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2015年 09月 02日

「香港はインバウンドの実験室」:世界に先駆けレンタカー旅行をPR

訪日外国人の増加にともない、レンタカーの外客利用が増えていますが、なかでも香港人の利用は早い時期から始まっています。
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外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています(ニッポンレンタカーに聞く)
http://inbound.exblog.jp/24799845/

今年1~7月の香港からの訪日客数は85万300人で、前年同期比66.0%増。中国本土客(275万5500人 前年同期比113.8%増)に次いで高い伸びを見せています。

なぜこれだけ増えているのか。日本政府観光局香港事務所の資料によると、以下の3つの理由を挙げています。

①親日的な素地:世界最大の日本産農水産物の輸出先
②好調な香港経済と物価上昇:円安も相まって、日本は「お買い得」
③LCCを中心とした座席供給量増加:ヘビーリピーターの存在
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さらに、香港の訪日市場の特徴は以下のとおりです。

・2014年の訪日香港人旅行者数:92万5975人(24.1%増)
・国・地域別訪日外客数:5位(2013年)→4位(14年) ※米国を抜く
・人口に占める訪日客数の比率」10人に1人(13年)→7.8人に1人(14年)
・日本国内滞在先の「西高東低」傾向の深化 ※首都圏に偏る国が大半の中、香港のユニークさが光る。
・香港物価高騰、円安継続→買い物の魅力向上による訪日旅行意欲の高まり
・訪日市場に対する「占中(民主化デモ)」の影響はなし

上記の点は、以下のデータから理解することができます。

まず「関西、九州、沖縄のシェアの拡大」。日本のインバウンドがいま最も必要としている「訪問先の分散化(多様化)」が見られます。
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次にリピーターとFIT(個人旅行)比率の高さです。訪日10回以上が21.4%、過半数が4回以上です。FITも75.2%。韓国に次いで高い比率です。

こうしたことから、香港は訪日旅行の最先端市場といえます。日本を訪れる外国客の中で、台湾と並んで最もアクティブかつ成熟した旅行を楽しんでいる人たちなのです。

そんな香港人の日本旅行の必須アイテムとなりつつあるのが、レンタカーというわけです。日本政府観光局(JNTO)香港事務所では、2012年からレンタカー利用促進のプロモーションを始めています。これは世界を先駆けての取り組みです。

香港のレンタカー利用促進を手がけてこられた前香港事務所長の平田真幸さんに話を聞きました。

―2012年度に開始した取り組みについて教えてください。
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「『Rail & Drive』と名付けた香港市場に特化したプロモーションです。香港の旅行会社は早い時期からレンタカー付きの宿泊ツアーを催行していましたが、私が香港に赴任した当時は、震災後の訪日客の落ち込みをリカバーするための施策が求められていました。リピーター8割、訪日10回以上が20%超という成熟市場の香港で、他国・地域(韓国、台湾、タイ、シンガポール)との差別化として何ができるか。

ひとつは鉄道旅行。ただし、新幹線ではなく、観光列車。香港市場へのアンケートによると、「日本を鉄道旅行したい」93%、「自然風景が楽しめる列車に乗りたい」83%、「ジャパン・レールパス利用経験なし」61%というデータがあったからです。

もうひとつがドライブ旅行。これも同じアンケートで「日本でドライブ旅行をしたい」67%、「好きな場所に旅行できる」75%というデータがあった。しかも、香港の免許所持者は約200万人。自家用車台数約52万台。とはいえ、あの狭い都市では、免許と車があっても自由気ままにドライブ旅行を楽しむことは難しい。だったら、日本で楽しんでもらえばいい」。

―こうして開始したのが『Rail & Drive』プロモーションだったわけですね。
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「競合国との差別化も込めて『a different Japan Rail & Drive』というキャッチフレーズで今年度まで続けられています。香港からの訪日客は増えていますが、乗り入れ空港は主要7空港のみです。成熟した香港客の訪問地をさらに多様化させるためには2次交通がどうしても必要です。そこで、香港市場のニーズに合わせてご当地グルメやショッピングシーンも盛り込みながら、シーズンごとに全国各地のドライブ旅行と観光列車のビジュアルイメージを打ち出しました。

香港はまさにインバウンドの実験室。新しい訪日旅行シーンは香港から生まれているのです」。

日本政府観光局(JNTO)香港事務所
http://www.welcome2japan.hk/

2015年は四国、中部・北陸を重点ディスティネーションに設定したPRを実施しています。
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こうしたプロモーションの結果、香港人のレンタカー利用は増えています。現状では、沖縄県と北海道での利用が圧倒的なシェアを占めるようですが、今後は首都圏、中部、関西圏、福岡などの大都市圏を中心に利用が広がっていくものを思われます。

香港の皆さんには、もっとレンタカーを利用して、日本のさらなる奥地へと旅立ってもらいたいものです。
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by sanyo-kansatu | 2015-09-02 13:21 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 08月 18日

外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています(ニッポンレンタカーに聞く)

訪日外国客の増加にともない、外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています。
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ぼくも、昔ハワイでレンタカーを運転したことがあります。ふだん乗らないアメ車に左ハンドル。地元の車に囲まれながら、どこまで行っても初めての道を走るという緊張感の中、ホノルル郊外のハイウェイを乗り継ぎ、ノースショアの海岸線が見えてきた頃には、運転にも慣れ、気分はサイコ―でした。

最初はちょっと緊張するけど、やってみたらたまらない海外でのレンタカー運転。同じことは、日本を訪れる外国人ツーリストだってやってみたいに決まっています。

そこで、これからしばらく外国客のレンタカー利用事情について取材しようと思います。最初に話をお聞きしたのが、ニッポンレンタカーサービス販売促進部国際営業課の白井祐子さんです。

―外国客がレンタカーを利用するようになったのはいつ頃からですか?

「増えて来たなと感じるようになったのは、2013年頃からでしょうか。実際には、北海道では2000年代から外国客のレンタカー利用促進のための取り組みは始まっていましたし、沖縄でも早くから進んでいました」。

―確かに、北海道と沖縄では外国客のレンタカー利用が進んでいる印象がありますね。それ以外の地域や国籍別の利用状況はいかがでしょうか。

「まず国籍別の利用状況は、弊社の場合、1位は香港、2位は韓国または台湾、4位タイ、5位アメリカまたはオーストラリアといった感じでしょうか。外国客利用は対前年度比で約200%増です。ただし、全体の外客比率はまだ5%というところでしょうか。

沖縄と北海道の利用数が多いことは確かですが、最近では関西国際空港や中部国際空港からの利用も前年度の2.5倍の勢いで増えています」。

※外国客のレンタカー利用がダントツに多い沖縄と北海道の利用件数(両県のレンタカー協会調べ)は以下のとおり。

沖縄 8万5323件(前年度比2.3倍 2014年4月~15年3月)
北海道 2万1318件(前年度比33%増 2013年12月~14年11月)

―国内客と外国客ではレンタカー利用状況の違いはありますか。

「一般にいえることは、外国客は平均約4日、単価も4万円。日本人より利用日数が長く、単価も高いという特徴があります。平日利用も外国客が多いです」。

―車の好みの違いなどありますか。

「外国客の方は、家族やグループ旅行も多いため、ワゴン車の利用が多いです。またプリウスなどのハイブリッド車やアイサイトの使えるスバル車など、日本オリジナルの車種に人気があります」。

スバル アイサイト総合サイト
http://www.subaru.jp/eyesight/

―やはり空港のカウンターから利用されるケースが多いのですか。

「確かにそうですが、最近では都内のレンタカー店での利用も増えています。特にホテルの多い地区、浅草などから利用される場合もあります」。

―ところで、外国客がレンタカーを利用する際、必要なのはなんですか。

「パスポートと国際免許証です。空港のレンタカーカウンターで直接申し込まれる方もいますが、基本的には事前予約が多いです。現在、弊社では日本語と英語のサイトしかないのですが、TOCOO!という英中韓3カ国対応のレンタカー予約サイト経由の申し込みも増えています」

TOCOO!(レンタカー 中国語ページ)
http://www2.tocoo.jp/cn

―レンタカーを利用した外国客からはどんな声が寄せられていますか。

「カウンターの現場からは、日本の運転はとてもラク。みんなルールを守っているし、安全だという声が多いです。ただし、国籍によって、日本と同じ右ハンドルを採用している香港やタイの方と、左ハンドルの台湾や韓国の方では少し感じ方が違うかもしれません。

香港やシンガポールの方からは「北海道のまっすぐの道をガンガン走りたい」という声も多いです」。

―あの狭くて高層ビルの林立する国で暮らしているわけですから、その気持ちはよくわかりますね。でも、実際に日本で運転するとなると、慣れないことも多いと思われます。事故が増えているということはないですか。

「利用者の増加にともない、接触事故などの事例は増えています。ただし、外国客の事故率が日本人より高いということはありません。

弊社では英語版の利用ガイドを用意しています。そこでは、日本の交通規則や標識の解説、給油のやり方や事故が起きたときの対応、保険補償の限度額、駐車違反の注意などこまかく説明しています。
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たまにあるのが、軽自動車を利用された方が間違って軽油を給油されてしまうケースです。軽油を入れると、車が動かなくなってしまうんです」。
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―かなり詳しく書かれていますが、これをすべて読んでから運転というのでは大変ですね。外国客向けのサポートサービスはありますか。

「弊社の外客向けのサービスとしては、24時間対応のカウンター通訳サービス(英中韓タイ語)や多言語化カーナビ(英中韓)、ECカードのレンタルなどがあります。なかでも重要なのが、カーナビです。この2年で急速に普及してきました。新車を発注する際も、必須になっています。また今年から申込書も多言語化に対応しています(英中韓)」。

―今後も、外国客の利用を促進していきたいとお考えですか。

「昨年11月、初めて台北のITF(旅行博覧会)にブースを出展し、PRをしました。今後は他のアジアの国の出展も検討しています。

また国内のトラベルマートなどの商談会にも参加しています。これを機会にこれまで知り合うことのなかった異業種の方とお会いする機会がぐっと増えたのですが、地方自治体の方など、レンタカーに期待する声が強いことを知りました」。

―どういうことですか。

「大都市圏からの交通が不便な地方では、レンタカーで地元を訪れる外国客が増えることを期待しているからです。たとえば、今年、山陰の各県では香港向けにレンタカー利用の旅行プランを企画しています。こうした動きにレンタカー会社も協力していきたいと考えています」。

レンタカーの世界でもいろんなことが起きているようです。今度、白井さんのご案内で羽田空港のレンタカーカウンターを訪ねることになりました。

またこのインタビューを通じて、さまざまな話題、観点が見えてきました。今後はこれらを少しずつ深堀りしていきたいと思います。

外客のレンタカー利用件数日本一の沖縄でいま起きていること
http://inbound.exblog.jp/24858193/

北海道は外客レンタカー受入の全国の先駆けです
http://inbound.exblog.jp/24864160/

中国本土の観光客は現状、日本でレンタカーの運転はできません
http://inbound.exblog.jp/24859203/

「香港はインバウンドの実験室」:世界に先駆けレンタカー旅行をPR
http://inbound.exblog.jp/24848866/

海外客がTocoo!でレンタカーを予約する理由
http://inbound.exblog.jp/24860932/

外国客の国内ドライブ旅行、本格始動中!~先行する沖縄、北海道の事例と予約サイトの動向から
http://inbound.exblog.jp/24950113/
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by sanyo-kansatu | 2015-08-18 11:34 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 30日

歌舞伎町ルネッサンス~外国人観光客の来訪増で街は変わるか?

このところ、歌舞伎町周辺を訪ね回り、外国人ツーリストの動きをウォッチングしていました。その中間報告というわけでもないのですが、やまとごころに書いています。
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歌舞伎町は今日も多くの外国人ツーリストでにぎわっている。ここ数年、周辺でホテル開業ラッシュも起きている。新宿は都内で最も外国客に人気のホテル地区なのだ。世界的にも知られるこの歓楽街はこれからどう変わっていくのか。周辺のホテルに滞在している外国客にもっと街を楽しんでもらい、お金を落としてもらうには何が必要なのだろうか。考えてみたい。
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やまとごころ.jp
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_15.html

新宿歌舞伎町のネオンの下には、今日も多くの外国人ツーリストでにぎわう光景が見られる。靖国通りで大型バスから降りてきた中国やタイの団体客たちは添乗員に先導され、セントラルロードから裏道まで列をなして散策している。ドンキホーテの前でスーツケースを広げて大量購入した土産の品定めをするグループもいる。キャリーバックを引きずるアジアの若い個人客も次々と横断歩道を渡ってくる。欧米のツーリストたちもそこかしこを頻繁に往来している。

今年上半期(1~6月)で914万人とますます増加する訪日外国人旅行者。日本政府観光局によると、年間を通じて1800万人前後の見通しと2020年に2000万人という政府目標も前倒しで実現しそうな勢いだ。

彼らの来訪が歌舞伎町の風景を大きく変えようとしている。でも、どうして彼らは歌舞伎町にやって来るのだろうか。

世界の観光地と呼ばれる場所には、誰もがそこで記念撮影を始めてしまうポイントがある。富士山の絶景もそうだが、渋谷センター街の交差点もいまや定番。こうした情報はネットにあふれていて、SNSを通じて世界に発信されている。

では、いまの歌舞伎町でそれはどこだろうか。

今年4月に開業した「ゴジラルーム」が話題のホテルグレイスリー新宿(新東宝ビル)か。あるいは、「歌舞伎町一番街ゲート」の下で自撮りする? いや、むしろ西新宿の高層ビルやヤマダ電機の巨大スクリーンをバックに撮るのがお好みか?

