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2016年 02月 07日
![]() 2015年国・地域別訪日外国人旅行者数(日本政府観光局(JNTO)調べ) 1位 中国 499万3800人 2位 韓国 400万2100人 3位 台湾 367万7100人 4位 香港 152万4300人 5位 米国 103万3200人 訪日外国人旅行者の内訳をみると、中国、韓国、台湾、香港の東アジア4国・地域で全体の7割を占めている。なかでも国別で初めてトップとなった中国市場は500万人(499万人)規模にふくらんだが、15年の日中間の新規路線の増加は目を見張るものがあった。これまでの主なゲートウェイだった成田や関空、羽田、新千歳といった主要空港のみならず、地方空港への就航も相次いでいる。これは地方へ訪日客の分散化を進めるうえで重要な進展といえるだろう。 2015年、国際定期便が3→16に増えた静岡空港 いまや東アジアの航空網は新時代を迎えているのだ。 なかでも2015年、地方空港として大きく躍進したのが静岡空港である。 ![]() 09年6月、全国で98番目の空港として誕生した静岡空港は、開港当初から需要予測の甘さが指摘され、赤字経営が続いていた。 ところが、15年に入り、それまで上海、台北、ソウルまでの週13便しか定期便のなかった国際線に、中国13都市から一気に新規就航が相次いだ。現在は、冬期スケジュールに入っているため運休便もあるが、一時最大16路線週53便になった。わずか1年で静岡空港の国際線の便数は4倍になったのだ。地方管理空港ではいまや全国一の規模である。 背景にはもちろん、中国の訪日旅行需要の急激な拡大がある。成田や関空の乗り入れがいっぱいになり、東京・大阪ゴールデンルートの第3のゲートウェイとして静岡空港に白羽の矢が立ったのだ。 静岡県観光部空港利用促進課の稲垣孝博課長は「開港以来、東日本大震災の影響などで国際線は低迷していたが、14年頃から徐々に上昇し、15年には初めて国内客を国際客が上回った。その理由は、中国からの路線が一気に増えたためだが、呼び水となったのが15年1月に定期便となった天津航空の天津線」だという。 中国大手エアラインの海南航空グループに属する天津航空は14年春からすでに週5便のチャーター便を運航していたが、搭乗率は8~9割と好調だった。14年12月には北京首都航空の杭州線のチャーター便も始まり、翌年から中国東方航空や中国南方航空なども一斉に乗り入れてきた。 ![]() 〜2015年静岡空港の中国系エアラインの新規就航状況 ※( )は就航日。中国東方航空上海線を除く〜 中国東方航空 寧波(2015.3.31)※チャーター便は15.2.17~ 温州(2015.7.1) 南京(2015.7.4) 合肥(2015.9.23) 天津航空 天津(2015.1.28)※チャーター便は14.5.28~ 西安(2015.5.16) 中国南方航空 武漢(2015.5.15) 南寧(2015.5.15) 鄭州(2015.6.28) 長沙(2015.7.2) 北京首都航空 杭州(2015.7.2)※チャーター便は14.12.25~ 塩城(海口)(2015.9.3)※チャーター便は15.5.27~ 石家荘(2015.9.5)※チャーター便は15.5.27~ ※北京首都航空も海南航空グループに属している。 ![]() 路線数は急に増えたが、上海線や天津線を除くと、内陸の地方都市からの便が多いのが静岡線の特徴だ。中国の地方都市から日本の地方都市への直行便が結ばれたという意味では画期的ともいえるが、内陸都市の旅客は団体が大半なので、県内には1泊程度の滞在しかないのが現状だ。「富士山は誰でも知っているが、それが静岡県にあることはあまり知られていない」と語る山梨利之国際観光班長は、今後県内の連伯や外国客向けの観光プランの造成を進めていきたいという。 ![]() 関空の中国路線増加の呼び水は春秋航空 中国からの新規路線が増えているのは静岡空港だけではない。中国路線の数でいえば、関西国際空港が国内最大だ。 