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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 02月 07日

2013年 年末年始の海外旅行者数、円安でも過去最高(世界の旅行動向とインバウンドの関係)

旅行大手JTBの2013年12月4日のプレスリリースによると、2013年の年末年始(2013年12月23日~14年1月3日)の旅行動向調査の結果、海外旅行者数は前年比2.1%増の69万5000人、過去最高となる見通しだと伝えています。

その理由として「12月28日から1月5日まで11年ぶりの最大9連休、冬のボーナス増も旅行を後押し」と解説。海外旅行先としては「ヨーロッパ、アメリカ、ハワイの中長距離が増加傾向、アジアも韓国を除けば、引き続き高い人気を維持」とのこと。

同社のツアーブランド「ルックJTB 」の売れ筋コースは「ヨーロッパ方面ではイタリアやスペインが人気の他、オーロラを鑑賞するコース」「ハワイ方面では、年々オアフ島以外の島々で過ごす旅行者が増えており、年末年始をリゾートで静かに過ごしたり、ハワイらしい島々の魅力を味わいたい意向が強まっている」「東南アジアでは、マリーナ地区の人気で火が付いたシンガポール、座席供給数が増加傾向にあるインドネシアやベトナム、台湾などが人気。世界遺産の他に、高級リゾート地として最近注目を浴びているスリランカ、癒しやパワーも魅力の一つとされるネパールやブータンなども注目」といいます。

■年末年始海外旅行人気ランキング

1位 ハワイ
2位 台湾
3位 タイ
4位 シンガポール
5位 グアム
6位 ベトナム
7位 アメリカ(本土)
8位 イタリア
9位 香港
10位 フランス

JTBプレスリリース(2013年12月4日)
http://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00001&news_no=1780

とはいえ、2013年は円安が大きく進んだ年であり、海外旅行商品も為替の関係で値上げが起きています。

「海外旅行 10月から値上げ」(産経新聞2013年8月16日)では、「旅行大手各社が、平成25年度下期(10月~26年3月)の海外パック旅行の価格を相次ぎ引き上げる」と報じています。「外国為替市場で円安が進み、現地での宿泊代などが上昇したためで、前年同期に比べて最大10%程度値上げする」というのです。

確かに、「円相場は、安部晋三政権発足前の昨年11月中旬には1ドル=79円台だったが、今年5月下旬には一時1ドル=103円まで下落」したわけですから、「現地通貨建てのホテル代やレストラン代、バス代などの負担が増している」のは無理もないでしょう。

海外ツアー料金の値上げは円安ばかりが理由ではありません。

「海外ツアー 客室争奪戦 新興国から旅客増加」(日経MJ2013年9月18日)では、「円安という値上がり要因に加えて、新興国の消費者が海外をどんどん旅行するようになった結果、ホテルの仕入れコストがかつてないほどの上昇圧力にさらされている」ことも大きく影響しているからです。
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同紙によると、「国連の専門機関、世界観光機関によると、今年1~6月の世界の海外旅行者数は4億9400万人と前年同期比で5.2%増えた。地域別では世界全体の約半分を占める欧州が5.1%増とばったほか、アジア・太平洋が6.2%増と伸び率が最も高くなるなど世界的に旅行者数が拡大。こうしたなか、仕入れを巡る争いも世界規模で展開される」ためと解説しています。

日本人の海外旅行の動向は一見インバウンドには無関係のように思えますが、こうした世界の旅行市場の拡大が、海外ツアーの料金アップにつながるだけでなく、日本のインバウンド旅行市場の成長の背景にもなっていることを理解しなければなりません。要はインもアウトも連動しているのです。

同紙は、海外ツアー商品の2013年度下期(10月~14年3月)から14年度上期(4月~9月)にかけての価格動向の見通しとして以下のように予測しています。

●ヨーロッパ
2013年度下期(10月~14年3月) 3~8%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%未満UP
※ユーロ高や新興国からの旅行者が増加し、ホテルの仕入れ価格が上昇するため。

●アメリカ(本土)
2013年度下期(10月~14年3月) 8~10%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%未満UP
※円安が響くため。

●ハワイ
2013年度下期(10月~14年3月) 8%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%以上UP
※米国や中国からの旅行者が増加。ホテルが価格で強気になるため。

