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2012年 12月 29日
6月下旬、中国吉林省の延吉(延辺朝鮮族自治州)を起点に、北朝鮮咸鏡北道の羅先を訪ねた。中朝国境の陸の出入国ゲートとして丹東(遼寧賞)に次ぐ存在である圏河の税関は、日本海に近い図們江下流の琿春市にある。そこで筆者が見たのは、自家用車が何十台も列をなす渋滞だった。周辺は集落さえない中国最辺境のどんづまりで、最初は何事かと思ったが、後に中国人観光客の一行とわかった。 北朝鮮側に入ると、そこは海外資本に開かれた羅先(羅津、先鋒)経済亜貿易特区という地帯だ。ここでは1996年から外国人旅行客を受け入れているが、今年から朝鮮国際旅行社の手配する団体バスではなく、新しいツアー形態としてマイカーでのドライブ旅行が採用されたのだ。 図們江を渡り、北朝鮮側で入国手続きを済ませると、接待役(監視役)が現れた。筆者ら「日本人観光団」は従来どおりバスに乗せられた。 農村の1本道を約45分走ると、先鋒の町が見えた。表通りは積み木のような団地、その裏手に朝鮮家屋が続く。街中はこぎれいで清掃が行き届いている。行き交う車はない。 土ぼこりを上げつつバスを抜き去ったのは、20数台からなる中国マイカー軍団だった。その後、筆者らは終始彼らの後を追うことになる。訪問地は基本的に同じだからだ。 最初に案内されたのは先鋒の国際商品展示会。北朝鮮産品の販売所だ。日本海のカニや昆布などの海産物、地酒、工芸品、平壌医科大学の漢方薬のブースもある。陳列された商品の質や会場のそっけない雰囲気は、中国の80年代改革開放初期の商品展覧会を思い起させた。販売員はその頃の中国女性に似て清楚な印象だが、派手なチマチョゴリに身を包み、外国人の接客にずいぶん慣れていた。 北朝鮮観光ではお約束の、地元少年少女による歓迎の舞踊公演もあった。その日の晩には、羅先を訪問中の外国人約400名が羅先劇場に集められた。わずかの日本人とフランス人を除けば、みな中国人だ。 道路を改修したのも走るのも中国人 外国へのドライブ旅行という新趣向は、中国の中間層の嗜好にマッチしている。今回出会ったのは遼寧省瀋陽からのグループだが、彼らは自慢の高級外車で中国内の高速道路を約8時間走った後、北朝鮮に入国した。そこから羅津港までは50数キロの一本道。ドライブとしては、さぞ物足りなかったことだろう。 国境から羅津港までの道路は、日本海へのアクセスを手に入れたい中国が改修した。北朝鮮は特区のインフラを中国に無償で作らせているが、その道路をわが物顔で走るのもまた中国人。この構図は、今の両国の関係を表している。 中国人ツアー客にとって北朝鮮は「文化大革命が終わった頃のよう」と過去を振り返り、自国の経済成長を実感、自尊心を満たすには格好の場所である。高級車の団体旅行などは大幹部の来訪でもなければありえない。それを一般の中国人が楽しむ姿には、強い無力感を覚えるに違いない。それはまさに30年前、中国人が味わった思いでもあるのだが。 翌日は朝から雨。当初朝ロ国境の豆満江駅に行く予定だったが、ロシア方面から市内に至る道路は舗装されていない悪路のため断念。代わりに香港資本で99年に開業したエンペラーホテル&カジノを訪ねた。 2004年に延辺の地方政府幹部がここで公金を使い果たす事件が発生。一時カジノは撤去されたが、07年に再開された。顧客の99%は中国人。従業員の多くは北朝鮮人だが、一般人民は入館禁止だ。ミャンマーやベトナムの国境地帯にある中国人専用カジノと同様の存在だが、館内は閑散としていた。 この地域の問題は、インフラの絶対的な立ち遅れである。今回の羅先滞在中、日中はずっとどこも停電だった。日本統治下の36年に開港された羅津港からは、近年中国企業が上海に向けて石炭を数回積み出した。だが、市内の道路や中朝間の鉄道輸送に支障があり、今春を最後に再開されていない。 羅先へのドライブ旅行に参加したことがある延吉在住の朝鮮族ビジネスマンは、「羅先は1930年代からまったく変わっていません」と言う。日本の敗戦後に新しくできたのは、地元の発展に直接つながらないソ連製の化学プラントとカジノだけ。日本時代に投資された港湾施設や鉄道などのインフラは老朽化するに任されており、中朝が今進めているのはその再活用なのである。 中国という投資者を得て、北朝鮮はゆっくりと開放に向けて動いている。だが、高句麗の時代から続く長い不信の歴史があるだけに、北朝鮮が中国に向ける視線は複雑だ。そこにロシアの思惑も絡む。この地域の先行きを占うのは簡単ではない。 「週刊東洋経済」2012.9.29号より 上から、圏河イミグレ-ション、中国人マイカードライブ、地元少年少女による舞踊公演、、羅津港、エンペラーホテル&カジノ、勝利化学工場 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]()
by sanyo-kansatu
| 2012-12-29 21:00
| 朝鮮観光のしおり
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