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2015年 04月 16日
この週末(4月11日、12日)、東京プリンスホテルで日中韓観光大臣会合とフォーラムが開かれました。2006年以降、毎年3カ国の持ち回りで開かれていた同会合は、2012年11月に福島県で開催予定だった回以降、中国側が参加を見送ってきたため中断が続き、今年は4年ぶりの再開です。 ![]() ![]() メディアは以下のように伝えています。 日中韓、4年ぶりに大臣会合…観光客増に協力(読売新聞2015年4月11日) http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150411-OYT1T50127.html 日中韓の観光相会合、交流規模の目標3000万人に (TBS News i 2015年4月12日) http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2467489.html なかでも会合の内容について、それなりに詳しく説明している朝日の記事を抜粋します。 日中韓交流、20年に1.5倍の3千万人に 担当相会談(朝日新聞2015年4月13日) http://www.asahi.com/articles/ASH4D54BSH4DULFA004.html 「4年ぶりに開かれた日本、中国、韓国の観光担当大臣会合は12日、3カ国間を行き来する人を2020年に3千万人に増やすなどとした共同声明を採択した。14年の約2050万人から約1・5倍をめざす考えで、日本は、有名な観光地以外もめぐる中韓の旅行先の紹介や、飛行機やクルーズ船の就航を広げることなどを検討する見通しだ。 東京で開かれた会合の終了後、太田昭宏国土交通相は「日本から中韓への旅行者を増やすことが課題だ」と述べた。 14年に3カ国間を行き来した人は過去最多だったが、日本から中韓を訪れた人は500万人と、10年と比べ26%も減った。円安で旅行代が割高になっているうえ、日本が尖閣諸島を国有化した後に、中国で反日デモが起きたことなどが理由とされる。 共同声明には、18年の韓国・平昌(ピョンチャン)五輪や20年の東京五輪に向けて欧米から観光客を呼び込むため、3国間をめぐるツアーをつくり、共同で宣伝することも盛り込んだ。 また、「観光交流における質の向上」も記した。中国から日韓を訪れる一部の観光客が、生活習慣の違いからトラブルを起こしているためで、中国側も対策の必要性を認めた。 会合は、日本と中韓との関係悪化で12年から中断していた。韓国の金鍾徳(キムジョンドク)・文化体育観光相は「観光交流は、厳しい政治状況を克服するうえで非常に大きな意味がある」と、関係改善に期待を示した。次回会合は16年、中国湖北省の武漢市で開く」。 観光大臣会合の概要というのは、まあこういうことですが、午後2時から開催された3カ国の民間業者らを交えた「日中韓観光交流拡大フォーラム」の会場で、各国の関係者から出てくる発言は三者三様で興味深かったです。 そもそも日中韓3カ国の交流人口(それぞれの双方向の渡航者数のことです)は、2000年代半ばくらいまでは、日本から中国・韓国を訪れる人の数が最大でした。それが14年になると、最大は中国から韓国を訪れる人、次いで韓国から中国へと真逆の形勢になっています。 2014年の日中韓国の相互訪問者数 日本→中国 272万人 日本→韓国 228 万人 中国→日本 241万人 中国→韓国 613万人 韓国→日本 276万人 韓国→中国 418万人 なかでも急増しているのは、中国から韓国への訪問者です。ご存知のように、日本への訪問者も増えていますが、それどころの増え方ではありません。 理由は朝日の記事も指摘するように、「円安で旅行代が割高になっているうえ、日本が尖閣諸島を国有化した後に、中国で反日デモが起きたこと」もあるでしょう。また中国在住の業界関係者が指摘するのは「PM2.5の影響」です。 実のところ、世界の国境を越えて移動する観光人口は年々拡大していますが、ここ数年、わずかとはいえ入国者数が減少している数少ない国のひとつが中国です。こうした不人気ぶりは中国の旅行関係者にとってもそうでしょうが、むしろ面子を重んじる中国政府の頭を悩ましているかもしれません。彼らの価値観からすれば、世界の中心である中華(帝国)には、多くの外国人が集まってくるはずだからです。 またかつて多くの日本人旅行者が訪れていた韓国も、いまや中国客が全体の半数を占める片寄りぶり。さらに、訪韓日本人が激減し、訪日韓国人がそれを上回る時代になってしまいました。これまで日本人客を相手にしていた韓国の業者は廃業に追われていると聞きます。しかし、今年はさらに激減し、180万人程度しか訪韓しないという声もあります。 