これらは確かに歌舞伎町でよく見かける光景である。いまや歌舞伎町は外国人ツーリストのための都内有数の“回遊”ゾーンとなっているのである。

では、ここで“回遊”した後、彼らはどこに向かうのだろうか。

ロボットレストランは日々進化する

そのひとつが、新宿区役所の裏にあるロボットレストランである。この話はもうよく知られているかもしれない。以前、やまとごころ.jpのインタビューでも紹介した、外国人ツーリストが殺到する都内でも数少ないナイトエンターティンメントスポットである。

歌舞伎町の「ロボットレストラン」になぜ外国客があふれているのか?
http://www.yamatogokoro.jp/inbound-interview/2013/index06.html

日本の女子ダンスチーム《女戦》と巨大アンドロイドが共演するダンスショーが楽しめるというふれこみの同レストラン。その開業3周年も近い6月初旬に訪ねたところ、入り口に以前はなかった多言語の歓迎表示が置かれていた。ロシア語やタイ語まであり、客層の多国籍化が進んでいることがうかがわれる。
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18カ国の多言語が表示されるロボットレストランの看板

きらびやかだが、キテレツというほかない待合室の様子は変わらないが、受付は日本語を話す外国人スタッフだった。そこでは東南アジアのリゾートホテルのラウンジでよく聴く洋楽のライブ演奏が行われている。21時50分開演のその日最後のショーで、観客は若い欧米人がほとんど。アメリカのTVコメディショーに出てくるような外国人司会者が「ようこそ、クレージーショーへ」とあいさつすると、照明が落とされ、ショーは始まった。
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ショーの観客席は外国客だらけ。最近はアジア客も増えてきた

実は、半年前にここに来たとき、早めの時間帯だったせいか、欧米の中高年のツーリストの姿が多く、また小さな子連れの母親もいて、客層は明らかに幅広い年齢層に広がっていた。おそらく彼らは滞在先のホテルのロビーに置かれたチラシを手にしてここに来たものと思われた。

見るからに善男善女である彼らは、海外旅行先の夜を過ごす常としてカップルで、あるいは親子で食事を含めたナイトライフに繰り出そうとしていたのだ。はたしてショーの中身は、彼らを心底楽しませただろうか? 少し違和感を覚えたものだった。

そこに一抹のあやうさを感じながらも、ロボットレストランは外国客の趣向に合わせたナイトライフの受け皿として日々進化しているようだった。もはや開業当初のような欧米メディアや文化人が訪れる特別のスポットではなくなっているかもしれないが、客足は遠のくばかりか増えている。はっきり言って、ショーの中身を除けば、そこはとても日本とは思えない。入場料は1人7000円と以前より値上がりしているが、この1年の円安で外国客にとってはチャラみたいなものかもしれない。

このような“クレージー”な外国客向けのナイトスポットは、実のところ、世界のあらゆる観光地で見られる普遍的な光景ともいえる。それが六本木や赤坂、銀座ではなく、歌舞伎町に見られることは、これからの日本のインバウンドの行方を象徴しているように思う。

エクスペディアが指摘する新宿の3つの魅力

ところで、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストはどこから来るのだろうか。

その答えのひとつのヒントとなるのが、ホテル予約サイトの市場動向である。

今日どんなに無名の宿泊施設でも、ホテル予約サイトに登録すれば、外国客を呼び込むことができるといわれる。国内ホテルの外国客受入に実質的に最も貢献をしているのは彼らだろう。

なかでも2006年11月、米国発世界最大のオンライン旅行会社として日本法人を開設したエクスペディアの訪日旅行市場における存在感は日に日に増している。当初、彼らの日本参入の狙いは、日本人の海外旅行市場にあったが、ここ数年、海外、特にアジアからの国内ホテル予約が増えているからだ。

木村奈津子マーケティングディレクターによると「エクスペディアはアジア11カ国・地域に販売拠点があるが、その多くは12~13年にかけて設立されたばかり。円安と日本旅行ブームの時期が重なり、訪日予約が一気に増えた」という。実際、韓国や香港、台湾、タイのエクスペディアによる14年の海外ホテル予約件数はすべて日本がトップだった。

同社の作成した「都内国別人気宿泊エリアマップ」をみると、東京の南半分(東京駅周辺、銀座、赤坂、渋谷)は欧米客に人気で、北半分(新宿、池袋、上野、浅草)はアジア客に人気というエリアの住み分けがあるらしい。
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都内国別人気宿泊エリアマップ(エクスペディア提供)

だが、国籍を問わず最も人気があるのは新宿だ。同社は14年エクスペディア経由で予約件数の多かった宿泊施設を「ホテル」部門と「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門に分けてランキングしている。以下、「ホテル」部門10位までのランキングだ。

1位 ホテルサンルートプラザ新宿(南新宿)
2位 新宿グランベルホテル(東新宿/歌舞伎町)
3位 新宿ワシントンホテル(西新宿)
4位 京王プラザホテル(西新宿)
5位 ホテルモントレ グラスミア大阪
6位 ホテル日航成田
7位 新宿プリンスホテル(東新宿)
8位 品川プリンスホテル(品川)
9位 新宿区役所カプセルホテル(東新宿/歌舞伎町)
10位 ホテル日航関西空港

興味深いのは、ランキング入りした都内の7店中6店が新宿のホテルであること。またどちらの部門も1位(前者:サンルートプラザ新宿、後者:新宿区役所前カプセルホテル)は新宿なのだ。

なぜこれほど新宿のホテルが人気なのか。エクスペディアではその理由は「アクセス面」「街の魅力」「施設面」の3つだとして、以下のように分析する。

①アクセス面:新宿は都内の観光地へのアクセスがいい。また箱根に電車で一本、富士山にもバス一本で行ける。

②街の魅力:大都会を象徴する高層ビル群と、歌舞伎町や思い出横丁のような古き良き日本の雰囲気が両方体験できる。

③施設面:高級シティホテルからビジネスホテルまで選択肢が豊富。六本木や赤坂だと高級ホテルが多く、所得の高い欧米客が集中するが、近年増えているアジア客はリーズナブルなホテルを選ぶ傾向にあり、新宿が最適。

箱根と富士山のゲートウェイであることの優位性が新宿にはある。歌舞伎町が新宿を構成する一要素として欠かせない存在であることもわかる。さらに、新宿のホテルの価格帯のバリエーションの多さが、多様な層の外国客の受け入れを可能としているのだ。

一般に外国人ツーリストはよく歩くという。日本人なら地下鉄を利用する距離でも、彼らは歩くのを好む。そして彼らの行動半径はホテルを基点に形成される。こうしてみると、大型バスで乗りつけるアジア系団体客を除けば、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストの多くが、新宿周辺のホテルに滞在している比率は高そうなのである。

外国人ご用達のカプセルホテルの世界

新宿人気の理由となっているリーズナブルな宿泊施設の代表といえば、前述のエクスペディアの「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門で1位となった新宿区役所前カプセルホテルだろう。

5月下旬、同ホテルを訪ねると、そこは外国人ツーリストご用達の宿になっていた。

ロビーでは英語が飛び交い、着替えのためのロッカーの脇にはスーツケースが並んでいる。軽食コーナーや自動販売機、コインランドリーなどが置かれた男女共用のラウンジに行くと、スマホを手にした外国客の姿が多く見られた。実際、その日の外客予約比率は39%。アジア客と欧米客の比率は半々という。
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ロッカーの脇に並ぶ外国客のスーツケース

小川周二経営企画室室長によると「外国客が増えたのは2年前から。女性フロアを開設したことでカップルでも利用しやすくなったことが大きいようだ。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアが増えている。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろだ。大半がエクスペディアなどの海外予約サイト経由。連泊が多く、なかには1カ月も泊まっていく外国人もいる」という。
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ポラロイドで撮った宿泊客の記念写真

カプセルホテルは1980年代に成長した業態だが、バブル崩壊以降、斜陽産業と呼ばれた。それでも同ホテルが盛況なのは、サラリーマンから国内外の女性も含めたツーリストへという客層の変化に対応し、ビジネスモデルの組み換えを行ってきたからだろう。

人知れず外客率8割のデザインホテルもある

ホテル予約サイトの驚くべき集客力は、異業種やベンチャー系のホテル事業への参入にも追い風となっている。PRコストいらずで、集客が可能となるからだ。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある。2013年12月に開業した新宿グランベルホテルだ。
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ひときわ目につく17階建て、客室数380室

立地は歌舞伎町の東のはずれの、なんとラブホテル街の中。だが、ここはエクスペディアの人気ランキング「ホテル」部門2位という。

ロビーを訪ねると、それは一目瞭然だ。フロントの前のラウンジやソファーに多くの外国客がたむろしていて、特に午後のチェックイン・アウトの時間帯にはスーツケースが山のようにロビーに積まれている。

丸山英男支配人によると「周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーが集中している。ホテル激戦区の東新宿で、知名度のない我々が生き残るには、思いきって個性的なホテルをつくるしかない」と考えたという。

そこで採用したのが、アジアの次世代アーティスト24名を起用してデザインさせた客室だった。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したかったという。設計を担当したのは、キッザニア東京で知られるUDS株式会社だった。
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NY在住のカンボジア人アーティストが近未来の女性をイメージした人気の客室

結果はどうだったのか。

「開業から3か月は苦戦したが、1年後には平均客室稼働率は8割を超えた。そのうち外客比率は8割以上。歌舞伎町の立地ということで、外国客の利用は多くなるだろうと考えていたが、これほどとは思わなかった。アジア系は6割で欧米系は4割。ビジネス客とレジャー客は半々。予約の半分以上はネット経由。圧倒的に海外の予約サイト経由が多い」(丸山支配人)。

同ホテルを支持したのは、海外の若い個人旅行者たちだった。価格とデザイン性に敏感な彼らのホテル選びは、まず予約サイトでエリアと価格帯で絞り込んでから、各ホテルの写真をじっくり見比べるという。

丸山支配人は同ホテルが外国客に人気の理由をこう説明してくれた。
「確実にいえるのは、ネットの世界は写真が大事ということ。私どものホテルは客室のデザインに特徴があることから、同じ価格帯のホテルと比べたうえで選んでもらえたのだと考えている」。

「歌舞伎町ルネッサンス」の転換点

ところで、歌舞伎町にはいまも「怖い」「汚い」「風俗のまち」というイメージがある。その認識を世間にあらためて印象づけたのが、多くの死傷者も出た2001年9月の雑居ビル火災だった。

この事故に端を発して歌舞伎町の再生に向けた動きが始まっている。それが05年に新宿区や地元商店街振興組合、都や国の関係省庁などが官民一体でスタートさせた「歌舞伎町ルネッサンス」だった。

ところが、発足当時から危ぶまれていた歌舞伎町の顔ともいうべき新宿コマ劇場が08年に、14年にはミラノ座も閉館となった。それまで歌舞伎町では、劇場や映画館、ライブハウスなどの集客施設に来た人たちが周辺の飲食施設に立ち寄ることで歓楽街を成り立たせていた。だが、主要な施設の消滅で来街者が減り、多くの人々が“回遊”することで生まれるにぎわいにも陰りが見え始めていた。

それだけに、今年4月、新宿コマ劇腸の跡地に開業した新宿東宝ビルの誘致は、歌舞伎町再生のための大きな転換点とみなされている。そこにはシネコンやホテル(ホテルグレイスリー新宿)などの新たな集客施設がテナントとして入居してきたからだ。

新宿区では、靖国通りから北に延びるセントラルロードや新宿東宝ビル前の北側道路などの歩道を順次拡幅している。街の混雑を緩和し、かつての歌舞伎町のイメージを刷新させ、女性や家族連れも呼び寄せたいからだという。

