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2016年 04月 28日
先月、上海出張に行った折、現地の本屋で中国語版の「るるぶ情報版」が売られているのを見つけました。 そういうと、それ海賊版じゃないの? つっこみが入りそうですが、正真正銘、現地の出版社から発行されたものでした。中国旅游出版社は、数多くの旅行書を手がけている大手出版社です。 ![]() 中国旅游出版社 http://www.cttp.net.cn/ ![]() 同書を見つけたのは、地下鉄中山公園駅のそばにある新華書店です。そんなに大きな店ではありませんが、1階に旅行書籍のコーナーがあり、平積みにされていたのは「京都」「九州」「北海道」です。 ![]() このシリーズは、訪日中国客のために、もともと日本の読者向けにつくられたガイドブックをそのまま翻訳したものなのです。 3月中旬のことで、その書店では「春の旅行コーナー」というささやかなディスプレイがあり、いくつかのセレクトした旅行書を壁に並べています。そのなかに「るるぶ九州」や他の現地出版社がつくった東京ガイド書が2冊もあります。いま上海でいかに日本旅行がブームになっているか、よくわかる光景です。 ![]() 何より興味深いのは、創刊以来ターゲットとしてきた日本の若い女性向けの国内旅行のバイブルが、いまや中国の読者の手にも渡り、日本を旅する時代になってきたことを意味することです。 帰国後以下のリリースを見つけました。 るるぶ『OMOTENASHI Travel Guide』「北海道」「東京」「京都」「九州」「沖縄」 中国全土主要都市で12月15日より順次発売開始! http://www.jtbpublishing.com/newsrelease/20151216255.pdf これによると、「まずは12月15日に中国全土の主要都市にて「北海道」「東京」「京都」「九州」「沖縄」の5タイトルを発売」「同じく12月15日に台湾で「東京」「北海道」、12月28日に「京都」・「沖縄」を発売」しているそうです。 「るるぶ情報版」のような旅行メディアは、基本的に個人客向けのものです。団体ツアーでは、この本に載っているようなお店を自由に訪ねまわることは難しいからです。昨年中国から訪日する個人客がぐっと増えた時代にうまくはまった企画といえそうです。 ただし、ちょっと気になることもあります。「るるぶ情報版」のような「情報誌」は、きわめて日本に特有のメディアでもあるからです。1980年代にいっせいに花開いた「情報誌」は、いうまでもないことですが、「ネット以前」に生まれたものです。その特徴は、限られた誌面に写真とテキストを魅力的かつ、なるべくたくさん、しかも器用に詰め込むもので、日本人好みの職人芸といっていいほどの完成度です。日本の幕の内弁当的な世界観が見事なまでに体現された世界といってもいいでしょう。 ![]() しかし、今日の大半のアジアの旅行者たちは、「ネット以後」に海外旅行を体験するようになった人たちです。情報は紙ではなく、ネットで得るというのが日常です。ゆえに、日本の「情報誌」を読み、活用することがどれほどできるかについては、疑問がないわけではありません。 こういっても、ピンとこないかもしれません。日本人は「ネット以前」から「以後」にいたる今日まで、情報誌を活用しながら、その後はネットも使うという両刀遣いで消費生活を送ってきたからです。しかし、彼らは情報はネットで取るというスタイルから始まっているために、読み方を知らないかもしれないのです。彼らにすれば、なぜ1ページにこんなにたくさんの情報がごちゃごちゃと詰め込まれなければならないのか、その理由が理解できません。文字が小さすぎて、見にくいと思う人もいるでしょう。 またネット情報では、特定の店の住所や地図がクリックひとつでわかりますが、紙媒体の場合、店と地図はたいてい別のページにあるため、探すのが面倒というだけでなく、そもそも探し方を知らない可能性があります。たとえば、日本人であれば、「MAP p●●-3C」という表記が「●●ページの地図の格子で分けられた3Cの位置にある」ことを理解していると思いますが、情報誌を未体験の人たちにとっては、そんな約束事を知らないかもしれないのです。 その意味で、上記リリースの冒頭の以下の文面を読んだとき、なるほどと思ったものです。 「るるぶ『OMOTENASHI Travel Guide』は、「九州日本」を2015年3月24日に台湾・香港・マレーシア・シンガポールで発売し、11月に台湾・香港では増刷するなど、ベストセラーを続けています」。 そう、この多言語版シリーズの第一弾は、いち早く昨年3月に台湾や香港などで発売されていたのです。実は、これらの地域は、早い時期から角川グループなどの日本の「情報誌」メディアが進出していました。この地域の人たちは情報誌を体験済みなのです。先行的にこの地域で発売するというのは利にかなっています。 では、中国本土で発売された「るるぶ情報版」の売れ行きはどうなのでしょうか? 実は、昨日発行元であるJTBパブリッシングの担当者に取材することができました。 その話は、別の媒体で記事化することが決まっています。同媒体の多言語版発行の狙いや現地における読者ターゲット、制作にあたっての苦労などについては、あらためてお伝えしたいと思います。 ※日経BPネット 「るるぶ」多言語版がアジアで人気、日本人と同じ旅行書を手に日本を旅する(2016年5月11日) http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/051100012/
by sanyo-kansatu
| 2016-04-28 11:08
| “参与観察”日誌
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