2016年 06月 15日
今朝、なにげにネットニュースを見ていたら、こんな報道がありました。しかも、これは韓国メディアの日本語版です。 観光客がバスを待つ東京、90秒で全員搭乗・5分以内に出発(朝鮮日報2016.6.14) http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/14/2016061401144.html?ent_rank_news 今月1日、東京・銀座のラオックス(LaOX)免税店。中国人団体観光客が一日3000-5000人押し寄せるショッピング・スポットだ。大型観光バスが1分に1-2台ずつ、ひっきりなしに客を降ろしていくが、どのバスも1カ所に5分以上停車していることはなかった。1時間に80台以上のバスが停車して、出発していったが、そのうち5分以上止まっていたバスはたった1台、車いすに乗った観光客を降ろしたバスだけだった。 なぜそのまま停車させておかずに、すぐにバスを移動させるのだろうか。観光バス運転手のノガミさん(53)は「会社から『絶対に5分以上、車を止めておくな。すぐに車を移動させろ』と指示された」と話す。ノガミさんは免税店前に観光客を降ろした後、日比谷公園やお台場といった車の通行が少ない地域に20-30分かけて移動し、決められた時間に観光客が全員集合したらガイドから電話をもらい、再び迎えに行く。多くのバスが順に観光客を降ろした後、ほかの場所で待機して、また順に戻ってくるという一種の「回転システム」になっているのだ。 別の運転手Aさんは「違反したら警察に徹底的に取り締まられる。10分を超えると警告もなくすぐに反則金1万2000-1万5000円、違反点数2点が付けられる」と言った。警視庁職員は「2点ずつ3回違反し、合計6点になると1カ月の免許停止、15点を超えると免許取り消しになる」と言った。反則金は、道路での駐停車違反は1万2000円、横断歩道・交差点にかかっていれば1万5000円だ。運転手が車を離れる放置駐車違反になると、反則金が道路では2万1000円、横断歩道・交差点などでは2万5000円とさらに高くなる。 東京で20年以上営業している中堅旅行代理店のB代表は「日本では旅行代理店がバス会社に数日前までに日程表を渡すと、バス会社が駐車場の計画を組んで現場に出る」と語った。観光客が遅刻しても、バスは約束通りの時間ピッタリに出発する。周辺を一周して15分後にその場に戻り、遅れて来た人を乗せるのだ。ガイドや観光客は現場で「早く来て車を止めていてほしい」「もう少し待ってくれ」とイライラを爆発させたらどうするのか。B代表は「警察もいるし反則金があるし…。お客様が怒ってもバス会社はその通りにはできない」と言った。 ラオックスから500メートル離れたロッテ免税店前でも駐停車の混乱はなかった。ロッテ免税店は今年3月の開店に先立ち、3カ月間にわたり東京都中央区役所と駐車場問題について協議し、免税店前のタクシー乗り場で観光バスの乗客が乗り降りできるよう許可をもらった。「バス1台当たり90秒以上停車しない」という条件付きだった。 乗客数十人が90秒以内に乗り降りを完了させられるのだろうか。ロッテ免税店のイム・ヨンソプ東京事務所長は「やってみたらできた」と話す。事実、炊飯器と買い物袋を1つずつ持った中国人観光客20人が免税店前のタクシー乗り場にあらかじめ並び、自分たちのバスが来ると軍事作戦のように一糸乱れずに乗車した。中国人ガイドは中国語で「皆さん、銀座ではすぐに乗車してください」と繰り返し叫んでいた。 日本にもともと、駐停車に伴う混乱がなかったわけではない。近年、中国人観光客が急増した影響で、免税店に寄る観光バスの駐車場問題が社会問題になった。すると、日本の国土交通省は今年2月、日本バス協会(NBA)と共に免税店前の駐車場問題について「マナーアップ(manner up)キャンペーン」を展開した。バスが観光客を待つのではなく、観光客が事前に出てきてバスを待たなければならないというのが骨子だ。同協会から会員企業に「5分以上停車しないでください。ほかの所に移動・待機してから戻ってきましょう」というパンフレットを配布した。銀座・浅草・新宿など観光スポット周辺の駐車場情報も付けた。警視庁も賛同した。旅行代理店やバス会社が自主的にキャンペーンに従うよう誘導すると共に、規則に違反した場合は警察が反則金を科すというシステムが確立した。 