の日時と場所を確認する。乗車前に事故の場合の連絡先や営業所の近くのガソリンスタンドのMAPなどをお渡しする」(佐藤サブマネージャー)。

外国客に対する接客では、日本での運転のポイントや注意事項を伝えることは欠かせない。同社では、日本の交通規則や標識の解説、給油の方法、事故が起きたときの対応、保険補償の限度額、駐車違反の注意などを細かく説明した「ご利用ガイド」(英)を用意している。

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ニッポンレンタカーの外国客向け「ご利用ガイド」(英語版)  
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ガソリンの給油の間違いは要注意ポイント

ニッポンレンタカーサービス販売促進部国際営業課の白井祐子主任は「外客向けのサービスには、24時間対応のカウンター通訳サービス(英中韓タイ語)や多言語化カーナビ(英中韓)、ETCカードのレンタルがある。なかでも重要なのがカーナビの多言語化だ。この2年で急速に普及した。新車を発注する際も必須になっている」と説明する。

同社の国籍別の利用状況は、1位香港、2位韓国、3位台湾、4位タイ、5位アメリカまたはオーストラリアの順。対前年度比で約2倍増の勢いだ。件数でいうと沖縄県と北海道が多いが、最近では首都圏をはじめ関西や中部地区からの利用も1.5倍に増えているという。

外国客の利用期間は平均約4日、単価も約4万円と国内客より長くて高い。平日利用が多いのも特徴だ。人気の車種は「家族やグループ旅行が多いため、ワゴン車だ。プリウスなどのハイブリッド車やアイサイトの使えるスバル車など、日本オリジナルの車種を選ぶ傾向がある」(白井主任)そうだ。

首都圏における国内客のレンタカー利用は圧倒的にビジネス利用だが、外国客はレジャー利用が中心。最近の若い世代の免許証取得比率の減少で国内市場が縮小していくなか、レンタカー各社は外国客の取り込みを強化している。

利用件数全国一は沖縄県

外国客のレンタカー利用件数が全国一なのが沖縄県だ。一般社団法人沖縄県レンタカー協会によると、過去2年の県内の外国客のレンタカー利用件数は以下のとおりだ。

2013年度(13年4月~14年3月)
 3万6919件(台湾1万1138件、韓国1万1937件、香港1万1670件ほか)
2014年度(14年4月~15年3月)
 8万5323件(台湾2万8096件、韓国2万7764件、香港2万3463件ほか)

この1年で2.3倍増の勢いで増えており、国籍別比率は、台湾(33%)、韓国(33%)、香港(27%)で全体の9割を占める。協会関係者によると、この急激な伸びは「沖縄県を訪れる外国客の急増にあり、円安や台湾、韓国、香港などの近隣諸国からのLCCをはじめとした新規就航や増便が相次いだことにある」という。

※沖縄県の統計によると、2014年度に沖縄を訪れた外国客は98万6000人と過去最高で、前年度比57.2%増と全国平均を超えている。国内客も含めた観光客総数が716万9900人(これも過去最高)で、外客比率は約14%と他県に比べて高い。

OTSレンタカーを運営する沖縄ツーリストの中村靖常務取締役は「外国客のレンタカー利用が顕著になったのは11年頃から。今年は前年度比で1.6倍の勢いだ。沖縄は台湾からのフライトが1時間、ソウルから約2時間、香港から2時間半という好位置にあることが大きい」という。
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OTSレンタカー(中文版)
http://www.otsinternational.jp/otsrentacar/cn/

同社の外国客に対するレンタカー利用促進の取り組みは早かった。06年台北事務所を設立し、将来の需要を見越してレンタカー予約の受付を開始。

その後、予約サイトの多言語化を進めると、台湾や香港から繁体字版サイト経由で予約が入るようになった。07年には臨空豊崎営業所に4か国語対応のドライブシュミレーションを設置し、09年には全国初の4か国語対応のカーナビを導入している。

もっとも、外国客のレンタカー利用の急増にともない、県内での事故や渋滞が指摘され始めている。琉球新報2015年6月13日は「2014年度の事故件数は2901件で、事故率は3・4%」(「外国人増で対策強化 県レンタカー協、事故防止へ注意喚起」)と報じている。沖縄タイムス2015年6月16日は、事故の背景に海外と日本の交通ルールの違いがある(「標識読めない、慣習違い…外国客のレンタカー高い事故率」)と指摘する。

