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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 06月 23日

極東ロシアの静謐な村の家並みと自然を撮る(ウラジオストクの写真家展 その7)

ウラジオストク郊外にある「ザリャー(фабрика ЗАРЯ)」というアートコンプレックスで開催されていた企画展「FAR FOCUS. PHOTOGRAPHERS OF VLADIVOSTOK(極東フォーカス、ウラジオストクの写真家たち)」の解説の続きです。

今回から2のテーマ「自然の写真と写真の自然:ゾウと星(Фотографияприроды и природа фотографии. Слоны и звезды)」に入ります。

極東ロシアの静謐な村の家並みと自然を撮る(ウラジオストクの写真家展 その7)_b0235153_13044456.jpg

タイトルを逐語訳すると意味不明ですが、ウラジオストクのあるロシア沿海地方の広大で荒涼とした自然を美しく撮り収めたというようなのどかな話ではなく、この過酷な自然を舞台に生きる人々の営みが感じられるような作品が集められています。


後半では、この地方特有の社会主義時代の建造物や漁船などを風景の一部として切り撮っています。ゾウはあとで出てきますが、沿海地方を訪れたサーカス一座が連れてきたゾウを海辺で遊ばせている写真のことを指しています。


エピグラフとして、社会を映し出す鏡としての写真の役割を考察するアメリカの作家スーザン・ソンタグの『写真論』(1977
)から引用されていました。


「写真? それは反抗的で手の届かないように見えるリアリティを捕まえる方法である」


世界で最初に撮られた写真が、1826
年にフランスの発明家ジョセフ・ニセフォール・ニエプスが考案した木箱型カメラによる窓からの街並みの風景だったこと。ロシアで最初にカラー写真を撮ったとされるセルゲイ・プロクジン・ゴルスキーは20世紀初頭、当時のニコライ2世に促され、ロシア各地の風景を撮影するための旅に出かけたこと。これはロシアで最初のカラー写真による風景の記録だったことが解説されます。


さて、最初の作品群は、ウラジオストクの元企業撮影師のゲオルギイ・フルシチョフ
のものです。1970年代の後半に沿海地方の北部の村を訪ね、シベリア特有の伝統的で簡素な木造家屋の家並みや川に浮かぶボートをモノクロ撮影しています。川面に近い、低い視点からの構図で撮影していて、水に映る陰が印象的なカットです。

極東ロシアの静謐な村の家並みと自然を撮る(ウラジオストクの写真家展 その7)_b0235153_13045560.jpg
極東ロシアの静謐な村の家並みと自然を撮る(ウラジオストクの写真家展 その7)_b0235153_13050045.jpg

Георгий Хрущев

Поселки на севереПриморского края. 1977

ゲオルギイ・フルシチョフ

沿海地方北部の村々 1977


フルシチョフは1970年夏に北方四島
を訪ねています。

極東ロシアの静謐な村の家並みと自然を撮る(ウラジオストクの写真家展 その7)_b0235153_13050365.jpg

Георгий Хрущев

Остров Шикотан. 1970

ゲオルギイ・フルシチョフ

色丹島 1970


フルシチョフが撮る写真の特徴は、人物ポートレイトもそうですが、自然の場合も、リアリズムの美学を追求していることです。これらの写真を見たとき、サハリン北部の鉄道終着駅のあるノグリキを訪ね、村の郊外を歩いたときのことを思い出しました。確かに、このような感じでした。極東ロシアの村には、その最も基本的な性格として、時間の止まったような静謐な風景があることをあらためて実感しました。



by sanyo-kansatu | 2020-06-23 13:07 | 極東ロシアはここが面白い


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