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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 10月 30日 ( 2 )


2017年 10月 30日

日本のシェアサイクルはツーリスト向けにサービスを特化したほうがいいのでは

今夏、中国のシェアサイクル大手のMobike(摩拝单车)やofoが日本に進出するニュースが流れ、話題になりました。

自転車シェア中国「モバイク」、日本で10カ所展開へ
23日から札幌でサービス (日本経済新聞2017/8/22)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HZZ_S7A820C1EA2000/

ソフトバンクとの協業で日本進出するケースもあります。

ソフトバンクC&S、Ofoと共同でシェアバイク事業を開始――まずは東京・大阪で9月から
http://jp.techcrunch.com/2017/08/09/20170809ofo-softbank-japan-dock-less-bikesncidmobilenavtrend/

中国語で「共享单车」と呼ばれるシェアサイクルは、確かに中国の都市部を中心に驚くほどのスピードで普及しました。去年の秋ごろから一気にです。

今年3月に上海に行ったときも、街中でシェアサイクルが走っている光景を見て、かなり驚きました。
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南京でも同様の光景を見かけました。
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外国人も利用していました。思うに、この種のサービスは外国人やよその土地から来た人にとって重宝するもので、出張中のぼくも利用したいと思ったのですが、中国に銀行口座をつくり、WeChatPayのような決済アプリと紐づける必要があり、時間がないので断念しました。
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これらのシェアサイクルには、QRコードが付いていて、利用者はスマホでスキャンして鍵を開けます。
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興味深いのは、中国では都市の一般住民が利用していることです。地下鉄駅から職場までの「最後の1km」が合言葉で、そのようにちょい乗りされることが多いそうです。いちばん驚くのは「好きな場所で借りて、どこでも乗り捨てできる」ことです。
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その仕組みは、中国の人たちの意識を変えるとも言われています。なぜなら、すべての自転車の位置と利用者の情報を配車アプリ企業は握っている以上「盗んでも意味がない」ため「悪いことはできないから」です。

中国を席巻するハイテク「シェア自転車」~仕組みで意識を変える試み(NECwisdom2017年02月02日)
https://wisdom.nec.com/ja/business/2017020201/index.html
中国で「シェアエコノミー」が大爆発中のワケ
「シェア自転車」人気の背後には何があるのか(東洋経済オンライン2017年06月14日)
http://toyokeizai.net/articles/-/175441

ほかにも中国でシェアサイクルが普及した理由はいろいろありそうですが、個人の自転車を路上に置くと、鍵をかけても悲惨な状況になりがちで、だったらシェアサイクルのほうがいいや、となるのかもしれません。
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このサービスを支えるために、夜になると、大型トラックが自転車の再配置のために市内を走りまわっているようです。より利用の多い地区に、夜のうちに自転車を運び去ってしまうとは。ここまでやるというのはすごいと思いました。
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こうしたことから、世界に自らの先進性を誇りたい中国政府も、ちょうど3月上旬に開かれていた全人代で「共享单车」ビジネスの支持を表明していました。
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上海で見かけたシェアサイクルは以下の5社でした。大手はMobikeとofoです。日本に進出したMobikeは日本語サイトもあります。
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Mobike(摩拝单车) https://mobike.com/cn/
Mobike Japan https://mobike.com/jp/
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ofo http://www.ofo.com/
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享骑电单车 http://www.xqchuxing.com
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小鸣单车 https://www.mingbikes.com/
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永安行单车 https://www.youonbike.com/

それぞれ保証金(利用の登録時に最初に払うデポジット)や料金が違います。また自転車のデザイン性ではofoが人気だとか、料金の安さでは小鸣单车(0.1~0.5元/30分)とか、電動自転車の享骑电单车だとか、微妙に差別化しながら個性を競い合っています。

それにしても、このようなサービスでどうやって企業は利益を得ているのでしょう。中国の友人によると「最初に利用者からもらう保証金(99元~299元)の金利ビジネスですよ」とのこと。これほど安価なサービスを提供するビジネスが超スピードで拡大したのも、どれだけ利用者を集められるかに事業の成敗がかかっていたからでもあるのです。低金利の日本ではちょっと考えられません。

