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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 07月 19日

「訪日韓国人 回復進む 円安ウォン高で拍車」【2013年上半期⑤韓国客】

「韓国からの訪日客が回復している。日本政府観光局の19日の発表によると、1月に日本を訪れた韓国人の数は23万人余りで、前年同月を3割強上回った。進む円安ウォン高の効果もあり、東日本大震災前の水準に迫っている。九州などの観光地は韓国人客でにぎわう光景もみられ、足が遠のいたままの中国人客とは対照的だ」(日本経済新聞2013年2月20日)
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「原発事故の影響で減った韓国人客は、昨年春ごろから回復。李明博韓国大統領の竹島(韓国名・独島)訪問で9月に鈍化したが、その後は増加基調を維持する。特に円安がウォン相場を押し上げた昨年11月以降は拍車がかかった」

同記事では、「九州旅客鉄道(JR九州)が韓国・釜山-長崎県・対馬間で運航する高速船は、1月の利用客が50%増加」「福岡市の商業施設『キャナルシティ博多』では、韓国人を中心に外国人客数が『足元は昨年夏の2倍』(運営する福岡地所)。ハウステンボス(長崎県佐世保市)は1月の韓国人入場者数が前年同月比18%伸びた」と報じています。

その一方で、「韓流ブーム 冬の気配 竹島・円安で観光客急減」(朝日新聞2013年4月16日)と韓国を訪れる日本人は急減しているという対照的な構図が報じられています。

「韓国を訪れる日本人が減っている。竹島問題や『アベノミクス』による円安に加え、『北朝鮮リスク』が追い打ちをかける。10年を迎えた韓流は曲がり角を迎えているのか」

「統計も日本人客の減少を裏づける。韓国観光公社によると、日本の観光客数は昨年1~8月まで全円を上回っていた。ところが、翌9月から急減。安部政権が生まれた昨年12月から、前年を2割前後下回る月が続く。特に韓流ブームを支えたとされる50代以上の女性が3割以上減っている」そうです。

訪日韓国人が増えたのは、円安に加えて、「LCC就航拡大 韓台から若者来やすく」(日本経済新聞2013年6月9日)なったこともありそうです。

「格安航空会社(LCC)の就航拡大により、台湾や韓国の若者が日本に旅行しやすくなっている――。観光庁の調べてこんな傾向がわかった。両国・地域からLCCを利用して来日した観光客の5割近くが30歳未満で、一般の航空会社より若年層の利用が多かった」

日本に発着するLCCは今年2月の時点で韓国が16、台湾が3。「両国・地域から日本への航空運賃は、LCCの方が一般の航空会社より2~3割安い」。そのぶん、「日本滞在中の平均支出額をみると、台湾はLCC利用者が9万3000円と一般の航空会社の利用者に比べ、2割少ない。韓国のLCC利用者も5万8000円と同3割少なかった」そうです。

同じことは「LCC訪日客、出費少なく」(日経MJ2013年6月9日)により具体的に報じられていました。ここでも、韓国のLCC利用者は「大手旅行会社の利用者に比べて運賃は約1万円安く、旅行期間中の1人あたりの支出額についても2万円程度少なかった。買い物をする場所はスーパーやショッピングセンター(SC)、若い女性の個人旅行が目立つ」そうです。

さらに、LCCを利用する韓国の若い女性の訪日旅行者は「来日回数では初めてという人が4割」と、必ずしもリピーターばかりではないことが興味深い結果といえます。一般にLCCは旅慣れた旅行者が賢く利用するというイメージが特にヨーロッパの事例などでは指摘されますが、アジア圏の場合、必ずしもそうではなく、これまで飛行機に乗ったことがなかったような層が利用を始めていることがここでもわかります。この点については、別の回で紹介します。

最後に、韓国人が大勢押し寄せている長崎県・対馬についての報道です。

「国境と歴史の島 長崎県・対馬に住んでみる」(日本経済新聞2013年7月6日)によると、「とにかく韓国の人が多い。対馬市厳原を訪ねた最初の印象だ。旧対馬藩府中(城下町)の小道を歩く。出会う人の大半は、団体や家族連れの韓国人観光客だ。昨年の来島者は約15万人。週末、土産店周辺には観光客があふれる。釜山・対馬間にはJR九州高速船、韓国の未来高速など3つの船会社が就航。厳原まで高速船なら2時間だ。釜山からは1万円弱の日帰りツアーもある。『異国情緒が手軽に味わえ、気分転換になる』(母親と来た女性会社員、30歳)、『歴史に関心がある。自然が豊かで町がきれい』(農業の男性、40歳)。登山も釣りも好まれ、対馬は『安・近・短』な観光地と親しまれる。隣国というより隣町感覚だ」

ただこんな声もあるようです。「韓国人観光客は決まったコース、飲食店、ホテルなどを利用するケースが多く、一般商店や飲食店の売り上げには直接つながらない」「観光客の賑やかさとは裏腹に、島の一部にはどこか冷めた視線がある」

「それでも島の活性化を目指す市は状況打開に知恵を絞る。例えば、観光情報や飲食店のメニュー、値段などを写真付きで見られるスマートフォン用韓国語アプリを長崎県観光連盟と協同で昨年秋に開発。対馬全体で約160の店や観光スポットの紹介を始めている」

いま対馬で起きていることは、日本のような島国の場合であっても、国の中央だけでなく、周縁からグローバル化が進んでいくというわかりやすい事例になっていると思います。こうした外からの人の流れによって、過疎といわれた地方も新たに活況を呈してくる。かつてのような日本と周辺国との圧倒的な経済格差が埋まり、富が平準化することで、日本も海外の人たちが自由に往来する「インバウンド社会」へと少しずつ移行しつつあるということでしょう。これからの国や地域のあり方をもっと考える必要がありそうです。

by sanyo-kansatu | 2013-07-19 18:01 | 気まぐれインバウンドNews


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