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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 04月 28日

まだ気がかりな点も多い今年8月のウラジオストクの電子ビザ発給事情

今月中旬、極東ロシアのビザ緩和のニュースが報じられたばかりですが、「日本など18カ国の国民が対象」という文面を見て「どういうこと?」と思われた方もいたかもしれません。

8月1日からウラジオストクは8日間の「ノービザ」渡航が可能になります
http://inbound.exblog.jp/26806617/

この点について、本日届いた「公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA)」が発行するメルマガに興味深いふたつの翻訳記事があったので、以下転載します。このメルマガでは、日本海に面した自治体によって運営されている同シンクタンクが、北東アジアの国々の最新動向と日本海側の自治体との交流に関するグローカルなニュースを定期的に伝えています。

ERINA http://www.erina.or.jp/

ロ極東への電子ビザ入国が許可されるのは18カ国(DV.land4月17日)

世界18カ国からの観光客が、簡素化されたビザ発給手続きによって、ロシア極東5地域を訪れることができる。メドベージェフ首相が関連するリストを承認した。

このリストには、中国、日本、北朝鮮、トルコ、インド、イラン、UAE、サウジアラビア、チュニス、モロッコ、メキシコ、シンガポール、オマーン、アルジェリア、バーレーン、グルネイ、カタール、クウェートが入っている。メドベージェフ首相によれば、これらの国々は、相互主義の原則で選ばれた。これらの国々とは将来的に、二国間のビザ無し渡航協定の締結もありうると、首相は説明した。

これらの国々の国民は8月1日から、沿海地方、ハバロフスク地方、サハリン州、チュコト自治管区を訪れることができる。これらの旅行者は到着の4日前までに外務省のサイトで申請し、その後、国境でパスポートを提示するだけでよい。電子ビザが8日間のロシア滞在の権利を与える。電子ビザの有効期限は30日。電子ビザは無料で発給される。同時に、移動が許されるのは、入国した地域内のみとなっている。ウラジオストクの検問所のテストは7月1日から始まる。

入国手続きの簡素化によって、ロシア極東への観光客数は約30%増えるものと、極東開発省では予想している。


ロシア側のいう18カ国のリストをみるかぎり、ビザを緩和したからといって、これらの国々の人たちがウラジオストクへ来ることがあるのだろうか。そう思わざるを得ません。ここ数年の日ロ交渉を尻目に「日本を特別扱いする気なんてないよ」とメドベージェフ首相は言いたいんでしょうか。

同じ違和感は、ロシア側の関係者も感じているようです。現地でも戸惑いが見られることは、次の記事を読むとわかります。

電子ビザに関する首相の命令に旅行業界は困惑(Nakanune.ru 4月19日)

電子ビザでのウラジオストクへの入国が許可された国々のリストは、観光業界関係者を困惑させた。

ロシア観光産業同盟の広報担当者のイリーナ・チュリナさんによれば、リストアップされたうちの8カ国(アルジェリア、バーレーン、ブルネイ、カタール、クウェート、UAE、オマーン、サウジアラビア)は、ロシア連邦保安庁国境局のデータに拠ると、昨年ロシアへの一定数の入国が記録された80カ国に入っていない。「しかも、これらの国々を特恵リストに加える重要な論拠になったと首相の言う『相互主義の原則』は何なのかも、全く分からない」とチュリナさん指摘した。

現実にロシア極東への入国者数を増やし得るのは、18カ国のうち中国と日本の2カ国だけなので、広く宣伝され、期待を持たせたアクションは形式上のものだったとチュリナさんは考えている。同時に、2016年にビジネス、観光、私的目的でのロシアへの渡航者数が140万人を超えた中国とは、3人以上の観光グループのビザ無し交換が始まって久しい。

もしもリストに制限を加えるなら、アルジェリア、バーレーン、ブルネイ、北朝鮮、その他の先行き不明の市場の代わりに、オーストラリアやニュージーランド、カナダ、または昨年の総括のトップ25に入っているブラジルを加える方が論理的だというチュリナさんの発言をインターファクスが報じている。


この記事で面白いのは、「現実にロシア極東への入国者数を増やし得るのは、18カ国のうち中国と日本の2カ国だけ」だとロシア側も認識していること、すでに中国人は「3人以上の観光グループのビザ無し交換」が実施されており、「2016年にビジネス、観光、私的目的でのロシアへの渡航者数が140万人を超えた」こと。さらに、文面にはありませんが、韓国とは2014年に「二国間のビザ無し渡航協定」を締結していることを考え合わせれば、民間の思いはともかく、ロシア政府側は日本に対するビザ緩和をどこまで積極的に進める気があるのか、疑わしくさえ思うのです。

(中国人のロシア観光が年間140万人を超えたことがわかる実例)
黒龍江省北辺の町、黒河のボート遊覧とロシアへの日帰り観光
http://inbound.exblog.jp/26537280/

今年8月のウラジオストクの電子ビザ発給については、まだ気がかりな点も多そうです。前の記事には「ウラジオストクの検問所のテストは7月1日から始まる」とありますが、結局、その時点にならないと、どんな問題が出てくるかわからない以上、このまますんなりいくかどうかは微妙なところがありそうです。

by sanyo-kansatu | 2017-04-28 12:33 | 日本に一番近いヨーロッパの話


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