さらにいえば、いまの中国の経営者の考え方も反映されていて、新しい市場が生まれると、いち早く参入し、そこそこの市場シェアを獲得しておけば、どこかの時点で大企業に買収してもらえる。そうすれば、事業自体に利益が出ていなくても、売り抜けてひと財産築ける。大企業側も最初は資金力を活かして利益度外視で市場拡大にひた走る。そのうち大半の中小企業はふるい落とされ、結局は大手の寡占状態となる。利益を取るのはそれからでいい…。このようにビジネスシーンが展開していく例は、配車アプリでいま「滴滴」が一強になったことからもわかるでしょう。

もっとも、市場の拡大は街への自転車の氾濫を引き起こします。今年7月までに、すでに1600万台の自転車が街に投入されたというのですから。

中国のシェア自転車、急増で「悲惨な運命」(WSJ2017 年 4 月 4 日)
http://jp.wsj.com/articles/SB10352219306287233570804583063854080347428

中国はかつて「自転車大国」で、通りも広く、自転車専用道路もそこそこあるため、大きな問題にはなっていないといえるのかもしれませんが、このサービスを日本に導入するのはかなり難しいだろうと言わざるを得ません。

その点について、中国事情に詳しいルポライターの安田峰俊さんも指摘しています。

シェア自転車の"上陸"を阻む日本特有の壁
福岡で"モバイク"が始まらない理由(プレジデントオンライン2017.10.24)
http://president.jp/articles/-/23406

同じことは台湾にもいえるようで、シンガポールのシェアサイクル企業が進出したところ、迷惑駐輪が多発しているそうです。

台湾各地に進出の「oBike」、迷惑駐輪多発 台北市が法整備へ/台湾(フォーカス台湾2017/07/11)
http://japan.cna.com.tw/news/atra/201707110001.aspx

そもそも日本の一般の人たちにとってシェアサイクルはどれほどのニーズがあるのでしょうか。たいてい自分の自転車は持っていて、生活圏ならそれを利用するでしょうし、職場の近くでは…そりゃあったら便利とはいえるでしょうけれど、いつ乗ればいいのでしょう。先日、都心のオフィス街でサラリーマン風の男性がレンタルサイクルに乗って横断歩道を渡っている光景を見ましたが、ちらほら見かけるというのがせいぜいです。
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むしろ、このサービスはツーリスト向けではないかと思います。外国人もそうですが、日本人だって旅行先で自転車に乗って観光地をめぐれたら楽しいものです。中国と日本の社会の違いを考慮せず、そのまま同じサービスを導入しようとしても、うまくはいかないものです。それはお互い様です。

ですから、これは進出してきた中国企業に限らず、日本のすでに始まっているシェアサイクル事業に関しても、いち早くツーリスト向けのサービスに特化していくような発想の転換をすることが利用者の支持を広げることにつながるのではないかと思えてなりません。そのためには、多言語化うんぬんもそうですが、外国人にも日本人にも徹底してわかりやすいレンタルシステムを提供する必要があります。

その意味で、中国の仕組みは(モバイル決済の普及が前提となっていますが)非常にわかりやすく、優れているといえるでしょう。日本の現状のレンタサイクルはポート式とならざるを得ないため、自転車を返却しようとしたらポートが埋まっていてできなかったり、ポートに行っても自転車がすべて使われていたりで、GPS連動で1台単位で管理し、決済もスマホのみで完結する中国式には利便性ではとても及びません。

日本の場合、GPS連動やモバイル決済はすぐには無理でも、せめて全国ネットで地方の観光地を同じプラットフォームで管理でできれば、利便性も上がると思います。つまり、東京で登録すれば、地方都市でも使える。そうなれば、プロモーション費用の効率化やシステムの共有化につながり、シェアサイクルの促進に貢献するのではないでしょうか。

by sanyo-kansatu | 2017-10-30 10:35 | “参与観察”日誌
2017年 10月 30日

中国配車アプリ大手「滴滴」が日本に進出だそうだけど、訪日中国人向け「白タク」はどうなるの?

