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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 06月 15日

ウラジオストクの現代アートコンプレックス「ザリャー」の驚きの世界

ウラジオストクでぼくがいちばん好きな場所の話をしたいと思います。


市内から北へ少し離れた郊外にある「ザリャー(фабрика
ЗАРЯ)」と呼ばれるアートコンプレックスです。

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ここはソ連時代の縫製工場をリノベーションしてアートスペースに生まれ変わった施設です。今日、世界の多くの都市で実践されているアートムーブメントがウラジオストクにもあるのです。

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メイン施設の8号棟の2階は展示スペースの入口になっていて、アート関係の書籍や写真集などが置かれています。地元の美学生たちは自由に使っています。アーティストinレジデンスも行っていて、海外からウラジオストクに来て美術製作を希望するアーティストの募集をやっています。

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ザリャーで定期的に行われる国内外のアートの企画展や映画上映、ワークショップは、日本では知りえない、極東ロシアならではの興味深い内容にあふれています。


昨冬から今年春にかけて「FAR FOCUS. PHOTOGRAPHERS OFVLADIVOSTOK(極東フォーカス、ウラジオストクの写真家たち」という企画展をやっていました。

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この企画展では、ウラジオストクに縁のある19名の写真家やジャーナリストなどによる約400点の写真を8つのテーマに分けて展示していました。ロシア沿海地方に住む人たちの暮らしや風物はもとより、季節の風景、ストリートの光景、建築、イベント、そしてソ連時代から体制崩壊を経て今日に至る半世紀の時代を生きてきた、さまざまな民族と階層にまたがる市民のポートレイトなどを観ることができます。実験的なアート作品も多数あります。


日本でほとんど知られていなかった極東ロシアの1970年代から今日に至る半世紀を、現地在住の写真家の目を通して紹介する試みといえます。つまり、ソ連崩壊まで閉鎖都市だったウラジオストクで、1970年代から80年代、さらには現代に至るまで何が起きていたのか。それを知る手がかりとなる写真資料が公開されたこと、それは驚きと言えます。

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しかし、内容はそれだけではありません。

8つのテーマというのは以下のとおりです。

①Идентичность: портрет и антипортрет(アイデンティティ:ポートレイトとアンチ肖像画)


②Фотография природы и природа фотографии. Слоны и звезды(自然の写真と写真の自然:ゾウと星)

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③На рабочем месте: «Ремонт обуви» или прыжок в Черный квадрат(職場にて:"靴の修理"または黒い広場に飛び込む)


④«Город золотой». Панорама и улица(「黄金の都市」。パノラマとストリート)

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⑤Старые праздники и новые ритуалы. От толпы к субкультуре(古い祝日と新しい儀式。群衆からサブカルチャーへ)


⑥Искусство и эксперимент. От концептуализмакперформансу(芸術と実験:コンセプチュアリズムからパフォーマンスへ)

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⑦Стиль жизни и стрит-фотография(ライフスタイルとストリート写真)


⑧Язык тела(ボディランゲージ)

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極東ロシアには、ロシア人以外のさまざまな民族が住んでいます。ソ連時代を知らない新世代も生まれています。1970年代と今日では労働環境も変わりましたが、この地に巡回に来たサーカス一座の舞台裏の日常も興味深いです。


かつて軍港だった都市のパノラマとその変貌と、同時多発的にストリートや広場で起きていた出来事の記録は、時代の変化を感じさせます。共産党員のパレードとマースレニツァ(春祭り)のときに広場に現れたロシア正教の神父たち。ペレストロイカが生んだ実験的写真アートや、その後に生まれたインスタ世代の自撮りや友だち撮りの世界など、とてもひとことではまとめられませんが、これらの写真群との出会いは驚きであるとともに、その世界にもっと深く踏み込んでみたいと強く感じさせるものがあります。

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фабрика ЗАРЯ  

http://zaryavladivostok.ru


写真展の各作品の解説は以下のページからご覧ください。
https://inbound.exblog.jp/i33/



by sanyo-kansatu | 2020-06-15 11:44 | 極東ロシアのいまをご存知ですか?


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