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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 08月 05日

外国人向け富士山ツアー、続々登場! ただし、欧米客向けばかり!?【2013年上半期⑬富士山2】

富士山の世界文化遺産登録で、増加が見込まれる外国人観光客向けの新しいツアー商品が続々登場しています。

「富士山観光 外国人を狙え ガイド付き高級ツアー、乗り放題切符」(産経新聞2013年6月19日)

同記事では、旅行大手のJTBの「ガイド付き高級ツアー」とJR東日本と富士急行の提携による「乗り放題切符」などについて、以下のように紹介しています。

「JTBが6日に発売した高級ツアーは、東京の高尾山から富士山頂までの行程約100キロを、温泉旅館などに宿泊しながら4日かけて歩く。料金は1人34万8千円(2人1室)で、外国語を話すガイドが同行。登山に関する装備なども貸し出す。『ほぼ毎日問い合わせが来る』(同社)という」

これはかなり本格的なFIT向けのツアーといえそうです。ただし、対象は旅慣れた欧米客に限られるのではないでしょうか。

「JR東日本と富士急行は、外国人観光客向けに2日間有効の割引切符を7月1日から10月30日まで販売する。東京都区内から大月駅(山梨県)までのJR往復に加え、富士急行の大月駅―河口湖駅間などが乗り放題となる」

JR東海の運行する富士山眺望を売りにした臨時列車も紹介されています。

「JR東海は、静岡県の浜松駅―御殿場駅間で臨時急行列車を7月下旬~8月上旬の週末に1日1往復させる。国内、海外からの観光客が対象で、20日から購入できる。窓が大きく景色が見やすい車両に変更し、『富士山を雄大に感じられる』(同社)という」

週刊トラベルジャーナル2013年7月15日号も、「外客に優しいFUJI」と題する特集を組み、新しい外国客向け富士山ツアー商品を紹介しています。

まず訪日外客を専門に扱うJTBグローバルマーケティング&トラベル(JTB-GMT)の催行する外国人客向けツアーブランド「サンライズツアー」の中から以下の最新ツアーを挙げています。

「富士山世界遺産ネイチャーガイドウォーキング」
英語ネイチャーガイドが同行するウォーキングツアー。文化・歴史の説明に耳を傾けながら、富士山の自然を堪能。

「富士山山岳信仰サイクリング」
英語インストラクターの同行による富士山周辺サイクリングを含むツアー。レンタルマウンテンバイクにて25km約2.5 時間のサイクリングで世界遺産構成資産(河口浅間神社・富士御室神社)を巡りながら河口湖(構成資産)を一周する。

「富士山ゴールデン周遊」
本宮浅間神社、白糸の滝、忍野八海など世界遺産構成資産を中心に巡る、従来よりも「富士山」にフォーカスしたツアー。富士山の見どころを満喫。

「富士山山岳信仰ウォーク」
世界遺産登録の礎となった「山岳信仰」をテーマに富士山周辺を散策します。道者体験プログラムとして金剛杖と菅笠(すげがさ)を身につけてウォーキングいただくと共に、御師住宅などを巡り、地元在住専門ガイドより富士山の歴史や文化を学ぶ。

※詳しくは、JTBの2013年6月24日のプレスリリースを参照。
http://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00001&news_no=1715

こちらは前述の「高級ツアー」に比べると誰でも参加しやすい一般的な内容ですが、やはり基本的に欧米客を対象としたツアーといえるでしょう。

一方、はとバスはこれまで中国語圏を対象にしていたバスツアーを英語圏にも広げる動きを見せています。

「はとバスでは、2005年から中国、台湾、香港などの中華圏市場を対象に中国語によるバスツアーの運行を開始。『富士山五合目と山中湖温泉』などの富士山観光の利用者も順調に増加して、11年には年間で1万人を突破する見通しだったものの、東日本大震災の影響により一時的に需要の低迷を余儀なくされる形となった。昨年から再び中華圏市場の回復が進み、『今年は年間利用者が1万人に迫るペースで推移』(はとバス広報室)

(中略)

これまで中国語だけの対応になっていた富士山観光について、より多くの外国人旅行者に楽しんでもらおうと、7月から英語で案内するバスツアーも2コース設定。人気の高い箱根と組み合わせた『富士山五合目と箱根』、富士山とフルーツを楽しむ『富士山五合目と山梨フルーツ狩り』はいずれも日帰りコースで、出発地の浜松町までは都内主要ホテルからの迎えサービスも付加し、初めて来日する外国人旅行者も参加しやすい工夫が加えられている」

「高速乗り合いバス」大手のウィラートラベルでも、外国人向けの富士山ツアーを始めています。

「ウィラートラベルの外国人向け富士山登山ツアーは、富士吉田市に登録された富士山登山専任ガイドが同行するプランに、登山開始から下山まで英語で通訳のできる添乗員が同行。富士山登山の際のペース配分や歩き方の指導を英語で行うと同時に、高山病など緊急時の応急処置や天候悪化への対処が必要な場合なども英語で説明できるようにした」

日本の旅行会社が新しく企画した多彩な富士山ツアーは、内容的にみてもクオリティの高いものが増えていますが、残念ながらその大半は英語圏の人たちを対象にしたものです。訪日客の4分の3を占めるアジア客の中にも、英語を使える東南アジア系の人たちがいるとはいえ、どこまで彼らにアピールできているかが気になります。

同誌では、台湾の女性客向けの新機軸のツアーについても紹介しています。

「台湾から富士山への旅行は、これまで富士五湖周辺が主な目的地で、一般旅行者に向けた現地の温泉やスパなどレクリエーションを中心としたものがコースに組み込まれている。(中略)台湾近畿国際旅行社では、台湾における会社設立以来さまざまな市場に向け、スポーツ、高級、女性向けといったテーマ商品を売り出している。なかでも富士山ツアーに関しては、台北/静岡直行便を利用した台湾人女性向けの富士山登山5日間のツアーを販売中だ。

このツアーは、ティー・ゲートが運営する『旅の発見』と提携したもので、台湾女性向けの富士登山1泊2日コースである。女性専用とあって、プロの女性登山ガイドと、長年の経験を持つプロの登山隊が同行し、参加者に2重の安心が保障されている。登山コースは、景観の美しい富士宮口5合目から出発し、御殿場方面へ下山する。6合目に到着後、皇太子殿下が下山したことからプリンスルートと呼ばれる道を進み、富士宮口5合目へ戻る。

登山のほか、清水港付近のちびまる子ちゃんランドや、大井川鉄道SL列車に乗車、大型アウトレットがある御殿場にも立ち寄る。台湾人女性旅行客の最も好きな要素ばかりを組み込んだ商品として話題を集めている」

2012年に就航したチャイナエアライン(CI)の台北/静岡線を利用したこのツアーは、同年6月に台湾で営業を始めた近畿日本ツーリストの現地法人の台湾近畿国際旅行社が催行したものです。本来、日本のツアーは国内の観光事情に詳しい日本の旅行会社が得意とするはずですが、中華圏の観光客の多くは、在日アジア系の旅行会社の手配するツアーに参加しているのが現実です。中身より安さに流れてしまうからでしょう。

これからは「安かろう悪かろう」に流れがちなアジア客向けにも、日本の旅行会社の現地法人による新機軸の旅行商品の存在をもっとアピールしていく必要があると思います。いつまでも「安かろう悪かろう」では彼らが気の毒ですから。

by sanyo-kansatu | 2013-08-05 09:32 | 気まぐれインバウンドNews


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