それに伴い、観光客の行動パターンも変わった。ラオックス関係者は「以前はバスが先に来て、観光客が出てくるのを10分でも20分でもひたすら待ち続けたが、今は観光客が集まってから車が来るので、観光客の間でも『日本では交通の妨げになってはいけない』という認識が定着した」と語った。 東京=金秀恵(キム・スへ)特派員 , 東京=崔仁準(チェ・インジュン)特派員 へえ、そんなことになっていたのか…。そう思った人も多いかもしれません。「ツアーバス駐停車90秒ルール」、知りませんでした。 確かに、今年の春節(2月上旬)、銀座8丁目の中国人ご用達の免税店「ラオックス」の前は、路駐するバスが列をなしていました。 店の前もこの混雑ぶりです。地元からの声もあったことでしょう。 さすがに、これだけのバスが一斉に路駐する状態は見逃せないと思ったのか、警察は動き出したようです。 同じことは、ぼくの仕事場に近い東新宿でも4月中旬頃から起きていました。 新宿5丁目ツアーバス路駐台数調査 2016年4月、5月、6月 http://inbound.exblog.jp/25630882/ http://inbound.exblog.jp/25812191/ http://inbound.exblog.jp/25873364/ 記事にもあるように、バスの運転手は罰金を払わされてはたまらないというわけで、中国客にも協力してもらいながら、バスの乗り降りを迅速に行い、自らも彼らの買い物時間は店の前を離れ、付近で路駐できるスポットを探して身をひそめているか、あるいは周辺を回遊しながら約束の時間を待つことになったようです。ただでさえ、都心には路駐スペースがないのに、これはなかなか大変なことです。「みなさま、ご苦労様です」と言ってあげるべきではないでしょうか。 ところで、興味深いのは、日本のこうした出来事をなぜ韓国メディアが取り上げているか、です。彼らは区や警察、バス運転手らにも取材しています。 ネットを検索していると、同じ朝鮮日報でこんな記事が見つかりました。 渋滞する免税店周辺、ソウル市民の不満高まる(朝鮮日報2016.6.14) http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/14/2016061401143.html なんでもソウルの有名な免税店前の道路でも、バスが列をなして、地元市民が不満をもらしているとか。記事によると、夕刻一台のバスが違法駐車をしたものの、「警察やソウル市の取り締まりチームは現れず、地元の「模範運転者会」のメンバー4人がホイッスルを鳴らして交通整理しようとしていた。同団体のイ・ジンヨンさんは「バスが一度に詰め掛ければ交通整理は不可能に近い」と話した」と報じています。 さらに、こんなことも書かれています。 「外国人観光客を免税店に連れて行く観光バスが原因で、ソウル中心部のあちこちでひどい渋滞が頻発している。免税店が観光バスを吸い込む「ブラックホール」の役割を果たしているとして、免税店の責任を指摘する声もある。 現在、ソウル中心部には新羅免税店のほか明洞のロッテ免税店と新世界免税店、仁寺洞のSM免税店、光化門の東和免税店、東大門のドゥータ免税店など、大型免税店がいくつもある。ソウル市によると、市内の主な観光地を回る観光バスは1日平均1047台(2015年基準)に達するという」 えっ、1047台!? これは相当なものではないでしょうか。訪韓中国客のソウル一極集中はすざまじいものがありますね。 「免税店周辺の交通渋滞に対し、ソウル市と免税店業界は互いに責任を押し付け合っている。ソウル市は「免税店の事業者が十分な駐車場を確保していないせい」と主張する一方、新羅免税店の関係者は「(奨忠体育館交差点一帯の)混雑は免税店とは関係なく、薬水高架道路を撤去したことが原因」と反発している。 不便をこうむっているのは市民だ。ソウル市麻浦区に住む女性(36)はこの日、ベビーカーを押して明洞のロッテヤングプラザを訪れたが、免税店前の観光バスの排ガスが気になりベビーカーにカバーをかけた。女性は「全部取り締まりの対象のはずなのに、どうして放置しているのか」と不満を口にした」。 どうやら朝鮮日報は、日本の免税店路駐問題の解決に向けた取り組みを見習え、とでも言っているようなのです。 さらに検索を続けると、別の韓国メディアのこんな記事が見つかりました。