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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 06月 03日

丹東で“昭和”のフォルムを探して

中国東北三省を訪ねると、つい“昭和”のフォルムを探したくなります。
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昭和の時代に造られた建築物のやわらかいフォルムが単純に好きなのです。日本の地方都市にもあの時代の建物がときどき残っていて、それを見つけると、つい写真に撮っておきたくなる。それと基本同じです。

そういう“昭和”のフォルムが、20世紀前半に日本の大陸進出の結果、とりわけ中国東北三省に多く残されているという事実は、戦後の高度経済成長期に生まれた自分のような日本人にとって、奇妙な感覚があります。日本では幼少期までわずかに街に残っていた好ましいフォルムが一斉に消えてなくなっていく過程を目の当たりにしながら成長してきたところ、大人になって中国を訪ねてみたら、それがたくさん残っていることを知ったからです。それは小躍りしたくなるのを抑えられないような心持でした。ちょうど1980年代の半ば頃のことです。

しかし、いまや中国も高度経済成長のまっただ中にあります。かつての日本と同じように、あの魅力的なフォルムが次々に壊されていく様を、ぼくもこの20数年間見つめてきました。結局、同じことが起こるのだなと残念に思いながら。

だから、せめて中国で自分の好きなフォルムを見つけたら、写真に押さえておこう。これは一種の反射神経みたいなものです。

以下は2012年7月に中国遼寧省丹東を訪ねたとき、朝早く起きて駅前の宿泊ホテルの近所を1時間ばかり散策したときに撮ったものです。撮影は、ぼくの相棒、佐藤憲一カメラマンです。
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最初は、かつて安東大和小学校だった建物です。現在は遼東賓館というホテルです。丹東駅の北側の九緯路にあります。戦前の学校の校舎というのは、現代のものに比べて風格がありますね。教室だった部屋が客室に使われていると思うと、面白いです。
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昔の大和小学校の絵葉書も残っています。
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遼東賓館の前の九緯路は、街路樹が見事に育ち、涼しげです。吉林省延辺朝鮮族自治州の龍井もそうでしたが、東北三省の省都の中心部にはもうほとんどなくなってしまった街路樹が、地方都市に行くと、こうして今も残っていて、見るとホッとします。
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次は、安東郵便局で、現在は丹東郵政局と呼ばれています。七経街(当時は大和橋通)にあります。
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がっしりとした堅牢な建築で、絵葉書が撮られた頃に比べると、かなり増築しているようです。瀋陽駅前にも同じような当時の郵便局が残っています。
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冒頭の写真は、安東高等女学校です。現在は、丹東第六中学校で、錦山大街にあります。建築スタイルは、大連に残っている同時代の学校にもよく似ています。もっといえば、東京の都心に残っている昭和初期に建てられた小学校(廃坑寸前の学校も多いようです)のいくつかとも似ています。同時代の建築であるため、当然のことなのでしょうけれど。
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丹東の日本時代の建築については、大連世界旅行社の桶本悟さんが実地調査を続けておられ、いつもぼくは情報提供してもらっています。同社のHPにも、詳しく紹介されているので、ご参照ください。

大連世界旅行社
http://www.t-railway.com/

また、地元丹東の人らしき方が日本時代の絵葉書を集めてネットに公開していました。歴史といえば、「政治」と結びつけて語ることしかできない輩も中国には多いですが、理性的かつ素朴な好奇心から、学校で教えてくれた「歴史」とは異なる地元の昔の姿に関心を持つ人たちもいるのだろうと思います。

丹东人必顶:老安东图片
http://dx1.gogoqq.com/aspx/138705522/journalcontent/1319356440.aspx

by sanyo-kansatu | 2013-06-03 20:10 | 日本人が知らない21世紀の満洲


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