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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 07月 14日

丘の上に並ぶ社会主義時代の団地に美学はあるか?(ウラジオストクの写真家展 その22)

がぼくの知るウラジオストクだろうか?

セルゲイ・オルロフが撮ったウラジオストク郊外の丘の上に並ぶ団地群を観たとき、誰もがそううに違いありません帝政ロシア時代の町並みを残す市中心部の色彩豊かな景観とはあまりに異なるもので、社会主義時代のある種暗いイメージを想起させるものだからです。残雪が見える寒々とした場所に建てられた単調なビル群は、サハリンやシベリアで見るソ連式団地そのものです。

(市内の町並み:参照)ウラジオストクにもアールヌーヴォー建築がたくさんあります
https://vladivostok-channel.com/news/latest/art-nouveau

丘の上に並ぶ社会主義時代の団地に美学はあるか?(ウラジオストクの写真家展 その22)_b0235153_14245311.jpg

Сергей Орлов

Из серии ≪Город Золотой≫. 2011

セルゲイ・オルロフ

シリーズ「黄金の都市」より 2011

丘の上に並ぶ社会主義時代の団地に美学はあるか?(ウラジオストクの写真家展 その22)_b0235153_14245823.jpg

ウラジオストクの「ザリャー(фабрикаЗАРЯ)」で開催された企画展「FARFOCUS.PHOTOGRAPHERS OF VLADIVOSTOK(極東フォーカス、ウラジオストクの写真家たち)」の第4のテーマ「『黄金の都市』パノラマとストリート(«Город золотой». Панорама и улица)」の作品群を解説しています。


一般にツーリストとしてウラジオストクに来た外国人は、数日間の短い滞在中、ほぼ歩いて観て回れる主な観光スポットやバレエ観劇、少々遠出をするとしてもルースキー島の水族館に行くくらいで満足です。市内から車で1時間と少し離れた空港までの間は、快適な高速道路で結ばれ、そこから確かに団地群も一部見えるのですが、オルロフが撮った無機的な世界とは少し違います。派手な広告看板が道路脇に並んでいるから気がつきにくいかもしれません。オルロフの団地は高速道路から少し離れた半島の内側に広がっています。だから、ツーリストがこういう世界に触れることはまずないのです。


もちろん、それはそれでかまわないことなのですが、ウラジオストクの周辺に、このような灰色の団地群が広がっていることを知ると、この都市とそのバックグランドに対する理解も深まっていくことでしょう。


ぼく自身は何度かこれらの団地群を訪ねたことがあります。近場でいえば、路面電車に乗って北側の終点のミンヌィ・ゴロドグの停車場を降りると、その周辺は巨大な団地群に囲まれていて、まったく市内とは印象が違います。

さらに、現地の友人の車に乗って、彼の自宅を訪ねることになったとき、これら郊外の丘の上に並ぶ団地群の中を走り、オルロフの写真と同じ光景を見ました。ウラジオストクの大半の住民はこのような団地に住んでいることをあらためて知りました。


友人は言います。「どの時代に建てられた団地かによってクオリティが違う。いちばんヒドイのが、フルシチョフの時代(1950年代後半から60年代前半)のもの。そら、これです。見てください」。1970年代生まれの友人はそう言いながら、老朽化し、廃墟然とした団地を指差しました。


さて、これらの写真を撮ったセルゲイ・オルロフは、1988年生まれの若い写真家で、工学を学んだあと、2006年から撮影を始めているそうです。カメラはニコンを使用。その後、地元メディアでカメラマンとして働き、現在はイスラエル在住です。


今回の団地写真は、ウラジオストク在住のストリートアーティストのパヴェル・シュグロフが企画した「黄金の都市」プロジェクトのために撮られたようです。

丘の上に並ぶ社会主義時代の団地に美学はあるか?(ウラジオストクの写真家展 その22)_b0235153_14250579.jpg

パヴェル・シュグロフ

「黄金の都市」プロジェクト スタジオ・アルカにて

http://www.arkagallery.ru/exhib/exhib_11_Golden-town.htm


この企画展のプランは、アートギャラリーのサイトの短い解説でしか知る由がないため、正確に伝えることが難しいのですが、簡単にいうと、以下のようなものだと思われます。


「ウラジオストク郊外の丘の上の灰色の団地群を撮影した写真を、2×1.5mの大きさキャンバスにプリントアウトし、そこに金箔を塗り込んでいきます。(どう手を加えていくのか不明ですが)こうして我々の故郷である団地の町をロマンチックで生き生きとした世界に変えていく……」。


パヴェル・シュグロフは、ウラジオストク市内にあふれるストリートアートの作家として知られています。ぼくは以前、彼にインタビューをしたことがありますが、アートの力で生まれ故郷であるウラジオストクの景観を変えていきたいと話しています。地元メディアでもいくつかの彼のプロジェクトを以下のように報じています。


Уличный художникПавел Шугуров: «Быть чиновником — это прикольно»

https://www.the-village.ru/village/city/regions/137707-novaya-geografiya-vladivostok

«Матросская слобода»: проект Павла Шугурова и«33+1» меняет облик «владивостокской деревни»

https://www.newsvl.ru/vlad/2018/07/05/171638/


ちなみに以下は、彼も関わっているウラジオストクのストリートアートの紹介記事です。


ウラジオストクはストリートアートの街です

https://vladivostok-channel.com/spots/art/street-art-verkhneportovaya

2弾です!ウラジオストクには街角アートがあふれています

https://vladivostok-channel.com/spots/art/street-art-vol2


そして、この「黄金の都市」プロジェクトのための下地となる灰色の団地群を撮ったのがオルロフというわけです。もっとも、オルロフ自身は、必ずしもこれらの景観をネガティブにのみ捉えているわけではない気がします。そこに美学を読み取ることもできなくはないと思います。



by sanyo-kansatu | 2020-07-14 14:29 | 極東ロシアはここが面白い


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