タグ:FIT ( 95 ) タグの人気記事


2015年 09月 07日

北海道は外客レンタカー受入の全国の先駆けです

外国人観光客のレンタカー利用件数で、沖縄県に次いで多いのが北海道です。我々日本人が北海道を旅行する際、レンタカーなしで移動というのは考えられないわけですから、外国客にとっても事情は同じなのです。

一般社団法人 札幌レンタカー協会によると、北海道における外国客のレンタカー利用件数は、2014年度(14年4月~15年3月)で2万4243件、前年度比●%増となっています。

国籍別にみると、トップが香港で9579件(全体の約40%)を占め、次いで台湾4497件、シンガポール1948件、韓国1892件、タイ1395件、オーストラリア1052件、ヨーロッパ1051件、アメリカ814件と続きます。沖縄県と比べると、総件数は3分の1以下ですが、台湾、香港、韓国が全体の9割を占める沖縄に対し、シンガポールやタイ、欧米系の利用も多く、多国籍化が見られます。

一般社団法人 札幌レンタカー協会事務局
http://sapporo-renta.com/

同協会事務局の下山久美事務局長によると、「2015年度に入っても伸びは前年比180%と好調」とのこと。

沖縄県同様、こうした伸びの背景には、訪日外国人来道者数の拡大があります。

北海道経済部観光局が15年8月に報告した「北海道観光入込客数調査報告書(平成26年度)」によると、2014年度の訪日外国人来道者巣は、154万1300人と過去最高で、前年度比33.7%増となっています。

北海道観光入込客数調査報告書(平成26年度)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/toukei/H26_irikomi_honpen.pdf

国・地域別にみると、トップが台湾47万2700人(30.7%)で、次いで中国34万人(22.1%)、韓国20万1100人(13.0%)、タイ12万8300人(8.3%)、香港12万200人(12.0%)となっています。この数字をみると、来道した約12万人の香港人のレンタカー利用が約1万件。実際にはファミリー利用が多いことを考えると、香港人の北海道でのレンタカー利用率はかなり高いことがわかります。

数のうえでは沖縄県に比べると見劣りのする北海道ですが、外客の受入態勢の構築のプロセスをみると、全国に先駆けた取り組みを続けてきたことで豊富なノウハウを有しています。

北海道では香港人を中心に早い時期からレンタカー利用が見られていましたが、広範囲に観光地が広がっている地域の特性上、旅慣れた外国人観光客にとってレンタカーは不可欠の足でした。

北海道の本格的な取り組みは2007年9月から台湾人の国内での運転が可能となったことから始まります。

同年4月に北海道外国人観光客ドライブ観光促進連絡協議会が設立されますが、実はその前年の06年12月、喜茂別町で外国人ドライバーの交通死亡事故が発生しています。冬場の凍てついた道路を運転することにアジア客が慣れていないのは当然ともいえますが、外客の利用促進のためには、冬道の安全運転の啓発は欠かせません。こうした事情から、外国客に安全・安心してドライブ旅行を楽しんでもらいための受入態勢の構築のための調査やノウハウの啓蒙が進んだと考えられます。

たとえば、2009年には国土交通省北海道開発局が以下の外国人向けのドライブハンドブックを作成しています。
b0235153_1203611.jpg

「北海道ドライブまるわかりハンドブック」5カ国語(日本語、English、中文・繁体字、中文・简体字、한국어)対応
http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/handbook.html

その目次を以下記します。北海道でドライブするとき、起こりうるトラブルをわかりやすく解説しています。

 はじめに ~外国人観光客の皆様へ~
  北海道ドライブ観光へ出発するまで
 第1章.北海道でドライブをしよう!
  1-1.北海道の広さ
  1-2.北海道、四季の魅力
  1-3.北海道、各地の魅力
  1-4.快適ドライブのまめ知識
  1-5.ルールとマナーは必ず守ろう!
 第2章.レンタカーを予約しよう!
  2-1.レンタカーサービスの基本情報
  2-2.カーナビの使い方
 第3章.知っておきたい交通ルールとワンポイントアドバイス
  3-1.北海道をドライブするその前に
  3-2.これだけは知っておこう!日本の交通ルール
  3-3.高速道路を利用しよう!
  3-4.ガソリンスタンドの利用法
  3-5.冬道ドライブは慎重に!
 第4章.こんな時はどうするの?
  4-1.もしも、交通事故や違反のトラブルが起きたら
  4-2.もしも、ケガや病気のトラブルが発生したら
  4-3.もしも、天気によるトラブルに見舞われたら
  4-4.もしも、車が故障したら
  4-5.もしも、野生動物にぶつかったら
 資料編
  <その1>いざという時のための指差し会話集
  <その2>関係機関の連絡先とwebサイト一覧
  <その3>お役立ち資料

さらには、地域が外国人ドライバーを受け入れるための基本的な認識やノウハウをまとめた解説集も作成しています。

外国人ドライブ観光客 誘致・受入事例解説集
http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/yuuchi.html

はじめに 
 第1章.主な外国人ドライブ観光客の特性等について
 第2章.外国人観光客が、北海道でドライブ観光を行う際(事前/滞在中)に必要としている情報や対応について
 第3章.各地域の取組の事例
 第4章.本道関係各機関における既往の取組について~発信情報の内容や多言語対応の状況~
 最後に

この解説集には、北海道の主要なレンタカー利用客である台湾、韓国、香港、シンガポールの来道目的や移動形態の傾向、運転週間の違いなどを以下のように説明しています。

たとえば、台湾の項には「日本の「止まれ」の標識は国際基準と異なり、理解されにくい。台湾では、制度上は一時停止の義務はあるものの、見通しがよい場合は一時停止をする車はほとんどいない(踏み切りについても同様。台湾の高速道路では、走行車線・追越車線の区別がない。矢印信号は台湾にはないため、とまどってしまう)とあります。

また韓国の項には「日本とはハンドルが逆ではあるが、標識や交通ルールは似通っている。見通しのよい踏み切りなどではつい一時停止を怠りがちである。韓国では一般道でも時速80kmまで出せる道路もあり、高速道路の最高時速は110㎞。「止まれ」「徐行」の標識の意味がわかりにくい」。

香港の項には「日本と同じ左側通行であるが、赤信号でも左折フリーの国である。横断舗装以外では「歩行者優先」というルールはなく、車が優先される。一般道路の最高時速が70㎞であるためか、北海道をドライブして「スピードが遅すぎる」と感じるドライバーもいる」。

これは実際の外国客にヒアリングしてまとめたものですが、それぞれお国事情が違うため、日本でのドライブは勝手が違うところがありそうです。こうしたバックグランドの異なる外国客が日本でドライブするわけですから、関係者はこれらの違いを認識しておく必要があるでしょう。

このマニュアルを作成するために北海道では以下の調査を行っています。

北海道における外国人ドライブ観光の推進方策検討調査(概要版 平成20年)
www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/03.pdf

こうした全国に先駆けた調査は、今後レンタカー利用が増えるであろう全国各地の関係者にとって貴重な情報提供となっています。

札幌レンタカー協会では、冬場の事故防止のため、外国客向けにチラシを作成しています

今後は、全国で北海道の事例を学べ、という機運が高まっていくだろうと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-09-07 12:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 09月 06日

海外客がTocoo!でレンタカーを予約する理由

海外個人客のホテル予約は、エクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトの利用が普及していますが、同じことはレンタカー予約でも起きていました。

個人客が航空券とホテルを手配した後、日本での移動の手段としてレンタカーを利用する動きは、これまで見てきたように、香港や台湾、韓国、タイ、シンガポールなどのアジアを中心とした訪日旅行者の間で急速に進んでいます。

外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています(ニッポンレンタカーに聞く)
http://inbound.exblog.jp/24799845/

国内のレンタカー事業者は、それぞれ予約サイトの多言語化を進めていますが、やはり各事業者の情報を横断的に閲覧でき、利用者の細かいニーズに対応したサービスを提供する予約サイトが重宝されるのは当然でしょう。

その第一人者が、レンタカー予約サイトのTocoo!です。
b0235153_1281039.jpg

Tocoo!(中文版)
http://www2.tocoo.jp/cn

同サイトを運営しているのは、1997年創業のクーコム株式会社で、もともと有料会員制の宿泊予約サイトでした。同社は2000年代の早い時期から海外客向けのレンタカー予約サービスを開始しています。同社の牛田隆夫取締役に話を聞きました。

―いつ頃から海外客向けサービスを始めたのですか。

「2003年頃からです。弊社にアメリカ留学体験者がいて、早い時期から海外のお客様を日本に呼び込むインバウンド事業に取り組もうという考えはありました。そのときから、ホテルだけでなく、レンタカーもやろうかと思っていました。

当時宿の世界は保守的で、外国人を泊めるなんて、という声が多かった。レンタカー業界も同じで、当時レンタカー会社に海外客の予約サイトを立ち上げる話をしたとき、外国人なんかには貸せないよ、という感じでした。

なぜですか? とこちらは思うわけです。では、外国人が国際免許証を持ってカウンターを訪ねたとき、あなたたちは貸さないのですか? と聞くと、いや、そんなことはないと答えました。だったら、始めてみよう。こうしてなかば強引にスタートさせたのです。

ネットの社会というのは、世界中から見られるのです。言語を日本語から英語にすれば、日本に来るお客様もレンタカーを使う可能性がある。当時はまだ「観光立国」という言葉が使われ始めたばかりでしたが、私は今後絶対そうなると思っていた。

すでに2001年から国内客のレンタカーの予約サイトを始めていました。それ相応の取引があったので、レンタカー会社も当社をおろそかにはできない。まずはサイトの英語化から始めました。

誰かが強引に走り出さないと日本の社会は動かないんです。とはいえ、急に利用者が増えるというわけではないから、細々と始めることにしました」。

―2003年当時の予約状況はどうでしたか。

「当初は月に数台程度。予約が入るたびに、電話で確認したことを覚えています。

海外で認知度がなければ、そもそもサイトを見つけてもらえないわけですから。その後、実際に日本で利用した外国客がブログで紹介してくれたりして、徐々に利用が増えてきました。

これまでPRにお金を使ったことはほとんどないんです。唯一かけたのが、米国版のYahoo!のデイレクトリーに載せるため。当時は「Japan car Rental」にエントリーされているサイトがひとつもなかったんです。そこに載せるのに2万円かかりました。それだけです」。

―いつ頃から海外客の予約が増えてきたと感じましたか。

「2007、8年くらいから。この頃から月100台を超えるようになりました。11年の震災の前には、海外が国内を逆転する勢いになっていました。いまでは国内予約より海外予約のほうが圧倒的に多い。震災直後は半年分の予約99%がキャンセルとなったので、東電は保証してくれました」。

―最近の予約状況はいかがですか。

「国籍でいうと、ほとんど東南アジア。香港、台湾、韓国、シンガポール、タイなど。売り上げは前年比90%増です。国数でいうと60カ国がすでに利用していますが、半分以上が中国語圏。2007年9月に台湾人のドライブが可能となったことを機に中文版を立ち上げ、その後すぐにハングル版も始めました」。

―国内のどのエリアの利用が多いですか。

「全体の3割は北海道。でも、最近は関空や中部国際空港利用も多い。雪を見るために、名古屋から高山や白川郷に向かう人が増えています」。

―大阪のレジャーホテルの話では、ロードサイド店に関空からレンタカーで直接来てチェックウインするそうです

「そうでしょう。その場合はうちのサイトを利用されている方が多いと思います」。

―海外客の実際の利用状況はどうですか。国内客との違いはありますか。

「まず一回あたりのレンタル料金が国内客の3倍近い。利用日数の平均は、国内は2.5日で海外は5日。海外客の特徴は、ワンボックス車が人気で、乗り捨て利用が多いこと。なかには札幌で借りて大阪で返す人もいる。中華系が多いのでファミリー利用が多い。レンタル料金の単価が上がるのは、乗り捨てが多いからでもある。

当社ではETCを貸し出ししています。カードは空港のカウンターか初日に泊まるホテルに送ります。回収用の封筒を付けて戻してもらうのですが、回収率は100%。問題はありません。

