2013年 06月 27日
6月下旬、外務省はタイとマレーシアの訪日観光ビザを7月1日から免除することを発表しました。 タイ国民に対するビザ免除(外務省)2013年6月25日 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000361.html 今年に入って、確かにタイからの観光客は増えています。では、いったいタイの観光客はどんな日本旅行を楽しんでいるのでしょうか。 ここ数日、ぼくはタイ客を扱うランドオペレータ―を中心に取材していたのですが、ちょっと面白い話を聞きました。 西新宿にある焼き肉店「六歌仙」が、タイ人観光客に大人気だというのです(あとで聞いたら、すでにテレビで紹介されたこともあるそうです)。 六歌仙 http://www.rokkasen.co.jp/ 今週月曜日、「六歌仙」の磯見幸成社長にお話をうかがう機会がありました。以下、その採録です。 ―タイのお客さんが来店するようになったのはいつごろからですか? 「10年くらい前からでしょうか。実は最初、タイ人とは気づいていませんでした。東南アジアからのお客さまがいらっしゃるな、というだけで。お客さまはたいていガイドが連れてくるんです。そのうち、だんだん団体で予約が入るようになって。それがタイから来たツアーのお客さまだとわかったのは、5年くらい前からでしょうか」 ―なぜタイのガイドさんは貴店にお客さまを連れてきたのでしょうか? 「ガイドさんの多くは日本に住むタイ人ですが、自分が来店しておいしいと思ったからでしょう。一般にタイはインセンティブのお客さまが多いので、たいてい少人数で来店されます。タイに進出した日本企業の関係者が多いのですが、なかにはタイの政財界のVIPの方もいらっしゃいます。彼らの口に合うかどうかは、すべてタイのガイドの店選びのセンスにかかっているから彼らも真剣なんです。おかげさまで、当店はタイのお客さまに選んでいただけたということでしょう」 ―タイ人客の人気メニューは何ですか? 「おひとり様6500円の食べ放題コースです」 ―昨今の焼き肉食べ放題の激安ブームのなかで、かなりお高いですね。 「タイのお客さまはおいしいものにはお金を惜しまないそうです」 ―タイ人向けの特別なサービスはあるのですか? 「特にはないのですが、料理を出すとき、ちょっとダイナミックな感じに演出してお出しすることでしょうか。ちまちましたやり方ではなく、食べ放題ですから、その場を盛り上げる工夫をすることで、お客さまに喜んでもらえる。実は、ガイドがそうしてくれと言うんです。ガイドにとっても、自分が店に指示を出してサービスさせているという特別感をお客さまに見せることで面子が立つようです。こちらもそれがわかるので、それに合わせています。やはりガイドとの信頼関係がいちばん大切ですから」 ―タイ客の来店はどの時期が多いのですか? 「一般にタイの旅行シーズンは4月と10月だそうですが、最近は1年中いらっしゃいます。タイには3回お正月があるというそうです。元日と中華系の旧正月(1月下旬~2月)、そしてソンクラーン(4月)というタイの旧正月です。今年は前倒しで3月に大勢いらっしゃいました。一度に100名もの団体が予約されたこともありました」 ―タイ人に貴店が人気の理由は何だとお考えですか? 「タイ人は日本食が好きなんです。タイにはたくさんの日本食店がありますが、本場で食べたいと思う気持ちが強いそうです。食べ放題は金額を気にしないで食べられるので安心。味は保証つきですから、ガイドによる口コミで広がっていったようです」 ―お店の入り口にタイのインラック首相が来店されたときの写真が飾られていますね。 「それは昨年4月21日の日本メコン会議で来日されたときのものです。実は、首相はこれまで何回もお忍びで当店にいらっしゃっていたそうです。最初のころは、私もそれに気づいていませんでした。そのうち、タイの大使館から直接予約が入るようになって、あるとき、それがインラック首相だと知ったという次第です。お兄様のタクシン元首相も来店されたことがあります」 ![]() ―すごいですね。首相のお墨付きとあれば、タイの皆さんも喜んで来店されることでしょう。 「実は、今年5月に来日されたときにもいらっしゃっています。そのとき、私は首相にお手紙を渡しました。3.11のとき、タイは発電機を日本に支援してくれているんです。それを感謝するという内容を、知り合いのタイ人にタイ語で書いてもらってお渡ししたんです。すると、首相は同じ年の11月タイで洪水が起きたとき、日本からたくさんの支援をしていただき、こちらも感謝しているんですよ、とお話になりました。 最近はタイのテレビ番組でも当店はよく紹介されるようになりました。先日もタイのお笑い芸人さんが来て、日本の着物を着崩したりして笑いをとっていました。日本のバラエティ番組はタイではよく再放送されるそうです。昔テレビ東京の番組で当店を紹介してもらったことがあるのですが、それを観たというお客さまもいました。いまでは東京に来たら、六歌仙に行きたい、と多くのタイの方が言ってくださるそうです」 バンコクで発行されているフリーペーパーに掲載されたタイ人女性の「六歌仙」訪問記 ↓ ![]() ―ところで、磯見社長は店の宣伝のために、タイに行かれたことはあるのですか? 「実は一度も行ったことないんです。ですから、これまで話したことはすべてタイのガイドから聞いた情報です。 タイのお客さまはとても礼儀正しくて、親日的です。日本という国をまっすぐに見てくれる。きっと憧れを持ってくれているのでしょう。 最近では、タイの旅行会社の人も、ホテルの予約の前に、まず六歌仙に予約を入れる、なんて話も聞きます。タイのツアーは最後に東京に寄るコースが多いそうで、日本の最後の食事は当店で、とおっしゃってくださいます。確かに、他の飲食店に比べ当店は高めですが、最後の食事ということで、楽しみにしてらっしゃるそうです」 一般に中国からのツアー客は焼き肉も1500円程度の食べ放題店しかまず行かないと聞きます。ツアー代が安いため、一回の食事代からそれ以上の金額を捻出できないからでしょう。一方、タイからの日本ツアーは同じ滞在日数でも、中国人ツアーより料金は2倍くらい高いようです。逆にタイ人は少々高くてもおいしい店に行かなければ、クレームになるそうです。 磯見社長は言います。 「当店は創業28年ですが、安売りはしないことをモットーにしてきました。肉にはコストを惜しみません。私が社長に就任したのは4年前ですが、広告費はHPをつくったくらいで、いっさいかけていません。原価(の高さ)は保険代という考え方です」 外食産業のデフレ化が進むなか、同店で起きた「気づいてみたらタイ人客で満員御礼」という現象は、とても興味深い話といえます。店の格式とか伝統、内装デザインにはこだわらず、親しみやすさと何より味覚の好みを重視するタイ人客の存在は、中国本土客とは明らかに異なる客層といえそうです。国・地域によって求めるものがまったく違う。これこそ、インバウンドの面白さだと思います。 もっとも、社長によると、最近では香港客も増えているそうです。外国人同士の口コミなどを通じて店の価値が伝われば、タイ人以外のアジア系の人たちも来店する可能性はありそうです。 ![]()
by sanyo-kansatu
| 2013-06-27 11:57
| 東京インバウンド・スポット
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