2015年 05月 24日
近年、都心で本格化しているのが、外資系を含む大型高級ホテルの新規開業です。先日、東京駅周辺に集中している外資系ラグジュアリーホテルを訪ねて歩いてみました。 一般に富裕層が顧客とされるこれらのホテルの宿泊料金は、最低でも一泊約5万円から。いや、客室不足の昨今はもっと上がっているとも聞きます。こうなると、もはや誰でも気軽に宿泊できる価格帯ではないですが、東京五輪の開催が決定し、新たな開業ラッシュが始まっているのです。 なかでも最近の目玉は、14年12月、丸の内に一部営業を開始した個性派ラグジュアリーリゾートチェーンのアマンリゾーツによる「アマン東京」でしょうか。客室数を絞り込んだ極上のリゾートホテルチェーンとして国際的に評価の高い同グループが手がける初の都市型ホテルというふれこみで、巨大な和紙で覆われたガーデンレセプションなど日本の伝統素材が使われた館内の優雅な意匠の数々は、海外からも注目されています。 アマン東京 http://www.amanresorts.com/amantokyo 場所は大手町タワー(千代田区)にあります。地下鉄丸ノ内線「大手町」を降りると、大手町タワーにつながっていますが、ホテルの玄関は「隠れ家リゾート」らしく、見えにくい場所にあります 大手町タワーからJR東京駅方面に向かって歩くと、日本橋口にホテルメトロポリタン丸の内が見えますが、その向かって左手奥にこっそりとシャングリ・ラ東京の玄関が見えます。シャングリ・ラ東京は2009年3月に東京駅に隣接する丸の内トラストタワー本館27~37階に開業した中国系のラグジュアリーチェーンです。上海浦東地区の外灘に面した最も眺望のいい場所に立地しているシャングリ・ラ上海は国際的にも有名です。 そこから八重洲口に向かって歩いていくと、有楽町方面にフォーシーズン丸の内が入ったパシフィックセンチュリープレイスが見えます。フォーシーズン丸の内の開業は2002年10月です。これを皮切りに、グランドハイアット東京(2003年4月 六本木)、コンラッド東京(2005年10月 浜松町)、マンダリンオリエンタル東京(2005年12月 日本橋)、ザ・リッツ・カールトン東京(2007年3月 六本木)、ザ・ペニンシュラ東京(2007年9月 有楽町)、そして前述のシャングリ・ラ東京と、2000年代の都心の外資ラグジュアリーホテルの開業が続きました。 そして、2010年代に入り、新たな開業ラッシュを迎えています。 そのうちのひとつが、14年4月に開業したコートヤード・バイ・マリオット東京ステーションです。八重洲口から京橋方面に歩くとあります。 コートヤード・バイ・マリオット東京ステーション http://www.cytokyo.com/ 東京駅周辺には、丸の内口に東京ステーションホテルもあります。東京駅周辺は、いまや東京を代表する最高級ホテル地区へと変貌しているのです。 これまで東京では、1990年代(パークハイアット東京、ウェスティン東京など)、2000年代(グランドハイアット東京、コンラッド東京、マンダリンオリエンタル東京、ザ・リッツ・カールトン東京、ザ・ペニンシュラ東京など)と外資系の進出が散発的に続いていましたが、五輪を控えた10年代はその第3期に入ったといえそうです。 一般に海外の富裕層は安心できる宿泊先として国際的に知られるホテルチェーンを選ぶ傾向があるといいます。どんなに日本国内で有名なホテルや高級旅館でも、宿泊先として選ばれるまでのハードルは高いものです。むしろ知名度の高い外資系ほど、東京五輪は商機といわれるのはそのためです。 しかし、こうした外資の相次ぐ進出で、日本の老舗高級ホテルは生まれ変わりを迫られています。たとえば、「御三家」のひとつ、ホテルオークラ東京は現在、本館の建て替えに着手しています。前回の東京五輪の2年前(1962年)に開業した同ホテルは老朽化が長く課題となっていましたが、約1000億円を投じて高さ200mと80mの2棟のビルを新設するようです。地上38階建ての高層棟をホテルとオフィスの複合施設にする計画です。 旧赤坂プリンスホテル跡地でも再開発計画が進行中で、新たな高級ホテルが誕生します。アマン東京が進出したばかりの大手町では、「都市型(温泉)旅館」という日本ならではのカテゴリーを掲げる「星のや東京」も進出予定です。天然温泉を完備して外資との差別化を図るそうです。これらの連動した動きは、多様な外国客のニーズに応えることで、日本のホテルシーンの活性化をもたらすものと思われます。 2010年代の都内の主な大型ホテル開発 14年4月 コートヤード・バイ・マリオット東京ステーション 14年6月 アンダーズ東京 14年12月 アマン東京 15年4月 ホテルグレイスリー新宿 16年夏 旧赤坂プリンスホテル 16年中 星のや東京 19年春 ホテルオークラ東京リニューアル 一般に外資系ラグジュアリーチェーンは、ホテル物件を所有せず、運営に特化する経営スタイルや、都心の再開発地区の超高層複合ビルの上層階に入居していること、そして客室数を極力絞り込んでいることが特徴です。アマン東京は84室、アンダーズ東京は164室。客室数だけみれば一般のビジネスホテル並みです。 ところで、外資系ラグジュアリーホテルなんて格差社会の象徴、自分には関係ない話と思ってしまうところがないとはいえませんが、ふとこんなことも思います。 いま起きていることは、時代の先祖返りなのではないだろうか。 前回の東京五輪(1964年)が開催された昭和のある時期まで、外資に限らず日本のホテルは一般庶民が足を踏み入れることのない世界でした。だって、当時の庶民は「駅前旅館」を利用していたのです。ビジネスホテルだって生まれてなかったのですから。 その後、かつて高嶺の花だったホテルで供されたサービスや食が大衆化され、特に1970年代以降、日本の社会に普及していきます。帝国ホテルで昭和30年代に始まったバイキングなんてのもそのひとつです。 こうした大衆化こそ、いまアジア客の“爆買い”の対象となっている日本の衣食住に関わるさまざまな消費財やサービスが生まれた原点だったといえるのではないか。昭和の時代の“ラグジュアリー”施設の代表だったホテルで提供されたコンテンツとその発展形が、今日多くのアジア客をひきつけるベースとなっているのだと思うのです。 これから東京にはどんな新しいホテルシーンが生まれていくのでしょう。かつてと同様、外資系ラグジュアリーホテルには、未来を先取りする役割を果たしてくれることを期待したいものです。 はたしていまの日本にそれをかつてのように大衆化させるだけの活力が残されているだろうか、そう否定的に見る向きもあるかもしれません。でも、そこに日本らしさがあると信じたい気がします。
by sanyo-kansatu
| 2015-05-24 10:35
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