ETCを貸し出すことで、海外のお客様がどんなルートを走っているか解析できます。たとえば、御殿場や河口湖で高速を乗り降りする人が多いとか。こうしたデータを持っているのはおそらくうちだけですが、海外客は首都高速も平気で乗っているし、日本各地を普通に運転されていることがわかります。

ご存知のように、アジアの交通事情はめちゃくちゃで、一般の日本人はまず運転できません。でも、日本には無茶な運転をする人はほとんどいないので、彼らにすれば楽勝なんです」。

―車はたいてい空港で借りるんでしょうか。

「いやいや、そうでもない。空港からダウンタウンに来てホテルで一泊して、翌日にホテルの近くで借りるのが40%。空港は39%で残りの2割は駅など」。

―客層はどうですか。

「海外客でレンタカーを借りる人は圧倒的に富裕層ですね。アンケートをすると、年収は1億円以上もたくさんいます。約50%が年収1000万円以上。だから、単価が高い。車のグレードがよければ喜んで利用される。アルファード(トヨタの大型ミニバン高級車)とエルグランド(日産のワンボックス型ミニバン)があれば、確実にアルファードを選ぶ。海外客はキャンセルチャージも100%回収している。はっきり言って、金払いは海外客のほうがいい。

実際、国内客の場合は安くしないと売れないので、海外客のほうが儲かります。レンタカー料金も20万~30万使う人はたくさんいる。しかも、当社の海外利用客の7割はリピーターです」。

―海外客からはどんな要望がありますか。

「クレームとして多いのは「日本のカーナビは古い」という声です。日本では一般にカーナビは3年で交換する。そんなに新しい道路がどんどんできるわけではないのになぜ? と思って調べたら、いろんなことがわかってきた。一般に日本のカーナビは施設の電話番号で目的地が登録されている。その場合、温泉旅館は問題ないが、最近アジア客に人気のフルーツ狩り農園や漁港などは見つからないことが多い。日本人なら電話番号がダメなら、施設名や住所で探せるが、アイウエオがわからない海外客はお手上げになる。実は、もうひとつの検索手段として、緯度経度でコード化されるマップコードで探す方法がある。だだし、このサービスは多言語化しておらず、海外のお客様は調べられない。そこで、我々は有料でマップコードを教えるサービスをやっています。

もうひとつはホテルへの配車サービス。都内の高級外資ホテルの宿泊客は富裕層だから、予約のついでに配車してほしいという声がある。だが、残念ながらレンタカー会社の中にはこうしたサービスに対応できないケースが多い。

だったら、手数料をとって配車したらどうか。ホテルの玄関で車と鍵を渡すだけのこと。料金は事前決済なのだから。富裕層相手に配車手数料2000円は全然問題ない。今後、レンタカー会社とホテル側と協議して進めたい。

一般に日本のレンタカー会社が用意しているのは、国内市場に合わせたコンパクトカーが多い。富裕層はこの種の車にはまず乗らない。2000ccクラスの車をもっと用意すべきではないか」。

―海外客のニーズやマーケットの動向を詳しく知る立場にある御社としては、今後どんな展開を考えておられますか。

「これからますます海外客が増えると思う。政府が外客誘致を進めているわけだから、増えるにきまっている。いまから30年前、ハワイに日本の農協などの団体がどんどんツアーで行っていたが、いまは団体で行く人はいない。同じように、訪日旅行もリピーターが増えていくと、同じことが起きる。

今後は海外個人客の足をどうするかがいちばんの問題になる。いまは大都市圏には海外客は多いが、伊豆半島や房総の先にはまだ来ていない。東京のホテルは潤っているが、伊豆半島はそうではない。我々の役目は、そこにお客さんを送ることだと考えている。

やはり二次交通が重要なのです。いくら地元をPRしても足がなければお客さんは行けないのだから。

いま団体ツアーのバス不足問題が起きています。この問題はしばらく続くと思う。訪日外国人全体の7割はエージェント経由。団体でバス利用が多いから不足が起こるのだが、今後はエージェント経由で個人もレンタカーという時代になるでしょう。そこで、いま海外のエージェントにBtoBで我々を利用してもらうよう話を進めています。

実は、すでに海外のエージェントからも予約が入っています。当社のようなサイトを使ってエージェントが代理予約しているケースが見られるのです。であれば、門戸を広げると、もっと使いやすくなるのではと考えています」。

―レンタカー予約の次は何を考えておられますか。

「これから外客向けの宿泊予約サービスを始める予定です。現在、一部の日本の旅行会社は海外サイトに客室を供給し、販売してもらっているようだが、それはまずいと思う。結局、販売力のある者だけが生き残るのだから。エクスペディアやBooking.comに日本側から対抗する動きがないとおかしい。我々は小さいながらそれに取り組む考えです。

もともと当社は国内向けの会員宿泊予約サイトをやっていました。ですから、まずはリピーターの海外のレンタカー利用客にホテルも予約してもらうという流れです。我々の強みは、ただホテルを紹介するだけでなく、足も提供できること。そうやって、地方の旅館に外客を送り込めるようにしたい。それが本来我々のやるべきことだと思う。

旅館側も、外国人なんて、と言っている時代ではない。どんどん取り込むべきです。

今後は外国人の消費を増やさないとしょうがない。いかに彼らに気持ちよくお金を使わせるか。その際、安売りすべきではない。おもてなしをしつつ、きっちりお金を取るべきです」。

レンタカー市場の内実をいちばんリアルに理解しているからこそ、次の手が打てる。Tocoo! の今後の展開は要注目です。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-09-06 12:08 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 09月 05日

外客のレンタカー利用件数日本一の沖縄でいま起きていること

沖縄県は、外国客のレンタカー利用件数が全国一です。

一般社団法人 沖縄県レンタカー協会によると、過去2年の県内の外国客のレンタカー利用状況は以下のとおりです。13年度から14年度にかけて2.3倍の勢いで増えています。

2013年度(13年4月~14年3月)
3万6919件(台湾1万1138件、韓国1万1937件、香港1万1670件ほか)

14年度(14年4月~15年3月)
8万5323件(台湾2万8096件、韓国2万7764件、香港2万3463件ほか)
※国別比率は台湾(33%)、韓国(同)、香港(27%)で、9割以上を占めた。

一般社団法人 沖縄県レンタカー協会
http://www.mco.ne.jp/~oki-ren/

協会関係者によると、14年度の急激な伸びは「外国客の急増にあり、円安や台湾、韓国、香港などの近隣諸国からのLCCをはじめとした新規就航や増便が相次いだことにある」といいます。

確かに、沖縄県の統計によると、2014年度に沖縄を訪れた外国客は98万6000人と過去最高で、前年比57.2%増と全国平均を超えています。国内客も含めた観光客数が716万9900人(これも過去最高)なので、外客比率は約14%です。

国籍別の動向については、以下のように分析されています。

●台湾
台北-那覇路線、高雄-那覇路線で新規就航・増便等があり、空路客を中心に増加。過去最高であった昨年を上回り、初の30 万人台となった。

●韓国
年度後半において、アシアナ航空・ジンエアーの増便、韓国LCC2社の新規就航があり、ソウル-那覇路線が拡充、重点市場の中で最も高い増加率となった。

●中国本土
新規路線の就航や春節時期の大幅な入込もあり、過去最高となった。クルーズ船の寄港により、海路客も増加した。

●香港
香港航空の香港-那覇路線が増便したことや、ピーチアビエーションの香港-那覇路線の新規就航等により、空路客を中心に増加し、過去最高となった。

平成26年度沖縄県入域観光客統計概況
http://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoseisaku/kikaku/statistics/tourists/h26-f-tourists.html

その勢いは2015年度に入っても続き、たとえば最新の15年7月の統計によると、単月の外国客数は16万3000人(前年同月比76.6%増)で、外客比率は22.8%。つまり、沖縄を7月に訪れた観光客のうち、4人に1人近くは外国客だったといえるのです。そのうち、中国を除く台湾、韓国、香港の人たちがメインの利用者というわけですから、外客のレンタカー利用が増えるのも当然でしょう。

旅行業界誌の週刊トラベルジャーナル2015年4月6日号はこう指摘しています。

「沖縄県によると、外国人観光客のレンタカー利用率は32.7%に達している。国内客の56.9%には及ばないものの、3人に1人がレンタカーを利用している計算だ。しかも、これはレンタカー利用できない中国人観光客を含めた割合。国・地域別で見ると、訪沖縄旅行者に占めるレンタカーの利用者率は香港47.3%、韓国40.3%、台湾22.2%。香港からの来訪者はほぼ半数がレンタカーを利用する状況にある」。

沖縄を代表する旅行会社である沖縄ツーリストが運営するOTSレンタカーに電話で話を聞きました。お話してくださったのは、同社の中村靖常務取締役です。

OTSレンタカー
https://www.otsrentacar.ne.jp/

―沖縄県の外客のレンタカー利用がこれほど増えてきたのはいつ頃からでしょうか。

「顕著になったのは2011年頃からだと思います。それ以前にも香港客の利用はありましたが、沖縄は台湾からフライト1時間、ソウルから約2時間、香港から2時間半という位置にある。この3国・地域で外客レンタカー利用の9割を占めます。今後も増えていくと思います。
b0235153_1565276.jpg

弊社では2006年から台北に事務所を置き、将来の需要を見越してレンタカー予約の受付も始めていました。それから徐々に予約サイトの多言語化も進め、台湾や香港の方はそのサイト(繁体字版)経由で予約を入れられます。07年には臨空豊崎営業所に4か国語対応のドライブシュミレーションを設置しました。また09年には全国初めて4か国語対応のカーナビを導入しています」。

臨空豊崎営業所
https://www.otsrentacar.ne.jp/okinawa/office/toyosaki.html

―こうした早い時期からの受入態勢の整備があってこそ、ここ数年の急増に対応できているのですね。今年度に入っての利用状況はいかがですか。

「160%増といったところです」。

―その一方、沖縄でドライブする外国客が増えると、事故や渋滞も指摘され始めているようですね。

外国人増で対策強化 県レンタカー協、事故防止へ注意喚起(2015年6月13日 琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-244232-storytopic-4.html
2014年度は8万5323件で、前年度比の約2・3倍。事故件数は2901件で、事故率は3・4%。(県レンタカー)協会では本年度から、英語版に加え、繁体字と韓国語版のドライブマップを新たに作製、運転上の注意点や県内の事故多発交差点などを紹介し、注意喚起を図っている。

標識読めない、慣習違い…外国客のレンタカー高い事故率(2015年6月16日 沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=120008

「これだけ利用が増えると事故が増えるのは当たり前です。事故といっても、ミラーを擦ったり、交差点で左折や右折のルールを間違えたりといったケースが多いです。海外では日本と交通標識やルールが違うところがあり、今後は防止策にも力を入れていく必要があります。

外国のお客様がもし事故を起こしたときは、自動車保険も手厚く安心パックに入っていますし、JAFのサポートもしっかりしています」。

(参考)
訪日観光客の急増で外国人ドライバーが増加中
交通事故やトラブルのリスクも増大か
http://www.bang.co.jp/cont/column-20150624/
「それでは万が一、外国人観光客が運転する自動車と事故を起こしてしまった場合、自動車保険の補償はどのようになるのでしょうか。

外国人が観光などを目的に車を運転する際は、レンタカーを利用するのが一般的。レンタカーには「対人賠償保険」「対物賠償保険」などがあらかじめセットされていることが大半なので、「相手方が任意保険に加入しておらず、損害賠償能力がない」といった事態は避けられそうです。

自分が加入している自動車保険の使い方は、相手が日本人でも外国人でも同様です。事故現場での示談はせず、まずは保険会社に連絡すること。保険会社と相談しながら事故処理を進めていくといいでしょう」。

―今後はどんな新しい取り組みを始めていかれるのですか。

「これからはただ車を貸すというのではなく、お客様に地元で喜んでお金を落としてもらうしくみをつくっていかなければならないと考えています。Wifiルーターの貸し出しを始めたところ、好調です。やはり外国客の方にとってwifiは欠かせないものですね。
b0235153_1581338.jpg

