2015年 05月 28日
2014年、エクスペディア経由で最も予約件数の多かった「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門の宿泊施設が、新宿区役所前カプセルホテルだったそうです。 カプセルホテルが外国客に人気という話は聞いていましたが、実際の予約件数がトップとなると、これはどういうことなのか知りたくなります。 そこで、今週月曜の夜、泊まってみました。 カプセルホテルに泊まるだなんて何年ぶりのことだろう…。そう思いながら、夜10時過ぎ同ホテルを訪ねると、いましたいました…3階のフロント周辺は外国客の皆さんばかりです。一般にカプセルホテルは、終電を乗り過ごしたサラリーマンの巣窟というイメージですが、ずいぶん印象が違うのです。フロントでは英語が飛び交っています。 チェックインをすませると、まずはロッカーに荷物を収めてお風呂に入るのですが、スーツケースがこんなに並んで押し込まれています。外国客の荷物は大きくてロッカーに収まりきらないからです。 実はこの日、外国客比率は39%でした(87名 ※先週末の段階の数字なので、実際はもっといたかもしれません)。 このスーツケースの山を見ると、確かに大勢の外国客がいるのだなと実感します。 共同浴場は、お湯風呂とジャグジー、水風呂、サウナといったごく普通の施設でしたが、10人近い浴客のうち半分は欧米系ツーリストの皆さんです。みんな神妙な面持ちでお湯に浸かっています。よく外国客は裸で共同風呂に入るのが恥かしくて苦手だとか、逆に日本っぽくて珍しいから大人気、などと正反対のことが言われますが(それは両方正しい。つまり、どちらもいるということ)、ここに泊まっている皆さんはわざわざカプセルホテルを選んで宿泊している人たちなので、問題はないようです。 風呂を出ると、4階の共同スペースでひと休み。ここには大画面テレビにソファ、軽食やバー、自動販売機、ランドリーなどが置かれています。Wi-fiも飛んでいるので、PCやスマホに夢中になっている外国人も多いです。 ここは男女共用なので、外国の女性客の姿も普通に見られます。そう、このカプセルホテルでは2年前から女性フロアを新設したところ、大盛況だそうです。 ちなみに料金はウォークイン(飛び込み)だと泊まりは4500円ですが、ネットで事前予約したので、1泊2800円でした。もっと早く予約すれば最安値は2200円です。 湯上りに生ビールを頼んでぼんやりしていたら、隣に男女7人組の若いアジア系のグループが座ってきました。欧米の人ばかりかと思っていたら、アジアの人もいるんだなあと思って見ていたら、女性たちはコンビニで買ってきたざるそばや焼き鳥を食べ始めます。そうか、ここは持ち込みOKなんだ。 このグループは男性4名女性3名なのですが、女性は全員華人のよう。話すことばは中国語(普通話)ではないものの、南方方言のようでした。アジアの人というのは日本人に比べ間の取り方を気にしないところがあるので、席を開けないで平気で隣に座ってくるものです。そこで、隣の女性にためしに中国語で話しかけみました。「どっから来たの?」 「マレーシア」(あっ、中国語通じた) 「そう、じゃあエアアジアで来たの?」(短絡的ですが、マレーシア人=エアアジアで来るというイメージがあったので) 「そうよ。今日着いたの」 「えっ、じゃあ初日からカプセルホテル?」 「……」 「初日から」うんぬんは余計なお世話でしたね。でも、そういう時代なんですね。KLから来た人たちで、エアアジアで片道5000円、東京に着いたらカプセルホテル1泊2200円。なんて安上がりなのでしょう。 「どのくらい日本にいるの?」 「10日間よ」 「東京だけ?」 「うん、まだ考えてないけど、たぶん箱根や日光にも行くつもり」 「そうなんだ。ところで、みんなはお友達なの? それともファミリー?」 「ファミリーよ」 「あっそう」 一般に欧米ツーリストはひとりかカップルか、子供連れの家族か、少人数で旅行する人がほとんどですが、アジアのツーリストは親戚家族で旅行するのが好きなようです。誰かひとり一度くらい日本に来たことのあるリーダーがいて、みんな彼におまかせで付いてきちゃうのでしょう。それがいちばん安心なのでしょう。 このグループも、兄弟とそのカップルの組み合わせという意味で「ファミリー」のようです。