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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 02月 27日

台湾のドラッグストア研究家、鄭世彬さんと知り合う

先日、上海の書店で面白い本を見つけました。

『东京美妆品购物全书』(中国軽工業出版社 2014年)という本です。「東京コスメショッピング全書」とでもいえばいいのでしょうか。
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内容をざっくりいうと、日本のドラッグストアで販売している医薬品や健康商品、化粧品、美容グッズなどから優れた商品をジャンル別に選んで分類し、紹介したガイドです。これは海外で刊行されている書籍という意味で、ある種、画期的なものではないでしょうか。訪日する中国人観光客がいま最も知りたい情報が一冊にまとめられているというわけですから。

同書は以下の6つの章に分かれています。

Part1 東京のドラッグストアの世界を紹介し、毎年3月に開催される日本ドラッグストアショーや10大人気商品(薬、化粧品)を写真入りで解説しています。

Part2 日本のドラッグストア業界は戦国時代にあると前置きし、都内の特色ある有名店を紹介しています。ぼくなど知らないような店(TOMOD'S東池袋店、OS DRUG渋谷店、AMERICAN PHARMACY、エッセンス池袋東口店、まかないこすめ神楽坂総店など)も出てきます。

PART3 これがメインコンテンツで、各効能・用途別の医薬品や化粧品、美容商品、健康食品、トイレッタリー商品などの図鑑形式の総目録です。これらの商品を著者がどうやってここまで詳しく調べ上げたのか、驚きを禁じ得ません。
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これは日本のドラッグストアで購入できるOCT医薬品ベスト10だそうです。
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こちらは化粧水・乳液のページです。

Part4 都内主要地区(新宿、渋谷、銀座、池袋、上野、川崎)のマップ

Part5 日本のコンビニで販売されている美容商品を紹介しています。

Part6 羽田と成田のショッピングエリアの紹介です。

とにかくやたらと詳しく、中国客が日本で間違いなく買いたいものを手にするための情報が満載した内容です。

誰がこんな本を書いたのだろうか……。もしや日本のドラッグストア業界がからんでいるのかなど、いろいろ考えてしまいましたが、奥付をみると、著者は台湾人の、しかも男性です。女性ではないのです。

いったいこの人物は何者なのか……。

帰国してしばらくして、googleで「鄭世彬」(最初は簡体字の「郑世彬」)検索してみました。すると、その人物の著作がいくつか中国のECブックサイトに出てきました。つまり、すでに台湾で刊行された彼の本を中国の出版社が版権を買い、簡体字版として刊行しているのです。奥付によると、この本の取材は2012年、台湾での刊行が13年、中国では14年のようです。

であれば、本家の台湾を調べようと、今度は繁体字の「鄭世彬」で検索すると、「日本薬粧研究家 鄭世彬」がすぐに見つかりました。ご本人とは別に彼の主宰する「日本薬粧研究所」のFacebookもあります。

日本GO! 藥品美妝購!
https://www.facebook.com/JAPAN.DRUGS.COSMETICS

ここまで調べると、ぼくはこういうときあまり躊躇しない人間なので、すぐに彼のfbを開き、メッセージを送りました。

「はじめまして。上海であなたの本を買いました。とても面白かったので、コンタクトを取りたいです」と、簡単に自己紹介も兼ねて友達申請したところ、わずか数分で彼から返信が届きました。

それが一昨日の午後のことです。

ぼくは鄭世彬さんに以下のような3つの質問を送りました。

①日本や韓国のドラッグストアの商品に関する書籍を執筆された動機やきっかけは何だったのですか。
②この本の読者はどのような人たちですか。台湾と中国で違いはありますか。どの内容にいちばん関心が強いですか。
③昨日、メールで日本のコスメメーカーのコンサルティングもしておられるとお書きでしたが、具体的にはどんなことですか。

以下が彼からの回答の概要です。

①日本や韓国のドラッグストアの商品に関する書籍を執筆された動機やきっかけは何だったのですか。

「これまで本は8冊出しています。以下は私が台湾で刊行したリストです。

鄭世彬著作リスト
http://search.books.com.tw/exep/prod_search.php?key=%E9%84%AD%E4%B8%96%E5%BD%AC&cat=all