Wifiルーターの貸し出し
https://www.otsrentacar.ne.jp/okinawa/campaign/wifi.html

弊社では『沖縄もっとトリップ 北部東海岸エリア編』というドライブマップを作成し、国道58号線の走る西海岸だけでなく、東海岸にも足を伸ばしてもらうよう働きかけています。最近では、これまで外国客が訪れることの少なかった東海岸の泡瀬漁港(沖縄市)の海鮮食堂にさしみを食べに行かれる話などをよく聞くようになりました」。
b0235153_1583123.jpg

b0235153_1584373.jpg

沖縄市漁業協同組合/パヤオ直売店
沖縄市泡瀬1-11-34 泡瀬漁港内
http://kozaweb.jp/venue/detail.html?&sp=true&category=1&id=220

沖縄県では官民挙げて外国客のレンタカー利用を進めているようです。さらに詳しい取り組みや事例については、以下を参照ください。

観光ガイド冊子、レンタカー用沖縄ロードマップ“英語版/中国語版/韓国語版”完成~ECLIPSEイクリプスの多言語対応カーナビとの連携で、外国人レンタカーユーザーの利便性を向上
https://www.fujitsu-ten.co.jp/release/2014/04/20140415.html

外国客運転一目で判断 ステッカー導入へ 沖縄県レンタカー協会 (8月8日沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=127698
b0235153_1525725.jpg

「(沖縄)県内におけるレンタカー需要の動向」 (2014年10月30日りゅうぎん総合研究所)
http://www.ryugin-ri.co.jp/wp-content/uploads/2014/10/1410kennnainiokerurenntakajyuyounodoukou.pdf

【追記】
ところが、その後、こんなニュースが届きました。

中国人観光客がレンタカー? 法律では運転不可だが・・・(沖縄タイムス2016年6月1日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=171005&f=i

沖縄県の2015年度外国人観光客実態調査の概略報告(速報値)によると、県内旅行中に利用した交通機関について、中国人観光客の17・7%が「レンタカー」と答えた。中国の免許証で日本国内を運転することはできない法制度になっており、実態把握が必要とみられる。

調査は、那覇空港や新石垣空港で15年度に計6回、県内旅行中に利用した交通機関をたずねた(複数回答可)。中国客は、13年度に6・3%、14年度に8・2%がレンタカーを使ったと回答。県は「背景について関係者と話し合いたい」としている。

外国人が日本国内で運転する場合、(1)日本の免許証(2)ジュネーブ条約に基づく国際免許証(3)国際免許証を発給していないが日本と同等水準の免許制度を持つ国や地域の免許証-のいずれかを持っている必要がある。中国の免許証は(2)や(3)に含まれないため、国内の事業所でレンタカーを借りることはできない。

県レンタカー協会の白石武博会長は今回の調査結果について、第三者が借りたレンタカーに中国人観光客が有償または無償で同乗しているケースが考えられるとした上で、「中国人観光客の間でも個人旅行のニーズは高まっている。タクシー運転手の語学力や通訳士の数を考慮すると対応がニーズに追いついていない」と指摘している。

記事によると、「第三者が借りたレンタカーに中国人観光客が有償または無償で同乗しているケースが考えられる」そうです。今後の実態の解明を待つことにしましょう。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-09-05 15:10 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 09月 04日

海外客が羽田でレンタカーを利用するまでの流れとは

外国人ツーリストが羽田空港からレンタカーを利用するまでの流れは、我々日本人の場合と若干違うところがあります。
b0235153_1701486.jpg

日本人の場合、第一、第二ターミナルにある各社別のレンタカーカウンターに向かうことになりますが、外国人の場合、国際ターミナルの到着フロアのゲイトに向かって右側にあるレンタカーカウンターに向かいます。
b0235153_1702480.jpg

リムジンバスの発券所の隣に、オリックスレンタカー、トヨタレンタカー、Hertz、日産レンタカー、ニッポンレンタカー、Times Car RENTAL、Europcarの合同カウンターがあります。
b0235153_1703888.jpg

事前にレンタカー予約した外国人は、ここで予約の照会をすませると、1階の「乗車レーン」まで歩き、レンタカー会社の用意した車に乗せられて、営業所に向かいます。「乗車レーン」は国際ターミナルの到着ロビーから京浜急行線の向こう側にあります。
b0235153_1711831.jpg

今回、ニッポンレンタカーの協力で、羽田営業所に向かいました。移動時間は約10~15分です。
b0235153_1705964.jpg

ニッポンレンタカー羽田営業所の佐藤大助サブマネージャーに話を聞きました。
b0235153_1712995.jpg

―羽田営業所での外国客のレンタカー利用はいつごろから増えてきましたか。

「2014年3月30日の国際線の大増便あたりからではないでしょうか。最近では、香港や韓国のお客様を中心に毎月70組以上の利用があります。特に1~2月の旧正月のシーズンは香港の方が多いです。また最近、タイの方も増えてきました」。

―外国客がレンタカー利用の手続きをする際、何が必要ですか。

「パスポートと国際免許証の写しが必要です。手続きは10分程度で、国内のお客様の場合とそんなに変わりません。ただし、外国客は羽田で乗って成田で乗り捨てというケースも多いので、お返しの日時と場所をしっかり確認します。お乗りになる前に、事故の連絡先や営業所の近くのガソリンスタンドのMAPをお渡しします。今後は事故防止のためのガイダンスを作成し、お渡しする予定です」。

―外国客には日本での運転のポイントとしてどんなことを伝えていますか。

「事故の際の対応と駐車禁止についてです。事故といっても接触事故などがほとんどですが、帰国されてしまうと処理ができなくなりますから。また特に都内の道路は駐車禁止が多いので、そのことも伝えます。給油に関してもたまにトラブルが起きます。たとえば、レギュラーのかわりになぜか灯油を入れてしまい、車が動かなくなったこともありました」。

―一般に外国客の利用期間は国内客より長いそうですね。人気の車種はありますか。

「そうですね。平均1週間くらいです。外国客に人気の車種はフィアットとかワゴン車です。特に家族で利用される方に人気です」。

首都圏における国内客のレンタカー利用は圧倒的にビジネス利用で、レジャーは少ないようです。その点、外国客はレジャー利用が多い。最近の若い世代の免許証取得比率の減少などで国内市場が縮小していく中、レンタカー業界も外国客の取り込みが重要になっています。国内市場を外客で補いつつ、国内の道路システムの維持を図り、さらにはユニバーサルなシステムに徐々に転換していくためだそうです。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-09-04 17:01 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 09月 02日

「香港はインバウンドの実験室」:世界に先駆けレンタカー旅行をPR

訪日外国人の増加にともない、レンタカーの外客利用が増えていますが、なかでも香港人の利用は早い時期から始まっています。
b0235153_13234728.jpg

外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています(ニッポンレンタカーに聞く)
http://inbound.exblog.jp/24799845/

今年1~7月の香港からの訪日客数は85万300人で、前年同期比66.0%増。中国本土客(275万5500人 前年同期比113.8%増)に次いで高い伸びを見せています。

なぜこれだけ増えているのか。日本政府観光局香港事務所の資料によると、以下の3つの理由を挙げています。

①親日的な素地:世界最大の日本産農水産物の輸出先
②好調な香港経済と物価上昇:円安も相まって、日本は「お買い得」
③LCCを中心とした座席供給量増加:ヘビーリピーターの存在
b0235153_13183152.jpg

さらに、香港の訪日市場の特徴は以下のとおりです。

・2014年の訪日香港人旅行者数:92万5975人(24.1%増)
・国・地域別訪日外客数:5位(2013年)→4位(14年) ※米国を抜く
・人口に占める訪日客数の比率」10人に1人(13年)→7.8人に1人(14年)
・日本国内滞在先の「西高東低」傾向の深化 ※首都圏に偏る国が大半の中、香港のユニークさが光る。
・香港物価高騰、円安継続→買い物の魅力向上による訪日旅行意欲の高まり
・訪日市場に対する「占中(民主化デモ)」の影響はなし

上記の点は、以下のデータから理解することができます。

まず「関西、九州、沖縄のシェアの拡大」。日本のインバウンドがいま最も必要としている「訪問先の分散化(多様化)」が見られます。
b0235153_13184712.jpg

次にリピーターとFIT(個人旅行)比率の高さです。訪日10回以上が21.4%、過半数が4回以上です。FITも75.2%。韓国に次いで高い比率です。

こうしたことから、香港は訪日旅行の最先端市場といえます。日本を訪れる外国客の中で、台湾と並んで最もアクティブかつ成熟した旅行を楽しんでいる人たちなのです。

そんな香港人の日本旅行の必須アイテムとなりつつあるのが、レンタカーというわけです。日本政府観光局(JNTO)香港事務所では、2012年からレンタカー利用促進のプロモーションを始めています。これは世界を先駆けての取り組みです。

香港のレンタカー利用促進を手がけてこられた前香港事務所長の平田真幸さんに話を聞きました。

―2012年度に開始した取り組みについて教えてください。
b0235153_13254448.jpg

「『Rail & Drive』と名付けた香港市場に特化したプロモーションです。香港の旅行会社は早い時期からレンタカー付きの宿泊ツアーを催行していましたが、私が香港に赴任した当時は、震災後の訪日客の落ち込みをリカバーするための施策が求められていました。リピーター8割、訪日10回以上が20%超という成熟市場の香港で、他国・地域(韓国、台湾、タイ、シンガポール)との差別化として何ができるか。

ひとつは鉄道旅行。ただし、新幹線ではなく、観光列車。香港市場へのアンケートによると、「日本を鉄道旅行したい」93%、「自然風景が楽しめる列車に乗りたい」83%、「ジャパン・レールパス利用経験なし」61%というデータがあったからです。

もうひとつがドライブ旅行。これも同じアンケートで「日本でドライブ旅行をしたい」67%、「好きな場所に旅行できる」75%というデータがあった。しかも、香港の免許所持者は約200万人。自家用車台数約52万台。とはいえ、あの狭い都市では、免許と車があっても自由気ままにドライブ旅行を楽しむことは難しい。だったら、日本で楽しんでもらえばいい」。

―こうして開始したのが『Rail & Drive』プロモーションだったわけですね。
b0235153_1326413.jpg

「競合国との差別化も込めて『a different Japan Rail & Drive』というキャッチフレーズで今年度まで続けられています。香港からの訪日客は増えていますが、乗り入れ空港は主要7空港のみです。成熟した香港客の訪問地をさらに多様化させるためには2次交通がどうしても必要です。そこで、香港市場のニーズに合わせてご当地グルメやショッピングシーンも盛り込みながら、シーズンごとに全国各地のドライブ旅行と観光列車のビジュアルイメージを打ち出しました。

香港はまさにインバウンドの実験室。新しい訪日旅行シーンは香港から生まれているのです」。

日本政府観光局(JNTO)香港事務所
http://www.welcome2japan.hk/

2015年は四国、中部・北陸を重点ディスティネーションに設定したPRを実施しています。
b0235153_13205928.jpg

こうしたプロモーションの結果、香港人のレンタカー利用は増えています。現状では、沖縄県と北海道での利用が圧倒的なシェアを占めるようですが、今後は首都圏、中部、関西圏、福岡などの大都市圏を中心に利用が広がっていくものを思われます。

香港の皆さんには、もっとレンタカーを利用して、日本のさらなる奥地へと旅立ってもらいたいものです。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-09-02 13:21 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 08月 18日

外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています(ニッポンレンタカーに聞く)

訪日外国客の増加にともない、外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています。
b0235153_13133542.jpg
ぼくも、昔ハワイでレンタカーを運転したことがあります。ふだん乗らないアメ車に左ハンドル。地元の車に囲まれながら、どこまで行っても初めての道を走るという緊張感の中、ホノルル郊外のハイウェイを乗り継ぎ、ノースショアの海岸線が見えてきた頃には、運転にも慣れ、気分はサイコ―でした。

最初はちょっと緊張するけど、やってみたらたまらない海外でのレンタカー運転。同じことは、日本を訪れる外国人ツーリストだってやってみたいに決まっています。

そこで、これからしばらく外国客のレンタカー利用事情について取材しようと思います。最初に話をお聞きしたのが、ニッポンレンタカーサービス販売促進部国際営業課の白井祐子さんです。

―外国客がレンタカーを利用するようになったのはいつ頃からですか?

