2017年 01月 13日
この冬も中国のPM2.5は猛威をふるっているようです。 北京の街が白く…PM2.5で大気汚染深刻(日テレNEWS24 2016年12月20日) http://www.news24.jp/articles/2016/12/20/10349524.html 今年の春節は1月28日ですが、こんなニュースも届いています。 中国で「肺洗浄の旅」が人気 大気汚染まん延で需要増加(Forbes Japan2017.1.12) http://forbesjapan.com/articles/detail/14845 中国は、2017年の始まりを、濃霧に対するものとしては同国史上初となる最高レベルの「赤色警報」と共に迎えた。1月4日には、濃霧によって視界が50メートル以下に悪化。航空便や地上交通に大きな混乱が生じた。 ハルビンから広州、成都から杭州にいたるまでの各都市ではスモッグに警戒を呼び掛ける「赤色警報」やその1段階下の「オレンジ警報」が発令され、私用車の交通が半分に制限された他、大気汚染の原因となっている工場の多くが操業停止を強いられた。 こうした中、中国のインターネット検索エンジンでは、大気汚染に関連する検索数が過去最多を記録。「どこに行くべきか」「洗肺(肺の洗浄)」「森」といった検索が相次いだ。また中国最大の旅行サイト、シートリップ(携程)は、「避霾(スモッグ回避)旅行」のトレンドに関する報告書を公開している。 同報告書によると、「避霾旅行」は近年、冬の観光において定番化している。2016年12月には15万人以上の中国人が大気汚染を逃れるため海外に渡航しており、新鮮な空気に対する欲求が中国の海外旅行需要の拡大における大きな要素となっていることを示しているという。 エール大学が毎年まとめる「環境パフォーマンス指数(EPI)」によると、空気の質が良い上位10か国は上からセーシェル、トリニダード・トバゴ、モルディブ、アイスランド、オーストラリア、ガイアナ、ニュージーランド、キューバ、モーリシャス諸島、ベリーズだった。 シートリップによると、新鮮な空気を求める中国人の旅行先として人気の上位10か国はタイ、日本、インドネシア、オーストラリア、モルディブ、ニュージーランド、米国、カナダ、モーリシャス諸島、セーシェルで、うち5か国はEPIのランキングでも上位10位内に入っていた。 日本を訪れる中国人観光客は、澄んだ空気を求めて北海道や九州、沖縄などの小さな村々を訪れているという。またオーストラリアとニュージーランドは夏冬が逆転する気候が、カナダは美しく広大な国立公園が人気となっている。 シートリップは、大気汚染レベルの上昇と旅行需要の増加には明確な相関性があると指摘している。避霾旅行が人気の都市には、大気汚染が特に深刻な北京と天津に加え、上海、成都、広州、深セン、重慶、西安、武漢、済南が上位10位に入った。また近年大気汚染レベルが上昇傾向にある長江デルタ地帯の江蘇省や浙江省でも、避霾旅行の需要が高まっているという。 今冬は、北欧でのオーロラ鑑賞ツアーの予約数が4倍に急増。また、「世界最後の浄土」である南極を訪れるツアーも、費用が高額にもかかわらず中国人の間で人気となっている。より経済的な旅行先としては、韓国の済州(チェジュ)島、タイのプーケット、インドネシアのバリ島、フィリピンのボラカイ島などが人気だという。 シートリップが集めたデータによると、旅行者の多くは旅行先を選ぶ際、まず空気の質と気候で絞り込み、その次に出発地からの距離や乗り継ぎの便利さなどを考慮していた。パッケージツアーもそうした需要に合わせて名前を変え、「きれいな空気と酸素で肺洗浄」や「乗り継ぎなし、スモッグなしの暖かい冬」といった宣伝文句で売り出しているのだという。 なかなか深刻ですね。この記事では「シートリップによると、新鮮な空気を求める中国人の旅行先として人気の上位10か国はタイ、日本、インドネシア」と伝えています。だとすれば、今月末に始まる春節で「肺を洗う旅」の中国客はどっと来るのでしょうか。 この記事を書いているドイツ人のWolfgang Georg Arlt氏は、2004年に自ら設立したCOTRI(中国出境旅游研究所)の代表として、中国の海外旅行市場に関する精力的で継続的な調査研究を行っている研究者です。 Wolfgang Georg Arlt http://forbesjapan.com/author/detail/643 COTRI(China Outbound Tourism Research Institute) http://china-outbound.com/ 数年前、ぼくは北京で彼の話を聞いたことがありますが、彼は中国の海外旅行市場の隆盛を国際社会に伝える第一人者です。 2012年、中国は米独を抜いて世界一の海外旅行大国になった(COTTM2013報告 その2) http://inbound.exblog.jp/20499744/ さて、ここに出てくる「洗肺(肺の洗浄)」の旅については、いまから3年前のこの時期、中国のメディアで盛んに取り上げられ、流行語になっていました。