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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 05月 17日

仕掛け人が激白!「爆買い商品はこうつくれ」(プレジデント2015.6.1)

中国の旧正月(春節)や桜のシーズンが来ると、中国客の“爆買い”報道が恒例になっている。中国メディアによると、今年の春節に彼らが最も熱心に購入したのは、ドラッグストアで販売されるOTC医薬品(処方箋の不要な市販薬)や化粧品だったという。

なぜ彼らは日本のクスリや化粧品をそれほど買いたがるのか。それを知るヒントとなるのが、『東京コスメショッピング全書』(中国軽工業出版社 2014年)という中国書だ。日本の優れた医薬品や健康・美容商品、化粧品をジャンル別に選んでカタログ風に分類し、解説した案内書である。
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著者は台湾出身のドラッグストア研究家の鄭世彬氏。彼が台湾で書いた本が、中国の出版社の目にとまり、簡体字版として刊行された。ドラッグストア関係者の話では、同書を手にして来店する中国客の姿も見られるという。

「フリーの翻訳家だった私のもとへ日本で買ったクスリを持ってきて何が書いてあるか教えてほしいという問い合わせがよくあった。知り合いの出版社と相談し、12年2月、日本のOTC医薬品を解説する購入ガイドを出版した」(鄭氏)

その後、読者から化粧品のガイドもほしいとの声があり、同年11月に刊行したのが、中国版の原本『東京藥妝美研購』(晶冠出版社)だ。これが好評で、日本の5分の1以下の人口の台湾で約1万部売れた。

「台湾人は昔から日本の胃腸薬やかゆみ止めがよく効くことを知っていた。だから、誰かが日本に行くというと、クスリを買ってきて、と頼む。日本のクスリをお土産に買ってくると、喜ばれることを知っているので、みんなドラッグストアに足を運ぶ。私の本が支持されたのは、日本語がわからなくても、何を買うべきか、写真付きで解説したからだろう」(同)

なぜ台湾で日本のクスリは人気なのか。「効き目がしっかりしていて、パッケージのデザインが洗練されている。たとえば、ロート製薬の目薬『リセ』は、多くの台湾女性はバッグの中にしのばせている。台湾の市販薬はいかにもクスリっぽくて地味だが、日本のドラッグストアに行くと、商品がキラキラと輝いて見える。何より台湾で買うより安い」(同)

鄭氏によると、台湾の風土や習慣も日本の健康・美容商品を愛好する背景になっているという。「亜熱帯気候の台湾では日差しが強く、美白グッズは欠かせない。虫刺されのかゆみ止めもそう。日本では次々にいい商品が発売されるから、目が離せない。台湾人はバイクに乗る人が多く、ふだんあまり歩かないから、日本に行くと、いつもの倍以上歩くので、足が疲れる。そんなとき、ホテルでひんやりした『休足時間』(ライオン)のシートを貼ると気持ちいい」。

昨年、中国のネット上に「神薬」という日本に旅行に行って買うべき医薬品リストが流れた。鄭氏の本で紹介したものも含まれていた。「中国のネットに広まる日本の商品情報の大半は、台湾や香港経由のものだ。たいてい数年遅れで突然広まることが多い。しかし、いったん広まると、波及するスピードは速いので、彼らは都心の量販店に殺到し、まとめ買いする。それが“爆買い”の真相だが、団体客の多い中国人と台湾人では出没するエリアや購入商品が違う。台湾人は日本をよく理解しているので、私の本ではなるべく中国客が行かないスポットを紹介した。吉祥寺や自由が丘などだ。台湾人は、一般の日本人が買物をするのと同じ場所に行って買物したいと考えているから」。

鄭氏は年に数回日本を訪れ、ドラッグストアを自分の足で視察し、医薬品や化粧品のメーカーを取材している。地道な積み重ねの成果は、今年1月に上梓された最新刊『日本家庭藥』(帕斯頓出版)に結実した。100年以上の歴史を持つ日本の家庭常備薬メーカー30数社の創業秘話や定番商品を紹介したムック本だ。「いま日本で花開いているドラッグストア文化は、老舗企業の歴史があってこそ。その素晴らしさを台湾の読者に伝えたかった」という。

中国“爆買い”客のバイブルを世に送り出した彼は、日本の関連業界にとっても、今後の商品開発や販促を考えるうえで心強い知恵袋になってくれることだろう。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-17 17:13 | “参与観察”日誌


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