「増えて来たなと感じるようになったのは、2013年頃からでしょうか。実際には、北海道では2000年代から外国客のレンタカー利用促進のための取り組みは始まっていましたし、沖縄でも早くから進んでいました」。

―確かに、北海道と沖縄では外国客のレンタカー利用が進んでいる印象がありますね。それ以外の地域や国籍別の利用状況はいかがでしょうか。

「まず国籍別の利用状況は、弊社の場合、1位は香港、2位は韓国または台湾、4位タイ、5位アメリカまたはオーストラリアといった感じでしょうか。外国客利用は対前年度比で約200%増です。ただし、全体の外客比率はまだ5%というところでしょうか。

沖縄と北海道の利用数が多いことは確かですが、最近では関西国際空港や中部国際空港からの利用も前年度の2.5倍の勢いで増えています」。

※外国客のレンタカー利用がダントツに多い沖縄と北海道の利用件数(両県のレンタカー協会調べ)は以下のとおり。

沖縄 8万5323件(前年度比2.3倍 2014年4月~15年3月)
北海道 2万1318件(前年度比33%増 2013年12月~14年11月)

―国内客と外国客ではレンタカー利用状況の違いはありますか。

「一般にいえることは、外国客は平均約4日、単価も4万円。日本人より利用日数が長く、単価も高いという特徴があります。平日利用も外国客が多いです」。

―車の好みの違いなどありますか。

「外国客の方は、家族やグループ旅行も多いため、ワゴン車の利用が多いです。またプリウスなどのハイブリッド車やアイサイトの使えるスバル車など、日本オリジナルの車種に人気があります」。

スバル アイサイト総合サイト
http://www.subaru.jp/eyesight/

―やはり空港のカウンターから利用されるケースが多いのですか。

「確かにそうですが、最近では都内のレンタカー店での利用も増えています。特にホテルの多い地区、浅草などから利用される場合もあります」。

―ところで、外国客がレンタカーを利用する際、必要なのはなんですか。

「パスポートと国際免許証です。空港のレンタカーカウンターで直接申し込まれる方もいますが、基本的には事前予約が多いです。現在、弊社では日本語と英語のサイトしかないのですが、TOCOO!という英中韓3カ国対応のレンタカー予約サイト経由の申し込みも増えています」

TOCOO!(レンタカー 中国語ページ)
http://www2.tocoo.jp/cn

―レンタカーを利用した外国客からはどんな声が寄せられていますか。

「カウンターの現場からは、日本の運転はとてもラク。みんなルールを守っているし、安全だという声が多いです。ただし、国籍によって、日本と同じ右ハンドルを採用している香港やタイの方と、左ハンドルの台湾や韓国の方では少し感じ方が違うかもしれません。

香港やシンガポールの方からは「北海道のまっすぐの道をガンガン走りたい」という声も多いです」。

―あの狭くて高層ビルの林立する国で暮らしているわけですから、その気持ちはよくわかりますね。でも、実際に日本で運転するとなると、慣れないことも多いと思われます。事故が増えているということはないですか。

「利用者の増加にともない、接触事故などの事例は増えています。ただし、外国客の事故率が日本人より高いということはありません。

弊社では英語版の利用ガイドを用意しています。そこでは、日本の交通規則や標識の解説、給油のやり方や事故が起きたときの対応、保険補償の限度額、駐車違反の注意などこまかく説明しています。
b0235153_11334752.jpg


b0235153_11341667.jpg

たまにあるのが、軽自動車を利用された方が間違って軽油を給油されてしまうケースです。軽油を入れると、車が動かなくなってしまうんです」。
b0235153_11342784.jpg

―かなり詳しく書かれていますが、これをすべて読んでから運転というのでは大変ですね。外国客向けのサポートサービスはありますか。

「弊社の外客向けのサービスとしては、24時間対応のカウンター通訳サービス(英中韓タイ語)や多言語化カーナビ(英中韓)、ECカードのレンタルなどがあります。なかでも重要なのが、カーナビです。この2年で急速に普及してきました。新車を発注する際も、必須になっています。また今年から申込書も多言語化に対応しています(英中韓)」。

―今後も、外国客の利用を促進していきたいとお考えですか。

「昨年11月、初めて台北のITF(旅行博覧会)にブースを出展し、PRをしました。今後は他のアジアの国の出展も検討しています。

また国内のトラベルマートなどの商談会にも参加しています。これを機会にこれまで知り合うことのなかった異業種の方とお会いする機会がぐっと増えたのですが、地方自治体の方など、レンタカーに期待する声が強いことを知りました」。

―どういうことですか。

「大都市圏からの交通が不便な地方では、レンタカーで地元を訪れる外国客が増えることを期待しているからです。たとえば、今年、山陰の各県では香港向けにレンタカー利用の旅行プランを企画しています。こうした動きにレンタカー会社も協力していきたいと考えています」。

レンタカーの世界でもいろんなことが起きているようです。今度、白井さんのご案内で羽田空港のレンタカーカウンターを訪ねることになりました。

またこのインタビューを通じて、さまざまな話題、観点が見えてきました。今後はこれらを少しずつ深堀りしていきたいと思います。

外客のレンタカー利用件数日本一の沖縄でいま起きていること
http://inbound.exblog.jp/24858193/

北海道は外客レンタカー受入の全国の先駆けです
http://inbound.exblog.jp/24864160/

中国本土の観光客は現状、日本でレンタカーの運転はできません
http://inbound.exblog.jp/24859203/

「香港はインバウンドの実験室」:世界に先駆けレンタカー旅行をPR
http://inbound.exblog.jp/24848866/

海外客がTocoo!でレンタカーを予約する理由
http://inbound.exblog.jp/24860932/

外国客の国内ドライブ旅行、本格始動中!~先行する沖縄、北海道の事例と予約サイトの動向から
http://inbound.exblog.jp/24950113/
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-08-18 11:34 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 30日

歌舞伎町ルネッサンス~外国人観光客の来訪増で街は変わるか?

このところ、歌舞伎町周辺を訪ね回り、外国人ツーリストの動きをウォッチングしていました。その中間報告というわけでもないのですが、やまとごころに書いています。
b0235153_15334181.jpg

歌舞伎町は今日も多くの外国人ツーリストでにぎわっている。ここ数年、周辺でホテル開業ラッシュも起きている。新宿は都内で最も外国客に人気のホテル地区なのだ。世界的にも知られるこの歓楽街はこれからどう変わっていくのか。周辺のホテルに滞在している外国客にもっと街を楽しんでもらい、お金を落としてもらうには何が必要なのだろうか。考えてみたい。
b0235153_15335683.jpg

やまとごころ.jp
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_15.html

新宿歌舞伎町のネオンの下には、今日も多くの外国人ツーリストでにぎわう光景が見られる。靖国通りで大型バスから降りてきた中国やタイの団体客たちは添乗員に先導され、セントラルロードから裏道まで列をなして散策している。ドンキホーテの前でスーツケースを広げて大量購入した土産の品定めをするグループもいる。キャリーバックを引きずるアジアの若い個人客も次々と横断歩道を渡ってくる。欧米のツーリストたちもそこかしこを頻繁に往来している。

今年上半期(1~6月)で914万人とますます増加する訪日外国人旅行者。日本政府観光局によると、年間を通じて1800万人前後の見通しと2020年に2000万人という政府目標も前倒しで実現しそうな勢いだ。

彼らの来訪が歌舞伎町の風景を大きく変えようとしている。でも、どうして彼らは歌舞伎町にやって来るのだろうか。

世界の観光地と呼ばれる場所には、誰もがそこで記念撮影を始めてしまうポイントがある。富士山の絶景もそうだが、渋谷センター街の交差点もいまや定番。こうした情報はネットにあふれていて、SNSを通じて世界に発信されている。

では、いまの歌舞伎町でそれはどこだろうか。

今年4月に開業した「ゴジラルーム」が話題のホテルグレイスリー新宿(新東宝ビル)か。あるいは、「歌舞伎町一番街ゲート」の下で自撮りする? いや、むしろ西新宿の高層ビルやヤマダ電機の巨大スクリーンをバックに撮るのがお好みか?

これらは確かに歌舞伎町でよく見かける光景である。いまや歌舞伎町は外国人ツーリストのための都内有数の“回遊”ゾーンとなっているのである。

では、ここで“回遊”した後、彼らはどこに向かうのだろうか。

ロボットレストランは日々進化する

そのひとつが、新宿区役所の裏にあるロボットレストランである。この話はもうよく知られているかもしれない。以前、やまとごころ.jpのインタビューでも紹介した、外国人ツーリストが殺到する都内でも数少ないナイトエンターティンメントスポットである。

歌舞伎町の「ロボットレストラン」になぜ外国客があふれているのか?
http://www.yamatogokoro.jp/inbound-interview/2013/index06.html

日本の女子ダンスチーム《女戦》と巨大アンドロイドが共演するダンスショーが楽しめるというふれこみの同レストラン。その開業3周年も近い6月初旬に訪ねたところ、入り口に以前はなかった多言語の歓迎表示が置かれていた。ロシア語やタイ語まであり、客層の多国籍化が進んでいることがうかがわれる。
b0235153_1536076.jpg
18カ国の多言語が表示されるロボットレストランの看板

きらびやかだが、キテレツというほかない待合室の様子は変わらないが、受付は日本語を話す外国人スタッフだった。そこでは東南アジアのリゾートホテルのラウンジでよく聴く洋楽のライブ演奏が行われている。21時50分開演のその日最後のショーで、観客は若い欧米人がほとんど。アメリカのTVコメディショーに出てくるような外国人司会者が「ようこそ、クレージーショーへ」とあいさつすると、照明が落とされ、ショーは始まった。
b0235153_1537205.jpg
ショーの観客席は外国客だらけ。最近はアジア客も増えてきた

実は、半年前にここに来たとき、早めの時間帯だったせいか、欧米の中高年のツーリストの姿が多く、また小さな子連れの母親もいて、客層は明らかに幅広い年齢層に広がっていた。おそらく彼らは滞在先のホテルのロビーに置かれたチラシを手にしてここに来たものと思われた。

見るからに善男善女である彼らは、海外旅行先の夜を過ごす常としてカップルで、あるいは親子で食事を含めたナイトライフに繰り出そうとしていたのだ。はたしてショーの中身は、彼らを心底楽しませただろうか? 少し違和感を覚えたものだった。

そこに一抹のあやうさを感じながらも、ロボットレストランは外国客の趣向に合わせたナイトライフの受け皿として日々進化しているようだった。もはや開業当初のような欧米メディアや文化人が訪れる特別のスポットではなくなっているかもしれないが、客足は遠のくばかりか増えている。はっきり言って、ショーの中身を除けば、そこはとても日本とは思えない。入場料は1人7000円と以前より値上がりしているが、この1年の円安で外国客にとってはチャラみたいなものかもしれない。

このような“クレージー”な外国客向けのナイトスポットは、実のところ、世界のあらゆる観光地で見られる普遍的な光景ともいえる。それが六本木や赤坂、銀座ではなく、歌舞伎町に見られることは、これからの日本のインバウンドの行方を象徴しているように思う。

エクスペディアが指摘する新宿の3つの魅力

ところで、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストはどこから来るのだろうか。

その答えのひとつのヒントとなるのが、ホテル予約サイトの市場動向である。

今日どんなに無名の宿泊施設でも、ホテル予約サイトに登録すれば、外国客を呼び込むことができるといわれる。国内ホテルの外国客受入に実質的に最も貢献をしているのは彼らだろう。