日本の旅行業界も、ここ数年の海外旅行者数の減少に悩んでいます。海外旅行市場の拡大とともに成長してきた業界だけに、減っているとはいえ、依然トップ2の訪問先である中韓への訪問者がこれ以上減少する事態は好ましい話ではありません。 そういう意味では、近年政治的な不和が続くこの3国にとって、珍しくお互いの利害が一致しているように見えるのが観光分野でした。昨秋の北京のAPECの日中首脳会談(中国側はそう呼んでいない?)以降、ようやく両国政府の折衝が始まり、今回の大臣会合にたどりついたということでしょう。 つまり、今回の大臣会合で3カ国に共通する課題として「日本人をもっと中国、韓国に旅行に行かせるにはどうしたらいいか」があるはずでした。少なくとも、日本側関係者(松山良一日本政府観光局理事長、田川博己日本旅行業協会会長)はその点を指摘していました。 ところが、中韓両国の関係者からは、そのためにどうしたらいいかという提言はあまり聞かれなかったように思います。あるいは、ご本人たちはそう言っているつもりなのかもしれませんが、少なくともぼくには感じられませんでした。 以下、フォーラムの挨拶および講演として登壇した関係者らのコメントを簡単に書き出してみます。 松山良一日本政府観光局理事長 「日本から中韓両国への渡航者が減少。ドイツとフランスは50年前、ドゴール大統領とアデナウアー首相の間でエリゼ条約を結び、首脳同士の定期会談と青少年相互交流を決め、年間1400万人の交流を実現している。昨日より開催されていた観光大臣会合では、日中韓相互交流の拡大、地域・地方への観光交流の拡大、観光による地方活性化や青少年交流、文化交流、スポーツ交流において連携を深めると合意された。3カ国共同による第三国に対するビジット・イースト・アジア・キャンペーンの推進や、観光交流における品質の向上についても話し合われた。これが日中韓観光交流の潮目となることを願う」。 太田昭宏国土交通大臣 「日中韓観光交流新時代への民間の取り組みを期待したい」。 ![]() 李金早中国国家旅游局長 「3カ国の交流人口はいまや2000万人を突破。さらにこれを進めていくには、ビザ緩和や滞在時間の延長、航空路線の拡張に取り組んでほしい。観光交流の品質の向上のためには、共同で監視するシステムの構築やガイドの質を高める取り組みが必要。マナーに関しては生活習慣の違いもあるので、相互理解も必要」。 ![]() 金鍾徳韓国文化体育観光長官 「2006年から日中韓観光大臣会合がスタート。2018年には平昌、20年東京と五輪開催が相次ぐなか、3カ国の同伴成長に向けて協力しよう」。 ![]() 三田敏雄昇龍道プロジェクト推進協議会会長 「中部北陸9県が参加する昇龍道エリアの知名度はなぜ低いのか。これまで各自治体がバラバラにPRしていたためだ。平成24年度のスケジュールを見てほしい。これは失敗例である。エリア全体が一体となって知名度を上げていくべきだ」。 ![]() 宋宇北京観光委員会主任 「2014年の北京市に入境した観光客数は2.6億人。うち外国人は約430万人。日韓は北京のインバウンド市場にとって最も主要な国(14年に北京を訪れた韓国人は38万6800人(2位)、日本人は24万8800人(3位))。両国の観光部門と提携関係を維持している。13年には北京市とソウル市が「北京ソウル混合委員会」を構築し、両市の観光、経済、教育、文化などの分野での交流を進めた。今後は、3カ国間の旅行簡便化、具体的には団体ビザ、航空、クルーズ観光、個人旅行などの推進。また欧米市場に向けて3カ国共同でのプロモーションの実施。市場の監督管理強化と旅行サービスの品質向上において協力してほしい」。 元喜龍済州特別自治道知事 「済州島は現在、180カ国のノービザ入国が可能。クルーズ観光のさらなる拡大のため、新たなクルーズターミナルも開港予定。北朝鮮も参加できる平和クルーズ事業を提案したい」。 また以下は、フォーラムのパネルディスカッションのコメントです。大臣会合をふまえ、1)相互交流人口の拡大のため民間で何ができるか、2)共同プロモーションについて、3)観光交流の品質の向上をいかにはかるか、が議題とされました。 1)相互交流人口の拡大のため民間で何ができるか 田川博己日本旅行業協会会長 「3カ国の相互交流が叫ばれるなか、最大の問題は、日本人が中韓両国に行かなくなったこと。日本旅行業協会としては、日韓共同販売プロジェクトを立ち上げ、韓国の地方を売るためのキャンペーンを行う。また対中国でも、日中観光交流団を組織し、3000人規模の業界関係者を中国に送る予定。また一般消費者が中韓に行きやすい雰囲気づくりを進めたい」。 ![]() 張立軍中国旅行社協会会長 「中国の海外旅行市場の歴史は20年と生まれたばかり。歴史は短いが、スピードは速い。日韓両国は、中国人がどこを訪ねたらいいかもっと教えてほしい。