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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 05月 28日

鴨緑江遊覧ボートで見る中朝の発展格差をどう考える?(遼寧省丹東市)

これまで中朝国境沿いに残された断橋や疲弊した北朝鮮の集落、そこで暮らす人々の様子を川向こうからこっそり覗いてきましたが、今回は中朝国境を代表するスポットとして遼寧省丹東を紹介します。
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ここには、朝鮮戦争時に米軍によって落とされた鴨緑江断橋と、それに並行して造られた中朝友誼橋(全長946m)があります。中朝友誼橋には鉄道が敷かれており、中朝間をつなぐ最大の国境ゲートとなっています。

※鴨緑江断橋は1911年11月に開通した橋梁で、1950年11月8日に落とされたまま、反米プロパガンダとして現在もその姿を残しています。中朝友誼橋は1943年に開通し、こちらも米軍によって落とされたのですが、改修して使われています。
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断橋のたもとからは、鴨緑江下流に向かって遊覧ボートが出ています。
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遊覧時間は約40分ほどですが、乗客たちは中朝両国の発展格差を目の当たりにすることになります。遊覧コースについては地図にこうあります。
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以下、橋のたもとから下流に向かって北朝鮮側と中国側の様子を交互に写真で並べて対比してみましょう。撮影は2010年5月のものですから、中国側はともかく、北朝鮮側も現在はもう少し整備が進んでいると思われます。
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北朝鮮側:橋のたもとに小さな観覧車が見えます。
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中国側:橋のたもとには、断橋と対岸の北朝鮮の様子が見渡せる中聯大酒店(ホテル)が建っています。
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北朝鮮側;橋のたもとから数百メートル下流に朝鮮式の2階建て施設がみえます。ここで幹部らが食事でもするのでしょうか。
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中国側:その対岸にはマンションが立ち並んでいます。
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北朝鮮側:そのさらに数百メートル下流に老朽化した2階建ての用途不明の建物があります。
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中国側:その対岸には最新式の高層マンションがあります。
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北朝鮮側:さらに下流に行くと、港湾施設を建設中です。この先には中国の投資による新鴨緑江大橋が建設中です。中国の投資攻勢に北朝鮮も防戦一方ではすまされないでしょう。
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下流に向かって右手が中国、左手が北朝鮮。
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遊覧ボートが引き返して、左手が中国、右手が北朝鮮。
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両国の発展格差をもっと印象に刻みつけたいのであれば、丹東の市街地の北にある元宝山の上に建てられた黄海明珠塔に上るといいでしょう。元宝山の標高が155m、塔の高さが138mで、手前の丹東市内と北朝鮮新義州の街並みを遠望できます。

鴨緑江に面して高層マンションが林立し、ぎっしりとビルと人間が集住している丹東市内に対して、河を隔てた新義州には低層住宅がへばりつくように並んでいますが、市街地の向こうには何もなさそうです。
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少し俯瞰した写真で見ると、新義州のはるか向こうに高層ビル群が見えます。あれは丹東新区と呼ばれる開発区で、いずれ丹東の中心はあちらに移る計画だそうです。すでに丹東市政府の巨大なビルは移転しています。新鴨緑江大橋を架けようとしているのは、丹東新区からです。いずれ、新区の様子も紹介するつもりです。
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さて、こうしてみる限り、中朝両国の発展格差は絶望的なまでに拡がっているといえなくもありません。

この歴然とした格差の光景は、1980年代半ば、香港の新界から眺めた深圳を思い出します。見渡す限り田園風景だった深圳に対し、背後には超高層ビルが林立し、人ごみあふれる香港という対比。それでも、当時その光景をそれほど深刻なものとして受け取る気分になれなかったのは、中国大陸の大きさに比べれば、香港なんてちっぽけな存在にすぎないのだから……。そんな漠然とした思いがあったからだと思います。なんにしろ、中国はこれからゆっくり発展していけばいいのだからと。

ところが、鴨緑江を隔てた中朝の格差の光景には、どこか不穏な印象がぬぐえません。

巨大な中国に対し、北朝鮮はあまりに小さく、デリケートな存在だからです。ハンディが大きすぎるのです。

もし中国の投資家がアフリカやミャンマーでやったように好き勝手に北朝鮮に入りこんできて、フリーハンドで開発を進めたら、中国資本に飲み込まれてしまうであろうことは明らかです。鴨緑江遊覧ボートや黄海明珠塔から見る中朝国境の光景はそれを実感させます。でも、そんなことをあの国の政府が許すはずはないでしょう。北朝鮮の北東アジアにおける超問題児ぶりの背景には、何より中国との関係があるのです。

だからでしょうか、北朝鮮関係者によると、この国では海外からの膨大な投資を飲み込むことで発展してきた中国式モデルではなく、国情の似たベトナム式の改革開放モデルを学ぼうとしているとも聞きます。台頭する中国とじかに国境を隔てる国々の苦悩はこれからも続くと思われます。

by sanyo-kansatu | 2013-05-28 14:53 | ボーダーツーリズム(国境観光)


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