なかでも2006年11月、米国発世界最大のオンライン旅行会社として日本法人を開設したエクスペディアの訪日旅行市場における存在感は日に日に増している。当初、彼らの日本参入の狙いは、日本人の海外旅行市場にあったが、ここ数年、海外、特にアジアからの国内ホテル予約が増えているからだ。

木村奈津子マーケティングディレクターによると「エクスペディアはアジア11カ国・地域に販売拠点があるが、その多くは12~13年にかけて設立されたばかり。円安と日本旅行ブームの時期が重なり、訪日予約が一気に増えた」という。実際、韓国や香港、台湾、タイのエクスペディアによる14年の海外ホテル予約件数はすべて日本がトップだった。

同社の作成した「都内国別人気宿泊エリアマップ」をみると、東京の南半分(東京駅周辺、銀座、赤坂、渋谷)は欧米客に人気で、北半分(新宿、池袋、上野、浅草)はアジア客に人気というエリアの住み分けがあるらしい。
b0235153_15381695.jpg
都内国別人気宿泊エリアマップ(エクスペディア提供)

だが、国籍を問わず最も人気があるのは新宿だ。同社は14年エクスペディア経由で予約件数の多かった宿泊施設を「ホテル」部門と「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門に分けてランキングしている。以下、「ホテル」部門10位までのランキングだ。

1位 ホテルサンルートプラザ新宿(南新宿)
2位 新宿グランベルホテル(東新宿/歌舞伎町)
3位 新宿ワシントンホテル(西新宿)
4位 京王プラザホテル(西新宿)
5位 ホテルモントレ グラスミア大阪
6位 ホテル日航成田
7位 新宿プリンスホテル(東新宿)
8位 品川プリンスホテル(品川)
9位 新宿区役所カプセルホテル(東新宿/歌舞伎町)
10位 ホテル日航関西空港

興味深いのは、ランキング入りした都内の7店中6店が新宿のホテルであること。またどちらの部門も1位(前者:サンルートプラザ新宿、後者:新宿区役所前カプセルホテル)は新宿なのだ。

なぜこれほど新宿のホテルが人気なのか。エクスペディアではその理由は「アクセス面」「街の魅力」「施設面」の3つだとして、以下のように分析する。

①アクセス面:新宿は都内の観光地へのアクセスがいい。また箱根に電車で一本、富士山にもバス一本で行ける。

②街の魅力:大都会を象徴する高層ビル群と、歌舞伎町や思い出横丁のような古き良き日本の雰囲気が両方体験できる。

③施設面:高級シティホテルからビジネスホテルまで選択肢が豊富。六本木や赤坂だと高級ホテルが多く、所得の高い欧米客が集中するが、近年増えているアジア客はリーズナブルなホテルを選ぶ傾向にあり、新宿が最適。

箱根と富士山のゲートウェイであることの優位性が新宿にはある。歌舞伎町が新宿を構成する一要素として欠かせない存在であることもわかる。さらに、新宿のホテルの価格帯のバリエーションの多さが、多様な層の外国客の受け入れを可能としているのだ。

一般に外国人ツーリストはよく歩くという。日本人なら地下鉄を利用する距離でも、彼らは歩くのを好む。そして彼らの行動半径はホテルを基点に形成される。こうしてみると、大型バスで乗りつけるアジア系団体客を除けば、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストの多くが、新宿周辺のホテルに滞在している比率は高そうなのである。

外国人ご用達のカプセルホテルの世界

新宿人気の理由となっているリーズナブルな宿泊施設の代表といえば、前述のエクスペディアの「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門で1位となった新宿区役所前カプセルホテルだろう。

5月下旬、同ホテルを訪ねると、そこは外国人ツーリストご用達の宿になっていた。

ロビーでは英語が飛び交い、着替えのためのロッカーの脇にはスーツケースが並んでいる。軽食コーナーや自動販売機、コインランドリーなどが置かれた男女共用のラウンジに行くと、スマホを手にした外国客の姿が多く見られた。実際、その日の外客予約比率は39%。アジア客と欧米客の比率は半々という。
b0235153_1540982.jpg
ロッカーの脇に並ぶ外国客のスーツケース

小川周二経営企画室室長によると「外国客が増えたのは2年前から。女性フロアを開設したことでカップルでも利用しやすくなったことが大きいようだ。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアが増えている。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろだ。大半がエクスペディアなどの海外予約サイト経由。連泊が多く、なかには1カ月も泊まっていく外国人もいる」という。
b0235153_15403891.jpg
ポラロイドで撮った宿泊客の記念写真

カプセルホテルは1980年代に成長した業態だが、バブル崩壊以降、斜陽産業と呼ばれた。それでも同ホテルが盛況なのは、サラリーマンから国内外の女性も含めたツーリストへという客層の変化に対応し、ビジネスモデルの組み換えを行ってきたからだろう。

人知れず外客率8割のデザインホテルもある

ホテル予約サイトの驚くべき集客力は、異業種やベンチャー系のホテル事業への参入にも追い風となっている。PRコストいらずで、集客が可能となるからだ。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある。2013年12月に開業した新宿グランベルホテルだ。
b0235153_15415317.jpg
ひときわ目につく17階建て、客室数380室

立地は歌舞伎町の東のはずれの、なんとラブホテル街の中。だが、ここはエクスペディアの人気ランキング「ホテル」部門2位という。

ロビーを訪ねると、それは一目瞭然だ。フロントの前のラウンジやソファーに多くの外国客がたむろしていて、特に午後のチェックイン・アウトの時間帯にはスーツケースが山のようにロビーに積まれている。

丸山英男支配人によると「周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーが集中している。ホテル激戦区の東新宿で、知名度のない我々が生き残るには、思いきって個性的なホテルをつくるしかない」と考えたという。

そこで採用したのが、アジアの次世代アーティスト24名を起用してデザインさせた客室だった。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したかったという。設計を担当したのは、キッザニア東京で知られるUDS株式会社だった。
b0235153_15423890.jpg
NY在住のカンボジア人アーティストが近未来の女性をイメージした人気の客室

結果はどうだったのか。

「開業から3か月は苦戦したが、1年後には平均客室稼働率は8割を超えた。そのうち外客比率は8割以上。歌舞伎町の立地ということで、外国客の利用は多くなるだろうと考えていたが、これほどとは思わなかった。アジア系は6割で欧米系は4割。ビジネス客とレジャー客は半々。予約の半分以上はネット経由。圧倒的に海外の予約サイト経由が多い」(丸山支配人)。

同ホテルを支持したのは、海外の若い個人旅行者たちだった。価格とデザイン性に敏感な彼らのホテル選びは、まず予約サイトでエリアと価格帯で絞り込んでから、各ホテルの写真をじっくり見比べるという。

丸山支配人は同ホテルが外国客に人気の理由をこう説明してくれた。
「確実にいえるのは、ネットの世界は写真が大事ということ。私どものホテルは客室のデザインに特徴があることから、同じ価格帯のホテルと比べたうえで選んでもらえたのだと考えている」。

「歌舞伎町ルネッサンス」の転換点

ところで、歌舞伎町にはいまも「怖い」「汚い」「風俗のまち」というイメージがある。その認識を世間にあらためて印象づけたのが、多くの死傷者も出た2001年9月の雑居ビル火災だった。

この事故に端を発して歌舞伎町の再生に向けた動きが始まっている。それが05年に新宿区や地元商店街振興組合、都や国の関係省庁などが官民一体でスタートさせた「歌舞伎町ルネッサンス」だった。

ところが、発足当時から危ぶまれていた歌舞伎町の顔ともいうべき新宿コマ劇場が08年に、14年にはミラノ座も閉館となった。それまで歌舞伎町では、劇場や映画館、ライブハウスなどの集客施設に来た人たちが周辺の飲食施設に立ち寄ることで歓楽街を成り立たせていた。だが、主要な施設の消滅で来街者が減り、多くの人々が“回遊”することで生まれるにぎわいにも陰りが見え始めていた。

それだけに、今年4月、新宿コマ劇腸の跡地に開業した新宿東宝ビルの誘致は、歌舞伎町再生のための大きな転換点とみなされている。そこにはシネコンやホテル(ホテルグレイスリー新宿)などの新たな集客施設がテナントとして入居してきたからだ。

新宿区では、靖国通りから北に延びるセントラルロードや新宿東宝ビル前の北側道路などの歩道を順次拡幅している。街の混雑を緩和し、かつての歌舞伎町のイメージを刷新させ、女性や家族連れも呼び寄せたいからだという。

だとすれば、ホテルができることはいい話である。実は、歌舞伎町とその周辺では、ホテルグレイスリー新宿や前述の新宿グランベルホテルもそうだが、今年9月開業予定のアパホテルグループの旗艦店「新宿歌舞伎町タワー」など、ホテルの新規開業がここ数年続々と進んでいた。東新宿は今後、ビジネス客というよりもレジャー客の集まるホテルの街になりそうなのだ。当然これらのホテルには、多くの外国人ツーリストが宿泊することになるだろう。
b0235153_15442686.jpg
シックなストライプとゴジラの顔がラウンドマークとなった新宿東宝ビル

ホテルの宿泊客が街で消費を始めている

歌舞伎町商店街振興組合の城克事務局長は「歌舞伎町を再生させるうえで、我々ができることは、投資を誘致するということだけだった。あとは各々の事業者の皆さんが頑張ってくれる。ホテルができることで、宿泊客が歌舞伎町で飲食や買い物をしてくれるようになるといい」と期待する。

地元ではこれまで歌舞伎町に来る外国人は、街を散策しているだけでお金を落とさないという声もあったようだ。確かに、大型バスで乗りつけるアジアの団体客は、せいぜいコンビニで飲み物を購入するくらいだったろう。彼らの買い物は旅行会社が決めた特定の場所でなければならないからだ。

だが、歌舞伎町周辺のホテルに宿泊していれば、近所でお金を落とす機会は自然と増える。その兆しは、たとえば、新宿グランベルホテルのフロントスタッフらが作成したという自家製マップに表れている。

同ホテルのロビーには、以下のような数種類のホテル周辺マップ(英語併記)が置かれている。

「新宿駅までの周辺地図(SHINJUKU area map)」
「周辺のラーメン屋(RAMEN LIST)」
「24時間営業のお食事処(24HOUR OPEN RESTAURANT LIST)」
「周辺のお寿司屋さん(SUSHI RESTAURANT LIST)」

これらの地図はとてもシンプルで情報量も限られているが、宿泊客からの質問をもとに作成されている。地図に落とされているスポットは、歌舞伎町内にあるごく普通のラーメン屋やレストラン、寿司屋にすぎない。だが、これらを見ていると、ホテルを基点とした外国人ツーリストの活動領域が見えてくる。ホテルの宿泊客たちは、街で消費を始めているのだ。

地元の人と一緒に楽しめる体験がほしい

今年に入って歌舞伎町にはこれまで見られなかった女性のグループなども足を運ぶようになったという。外国客には家族連れも多いので、子供の姿も増えた。街の風景に静かな変化が起きているようにも見える。

「だが、歌舞伎町に安心・安全ばかりをアピールするのはどうか。ちょうどいい緊張感は残したほうがいい。それがこの街の個性でもあったのだから」と前述の歌舞伎町商店街振興組合の城事務局長はいう。

確かに、ここは銀座でも渋谷でもない。それでもこれだけの来街者があるというのは、俗に“アジア最大の歓楽街”と呼ばれる独特の街の風貌が人を惹きつけるからだろう。それが薄まることを危ぶむ向きもあろうが、時代は変わる。かつて歌舞伎町は中国やアジアからの移民労働者が多く働く街だったが、いまやレジャー観光客に生まれ変わった彼らが押し寄せるようになった。それも宿命かもしれない。こうして生まれる“ちょうどいい緊張感”を満喫してくれているのは、いまや欧米客も含めた外国人ツーリストたちではないだろうか。彼らは固定観念にとらわれず、歌舞伎町とその周辺のホテルを選んでいるのだから。

