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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 07月 24日

奇妙な路上の人々と写真家のシュールなつぶやき(ウラジオストクの写真展 その29)

ウラジオストクの「ザリャー(фабрика ЗАРЯ)」で開催された企画展「FARFOCUS.PHOTOGRAPHERSOF VLADIVOSTOK(極東フォーカス、ウラジオストクの写真家たち)」5のテーマ「古い祝日と新しい儀式。群衆からサブカルチャーへ(Старыепраздники и новые ритуалы. От толпы к субкультуре)」の部屋では、これまで中央広場を舞台にさまざまなタイプの人たちが、特定の日に集結して行っているイベントと群衆の姿を見てきました。

群集たちは当時、広場で何を想っていたのか(ウラジオストクの写真家展 その26
https://inbound.exblog.jp/30148646/

十月革命100周年とマースレニッアを祝う広場の光景(ウラジオストクの写真家展 その27

https://inbound.exblog.jp/30151127/

201954日、コスプレバイカー中央広場に大集結するウラジオストクの写真家展 その28

https://inbound.exblog.jp/30152194/

ところが、今回紹介する作品群は、人々が休日を過ごしている一場面には違いないのでしょうが、そこで何をしているのかよくわからない路上の人々の素の姿を撮ったものです。いったい何を意図して? そういう疑問も湧いてきますが、撮影したのは、<その24>で現代のウラジオストクのストリートフォトを出品したレオニード・ズメギンツェフ。今回も、彼のおとぼけぶりが全開となっています。

彼は作品の一つひとつに、皮肉とも風刺ともつかない、つぶやきのようなキャプションを付けています。ツイッター的ともいえますが、その文面は意味不明で、不特定多数の人に理解してもらおうとは思ってないのではないでしょうか。フィーリングが合う人にだけ伝わればいいというのは、SNS時代のコミュニケーションの特徴かもしれません。

写真を見ていきましょう。

ロシア男性の民族衣装であるルパシカを着て、顔にサインペンで髭を描いた中年男性が後ろを振り返っていますが、この人物が何者で、なにをしようとしているのかよくわかりません。

奇妙な路上の人々と写真家のシュールなつぶやき(ウラジオストクの写真展 その29)_b0235153_09585263.jpg

Леонид Звегинцев
Всегда есть что-то там за углом. Я мог бы этого хотеть, но мне достаточно того, что у меня в руках.
Я долго к этому шел.
レオニード・ズメギンツェフ
「角を曲がった場所にはいつも何かがある。それがほしいと思うかもしれないが、私の手には十分なものがある。長い間、私はこうしてきました」

海辺に水着とフラダンス風の腰蓑姿の若い女性が6人いて、男が写真を撮っています。ライトのような撮影機材もあるので、プロのカメラマンのようです。なにかの広告写真でしょうか。

Будущее прекрасно, имы тоже. Пока мы в это верим, это так.
「未来は美しく、私たちもそうです。それを信じる限り」

左下の写真は、中央広場で男がハンマー投の取手の付いた砲丸のようなものを持ち上げています。周囲に人垣ができているようなので、大道芸かなにかでしょうか。

В концеконцов, жизнь - это праздник. Конечно, крысиные бега... Хотя мы не хотим ничего, кроме как выжать лучшее из нашей скудной жизни, нетак
「結局のところ、人生とは祝いです。もちろん、それは『ラットレース』のようなもの…。私たちは何も望んでいません。ささやかな生活から最高のものを絞り出すこと以外に」

ここでいうラットレースとは、アメリカのコメディ映画『ラットレース(Rat Race)』(2001)のように、働いても、働いてもお金が貯まらない人生ということ。このシーンとどうつながるのか、わかるような、わからないような…、

次は、<その24>でも使われていた同じ写真です。広場で馬に子供を乗せ、年長のお姉さんがそれを引いています。馬の頭にユニコーン(一角獣)のような角の付いた帽子を被らされています。

Трудносказать, отличаются ли вещи здесь от похожих где-то еще.Я не думаю, чтоэто лошади. Или дети. Я видел это по телевизору.
「ここで見たこと、そして子供たちの様子が他の場所とは異なっているとは言い難いです。私はこんな光景をテレビで見たことがあります」

なぜかこの写真には日付だけで、キャプションはありません。広場で開催された音楽ステージの楽屋裏のような場所で、真っ白な衣装を着けた女性が記念撮影されている…そんなシーンでしょうか。

Февраль. 2018
22018

奇妙な路上の人々と写真家のシュールなつぶやき(ウラジオストクの写真展 その29)_b0235153_09585530.jpg

ひとりの中年女性が観客席の前に立っています。彼らは何を観ているのか、わかりません。

Бездельничатьна трибунах. Похоже ли это вообще на воскресенье?
「アイドルは観客席にいる。それはまるで日曜日のよう?」

ひとりの男性が広場で大きな鍋でスープか何かをつくっているようです。彼は大きなおたまと鍋のふたを手にしてこちらに何かを話しかけようとしています。

Чего я боюсь, так это пустоты. Страшное ничто, которое гнило все время, пока вы гонялись за этим новым увлечением.
「私が恐れているのは空虚です。あなたがこの新しい趣味を追いかけている間ほど、ひどいものはありません」

最後の写真は、広場に建つ記念碑の階段や地面に座っている人々です。何をしているのかわかりません。

Суетливая дальневосточная жизнь никого не ждет и редко награждает своих детей теплыми днями. Но когда это произойдет, вам вряд ли захочется сдвинуться на дюйм, греясь в неприветливых и заслуженных солнечных лучах.
「にぎやかな極東の生活など誰も待っておらず、暖かい1日が子供たちに報酬を与えることはめったにありません。でも、その日を迎えると、あなたは陽光を浴びるため、1ミリたりとも動きたいとは思いません」

写真展の解説では「レオニード・ズメギンツェフは、休日を過ごす群衆の中で、ユニコーンの上の子供たちを怖がらせ、疲れた市民がお祭りの中、記念碑の階段で休んでいるのをカメラで記録する」と書いています。

だから、何のために?

それを問うのは詮無いことかもしれません。彼のポートレイト写真のすました表情をみていると、そう思えてきて、笑ってしまいます。



by sanyo-kansatu | 2020-07-24 10:02 | 極東ロシアはここが面白い


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