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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 05月 14日

19世紀の近代絵画のような風景~河口断橋の対岸にみる北朝鮮

中国遼寧省の丹東といえば、中国と北朝鮮を結ぶ最大の口岸(イミグレーション)のある都市ですが、そこから東に向かって約40㎞、両国を隔てる鴨緑江の上流に向かうと、河口断橋という奇観があります。
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削られて見えにくくなっていますが、昭和17年12月に竣工した橋だそうです。
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なにが奇観かというと、橋が途中でぶった切れているのです。普通であれば、橋が落ちたら、修復してつなぐものですが、河口断橋は1950年代に橋が断たれて以降、60年間そのまま放置されていまに至っているのです。この景観は、ぜひとも見ておくべきでしょう。
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なぜ放置されているのか。建国以来、中朝の経済発展が長く遅れていたから? そのうち、中国だけが一方的に発展し、両国のつり合いが取れなくなった? といった理由だけで説明できるものなのか、ぼくにはよくわかりません。この両国の関係というのは、表向きと内情ではずいぶん違うようですし。でも、これだけの長い時間、かつてあった橋をつなぐ必要もなかったような関係とは、どういうものなのでしょう……。それを思うと、少し寒気がしてきます。
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いずれにせよ、日本が統治した時代に建設された橋が、朝鮮戦争中に米軍の空爆によって破壊されたまま、現在に至っている。その荒涼として驚くほどの静寂に包まれた河畔の風景が、実に興味深いというほかないのです。

誰でも入場料(10元相当)を払えば、橋が断たれたへさきまで歩いて行けます。
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そこから対岸の北朝鮮の集落が遠望できます。とても寂しげな光景ですが、見ようによっては、電柱を除いて、なんら近代的な意匠を見つけることのできない集落。まるで時間が停まってしまったかのような……。いまどき世界中どこを探しても見つけることのできない、19世紀の近代絵画の題材になりそうな農村風景といえなくもありません。
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橋のたもとには、朝鮮戦争で戦死した毛沢東の息子、毛岸英の像があります。この人物の経歴については、調べるといろんな話が出てきて面白く、中国では映画にもなったようですが、たぶんここに彼の像があることは中国でもほとんど知られていないのではないでしょうか。日本時代に造られたトーチカもここには残っています。
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ここには、土産売りもいます。彼女は北朝鮮の切手を売っていました。

人の気配も少なく寂しげな北朝鮮側に対して、中国側の河畔にはホテルが立っています。ぼくがこの地を訪ねたのは5月中旬でしたが、6月以降になると、ここで多くの中国人がレジャーを楽しむことでしょう。レストランでは川魚料理が売りで、たいそうにぎわうそうです。
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この橋のたもとからは、鴨緑江を遊覧するボートが出ます。その話は、またあとで。→「【中朝国境シリーズ その3】丹東よりずっと面白い河口断橋の遊覧ボート
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(写真は2008年5月に訪問したときのものです)

by sanyo-kansatu | 2013-05-14 23:03 | ボーダーツーリズム(国境観光)


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