そんな彼らはいま歌舞伎町に何を望んでいるのだろうか。

ここに来て、ただあてどなく“回遊”するだけでなく、立ち止まって地元の人たちと一緒に楽しめる体験、もっといえば思い出づくりがしたいのではなかろうか。お金をかけた大がかりなイベントである必要は必ずしもないと思う。もっとささやかで、気軽に日本人も外国人も参加できそうな趣向を考えたほうがよさそうだ。

ロボットレストランの営業担当者に以前こんな話を聞いたことがある。「新宿周辺と都内の主要なホテルにチラシを置いてもらうよう徹底して営業した。その結果がいま出ていると思う」。

せっかくこんなに多くのホテルが周辺にあるのだから、彼らに声をかけない手はないというわけだ。幸い歌舞伎町周辺のホテルの宿泊客には、スケジュールの決まった団体客は少ない。大半は個人旅行者だ。ロビーで退屈そうにスマホを覗いて暇を持て余しているツーリストはたくさんいる。彼らを街に連れ出すためのアイデアがいまこそ求められているのだ。

新宿グランベルホテルでは、新宿全景が見渡せるルーフトップバーで外国人を集めたイベントを始めようとしているそうだ。「ホテルは街と共存している。いまはSNSで情報が広がる時代。だから、ホテルの集客もいいデザインというだけではなく、次のステップはそこではいつも何かが起きていると思わせる場をつくり出すことが大事なのだと思う」。

これは同ホテルの設計を担当したUDS株式会社の寳田陵クリエイティブデザインディレクターのことばだ。

新宿歌舞伎町にあふれる外国人ツーリストにいかに街を楽しんでもらうか。そのためのネタはここにはいくらでもあると思う。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-07-30 15:46 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2015年 07月 10日

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある

今年4月、新宿コマ劇場跡にできた“ゴジラホテル”こと、ホテルグレイスリー新宿。その開業当初、多くのメディアが外国客のあふれる歌舞伎町の変貌ぶりを報じていました。

でも、歌舞伎町にはまだ他にも人知れず外国客が殺到しているスポットがあります。

それは、2013年12月に開業した新宿グランベルホテルです。不動産事業を手がける(株)フレンドステージ(埼玉県上尾市)が運営しているホテルで、場所は歌舞伎町のラブホテル街の中にあります。そんなディープな環境のなか、ひときわ目につく17階建て、客室総数380室といいますから、東新宿周辺ではホテルグレイスリーやプリンスホテルなどに次いで大きなシティホテルといえます。
b0235153_21244054.jpg

新宿グランベルホテル
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku

実は、同ホテルは2014年にエクスペディア経由で予約した外国人旅行者数のランキングで、ホテルサンルートプラザ新宿(渋谷区)に次いで全国2位となっています。サンルートプラザ新宿といえば、昔から外国客を多く受け入れてきたホテルとして知られていますが、開業2年のホテルが堂々ランキング2位になるとはちょっと驚きです。新宿グランベルホテルは、なぜこんなに外国客に人気なのでしょうか?

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/

同ホテルの丸山英男支配人に話を聞きました。

―歌舞伎町の真っただ中に位置していますね。周辺はラブホテルがひしめいている。なぜこの立地を選ばれたのでしょうか。

「弊社がここに土地を所有していたからです。確かに、この周辺はいろんな人種・国籍の人たちが往来していて、一種のカオスといえる。でも、歌舞伎町は世界的に知名度がある。だから、計画の当初からこの土地に合った個性的なホテルをつくろうと考えていました。

ホテルグランベルはわずか3軒のみですが、他には渋谷と赤坂にあります。それぞれ異なるコンセプトで設計されています。

2006年7月に開業した渋谷は、若者のまちらしく、25~35歳のトレンドに敏感な層をターゲットに、また同年12月開業の赤坂は、ビジネスマン向きに大人の落ち着いた雰囲気にしています。

東新宿はホテル激戦区で、周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーのホテルが集中しています。この中で差別化するには、知名度のない我々が同じことをやっても勝負できない。だったら、思いっきり個性的なホテルをつくろうと考えたのです」。

―エクスペディアの関係者から、客室のデザインが人気だと聞いています。彼らは貴館をブティックホテルと呼んでいました。

「本館のいちばんの特徴は、アジアの次世代アーティストがデザインした客室を用意していることです。コンセプトは「HIP、エッジ、官能的」。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したいと考えました。設計をお願いしたのが、キッザニア東京の設計で有名なUDS株式会社です。渋谷や赤坂も同様です」。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

―アジアの次世代アーティストというのはどのような人たちですか。

「代表的なアーティストとしては、カンボジア生まれで、現在ニューヨークで活躍中のTomtorです。彼には近未来の女性をイメージしたこの客室のデザインイメージを提案してもらいました。
b0235153_2126648.jpg

Tomtor(カンボジア)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/sp_double/


他にも、香港や韓国、台湾などのアーティストを起用しています。日本人も含めて関わったアーティストは20名以上。香港のG.O.D.は、香港の油麻地(ヤウマーティ)地区のデザインをイメージして壁一面に銅板パネルやグラフィックアートを飾った客室をデザインしてもらっています」。
b0235153_2127125.jpg

G.O.D.(香港)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/ex_double/

その他アーティストのプロフィールとその客室
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/extra/

―面白いですね。しかし、こんなに自由に客室ごとにデザインを選べるホテルというのは、あまり聞いたことがありません。客室のカテゴリー分けはどうなっているのですか。

「2~11階がスタンダードルーム、12階がロフトルーム。この階はアジアのお子様連れファミリーがよく利用されます。13~16階がエグゼクティブルーム、17階がスイートです。客室タイプは全28種に細分化されています。
b0235153_2128418.jpg

b0235153_21283464.jpg

b0235153_21285886.jpg

さらに、スタンダードルームには「オモテ」と「ウラ」の異なる客室デザインを用意しています」。

―どういうことですか。
b0235153_21293548.jpg

「この客室は先ほどのTomtorのデザインイメージに沿って設計されたものですが、最初が「オモテ」で、こちらは「ウラ」です。「オモテ」は白と木目調をいかしたすっきりしたデザインですが、「ウラ」は黒とレザーの風合いをいかしたディープな感覚を打ち出しています。前者はビジネス客向けに、後者は客室でゆったりくつろぎたい方向けにと考えられています」。

―ずいぶん凝っていますね。飲食施設はどうですか。

「ロビーのカフェと12階のカジュアルイタリアンレストラン、そして13階のバーの3つです。バーはテラスがあり、新宿の街並みを見渡せます」。
b0235153_2130879.jpg

―ところで、ロビーにスーツケースがたくさん置かれていましたが、これは海外の団体客などチェックアウトをすませた方たちのものですね。エクスペディアで全国2位の予約実績というわけですから、外国客の宿泊比率はかなり高そうですね。
b0235153_21303477.jpg

「現在、外客比率は8割以上です。もともと歌舞伎町のホテルということで、外客の利用は多くなるだろうと考えていましたが、こんなに多くなるとは思ってもいませんでした。外客のうちアジアが6割で欧米が4割。ビジネス客とレジャー客は半々という感じです」。

―どうしてこんなに外国客の人気を呼んだと思われますか。

「実は、開業当初以外はほとんどPRしていません。それだけに最初の3カ月は厳しかったのですが、徐々に予約が入るようになり、2014年秋には平均客室稼働率が80%になりました。ADR(平均客室単価)は約1万3000円となっています。

予約の半分以上はネット経由です。団体客も取るので、リアルエージェントからの予約もありますが、圧倒的に海外の予約サイト経由が多い。エクスペディアやbooking.com、アゴダなど、だいたい同じくらいの比率です」。

―本当にいまはそういう時代なんですね。PRにお金をかけるより、予約サイトに登録し、より効果的な見せ方をすることが集客のカギになる。

「実際、何か特別に外客向けのサービスはやっていません。せいぜいフロントでお客様からよく聞かれる質問を整理して近隣マップをつくったくらいでしょうか。

トリップアドバイザーなどの口コミサイトには、いいことも悪いことも書かれるものですが、ひとつ確実にいえるのは、ネットの世界はまず写真が大事ということ。ホテルグランベルはデザインに特徴があるので、同じ価格帯のホテルと比べて選んでもらえているのだと考えています」。

―しかし、これだけ外客比率が高くなってしまうと、経営上のリスクはどうでしょう。多くの宿泊施設が国内客と外客のバランスを取ることに苦心しているなか、新宿グランベルホテルは、国内客より外国客に知られたホテルといえるかもしれません。

「確かに、外国客の予約がいつもいっぱいで予約が入らないため、国内客に敬遠されてしまうきらいがあるように思います。しかし、ここまで来たら、もう隠しようがないので、状況を見ながらコントロールしていくしかありません」。

―レベニューマネジメントの腕が問われますね。

「まったくそうです。支配人の私ともうひとりのスタッフが担当しているのですが、1日の仕事の大半はレベニューマネジメントに明け暮れるといっていいくらいです」。

ネット予約が一般化した今日、レベニューマネジメントは収益の最大化を左右するだけに、手を抜けないところでしょう。予約経路は複雑化しており、さまざまなファクターを吟味しながら客室の売値のコントロールをしていかなければならないからです。

それにしても、訪日客の増加によってほぼネットだけで集客ができてしまうという状況が起きていることは、ベンチャー企業のホテル業への参入にとって追い風になっていると思われます。このあたりの感覚は、ホテル業の王道にずっといた人たちからすると、時代の変化を強く感じさせる事態かもしれません。

もっとも、丸山支配人は外客向けの特別なサービスはしていないと言っていましたが、宿泊客からの質問や問い合わせに答えるためにスタッフがつくったという自家製近隣マップは、種類も豊富でよくできていると思いました。数種類に分けられたマップをみると、外国客が歌舞伎町周辺のどこで食事や買い物をしているかがよくわかり面白かったです。また設計を手がけたUDSの担当者にも話を聞きました。その内容については、また別の機会で。

遊び心がなければ、海外客を惹きつけることはできない(UDSの考えるデザインホテル)
http://inbound.exblog.jp/24681756/
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-07-10 21:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 07月 09日

多言語化に取り組む楽天トラベル。宿泊プランは外国客に支持されるか?

エクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトの参入によって、日本の国内宿泊マーケットは変わりつつあります。それは単に外国客の利用が増える(国内客の減少を補てんしてくれる)というだけではなく、これまでの宿泊サービスのありように新しい刺激を与えてくれていると思います。

ホテルが外国客を受け入れるメリットは何か(エクスペディアの取材から)
http://inbound.exblog.jp/24669753/

もっとも、外資が参入する以前に、日本にもオンライン旅行会社は存在しました。楽天トラベルやじゃらん、一休などは広く普及しています。

なかでも楽天トラベルは、2001年3月に楽天の旅行部門として立ち上がり、02年に独立。05年には旅行業一種を取得し、本格的なオンライン総合旅行サイトとなりますが、早くとも10年にはJTBに次ぐ国内旅行市場取扱額2位にまで成長しました(その後、近畿日本ツーリストに再び2位の座を明け渡したり、取り戻したりといった状況が続いています。同社が急速に取扱額を拡大できたのは、店舗を持たず、ユーザーと宿泊施設の双方の便宜を追求するオンライン旅行会社の特性を消費者が支持したからでしょう)。

先日、楽天トラベルの関係者に話を聞くことができました。

訪日外客が増えるなか、楽天トラベルはインバウンドに対してどんな取り組みを始めているのか。海外客に人気の宿泊施設にはどんな特徴があるのか。以下、関係者とのやりとりです。

―楽天トラベルでは、訪日外客の取り込みに向けてどんな取り組みを始めているのですか。

「2014年7月、楽天トラベルは多言語化サイトの大幅なリニューアルを行いました。10ドメイン、7言語(英語、フランス語、中国繁体字、中国簡体字、タイ語、韓国語、インドネシア語)のサイトとなり、2020年の東京オリンピックに向けて海外訪日客を取りにいきます」
b0235153_11421014.jpg

