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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 11月 04日

人手不足の日本より中国や韓国のキャッシュレス化が進んでいる東アジアの現在

昨日、ある郊外のファミレスチェーンで食事をしたところ、たまたまクレジットカードと小銭しか持っていなくて、支払いに困ってしまいました。まさか全国チェーンで、中国など海外にも多数の店舗を出店している店だったので、まさかカードが使えないとは思ってもいませんでした。

若い店員の男性も申し訳なさそうな顔で、でも「本日12時までに現金をお持ちください」と言います。

「エーッ」と思わず声を上げてしまいました。なんでも都内にはカードが使える店舗もあるそうですが、使えない店もあるそうです。なにも自分はキャッシュレス積極派でもなんでもないのですが、やはり1000円ちょっとの支払いはカードが使えるようにしてもらいたいと思いました。

結局、家に歩いて戻って、現金を持って支払うほかありませんでした。

今週、あるファミレスが都内で「現金支払いお断り」、すなはちキャッシュレス専用の店舗を実験的に始めるという報道がありました。背景には、外食産業の深刻な人手不足があります。

「現金支払いお断り」東京で実験店開店へ―ロイヤルHD(朝日新聞2017年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/ASKC15V5KKC1ULFA02T.html

ロイヤルホールディングス(HD、福岡市)は1日、支払いを電子マネーやクレジットカードだけにした実験店を東京都内に6日に開くと発表した。現金の管理を完全になくすなどして従業員の作業効率を上げ、深刻化する人手不足に対応する狙いだ。

東京都中央区に6日、開店するレストラン「GATHERING(ギャザリング) TABLE(テーブル) PANTRY(パントリー)」は、現金のやりとりをなくすため、入り口にレジを置かず、電子マネーのチャージもできない。店舗入り口に「現金お断り」を知らせる表示を出す。

注文はテーブルのタブレット端末から。代金も同じタブレット端末で、電子マネーやクレジットカードを使って支払う。店舗運営の作業が減ることで、約40席の店を3人で運営できるとロイヤルHDはみている。

今後は、この店で得たノウハウを主力の「ロイヤルホスト」の店舗などにも導入していく方針だ。(牛尾梓)


店内にはレジがなく、入り口に「現金お断り」の表示を出すそうです。これをみて、多くの人はどう感じることでしょう。これは便利と思うのか、それとも軽い反発をおぼえるのか…。実験の結果に興味があります。

一方、同じ日の朝刊にこんな記事がありました。

ソウル、無人コンビニ出店 文政権は雇用に力を入れるが…(朝日新聞2017年11月2日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13209688.html

記事によると、日本よりキャッシュレス化が進んでいる韓国では、この種のサービスが増えると、かえって「雇用が減る」との懸念もあるそうです。上海でも無人コンビニができましたが、中国や韓国の方がこの方面では日本よりはるかに進んでいるのに、それが社会にとっていいことなのか。難しいものですね。

こんな記事もありました。

コンビニの人手不足、ロボットが解決 「レジロボ」登場(朝日新聞2016年12月12日)
http://www.asahi.com/articles/ASJDD5FPHJDDPLFA00V.html

記事の中の動画では、買い物籠に購入する商品のバーコードを読み取る装置が付いていて、レジロボに置くと精算してくれます。とても便利そうです。

近所のスーパーでもこれとは少し違いますが、無人レジを導入していて、有人レジの行列が長いときだけ、利用することがあります。でも、正直なところ、個人的には有人レジの方が好きです。便利で早いかどうかより、おばさんが商品を一つずつ打ってくれるのを見てる方がなんとなく安心だからかもしれません。自分はちょっと古い人間だからでしょうか。

こうしたなか、中国からモバイル決済アプリ大手が参入しており、日本の金融機関と組んで、日本人にも使える仕組みを導入しようとしています。

中国式決済、世界で台頭 スマホで簡単、日本開拓着々と(朝日新聞2017年11月3日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13211358.html

中国のネット通販大手阿里巴巴(アリババ)の関連会社が展開する決済システム「支付宝(アリペイ)」がグローバル規模で存在感を発揮している。中国をキャッシュレス社会にした立役者でもあり、世界銀行も注目。貧困層に金融サービスを広げる役目も期待される。日本では訪日中国人向けだが、日本人も使えるよう計画が進む。