だとすれば、ホテルができることはいい話である。実は、歌舞伎町とその周辺では、ホテルグレイスリー新宿や前述の新宿グランベルホテルもそうだが、今年9月開業予定のアパホテルグループの旗艦店「新宿歌舞伎町タワー」など、ホテルの新規開業がここ数年続々と進んでいた。東新宿は今後、ビジネス客というよりもレジャー客の集まるホテルの街になりそうなのだ。当然これらのホテルには、多くの外国人ツーリストが宿泊することになるだろう。
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シックなストライプとゴジラの顔がラウンドマークとなった新宿東宝ビル

ホテルの宿泊客が街で消費を始めている

歌舞伎町商店街振興組合の城克事務局長は「歌舞伎町を再生させるうえで、我々ができることは、投資を誘致するということだけだった。あとは各々の事業者の皆さんが頑張ってくれる。ホテルができることで、宿泊客が歌舞伎町で飲食や買い物をしてくれるようになるといい」と期待する。

地元ではこれまで歌舞伎町に来る外国人は、街を散策しているだけでお金を落とさないという声もあったようだ。確かに、大型バスで乗りつけるアジアの団体客は、せいぜいコンビニで飲み物を購入するくらいだったろう。彼らの買い物は旅行会社が決めた特定の場所でなければならないからだ。

だが、歌舞伎町周辺のホテルに宿泊していれば、近所でお金を落とす機会は自然と増える。その兆しは、たとえば、新宿グランベルホテルのフロントスタッフらが作成したという自家製マップに表れている。

同ホテルのロビーには、以下のような数種類のホテル周辺マップ(英語併記)が置かれている。

「新宿駅までの周辺地図(SHINJUKU area map)」
「周辺のラーメン屋(RAMEN LIST)」
「24時間営業のお食事処(24HOUR OPEN RESTAURANT LIST)」
「周辺のお寿司屋さん(SUSHI RESTAURANT LIST)」

これらの地図はとてもシンプルで情報量も限られているが、宿泊客からの質問をもとに作成されている。地図に落とされているスポットは、歌舞伎町内にあるごく普通のラーメン屋やレストラン、寿司屋にすぎない。だが、これらを見ていると、ホテルを基点とした外国人ツーリストの活動領域が見えてくる。ホテルの宿泊客たちは、街で消費を始めているのだ。

地元の人と一緒に楽しめる体験がほしい

今年に入って歌舞伎町にはこれまで見られなかった女性のグループなども足を運ぶようになったという。外国客には家族連れも多いので、子供の姿も増えた。街の風景に静かな変化が起きているようにも見える。

「だが、歌舞伎町に安心・安全ばかりをアピールするのはどうか。ちょうどいい緊張感は残したほうがいい。それがこの街の個性でもあったのだから」と前述の歌舞伎町商店街振興組合の城事務局長はいう。

確かに、ここは銀座でも渋谷でもない。それでもこれだけの来街者があるというのは、俗に“アジア最大の歓楽街”と呼ばれる独特の街の風貌が人を惹きつけるからだろう。それが薄まることを危ぶむ向きもあろうが、時代は変わる。かつて歌舞伎町は中国やアジアからの移民労働者が多く働く街だったが、いまやレジャー観光客に生まれ変わった彼らが押し寄せるようになった。それも宿命かもしれない。こうして生まれる“ちょうどいい緊張感”を満喫してくれているのは、いまや欧米客も含めた外国人ツーリストたちではないだろうか。彼らは固定観念にとらわれず、歌舞伎町とその周辺のホテルを選んでいるのだから。

そんな彼らはいま歌舞伎町に何を望んでいるのだろうか。

ここに来て、ただあてどなく“回遊”するだけでなく、立ち止まって地元の人たちと一緒に楽しめる体験、もっといえば思い出づくりがしたいのではなかろうか。お金をかけた大がかりなイベントである必要は必ずしもないと思う。もっとささやかで、気軽に日本人も外国人も参加できそうな趣向を考えたほうがよさそうだ。

ロボットレストランの営業担当者に以前こんな話を聞いたことがある。「新宿周辺と都内の主要なホテルにチラシを置いてもらうよう徹底して営業した。その結果がいま出ていると思う」。

せっかくこんなに多くのホテルが周辺にあるのだから、彼らに声をかけない手はないというわけだ。幸い歌舞伎町周辺のホテルの宿泊客には、スケジュールの決まった団体客は少ない。大半は個人旅行者だ。ロビーで退屈そうにスマホを覗いて暇を持て余しているツーリストはたくさんいる。彼らを街に連れ出すためのアイデアがいまこそ求められているのだ。

新宿グランベルホテルでは、新宿全景が見渡せるルーフトップバーで外国人を集めたイベントを始めようとしているそうだ。「ホテルは街と共存している。いまはSNSで情報が広がる時代。だから、ホテルの集客もいいデザインというだけではなく、次のステップはそこではいつも何かが起きていると思わせる場をつくり出すことが大事なのだと思う」。

これは同ホテルの設計を担当したUDS株式会社の寳田陵クリエイティブデザインディレクターのことばだ。

新宿歌舞伎町にあふれる外国人ツーリストにいかに街を楽しんでもらうか。そのためのネタはここにはいくらでもあると思う。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-30 15:46 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2015年 07月 10日

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある

今年4月、新宿コマ劇場跡にできた“ゴジラホテル”こと、ホテルグレイスリー新宿。その開業当初、多くのメディアが外国客のあふれる歌舞伎町の変貌ぶりを報じていました。

でも、歌舞伎町にはまだ他にも人知れず外国客が殺到しているスポットがあります。

それは、2013年12月に開業した新宿グランベルホテルです。不動産事業を手がける(株)フレンドステージ(埼玉県上尾市)が運営しているホテルで、場所は歌舞伎町のラブホテル街の中にあります。そんなディープな環境のなか、ひときわ目につく17階建て、客室総数380室といいますから、東新宿周辺ではホテルグレイスリーやプリンスホテルなどに次いで大きなシティホテルといえます。
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新宿グランベルホテル
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku

実は、同ホテルは2014年にエクスペディア経由で予約した外国人旅行者数のランキングで、ホテルサンルートプラザ新宿(渋谷区)に次いで全国2位となっています。サンルートプラザ新宿といえば、昔から外国客を多く受け入れてきたホテルとして知られていますが、開業2年のホテルが堂々ランキング2位になるとはちょっと驚きです。新宿グランベルホテルは、なぜこんなに外国客に人気なのでしょうか?

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/

同ホテルの丸山英男支配人に話を聞きました。

―歌舞伎町の真っただ中に位置していますね。周辺はラブホテルがひしめいている。なぜこの立地を選ばれたのでしょうか。

「弊社がここに土地を所有していたからです。確かに、この周辺はいろんな人種・国籍の人たちが往来していて、一種のカオスといえる。でも、歌舞伎町は世界的に知名度がある。だから、計画の当初からこの土地に合った個性的なホテルをつくろうと考えていました。

ホテルグランベルはわずか3軒のみですが、他には渋谷と赤坂にあります。それぞれ異なるコンセプトで設計されています。

2006年7月に開業した渋谷は、若者のまちらしく、25~35歳のトレンドに敏感な層をターゲットに、また同年12月開業の赤坂は、ビジネスマン向きに大人の落ち着いた雰囲気にしています。

東新宿はホテル激戦区で、周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーのホテルが集中しています。この中で差別化するには、知名度のない我々が同じことをやっても勝負できない。だったら、思いっきり個性的なホテルをつくろうと考えたのです」。

―エクスペディアの関係者から、客室のデザインが人気だと聞いています。彼らは貴館をブティックホテルと呼んでいました。

「本館のいちばんの特徴は、アジアの次世代アーティストがデザインした客室を用意していることです。コンセプトは「HIP、エッジ、官能的」。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したいと考えました。設計をお願いしたのが、キッザニア東京の設計で有名なUDS株式会社です。渋谷や赤坂も同様です」。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

―アジアの次世代アーティストというのはどのような人たちですか。

「代表的なアーティストとしては、カンボジア生まれで、現在ニューヨークで活躍中のTomtorです。彼には近未来の女性をイメージしたこの客室のデザインイメージを提案してもらいました。
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Tomtor(カンボジア)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/sp_double/


他にも、香港や韓国、台湾などのアーティストを起用しています。日本人も含めて関わったアーティストは20名以上。香港のG.O.D.は、香港の油麻地(ヤウマーティ)地区のデザインをイメージして壁一面に銅板パネルやグラフィックアートを飾った客室をデザインしてもらっています」。
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G.O.D.(香港)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/ex_double/

その他アーティストのプロフィールとその客室
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/extra/

―面白いですね。しかし、こんなに自由に客室ごとにデザインを選べるホテルというのは、あまり聞いたことがありません。客室のカテゴリー分けはどうなっているのですか。

「2~11階がスタンダードルーム、12階がロフトルーム。この階はアジアのお子様連れファミリーがよく利用されます。13~16階がエグゼクティブルーム、17階がスイートです。客室タイプは全28種に細分化されています。
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さらに、スタンダードルームには「オモテ」と「ウラ」の異なる客室デザインを用意しています」。

―どういうことですか。
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「この客室は先ほどのTomtorのデザインイメージに沿って設計されたものですが、最初が「オモテ」で、こちらは「ウラ」です。「オモテ」は白と木目調をいかしたすっきりしたデザインですが、「ウラ」は黒とレザーの風合いをいかしたディープな感覚を打ち出しています。前者はビジネス客向けに、後者は客室でゆったりくつろぎたい方向けにと考えられています」。

―ずいぶん凝っていますね。飲食施設はどうですか。

「ロビーのカフェと12階のカジュアルイタリアンレストラン、そして13階のバーの3つです。バーはテラスがあり、新宿の街並みを見渡せます」。
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―ところで、ロビーにスーツケースがたくさん置かれていましたが、これは海外の団体客などチェックアウトをすませた方たちのものですね。エクスペディアで全国2位の予約実績というわけですから、外国客の宿泊比率はかなり高そうですね。
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「現在、外客比率は8割以上です。もともと歌舞伎町のホテルということで、外客の利用は多くなるだろうと考えていましたが、こんなに多くなるとは思ってもいませんでした。外客のうちアジアが6割で欧米が4割。ビジネス客とレジャー客は半々という感じです」。

―どうしてこんなに外国客の人気を呼んだと思われますか。

「実は、開業当初以外はほとんどPRしていません。それだけに最初の3カ月は厳しかったのですが、徐々に予約が入るようになり、2014年秋には平均客室稼働率が80%になりました。ADR(平均客室単価)は約1万3000円となっています。

予約の半分以上はネット経由です。団体客も取るので、リアルエージェントからの予約もありますが、圧倒的に海外の予約サイト経由が多い。エクスペディアやbooking.com、アゴダなど、だいたい同じくらいの比率です」。

―本当にいまはそういう時代なんですね。PRにお金をかけるより、予約サイトに登録し、より効果的な見せ方をすることが集客のカギになる。

「実際、何か特別に外客向けのサービスはやっていません。せいぜいフロントでお客様からよく聞かれる質問を整理して近隣マップをつくったくらいでしょうか。

トリップアドバイザーなどの口コミサイトには、いいことも悪いことも書かれるものですが、ひとつ確実にいえるのは、ネットの世界はまず写真が大事ということ。ホテルグランベルはデザインに特徴があるので、同じ価格帯のホテルと比べて選んでもらえているのだと考えています」。

―しかし、これだけ外客比率が高くなってしまうと、経営上のリスクはどうでしょう。多くの宿泊施設が国内客と外客のバランスを取ることに苦心しているなか、新宿グランベルホテルは、国内客より外国客に知られたホテルといえるかもしれません。

「確かに、外国客の予約がいつもいっぱいで予約が入らないため、国内客に敬遠されてしまうきらいがあるように思います。しかし、ここまで来たら、もう隠しようがないので、状況を見ながらコントロールしていくしかありません」。

―レベニューマネジメントの腕が問われますね。

「まったくそうです。支配人の私ともうひとりのスタッフが担当しているのですが、1日の仕事の大半はレベニューマネジメントに明け暮れるといっていいくらいです」。

ネット予約が一般化した今日、レベニューマネジメントは収益の最大化を左右するだけに、手を抜けないところでしょう。予約経路は複雑化しており、さまざまなファクターを吟味しながら客室の売値のコントロールをしていかなければならないからです。

それにしても、訪日客の増加によってほぼネットだけで集客ができてしまうという状況が起きていることは、ベンチャー企業のホテル業への参入にとって追い風になっていると思われます。このあたりの感覚は、ホテル業の王道にずっといた人たちからすると、時代の変化を強く感じさせる事態かもしれません。

もっとも、丸山支配人は外客向けの特別なサービスはしていないと言っていましたが、宿泊客からの質問や問い合わせに答えるためにスタッフがつくったという自家製近隣マップは、種類も豊富でよくできていると思いました。数種類に分けられたマップをみると、外国客が歌舞伎町周辺のどこで食事や買い物をしているかがよくわかり面白かったです。また設計を手がけたUDSの担当者にも話を聞きました。その内容については、また別の機会で。

遊び心がなければ、海外客を惹きつけることはできない(UDSの考えるデザインホテル)
http://inbound.exblog.jp/24681756/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-10 21:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 07月 09日

多言語化に取り組む楽天トラベル。宿泊プランは外国客に支持されるか?

エクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトの参入によって、日本の国内宿泊マーケットは変わりつつあります。それは単に外国客の利用が増える(国内客の減少を補てんしてくれる)というだけではなく、これまでの宿泊サービスのありように新しい刺激を与えてくれていると思います。

ホテルが外国客を受け入れるメリットは何か(エクスペディアの取材から)
http://inbound.exblog.jp/24669753/

もっとも、外資が参入する以前に、日本にもオンライン旅行会社は存在しました。楽天トラベルやじゃらん、一休などは広く普及しています。

なかでも楽天トラベルは、2001年3月に楽天の旅行部門として立ち上がり、02年に独立。05年には旅行業一種を取得し、本格的なオンライン総合旅行サイトとなりますが、早くとも10年にはJTBに次ぐ国内旅行市場取扱額2位にまで成長しました(その後、近畿日本ツーリストに再び2位の座を明け渡したり、取り戻したりといった状況が続いています。同社が急速に取扱額を拡大できたのは、店舗を持たず、ユーザーと宿泊施設の双方の便宜を追求するオンライン旅行会社の特性を消費者が支持したからでしょう)。

先日、楽天トラベルの関係者に話を聞くことができました。

訪日外客が増えるなか、楽天トラベルはインバウンドに対してどんな取り組みを始めているのか。海外客に人気の宿泊施設にはどんな特徴があるのか。以下、関係者とのやりとりです。

―楽天トラベルでは、訪日外客の取り込みに向けてどんな取り組みを始めているのですか。

「2014年7月、楽天トラベルは多言語化サイトの大幅なリニューアルを行いました。10ドメイン、7言語(英語、フランス語、中国繁体字、中国簡体字、タイ語、韓国語、インドネシア語)のサイトとなり、2020年の東京オリンピックに向けて海外訪日客を取りにいきます」
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―利用者の伸びはどうですか。どこの国が多いですか。

「おかげさまで前年度比60~70%増です。米国、香港、台湾などが多いです。利用者は基本的にFITですから、日本に興味があって、リピーターの多い国や地域が多くなると思います。また楽天グループでは海外拠点づくりを進めていて、特に台湾では楽天のECサイトがあり、台湾楽天カードも発行しています。弊社の場合、トラベル単体ではなく、グループのシナジーを活かしてプロモーションしていくというのが基本の考え方です」。

―確かに、旅行もショッピングも同じプラットフォームで商取引されるのですから、結局、日本のファンを増やしていくことがシナジー効果を生むということですね。日本が好きで旅行に行きたい人たちと、日本の商品をショッピングしたい人たちを分けて考える必要はない。

ところで、御社は海外客の予約件数の多いホテルの情報を有しておられると思います。海外客に人気のホテルを教えていただけますか。

「楽天トラベルでは、全国約2万9500施設の中から、毎年顕著な宿泊実績や高い顧客評価を得られた宿泊施設に対して『楽天トラベルアワード』を表彰しています。いくつかのジャンルに分かれるのですが、海外客に人気という意味では、『インバウンド賞』を受賞されたホテルがそれに当たります」。

楽天トラベルアワード2014
http://travel.rakuten.co.jp/award/2014/

―ここ数年の「インバウンド賞」受賞の施設をみると、エリア的には関東・甲信越が多いようですが、やはり全体でみると、外国客の楽天経由の予約件数はやはりこのエリアが多いといえますか。

「『インバウンド賞』は宿泊施設単位で受賞しているものですが、エリア単位で見た場合は、上記エリア以外でもご予約は多数いただいております。実際、楽天トラベルが全国を約300のエリアに分けているなか、すでに95%のエリアで外国客の予約が入っています」。

―そうですか。楽天経由でほぼ全国の宿泊施設に予約が入っているのですね。

「もちろん、実際に多いのはゴールデンルートとなる東京→富士山→関西エリアと、沖縄県、北海道です。しかし、楽天トラベルはFIT、特にリピーターとなって日本に複数回こられているだろうお客様の予約も多いため、九州エリアの福岡県・大分県・熊本県・鹿児島県や、中部の岐阜県・愛知県・長野県、北陸の石川県、中国四国の広島県や香川県などさまざまなエリアの予約が増えており、全国への分散化が見られます」。

―個別の施設でいうと、上野のノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)はここ数年連続して受賞しているようですね。この圧倒的な強さはどこにあるとお考えですか。禁煙は外客受入にとって重要なファクターといえるのでしょうか。

「日本に比べて海外では禁煙文化が浸透しているため、「禁煙」「喫煙」の区別に関しては日本よりも敏感になっているようです。

(参考) 
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_smoking_bans_in_the_United_States
http://www2u.biglobe.ne.jp/~MCFW-jm/tobacco.htm

ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)は、インバウンドだけではなく、国内のお客様も含めて「非喫煙ポリシー」を徹底しています。これが圧倒的な強さにつながっていると考えられます。また、浴室はシャワールームにして外国人の方も満足のいく最低限の設備にすることで、その他のスペースを広げた点や価格帯がマッチしていることも選ばれる理由になっているかと思います」。
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ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)
http://www.nonsmokers.jp/nosmoking/

―アパホテルグループの受賞も多いですね。渋谷道玄坂店と京都駅前堀川通店。これらの人気の理由は何でしょうか。

「アパホテルはビジネスホテルのカテゴリーに入りますが、シングルでも横120cmの広いベッドやシャワー、アメニティなどゲストのための細かいサービスが行き届いていて、中級ホテルとしてはサービスレベルが高いと評価されていることが考えられます。また駅に近いことも外国客にとってはホテル選びをするうえでのポイントになっていると思います」。

―受賞施設以外にも、最近外国客に人気が出ているホテルはありますか。

「たとえば、「休暇村 大久野島」(香川県)や「高野山の宿坊」(和歌山県)でしょうか。

全国の休暇村でいま積極的に外国客の受け入れに力を入れています。なかでも集客に成功しているのが大久野島です。
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休暇村 大久野島
http://www.qkamura.or.jp/en/ohkuno/rooms/

魅力は大自然を満喫できる宿で、瀬戸内海の離島にあることでしょうか。ネットを通じて予約されるFITのお客様はリピーターも多く、東京や大阪のような大都市圏ではなく、自然の豊かなローカルなエリアへの宿泊が増えています。

同じく、高野山の宿坊も、日本の自然と文化を体験できることで人気が上がっています」。

高野山の宿坊
http://www.shukubo.net/contents/stay/

―これら西日本のローカルな人気宿はどこの国の人たちが多いのですか。

「香港や台湾に加え、欧米の比率が高いです。大阪や広島などの都市部を拠点にしながら、1泊の予約をピンポイントで取り、これらの宿に泊まって地元をゆっくり観光されている傾向が見られます」。

―ところで、ここで少し話を変えますが、現在海外のホテル予約サイトが続々参入し、訪日客の国内予約の取り込みが急ピッチで進んでいます。それに対し、国内オンライン旅行会社(OTA)の雄である楽天トラベルは、どう立ち向かおうとしているのでしょうか。海外サイトに負けないサービスは何でしょうか。

「現在、海外のお客様を受け入れることに同意いただいた1万8000施設が外国語ページを持っています。日付を指定した検索結果には、海外のお客様向けに宿泊プランを作成され、在庫のご登録を頂いた施設が表示されます。

エリア的な偏りは、多少は見られるものの、全国津々浦々までカバーできているのが楽天トラベルの大きな特徴だといえると思います。

例えば、東京、大阪、京都などのインバウンドのメジャーエリアで検索をした際に、他のOTAさんとくらべ楽天は少し多いくらいですが、四国、東北、前述の高野山を含む和歌山などのローカルエリアを検索すると、大きな差が出ます。検索結果が数件では、ユーザーはそのエリアでの宿泊を選べませんので、ある一定以上の施設の数を各エリアで持つことが、インバウンド需要を伸ばすうえで重要なことだと考えています。

全エリアをしっかりカバーできていることが、楽天トラベルの強みであると同時に、日本のOTAとして担っていくべきところである。そうした結果が、先の高野山や大久野島での予約に繋がっていると考えています」。

―確かに「宿泊プラン」というサービスは日本オリジナルなもので、海外サイトにはあまりないですね。しかし、国内客には好評の「宿泊プラン」も、海外客には少し複雑に見えるかもしれません。こういうサービスを知らない海外客に支持してもらうには、少しわかりやすく打ち出す必要があるように思います。

「おしゃるとおりで、外国語サイトでは、なるべく簡単でわかりやすい選択肢を付けることにしています。たとえば。『(客室から)富士山が見える』『世界遺産のまち』『しゃぶしゃぶが食べられる』などです。

(例)[ Features ]
- Wonderful cuisine - Mt. Fuji-viewing - Nice view room - Japanese-style room

たとえば、『富士山』の例はこれです。
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Fuji New Kawaguchiko Onsen Hotel New Century
http://travel.rakuten.com/hotel/info/49256/

こちらの施設は、施設紹介やプランの詳細で、富士山へのアクセスや客室から富士山が見られることをしっかりPRしており、予約が増えています。

また『しゃぶしゃぶ』については、以下のプランがひとつの例です。
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Ryori Ryokan Karaku
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Kyoto-Kyoto_Ryori_Ryokan_Karaku/1849/

Yufuin Onsen Yufu no Irodori Yadoya Ohashi
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Oita-Yufu_Yufuin_Onsen_Yufu_no_Irodori_Yadoya_Ohashi/78074/

外国語版では、このようにプラン名に入れて紹介しています。詳しく画像や料理について説明することで、予約に繋がっていると考えています」。

―他にも、日本のOTAならではの仕掛けはありますか。

「たとえば、『楽天朝ごはんフェスティバル』です。旅における「朝ごはん」の大切さに注目し、日本全国のホテル・旅館で提供している美味しい「朝ごはん」を旅のきっかけにしていただきたい! という願いを込め、2010年からスタートしました。2014年には過去最大の宿泊施設様にご参加をいただき、約1000の朝ごはんの中からから日本一の朝ごはんを決定いたしました。

朝ごはんフェスティバルとは?
http://travel.rakuten.co.jp/special/asafesta/about.html

楽天トラベルとして、さまざまなベネフィットをオプションとして付け加えることによってより、宿泊施設の単価や価値を上げることができるのではないかと考えております。その付加価値となるものとして、宿が最大限のおもてなしをもって提供している「朝ごはん」を宿泊施設様ご自身にも再認識(おもてなしのこもった朝ごはんの価値を認識)してもらうきっかけにできればと考えています。実際、お客様の声を見ていると、「夕食よりも朝ごはんが楽しみ」や「朝ごはんが良かった」というお声も見受けられました。

また、お客様に対しては朝ごはんをきっかけに旅に出るという新たな旅行需要の創出やより満足度の高い旅行につなげていきたいと考えております。

なかでも2014年、西日本大会で準優勝した京都センチュリーホテルについては、実際に朝ごはん会場にて朝ごはんフェスティバル受賞を大々的に打ち出していただいています。

京都センチュリーホテル
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp

同朝ごはんページ
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp/restaurant/lajyho/post_95.php

同ホテルには、海外メディアからの取材も来ています。

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่30 "เทศกาลอาหารเช้า" Japanese breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=Yrz6z2x713Q

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่31 "เทศกาลอาหารเช้า 2" Japanese Breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=uAzxjH3StEo

この番組はタイのテレビ放送(チャンネル5)やYOUTUBEでの公開が行われています」。

実は、先月ぼくは京都に行く機会があり、噂の朝ごはんを食べに、わざわざ京都センチュリーホテルに早起きして訪ねてみました。2階ロビーにあるビュッフェレストラン「オールデイダイニング ラジョウ」には、アジアからのツアー客であふれていました。朝食に2600円もかけることはめったにありませんでしたが、自家製ローストビーフはわざわざ食べにくる人がいるというのもうなづけました。宿泊客ならこれがフリーというわけですから、前の晩の夕食は軽めにすませておきたいものです。

国内外に限らず、たいていのホテルで朝食を提供しているわけですから、それが美味しいと評判になれば、集客に活かせることは確かでしょう。

こうした日本流のサービスをベースに訪日客の取り込みを図る楽天トラベルのやり方は、エクスペディアなどの海外サイトとはさまざまな点で違うところがあり、これがかえって興味深いといえます。この際、どちらが正しいとかいう必要はなさそうです。訪日客は多様化しており、それに応じたサービスの領域が拡大していくことに意味があると思うからです。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-09 11:58 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 08日