―利用者の伸びはどうですか。どこの国が多いですか。

「おかげさまで前年度比60~70%増です。米国、香港、台湾などが多いです。利用者は基本的にFITですから、日本に興味があって、リピーターの多い国や地域が多くなると思います。また楽天グループでは海外拠点づくりを進めていて、特に台湾では楽天のECサイトがあり、台湾楽天カードも発行しています。弊社の場合、トラベル単体ではなく、グループのシナジーを活かしてプロモーションしていくというのが基本の考え方です」。

―確かに、旅行もショッピングも同じプラットフォームで商取引されるのですから、結局、日本のファンを増やしていくことがシナジー効果を生むということですね。日本が好きで旅行に行きたい人たちと、日本の商品をショッピングしたい人たちを分けて考える必要はない。

ところで、御社は海外客の予約件数の多いホテルの情報を有しておられると思います。海外客に人気のホテルを教えていただけますか。

「楽天トラベルでは、全国約2万9500施設の中から、毎年顕著な宿泊実績や高い顧客評価を得られた宿泊施設に対して『楽天トラベルアワード』を表彰しています。いくつかのジャンルに分かれるのですが、海外客に人気という意味では、『インバウンド賞』を受賞されたホテルがそれに当たります」。

楽天トラベルアワード2014
http://travel.rakuten.co.jp/award/2014/

―ここ数年の「インバウンド賞」受賞の施設をみると、エリア的には関東・甲信越が多いようですが、やはり全体でみると、外国客の楽天経由の予約件数はやはりこのエリアが多いといえますか。

「『インバウンド賞』は宿泊施設単位で受賞しているものですが、エリア単位で見た場合は、上記エリア以外でもご予約は多数いただいております。実際、楽天トラベルが全国を約300のエリアに分けているなか、すでに95%のエリアで外国客の予約が入っています」。

―そうですか。楽天経由でほぼ全国の宿泊施設に予約が入っているのですね。

「もちろん、実際に多いのはゴールデンルートとなる東京→富士山→関西エリアと、沖縄県、北海道です。しかし、楽天トラベルはFIT、特にリピーターとなって日本に複数回こられているだろうお客様の予約も多いため、九州エリアの福岡県・大分県・熊本県・鹿児島県や、中部の岐阜県・愛知県・長野県、北陸の石川県、中国四国の広島県や香川県などさまざまなエリアの予約が増えており、全国への分散化が見られます」。

―個別の施設でいうと、上野のノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)はここ数年連続して受賞しているようですね。この圧倒的な強さはどこにあるとお考えですか。禁煙は外客受入にとって重要なファクターといえるのでしょうか。

「日本に比べて海外では禁煙文化が浸透しているため、「禁煙」「喫煙」の区別に関しては日本よりも敏感になっているようです。

(参考) 
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_smoking_bans_in_the_United_States
http://www2u.biglobe.ne.jp/~MCFW-jm/tobacco.htm

ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)は、インバウンドだけではなく、国内のお客様も含めて「非喫煙ポリシー」を徹底しています。これが圧倒的な強さにつながっていると考えられます。また、浴室はシャワールームにして外国人の方も満足のいく最低限の設備にすることで、その他のスペースを広げた点や価格帯がマッチしていることも選ばれる理由になっているかと思います」。
b0235153_11482814.jpg

b0235153_11484082.jpg

ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)
http://www.nonsmokers.jp/nosmoking/

―アパホテルグループの受賞も多いですね。渋谷道玄坂店と京都駅前堀川通店。これらの人気の理由は何でしょうか。

「アパホテルはビジネスホテルのカテゴリーに入りますが、シングルでも横120cmの広いベッドやシャワー、アメニティなどゲストのための細かいサービスが行き届いていて、中級ホテルとしてはサービスレベルが高いと評価されていることが考えられます。また駅に近いことも外国客にとってはホテル選びをするうえでのポイントになっていると思います」。

―受賞施設以外にも、最近外国客に人気が出ているホテルはありますか。

「たとえば、「休暇村 大久野島」(香川県)や「高野山の宿坊」(和歌山県)でしょうか。

全国の休暇村でいま積極的に外国客の受け入れに力を入れています。なかでも集客に成功しているのが大久野島です。
b0235153_11491985.jpg

休暇村 大久野島
http://www.qkamura.or.jp/en/ohkuno/rooms/

魅力は大自然を満喫できる宿で、瀬戸内海の離島にあることでしょうか。ネットを通じて予約されるFITのお客様はリピーターも多く、東京や大阪のような大都市圏ではなく、自然の豊かなローカルなエリアへの宿泊が増えています。

同じく、高野山の宿坊も、日本の自然と文化を体験できることで人気が上がっています」。

高野山の宿坊
http://www.shukubo.net/contents/stay/

―これら西日本のローカルな人気宿はどこの国の人たちが多いのですか。

「香港や台湾に加え、欧米の比率が高いです。大阪や広島などの都市部を拠点にしながら、1泊の予約をピンポイントで取り、これらの宿に泊まって地元をゆっくり観光されている傾向が見られます」。

―ところで、ここで少し話を変えますが、現在海外のホテル予約サイトが続々参入し、訪日客の国内予約の取り込みが急ピッチで進んでいます。それに対し、国内オンライン旅行会社(OTA)の雄である楽天トラベルは、どう立ち向かおうとしているのでしょうか。海外サイトに負けないサービスは何でしょうか。

「現在、海外のお客様を受け入れることに同意いただいた1万8000施設が外国語ページを持っています。日付を指定した検索結果には、海外のお客様向けに宿泊プランを作成され、在庫のご登録を頂いた施設が表示されます。

エリア的な偏りは、多少は見られるものの、全国津々浦々までカバーできているのが楽天トラベルの大きな特徴だといえると思います。

例えば、東京、大阪、京都などのインバウンドのメジャーエリアで検索をした際に、他のOTAさんとくらべ楽天は少し多いくらいですが、四国、東北、前述の高野山を含む和歌山などのローカルエリアを検索すると、大きな差が出ます。検索結果が数件では、ユーザーはそのエリアでの宿泊を選べませんので、ある一定以上の施設の数を各エリアで持つことが、インバウンド需要を伸ばすうえで重要なことだと考えています。

全エリアをしっかりカバーできていることが、楽天トラベルの強みであると同時に、日本のOTAとして担っていくべきところである。そうした結果が、先の高野山や大久野島での予約に繋がっていると考えています」。

―確かに「宿泊プラン」というサービスは日本オリジナルなもので、海外サイトにはあまりないですね。しかし、国内客には好評の「宿泊プラン」も、海外客には少し複雑に見えるかもしれません。こういうサービスを知らない海外客に支持してもらうには、少しわかりやすく打ち出す必要があるように思います。

「おしゃるとおりで、外国語サイトでは、なるべく簡単でわかりやすい選択肢を付けることにしています。たとえば。『(客室から)富士山が見える』『世界遺産のまち』『しゃぶしゃぶが食べられる』などです。

(例)[ Features ]
- Wonderful cuisine - Mt. Fuji-viewing - Nice view room - Japanese-style room

たとえば、『富士山』の例はこれです。
b0235153_11565072.jpg

Fuji New Kawaguchiko Onsen Hotel New Century
http://travel.rakuten.com/hotel/info/49256/

こちらの施設は、施設紹介やプランの詳細で、富士山へのアクセスや客室から富士山が見られることをしっかりPRしており、予約が増えています。

また『しゃぶしゃぶ』については、以下のプランがひとつの例です。
b0235153_1157373.jpg

Ryori Ryokan Karaku
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Kyoto-Kyoto_Ryori_Ryokan_Karaku/1849/

Yufuin Onsen Yufu no Irodori Yadoya Ohashi
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Oita-Yufu_Yufuin_Onsen_Yufu_no_Irodori_Yadoya_Ohashi/78074/

外国語版では、このようにプラン名に入れて紹介しています。詳しく画像や料理について説明することで、予約に繋がっていると考えています」。

―他にも、日本のOTAならではの仕掛けはありますか。

「たとえば、『楽天朝ごはんフェスティバル』です。旅における「朝ごはん」の大切さに注目し、日本全国のホテル・旅館で提供している美味しい「朝ごはん」を旅のきっかけにしていただきたい! という願いを込め、2010年からスタートしました。2014年には過去最大の宿泊施設様にご参加をいただき、約1000の朝ごはんの中からから日本一の朝ごはんを決定いたしました。

朝ごはんフェスティバルとは?
http://travel.rakuten.co.jp/special/asafesta/about.html

楽天トラベルとして、さまざまなベネフィットをオプションとして付け加えることによってより、宿泊施設の単価や価値を上げることができるのではないかと考えております。その付加価値となるものとして、宿が最大限のおもてなしをもって提供している「朝ごはん」を宿泊施設様ご自身にも再認識(おもてなしのこもった朝ごはんの価値を認識)してもらうきっかけにできればと考えています。実際、お客様の声を見ていると、「夕食よりも朝ごはんが楽しみ」や「朝ごはんが良かった」というお声も見受けられました。

また、お客様に対しては朝ごはんをきっかけに旅に出るという新たな旅行需要の創出やより満足度の高い旅行につなげていきたいと考えております。

なかでも2014年、西日本大会で準優勝した京都センチュリーホテルについては、実際に朝ごはん会場にて朝ごはんフェスティバル受賞を大々的に打ち出していただいています。

京都センチュリーホテル
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp

同朝ごはんページ
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp/restaurant/lajyho/post_95.php

同ホテルには、海外メディアからの取材も来ています。

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่30 "เทศกาลอาหารเช้า" Japanese breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=Yrz6z2x713Q

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่31 "เทศกาลอาหารเช้า 2" Japanese Breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=uAzxjH3StEo

この番組はタイのテレビ放送(チャンネル5)やYOUTUBEでの公開が行われています」。

実は、先月ぼくは京都に行く機会があり、噂の朝ごはんを食べに、わざわざ京都センチュリーホテルに早起きして訪ねてみました。2階ロビーにあるビュッフェレストラン「オールデイダイニング ラジョウ」には、アジアからのツアー客であふれていました。朝食に2600円もかけることはめったにありませんでしたが、自家製ローストビーフはわざわざ食べにくる人がいるというのもうなづけました。宿泊客ならこれがフリーというわけですから、前の晩の夕食は軽めにすませておきたいものです。

国内外に限らず、たいていのホテルで朝食を提供しているわけですから、それが美味しいと評判になれば、集客に活かせることは確かでしょう。

こうした日本流のサービスをベースに訪日客の取り込みを図る楽天トラベルのやり方は、エクスペディアなどの海外サイトとはさまざまな点で違うところがあり、これがかえって興味深いといえます。この際、どちらが正しいとかいう必要はなさそうです。訪日客は多様化しており、それに応じたサービスの領域が拡大していくことに意味があると思うからです。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-07-09 11:58 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 08日

ホテルが外国客を受け入れるメリットは何か(エクスペディアの取材から)

エクスペディアは、米国生まれの世界最大のオンライン総合旅行サイトです。
b0235153_23255092.jpg

エクスペディア
http://www.expedia.co.jp/

グローバルの月間ユニークユーザー数約9000万人、年間で5兆円の売上があるそうです。本社は米国ワシントン州ベルヴューにあります。

テレビやネットのCMを通じて、エクスペディアがホテル予約サイトであることはすでに知られていると思いますが、ここでいう総合旅行サイトとは、ホテル以外に航空券やその他の旅行サービスをすべて扱っているオンライン旅行会社ということです。楽天トラベルと同じです。違いは、ワールドワイドに拠点を広げ、世界中のマーケットを相手にしていることでしょう。

海外に比べ、日本のオンライン旅行比率は低いといわれていましたが(それだけ日本ではリアル旅行店舗がそれなりの存在感を持ち、低価格化の波に対応してきたからですが)、最近では33%に上昇しているようです。

日本の旅行予約、ネット比率は33%に、オンライン旅行市場規模は2.9兆円(2015年4月23日)
http://www.travelvoice.jp/20150423-41292