今朝、面白いニュースが飛び込んで来ました。中国配車アプリ大手の「滴滴」が来春、日本に進出するというのです。

中国配車アプリ「滴滴」、来春にも日本でサービス
第一交通と組む (日本経済新聞2017/10/30)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22855700Z21C17A0MM8000/

タクシー配車とライドシェア(相乗り)サービスで世界最大手の中国・滴滴出行が日本に進出する。タクシー国内最大手の第一交通産業と組み、2018年春にも東京都内で配車アプリを使ったサービスを始める。シェア自転車やアリババの電子決済など中国発のサービスが相次ぎ日本に上陸。規制などのハードルもあって日本企業が手をこまぬいているうちに、中国など新興国企業の後手に回る懸念も強まっている。

スマートフォン(スマホ)のアプリを使った新サービスでは中国勢が急成長しており、日本への進出も相次いでいる。モバイクが8月から日本で事業を始めたシェア自転車など、日本企業が出遅れている事業も多い。

滴滴の配車アプリの登録者数は約4億4000万人。米ウーバーテクノロジーズの中国事業も買収しており、1日当たりの利用は2100万回以上と、配車サービスで世界最大手に位置する。

配車サービスは、アプリの地図で出発地と目的地を指定すると、事業者に登録した運転手が迎えに来る仕組み。利用者はアプリを介して料金を支払う。日本では自家用車の有料配送が「白タク」行為として原則禁止されているため、滴滴は配車アプリでタクシーの利用客を囲い込む。

まずは保有台数約8700台と国内最大手の第一交通と組み、18年春にも都内で約500台を滴滴のアプリで配車できるようにし、将来は数千台規模に増やす。各地のタクシー会社とも連携して全国規模で展開することで、日本でもネットを使った配車網の主導権を握る考えだ。

滴滴にはソフトバンクグループも出資しており、日本法人の設立なども視野に入れる。滴滴の配車アプリは現在、中国語版の利用が中心だが、日本語にも対応するとみられる。

第一交通は滴滴との提携で、中国からの訪日客のタクシー需要を取り込む。第一交通と滴滴は手数料や具体的な運用方法など細部を詰めている。

配車アプリではウーバーもすでに日本に上陸し、都内でタクシーやハイヤーの配車サービスを手掛けている。一部の過疎地では自家用車を配車するが、法的には例外扱いとなっている。


ついに中国のシェアエコノミーを代表する配車アプリ企業が日本のタクシー会社と組んで事業を始めるそうです。こちらは営業車のサービスですから法的になんら問題ないし、日本のすでにある配車サービスを凌駕する利便性を発揮できれば、日本人相手でも可能性があるのかもしれません。

日本で仮に自家用車によるライドシェアが解禁されたとしても、昼間に学校や職場に行かないで車を走らせることのできる人などどれほどいるでしょう。オーストラリアでUberをやってそこそこ稼いでいる知人がいますが、彼はチェコ人。要するに移民労働者なんです。このサービスは移民が担う傾向が強いように思えます。中国でも基本地方から来た出稼ぎの人たちです。ここにシェアエコの問題があるように思われます。

とはいえ、タクシーのような営業車が配車アプリのサービスを強化することは日本でも求められていたはずです。中国企業の参入をいい刺激と受け止めて、サービスの利便性をもっと高め、PRする必要が出てくるとしたら、悪い話ではありません。

ただし、これまで人知れずやっていた訪日中国人相手の在日中国人ドライバーの運転する自家用車=「白タク」問題はどうするのでしょう? 

野放し「中国人白タク」で見えた、日本の遅れ(ForbesJapan2017/10/26)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18241

中国人には使い慣れているサービスだけに、はたして記事にあるように「中国からの訪日客のタクシー需要」を取り込むことができるのか。訪日中国客が必要としているのは、タクシーではなく、ワゴン車ではないのか。だとしたら、すでにある中国「白タク」を利用してしまうのではないか…。

いろいろ思うところのある記事ですが、今後の行方が興味津々です。

by sanyo-kansatu | 2017-10-30 08:50 | 気まぐれインバウンドNews