中村取締役は「これだけ利用が増えると事故が増えることは予測される。ミラーを擦ったり、交差点で左折や右折のルールを間違えたりといったケースが多い。今後は防止策に力を入れていく必要がある。ただし、外国客がもし事故を起こしても、自動車保険は国内客同様、手厚い安心パックに入っているし、JAFのサポートも充実している」と話す。

前述の琉球新報の記事も「(県レンタカー)協会では本年度から、英語版に加え、繁体字と韓国語版のドライブマップを新たに作製、運転上の注意点や県内の事故多発交差点などを紹介し、注意喚起を図っている」と事故防止の取り組みを紹介している。また外国客の運転する車を一目で判断できるようにステッカーも導入された(沖縄タイムス2015年8月8日)。
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外国人運転用ステッカー(沖縄県)

全国に先駆けて外国客のレンタカー利用が進む沖縄県だけにさまざまな課題も出てくるが、その解決にあたる官民の取り組みは、これから全国で受入態勢を整備していくうえでのひな型になるだろう。

中村取締役は、今後レンタカー事業者が取り組むべき方向性についてこう語る。「これからはただ車を貸すだけでなく、お客様に地元で喜んでお金を落としてもらうしくみをつくらなければならない。当社ではカウンターでWifiルーターの貸出や県内の主要観光施設のチケットの販売を行っている。

また『沖縄もっとトリップ 北部東海岸エリア編』(英中韓)というドライブマップを作成し、国道58号線の走る西海岸だけでなく、東海岸にも足を伸ばしてもらうよう働きかけている。最近では、これまで少なかった外国客が東海岸の泡瀬漁港(沖縄市)の海鮮食堂にさしみを食べに行く話などをよく聞くようになった」。
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『沖縄もっとトリップ 北部東海岸エリア編』

レンタカーという二次交通の利用促進は、これまで外国客が訪れることのなかった場所への新たな動線を敷くうえで直接的な効果を生んでいるようだ。

利用の多国籍化が進む北海道

沖縄県に次いで外国客のレンタカー利用件数の多いのが北海道だ。観光スポットが広域に点在する北海道では、国内客同様、外国客にとってもレンタカーは不可欠な移動の足になりつつある。

一般社団法人札幌レンタカー協会によると、北海道における外国客のレンタカー利用件数は、2014年度(14年4月~15年3月)で2万4243件。15年度は毎月約80%増と伸びており、国籍別にみると、トップが香港で9579件(全体の約40%)を占め、次いで台湾4497件、シンガポール1948件、韓国1892件、タイ1395件、オーストラリア1052件、ヨーロッパ1051件、アメリカ814件と続く。

沖縄県と比べると、総件数は3分の1以下だが、シンガポールやタイ、欧米系の利用も多く、多国籍化が見られるのが特徴だ。

北海道における外国客のレンタカー利用促進のための本格的な取り組みは、07年9月台湾客の国内での運転が可能となった頃から始まっている。

同年4月に北海道外国人観光客ドライブ観光促進連絡協議会が設立されたが、実はその前年の06年12月、喜茂別町で外国人ドライバーの交通死亡事故が発生している。冬場の凍てついた道路を運転することにアジア客が慣れていないのは当然で、雪道の安全運転の啓発は欠かせない。こうした北海道特有の事情から、外国客に安心・安全にドライブ旅行を楽しんでもらうための道独自の調査やノウハウの啓蒙が進んでいる。

その成果のひとつが、2009年国土交通省北海道開発局が作成した「北海道ドライブまるわかりハンドブック」(日英中(繁・簡)韓)だ。日本の交通ルールや北海道で起こりうるトラブルとその対応をわかりやすく解説している。
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「北海道ドライブまるわかりハンドブック」
http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/handbook.html

さらには、事業者向けに北海道の主要なレンタカー利用客である台湾、韓国、香港、シンガポールの来道目的や運転習慣の違いなどを分析している「外国人ドライブ観光客 誘致・受入事例解説集」もある。

外国人ドライブ観光客 誘致・受入事例解説集
http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/yuuchi.html

たとえば、同解説集の台湾の項には「日本の「止まれ」の標識は国際基準と異なり、理解されにくい。台湾では、制度上は一時停止の義務はあるものの、見通しがよい場合は一時停止をする車はほとんどいない(踏み切りについても同様。台湾の高速道路では、走行車線・追越車線の区別がない。矢印信号は台湾にはないため、とまどってしまう)」とある。一方、香港の項には「日本と同じ左側通行であるが、赤信号でも左折フリーの国である。横断舗装以外では「歩行者優先」というルールはなく、車が優先される。一般道路の最高時速が70㎞であるためか、北海道をドライブして「スピードが遅すぎる」と感じるドライバーもいる」。この知識を頭に入れておくと、外国客を送り出すときに、ひとことアドバイスを添えることができるだろう。