先日、エクスペディアの日本法人を取材する機会がありました。都内で外国客に人気のホテルの大半がエクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトから予約を受けていると聞いていたからです。確かに、海外の訪日旅行者にとって宿の確保をするうえで頼りになるのは、ホテル予約サイトだからです。

日本法人の木村奈津子マーケティングディレクターに話を聞きました。

―エクスペディアの特徴は何でしょうか。

「2006年11月に日本法人を設立し、海外ホテルに強い予約サイトとしてスタートしました。ご存知のように弊社はマイクロソフトの旅行部門として立ち上がっていますから(現在は独立)、本社はアメリカで、その後、ヨーロッパ、オーストラリア、インド、そして日本という順で海外展開を進めてきました。

現在では世界に31の販売拠点があります。それだけに、日本のお客様には海外のあらゆる場所のホテルをご提供できます。ホテルの側からすれば、日本の旅行会社が国内のお客様を中心に何人送客できるかに対し、我々は世界中から送客できるといえるのが強みです。そのため、仕入れ交渉をするうえで世界最大規模のメリットが出る。それが弊社の掲げる「最低価格保証」につながると考えています。

当初はホテルをメインに扱っていましたが、2011年から航空券。今後は保険やレンタカーを強化することで、名実ともにオンライン総合旅行会社となることを目指しています」
b0235153_21195353.jpg

―確かに他の海外サイトはホテルのみの扱いが多いようですが、エクスペディアは違うのですね。ところで、日本進出にはどんな理由があったのでしょうか。

「日本の旅行市場の規模を考えると、グローバル企業にとっても魅力的です。以前は日本のオンライン旅行比率は決して高いとは言えませんでしたが、オンラインのパイが拡大基調にあることを見極めながら進出の時期を決めたといえます。いまやオンライン旅行会社のニーズは拡大していると思います」。

―確かに、自分の周囲でも旅慣れた人ほど、国内の旅行サイトではなく、海外の旅行サイトを利用する人が増えていると思います。それは先ほど言ったように、比較検討できる海外のホテルの数が国内サイトに比べ圧倒的に多いからでしょう。世界中日本人が訪れていない場所はないというけれど、ホテル選びにはできる限り多くの選択肢がほしいというニーズは旅慣れた人間ほどあります。それに応えうるのは、海外の旅行サイトであることは間違いない。

ところで、このところ都内のホテル関係者の話を聞いていると、海外のお客様の予約はたいていエクスペディアのような海外予約サイト経由が多いと聞きます。これは高級シティホテルからゲストハウスのような格安宿まで共通しています。海外経由で日本のホテルを予約するニーズが拡大しているのですね。いま日本法人の取り扱いでは、国内客と海外客ではどちらが多いのですか。

「現状では、やや国内客の海外予約の取り扱いが大きいですが、インバウンド(海外客の訪日予約)は勢いがある。震災直後は打撃が大きかったが、この2、3年で状況は大きく変わってきました」。

―海外客の訪日予約はいつ頃から増えましたか。どこの国の取り扱いが多いのですか。

「訪日の取り扱いでは、アメリカのパイが最大ですが、2位以下はアジアの国々です。特にこの3年でアジアは伸び率が高い。背景には、日本法人設立後しばらくして、2012、13年に一気にアジア市場に販売拠点を開設したことがあります。現在、アジア11カ国・地域に拠点がある。なかでも韓国、シンガポール、タイ、台湾、香港の市場が伸びています。また韓国、香港、台湾、タイのエクスペディアでは訪日市場の売上が最大となっています」。

エクスペディアではアジア各国からの訪日ホテル予約が急増している
http://inbound.exblog.jp/24509107/

―国籍によって都内の人気エリアが異なるそうですね。

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/

「それをまとめたのがこのマップです。これまでエクスペディアの利用の多い欧米客の宿泊エリアは都内の南半分に偏っていましたが、ここ数年、旅行単価の安いアジア客が増えたことで、都内北側のホテル利用も増え、いまではまんべんなく広がっています」
b0235153_212043100.jpg

―なかでも都内で宿泊先の人気エリアはダントツで新宿だそうですね。その理由は何でしょうか。

「ユーザーのコメントなどから、以下のように説明できると思います。

■アクセス面:新宿は都内の各種観光地へのアクセスが良いほか、海外の人に人気の箱根にも電車で一本、富士山にもバスで一本で行けて便利。

■街の魅力:大都会を象徴する大きなビル群と、歌舞伎町や思い出横丁のような古い日本のごちゃごちゃしたところが入り混じっているのがいい。

■施設面:高級ホテルからエコノミーホテルまで選択肢が豊富。六本木や赤坂だと高級ホテルばかりで、所得のある欧米客が集中してしまうが、近年増えているアジア客はエコノミークラスで十分。

ホテル人気ランキング(予約件数)をみると、有名な高級ホテルというより、リーズナブルな宿泊施設が多くなっています」。

―2014年に人気急上昇した都市のランキングの上位に沖縄が入っています。沖縄ではどのようなタイプの施設が人気なのでしょうか。国籍でいうと、どこが多いのですか。

「沖縄は、香港、韓国、台湾のお客様に人気です。近年ではLCCの直行便の乗り入れが多く、家族旅行やゴルフにと、気軽に国内旅行の延長上のような形できていただいています。

沖縄でのウェディングもかなりメジャーになってきました。傾向としては2回目、3回目のリピーター層が多く、那覇や恩納村などの本島王道エリアから足を伸ばして、北部の美ら海水族館周辺エリアや名護のホテルが人気です。

人気ホテルは、ザ・ブセナテラス、オキナワマリオットリゾート&スパ、ザ・リッツカールトン沖縄などのラグジュアリーリゾート。ヨーロッパ圏の方は、離島びいきが多く、石垣・宮古・久米島が人気です」。

―お話をうかがっていると、当初日本の海外旅行市場に狙いを定めて参入したものの、インバウンド市場の急速な拡大にともない、訪日外客向けの国内ホテルの仕入れが急務となっているように思われます。

「おっしゃるとおりです。当初は欧米客が主流でしたが、アジア客はレジャーの比率が高く、リピーターも多いので、東京や大阪だけを押さえていても足りない。弊社の仕入部隊も地方の在庫強化を進めています。アジアからの急速なインバウンド需要に対応していく必要があるからです」。

―ホテル予約サイトには国内客向けと海外客向けの2つの顔がある。海外のホテル予約サイトは国内サイトに比べ、海外客の国内ホテル手配は弱みがあるといえますね。国内ホテルの仕入れ在庫数は国内サイトにはかなわないからです。また国内の宿泊施設のすべてが外国客を受け入れているかというとそうではない。こうしたなか国内ホテルの仕入れはどうしていますか。

(以下、仕入れ担当のレラン・ラビ アソシエイトマーケットマネジャー)

「正直なところ、数年前まではインバウンドの割合が少なかったです。あってもせいぜい東京、京都、大阪のゴールデンルートがほとんど。ところが、最近急速に北海道や沖縄、福岡、箱根などに足を延ばす海外客が増えています。そのため、弊社の仕入部隊も全国を飛び回り、契約施設を拡充しています。しかも、どんな施設でもいいというのではなく、なるべく外国客が泊まりたくなるような宿と契約しようと考えています。」

―外国客が泊まりたくなる宿とはどんなものでしょうか。

「実を言えば、外国客だからといって一括りにはできません。国によって全然違います。同じ欧米でも、なじみのあるヒルトン、ハイアットに泊まりたい人もいれば、日本でしか体験できないカプセルホテルや旅館に泊まりたいという人もいる。

アジア客は一般にリーズナブルな価格帯のホテルにニーズが大きいので、ビジネスホテルとの契約も増やしています」。

―外国客を泊めることに抵抗のある施設もまだ多いのでしょうか。

「インバウンドというキーワードは盛り上がっていますが、地方の旅館などに話をすると、外国客も取っていかなければいけないのはわかっているが、外国語が出来ないからと躊躇する経営者の方もいます。2020年のオリンピックは決まっている以上、どこかのタイミングで始めなければとは考えているが、タイミングを見計らっているような方もいます。ですから、我々はいまこそそのタイミングですと営業しています」。

―外国客を受け入れることのメリットは何でしょうか。

「いくつもあります。ひとつはリードタイムが長いこと。リードタイムとは、予約を入れてから実際に旅行するまでの日数のことで、ホテルの側からすると、予約がギリギリになるより、事前に入っているほうが安心です。海外のお客様は数か月前から予約を入れるケースが多いんです。

もうひとつは連泊が多いこと。一般にインバウンドの滞在は平均3~4泊といわれます。また平日利用も多く、連泊してくれるので、平日の需要の弱い曜日も埋められる。シーツの交換など、コストも軽減できる。アジアの団体客は1日1日動いていくイメージがあるが、エクスペディアはFITのみの扱いです。カプセルホテルから5スターホテルまでさまざまな需要があります」。

-もうひとつうかがいたかったのは、レイティング(ホテルの星付け)についてです。エクスペディアには独自の基準によるレイティングがあるといっていましたが、これはどんなものでしょうか。日本人の評価とは少し違うのでしょうか。

「世界基準でみると、同じ3つ星ホテルでもアジアの国のそれと日本では質が違う面もあります。海外を旅慣れている外国客が日本のホテルに泊まると、シーツがきれいで全然クオリティが違うという印象を持つ場合も。一方、客室の狭さは日本の特徴といえます。

エクスペディアには独自のスターレイティングチームがあって、以下のような基準で星付けをしています。

・施設の充実度
・サービスレベル
・部屋の内装
・共有部の内装・外観
・アメニティの充実度
・ホテルの築年数 など」

―最後に、仕入れ担当者からの宿泊施設に対するアドバイスをお願いします。外国客を受け入れるためにホテルが考えるべきことは何でしょうか。

「確かに、外国人に慣れていない施設では、言葉の面などハードルが高いと考えられるかもしれませんが、外国客も日本人がペラペラと外国語を話せるとは思っていません。最近の外国客はネットやガイドブックでよく調べてから訪日しています。たいていの日本のルールはよく理解している。エクスペディアが扱うのは、団体ツアーの世界ではありません。

ですから、何か特別に改善すべきというより、いままで通りのサービスで外国客は満足してくれると思っていただいていい。無理して外国客に合わせる必要はない。日本人に対するのと同じサービスで十分です。

問題はメンタルにある。その点少し日本人はまじめすぎるかもしれません。

ただし、シンガポールからの出張者が言っていたのは、たとえば、トイレに英語表記がほしいとのこと。日本の温水洗浄器付きトイレは使い方がわかりにくいものです。ボタンひとつ意味がわからないと焦ってしまうそうです。館内の英語表記は必要でしょう」。

訪日外国人の急増で、特にアジアからの団体客の受け入れを始めたホテルや旅館の苦労が並大抵ではないという話をよく聞きます。温泉やトイレの使い方が日本人には信じられないような結果になるといいます。しかし、エクスペディアのような海外ホテル予約サイトは、基本的にFIT(個人旅行者)を対象としていることから、海外旅行も慣れていて、こうした非常識な事態はほとんど考えられません。この違いは大きいといえます。

アジア客を扱うランドオペレーターから、海外と同じように日本でもホテルに対する公的な星付けをしてほしいと要望がよく聞かれます。海外ではツアー料金を決める際、ホテルが2つ星なのか3つ星なのかで差別化することができるが、日本ではそれぞれのホテルの評価があいまいで、料金差を設定するのが難しいからです。これはあからさまな「格差」が可視化することを好まない日本社会の特性からくることなのかもしれません。なぜ日本のホテル業界が星付けを採用しないのか、ぼくには本当のところはよくわかりませんが、こうなってしまうと、少なくともインバウンドの世界ではエクスペディアのレイティングがスタンダードになっていく可能性もあるのではないでしょうか。

いずれにせよ、いまの時代、どんなに無名の施設でも、適正な価格帯でエクスペディアに載せたとたん、予約が入ることはあながち誇張とはいえません。それだけに、今後ますますエクスペディアの国内宿泊マーケットにおける存在感は増していくのではないかと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-07-08 21:22 | “参与観察”日誌 | Comments(0)