ホテルが外国客を受け入れるメリットは何か(エクスペディアの取材から)

エクスペディアは、米国生まれの世界最大のオンライン総合旅行サイトです。
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エクスペディア
http://www.expedia.co.jp/

グローバルの月間ユニークユーザー数約9000万人、年間で5兆円の売上があるそうです。本社は米国ワシントン州ベルヴューにあります。

テレビやネットのCMを通じて、エクスペディアがホテル予約サイトであることはすでに知られていると思いますが、ここでいう総合旅行サイトとは、ホテル以外に航空券やその他の旅行サービスをすべて扱っているオンライン旅行会社ということです。楽天トラベルと同じです。違いは、ワールドワイドに拠点を広げ、世界中のマーケットを相手にしていることでしょう。

海外に比べ、日本のオンライン旅行比率は低いといわれていましたが(それだけ日本ではリアル旅行店舗がそれなりの存在感を持ち、低価格化の波に対応してきたからですが)、最近では33%に上昇しているようです。

日本の旅行予約、ネット比率は33%に、オンライン旅行市場規模は2.9兆円(2015年4月23日)
http://www.travelvoice.jp/20150423-41292

先日、エクスペディアの日本法人を取材する機会がありました。都内で外国客に人気のホテルの大半がエクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトから予約を受けていると聞いていたからです。確かに、海外の訪日旅行者にとって宿の確保をするうえで頼りになるのは、ホテル予約サイトだからです。

日本法人の木村奈津子マーケティングディレクターに話を聞きました。

―エクスペディアの特徴は何でしょうか。

「2006年11月に日本法人を設立し、海外ホテルに強い予約サイトとしてスタートしました。ご存知のように弊社はマイクロソフトの旅行部門として立ち上がっていますから(現在は独立)、本社はアメリカで、その後、ヨーロッパ、オーストラリア、インド、そして日本という順で海外展開を進めてきました。

現在では世界に31の販売拠点があります。それだけに、日本のお客様には海外のあらゆる場所のホテルをご提供できます。ホテルの側からすれば、日本の旅行会社が国内のお客様を中心に何人送客できるかに対し、我々は世界中から送客できるといえるのが強みです。そのため、仕入れ交渉をするうえで世界最大規模のメリットが出る。それが弊社の掲げる「最低価格保証」につながると考えています。

当初はホテルをメインに扱っていましたが、2011年から航空券。今後は保険やレンタカーを強化することで、名実ともにオンライン総合旅行会社となることを目指しています」
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―確かに他の海外サイトはホテルのみの扱いが多いようですが、エクスペディアは違うのですね。ところで、日本進出にはどんな理由があったのでしょうか。

「日本の旅行市場の規模を考えると、グローバル企業にとっても魅力的です。以前は日本のオンライン旅行比率は決して高いとは言えませんでしたが、オンラインのパイが拡大基調にあることを見極めながら進出の時期を決めたといえます。いまやオンライン旅行会社のニーズは拡大していると思います」。

―確かに、自分の周囲でも旅慣れた人ほど、国内の旅行サイトではなく、海外の旅行サイトを利用する人が増えていると思います。それは先ほど言ったように、比較検討できる海外のホテルの数が国内サイトに比べ圧倒的に多いからでしょう。世界中日本人が訪れていない場所はないというけれど、ホテル選びにはできる限り多くの選択肢がほしいというニーズは旅慣れた人間ほどあります。それに応えうるのは、海外の旅行サイトであることは間違いない。

ところで、このところ都内のホテル関係者の話を聞いていると、海外のお客様の予約はたいていエクスペディアのような海外予約サイト経由が多いと聞きます。これは高級シティホテルからゲストハウスのような格安宿まで共通しています。海外経由で日本のホテルを予約するニーズが拡大しているのですね。いま日本法人の取り扱いでは、国内客と海外客ではどちらが多いのですか。

「現状では、やや国内客の海外予約の取り扱いが大きいですが、インバウンド(海外客の訪日予約)は勢いがある。震災直後は打撃が大きかったが、この2、3年で状況は大きく変わってきました」。

―海外客の訪日予約はいつ頃から増えましたか。どこの国の取り扱いが多いのですか。

「訪日の取り扱いでは、アメリカのパイが最大ですが、2位以下はアジアの国々です。特にこの3年でアジアは伸び率が高い。背景には、日本法人設立後しばらくして、2012、13年に一気にアジア市場に販売拠点を開設したことがあります。現在、アジア11カ国・地域に拠点がある。なかでも韓国、シンガポール、タイ、台湾、香港の市場が伸びています。また韓国、香港、台湾、タイのエクスペディアでは訪日市場の売上が最大となっています」。

エクスペディアではアジア各国からの訪日ホテル予約が急増している
http://inbound.exblog.jp/24509107/

―国籍によって都内の人気エリアが異なるそうですね。

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/

「それをまとめたのがこのマップです。これまでエクスペディアの利用の多い欧米客の宿泊エリアは都内の南半分に偏っていましたが、ここ数年、旅行単価の安いアジア客が増えたことで、都内北側のホテル利用も増え、いまではまんべんなく広がっています」
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―なかでも都内で宿泊先の人気エリアはダントツで新宿だそうですね。その理由は何でしょうか。

「ユーザーのコメントなどから、以下のように説明できると思います。

■アクセス面:新宿は都内の各種観光地へのアクセスが良いほか、海外の人に人気の箱根にも電車で一本、富士山にもバスで一本で行けて便利。

■街の魅力:大都会を象徴する大きなビル群と、歌舞伎町や思い出横丁のような古い日本のごちゃごちゃしたところが入り混じっているのがいい。

■施設面:高級ホテルからエコノミーホテルまで選択肢が豊富。六本木や赤坂だと高級ホテルばかりで、所得のある欧米客が集中してしまうが、近年増えているアジア客はエコノミークラスで十分。

ホテル人気ランキング(予約件数)をみると、有名な高級ホテルというより、リーズナブルな宿泊施設が多くなっています」。

―2014年に人気急上昇した都市のランキングの上位に沖縄が入っています。沖縄ではどのようなタイプの施設が人気なのでしょうか。国籍でいうと、どこが多いのですか。

「沖縄は、香港、韓国、台湾のお客様に人気です。近年ではLCCの直行便の乗り入れが多く、家族旅行やゴルフにと、気軽に国内旅行の延長上のような形できていただいています。

沖縄でのウェディングもかなりメジャーになってきました。傾向としては2回目、3回目のリピーター層が多く、那覇や恩納村などの本島王道エリアから足を伸ばして、北部の美ら海水族館周辺エリアや名護のホテルが人気です。

人気ホテルは、ザ・ブセナテラス、オキナワマリオットリゾート&スパ、ザ・リッツカールトン沖縄などのラグジュアリーリゾート。ヨーロッパ圏の方は、離島びいきが多く、石垣・宮古・久米島が人気です」。

―お話をうかがっていると、当初日本の海外旅行市場に狙いを定めて参入したものの、インバウンド市場の急速な拡大にともない、訪日外客向けの国内ホテルの仕入れが急務となっているように思われます。

「おっしゃるとおりです。当初は欧米客が主流でしたが、アジア客はレジャーの比率が高く、リピーターも多いので、東京や大阪だけを押さえていても足りない。弊社の仕入部隊も地方の在庫強化を進めています。アジアからの急速なインバウンド需要に対応していく必要があるからです」。

―ホテル予約サイトには国内客向けと海外客向けの2つの顔がある。海外のホテル予約サイトは国内サイトに比べ、海外客の国内ホテル手配は弱みがあるといえますね。国内ホテルの仕入れ在庫数は国内サイトにはかなわないからです。また国内の宿泊施設のすべてが外国客を受け入れているかというとそうではない。こうしたなか国内ホテルの仕入れはどうしていますか。

(以下、仕入れ担当のレラン・ラビ アソシエイトマーケットマネジャー)

「正直なところ、数年前まではインバウンドの割合が少なかったです。あってもせいぜい東京、京都、大阪のゴールデンルートがほとんど。ところが、最近急速に北海道や沖縄、福岡、箱根などに足を延ばす海外客が増えています。そのため、弊社の仕入部隊も全国を飛び回り、契約施設を拡充しています。しかも、どんな施設でもいいというのではなく、なるべく外国客が泊まりたくなるような宿と契約しようと考えています。」

―外国客が泊まりたくなる宿とはどんなものでしょうか。

「実を言えば、外国客だからといって一括りにはできません。国によって全然違います。同じ欧米でも、なじみのあるヒルトン、ハイアットに泊まりたい人もいれば、日本でしか体験できないカプセルホテルや旅館に泊まりたいという人もいる。

アジア客は一般にリーズナブルな価格帯のホテルにニーズが大きいので、ビジネスホテルとの契約も増やしています」。

―外国客を泊めることに抵抗のある施設もまだ多いのでしょうか。

「インバウンドというキーワードは盛り上がっていますが、地方の旅館などに話をすると、外国客も取っていかなければいけないのはわかっているが、外国語が出来ないからと躊躇する経営者の方もいます。2020年のオリンピックは決まっている以上、どこかのタイミングで始めなければとは考えているが、タイミングを見計らっているような方もいます。ですから、我々はいまこそそのタイミングですと営業しています」。

―外国客を受け入れることのメリットは何でしょうか。

「いくつもあります。ひとつはリードタイムが長いこと。リードタイムとは、予約を入れてから実際に旅行するまでの日数のことで、ホテルの側からすると、予約がギリギリになるより、事前に入っているほうが安心です。海外のお客様は数か月前から予約を入れるケースが多いんです。

もうひとつは連泊が多いこと。一般にインバウンドの滞在は平均3~4泊といわれます。また平日利用も多く、連泊してくれるので、平日の需要の弱い曜日も埋められる。シーツの交換など、コストも軽減できる。アジアの団体客は1日1日動いていくイメージがあるが、エクスペディアはFITのみの扱いです。カプセルホテルから5スターホテルまでさまざまな需要があります」。

-もうひとつうかがいたかったのは、レイティング(ホテルの星付け)についてです。エクスペディアには独自の基準によるレイティングがあるといっていましたが、これはどんなものでしょうか。日本人の評価とは少し違うのでしょうか。

「世界基準でみると、同じ3つ星ホテルでもアジアの国のそれと日本では質が違う面もあります。海外を旅慣れている外国客が日本のホテルに泊まると、シーツがきれいで全然クオリティが違うという印象を持つ場合も。一方、客室の狭さは日本の特徴といえます。

エクスペディアには独自のスターレイティングチームがあって、以下のような基準で星付けをしています。

・施設の充実度
・サービスレベル
・部屋の内装
・共有部の内装・外観
・アメニティの充実度
・ホテルの築年数 など」

―最後に、仕入れ担当者からの宿泊施設に対するアドバイスをお願いします。外国客を受け入れるためにホテルが考えるべきことは何でしょうか。

「確かに、外国人に慣れていない施設では、言葉の面などハードルが高いと考えられるかもしれませんが、外国客も日本人がペラペラと外国語を話せるとは思っていません。最近の外国客はネットやガイドブックでよく調べてから訪日しています。たいていの日本のルールはよく理解している。エクスペディアが扱うのは、団体ツアーの世界ではありません。

ですから、何か特別に改善すべきというより、いままで通りのサービスで外国客は満足してくれると思っていただいていい。無理して外国客に合わせる必要はない。日本人に対するのと同じサービスで十分です。

問題はメンタルにある。その点少し日本人はまじめすぎるかもしれません。

ただし、シンガポールからの出張者が言っていたのは、たとえば、トイレに英語表記がほしいとのこと。日本の温水洗浄器付きトイレは使い方がわかりにくいものです。ボタンひとつ意味がわからないと焦ってしまうそうです。館内の英語表記は必要でしょう」。

訪日外国人の急増で、特にアジアからの団体客の受け入れを始めたホテルや旅館の苦労が並大抵ではないという話をよく聞きます。温泉やトイレの使い方が日本人には信じられないような結果になるといいます。しかし、エクスペディアのような海外ホテル予約サイトは、基本的にFIT(個人旅行者)を対象としていることから、海外旅行も慣れていて、こうした非常識な事態はほとんど考えられません。この違いは大きいといえます。

アジア客を扱うランドオペレーターから、海外と同じように日本でもホテルに対する公的な星付けをしてほしいと要望がよく聞かれます。海外ではツアー料金を決める際、ホテルが2つ星なのか3つ星なのかで差別化することができるが、日本ではそれぞれのホテルの評価があいまいで、料金差を設定するのが難しいからです。これはあからさまな「格差」が可視化することを好まない日本社会の特性からくることなのかもしれません。なぜ日本のホテル業界が星付けを採用しないのか、ぼくには本当のところはよくわかりませんが、こうなってしまうと、少なくともインバウンドの世界ではエクスペディアのレイティングがスタンダードになっていく可能性もあるのではないでしょうか。

いずれにせよ、いまの時代、どんなに無名の施設でも、適正な価格帯でエクスペディアに載せたとたん、予約が入ることはあながち誇張とはいえません。それだけに、今後ますますエクスペディアの国内宿泊マーケットにおける存在感は増していくのではないかと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-08 21:22 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 06月 17日

シェアハウスのホテル化で外客受入に成功=「ゲスト交流型ホテル」とは?