もともと関空はアジア方面からのLCCの運航数の比率も31.7%(15年冬期)と突出しているが、以下のリリースをみても、国際線の就航便数は2011年以降、右肩上がりである。関空に乗り入れる東アジアの航空路線が急増しているからだが、特に14年以降、中国路線の勢いが目につく。 ![]() 関西国際空港の国際定期便運航計画について(2015年冬期スケジュール) http://www.nkiac.co.jp/news/2015/2277/2015winter.pdf 15年冬期の関西国際空港の国際旅客便の方面別内訳(週)をみると、以下のとおり。 韓国 245便 3都市 中国 441便 41都市 台湾 147便 3都市 他アジア 121便 11都市 北米 35便 3都市 欧州 27便 5都市 その他 53便 7都市 そのためこの数年、関西を訪れる訪日外国人も急増している。15年は全国的に増えたことは確かだが、関西の伸び率は全国平均を大きく上回っている。 関西を訪れる外国客の特徴は、買い物を好む東アジアや東南アジアからの観光客が多いことだ。こうしたLCCを利用して賢く旅する旅行者を「関西バジェットトラベラー」と呼ぶ。一般に東京には出張や公費で訪れる旅客も多いのに対し、関西は「自分のお金で楽しみたい人が訪れる」といわれ、リピーター比率も東京より高い。 大阪観光局によると、関空の中国路線は、14年3月の春秋航空の上海線の就航が呼び水となったという。さらに、4月に上海吉祥空港が就航し、中国のLCC2社が揃うと、その後国営キャリアやその傘下にあるローカルエアラインが中国の地方都市からの就航を加速させたことで、これほど拡大したのだ。 関空には、一般の日本人は知らないような中国の地方都市からのフライトがあることに加え、山東航空や深圳航空のような聞きなれないエアラインも乗り入れている。直行便も増えたが、地方都市から上海や北京などの乗継便も急増しており、中国全土から訪日旅行客が現れていることを物語っている。これが15年に中国市場が前年2倍増の500万人規模にふくらんだ大きな理由なのである。 ※そのプッシュ要員となったのは、15年1月に実施された日本政府によるビザ緩和である。以下のやまとごころレポート参照。 19回 「爆買い」はいつまで続くのか? 500万人市場になった中国インバウンド大盛況の舞台裏 http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_19.html ただし、関係者によると、関空の入国手続きや大阪府内の宿泊施設はすでに「キャパオーバー」の兆候を見せており、最近では中国系エアラインの新規就航が中部国際空港へとシフトする傾向も見られるという。 実際、中部国際空港の中国路線も、すでに以下の24都市に就航している。 北京、上海、長春、長沙、常州、大連、福州、杭州、貴陽、ハルビン、合肥、フフホト、昆明、南通、寧波、青島、瀋陽、石家荘、太原、天津、武漢、西安、煙台、銀川 中部国際空港フライトスケジュール(2016年2月1日~2016年2月29日)より http://www.centrair.jp/airport/flight_info/monthly/1198613_1744.html 中国の内陸都市からこれほど多くの航空便が中部地区に乗り入れるという状況は、数年前には考えられなかっただろう。 背景にはオープンスカイとLCC市場の拡大 では、いつ頃から地方都市への国際線の就航が増えてきたのか。その背景には、米国との航空便の路線や発着枠、便数を自由化させるオープンスカイ協定を締結させた2010年10月以降、続々とアジア各国と同様の協定を進めたことがある。 2010年以降の主なアジアのオープンスカイ協定締結国 2010 韓国 2011 シンガポール、マレーシア、香港、インドネシア、台湾 2012 中国、タイ 2013 フィリピン 特に地方空港への国際線乗り入れ増加に影響を与えたのは、2010年の韓国、11年の台湾、12年の中国との協定締結だろう。 