こうした北海道の取り組みは、今後外国客のレンタカー利用が増えるであろう全国各地の関係者にとって貴重な情報源となるはずだ。

レンタカーのネット予約は富裕層が多い

今日、訪日外国客によるエクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトの利用が普及しているが、同じことはレンタカー予約の世界でも起きている。国内の各レンタカー会社は、それぞれ自社サイトの多言語化を進めているが、やはり各事業者の情報を横断的に閲覧でき、利用者のニーズに直結したサービスを迅速に提供する予約サイトが重宝されるのは当然だろう。

なかでも先行しているのが、レンタカー予約サイトのTocoo!である。
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Tocoo!(中文版)
http://www2.tocoo.jp/cn

同サイトを運営しているのは、有料会員制の宿泊予約サイトを手がけるクーコム株式会社だ。同社は2000年代の早い時期から海外向けのレンタカー予約サービスを始めている。

同社の牛田隆夫取締役によると「外国客のレンタカー予約が増えてきたのは08年くらいから。11年の震災の前には海外が国内を逆転していた。国籍でいうと、東南アジアがほとんど。香港、台湾、韓国、シンガポール、タイなどだ。売上は前年比88%増で、60カ国・地域の利用者のうち、半分以上が中国語圏。07年9月に台湾客の運転が可能になったことを機に中文版を立ち上げ、その後すぐにハングル版を始めたことが奏功した」という。

利用エリアは、全体の3割は北海道だが、最近は関西国際空港や中部国際空港からの利用も多い。雪を見るために、名古屋から高山や白川郷に向かう人が増えているという。「アジアの交通事情は一般の日本人には厳しく、まず運転できないと思うが、逆に彼らにすれば日本の運転は楽勝」(牛田取締役)なのだという。

外国客の利用状況は国内客とは大きく違う。「1回あたりのレンタル料金は国内客の3倍近い。外国客は国内客より利用日数が長く、乗り捨てが多い。なかには札幌で借りて大阪で返す人もいる」(牛田取締役)。

客層は圧倒的に旅慣れた富裕層だ。顧客アンケートによると、年収1億円以上も多く、約半数が年収1000万円以上という。「だから、単価が高い。彼らは車のグレードがよければ喜んで利用する。アルファード(トヨタの大型ミニバン高級車)とエルグランド(日産のワンボックス型ミニバン)があれば、確実にアルファードを選ぶ。当社の海外利用客の7割はリピーターだ」(牛田取締役)。

牛田取締役はレンタカー利用促進の意義をこう語る。「いま大都市圏には外国客は多いが、伊豆半島や房総の先にはまだ来ていない。東京のホテルは潤っているが、伊豆半島はそうではない。我々の役目は、そこにお客さんを送ることだ」。

業界の動きを先導する同社の取り組みは要注目だ。

「インバウンドの実験室」香港

外国客のレンタカー利用が急増する背景には、継続的に続けられるプロモーションの成果もある。日本政府観光局(JNTO)香港事務所では、すでに2012年から香港市場に特化したレンタカーと鉄道利用促進のためのプロモーション『a different Japan-Rail & Drive』を始めている。

前香港事務所長の平田真幸(現海外プロモーション事業部)担当部長は、『a different Japan-Rail & Drive』が生まれた事情をこう語る。「私が香港に赴任した12年、震災後の訪日客の落ち込みをリカバーするための施策が求められていた。リピーター8割、訪日10回以上が20%超という成熟市場の香港で、韓国や台湾、タイ、シンガポールなどの競合国と差別化して何ができるか。そこで、新しい観光魅力として打ち出したのが、ご当地グルメやショッピングシーンを盛り込みながら、シーズンごとに日本ならではの自由気ままな旅行スタイルを体験してもらう全国各地のドライブ旅行と観光列車のPRと商品化の支援だった」。