また中国人の日本観光ビザの簡素化も進めてほしい。中韓ではホテルのランク付けを国家が行っているが、日本はそれがないので、中国の消費者にどう説明していいか難しいことを理解してほしい」。 ![]() 梁武承韓国旅行業協会会長 「韓中1000万人時代は到来している。一方、韓日の航空便も週720便、25空港に運航。韓中は9空港で、韓国はソウルへの集中が大きな課題。地方での広域観光プロジェクトを推進する必要がある」。 ![]() 2)共同プロモーションについて 田川博己日本旅行業協会会長 「ヨーロッパから北東アジアへの観光ルートが確立していない。かつて日本では海外旅行の黎明期にロンドン・パリ・ローマの周遊旅行ツアーが人気だったが、同じように東京・北京・ソウルの周遊航空券の設定をつくることも必要では」。 張立軍中国旅行社協会会長 「上海自由貿易特区のような日中韓観光自由区をつくってはどうか」。 梁武承韓国旅行業協会会長 「日中韓共同クルーズはなぜ実現しないのか。文化の共通性を切り口に3カ国を周遊するクルーズをプロモーションしてはどうか。またユーレイルパスのような日中韓域内の鉄道パスを創設して、ビジット・イースト・アジア・キャンペーンを行うのはどうか」。 3)観光交流の品質の向上をいかにはかるか 田川博己日本旅行業協会会長 「質の問題にはふたつある。日本人の海外旅行市場と訪日外国人旅行者の受入態勢だ。前者は日本の場合、1965年に旅行業法を施行し、82年に旅程管理主任制度による消費者保護を進めた。これを学んではどうか。後者に関しては、日本ではまったくうまくいっていない」。 梁武承韓国旅行業協会会長 「近年中国からの訪韓客が急増(2012(280万人)→13(430万人)→14(620万人))し、受け入れ態勢が問題になっている。ガイドやバスと駐車場、宿泊施設など品質の低下をどうするか。またショッピング中心の旅行商品ばかりであることも問題。ソウル市故宮における中国人客のマナー違反も指摘されている。ソウル市内では急ピッチでオフィスビルから宿泊施設への業態転換を進めている」。 張立軍中国旅行社協会会長 「中国は海外旅行者のマナー問題を重視している。ただし、3カ国では発展段階も異なるし、マナー違反はひとにぎりに過ぎないと思う。中国には2万7000社の旅行会社があり、旅行業法を通じて品質向上に努めているが、海外の旅行会社ではその規律が守られているか。共同の監視システムも必要」。 ざっとそれぞれのコメントを整理したにすぎませんが、3カ国ともに相互交流といいながら、自国のアウトバウンド市場に対する言及が多かったように思います。ところが、唯一アウトバウンド市場が減少している日本側の働きかけに対して、中韓両国からそれに呼応する発言はあまりなかったように思えました。一方、中国の拡大するアウトバウンド市場の受け入れ態勢に関して、韓国側からはそれに対応する動きがあるようでしたが、日本側からは、昇龍道PRの失敗に対する反省の弁はあったものの、それ以外の目立った発言はなかったと思います。日本側も中国側の要請に対して呼応していないように受け取られているのでは、と思われます。 この会合やフォーラムの意義について、ぼくは否定的に見ているわけではありません。しかし、事態が思うように好転しない背景を知る必要はある。それぞれの思惑や言い分のどの部分がすれ違っているか、把握しておきたいだけです。 さて、今後この会合は潮目になるのか。この点について全体の流れとしては、このまま中韓から日本への訪問者が増え、逆は停滞を続けるという状況はしばらく変わらないのでは、という気がしました。 というのも、日本側にしてみれば、このまま中国客が爆買いしてくれるのなら、それはありがたい。中国側にしてみれば、日本人が中国に来てもたいして消費するわけでないし、かえって「PM2.5がひどい」などとSNSでまき散らされてはたまらない。国内の実情はなるべく知られたくない、という意味ではこのままでいいかもしれない。韓国側は本音では日本人に来てもらいたいのだけど、プライドが邪魔してそう表向きには言えない…。 つまり、3カ国観光交流の現状のアンバランスを変えたいという意志を(日本の旅行業界を除いて)誰からも感じられないのです。 しかし、こうしたことは、人の移動に象徴される日中韓3カ国の関係性がかつてとは大きく様変わりしたことを強く実感させます。 ぼく個人の意見としては、やはりこの3カ国の交流人口はある程度バランスが取れているべきだと思っています。そのために、非力ながら仲間と一緒に中韓の旅行ガイドブックをせっせとつくっているんですが、最近はあんまり売れないのでつらいところです。
by sanyo-kansatu
| 2015-04-16 11:05
| “参与観察”日誌
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