2000年代以降急成長していたアジアのLCCも、この協定によって成田や関空だけでなく、北海道や沖縄などの人気レジャー路線に乗り入れを始めた。たとえば、韓国のエアプサンやジンエアー、チェジュ航空、ティーウェイ航空、シンガポールのジェットスター・アジア航空やスクート航空、マレーシアのエアアジアやエアアジアXなどだ。また中国では、まず春秋航空のようなLCCやローカルエアラインが地方空港への乗り入れを開始し、それに国営キャリアが後追いするような動きが起こり、路線数を拡充していった流れがある。 ![]() こうして日本の地方空港は、アジア各国の国際線が飛んでくる時代になった。ただし、まだ「一部の」としかいえないのが現状だ。 そこで、国も地方空港への国際線の乗り入れを推進するための施策を打ち出している。 16年度から国が管理する空港に新たに就航したり増便したりする国際定期便の着陸料を1年間、実質無料にする方針を固めた。少子高齢化で国内需要をこれ以上増やすことが難しい日本にとって、海外の近隣諸国からの航空便を誘致することで地域経済の活性化を促すことが狙いだ。 ※対象は稚内、釧路、函館、新潟、広島、高松、松山、高知、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇の15空港。 佐賀空港の誘致サクセスストーリーに学べ 日本の地方空港への乗り入れに積極的な外国系エアラインといえば、中国の春秋航空が筆頭に挙げられるだろう。なにしろ日本法人のスプリングジャパン(春秋航空日本)を立ち上げ、日中両国から双方向で国際線を運航させるという発想は並大抵のものではない。そして、ついに今年2月中旬、スプリングジャパンは初めての国際線として成田・武漢、重慶線を就航させる。 ![]() 2010年7月、茨城空港に初の国際線の運航を開始して以降、東日本大震災や日中関係の悪化など、航空需要に悪影響を与える要因が頻発したが、春秋航空はブレることなく、日本市場を開拓してきた。しかし、それは彼らの一方的な営業努力だけで実ったわけではない。誘致を図りたい地方空港の取り組みもなければ実現しなかった。 春秋航空の日本路線として茨城、高松に次ぐ第3の就航地となったのが佐賀空港だ。なぜ佐賀空港が選ばれたのか。その理由は、佐賀県が徹底して誘致に取り組んだからである。 ![]() 話は5年半前にさかのぼる。 日本の地方空港の赤字問題は深刻で、利用者促進と新規航空路線の誘致は大命題となっている。茨城線の就航以降、春秋航空を誘致しようと全国の自治体関係者がこぞって上海詣でをしたのもそのためだった。春秋側の関係者によると、全国の半分近い都道府県が同社に足を運んだというほど誘致合戦は過熱していた。 春秋側にとって就航先の選定は「自治体がコスト削減のためにどこまで協力してくれるかが条件」(孫振誠日本市場開発部長・当時)だった。古川康佐賀県知事(当時)は、上海線の誘致に佐賀空港が成功した理由について「早い時期から県庁職員が一丸となって空港セールスに取り組んできたことが評価された」と語っている。 その取り組みとは? 関係者の話をまとめるとこうなる。 佐賀県が春秋航空に最初に誘致の話をしたのは、10年9月末のことだった。当時、中国では上海万博が開催されており、佐賀県は日本館にブースを出展していた。 そのとき、問題となったのは、佐賀空港の滑走路が2000mしかないことだった。実際をいえば、集客の問題や空港と市内へのアクセスなど他にも課題があったのだが、春秋側としては、安全性の面からその点を指摘したのである。春秋航空の日本路線はエアバスA320-200型機を使用していて、滑走路は2500mが必要だという判断だった。 ![]() はたして2000mの滑走路では本当に発着が難しいのか? 佐賀県は、この課題をいかに解決するかを問われた。当時の県の空港担当者は、まず全日空に話を聞いた。当時全日空の羽田・佐賀線は同じA320 を使用していたからだ。全日空の回答は「なんら不自由していない」とのことだった。 