中華網(www.china.com)によると、こういう意味だそうです。 「洗肺游」は、空気がきれいな場所へ旅行し、肺をきれいにすること。2013年の冬、中国では多く地域が深刻なスモッグに見舞われ、空気がきれいな場所へ行く「洗肺游」が観光市場の新しいトレンドになった。国内の多くの旅行社と観光ウェブサイトでは、この「洗肺游」を企画、販売している。人気の「洗肺」地は、国内は三亜、アモイ、麗江、桂林、昆明、長白山、シーサンパンナ、貴陽、大理、黄山など。海外では、プーケット、バリ島、モーリシャス、チェジュ(済州)島、モルジブなどが人気である。 中国の新人類は日本の青空に魅せられている http://inbound.exblog.jp/24302307/ 昨年末、大雪による欠航で新千歳空港で夜明かしした「中国客」がゲートに乱入した騒動がありました。 「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える http://inbound.exblog.jp/26507044/ 実は年末年始にも、今度はPM2.5のために多くの中国の空港が濃霧に覆われ、離発着ができないため羽田空港で夜明かしした中国客が出たことも伝えられたばかりでした。 大晦日に帰国予定の中国人観光客、スモッグ酷く羽田で年越し 快晴の初富士まで拝む羽目に・・・ (サーチナ2017-01-05) http://news.searchina.net/id/1626473 年末年始も激しいスモッグに見舞われた中国国内では、航空便の欠航や大幅な遅延が相次いだ。東京の羽田空港では、大みそかに帰国するはずだった多くの中国人観光客が空港内で「越年」する事態となった。 「1月2日午前3時半、私が乗った飛行機は濃いスモッグが立ち込めた天津浜海国際空港に停止した。キャビンのドアが空いた瞬間、大半の乗客が激しい咳をし始めた」 中国メディア・斉魯晩報は4日、「スモッグのせいで東京に閉じ込められて越年 2度の遅延で帰国」とする記事を掲載した。記事は、年末に日本を訪れ旅行していた記者が昨年12月31日夜のオッケー航空(奥凱航空)便で羽田から天津に戻ろうとしていたところ、激しいスモッグにより遅延となり、出発が翌1月1日の午後以降にずれ込む見込みであるとの情報を得たと紹介。「乗客たちは空港で年越しの夜を過ごし、さらにその半日後にようやく帰国の途に就くこととなった」とした。 そして、スモッグにより遅延が発生したフライトはこの便だけではなく、羽田空港内の至る場所で中国北部地方へ向かう中国人観光客が充満していたことを伝えている。さらに、1月1日午前には「さらに残念な情報が国内から伝わってきた」とし、中国北部地域のスモッグが消えるどころかさらに酷くなり、目的地である天津などの空港では視界が50メートルにまで低下したと紹介した。 結局記者が乗る予定だった航空便はほぼ丸1日遅れて日本時間2日未明に出発、北京時間同午前3時半に天津に到着した。記事は最後に「天津から山東省の済南に向かう高速鉄道に乗った際、空はすでに明るくなっていたが、窓の外に見る華北平原は依然として濃い蒼白な色に覆われていた」とまさに「五里霧中」の状況であったことを伝えている。 冒頭に紹介した到着時の実況が、スモッグの激しさをリアルに物語っている。記事はまた「空気を吸っただけで帰って来たって分かったよ」と語った中年男性の話を「天津人特有のユーモアである」と紹介しているが、彼らに取ってみれば「ユーモアで済まされるレベルではない」といったところだろう。 皮肉なことに1月1日の東京は見事な快晴で、羽田空港からは富士山をはじめとする山々がはっきりと見えたという。運悪くして「めでたい風景」を拝むこととなった中国人観光客の心中は、さぞや複雑だったことだろう。 実は、ぼくも数年前に北京空港がPM2.5による濃霧に覆われ、帰国便が欠航になり、足止めを食ったことが2度あります。いつぞやこの国のリーダーは、国際会議の数週間前から北京周辺の工場の稼働を強制的に止めた挙句、記者会見場で「APEC Blue」などとうそぶいていたことを思い出します。本人はジョークのつもりだったようですが、会場の外国人を大いに引かせたことに気づいていないのが辛いところです。 中国政府は香港、台湾、韓国に対して自国の旅行客の渡航を制限する通達を出しています。 香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです http://inbound.exblog.jp/26367228/ そうしたことから、この3ヵ国・地域を外したタイや日本、インドネシアなどが旅行先に選ばれることになりそうです。
by sanyo-kansatu
| 2017-01-13 07:17
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