2014年 02月 04日
日本経済新聞2014 年1月30日によると、「31日からの春節(旧正月)の期間中に、中国からの訪日客数が大幅に回復する見込み」となったそうです。 ![]() 「日本向け査証(ビザ)発給のほぼ半分を占める上海の日本総領事館では、個人観光ビザの発給が過去最高のペース」。「昨年12月に発給した個人観光ビザは約1万4400件」で「前年同月の3.6倍」。「今年1月に入ってからも順調に伸びている」(上海の総領事館)といいます。 「中国人の訪日客は反日デモが起きた2012年秋以降に落ち込み、昨年9月に1年ぶりにプラスに転じ」ていましたが、昨年末の安部総理の靖国参拝がどう影響するか、関係者はやきもきしていました。 なんといっても、背景には円安があります。「中国・人民元に対して日本円は年間で20%程度下がって」おり、中国客からすると、日本の割安感はハンパじゃないと思われます。先月上旬ぼくは北京を訪ねたのですが、1万円両替してもわずか550元。2年前なら800元近かったことを思えば、急激に人民元が強くなっていることを痛感しました。 同紙では、中国の個人ビザ客の実態として「私費旅行」が増えたと分析しています。「習近平指導部が進める綱紀粛正」により、「今年1月から共産党員や公務員を対象に公務を名目とする視察旅行を禁じ」ており、それでも訪日客数が増えたのは、「欧米よりも割安な日本に私費で旅行する人が増えたとみられる」からだといいます。 中国客の復調をふまえ、中国LCCの吉祥航空(上海)が1月31日から上海・那覇線週4便を就航しました。同キャリアは12年9月に就航を予定していたものの、尖閣問題で延期していました。 那覇―上海に就航 吉祥航空、週4往復の定期便(琉球新報2014年2月1日) http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-218697-storytopic-4.html 同紙は、「訪日客1人あたりの買い物代金」の主要国比べのグラフを掲載し、「旅行中に飲食や買い物などに使う金額」のトップとして中国を挙げ、「高額消費に期待」をかけています。中国客を金づるとしか見ようとしない同紙の姿勢は相も変わらずですが、中国客が訪れる個別の量販店を除いて、実際どれほどの消費が期待できるのか、あやしい気がします。中国人観光客=経済効果といった単純な見方はそろそろやめにしてもらいたいものです。 もっとも、靖国参拝であれほど大騒ぎしていた中国から観光客が戻ってきたというのは、単なる円安のせいだけではなさそうです。東洋経済オンラインでは、以下のコラムが背景を解説しています。 反日に変化? 中国人観光客が大挙して来日中~春節で「肺をきれいにする」ツアーの側面も(東洋経済オンライン 2014.2.3) http://toyokeizai.net/articles/-/29780 同コラムでは、訪日客が増えた理由を、中国人の立場からみた「福建省の老朋友(古い友人)」の話として、以下の6点を挙げています。 ①中国は環境汚染がひどいのに、日本は「PM2.5」の心配をほとんどせずに済むので本当に安心だ。 ②中国の食品は危ないものもあるが、日本で食べる食品はおおむね安全で新鮮で美味しい。 ③中国の観光地に行くと混雑していてゴミも多い。だが日本はほとんどどこでも綺麗だ。 ④中国で買い物をすると偽物が少なくない。だが日本人は正直なのでほとんど心配ない。 ⑤中国では軍国主義の日本の話ばかりTVで放映しているが、全部ウソだとわかった。 ⑥中国のサービスは金儲けが主体だが、日本のホテルや旅館の「おもてなし」は最高だ。 さらに、「客観的な」理由として、以下の6点も付け加えています。 ①日本の外務省が、ビザの発給基準を緩和した。 ②日本円が円安傾向のため、日本旅行は割安感が出た。 ③欧州旅行よりも手軽で近いから、春節の旅行にはうってつけ。 ④福島原発の危険性は、以前よりも少なくなった。 ⑤東京オリンピック、富士山の世界遺産のニュースが後押しした。 ⑥東南アジアは混雑する上に、タイの暴動などが旅客の足を日本に向けた。 ここで挙げられるポイントに特に間違った指摘はないと思われますが、なぜ昨秋頃から徐々に中国からの訪日客が回復してきたかという理由については、答えていないと思います。 ではその理由は何か。 ひとことでいえば、一昨年秋の尖閣問題以降、訪日旅行の最大マーケットだった上海に対する中国国内のバッシングが夏頃からようやく収まってきて、上海の消費者の訪日自粛がとけたからなのです。 ここでいうバッシングというのは、一昨年秋冬に起きた「春秋航空0円キャンペーン」や「上海発熊本へのクルーズ客」に対するネットなどで見られた執拗な批判のことです。「なぜ上海人は(尖閣問題が起きたばかりの)こんなときに、のこのこ日本に旅行に行ったりするのだ」と、まるで上海人に対するイジメのようなネガティブキャンペーンが中国国内で繰り広げられていたのです。そのため、上海の旅行関係者らはしばらく訪日旅行ビジネスを自粛するほかなかったのでした。上海の消費者も極力日本に行くことを避けていたのです。 昨年11月、上海を訪ねたとき、ある旅行関係者は、当時の状況について「中国では上海人はとことん嫌われていると感じた」と感想をもらしていました。経済的に恵まれた上海に対する妬みは、こんな形で現れてくるというのです。 そうしたトラウマからの自粛がほぼとけたのが、昨年9月でした。その頃からいっせいに新聞に訪日旅行の広告が掲載されるようになりました。結果的に、10月以降の訪日中国人数は回復したのです。 訪日中国人数 2013年10月 前年同月比74.1%増 11月 前年同月比96.0%増 12月 前年同月比84.8%増 JNTO報道資料(2014年1月17日) http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/pdf/140117_monthly.pdf そういう意味では、今年の春節の訪日客が増えたことであんまり盛り上げすぎると、またもやバッシングが再開されるかもしれません。気をつけたいものです。
by sanyo-kansatu
| 2014-02-04 14:43
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