2017年 05月 02日
連休の前半、友人で作家の岡崎大五さんの住む伊豆下田に行ってきました。 ![]() ![]() 岡崎大五の作家生活 http://daigo-okazaki.cocolog-nifty.com/ いくつか面白いことがあったのですが、なかでも興味深く思ったのは、下田でインド人ツーリストをあちこちで見かけたことです。子供連れのファミリーインド人も多いです。 ![]() この時期、サーファーだらけの白浜ビーチでは、下田駅行きの路線バスに突然乗り込んできたインド人の青年5人組と同乗しました。話を聞くと、彼らはインド南部のバンガロールから来たバックパッカーで1ヵ月日本を旅するそうです。バスの車窓から白浜ビーチが見えたので、昔行ったインド旅行のことを思い出して「このビーチ、ゴアみたいでしょう?」と聞いたら、「まだ自分は行ったことない」と言われてしまいました。彼らはこれから伊豆急行に乗って伊豆半島の西部を旅すると話してくれました。 ![]() ![]() インド人バックパッカーが日本を旅する時代になったのですね。ぼくも若い頃にバックパックを背負ってインドを旅したことがあるので、とても感慨深いものがあります。 ![]() 下田駅では、伊豆急行に乗ってきたふたりの子連れのインド人ファミリーがホームを歩いていました。1854年に日米下田条約を締結した了仙寺の前でも、ベビーカーを押してきたふたりの小さな子連れファミリーが休んでいます。もっとも、彼らはインドから来た旅行者ではなく、首都圏在住のインド人なのではないかと思われます。 ![]() 連休の合間の平日だったせいか、下田の町には日本人客は少なく、インド人以外では、欧米人ファミリーや日本人女性と欧米人のカップルなどが目につきました。日本を訪れる外国人の2人に1人を占める中国語圏の旅行者はほぼ見られません。地元の関係者に聞くと「数年前までは河津桜を見に来る中国の団体バス客が多かったが、最近はめっきり減った。いまは個人の富裕層に変わった」とのこと。 毎年2月上旬から約1ヵ月間咲き続ける河津の桜は、春を先取りし、見ごろ期間がソメイヨシノと違って長いため、数年前まで中国をはじめとしたアジアの団体客がどっと押し寄せていました。団体ツアーを催行するアジアの旅行会社にとって、日本桜ツアーを銘打ってお客さんを集めたのに、年によって桜の開花時期が変わるのは悩みの種でした。その点、河津桜はハズレの少ないことから好都合だったのです。ところが、アジア客の団体から個人への移行にともない、バスで南伊豆を訪れる外国客は減ってしまったのです。おそらくこのときの大挙して現れた中国客のイメージが強く伊豆在住の人たちの記憶に残っているのでしょう。 伊豆河津桜まつり情報局 http://www.kawazuzakura.net/ 下田に来る前に熱海で途中下車したのですが、駅前の観光案内所の隣の外国人向けボランティアの皆さんに話を聞くと、熱海を訪れる外国人はまだ少なく、たいてい中国人、いや実際には台湾人(そう言い直しておられました)がほとんどだそう。台湾の人たちは日本人が遊びに行く場所を好んで訪ねる人たちですから、熱海にも現れるのですね。実際、熱海の駅前の商店街は、この時期、まるで昭和のレジャー時代を思い起こさせるような、気取ったところのないにぎわいにあふれていました。 一方、先ほどの下田の関係者が言うように、欧米やインド系の個人客が「富裕層」といえるかどうかはあやしいところですが、いま伊豆半島の南端に位置する下田を訪れる外国客は、台湾や中国の人たちではなく、欧米人をメインとした個人や家族のようです。 ではなぜインド人ツーリストは下田を訪れているのでしょうか。 それは、彼らが、微信などの中国語圏のSNSとはまったく異なる情報ソースを頼りに旅しているからです。彼らの頭の中は、東アジアからではなく、欧米の英語圏から届く情報がつまっているのです。 以前、日本に来たムンバイの旅行会社のインド人に日本旅行の特徴について話を聞いたことがありますが、彼らの日本ツアーは欧米の人たちに近いコースをたどります。その一つのポイントが、中国人はほぼ訪れない広島の原爆ドームの訪問です。 インド人の日本旅行の訪問地が東京・大阪プラス広島の理由(アセアン・インドトラベルマート2014その2) http://inbound.exblog.jp/22757002/ たとえば、下田市にある「和歌の浦遊歩道」は、フランスの旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で2つ星を獲得しているそうです。 和歌の浦遊歩道 http://shimoda100.com/event/walking-shimoda-park-2011/ 世界的に有名で欧米人はたいてい手にしているガイドブックシリーズのロンリープラネットも、伊豆半島のことを詳しく説明しています。その点を地元紙ではこう指摘しています。 伊豆の今=五輪・パラ絶好の機会 取り込め世界の個人客―伊東(伊豆新聞2017年01月13日) http://izu-np.co.jp/feature/news/20170113iz0003000002000c.html 「“バックパッカーのバイブル”の異名で知られる「ロンリープラネット」(英語版)は、旅行ガイドブックの世界シェア・ナンバーワン。欧米を中心に英語圏から来る個人旅行者の利用率が非常に高いという。2015年発売の最新刊では熱海、伊東、下田、修善寺、松崎など伊豆各地区の観光ポイント、宿泊施設、飲食店などを詳しく掲載している」。 2016年に日本を訪れたインド人は12万3000人(JNTO推計値)で、中国、台湾、香港を合わせた中国語圏の総数約1240万人のわずか100分の1にすぎません。今年に入っても、1~3月統計で前年度比8.4%増というくらいですから、インド人観光客がすごく増えているとはいえません。 そうだとしても、下田に限らず、それぞれの地域は固有の魅力と地の利と歴史があり、それを基準に外国人は旅行先を選んでいるわけです。地域によってどの国の人たちと相性がいいか、悪いかというのはあって当然です。数年前まで河津の桜が中国団体客を惹きつけたことは、むしろ一時的な現象だったといえそうで、その理由は先ほど述べたとおりです。 次に、今回あらためて知った下田のユニークな歴史とインバウンドの関係を考えてみたいと思います。 伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと http://inbound.exblog.jp/26831205/
by sanyo-kansatu
| 2017-05-02 13:23
| “参与観察”日誌
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