面白いことに、すべて同日配信です。 免税店に観光バス用の駐車場設置を義務付けへ=韓国 (聨合ニュース2016/06/14) http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/06/14/0900000000AJP20160614005300882.HTML 韓国国土交通部は14日、市中免税店に観光バスの駐車場の設置を義務付ける内容が盛り込まれた駐車場法施行令一部改正案を立法予告したと明らかにした。(中略)これと関連してソウル市は先ごろ、市内の免税店7カ所に公文書を送付し、独自に用意した駐車場や公営駐車場に観光バスを誘導するなど対策を取るよう求めた。 まるでメディアと政府の連携プレーのような動きです。 それにしても、日本ではよその国の外国人旅行者の動向など、ほぼ関心がない話題だと思いますが、韓国では違うようです。そこには理由がありそうです。今年の初め、こんな報道がありました。 日本に奪われた中国人観光客 外国人訪問者数「韓日逆転」(聨合ニュース2016/01/27) http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2016/01/26/0400000000AJP20160126004200882.HTML 記事によると「韓国観光公社とJNTOによると、昨年日本を訪問した外国人観光客数は1973万7000人で、韓国を訪問した外国人観光客数(1323万2000人)より多かった。訪韓外国人観光客数は09年に781万8000人を記録。679万人だった日本を超え、14年まで6年連続で日本を上回っていた」そうです。 つまり、昨年の外国人旅行者数において、韓国は日本に7年ぶりに追い越されてしまったのです。どうやら彼らはこの問題を気にしているようなのです。 ところが、中国人旅行者数に限っては、日本(499万人)より韓国(598 万人)が多い。当然、バス路駐問題は、韓国のほうがより深刻であることがわかります。これも彼らが日本のツアーバス路駐問題に関心を持った理由なのでしょう。 韓国メディアの危惧はそれだけではありません。訪韓日本人旅行者の減少問題です。昨年の訪日韓国人(400万人)に対して訪韓日本人(184万人)というダブルスコア以上の差となってしまいました。かつての韓流ブームは本当に過去のものとなってしまったのか。 しかしながら、皮肉なことに、こんな報道も見つけてしまいました。 ことし韓国人に最も人気の夏休み旅行先1位は大阪(中央日報2016年06月13日) http://japanese.joins.com/article/813/216813.html?servcode=400§code=400 これは先日、大阪の地下鉄に乗ったときに見かけたハングル表示です。いかに大阪に韓国人旅行者が多いか、よくわかりました。 では、日本人のこの夏の人気海外旅行先はどうなのか。 トラベルコちゃん海外ツアー検索で人気の海外旅行先(2016年夏) http://www.tour.ne.jp/special/world/ranking/index_summer.html このサイトによると「1位グアム、2位台北、3位ホノルル、4位ソウル、5位バリ島…」 良かったですね。4位にソウルが入っていました。 いまや韓国メディアの報道の一部は日本語で読める時代です。しかも、中国系のネットニュースのような記事を簡約したものではなく、そのまま翻訳されて掲載されているようです。他国の主要メディアの記事がふつうに読めるなんて、考えてみれば、すごいことです。 おかげで、彼らの考えていることがずいぶん伝わるようになりました。それが日本人の対韓イメージにどんな影響を与えているかについて考えると、疑問を感じることも多いのですけれど、韓国の事情に詳しくない自分のような人間でも、彼らが日本のいかなることに関心を持っているのか、またその理由について考察するうえで、それなりに役立つことは確かです。何より今回のように、日本の社会で起きている出来事について意外な視点を提供してくれることもあり、面白いものです。
by sanyo-kansatu
| 2016-06-15 10:30
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