2014年 12月 30日
今年10月下旬の朝日新聞の海外面にこんな小さな記事が載りました。 中国・北朝鮮 国境の橋 完成しても不通(朝日新聞2014年10月21日) 中国と北朝鮮を隔てる鴨緑江にかかる新しい国境橋が10月末に完成する。中国の温家宝首相が2009年の訪朝時に合意した中朝協力の目玉事業。ただ、両国の関係悪化もあって、北朝鮮領内では橋に続く道路が造られておらず、開通のめどはたっていない。 橋は中朝国境の最大都市、丹東の開発区で11年5月に建設が始まった。全長3㎞で片側2車線。中国紙によると、中国側が建設費用を負担した。両国を結ぶ国際列車やトラックが現在も使う日本侵略時代の旧橋(1車線)に比べ、大幅な旅行客や貨物往来の拡大が期待されていた。 中国側では、橋のたもとに「10月30日に完成」という看板がいくつもかかる。だが、橋を渡った地元関係者は「北朝鮮側は舗装道路すらできていない」。工事関係者も「来夏に使用できれば御の字」と言う。 中国側は将来の地下値上がりを見込み、橋のたもとでマンションやオフィスビル建設が続くが、北朝鮮側は田園風景が広がったまま。丹東では「北朝鮮政府が自国側の道路建設費も求めたが、関係悪化もあって中国政府は断った」(事情を知る地元関係者)との声も出ている。 本ブログでもこれまで何回か報告してきた「新鴨緑江大橋」(どうやら正式名は「中朝鴨緑江公路大橋」)が完成したというニュースです。1年半前には「半分くらいできた」状態でしたが、ようやくつながったんですね。 「新鴨緑江大橋が半分くらいできた」と地元の人に聞きました(2013.6.5) http://inbound.exblog.jp/20555737/ 今年10月には完成するという話は、7月に丹東を訪ねたとき、聞いていました。これが2014年7月下旬の写真です。橋自体はこの時期もう北朝鮮とつながっていて、橋桁の道路を整備している様子でした。 橋のたもとには巨大なイミグレーションビルが建設中でした。 朝日に掲載された橋の写真はおそらく完成したイミグレーションビルから撮ったものと思われます。 工事現場にディスプレイされていた完成図のうち、現在どこまで出来上がっているのかわかりませんが、中朝間の最大の国境ゲートとなるだけに、中国側は相当気合を入れていることがわかります。 一方、朝日の記事にもあるように、「北朝鮮側は舗装道路すらできていない」。2年前から地元の人は同じことを話していました。 それにしても、北朝鮮側のこのやる気のなさはどうしたことか。 しかし、考えてみてください。中朝間の経済格差をいやというほど見せつけられた彼らが素直に中国側に従うとは思えません。では、どうするつもりなのか。中国側は「来夏に使用できれば御の字」と言っていますが、彼らはこれまでどおり、国際情勢の変化を注視し、わずかでも自らの立場が優位に傾く時期を見計らいながら、ずるずる先延ばしにするに違いありません。いますぐこの新橋を通って中国から大量の車両に乗って商人や旅行者が押し寄せてきたら、従来通りの外国人管理や経済統制は困難になるでしょう。そうなったら終わりだと彼らは考えているはずだからです。 同じことは、新橋に近い中朝国境の一部に設定された黄金坪開発区の現況にもいえます。 中朝共同開発の工業団地「黄金坪」はいまだ停滞中 http://inbound.exblog.jp/23944634/ それでも、10月17日から20日にかけて丹東では、3回目となる「中朝経貿文化旅遊博覧会」が開催されました。会場は新橋の架かる丹東新区の国門湾家居生活広場と科技五金城でした。 中国の国内企業や北朝鮮企業、さらには台湾やパキスタンなどの海外企業も出展していたそうです。 会場には一般市民が訪れ、各企業のブースでショッピングを楽しんでいたとか。北朝鮮の企業ブースで主に扱っているのは、焼酎やビール、ソフトドリンク、ハチミツ、高麗人参、朝鮮絵画、コイン、食器、海産物、衣料など。 ちょうど同じとき、平壌でも国際見本市が開かれ、中国やヨーロッパなどから300社の企業が参加したと報じられていましたが、北朝鮮としては、自国の企業を育成し、海外に商品を輸出できるだけの競争力をつけることが先決で、新橋によって中国から一気に資本や人・モノの流れが押し寄せてくる事態は、できる限り先送りしたいのが実情だと思われます。 北朝鮮、日本企業を歓迎するもう1つの顔 平壌の大規模見本市に押し寄せる市民(東洋経済ONLINE) http://toyokeizai.net/articles/-/52275 〔追記〕 中国丹東の不動産市場が沈滞傾向 北朝鮮経済開放への期待外れる DailyNK(2015年3月3日) http://dailynk.jp/archives/36503 こうしたことから丹東新区として開発中のエリアも停滞しているようです。
by sanyo-kansatu
| 2014-12-30 13:29
| ボーダーツーリズム(国境観光)
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