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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 08月 12日

人気フォトアーティストが撮ったダンサーの身体と奇妙な花崗岩の流動性の類似(ウラジオストクの写真家展 その33)

モノクロ撮影された男女のダンサーによるしなやかな舞いは、ブレや残像があることで、かえって生身の身体を超えた躍動感や美しさが伝わってきます。

人気フォトアーティストが撮ったダンサーの身体と奇妙な花崗岩の流動性の類似(ウラジオストクの写真家展 その33)_b0235153_11365064.jpg
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Глеб Телешов

Из серии ≪В движении≫. 2011 2012

グレブ・テレショフ

シリーズ「In Motion」より 2011年、12年

一方、こちらは『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する欲深な悪徳人物をどこか連想させる、虫食い歯ぐきのように削り取られた花崗岩。さらに、右の写真。どうやって侵食されたらこのような変化に富んだ裂け目ができるのか……。



人気フォトアーティストが撮ったダンサーの身体と奇妙な花崗岩の流動性の類似(ウラジオストクの写真家展 その33)_b0235153_11501395.jpg
Бухта Триозерье. Приморский край. 2009

トリオゼリエ湾 沿海地方 2009 

こうした不思議な花崗岩の天然彫刻が撮られたのは、ロシア沿海地方の南東の港町、ナホトカの東側に広がる風光明媚な入江で知られるトリオゼリエ湾だそうです。ウラジオストクからは230km離れていますが、美しい砂浜と紺碧の海が広がるリゾートビーチです。


これらの写真は<その3><その10><その13><その18><その23>と、本ブログが紹介する写真展で大活躍のグレブ・テレショフの作品です。


彼はすでに紹介したとおり、
1966
年カザフスタンのアルマトイ生まれで、幼少期の72年にウラジオストクに移住。早くも83年には地元メディアで写真家として活動しています。


グレブ・テレショフについて

http://www.arkagallery.ru/art_teleshov.htm


写真展の解説では、少々難解な表現ながら、これらの作品について以下のようにコメントしています。


「グレブ・テレショフは、踊る身体と流れる石塊の絵のようなずさんさと柔軟性を好み、まったく異なる可塑性と美学を働かせます。この自然と人間は、折り目やひだ、谷、そして成長のリズムの類似性を明らかにする写真的な行為と一致しています」


ところで、前半のダンサーの写真が発表されたのは、ウラジオストクで最も早い時期である
1995
年に設立された現代アート専門ギャラリー「アルカ」での彼の企画展「Вдвижении(In Motion)」(2011721日~813日)でした。写真を通して、彼は人生そのものである動きの概念を探求したと解説されています。


В
движении(In Motionat ARKA GALLERY

https://artvladivostok.ru/2011/07/18/arka-teleshov/


前回
も少し触れましたが、「アルカ」はウラジオストクの現代アーティストたちにとって、なくてはならない重要な活動拠点でした。年間を通じて何人もの国内外および地元のアーティストの個展を企画していて、ここ数年の活動については以下の公式サイトからチェックできます。テレショフはほぼ毎年のように企画展を行っており、このギャラリーの常連です。他にもミハイル・パヴィンなど、ザリャーの写真展に登場するアーティストの名前も多く並んでいます。


ARKA GALLERY.RU

http://www.arkagallery.ru/exhibitions.htm


「アルカ」のサイトに掲載されているテレショフのプロフィールをみると、彼はウラジオストクを拠点にしながら、「
Art-Moscow
」のような国内はもちろん、パリで開催されたビデオアートフェア(2007)、さらには北京国際アートフェア(2008)や韓国国際アートフェア(2011)など近隣アジアの国々の美術展に参加していることがわかります。ウラジオストクのアーティストたちにとって、近隣アジアは活動の場でもあるのです。日本はこうしたトレンドについて少し遅れ気味のように感じます。


グレブ・テレショフについてもっと知りたい人は、前述の「アルカ」のサイトから企画展のリストをチェックすることができます。


今回の写真展「FARFOCUS. PHOTOGRAPHERS OF VLADIVOSTOK(極東フォーカス、ウラジオストクの写真家たち)」
で紹介されたグレブ・テレショフの写真の集大成となる企画展は、2016
6月に「アルカ」ですでに行われています。


Выставка
фотохудожника Глеба Телешова«Больше, чем воспоминания» открылась во Владивостоке (ФОТО)

https://www.newsvl.ru/vlad/2016/06/30/149005/


また最近の活動としては、
2018
2月に「アルカ」で開催された彼の企画展「海抜」の様子が、地元メディアの記事と動画でレポートされています。


«
Выше уровня моря» -выставка фотографий Глеба Телешова в галерее «Арка». Видеорепортаж ОксаныДанилюк

https://vestiprim.ru/news/ptrnews/60562-vyshe-urovnya-morya-vystavka-fotografiy-gleba-teleshova-v-galeree-arka.html



by sanyo-kansatu | 2020-08-12 11:43 | 極東ロシアのいまをご存知ですか?


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