その後、香港の訪日旅行市場は急ピッチで回復し、2014年は92万5975人(前年比24.1%増)と国別でも4位となった。レンタカー付きのツアー商品を手がける旅行会社も増え、観光列車も目玉ツアーになっている。関西や九州、沖縄などの「訪問先の分散化(多様化)」も他の国・地域に先駆けて実現されている。「香港はインバウンドの実験室。新しい訪日旅行シーンは香港から生まれる」(平田部長)といわれるのはそのためで、市場の先導役として常に期待されているのである。
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『a different Japan-Rail & Drive』のキャンペーンイメージ

外国客のレンタカー利用は、縮小する国内市場を補うことで事業者にとっての期待となるだけではない。訪日客の地方への分散化を促進し、全国に張り巡らされた道路インフラの維持を図り、さらには未来のユニバーサルな交通システムへの転換を進めるうえでの重要なステップでもある。今後、先行する沖縄県や北海道を追う、さらなる動きが各地で起こることを期待したい。

※本稿において今年訪日外国人数のトップを走る中国本土客について触れていないのは、現在国内でのレンタカー利用はできないためだ。日本で運転できる国際免許証の条件として1949年のジュネーブ条約に基づき発行された形式でなければならないからである。なお同様に、スイス、ドイツ、フランス、ベルギー、スロベニア、モナコ、台湾も同条約に基づく国際免許証を発行していないが、これらの国は自国の免許証と日本語翻訳文の同時提示で運転が可能になる。

やまとごころ http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_17/page_05.html
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by sanyo-kansatu | 2015-10-01 00:19 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2015年 09月 27日

外国客に人気と噂の一蘭ラーメン池袋店に行ってみた

7月上旬に長崎県島原半島を取材で訪ねたとき、ある台湾人一家と知り合いました。彼らは南島原市の農漁家に民泊するツアーに参加していました。

台湾版「田舎に泊まろう」ウルルンツアー密着レポート(長崎県南島原市)
http://inbound.exblog.jp/24747209/

台北で写真館を営業する黄さんはとても陽気な男性で、奥さんとふたりの男の子のパパです。九州に旅行に来ていちばんおいしかったものは? という質問に彼はこう答えました。「いちばんは民泊の家で食べた手料理、2番目は一蘭ラーメンです」。

一蘭ラーメンといえば、わりとよく知られた人気ラーメンチェーン店ですよね。黄さんは博多で食べた一蘭ラーメンがおいしかったそうです。
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天然とんこつラーメン一蘭
http://www.ichiran.co.jp

ネットを調べると、全国にチェーン展開していました。都内にも何軒かあるようです。前回の「外国客で行列のできる」無敵屋のある池袋東口にもありました。無敵屋には入店できなかったので、行ってみることにしました。場所は池袋東口の文芸坐の近くです。
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さいわい、この店には行列はありませんでした。入口の脇に貼られた大きなポスターに同店のとんこつラーメンなどのメニューが紹介されています。わりと普通の九州とんこつラーメン風に見えます。

店内に入ると、自動販売機があり、その隣に中国人店員が立っていました。確かに、都内の飲食店で中国人アルバイトの姿を見かけるのは珍しいことではありませんが、店内で並んで待っている客も半分くらいは外国人でした。

黄さんのいうように、一蘭ラーメンも外国客に人気のようです。お土産用の麺も各種用意されています。
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しばらくすると、席が空いたらしく、のれんで隠されていた店内に呼ばれると、カウンターには一人ひとりの席ごとに仕切りがあります。
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しかも、厨房も扉で隠されていて、注文と替え玉をもらうときだけ、扉が開き、店員が声をかけます。でも、店員の顔は見えません。

なんでもこの仕切りはカップルやグループで来たときは、希望すれば外せるのだそうです。まるで個室居酒屋のようですが、カウンターでこの造りは妙な感じです。店内は薄暗く、およそラーメン屋さんという雰囲気ではありません。

この店では、事前に麺の硬さやスープの濃さなどを申告するのですが、ちゃんと中国語繁体字版も用意されていました。
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こういう独特の演出がウケてる理由なのでしょうか。

後日、ある外国人向けの東京観光MAP(中国語繁体字版)に一蘭ラーメンの広告が載っているのを見つけました。
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無敵屋のときにも思いましたが、なぜ特定の店だけが外国客に人気なのだろう……。どうしてこういうことが起きたのか。どんな宣伝方法を取っているのか。これらは今後の課題にしたいと思います。

【追記】
それから1年後、一蘭ラーメンの関係者に話を聞くことができました。

一蘭ラーメンに外国客の行列ができる3つの理由
http://inbound.exblog.jp/26363988/
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by sanyo-kansatu | 2015-09-27 12:42 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)