2017年 08月 18日
先日、2017年7月の訪日外客数統計(JNTO)が出ました。 それによると、今年上半期の圧倒的な勢いにより韓国に抜かれていた訪日客数トップの座をわずかですが、中国が取り戻しています。 2017年1~7月訪日客数 韓国 4039900(前年比42.8%増) 中国 4062500(前年比6.7%増) 日本を訪れる韓国人観光客が中国客を追い抜く勢いで増えています(2017年03月16日) http://inbound.exblog.jp/26722251/ 4年ぶりに中国を抜き、韓国が訪日外客数トップ! 中国は伸び悩み(2017年07月24日) http://inbound.exblog.jp/27007721/ 訪日外客数統計(JNTO)2017年8月16日 http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170816_momthly.pdf 中国では7月前半から夏休みに入ることから、家族旅行のシーズンになり、団体旅行も含めた訪日旅行が増加したことが考えられます。とはいえ、増加したといっても、前年度比でわずか6.8%増(7月)にすぎず、(母数が違うので、単純に比較できませんが)これは世界金融危機が発生した2008年(6.2増)に近い伸び率です。ここ数年の2014年(83.3%増)と15年(107.3%増)、16年(27.6%増)と比較すれば、訪日中国客の伸びの減速は明らかです。 この感じでいくと、9月以降の中国客はそれほど増えるとは思えません。 背景には、春秋航空などの中国の地方都市からの日本路線の減便や運休が続いているという事情がありそうです。たとえば、中国の最も多い都市からのフライトがある関西国際空港に乗り入れる春秋航空は、昨年夏よりなんと11便もの減便となっています。関空の国際線の便数はこの夏過去最高となっていて、中国路線の総数も減っているわけではないので、ここからうかがえるのは、中国客の中身がますます沿海経済先進地域の大都市部の個人客に片寄っていく流れが強まっていることでしょう。 KIX 2017 年国際線夏期スケジュール http://www.kansai-airports.co.jp/news/2016/2482/2017summer.PDF.pdf こうした沿海経済先進地域からの訪日客が増えるということは、リピーターや「安近短」志向の旅行者になるということです。 実際、その傾向は昨年から現れています。 観光庁が集計する「訪日外国人消費動向調査」の最新動向(平成29年4月~6月期)をみると「訪日外国人1人当たり旅行支出は14万9,248円で、前年同期(15万9,933円)に比べ6.7%減少」「国籍・地域別にみると、英国(25万1千円)、イタリア(23万3千円)、中国(22万5千円)の順で高い」というわけで、もはや日本でいちばんお金を使うのは中国人ではありません。これは2016年の段階で、すでにそうなっています(1位オーストラリア(24万7千円)、2位中国(23万2千円)、3位スペイン(22万4千円))。 訪日外国人消費動向調査(平成29年4月~6月期) http://www.mlit.go.jp/common/001194019.pdf こうした市場の変化は、我々が想像する以上に早く進んでいます。今後、中国客を見る視点も、変えていく必要があるでしょう。 とはいえ、ボリュームとしては、中国客は訪日客の4人に1人を占める最大市場であることは変わりません。 こうした「消費動向調査」の結果から、これからは「欧州客」が訪日客の主役だなどと言い出すメディアや識者も現れていますが、これもどうなんでしょう。ちょっと近視眼的で表層的すぎる見方ではないでしょうか。なぜなら、中国客の一人当たりの消費金額が大幅に下がっているだけで、欧州のような遠方から日本を訪れる外国客は、「安近短」の東アジア客に比べると、滞在日数も長く、1回の日本の旅行にお金をかけるのは、ある意味当然だからです。日本人だって、イタリアに旅行に行くのと、台湾に行くのでは、滞在日数も予算も考え方が別でしょう。欧州客も同じなのです。 訪日消費、主役は欧州客 「爆買い」より体験(日本経済新聞2017/8/13) http://www.nikkei.com/article/DGXLZO19940990S7A810C1EA3000/ もちろん、世界の海外旅行シーンやトレンドを牽引している欧州客の受け入れに力を入れようという主張自体は間違っていませんし、そうすべきです。でも、日本社会にもっと大きな影響を与えているのはアジア市場だということを忘れては本末転倒だと思います。
by sanyo-kansatu
| 2017-08-18 17:05
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