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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 07月 06日

HISタイの訪日旅行の取り組みは要注目です

このところ、タイの訪日旅行マーケットについて取材しているのですが、いろいろ調べていると面白い動きを見せているのが、HISタイの取り組みです。
HISタイの訪日旅行の取り組みは要注目です_b0235153_1911138.jpg

HISタイ
http://www.his-bkk.com/th

タイ語が読めないので内容は詳細にはつかめないのですが、HPを見る限り、さすが日本の旅行会社だけに、多彩な日本ツアーが商品化されています。現地の旅行会社に比べて商品ラインナップが豊富であると同時に、驚くのはツアー価格の安さです。

たとえば、これはいわゆるキャンペーン料金の商品ですが、東京・大阪4泊6日で29999バーツ(約9万6000円)です。

SUPER SPECIAL TOUR OSAKA-TOKYO-B
http://www.his-bkk.com/th/pdf/ProgramSuperSpecialOsa-Tyo6D4N-A.pdf

大阪から東京までを4泊5日でバス旅行するゴールデンルートの商品ですが、今回調べたタイの旅行会社の平均的なツアー価格に比べると2万バーツ(約6万3000円)近く安そうです。

そのぶん宿泊ホテルをみると、中国人の日本ツアーでよく使われる新宿ニューシティホテル(同等)利用です。このホテルは、新宿中央公園の裏にあり、シャトルバスで新宿駅とつないでいますが、買い物や散策の便はいいとはいえません。つまり、他社のツアーに比べると、低価格のホテルを利用することなどを通してツアー代金を下げていると思われます。

HISはタイで訪日ツアーの価格破壊をやっているということでしょうか?

必ずしもそうとはいえません。なぜなら、HISタイは個人旅行者(FIT)への取り組みを積極的に行っているからです。たとえば、日本の旅行会社の強みを活かして、国内でのさまざまな外国人向けオプショナルツアーやレイルパスなどを販売しています。いまやタイはビザ免除された国ですから、今後は航空券とホテルの予約だけで来日する旅行者は増えるでしょう。観光バスやガイドに頼ることなく、片言の英語しかできなくてもいいから安く日本に行ってみたいという若い世代や、商談や視察に行きたいと考えていたものの、これまで手続きが面倒で訪日のチャンスの少なかったビジネスマンらをターゲットにしていると思われます。

さらに、HISが設立した新航空会社「アジア アトランティック エアラインズ(AAA)」が7月下旬から9月下旬にかけて成田・関空とバンコクをつなぐチャーター便のフライトを始めます。同エアラインはいわゆる国際チャーター航空会社で、旅行需要のピークである夏休みに合わせた期間限定のフライトとなります。これもFIT向けの取り組みともいえますが、当然のように、AAAを利用した航空券とホテルだけのスケルトン型のフリーツアー商品も販売しています。その価格は、3泊5日でなんと2万バーツ相当というものです。

アジア アトランティック エアラインズ(AAA)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=57886

AAA利用の訪日格安ツアー
http://www.his-bkk.com/th/FIT_Tour/fit_package_japan.php

こうした取り組みは、1980年代に創業したHISが、日本のアウトバウンドに個人旅行のブームを巻き起こしたビジネスモデルを、そのままタイのアウトバウンドに持ち込んだものといえるでしょう。もちろん、いまはチャーター便を飛ばすにしても、タイと日本の両方から客を運べるわけで、まさにツーウェイツーリズム時代のビジネスといえます。

HISは2013年1月現在、世界46カ国・地域101都市138の支店を有しており、今後は日本での売上よりも海外での売上比率が大きくなることを見越して、積極的に海外展開してきました。その基幹支店のひとつがバンコクなのです。

HISタイの動向について、都内の旅行会社に勤めるタイ人のカウィワットさんに感想を求めてみたところ、彼はこんな風に話してくれました。

「HISのツアーは確かに安いですね。これなら予算が少ないお客さんでも日本に来られると思います。ビザも免除されていますし、これからますますターゲットが拡がっていきますね。

HISに限らず、タイの旅行会社はターゲットを分けて商品を造成しています。お客さんをABCのランクで分けるとしたら、HISはCランクのお客さんをターゲットにしようとしているかもしれないですね。Cランクというのは、学生や入社したばかりの若い会社員などです。

ツアー料金は、コースの内容や自由行動の時間、食事回数、ホテルのランクで決まります。若い人たちは内容やホテルのランクをそんなに気にしないので、安さは大きな魅力です。

その一方で、World Surprise Travelというタイの旅行会社はAランクのお客さんをターゲットにしているそうです。

World Surprise Travel
http://www.worldsurprise.com

この会社のツアーに参加すると、お客さんは空港や移動などで、自分のスーツケースを運ぶ必要がなく、ポーターが付くそうです。HPを見ると、北海道7日9日ツアーが113,900バーツ(約36万5000円)というデラックスなツアーもあります。同社のHPでは美しい海外の写真や動画を豊富に使っていて、見ているだけでも面白いです」

この旅行会社のHPを見ると、高額ツアーもある一方で、東京2泊4日15900バーツという航空券とホテルだけのスケルトン型商品もありました(ちなみに宿泊ホテルは池袋のメトロポリタンホテル)。

どうやら当初想像した以上に、タイでは訪日ツアーのバリエーションが豊かになりつつあるといえそうです。HISについては、後日あらためて正式に取材をするつもりです。

※その後の取材については以下参照。
HISバンコク中村謙志統括支店長に聞く「旅行業グローバル戦略の最前線がバンコクである理由」
http://inbound.exblog.jp/21753599/

by sanyo-kansatu | 2013-07-06 18:47 | “参与観察”日誌


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