台東区池之端にあるホテルグラフィー根津は、知る人ぞ知る隠れ家ホテルです。開業は2013年3月で、いまや外国客が90%以上を占めるといいます。
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ホテルグラフィー根津
http://www.hotel-graphy.com

海外ホテル予約サイトのエクスペディアを通じて2014年に予約件数の多かったホテルが表彰される「エクスペディアアワード2015」でベストパートナー部門を受賞しています(http://www.travelvoice.jp/20150325-39644)。

このホテルのコンセプトは「ゲスト交流型ホテル」です。運営しているのは、ソーシャルアパートメント(シェアハウスの進化系)という新種の賃貸住宅を手がけてきた株式会社グローバル・エージェンツという会社です。

株式会社グローバルエージェンツ
http://www.global-agents.co.jp/

シェアハウスの発想で運営されている「ゲスト交流型ホテル」が、なぜ外国客に人気なのか。株式会社グローバルエージェンツの山崎剛代表取締役社長に話を聞くことができました。以下、そのやり取りです。

―こちらを初めて訪ねたとき、地下鉄千代田線根津駅から狭い路地を抜けていくと、突然ホテルが現れたという印象でした。こんな住宅街の中にどうしてホテルがあるのだろうと。もともとこの建物は何だったのですか?

「築40年の旅館をリノベーションしたものです。客室数は64室。旅の醍醐味は、地元の人との交流にある、というのが私の考えです。ですから、ここにはホテルの宿泊客だけでなく、日本人のレジデンスも住んでいます」

―ホテルでありながら住人もいる。ゲストとレジデンスが同じ空間を過ごすということが「ゲスト交流型ホテル」ということなのですね。

「『ゲスト交流型ホテル』を説明するためには、もともと弊社が手がけている『ソーシャルアパートメント』について話す必要があるでしょう。

これは、従来のマンションと違い、プライバシーがしっかり確保されたワンルームに加えて、入居者同士が集まれるラグジュアリーな共用ラウンジが備えられている賃貸物件です。

ワンルーム+αという発想です。家の中でもなく外でもない共用ラウンジというセミパブリックなスペースで行われる多様な入居者間のコミュニケーションこそが、ソーシャルアパートメントの一番の醍醐味。多様な世代、属性、国籍の人たちが住み、共用ラウンジでの日常的なコミュニケーションを通しえ、想像を超える気づきや可能性の発見に出会うことができ、自分の世界が数倍に広がるはずです」。
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世界が広がる隣人交流型マンション『SOCIAL APARTMENT』
http://social-apartment.com/

―住人同士のコミュニケーションにこそ価値がある住まい方ということでしょうか。その発想の先にあるのは、宿泊客同士がコミュニケーションできる空間を備えたホテルということなんですね。こういうスタイルは外国客に好まれるものなのでしょうか。実際の宿泊客の国籍はどうですか。

「欧米客とアジア客は半々。最近、アジア客が増えています。実際には、宿泊客のうちどれくらいの方がこのコンセプトを理解しているかはわかりません。それでも、海外を旅したことのある人ならたいていゲストハウスの世界を知っているので、ゲスト同士のコミュニケーションの場があることは喜んでもらえると思っていました。ただし、ホテルを開業する以上、多くの外国客に来てもらえるように、具体的には以下のことを考えました。

まず価格設定を都内のビジネスホテルの価格帯に合わせました。これは海外FITのボリュームゾーンにも見合っています。その代わり、フロントオペレーションを簡素化し、客室の内線電話も外しています。いわゆる“おもてなし”はやらない。サービスを売りにしない。国内のホテルがよくやる宿泊プランも一切なし。

そのぶんリノベーションで力を入れたのはデザインのクオリティです。外国客は海外の予約サイトの写真を見ながらホテル選びをする。価格以上の価値を感じさせるデザイン性、ここで勝負すればいい。むしろこれが外国客にはわかりやすく、選びやすいのです」。
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実際の宿泊客の様子を知りたくて、荒島浩二支配人にも話を聞きました。

―外国客はやはり海外のホテル予約サイトを通して予約されるのですか。

「expediaとBooking.com から予約が入るのがほとんどです。一般に外国客は、エリアと価格帯でホテルを選びます。うちは上野エリアとして検索されます」

―上野は成田空港からのゲートウエイですから、初めて日本を訪れる旅行者にとってホテルのロケーションとしては最適に映るでしょうね。

「でも実際には、上野駅からのアクセスはあまりよくありません。歩くと15分以上かかるので、タクシーでワンメーターと伝えるようにしています」

―確かに、住宅街の中にあり、外国客が歩いて探すのは大変だと思われます。しかし、山崎社長が話していたようにデザイン性と価格帯にそれ以上の価値を見出すことで選ばれているということなのでしょうか。

「そうだと思います。そこに価値を感じる方が選んでくれていると思います」
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―ロビーのカフェや共同スペースで見かけるのは、多国籍の方たちですが、やはり若い世代が多いように見受けられます。

「はい、若い世代の宿泊客が多いと思います。最近、日本にもデザイン性を売りにしたホテルが開業していますが、古い施設をリノベーションしたタイプが増えています。その先駆けが目黒にあるCLASKAというホテルで、若い旅行者に人気です」。

CLASKA
http://www.claska.com/

―いまでもレジデンスの方はいらっしゃるのですか。ゲストの方と一緒に共同キッチンを使ったりするのですね。

「ええ、そうです。開業して2年たちましたが、最初はレジデンスの方の比率も高かったのですが、だんだんゲストが増えてきました。現在では約8割がホテルゲストです」。

―外国客はどんな過ごし方をしているのでしょう。

「アジア客と欧米客ではずいぶん違います。アジア客は連泊といっても、2~3泊がふつう。滞在中の細かいすきのないスケジュールを組んでいて、ショッピングを中心に都内を散策しているようです。ですから、フロントに聞かれる質問も、たいてい『ここに行くにはどうすればいい?』というようなものです。やりたいことは決まっていて、そのための具体的な方法を知りたいのです。
 
一方、欧米客は1~2週間滞在する方が多い。予定もそんなに決まっていなくて、前の晩になって明日富士山に行く、日光に行くなんて言っている。聞かれるのは、『今日ヒマなんだけど、どうすればいい?』というような質問です」。

―なるほど、アジア客と欧米客では行動パターンがずいぶん異なるのですね。

今後、外国客向けに何か新しい取り組みはお考えですか。

「実は、うちのホテルには個室だけでなく、ドミトリー6人部屋があるのですが、先日50代のフランス人男性4人組が1週間滞在されました。欧米客にはそれぞれ自分のスタイルがあり、細かいことは気にしない。それでも、今度ふたつの客室をぶち抜いてスイートルームをつくる予定です。いろんなタイプのゲストがいらっしゃれるようになると思います。

課題に感じているのは、地元の谷根千の面白さをゲストの多くが知らないでいることです。上野に近い、価格帯、デザイン性の観点でうちを選んでくれるのはわかりましたが、せっかくホテルの周辺は面白いエリアなのに、そこを通り過ぎて行ってしまってはつまらない。ですから、今後はホテルを起点とした地元ツアーをやりたいと考えています」。

同社は今年8月、沖縄にホテルエスティネーション那覇を開業する予定です。こちらはホテルゲストのみの施設ですが、地元那覇の人たちも利用できるよう1階にバーを設け、レジとホテルのフロントを一体化しているそうです。 

ホテルエスティネーション那覇
http://hotel-estination.com/

こうした従来のホテル業界の既存概念にとらわれない自在な発想やオペレーションも「100室未満の規模だから可能」といえるのかもしれませんが、大学時代に起業したという若いベンチャー企業家(山崎社長)にとって、今日の訪日外客の増加というトレンドは自らの考える新しいビジネスの可能性を賭けるうえで追い風になっていることがよくわかります。

いまの時代、自分たちが考えるべきことは「多様なインバウンドのニーズのどこにニッチを見つけるか」(荒島支配人)だというのです。こうして新しいスタイルの宿泊施設が生まれていくのだとしたら、いい話だと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-17 14:58 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 30日

サラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの客層が変わった理由)

新宿区役所前カプセルホテルに泊まった翌日、同ホテル経営企画室室長の小川周二さんとフロントの川本レダさんにお話をうかがいました。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/

以下、そのやり取りです(敬称略)。

―昨日は、実際に泊まってみていろんな発見がありましたが、本当に外国客は多いですね。いつ頃からこんなに多く利用するようになったのですか。

小川「やはり増えたのは2年前でしょうね」
川本「でも、外国の方がいらしたのはもっと前からです」

―いつ頃ですか。

川本「震災の前からです。震災後は3か月ほど来ませんでしたが、すぐに回復しました」

―いまは毎日100人近い外国客が泊まっているようですね。

小川「そうですね。曜日にもよります。平日のほうが外国客の比率は高いと思います」

―どこの国の人が多いかなど、国籍に傾向はありますか。

小川「外国客はアジアと欧米半々です。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアの方が増えています。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろです」

―実は、共同スペースでマレーシアから来た7人組の若いグループと話しました。訪日初日からカプセルホテルに泊まっているそうです。

小川「その話を聞いて調べたのですが、あの方たちは、昨年の9月頃予約をされています」

―そんなに前からですか。リードタイム(予約から旅行実施までの期間)が長いですね。つまり、半年以上前から日本旅行を計画していた。でも、初日からカプセルホテル。なるべくお金をかけないで日本を体験したいというアジアの旅行者が増えているのですね。

ところで、外国客はどういう経路で予約して来るのですか。

川本「ExpediaやAgoda、Booking.comなどの海外の予約サイトを通してです。他にもHostelworldやJTBのJapanicanの利用もあります。これらのサイトには『Capsule Hotel』という独立したカテゴリーがあり、リーズナブルな宿を探したい方は簡単に見つけることができます。ありがたいのは、宿泊されたお客さまがご自身のブログやSNSで広めてくれることです」

―みなさん、カプセルホテルについてどんなことを書いているのでしょうか。

小川「スペースシップみたいだとか。あとは欧米の方は身体が大きいので、足がはみ出しちゃうけどOKとか。良かったこと、困ったことなど、いろいろ書き込まれています」

カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24532753/

―そういえば、ロッカールームの脇にポラロイドで撮った外国客の写真がたくさん貼ってありましたね。

小川「あれは4年ほど前、当時の支配人が外国客へのサービスとしてポラロイドで撮った写真を記念に渡していたのです。いまはやっていませんが」
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―外国客の対応のためにどんなことをやっていらっしゃいますか。

小川「フロントには英語を話せるスタッフを常駐させています。最近はアジアのお客さまも多いので、中国語や韓国語、タイ語、フィリピン語を話せるスタッフもいます。館内の英語表示も徹底しています」

―やはり外国語対応は大事なのですね。

小川「実際に予約をしてフロントに来られて、思っていたのとはイメージが違うと感じたのかキャンセルされる外国の方もたまにいます。そんなとき、外国語できちんと対応できれば、やっぱり泊まろうかという気になってもらえるかもしれません。またうちは食べ物の持ち込みOK」

―共同ルームで先ほどのマレーシア人たちはコンビニで買った焼き鳥を食べていました。風呂上りに何か軽くお腹に入れたい。そう思って買い込んでくるのでしょうね。そういうゆるさも、こちらが数あるカプセルホテルの中で外国客の予約件数がナンバーワンとなった理由なのでしょう。

「もうひとつ大きいのは、2年前(2013年7月)に女性フロアをオープンしたことです。それ以後、客層が大きく変わりました。以前は男性客のみでしたから、サラリーマンが大半。そこに女性客や外国客が加わることで、旅行者の比率が増えたからです。一般に女性の方はウォークインで利用されることはありません。地方から旅行で来た方や東京で就活しているという大学生もいます。女性客も外国客も事前に予約されるお客さまだという点で共通しています」
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―確かに、共同ロビーで見かけたのは若い方が多かったです。カプセルホテルでよく見かける酔客という感じの人はいませんでした。実際、外国の女性がたくさんいるような場所では、酔っ払いおじさんも気を抜いていられませんものね。もはやここは、外国人に限らず、旅行者のための宿泊施設になっているのですね。

