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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 06月 17日

「はたらくおじさん」の肖像から見える都市の成り立ち(ウラジオストクの写真家展 その2)

ウラジオストク郊外にある「ザリャー(фабрика ЗАРЯ)」というアートコンプレックスで開催されていた企画展「FAR FOCUS. PHOTOGRAPHERS OF VLADIVOSTOK(極東フォーカス、ウラジオストクの写真家たち)」の解説を続けます。

1のテーマ「アイデンティティ:ポートレイトとアンチ肖像画」の次なる作品群は、アレクサンドル・キトロフというジャーナリストが撮影したものです。彼のコーナーでは、ウラジオストクのさまざまな労働者たちのポートレイトが並んでいました。撮影は2010年代ということですから、前回のゲオルギイ・フルシチョフが撮った1970年代から40年後、現代の労働者の姿といえます。

たとえば、右上の電車の中に立っているのはウラジオストクのテレビ局のジャーナリスト、真ん中にはロシア正教寺院の中にいる司祭、右下のカウチン風のセーターを着たおじさんは木こりだそうです。



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Александр Хитров

«Лица труда» для конкурса«Комсомольской правды». 2017

アレクサンドル・キトロフ

「コムソモリスカヤ・プラウダ」シリーズ、「労働の顔」から。2017


さらに見ていきましょう。左上には、タトゥー&モヒカン刈りのロックミュージシャン風の男がカメラをまっすぐ見つめています。人は悪そうではないけれど、まっとうな労働者には見えません。写真の説明にはТролльとあり、もともとの意味は北欧の伝説の化け物のことで、その種の荒くれ的なニュアンスを含むスラングかもしれません。

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そしてその右は、巨大な造船ドッグの中に立つ工場労働者。右下に下りると、ミルク牧場で働く女性。その左下は、唯一アジア系の男性ですが、キャプションにはカジノ建設労働者とあります。撮影は2014年となっています。


そして左下は、ベラルーシーの建設業界向け自動車メーカーのБелАЗа(ベラズ)のトラックを運転するドライバーだそうです。建設現場はウラジオストクです。

実は、2015年にウラジオストク郊外にカジノがオープンしたのです。「ティグレ・デ・クリステル
Tigre de Cristal)」といいます。館内には、巨大な賭博場だけでなく、ホテルやレストラン、バーなどの豪華施設が揃っています。

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どうしてウラジオストクにカジノができたのでしょうか。お気づきの方もいるかもしれませんが、中国客を呼び込むためです。中国国内では賭博はご法度なのですが、呆れたことに、周辺国の国境沿いの地域ではほぼどこでもカジノが建設されています。彼らは国境を越えてカジノに行くのです。


ぼくはこれまで、ベトナム、ラオス、ミャンマー、そしてロシア沿海地方に隣接する北朝鮮の羅先にあるカジノを訪ねたことがあります。ですから、
ティグレ・デ・クリステルも同じ位置付けの集客施設であることがわかります。


この労働者は、顔つきから察するに、おそらく中国人でしょう。実際に極東ロシアの建設現場で働くのは、中央アジアや北朝鮮の労働者であることが多いのですが、カジノの内装工事など、経験済みの中国人でなければわからないことも多いと思われます。

このような労働者が存在することは、ウラジオストクが中国国境の町であることを物語っています。

以下の2点2015年に撮影されていますが、まず右はダイバーです。ウラジオストクの周辺は美しい海と無数の小島に囲まれています。日本のように趣味のダイバーもいますが、彼はプロダイバーと思われます。豊かな海に潜ってホタテやナマコを獲っているのでしょうか。


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ウラジオストクは漁業の町でもあるのです(あとで蟹工船の労働者たちの写真も紹介することになると思います)。

最後の大きなコンクリートの管の中で作業をしているのは、ロシアの廃水処理機器メーカーのЭколос(エコロス)の労働者だそうです。


これらのシリーズを撮ったアレクサンドル・キトロフは1986年ウラジオストク生まれのジャーナリストで、写真は独学だそうです。カメラはキヤノンを使っているとか。

本人の顔写真はずいぶんおとぼけ風ですが、これらのポートレイトはジャーナリスト的な視点で撮られていることがわかります。なにしろ構図はほぼ同じで、正面に被写体を置き、その人物の職業がひと目でわかるような場所に立たせることで、しっかり背景が写り込んでいます。


ある意味、職業的なきまじめさにあふれるポートレイトばかりですが、それだけにぼくの子供時代にNHK教育テレビで放映していた「はたらくおじさん」を観るような楽しさをおぼえました。彼らの肖像からウラジオストクという都市の成り立ちが見えてくるのではないでしょうか。


NHK
アーカイブス「はたらくおじさん」

1961(昭和36)年~82(昭和57)年までの21年間の放送だそう。

https://www2.nhk.or.jp/archives/search/special/detail/?d=youth013



by sanyo-kansatu | 2020-06-17 10:09 | 極東ロシアのいまをご存知ですか?


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