2015年 09月 07日
外国人観光客のレンタカー利用件数で、沖縄県に次いで多いのが北海道です。我々日本人が北海道を旅行する際、レンタカーなしで移動というのは考えられないわけですから、外国客にとっても事情は同じなのです。 一般社団法人 札幌レンタカー協会によると、北海道における外国客のレンタカー利用件数は、2014年度(14年4月~15年3月)で2万4243件、前年度比●%増となっています。 国籍別にみると、トップが香港で9579件(全体の約40%)を占め、次いで台湾4497件、シンガポール1948件、韓国1892件、タイ1395件、オーストラリア1052件、ヨーロッパ1051件、アメリカ814件と続きます。沖縄県と比べると、総件数は3分の1以下ですが、台湾、香港、韓国が全体の9割を占める沖縄に対し、シンガポールやタイ、欧米系の利用も多く、多国籍化が見られます。 一般社団法人 札幌レンタカー協会事務局 http://sapporo-renta.com/ 同協会事務局の下山久美事務局長によると、「2015年度に入っても伸びは前年比180%と好調」とのこと。 沖縄県同様、こうした伸びの背景には、訪日外国人来道者数の拡大があります。 北海道経済部観光局が15年8月に報告した「北海道観光入込客数調査報告書(平成26年度)」によると、2014年度の訪日外国人来道者巣は、154万1300人と過去最高で、前年度比33.7%増となっています。 北海道観光入込客数調査報告書(平成26年度) http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/toukei/H26_irikomi_honpen.pdf 国・地域別にみると、トップが台湾47万2700人(30.7%)で、次いで中国34万人(22.1%)、韓国20万1100人(13.0%)、タイ12万8300人(8.3%)、香港12万200人(12.0%)となっています。この数字をみると、来道した約12万人の香港人のレンタカー利用が約1万件。実際にはファミリー利用が多いことを考えると、香港人の北海道でのレンタカー利用率はかなり高いことがわかります。 数のうえでは沖縄県に比べると見劣りのする北海道ですが、外客の受入態勢の構築のプロセスをみると、全国に先駆けた取り組みを続けてきたことで豊富なノウハウを有しています。 北海道では香港人を中心に早い時期からレンタカー利用が見られていましたが、広範囲に観光地が広がっている地域の特性上、旅慣れた外国人観光客にとってレンタカーは不可欠の足でした。 北海道の本格的な取り組みは2007年9月から台湾人の国内での運転が可能となったことから始まります。 同年4月に北海道外国人観光客ドライブ観光促進連絡協議会が設立されますが、実はその前年の06年12月、喜茂別町で外国人ドライバーの交通死亡事故が発生しています。冬場の凍てついた道路を運転することにアジア客が慣れていないのは当然ともいえますが、外客の利用促進のためには、冬道の安全運転の啓発は欠かせません。こうした事情から、外国客に安全・安心してドライブ旅行を楽しんでもらいための受入態勢の構築のための調査やノウハウの啓蒙が進んだと考えられます。 たとえば、2009年には国土交通省北海道開発局が以下の外国人向けのドライブハンドブックを作成しています。 ![]() 「北海道ドライブまるわかりハンドブック」5カ国語(日本語、English、中文・繁体字、中文・简体字、한국어)対応 http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/handbook.html その目次を以下記します。北海道でドライブするとき、起こりうるトラブルをわかりやすく解説しています。 はじめに ~外国人観光客の皆様へ~ 北海道ドライブ観光へ出発するまで 第1章.北海道でドライブをしよう! 1-1.北海道の広さ 1-2.北海道、四季の魅力 1-3.北海道、各地の魅力 1-4.快適ドライブのまめ知識 1-5.ルールとマナーは必ず守ろう! 第2章.レンタカーを予約しよう! 2-1.レンタカーサービスの基本情報 2-2.カーナビの使い方 第3章.知っておきたい交通ルールとワンポイントアドバイス 3-1.北海道をドライブするその前に 3-2.これだけは知っておこう!日本の交通ルール 3-3.高速道路を利用しよう! 3-4.ガソリンスタンドの利用法 3-5.冬道ドライブは慎重に! 第4章.こんな時はどうするの? 4-1.もしも、交通事故や違反のトラブルが起きたら 4-2.もしも、ケガや病気のトラブルが発生したら 4-3.もしも、天気によるトラブルに見舞われたら 4-4.もしも、車が故障したら 4-5.もしも、野生動物にぶつかったら 資料編 <その1>いざという時のための指差し会話集 <その2>関係機関の連絡先とwebサイト一覧 <その3>お役立ち資料 さらには、地域が外国人ドライバーを受け入れるための基本的な認識やノウハウをまとめた解説集も作成しています。 外国人ドライブ観光客 誘致・受入事例解説集 http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/yuuchi.html はじめに 第1章.主な外国人ドライブ観光客の特性等について 第2章.外国人観光客が、北海道でドライブ観光を行う際(事前/滞在中)に必要としている情報や対応について 第3章.各地域の取組の事例 第4章.本道関係各機関における既往の取組について~発信情報の内容や多言語対応の状況~ 最後に この解説集には、北海道の主要なレンタカー利用客である台湾、韓国、香港、シンガポールの来道目的や移動形態の傾向、運転週間の違いなどを以下のように説明しています。 たとえば、台湾の項には「日本の「止まれ」の標識は国際基準と異なり、理解されにくい。台湾では、制度上は一時停止の義務はあるものの、見通しがよい場合は一時停止をする車はほとんどいない(踏み切りについても同様。台湾の高速道路では、走行車線・追越車線の区別がない。矢印信号は台湾にはないため、とまどってしまう)とあります。 また韓国の項には「日本とはハンドルが逆ではあるが、標識や交通ルールは似通っている。見通しのよい踏み切りなどではつい一時停止を怠りがちである。韓国では一般道でも時速80kmまで出せる道路もあり、高速道路の最高時速は110㎞。「止まれ」「徐行」の標識の意味がわかりにくい」。 香港の項には「日本と同じ左側通行であるが、赤信号でも左折フリーの国である。横断舗装以外では「歩行者優先」というルールはなく、車が優先される。一般道路の最高時速が70㎞であるためか、北海道をドライブして「スピードが遅すぎる」と感じるドライバーもいる」。 これは実際の外国客にヒアリングしてまとめたものですが、それぞれお国事情が違うため、日本でのドライブは勝手が違うところがありそうです。こうしたバックグランドの異なる外国客が日本でドライブするわけですから、関係者はこれらの違いを認識しておく必要があるでしょう。 このマニュアルを作成するために北海道では以下の調査を行っています。 北海道における外国人ドライブ観光の推進方策検討調査(概要版 平成20年) www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/03.pdf こうした全国に先駆けた調査は、今後レンタカー利用が増えるであろう全国各地の関係者にとって貴重な情報提供となっています。 札幌レンタカー協会では、冬場の事故防止のため、外国客向けにチラシを作成しています 今後は、全国で北海道の事例を学べ、という機運が高まっていくだろうと思います。
by sanyo-kansatu
| 2015-09-07 12:01
| “参与観察”日誌
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