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2013年 02月 21日
2011年12月11日は、『ゴーストタウン(廃城)』(2008)を観ました。 雲南省の辺境にある元漢人村と思われる小さな町の日常を撮った作品です。雲南省といっても、最近、中国の都市部の若者にもよくいるバックパッカーや外国人ツーリストが訪れる見所やゲストハウスのあるような気の利いた土地ではありません。いずれにしても、上海や北京の喧騒とは遠い世界の話です。 映画祭のパンフレットによると、このドキュメンタリーのあらすじはこうです。 「リス族とヌー族が暮らす雲南省の山岳地帯。政府によって放棄され廃墟となった街に、農民たちが住みついている。ここに住む人々は町の人の暮らす家や道路を享受し、頭上には真っ青な空と暖かな大地がある。 本作は3つの独立したパートにより、ゴーストタウンに生きる人々の状態を表現している。 ・「神の御言葉」……二世代の宣教師の平淡で味気ない家庭生活と宣教師の仕事について描く。平淡さの影には、父子の長年にわたる苦渋と矛盾が隠されていた。 ・「記憶」……分裂した家庭、誘拐されて売られた女性の心に閉じ込められた長年の苦悶。二つの異なる物語に共通する結末――ゴーストタウンからの別れ。かつての生活は、記憶へと変わる。 ・「少年」……12歳の阿龍少年の物語。何ものにも縛られず、毎日仲間とともに働いて金を稼ぎ、鳥を捕まえて遊ぶ。時にお化けを信じ、時にキリストを信じる」。 なぜこの町は政府によって「放棄」されたのか。この地域の事情に疎いぼくには正確なところはわかりませんが、町の中心にある旧政府の建物の前に毛沢東像がいまも立っていることから、ここは文革時代(あるいはそれ以前に)に都会から下放(政策的に移住)した漢族の若者が建設した町で、改革開放とともに彼らが都会に戻ってしまい、廃虚となってしまったのではないかと思われます。 それはいってみれば、満州国の消滅で日本人が帰国したのち、無人となった家屋に中国の民が住み着くようになったのと同じように、用なしとなった町に、周辺に暮らしていた少数民族たちが雨露をしのぐために移り住むようになったというようなことではないでしょうか。 監督には、何らかの政治的な意図があるのだろうと思います。ただし、いまどき文革時代の検証や批判といったものは、中国では流行らない気がします。そんなことより、いま現在の問題をどうするのか、ということに多くの人たちの関心があるからです。この作品が映し出す辺境の町の人々と暮らしは、もっと別の何かを訴えかけてくるのですが、正確な現地事情がわからないため、それをうまく言語化できないのが残念です。 いちばん印象に残ったのは、インドシナの国々の北部国境地帯と中国にまたがって暮らす少数民族のリス族たちが、町のキリスト教会で賛美歌を歌うシーンです。村人が建てた小さく粗末な教会ですが、まるで中南米のグアテマラに土着化したカソリック教会のミサを連想させる幻想的な光景でした。 欧米列強がアジアを植民地化した時代、インドシナの少数民族の住む地域に多くの宣教師が入り込み、キリスト教を普及しました。では、現在中国に住む少数民族たちの中にはどのくらいの信者がいるのでしょうか。今回の映画祭の出品作の「冬に生まれて(二冬)」の中にも、主人公が親に連れられ、更生施設としてのキリスト教の学校に入れられるシーンがありますが、漢族の住むエリアでも、農村に行くとかなり広範囲にキリスト教が普及していることがうかがわれます。 いま中国は膨張主義の時代に突入しているように見えます。尖閣沖や南シナ海もそうですが、人口減に悩む極東ロシアでも中国人労働者流入のプレッシャーにさらされています。中国からインドシナに高速鉄道を延ばす計画もある。周辺国の懸念は国によって濃淡はあるものの、高まりつつあります。 その一方で、国内ではこの町のようにゴーストタウン化する地域も増えています。この町の場合は、政治路線の転換に伴う「放棄」が理由ですが、最近では不動産バブルの崩壊でゴーストタウン化する町もあります。中国の膨張主義もまた、改革開放という政治路線の延長線上にあるものですが、そうした路線がひとたび行き詰まったあとに残るであろう静寂というものを、この小さなゴーストタウンはある意味先取りした光景なのかもしれない。そんな気もしてきました。 監督:趙大勇(チャオ・ダーヨン) 1970年遼寧省撫順市生まれ。美大で油絵を学び画家として暮らしていたが、2001年からドキュメンタリー映画の制作を開始。本作は『南京路』につぐ2作目。現在はドキュメンタリーのみならず、フィクションや実験映画なども制作し、活躍の幅を広げている。
by sanyo-kansatu
| 2013-02-21 13:07
| リアルチャイナ:中国独立電影
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