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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 09月 19日

サハリンの子供たちが元気な理由-「ロシア唯一の無借金州」の子育て支援事情

サハリンでは、子供たちが外で元気に遊んでいる姿をよく見かけました。

街角で遊ぶ子供の姿に癒されるといった体験は、もともとアジアなどの発展途上国の話でした。ところが、最近は経済発展によってビルばかりが建ち、子供が安心して遊べる場所は激減。塾通いの子供たちばかりが増えてしまいました。その先駆けは日本だったわけで、それをどうこう言っても仕方がないのですが、それだけにサハリンで見た光景は新鮮でした。

ノグリキの町は子供だらけでビックリ!? 外でのびのび遊ぶ姿がうらやましい
http://inbound.exblog.jp/27122630/

以下は、サハリン各地で出会った子供たちのスナップです。
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↑ホルムスクの旧真岡王子製紙工場廃墟に現れたふたりの少年

廃墟の中で出会った少年たち~旧真岡王子製紙工場廃墟を歩く
http://inbound.exblog.jp/27113113/
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↑ホルムスクの仲良し小学生たち
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↑ホルムスクの海浜公園で会ったネコ耳の少女ふたり
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↑コルサコフの展望台にいた悪ガキ3人組?
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↑ノグリキの自転車少女たち

サハリンの町にはたいていどこでも博物館があるのですが、訪ねると、必ずといっていいほど、地元の子供たちが見学学習しています。
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↑ノグリキ郷土博物館にて

ノグリキ郷土博物館で知るサハリン北部に住んでいた先住民族たち
http://inbound.exblog.jp/27122360/
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↑ユジノサハリンスクのサハリン州郷土博物館にて

町ではベビーカーを押しているママさんの姿もよく見かけます。
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↑ユジノサハリンスクにて
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↑コルサコフにて

どんな小さな町にも真新しい遊具があります。
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たいてい集合住宅の間に設けられた広場にあります。
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「サハリンには子供が多い」という見聞は、今年7月の「ビザなし交流」で北方四島を訪ねた朝日新聞の記者も指摘しています。

北方領土、活性化へ期待感 ビザなし交流(朝日新聞2017年7月14日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13035454.html

(一部抜粋)査証や旅券なしで行き来する「ビザなし交流」事業は開始から26年目。元島民や国会議員、政府関係者ら61人の訪問団は北海道・根室港を6日夕に発ち、約3時間後にまず国後島に着いた。

国後島の人口は約8千人で、四島の中で最も多い。7日、市街地の古釜布(ふるかまっぷ)では、ベビーカーを押したり子どもの手を引いたりして歩く母親の姿が目立った。「過疎化、高齢化」というイメージとは違い、インフラ整備が進む島はいま「ベビーブーム」だという。

視察先の一つ、島内最大の幼稚園で、園長代行のエリビラ・ブラスラフツェクさん(46)が子育て世代が増える背景を説明してくれた。「この10年ほどで生活が良くなり、将来に対する不安がなくなった。(ロシア)連邦の施策で2人目の子どもが生まれると一時支援金、3人目の時にはサハリンの土地が与えられる」

島にはロシア軍基地があり、本土から赴任してそのまま定住する若い軍人もいる。待機児童問題が深刻で、定員110人のこの幼稚園は150人を受け入れている。古釜布では、150人規模の幼稚園が9月に開園するという。


サハリンは本当に「ベビーブーム」なのでしょうか? どうしてそうなったのか?

現地在住の日本人関係者によると「サハリン州の最大の悩みは人口減。少子高齢化もあるが、人口流出も問題」といいます。「もともとサハリンは“ソ連化”以降にロシア各地から集められた人たちとその後裔に相当する人たちが多く住んでいる地域でしたから、ソ連崩壊後の1990年代から2000年代の初めには、自身やその一族の住む地域へ移住する人たちは多かったのです」。

現在のサハリン州の人口は約48万人です。2000年頃は約60万人だったことからすれば、相当減っているのです。下記の統計をみると、ほとんどの地区で減少していることがわかります。

サハリン州地域別人口(2016/17)
Оценка численности населения в разрезе муниципальных образований
по состоянию на 01.01.2017 года и среднегодовая за 2016 год
http://sakhalinstat.gks.ru/wps/wcm/connect/rosstat_ts/sakhalinstat/resources/23aa2e0044e3e698acaded20d5236cbc/%D0%A7%D0%B8%D1%81%D0%BB%D0%B5%D0%BD%D0%BD%D0%BE%D1%81%D1%82%D1%8C+%D0%BD%D0%B0+%D0%BD%D0%B0%D1%87%D0%B0%D0%BB%D0%BE+%D0%B3%D0%BE%D0%B4%D0%B0+%D0%BF%D0%BE+%D0%9C%D0%9E.htm

その一方、ユジノサハリンスクやコルサコフ、アニワでは増えていますし、クリル諸島も微増なので、前述の朝日新聞の記者がいう「ベビーブーム」という印象も生まれたのかもしれません。ただし、クリル諸島の場合は、同じサハリン州でも、連邦政府の施策の影響が強そうです。

実際、ユジノサハリンスクは20万人を超え、郊外でマンション建設も始まっています。人口の南部への集中が起きているのです。

こうしたなか、サハリン州では子育て支援に力を入れています。前述の関係者によると、先ごろユジノサハリンスクで行われた「建都135年」パレードでも、重点施策として「子どもを豊かに育む」という内容が謳われていたそうです。町の至る場所に公園や遊具があるのも、そのためです。

サハリン州政府のエレーナ・カシャノワ社会保障担当大臣は「子ども1人につき、月額2551ルーブル(約5000円)給付」「3人目以上の子どもがいる家庭で住宅を取得する場合、取得価格の半額以内で200万ルーブルを超えない範囲の支援」と地元メディアに答えているそうです。ロシアの1人当たりのGDPは決して高いとはいえませんから(日本の4分の1ほど)、それなりに手厚い支援といえそうです。

※ロシアの1人当たりの名目GDPは8928ドル(2016年)※世界70位

では、なぜサハリンでこのような州独自の取り組みが可能となるのでしょう。

別の関係者によると「サハリンがロシア国内で唯一の無借金州だから」なのです。

サハリンの子供たちが元気な理由には、豊富な天然資源があったのです。だとしても、州として子供を育てやすい環境を作り出そうとしていることが感じられたのは事実です。

by sanyo-kansatu | 2017-09-19 09:39 | 日本に一番近いヨーロッパの話


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