ところで、もうひとつお聞きしたかったのは、一般に外国の個人客はひとつのホテルに連泊する傾向が高いといわれますが、こちらに連泊される方はいるのでしょうか。

小川「いますよ。2~3日は当たり前。長い人は2週間の連泊もよくあります。実は、ここ数か月連泊している外国人もいます。オランダの方です」

―数か月ですか。もうアパート代わりですね。よほどここが気に入ったのでしょうか。

もっとも、外国客が増えると、これまでになかった問題なども起きたりするのではないでしょうか。

川本「そうですね。カプセルの中でもwi-fiフリーなので、スカイプ電話をかけたり、グループでおしゃべりしたり、他のお客さまに迷惑なことがあります。あとみなさん荷物が大きいので、深夜にその整理をごそごそ始めたり」
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―彼らは海外旅行をしているのですから、それもまた楽しみでしょう。でも、それでは一般の日本のお客さまはたまらない。だから、『Please be quiet!』とあちこちに貼り紙してあるのですね。

小川「あとはタトゥーの方はチェックイン時にお断りしています。これを外国の方に説明するのが難しいですね。刺青のもつ社会的な意味が日本と外国では違うからです。外国の方にとってはおしゃれとしてタトゥーをしてらっしゃるのでしょうが、日本のお客さまにはアレルギーのようなものもあり、これは日本政府観光局でも、どう外国客に説明していくべきか検討していると聞きます」

―今後についてはどうお考えでしょうか。

小川「女性フロアを増やしたいと考えています。現在はワンフロアしかないのですが、おかげさまで予約がいっぱいだからです。またこことは別に女性専門のカプセルホテルもつくりたいですね。スタッフは全員女性です」

小川室長によると、同カプセルホテルの開業は1983年。80年代にこの業界は一気に成長したものの、バブル崩壊以降、斜陽業界と呼ばれてきたといいます。

「多少景気が良くなってきたといっても、これからは日本客相手だけではやっていけません。何より平日の稼働率を稼いでくれる外国客の存在は貴重です。2年前の女性フロアの新設も相乗効果となり、予想以上に外国のお客さまに来てもらえるようになりました。

おかげさまで現在、稼働率は8~9割と高推移していますが、課題は海外サイトによる予約が増えたことで、ウォークインが減り、割安な料金の利用が多くなっていることです。今後の課題はいかに客単価を上げるかです」

海外からのネット予約が増えることで稼働率は上がったものの、収益を上げるためには、客単価を上げる必要があるという状況は、今日のホテル業界に共通しています。国内外の予約サイトや自社サイトなど、売値の異なる複数のチャネルを通じた予約の配分をいかに調整するかは、予約担当者のレベニューマネジメントの腕にかかっています。

「見極めのポイントとなるのは、イベントと天候でしょうか。たとえば、東京マラソンや最近では嵐フェス、東京ドームでの東方神起のコンサート、年末のコミケの当日などは、数か月前から予約がいっぱいになります。また台風が近づいてくると、電車が止まることを予想して予約がどっと入ってくることもあります」

今後この傾向はますます強まり、ホテル経営におけるレベニューマネジメント担当者の責任が大きくなることでしょう。

サラリーマンから国内外の(女性も含めた)ツーリストへ。新宿区役所前カプセルホテルの人気の理由は、こうした客層の変化という市場のニーズに柔軟に対応し、ビジネスモデルの組み替えを無理なく行なってきたことにあるようです。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-30 10:17 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 28日

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた

2014年、エクスペディア経由で最も予約件数の多かった「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門の宿泊施設が、新宿区役所前カプセルホテルだったそうです。

カプセルホテルが外国客に人気という話は聞いていましたが、実際の予約件数がトップとなると、これはどういうことなのか知りたくなります。

そこで、今週月曜の夜、泊まってみました。
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カプセルホテルに泊まるだなんて何年ぶりのことだろう…。そう思いながら、夜10時過ぎ同ホテルを訪ねると、いましたいました…3階のフロント周辺は外国客の皆さんばかりです。一般にカプセルホテルは、終電を乗り過ごしたサラリーマンの巣窟というイメージですが、ずいぶん印象が違うのです。フロントでは英語が飛び交っています。
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チェックインをすませると、まずはロッカーに荷物を収めてお風呂に入るのですが、スーツケースがこんなに並んで押し込まれています。外国客の荷物は大きくてロッカーに収まりきらないからです。

実はこの日、外国客比率は39%でした(87名 ※先週末の段階の数字なので、実際はもっといたかもしれません)。

このスーツケースの山を見ると、確かに大勢の外国客がいるのだなと実感します。

共同浴場は、お湯風呂とジャグジー、水風呂、サウナといったごく普通の施設でしたが、10人近い浴客のうち半分は欧米系ツーリストの皆さんです。みんな神妙な面持ちでお湯に浸かっています。よく外国客は裸で共同風呂に入るのが恥かしくて苦手だとか、逆に日本っぽくて珍しいから大人気、などと正反対のことが言われますが(それは両方正しい。つまり、どちらもいるということ)、ここに泊まっている皆さんはわざわざカプセルホテルを選んで宿泊している人たちなので、問題はないようです。
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風呂を出ると、4階の共同スペースでひと休み。ここには大画面テレビにソファ、軽食やバー、自動販売機、ランドリーなどが置かれています。Wi-fiも飛んでいるので、PCやスマホに夢中になっている外国人も多いです。

ここは男女共用なので、外国の女性客の姿も普通に見られます。そう、このカプセルホテルでは2年前から女性フロアを新設したところ、大盛況だそうです。

ちなみに料金はウォークイン(飛び込み)だと泊まりは4500円ですが、ネットで事前予約したので、1泊2800円でした。もっと早く予約すれば最安値は2200円です。

湯上りに生ビールを頼んでぼんやりしていたら、隣に男女7人組の若いアジア系のグループが座ってきました。欧米の人ばかりかと思っていたら、アジアの人もいるんだなあと思って見ていたら、女性たちはコンビニで買ってきたざるそばや焼き鳥を食べ始めます。そうか、ここは持ち込みOKなんだ。

このグループは男性4名女性3名なのですが、女性は全員華人のよう。話すことばは中国語(普通話)ではないものの、南方方言のようでした。アジアの人というのは日本人に比べ間の取り方を気にしないところがあるので、席を開けないで平気で隣に座ってくるものです。そこで、隣の女性にためしに中国語で話しかけみました。「どっから来たの?」

「マレーシア」(あっ、中国語通じた)
「そう、じゃあエアアジアで来たの?」(短絡的ですが、マレーシア人=エアアジアで来るというイメージがあったので)
「そうよ。今日着いたの」
「えっ、じゃあ初日からカプセルホテル?」
「……」

「初日から」うんぬんは余計なお世話でしたね。でも、そういう時代なんですね。KLから来た人たちで、エアアジアで片道5000円、東京に着いたらカプセルホテル1泊2200円。なんて安上がりなのでしょう。

「どのくらい日本にいるの?」
「10日間よ」
「東京だけ?」
「うん、まだ考えてないけど、たぶん箱根や日光にも行くつもり」
「そうなんだ。ところで、みんなはお友達なの? それともファミリー?」
「ファミリーよ」
「あっそう」

一般に欧米ツーリストはひとりかカップルか、子供連れの家族か、少人数で旅行する人がほとんどですが、アジアのツーリストは親戚家族で旅行するのが好きなようです。誰かひとり一度くらい日本に来たことのあるリーダーがいて、みんな彼におまかせで付いてきちゃうのでしょう。それがいちばん安心なのでしょう。

このグループも、兄弟とそのカップルの組み合わせという意味で「ファミリー」のようです。面白いのは、女性は華人だけど、男性は全員マレー系。もしかしたら、女性たちは姉妹なのかもしれません。ですから、女同士で話すときは中国南方方言(あとで聞くと、広東語と言っていましたが、香港人や広東人に比べ相当もったりした話しぶりです。マレーシアには福建華僑が多いと言われているので、福建語なまりかもしれません)を話し、男同士あるいはカップルで話すときは共通語のマレー語を使っています。そこにぼくが割り込むと、男性には英語、女性にはなんとか普通話は通じたので中国語とことばが入り乱れますが、多民族国家のマレーシアというのはそれが普通なのでしょう。

彼らマレーシア国籍の人たちは2013年夏の日本政府による観光ビザの撤廃で、簡単に日本に来られるようになりました。ノービザですから、休みができたらエアアジアの安チケットでふらっと東京に来られるのです。日本人は兄弟とそのカップルで海外旅行なんてあんまりやらない気がしますが、血縁の強いアジアの人らしい旅行スタイルだとあらためて思いました。

それにしても、ここには酔客が見当たりません。およそこれまで経験したカプセルホテルとは雰囲気が違います。

1時近くになったので「よい旅を!」と言って、7階にあるカプセルルームに向かいました。

エレベータを降りると、まあごく普通のカプセルホテルです。
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ちょっとよそとは違うのは、「Please be quiet」のような英語表示が目につくことでしょうか。
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それから、ここではカプセルの中でもWi-fiが使えて便利でした。

実をいうと、久しぶりのカプセルホテルであまりよく寝つけませんでした。それでも朝7時になったので、眠い目をこすり、お風呂に入ることにしました。けっこう外国の人も朝風呂しています。

風呂上りに共同ルームに行くと、ここにも外国客がたくさんたむろしていました。ぼくは200円のカプチーノを自販機で買い、しばらくぼんやりしていました。
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昨晩は見かけなかった日本の女の子がけっこういます。彼女たちはぼくのようにだらしない館内着姿ではなく、着替えを済ませ、サンドイッチを頬張りながらPCに向かっていて、レジャー客っぽさはありません。

しばらくすると、昨日のマレー人の男性にも会いました。日本人もそうだし、外国客も若い人が多いように思いました。ここは酔客とは無縁のカプセルホテルなんですね。

そろそろチェックアウトしようかとロッカーに戻って着替えようとしたら、壁に外国客のポラロイド写真が貼られていました。みんな自分の寝起きしたカプセルの中でこちらを向いて笑顔を振りまいています。笑えますね。でも楽しそうです。
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その脇には、海外で報じられたこのカプセルホテルの英文記事が紹介されていました。いろいろ細かい施設の説明や利用の仕方、周辺の歌舞伎町の紹介など、これを見て外国客はやって来るのでしょう。
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着替えを済ませ、チェックアウトしようとフロントに向かうと、大きなザックを背負ったバックパッカーの若者が出て行こうとしていました。

その姿を見たとき、急に懐かしさがこみあげてきました。

そういえば、自分も学生の頃は同じようなことをしていたな。当時日本から中国に行く最も安い交通手段だった定期航路「鑑真号」で大阪から上海に向かう前日、ぼくは彼と同じような大きなザックを背負って、梅田のカプセルホテルに泊まったことを思い出しました。あれから何年たったんだっけ…。

当時は、朝起きてから1日中歩き通しでも、夜は寝床さえあれば、ちっともかまわなかった。とにかく好奇心の赴くまま外国のまちを歩いてばかりいました。それが面白くてたまらなかったのです。

若い旅行者にとって、カプセルホテルはまったく問題ないはずです。海外の安宿の2段ベッドが並ぶタコ部屋みたいなドミトリーに比べれば、ここは超快適、機能的、衛生的な巨大ドミトリー空間のようなものですから。閉所恐怖症の人だけはNGかもしれませんけれど。
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久しぶりにカプセルホテルに泊まって、外国のツーリストと話をして、つかの間の旅人気分を味わえたのでした。

新宿区役所前カプセルホテル http://capsuleinn.com/shinjuku/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-28 12:24 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 28日

東新宿のビジネスホテルにはロシアや東欧の旅行者が多いらしい

2年前、本ブログで東新宿のビジネスホテルに多くの外国客が訪れていることを紹介したことがあります。

東新宿は新しい外国客向けホテル地区になりつつあります(2013年7月2日)
http://inbound.exblog.jp/20672715/
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そのとき、東新宿のビジネスホテルをいくつか訪ね、事情を聞いてまわりました。それ以降、この地区には外国客をあてこんだ新しいホテルが続々と誕生しています。最近はアパホテルなど、全国規模のチェーン系が増えています。

訪日客増加で客室も足りない!? 多様化する宿泊ニーズに対応した新サービスや業態転換はどこまで進むか
http://inbound.exblog.jp/24291533/

その後も東新宿には外国客の姿がますます増えていて、こうしたビジネスホテルは花園神社の明治通りをはさんだ反対側(東方面)に延びる医大通り周辺に集中しています。そこで今回、東新宿を代表する外国人宿、東京ビジネスホテルの橋本太乙代表取締役に話を聞きました。以下、そのやり取りです。

―いつ頃から外国客が来るようになったのですか。

「1995、6年頃からでしょうか。当時はフランスやドイツ、デンマークなど、ヨーロッパの人が多かったです」。

―ずいぶん早くからですね。その人たちはどうしてこちらを知ったのでしょうか。

「当時、東京のエコノミータイプのホテルを紹介した英語のパンフレットを政府観光局がつくっていたようで、うちを載せてくれていたんです。成田空港で置いてあるものです。広告費を出したわけじゃないんですけど。うちは都心にあって安かったからでしょう」

―本格的に外国客を誘致するようになったのは?