前半の8冊が私の著作で、その下は私が翻訳した書籍です。

私は元々出版業界の人間でした。このような書籍を執筆するきっかけは、以前からよく家族や知り合いの人が日本で買ってきた薬のパッケージを持ってきて、翻訳してほしいと頼まれていたからです。きっと多くの台湾人にも同じ悩みがあると思い、翻訳を手伝っていた出版社に相談して、台湾初の日本OTC医薬品(処方箋の不要な市販の薬品のこと)を解説する買物ガイドを出版しました。

その後、読者から「コスメの本もほしい」といわれ、次にコスメガイドも作りました。ネットで拾った情報だけで本を作るのが嫌いなので、各メーカーにメールを出して、取材を申込みました。最初は相手されませんでしたが、最近では少しずつ私の存在が理解されるようになり、取材協力もしてもらえるようになりました。

実は、今まではずっと自腹取材だったので、出費が膨大で、新しいコスメガイドの制作は一時中断していました。しかし、今回多くの読者とメーカーの声に応えるべく、しかも一部のメーカーから取材経費をいただいたので、コスメガイド第三弾の制作を再開することになりました。3月初旬から、日本での取材がスタートします」。

②この本の読者はどのような人たちですか。台湾と中国で違いはありますか。どの内容にいちばん関心が強いですか。

「OTC医薬品の本でしたら、ターゲットはやや広く、20~60代までの読者がいて、性別は男女ほぼ5分5分です。コスメガイドのターゲットは20~40代の日本好きな人たちで、性別は女性が圧倒的です。台湾でときどき日本のコスメセミナーを行っています。その風景は↓の写真の通りです。やはり女性が多いですね。
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読者にとって関心が高い内容は、やはりコスメ・医薬品の解説です。買いたいけど、日本語が読めない! という方はかなり多いです。一部のメーカーは台湾のブロガーを採用し、情報発信していますが、ブロガーの中には日本語が読めない人も多いので、メーカーの提供した情報をそのままで紹介するケースが多いです。そのため、それが客観的な内容かどうかわからないという読者からの指摘もあります」。

③昨日、メールで日本のコスメメーカーのコンサルティングもしておられるとお書きでしたが、具体的にはどんなことですか。

「2013年に来日したときは、取材拒否されることが多かったのですが、14年の半ば頃から、急にインバウンドに関する相談が持ち込まれ、いくつかのメーカーからもオファーが来るようになりました。

そのコンサルの内容としては、台湾人がよく出没するエリア・店舗、台湾人の好み、台湾人向けの販促方法、景品のタイプなどです。

台湾人は中国人と違って日本にとても慣れていて、買物の習慣もより成熟していますから、実際に台湾人が訪れるショッピングエリアは中国人の場合とは大きな違いがあります。

最近になって日本の広告代理店とコラボして訪日外国人旅行(インバウンド)事業のお手伝いもさせていただいています。昨年秋の台北ITFでは、JAPANKURUというブースで、台湾の女性ECサイトのPAYEASYとコラボしましたが、これは私のセッティングでした」。

回答の中にもありましたが、3月上旬、彼は日本のコスメガイド執筆の取材のために来日するそうです。なんというタイミングでしょう。さっそく、東京でお会いすることになりました。

台湾には、鄭世彬さんのような日本のバリューをよく理解し、こちらから頼んでいるわけでもないのに、それを現地で伝えようとしてくれる人材がいるのです。本当にありがたいことです。

日本のドラックストア業界も、彼の存在に気づいたようで、今回は取材協力を惜しまないことでしょう。実際、台湾でならともかく、中国本土で日本の医薬品やコスメを販売するのは、法的な規制が大きく、相当難しいそうです。そのうえ、中国人はたとえ日本メーカーの商品でも、中国で製造されたものは好まず、日本で市販されているものが買いたいようなのです。

であれば、これからはこれだけ訪日客が増えているのだから、わざわざ中国に営業所を構え、販路を広げるようとするより、むしろ日本に来て買ってもらえばいい。日本の製薬メーカーも訪日客に絞った販促に切り替えようとしている動きがみられるという話を上海のPR会社の関係者からも聞きました。

ぼくも彼に「台湾人がよく出没するエリア・店舗、台湾人の好み、台湾人向けの販促方法、景品のタイプ」や「台湾客と中国客の違い」について、もっと詳しく話を聞いてみたいと思います。

彼の来日が楽しみになってきました。

by sanyo-kansatu | 2015-02-27 10:09 | “参与観察”日誌


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