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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 06月 11日

戦前の旅行ガイドにも載っていたシティホテルの今【昭和のフォルム 大連◆ホテル】

“昭和”のフォルムを愛で歩く喜びを満喫させてくれる物件の一ジャンルとして、当時のホテルは欠かせません。

戦前の大連は大陸の玄関口でしたから、当時市内にはたくさんのシティホテルがありました。そのうち、いくつかは現存しています。
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なかでも最近まで大連飯店として営業していた旧遼東ホテルは1930年竣工のモダンなホテルでした。ぼくも一度宿泊したことがあります。客室をはじめ館内の施設は確かに老朽化していましたが、大連市内にいくつもできた外資系ホテルと比べても、なんともいえない重厚さと風格があります。堅牢な建築なので簡単に取り壊しというわけにもいかないようで、現在は一階部分のみ商業施設のようなつまらない使われ方をしていますが、誰かリニューアルして大連を代表するクラシックホテルとして再生してくれないものでしょうか。
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昭和18年に発行された旅行ガイドブックの「東亜旅行叢書 満洲」(東亜旅行社刊 ※東亜旅行社は終戦末期にジャパントラベルビューローが名称を変更)によると、大連市内の「旅館」として、以下の名前があります。

・ヤマトホテル(播磨町。室料5円・二食付9円)
・遼東ホテル(大山通。室料8円)
・中央ビルホテル(西通。室料6円)
・亜細亜ホテル(信濃町。室料5円)
・天満屋ホテル(西通。室料5円)
・花屋ホテル(信濃町。室料4円~7円)
・東郷旅館(信濃町。室料二食付6円)
・大連ナニワホテル(伊勢町。室料2円半~5円)
・錦水ホテル(信濃町。室料4円~6円)
・南満ホテル(東郷町。室料4円~6円)
・東洋ホテル(伊勢町。室料4円~6円)
・鎮西旅館(信濃町。室料4円~6円)
・春田旅館(監部通。室料4円~6円)
・日本橋ホテル(大山通。室料4円~6円)
・東旅館(信濃町。室料二食付4円~6円)
・大連ホテル(敷島町。室料3円~5円)
・雲水ホテル(信濃町。室料3円~5円)
・常磐ホテル(西公園。室料二食付3円~5円)
・大満ホテル(大黒町。室料二食付3円~5円) 其他

このうち、大連ヤマトホテルや前述の遼東ホテル、亜細亜ホテル、錦水ホテルなどが現存しています。

旧亜細亜ホテルは現在、大連大学付属中山医院として使われていました。遼東ホテルと同様、通りに面したファサードのなめらかな曲線がいかにも時代を表しています。
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旧亜細亜ホテルの隣にあるのが旧錦水ホテルです。3階建ての洋館です。当時の室料からみると、かなり高級なホテルだったようです。
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前述のホテルリストをみると、日本時代の信濃町にホテルが多かったことがわかります。これは現在の長江路の大連駅から勝利橋(旧日本橋)までにあたり、駅から近いのと同時に、大連港からの一本道にあたることから、交通の便が最適だったからでしょう。先ほどの旧亜細亜ホテル、旧錦水ホテルと同じ並びにある旧いわきホテルの当時の広告には以下のように書かれていました。
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「大連駅ヨリ3丁。埠頭ヨリ15丁」「大連中心地ニ近ク交通至便」
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こういうこじんまりとしたシティホテルは、人口の多い中国では重宝がられないのかもしれませんが、ただの商業ビルとして使うのはもったいない気がします。

by sanyo-kansatu | 2013-06-11 17:50 | 日本人が知らない21世紀の満洲


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