さらに、安全性に問題はないというデータを用意するために、担当者は10年秋から冬にかけでの約3か月間、1日4回の全日空機の離発着状況を映像に収め、記録を続けた。 ここまでなら誰でも考えつくかもしれない。だが、その担当者は中国国内の春秋航空の路線がある空港のデータをすべて調べ上げ、2000m滑走路の空港がないか探した。すると湖南省の懐化空港が2000mだったことを突き止めた。その空港は、侗族という少数民族の住む自治区の芷江(ZhiJiang)にあった。 その後、彼は実際に懐化空港を訪ねている。同空港の関係者らに事情を聞き、「2000m滑走路でも問題ない」との言質をとって帰国した。 この話は、佐賀県と春秋航空との折衝の際、最も効いたという。合理主義に徹する春秋航空担当者らも「そこまでやられたら就航させていただくしかない」と佐賀県の熱意に舌を巻いたのだった。 ![]() これは5年ほど前の話だが、時代はずいぶん変わったものだ。佐賀県のように誘致のための念入りな調査や積極的な取り組みを経ることなく就航が実現する静岡空港のような例も出てきたからだ。 もちろん、静岡空港には東京・大阪ゴールデンルートの中間に位置し、日本のシンボルでもある富士山に近いという圧倒的な地の利がある。ゆえに、単純には比較できないし、むしろ大半の地方空港は佐賀空港と立場は変わらない。このサクセスストーリーから学べることは多いというべきだろう。 慎重な日系エアラインと供給過剰の声 中国系エアラインの精力的な日本路線拡充の一方、日系の動きはどうか。対照的に慎重な姿勢を崩していないようだ。 それでも、先ごろ全日空は今年4月より成田・武漢線の開設を発表している。もっとも、中国路線としては北京、上海、広州、青島、大連、杭州、成都などの主要都市のみ。日本航空も中国系とのコードシェアも含めれば15都市になるが、基本は北京、上海、広州だけだ。 背景には、訪中日本人、特にレジャー客の激減に加え、ここ数年の日本企業による中国進出や投資の減速もあり、慎重にならざるを得ない面がある。実際、訪日中国客の旺盛な購買力は相変わらず目立つ一方、中国経済の減速は日ましに現実のものとなり、建設・工作機械や電子部品の対中輸出がマイナスとなるなどの経済指標も出ているからだ。さらに、中国系の新規路線開設や増便が相次いだ結果、やや供給過剰の声も聞かれる。 確かに、この1年の中国系エアラインの日本路線の拡充には、前のめり感があったことも否めない。日本旅行が中国でブームとなり、富裕層のみならず、全国の中間層にまで市場が広がった。気がかりなのは、中国の訪日旅行需要の今後の行方だ。わずか1年でこれほど一気に航空便が増えたのであれば、逆に一気に減ることもまったく考えられなくはないからだ。 静岡県の関係者にすれば、他の地方空港とは事情が違って、特別誘致活動をしなくても就航が実現したことは、逆に怖さもあるだろう。 それでも、「開港したばかりの頃は国際線なんてまったく考えていなかった。それがいまでは国内客を逆転し、いかに外国客の受入を推進するかということに取り組みが移っている。時代は大きく変わった」と静岡県の山梨利之国際観光班長は言う。これも素直な実感だろう。 最大シェアとなった中国の経済の減速ばかりがメディアで報じられる昨今、今後の訪日旅行市場をどう見ればいいのか。まずは客観情勢をふまえたうえで、海外の市場動向に対して受身になるだけでなく、こちらからも能動的に手を打っていく道を探っていくしかないだろう。2014年に日本法人を開設して以降、ついに国際線の運航も開始する春秋グループの辛抱強い日本市場開拓の取り組みは、長期的な視点に基づくもので、大いに学ぶところがあるはずだ。この1、2年で急に日本路線を増やしてきた他の中国系とは明らかに姿勢が違うからだ。 ※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/report/2016/report_21.html
by sanyo-kansatu
| 2016-02-07 18:41
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