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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2019年 04月 13日

大連から高速鉄道で2時間の町、丹東の歩き方

遼寧省丹東市は、中国と北朝鮮の国境に位置する鴨緑江沿いの町だ。米朝協議など、メディアをにぎわせる話題に事欠かないが、丹東はボーダーツーリズム(国境観光)のメッカでもあり、海鮮グルメや温泉などのお楽しみも満載だ。大連から高速鉄度で約2時間と近いので、日帰り観光もできる。写真/佐藤憲一、中村正人)

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↑中朝間に架かる2本の橋のうち、左側が鉄道橋の「中朝友誼橋」、右側が途中で橋桁が落ちている「鴨緑江断橋」


断橋歩きと遊覧船で楽しむボーダーツーリズム体験


丹東は見どころ盛りだくさんな町である。この地を訪れた人たちが必ず足を運ぶのが、朝鮮戦争時に米軍によって落とされた鴨緑江断橋と、それに並行して架かる中朝友誼橋だ。

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↑断橋の先は展望台になっており、北朝鮮側は橋脚だけが残る


金正恩委員長を乗せた国際列車が渡ったのは、全長946メートルの鉄道橋である中朝友誼橋。この橋には車道もあり、バスで渡ることもできる。中朝間をつなぐ最大の陸路の交通ルートとなっている。川沿いには対岸を眺めることのできる公園が広がっており、記念撮影を楽しむ観光客たちの姿でにぎわっている。


鴨緑江断橋は、1911年11月に日本によって開通された橋梁で、船が通行できる旋回可動橋だった。1950年11月8日に空爆で橋桁の一部を破壊されたまま、現在もその姿を残している。この橋の上を歩いて折れた場所まで行ける。北朝鮮の町、新義州はすぐ目の前だ。

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↑鴨緑江遊覧船の乗り場


断橋のたもとから鴨緑江下流に向かって遊覧船が出ている。航行時間は40分ほどだが、乗客たちは中朝両国の発展格差を目の当たりにすることになるだろう。

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↑遊覧船の上で記念撮影をする中国の国内客

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船から眺める断橋の風景。左側のビルが多いのが中国側で、右側が北朝鮮側

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船の上から北朝鮮の港湾施設も間近に見える
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↑遊覧船のルートを解説する案内版


その印象をさらに深く刻みつけることになるのは、丹東の市街地の北にある錦江山公園の高台に建てられた「錦江亭」という展望台からの眺望だろう。

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↑錦江山公園の高台近くから撮影した丹東と新義州の町並み


眼下に広がる丹東市内と北朝鮮新義州の町並みはいかにも対照的だからだ。鴨緑江に面して高層マンションが林立している丹東に対して、河を隔てた新義州には低層住宅がへばりつくように並んでいる。


新義州のはるか向こうに高層ビル群が見えるが、これは蛇行した鴨緑江の下流域に建設された丹東新区と呼ばれる経済開発区で、いずれ丹東の中心はこちらに移る計画という。すでに丹東市政府庁舎は移転をすませ、そこから全長約2キロという巨大な吊り橋の新鴨緑江大橋が2015年に完成しているが、朝鮮側の事情で未だに開通していない。


このように丹東では、断橋歩き、遊覧船、展望台とボーダーツーリズム(国境観光)の醍醐味を体験できるいくつものスポットがあり、日ごろメディアなどを通じて報じられる世界の実相を垣間見ることができるだろう。


ちなみに、錦江山公園はこの地が満洲国だった時代に安東神社があった。かつて鳥居があった場所は中華門に置き換えられている。展望台までの登山道は、丹東市民の憩いと散策のコースになっている。

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↑大連だけでなく、瀋陽からの高速鉄道も発着する丹東駅。北朝鮮・平壌行きの国際列車の国境駅でもある