●アジア(中国、韓国を除く)
2013年度下期(10月~14年3月) 3%UP
2014年度上期(4月~9月) 5%未満UP
※東南アジア内の旅行需要が拡大。ホテル価格が上昇のため。

●中国
2013年度下期(10月~14年3月) 3~5%UP
2014年度上期(4月~9月) 横ばい
※日本人旅行者減と他国からの旅行者増がほぼ相殺。

●韓国
2013年度下期(10月~14年3月) 10%DOWN
2014年度上期(4月~9月) 5%未満DOWN
※竹島問題を受けて、日本人旅行者が減少してホテル単価が下落傾向。

それにしても、これだけ料金がアップしているのに、今回の年末年始は過去最高の海外旅行者数となったのは、なぜだったのでしょうか。

前述のJTBプレスリリースは、2013年の海外と国内をあわせた総旅行消費額の回復を触れたうえで、以下のように指摘しています。

「総旅行消費額は、対前年比6.1%増、1兆1,055億円となり、5年ぶりに1兆1千億円を超えました。2008年のリーマンショック以前の水準にはまだ戻っていないものの、回復を見せていると言えます。

昨年以降の円安傾向や物価の上昇が旅行意欲を減退させる動きには、この年末年始に関しては直接繋がってはいないようです」。

つまり、「円安でも過去最高の理由」は、国内の「景気回復」ムードにあると素直に判断してよさそうです。でも、それは「この年末年始」に限っての話なのか。今年4月の消費増税後は、海外旅行マーケットにどんな影響が出てくるのでしょうか。

一般の消費財と違って旅行商品は、買いだめや駆け込み消費ができないのが特徴です。これまで見てきたように、日本の消費者はすでに昨年の時点で円安他の理由から今年4月の消費税率アップ以上の海外旅行商品の値上がりを経験しています。だとすれば、それほど大きな阻害要因にはならないとも考えられます。

海外旅行マーケットを考えるうえで、いわゆる金融資産1億円以上の富裕層と一般層の購買行動を分けて考える必要がありそうです。

「高額消費、主戦場は車・住宅 消費増税前、富裕層は株価と両にらみ」(日経消費インサイト2013年11月号)によると、2013年に富裕層が「購入・契約した高額の商品・サービス」(複数回答)のアンケートのトップは「海外旅行」(27.8%)。次いで「1人1泊3万円以上の国内旅行」(24.2% )。旅行マーケットにおける富裕層の存在感は大きいといえます。

同誌では、富裕層の購買行動にいちばん影響を与えるのは「株価」だと指摘しています。一般層が「給与・賞与」に影響されるのとは違うところです。これは、海外旅行マーケットが消費増税以上に株価の動きに影響されることを意味しているのかもしれません。

むしろ、昨今の新興国の金融不安に伴う日本株の変動は気がかりといえます。

ところで、年末年始の国内旅行の動向ですが、こちらも前年度比2.0%増の2983万人で過去最高だそうです。

連休が長いため、旅行日数は「二極化」傾向。「日並びの良さを利用した長期間の旅行を計画するタイプ」と「三が日前後に短期間の旅行をするタイプ」に分かれるそうです。

方面別では、「世界遺産に登録された富士山周辺への旅行者が増加」「観光列車が数多く走る九州」「LCCの就航で地方都市からの路線が増えた大阪」「東京ディズニーリゾートや東京駅舎周辺、東京スカイツリーなど東京周辺」が人気といいます。

年代別の出発日は「29歳以下の若い世代は早めに」「熟年世代は年明けに出発する」傾向が見られたようです。旅行の目的については、東日本大震災直後の2011年末や12年末に多かった「家族や友人と一緒に過ごす」「この時期しか一緒に旅行できない」の項目のポイントが減少し、「正月情緒を味わう」「おいしいものを食べる」といった項目が上昇したといいます。震災のショックから、家族や友人など大切な人間関係を重視する傾向が見られた昨年までの年末と比べ、今回はより通常型の旅行目的に回帰していると思われます。

by sanyo-kansatu | 2014-02-07 17:58 | 気まぐれインバウンドNews


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