「おつりを返す手間が省けるのでとても便利だ」

北京のビジネス街・建国門の屋台で朝食を売る黄さん(30)は、パネルに印刷したQRコードを店頭に並べる。客は、それをスマートフォンのカメラ機能で読み取り、黄さんへの支払い画面で代金を入力し電子決済する。「現金払いは3、4割」という。

中国は現金不要のスマホ決済によるキャッシュレス社会を迎えている。先導したのはアントフィナンシャルサービスグループが提供するアリペイだ。銀行口座などとつながり、支払いは口座から引き落とされる。国内常用者数は5・2億人に達する。

最初はネット通販の支払い用途だった。2011年からコードを読み取る方式により、実店舗での支払いに使えるようにした。紙幣に偽物が多く、最高額が100元(約1720円)と低額なこともあり、人々は喜んでアリペイを選んだ。クレジットカードとは異なり専用の読み取り機も不要だ。スマホのカメラで相手のコードを読み取りさえできれば決済できるので、中小企業から屋台にまで、あっという間に普及した。

10月中旬のワシントン。世界銀行総会のイベントで、キム総裁が繰り返し触れたのがアリペイだ。「中小企業の金融へのアクセスを完璧に変えた」。銀行口座を持てない人に金融サービスを提供する「金融包摂」機能への強い期待感をにじませた。

スマホにアプリを入れればお金を受け取る口座が持てる。これによって銀行口座を持てない人でも少額の融資の受け皿ができる。キム総裁は「経済発展への道を模索している国のためになる」と述べた。

アントが今、力を入れているのが外国展開だ。各国の企業と提携して参入し、アリペイを現地化している。現在、国外は34カ国・地域の3・6億人が使う。最大はインドの2・5億人だ。

井賢棟最高経営責任者(CEO)は「中国での経験を新興国で再現しようと考えた。個人や企業によい環境を提供すれば我々の成長の基礎になる」と話す。

アリペイは実は、すでに日本にも浸透している。まだ中国人しか使えないが、百貨店やコンビニエンスストア、レストランなど約3万店舗が対応。訪日中国人の買い物を促進している。
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10月上旬にあった中国の建国記念日・国慶節の休暇中、東京・日本橋の高島屋は多くの中国人観光客でにぎわっていた。同社は16年2月にアリペイ支払いを導入。「中国と同じ方法で支払えれば便利だと思ってもらえる」と営業推進部の楼ヤテイ主任は話す。

アントによると10月1~7日、日本でのアリペイ取引件数は前年同期比16倍に膨張。平均利用額は2040元で、中国国外の平均に対して1・6倍という。

アリペイは今、中国人観光客向けに整備してきた決済基盤を一気に日本人が使えるようにする計画を進めている。「現在の加盟店開拓は日本人向けの準備でもある」とアント日本法人の陳清揚執行役員。

日本は依然、現金志向が強い点にアントは潜在性を感じている。ただ、JR東日本のICカード「Suica(スイカ)」や中国国内のアリペイと同じようにQRコードを読み取って支払い可能にした楽天ペイなど、ライバルも多い。陳執行役員は「日本は難しい市場だ。今は提携先を探している段階。来春は難しいが、できるだけ早くサービスを始めたい」と話す。(福田直之)


いま東アジアで起きている急激な変化の中で、中韓と日本の社会の対比についていろいろ考えることがあります。日本は彼らの社会に比べ圧倒的な高齢化社会ですし、既存のそれなりに便利な仕組みがいくつも残っており、新しいシステムが普及するまでには時間がかかってしまいます。一方、彼らの社会は日本に比べ若いぶん、新しいシステムが次々に浸透していきますが、そのぶん雇用問題や、地域や階層による格差が生まれます。

日本でもキャッシュレス化はゆっくり進んでいくでしょうけれど、モバイル決済はどうでしょう。少なくとも、いまのところ、カードの方が軽くて財布にも入るし、ポイントもためられるので、さらにカードが使える店を増やしてもらえば、それほど不自由しない気もします。さあ、どうなっていくのか。注視していきましょう。
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by sanyo-kansatu | 2017-11-04 10:16 | 気まぐれインバウンドNews


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