面白いのは、女性は華人だけど、男性は全員マレー系。もしかしたら、女性たちは姉妹なのかもしれません。ですから、女同士で話すときは中国南方方言(あとで聞くと、広東語と言っていましたが、香港人や広東人に比べ相当もったりした話しぶりです。マレーシアには福建華僑が多いと言われているので、福建語なまりかもしれません)を話し、男同士あるいはカップルで話すときは共通語のマレー語を使っています。そこにぼくが割り込むと、男性には英語、女性にはなんとか普通話は通じたので中国語とことばが入り乱れますが、多民族国家のマレーシアというのはそれが普通なのでしょう。 彼らマレーシア国籍の人たちは2013年夏の日本政府による観光ビザの撤廃で、簡単に日本に来られるようになりました。ノービザですから、休みができたらエアアジアの安チケットでふらっと東京に来られるのです。日本人は兄弟とそのカップルで海外旅行なんてあんまりやらない気がしますが、血縁の強いアジアの人らしい旅行スタイルだとあらためて思いました。 それにしても、ここには酔客が見当たりません。およそこれまで経験したカプセルホテルとは雰囲気が違います。 1時近くになったので「よい旅を!」と言って、7階にあるカプセルルームに向かいました。 エレベータを降りると、まあごく普通のカプセルホテルです。 ちょっとよそとは違うのは、「Please be quiet」のような英語表示が目につくことでしょうか。 それから、ここではカプセルの中でもWi-fiが使えて便利でした。 実をいうと、久しぶりのカプセルホテルであまりよく寝つけませんでした。それでも朝7時になったので、眠い目をこすり、お風呂に入ることにしました。けっこう外国の人も朝風呂しています。 風呂上りに共同ルームに行くと、ここにも外国客がたくさんたむろしていました。ぼくは200円のカプチーノを自販機で買い、しばらくぼんやりしていました。 昨晩は見かけなかった日本の女の子がけっこういます。彼女たちはぼくのようにだらしない館内着姿ではなく、着替えを済ませ、サンドイッチを頬張りながらPCに向かっていて、レジャー客っぽさはありません。 しばらくすると、昨日のマレー人の男性にも会いました。日本人もそうだし、外国客も若い人が多いように思いました。ここは酔客とは無縁のカプセルホテルなんですね。 そろそろチェックアウトしようかとロッカーに戻って着替えようとしたら、壁に外国客のポラロイド写真が貼られていました。みんな自分の寝起きしたカプセルの中でこちらを向いて笑顔を振りまいています。笑えますね。でも楽しそうです。 その脇には、海外で報じられたこのカプセルホテルの英文記事が紹介されていました。いろいろ細かい施設の説明や利用の仕方、周辺の歌舞伎町の紹介など、これを見て外国客はやって来るのでしょう。 着替えを済ませ、チェックアウトしようとフロントに向かうと、大きなザックを背負ったバックパッカーの若者が出て行こうとしていました。 その姿を見たとき、急に懐かしさがこみあげてきました。 そういえば、自分も学生の頃は同じようなことをしていたな。当時日本から中国に行く最も安い交通手段だった定期航路「鑑真号」で大阪から上海に向かう前日、ぼくは彼と同じような大きなザックを背負って、梅田のカプセルホテルに泊まったことを思い出しました。あれから何年たったんだっけ…。 当時は、朝起きてから1日中歩き通しでも、夜は寝床さえあれば、ちっともかまわなかった。とにかく好奇心の赴くまま外国のまちを歩いてばかりいました。それが面白くてたまらなかったのです。 若い旅行者にとって、カプセルホテルはまったく問題ないはずです。海外の安宿の2段ベッドが並ぶタコ部屋みたいなドミトリーに比べれば、ここは超快適、機能的、衛生的な巨大ドミトリー空間のようなものですから。閉所恐怖症の人だけはNGかもしれませんけれど。 久しぶりにカプセルホテルに泊まって、外国のツーリストと話をして、つかの間の旅人気分を味わえたのでした。 新宿区役所前カプセルホテル http://capsuleinn.com/shinjuku/
by sanyo-kansatu
| 2015-05-28 12:24
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