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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 08月 26日

ヌードモデルは欲望のシンボルなのか?(ウラジオストクの写真家展 その40)

最後のテーマ8「ボディランゲージ(Язык тела)」の部屋に入ります。

ヌードモデルは欲望のシンボルなのか?(ウラジオストクの写真家展 その40)_b0235153_16144434.jpg

最初のエピグラムは、ここでもアメリカの作家スーザン・ソンタグの『写真論』(1977)の中の一節です。

「最も平凡な写真も、欲望のシンボルに変わる可能性があります……多様なイメージや商品を消費する自由と同等です」


以下のふたつのエピグラムも紹介されます。


「裸性は、言葉の真の意味で無限です。それを止めることはできません」(ジョルジョ・アガンベン 『裸性』
2012

※ジョルジョ・アガンベンはイタリアの哲学者、美学者。


「あなたのボディランゲージではまるでダメです」(Время
и стекло
=ウクライナのセクシーダンス系ポップグループ。2010年結成)

※Время и стекло

https://teksty-pesenok.ru/rus-vremya-i-steklo/tekst-pesni-troll/6659851/

https://www.youtube.com/watch?v=q--5Ht49vNY


このテーマの最初は、この写真展で頻繁に登場するグレブ・テレショフです。これまで<その3><その10><その13><その18><その23><その33><その37>
で出品しています。


頭を剃り上げた男性モデルが裸のまま、うつむいています。彼の頭部の静脈が浮き出て見えます。よく見ると、右手の静脈も見えます。

ヌードモデルは欲望のシンボルなのか?(ウラジオストクの写真家展 その40)_b0235153_16145091.jpg

もうひとりの男性モデルも裸ですが、腰から首までしか写っていません。鍛え上げられた筋肉とやはり腕に静脈が這うように伸びています。


Глеб
Телешов

Из серии ≪Перераспределение чувственного≫. 2015

グレブ・テレショフ

シリーズ「官能の再分配」より 2015


「カラー」というのは、花屋で切り花としてよく売られている、白くて特徴あるフォルムをした植物で、白い部分は花ではなくガクだそう。花言葉は「乙女のしとやかさ」で、女体を連想させるひとつのシンボルかもしれません。

ヌードモデルは欲望のシンボルなのか?(ウラジオストクの写真家展 その40)_b0235153_16145373.jpg

Калла. 2011

カラー(オランダカイウ) 2011


裸の男性モデルを横から撮ったもので、波打つように胸から腹部、脚線に至るシルエットが特徴的です。


Ню
. 1993

ヌード 1993


写真展のパネルでは「ヌードモデルは、芸術における古典的な題材ですが、写真の実践においては、異なる解釈をされます。グレブ・テレショフの男性モデルたちは、人類学的な関心を呼び起こすことはあっても、ロバート・メイプルソープの作品のようにエロティックではありません。筋肉や浮き出た静脈、鎖骨のくぼみは熟考と視聴の対象です。これらモノクロの肉体に花は可塑的なカウンターバランスとシルエットのリズムを与えています。それは欲望のよく知られたシンボルです」と説明しています。


※ロバート・メイプルソープ

アメリカ・ニューヨーク州ロングアイランド生まれの写真家。ニューヨークのゲイパーティの写真を通して自身のセクシャリティを探求した。

https://www.ssense.com/ja-jp/editorial/culture-ja/robert-mapplethorpes-violent-light?lang=ja


男性モデルの裸体の一部を接写するこれらの作品は、「ボディランゲージ」というテーマにおいて何を語ろうとしているのでしょうか。彼らは決してエロスの対象ではないといいます。ではどういう欲望のシンボルだというのか。他の写真家たちの作品を見ながら考えていくことにしましょう。



by sanyo-kansatu | 2020-08-26 16:19 | 極東ロシアのいまをご存知ですか?


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