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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 10月 06日

先住民とロシア人、日本人の関係を物語るポロナイスク博物館の展示

昭和9年(1934年)6月、林芙美子が訪ねた樺太の敷香町(現ポロナイスク)には、「オタスの杜」と呼ばれた先住民の集落がありました。彼女が書いた紀行文「樺太への旅」によると、そこにはニブフ(ギリヤーク)やウィルタ(オロッコ)、エヴェンキ(キーリン)、ウリチ(サンダー)、ヤクートなどの先住民が集められ、日本語教育が行われていました。

大鵬以外にもいるポロナイスク(敷香)と縁のある日本人の話(間宮林蔵、鳥居龍蔵、馬場脩、林芙美子)
http://inbound.exblog.jp/27234045/

今日、こうした先住民たちの暮らしは現代化していますが、かつての様子を記録し、展示しているのがポロナイスク郷土博物館です。
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ポロナイスク郷土博物館(Поронайский краеведческий музей)
http://sakhalin-museums.ru/museum/poronayskiy_muzey/

同館には、ニブフやウィルタ、ナナイ、エヴェンキ、そしてアイヌの5部族の展示があります。

これはニブフの衣装や生活用具の展示です。ガラスのケースの上に、ニブフの若い女性が並んだ写真がありますが、林芙美子がこの町を訪ねた頃、オタスの杜では同じような光景が見られたのではないでしょうか。
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左のブルーの衣装はニブフのものですが、右側のケースは漁労の民ナナイ(ゴリド)のものです。
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カラフルなパッチワークのような布はナナイのものです。
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トナカイと一緒に展示されているのは、エヴェンキのコーナーです。
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こちらはウィルタのコーナーです。ウィルタもエヴェンキ同様、トナカイを飼います。
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最後はアイヌのコーナーです。樺太中部にあたる敷香は、アイヌの住む北限だったようです。熊の木彫りや鍋があることから、アイヌは当時から日本人との交流があり、他の先住民族とは少し違うところがあったのかもしれません。
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そして、これは他の博物館もすべて同様なのですが、日本時代のコーナーがあります。ケースの中にはおちょこやとっくりが数多く並べられています。林芙美子の「樺太への旅」に「ここは如何にも新興の町らしく、まずカフェーや料理屋が多い。シスカ会館と云う家では、二十人ばかりの女給が、メリンスのセーターを着ていて、何とも珍妙な姿でした」と書かれており、おそらくこれは…と思わざるを得ませんでした。
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そして、もうひとつがお約束のロシア人の生活を展示する部屋です。先住民族の展示とはまったく違い、同じ時代、すでに文明人であったことを強調しているように見えます。
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1945年9月、南樺太を取り戻したスターリンの偉業も展示されます。
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一方、館内の真ん中に大きなスペースがあり、ひとりの女性が座ってなにやら作業をしています。
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はにかむ彼女は先住民の女性で、ここは民族文化を学ぶワークショップのためのスペースでした。これはノグリキ郷土博物館にもあったものです。
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これらの展示構成は、サハリンにおける先住民とロシア人の関係、そして歴史的に一時期主役であったものの、いまは存在しない日本人の位置づけを物語っています。ただし、中国の歴史博物館のように、日本を責め立てるような意図はなさそうです。過去の歴史の話で、現在の構成員ではないので、そんな必要はないのです。

それでも、2階の会議室や写真展示室をみていると、日本時代の写真も多く展示されています。
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そのうち、最も存在感が大きいのは、操業を停止してしまった旧敷香王子製紙工場の往時の姿です。今日、ポロナイスクは人口1万5000人の町ですが、おそらく工場が稼働していた時代が最も活力があったに違いありません。
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by sanyo-kansatu | 2017-10-06 14:02 | 日本に一番近いヨーロッパの話


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