2015年1217日、丹東と大連とを結ぶ高速鉄道「丹大快鉄(丹大高速鉄道)」が開通したおかげで、それまでバスや車で4時間近くかかっていた移動が約2時間に短縮され、便利になった。大連から日帰りでも行けるが、これらのスポットをすべて訪ねるなら、できれば宿を取って1泊することをおすすめする。


ハマグリBBQと北朝鮮レストラン、グルメ三昧と日式温泉で大満足


丹東では5月から7月にかけてグルメの季節を迎える。この時期、市民は路上にテーブルを並べ、鴨緑江下流で取れたハマグリやアサリなどの貝類の網焼きBBQを楽しんでいる。初夏の丹東の風物詩である。

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↑夏の夜市ではたくさんの屋台が出る

町の焼肉レストランでもハマグリBBQは大人気。店に入ると、まず水槽の中の貝類や魚、肉などを選ぶ。現代的な網焼きスタイルだが、炭火が使われている。BBQに合うのが、地元産の鴨緑江啤酒で、他の中国産に比べコクがあり、飲み応えがある。


ハマグリやアサリが取れるのは、鴨緑江下流域だ。干潮時になると、川面は砂地となり、地元の人たちはいっせいに潮干狩りを始める。その多くは、地元の市場やレストランに運ばれる。  


潮干狩りの場所に近い下流域に「江海湾漁港」という海鮮レストランがある。ここでは、ワタリガニやエビ、ハマグリ、アワビなど、鴨緑江や黄海で取れた海鮮が手ごろな値段で味わえる。


丹東では海鮮を中華風に濃く味つけせず、素材を生かした食べ方を好むので、日本人の口に合う。家族連れも多い常連客は、店の外にテーブルを並べ、川風に吹かれながらオープンエアで食事を楽しんでいる。

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↑これだけ海鮮を頼んで350元(約6000円)


日本人にとって刺激的なのが、ロケーションのもつ特殊性だ。店のすぐ前を流れる鴨緑江の支流を多くの漁船が行き来しているが、それらは北朝鮮の漁師たちの船なのだ。なにしろほんの十数メートル先の対岸は北朝鮮領。つまり、ここは中朝最前線に位置する国境展望レストランでもあるのだ。

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↑江海湾漁港は世にも珍しい北朝鮮国境展望レストラン

もうひとつの丹東ならではのグルメ体験は、対岸から渡ってきた若い女性たちが歌舞音曲で食客を魅了する「北朝鮮レストラン」だ。

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↑北朝鮮レストランの最初の曲はたいてい「パンガプスムニダ(お会いできて嬉しいです)」


有名なのは、断橋にも近い「柳京酒店」。昼と夕方の1日2回、彼女たちの演奏を聴きながら食事が楽しめる。料理は中華と朝鮮の折衷で、味は……それほど期待しないほうがいいかもしれない。だが、演奏は北朝鮮や中国の歌謡曲、さらにはモダンなポップスと、後半になるほど盛り上がる。


さて、丹東にはグルメ以外にも面白い趣向のスポットがある。2016年2月にオープンした江戸温泉城という和風温泉だ。ここの最大の売りは、眺望抜群の5階の露天風呂から対岸の北朝鮮が丸見えなこと。のんびり岩風呂に浸かりながら、往来する中朝の漁船や新義州の様子を眺めることができるのだ。

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↑江戸温泉城は丹東新区にある(丹東市振興区鴨绿江大街196-6号)
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↑あいにく雨天で鴨緑江は霧に覆われていた


館内は日本の温浴施設を模した畳敷きで、女性客が多い。館内着は日本の浴衣で、岩盤浴や和食レストランもある。利用料金が39元(660円)とお値打ちなのも、うれしいところ。しかも、ここはただのスーパー銭湯ではない。泉質は保証付きだ。丹東は、満洲国時代に開発された「満洲三大温泉」のひとつの五龍背温泉に近く、温泉を運んでいるからだ。




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↑安東老街は20世紀初頭の丹東の街並みを再現



by sanyo-kansatu | 2019-04-13 13:01 | 日本「外地」紀行


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