「2005年からです。その年、中国出身の20代の女性が支配人になりました。彼女が精力的に外国客の誘致を始めたのです。とはいえ、当時はHPもなく、実際にやったのは、お泊りになった外国の宿泊客全員に英文でお礼状を出すことからでした。もちろん、ネットでやり取りしている方にはメールを出しました。それから一気に増えました」。

―お礼状ですか。しかも指揮官は中国人。他にはどんなことをしましたか?

「彼女は2011年まで支配人で、いまは帰国していますが、とても優秀な人材でした。他には、まず館内を英語表示にしたこと。それからスタッフは英語を話せる人にした。これは徹底して取り組んだことです」。

―現在、外国客の宿泊比率はどれくらいですか。

「全体の2割ほどです。客室は178室。いろんなタイプの部屋があります」。

―国籍は?

「今日泊まっている外国客の国籍は、リトアニアやキルギスタン、フランスなどです。ロシア人も多いですよ。最近は東欧からの旅行者が多いです。うちにはロシア語を話すスタッフがひとりしかいないのですが、たいていグループのリーダーが英語を話すので、なんとかなっています」。

―ロシア語を話すスタッフがいるんですか?

「はい、でも基本は英語です。

東欧の方が来るようになったのは、4、5年前から。10年くらい前までは、フランスやドイツ、スウェーデンからが多かった。アフリカから来る人もいました。パスポートを見ても初めて見る国の名前ということもよくありました。

アメリカやオーストラリアからももちろん来ます。でも、東欧の方は10人以上のグループで10泊以上するのが特徴です。ベトナムや台湾などアジア系もいるけれど、彼らはたいてい3、4泊と滞在が短いので目立たない。

アメリカの方でうちに来るのは軍関係が多い。横須賀港に着いて六本木に遊びに来る人たちですが、最近は少ないです」。

―なるほど。医大通りを歩いていると、さまざまな旅人の姿を見かけますが、これほど多彩な国籍の人たちが宿泊していたからなのですね。そして、このホテルは彼らに見合った価格帯だということもいえるのでしょうね。

「1990年代は、フランスやスイスなどのバックパッカーが多かった。うちのように住宅街の中にあっても、安いとわかると地図を見ながら訪ね歩いてくるようなタイプの旅行者たちでした」。

―いまは浅草方面にそういう層が泊まるバックパッカー宿がたくさんできましたからね。

「そう、当時はなかったから。でもね、その時代から宿泊してくれるのは面白い方が多いですよ。あるスイス人の男性は日本に来るとき、毎回うちに泊まってくれるのですが、最初はひとりで来て、2年後彼女と来て、その後お母さんと来て、最近は子供連れで来ました。なんかうれしいですよね。またある台湾の貿易商の方は、最初は独身で、何度も来るうちに、だんだんお金持ちになってくるのが見ていてわかるんです。うちの部屋は狭いし、『あなたは本当はセンチュリーハイアットとかに泊まれるはずなのに、どうしてうちに来るの?』と聞いたら、『ぼくはここの精神を忘れない。一生懸命がんばっていた自分の原点の場所だから。ここが好きなんです』と言うんです」。

―客層が見えてくるお話です。外国客はずいぶん連泊するようですね。

「基本連泊が多いです。アジア方面とかいろんな国の方がいますから、平均すると3~4日になりますが、2週間以上のグループが実は多いです。このホテルを拠点に京都や日光に行く人も多い。一泊4100円から。1か月いても12万円。電気ガス使い放題ですから。

荷物を置いたまま、日光でも箱根でも行く。いまキルギス人のグループは京都に行っています。一つの部屋のみ残して、全員の荷物を置いている。昨日の夜、急に決まって出かけるというんです。予約はキャンセルですが、京都でも宿泊代がかかるでしょうからと、キャンセル料は取りません」。

―外国客を受け入れるために必要なことは?

「まずは外国語表示ですが、実はそれだけ。あとは話をじっくり聞いてあげること。たとえその人がスペイン人で、英語がまったく話せないとしても、彼はなんとか自分の意思を伝えようとしてくる。明日日光に行きたい、浅草に行きたい。どう行けばいいかという場合もそうですし、部屋のバスタオルがほしいという場合も、ホテルスタッフに伝わるまで何度も手段を変えて伝えようとする。伝わらないとわかると、最後には絵を描いてくる。これがほしいと。なんだ、バスタオルか。それを手渡すと笑っている。

地名などの案内はすべてローマ字で書いて渡します。彼らはそのメモ書きを持って、どこにでも行き、その場でいろんな日本人に見せている。現地でいろんな人の世話になっているのだなあと思いますが、朝出て行って、夜には帰ってくる。

あるとき、台湾人のグループが日帰りで高野山に行くと言い出しました。えっ、そんなことできるの? 日本人はふつう思いつかないスケジュールです。でも、彼ら外国人はJRレイルパスを持っているので、新幹線も安く利用できる。だから、日帰りで行ってこようと考える。実際、彼らは朝6時の新幹線で新大阪に行ったそうです。そこから御堂筋線で難波まで行って、南海電車で高野山へ。おそらく山に登った時間は短かったのでしょうが、深夜になって戻ってきた。 

『どうでした? 行けた?』と聞くと、『行けた。でも疲れた』と言うんです。こちらも、ホントに日帰りできるんだとびっくりしました。これも土地勘がないからできるんでしょうね。でも、彼らはすごく喜んでいましたよ」。

―なるほど。そういう旅をしているんですね。でも、楽しそうですね。

「でも、それが旅行ですから」。

―確かに。一般にシティホテルでは、旅行カウンターがあって、新幹線やフライト、ホテルの手配、オプショナルツアーなど申し込んでくれます。こちらでも旅行の手配をしてあげるのですか。

「京都のホテルでもなんでも頼まれれば取ってあげます。どこそこの行き方を聞かれても、その場でインターネットで調べて教えてあげる。別にお金を取りませんが、できることは何でもするのが仕事だと思っています。

ただ、ヨーロッパの人はすべて予約済みで旅行するのでは面白くない。自分だけのアドベンチャーがしたい。そういう人が多いです。少々うまくいかないことがあっても、それが楽しいという。

パスポートや携帯を紛失した場合でも、日本人は駅員から周りの乗客たちまで一生懸命助けてくれる。日本は車両に置き忘れた携帯が戻ってくる国です。実際に、駅員さんからホテルに電話がかかってきますから。彼らはそういう日本人の姿に感動するみたいです」。

―そのときは、駅ではなくフロントに紛失したことを言ってきたのですね。

「はい、それで駅の紛失係に電話を入れました」。

―大変そうですが、面白そうですね。

「実際、いろんなことが起きます。先日もお酒を飲みすぎて、警察官に補導されてきたお客さんがいました。ろれつが回らず、とにかく休ませて、翌日に旅行会社の人と通訳ガイドが来てもらいました。こんなことは初めてでした」。

―それはご苦労様でした。新宿は飲む場所に困りませんものね。彼らは旅空の下にいるのですから、そういう羽目を外すこともあるのは無理もないと思います。そんな人ばかりだと困るでしょうけれど。
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―ところで、ロビーでPCを見ながら旅行計画を立てている外国客がいますね。館内はWi-fiフリーなのですか。

「Wi-fiフリーはロビーだけで、客室の場合はパスワードを渡しています。国によってはフリーズさせられ、全員が使えなくなることがあるからです」。
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―外国客の方の予約はどういう経路が多いのですか。

「Booking.comやexpediaなどの海外ホテル予約サイト経由です。ただこちら経由で予約した方がリピーターになることは少ないようです。というのは、予約サイトを使うと、手数料が上乗せされるので割高になるからです。実際のリピーターは、自社サイトの英語ページで予約すれば安いことを知っています。

実は、うちは6割以上がリピーターなのです。これは国内海外含めてですが、よく不思議がられます。でも、理由は簡単。長く泊まると割安になるからです。要は、そういう連泊するタイプの旅行者が多いということです。

もし1泊しか利用しないのなら、少し高くても駅に近いなど便利な場所がいい。でも10泊するなら、安い方がいいし、少々駅から遠くても、歩いているうちにおいしいレストランを見つけるなど、楽しみもある。うちには、学生寮みたいに共同トイレ・浴場という安いカテゴリーの部屋もある。でも、これはこれでいいんです」。

―海外予約サイトの登録以外に、何か特別なPRは?

「昔から何もしてないです。

基本的にわかっていることは、いま泊まっているお客さんにちゃんとすること。それが最大のPRにつながると思う。うちがリピーターが多い理由は、お客さんが友だちを呼んでくれているということです。

知り合いに『今度東京に行くんだけど、どこに泊まればいい?』と聞かれたとき、自分の知ってるところを誰でも紹介するものでしょう。これはヨーロッパ人でも誰でも同じなんだと思う。うちに来られるのは、そういうつながりで来た方だと思うんです。

泊まってみて問題なければ、いやなことがなければ、友だちを紹介してくれる。その人がちゃんとした人なら、その友だちも決して問題を起こさない。

手を広げる必要はないんです。たくさん来たところで『満室です』とお断りするようなことになるなら、意味がないですから」。 

―今後についてはどうお考えですか?

「実はうちには外国客とは別に、長逗留している日本の年配の方がいます。地方在住の方で、毎月東京に出てきて1週間10日と滞在される。もと新宿に住んでいた方が伊豆や八王子の老人ホームに移り住んだものの、友達は訪ねてくれない。そこで東京に出てきて、友だちに会ったり、コンサートに行ったりして過ごしていらっしゃる。出張客も減っているいま、将来は元気な老人を相手にする宿泊施設になるのではと思っています。

ホテルは本来、人を集める場所です。ささやかですが、そのために美術のイベントや英語のイベントをやっています。『ひらがなタイムズ』という在日外国人向けの雑誌が主催する英語の交流パーティが毎週金曜の夜にあります。宿泊客は無料なので、参加する人もいます」。

―いろんなことをやってらっしゃるんですね。

「ええ、なんでもやります。実はテレビドラマの撮影も多いんです。ネットで『ロケ地 東京ビジネスホテル』と検索すると、たくさん出てきますよ。

できることは何でもしてしまう。外国のお客さんに対するのと一緒で、私は来るもの拒まず。何でも受け入れるタイプなんです」。 

ちょうどこの話をしていたとき、埼玉が震源地の地震発生。館内もずいぶん揺れました。ロビーにいたフランス人家族が慌ててホテルを飛び出そうとしたので、橋本さんはスタッフを呼びつけ、彼らに「中にいるほうが安全ですよ」と伝えさせました。

―びっくりしたでしょうね。

「地震のない国の人たちからすると、大地が揺れるというのは本当に恐怖だそうですよ」。

そして、橋本さんはそばにいた外国人スタッフに「部屋にいる人に大丈夫と言ってあげて」と伝えました。そのスタッフはベルギー人だそうです。このホテルには、中国系、韓国系など、アルバイトも含めて多くの多国籍スタッフがいます。

東京ビジネスホテルの開業は昭和48(1973)年。もともと地方からの出張客のためのビジネスホテルだったといいます。新宿のビジネスホテル開業のはしりで、当時は京王プラザができたばかり、新宿プリンスホテルはまだなかった時代です。

橋本さんは言います。

「この界隈でも廃れていく旅館が増えているが、いまの時代、個人経営の宿泊施設が生き残るには、浅草でもやっているように、オーナーが英語を話す。小グループの外国客を受入るというやり方しかなかった。これはうちも1990年代からやって来たこと。それしか手がなかったと思う」。

これまでぼくは海外で個人経営のホテルやゲストハウスにずいぶんお世話になってきましたが、橋本さんの話を聞いていると、その世界とよく似ているなと思いました。リピーターのスイス人や台湾人の話がまさにそうです。世界中で起きていることと同じことが、東新宿でも起きていることがわかります。そして、気のおけない宿というのは、オーナーのキャラクターによるところが大きいのは万国共通でしょう。

―訪日客が増えると、いろんなタイプの外国客がやって来る。そのぶん多様なニーズが生まれるけれど、お話を聞いていると、自らがどの層に見合った施設かをしっかり理解していれば、それ相応のやり方で対応できるということなんですね。
 
「たまにお客さんのスケジュールノートを見せてもらうと、ぎっしり書き込んである。それをこなす自分が好き。冒険している気分になれる。まったくことばが通じなくても、どこでも行ける。うちはそういうスタイルの旅人のための宿なんでしょうね」。

東京ビジネスホテル http://tbh.co.jp/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-28 11:55 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)