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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2020年 01月 25日

延辺(吉林省)からお隣の国ロシアにお気軽バス旅行

中国吉林省東部の延辺朝鮮族自治州はロシアと国境を隔てている。だから、お隣の国との人々の往来も盛ん。1日何本も走る国際バスに乗ってお気軽国境越えして、中国朝鮮族とロシアの文化を楽しもう。(写真/佐藤憲一)
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↑中国吉林省延辺朝鮮族自治州は、北朝鮮とロシア(俄罗斯)と国境を隔てている。北朝鮮には圏河口岸から、ロシアへは琿春口岸から入る。延吉からロシア沿海地方の州都ウラジオストクまでは道路が整備されていて、国際バスの直行便で行ける。この地図からわかるのは、日本海を隔てた日本の北陸や山陰地方がとても近いことだろう。実際、成田空港からウラジオストクへのフライト時間は約2時間だ。また、ウラジオストクの古い中国名が「海参崴(ナマコの地)」と呼ばれていて、実際にこの周辺ではナマコが多くとれ、シーフードレストランで味わえる。これら3カ国を周遊すると、3つの異なる文化を体験できるユニークな旅ができるだろう。

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↑延吉の朝市に行くと、たくさんの種類のキムチやコリア風お惣菜のパンチャンが並んでいる


キムチ市場と教会、ロシア人留学生も

たくさんいる延吉は国境の町


早朝5時、延吉市内を東西に流れる布爾哈通河の支流、煙集河のほとりに並ぶ朝市を訪れると、すでに多くの人々が繰り出していた。市場はその土地に暮らす人たちの胃袋の中身をすべて見せてくれるショーケースだ。


ここは朝鮮族の町らしく、地元の山でとれたキクラゲや朝鮮人参、狗肉、北朝鮮から届いた日本海産のタラやスケソウダラの干物、料理に欠かせないトウガラシや各種香辛料などが売られている。朝鮮族の人たちの胃袋には、これほど多様な食材が詰め込まれているかと思うと、見ているだけで面白い。

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↑延辺大学にはお隣の国ロシアからきた留学生が多い。またアフリカや日本からの留学生もいる

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↑延辺朝鮮族自治州を代表する延辺大学。キャンパスの施設は新しいが、正門は朝鮮風。留学生の数は約600人という


延辺朝鮮族自治州のもうひとつの特徴は国境に近いということ。図們川を隔てた南には北朝鮮があり、東はロシアである。そのせいか、延辺大学にはロシアから来た留学生がたくさんいる。一般に彼らは中国語を学びに来るのだが、一歩キャンパスの外に出ると、町では朝鮮語もふつうに話されているから、中国語と朝鮮語の両方を学べるという意味で恵まれている。実際、商店や飲食店の看板は中朝2カ国語併記がルールとなっている。

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↑琿春市内ではロシア語と中国語とハングルの併記が見られる。そのぶん、ビルの正面や看板は、3カ国語の表示でぎっしり埋め尽くされてしまう


延吉の東にある琿春という町に行くと、看板表記にさらにロシア語が加わる。なぜなら、そこは国境の町で、ロシアから多くの人たちが中国の安価な日用品や衣料などを買いに訪れるからだ。彼らはバスで中国にやって来て「爆買い」を楽しんでいる。たいてい1泊か2泊するので、本場の中国料理に舌鼓を打つ。なかには歯科治療を受けて帰る人たちもいる。沿海地方に住むロシア人にとって琿春は、お手軽な国境観光ができる町となっているのだ。


そこで、彼らにならって国境観光にチャレンジしてみることにした。延辺から国際バスに乗って極東ロシアのウラジオストクまで小旅行に出かけたのである。

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↑延吉のバスターミナルからはウラジオストクや沿海地方の内陸の町ウスリースク行きの国際バスが出ている。ターミナルの構内には、ロシア行きのチケット売り場があり、ロシアの地名が中国語表記されている。たとえば、ウラジオストクは中国語で「符拉迪沃斯托克」、ウスリースクは「乌苏里斯克」。道中にスラビャンカ(斯拉夫杨卡)という町があり、そこからウラジオストクに行くフェリーが出ている。延吉から中国国境の町琿春までバスで所要約1時間半。出入国手続きで両国のイミグレーションを抜けるのに約2時間。ロシア側の国境の町クラスキノからウラジオストクまでは約5時間だ。

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国境を越えると風景がこんなに変わる

ロシアの港町、ウラジオストクを満喫したい


朝6時、延吉から高速道路を走り、琿春に向かった。琿春のバスターミナルでバスに乗り換えると、乗客の大半は大きな荷物を抱えたロシア人だった。中国側のイミグレーションでパスポートチェックをすませると、バスに乗ってロシア側に移動する。

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↑乗客はロシア人ばかり。カップルや子供連れ、中高年の女性もいる


ロシアの入国手続きは意外に簡単だった。ロシア人と同じ列に並び、「Passport Control」と書かれたゲートに入る。特に何も聞かれることなく、約2分でチェックは終わった。


ロシアのイミグレーションの建物を出ると、それまで空を覆っていた黒雲がウソのように消え、快晴になっていた。あとで聞いた話では、ロシア沿海地方南部は日本海に近いため、午前中早くは霧に覆われることが多く、お昼どきになると急に晴れるのだという。極東ロシアは中国に比べ3時間も時差が進んでいる。だから、先ほどまでいた中国では午前10時過ぎだったのに、ロシアではもう午後1時だといわれた。

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↑ロシアののどかな平原を走るバス。気分も晴れやかだ


中国から乗ってきたロシア人たちと一緒にバスはウラジオストクに向かって走り出した。車窓の風景には、手つかずの自然と緑の大地が広がっていた。中国側では至るところで土地を掘り起こし、耕作地にしていたが、ロシア側では緑の湿原に1本道が延びているだけ。国境を越えると、こんなにも風景が違うのかという驚きがあった。


沿海地方は古代、渤海や金と呼ばれる国が興亡し、のちに清朝を建国する満洲族などの少数民族が暮らしていた。この地域の自然や風土は本来同じなのに、国境が敷かれることで、国家と民族のありようが自然の景観まで大きく変えてしまったということなのだろう。

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↑スラビヤンカの子供たち

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↑食堂でロシア風水餃子のぺリメニとロシアビールの昼食。食文化が中国に近いところが面白い


途中スラビヤンカという小さな町でひと休み。町にはロシア人の子供たちがふつうに歩いていて、ここはロシアなのだと実感する。それからまたバスに乗り、しばらく走ると、道路が整備された2車線になり、都会の町並みが見えてきた。ウラジオストクに近づくと、ひどい渋滞になったが、到着はロシア時間の18時(中国時間の15時)。ほぼ丸1日かけての国境越えの旅となった。

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↑鷲の巣展望台に上ると、ウラジオストクの町と港が一望できる。港に架かるのは2012年に開通した金角湾大橋

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↑ウラジオストク駅は9300㎞離れたモスクワ行きのシベリア横断鉄道の始発駅


【Travel Tips】現在、ロシア沿海地方では電子簡易ビザが発給されるが、適用は空路や航路に限られるため、中国からのバスによる陸路入国の際は、従来通りの観光ビザの取得が必要。




by sanyo-kansatu | 2020-01-25 15:27 | 現代満洲記録プロジェクト


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